男 性 による 化 粧 行 動 としてのマニキュア 塗 抹 がもたらす 感 情 状 態 の 変 化 に 関 する 研 究 男 性 による 化 粧 行 動 としてのマニキュア 塗 抹 がもたらす 感 情 状 態 の 変 化 に 関 する 研 究 国 際 日 本 文 化 研 究 センター/ 京 都 大 学 ベンチャー ビジネス ラボラトリー 平 松 隆 円 要 旨 人 は 不 快 な 感 情 を 最 小 限 にし 快 の 感 情 を 最 大 限 にしようと 様 々な 行 動 をおこなう そのような 感 情 調 整 行 動 の 一 つに 化 粧 がある 本 研 究 の 目 的 は 化 粧 のもつ 日 常 的 な 感 情 調 整 作 用 に 注 目 し 男 子 大 学 生 15 名 ( 平 均 年 齢 =20.87 歳 SD=0.62)を 対 象 に 化 粧 行 動 としてのマニキュアの 塗 抹 がもたらす 感 情 調 整 作 用 について 検 討 する ことである マニキュア 塗 抹 前 後 の 感 情 の 変 化 をProfile of Mood States((POMS)によって 測 定 したところ マニキュアの 塗 抹 にともない 混 乱 が 有 意 に 低 下 することが 明 らかとなった 本 研 究 の 結 果 から マニキュアの 塗 抹 は 部 分 的 ではあるが リラクセーションに 有 用 であることが わかった キーワード: 化 粧 行 動 感 情 調 整 作 用 マニキュア リラクセーション 男 子 大 学 生 Profile of Mood States (POMS) Research on the Emotional State Change that Applying Makeup, in the Form of a Manicure, Has on Males Ryuen HIRAMATSU, PhD. International Research Center for Japanese Studies Kyoto University - Venture Business Laboratory ABSTRACT People engage in various behaviors to minimize their unhappiness and maximize their happiness. One of these emotion-adjusting behaviors is the application of makeup. The objective of this research was to observe the everyday emotion-adjusting function of makeup. The study targets 15 male university students (M=20.87 years old SD=0.62), and to investigate the emotion-adjusting function of getting a manicure. It measured the change in emotions before and after the manicure using Profile of Mood States (POMS), and found that the manicure significantly reduces the feeling of Confusion. From the results of this research, it was made clear that manicure was useful for relaxation. Keywords: makeup behavior, emotion-adjusting function, manicure, relaxation, male university students, Profile of Mood States (POMS) 175
佛 教 大 学 教 育 学 部 学 会 紀 要 第 10 号 (2011 年 1 月 ) Ⅰ はじめに 化 粧 (スキンケア メイクアップ)は 不 快 感 情 (ストレス) 緩 和 装 置 として 機 能 する Parkinson & Totterdell(1999)は 不 快 感 情 の 緩 和 のために 人 々がおこなっている 日 常 行 動 を 分 類 し 化 粧 を 気 分 転 換 行 動 のなかの 一 つ リラックスし 愉 快 になるための 行 動 に 睡 眠 や 買 物 などと 同 様 に 位 置 づけている Zillmann(1988)によると 人 は 不 快 な 感 情 を 最 小 限 にし 快 の 感 情 を 最 大 限 にしようと 様 々な 行 動 をおこなう そのような 感 情 調 整 行 動 の 一 つが 化 粧 である 化 粧 の 感 情 調 整 作 用 については 松 井 (1993) 大 坊 (1996) 余 語 ら(1990)の 研 究 により 一 貫 して 自 信 や 満 足 感 の 上 昇 が 明 らかに されている すなわち メイクアップによる 自 己 の 外 面 の 不 満 や 欠 陥 のカバーにともなう 外 見 魅 力 の 上 昇 などが 自 信 や 満 足 感 を 高 めている と 考 えられる ポーラ 化 粧 品 本 舗 ポーラ 化 成 工 業 (1999)は 太 田 母 斑 に 悩 む 成 人 女 性 を 対 象 に 化 粧 を 施 した 結 果 敵 意 や 不 安 といったネガティブな 感 情 が 減 少 し 快 適 や 親 しみといったポジティブな 感 情 が 高 まったことを 明 らかにしている 有 川 ら (2003)は アトピー 性 皮 膚 炎 の 女 性 患 者 を 対 象 に 化 粧 の 効 果 を 検 討 した 結 果 活 力 が 上 昇 したことを 明 らかにしている 豊 増 原 田 (2008) は, 中 高 年 期 女 性 を 対 象 に 化 粧 の 効 果 を 検 討 し た 結 果 緊 張 不 安 怒 り 敵 意 が 減 少 し 活 気 が 増 加 したことを 報 告 している このような 感 情 調 整 作 用 について 臨 床 的 な 研 究 もすすんでいる 浜 ら(1990)は 神 経 症 の 浜 ら(1991)は 精 神 分 裂 症 の 浅 井 ら(1992) 浅 井 浜 (1992) 伊 波 浜 (1997)は 老 年 性 痴 呆 症 の 患 者 を 対 象 として 平 面 化 した 感 情 を 活 性 化 させるプログラ ムを 提 案 している また エステティックなどのマッサージを 中 心 とした 美 容 施 術 について 畑 山 ら(1986) Yamada et al.(1986) 阿 部 (1998)の 研 究 に より リラックセーションやリフレッシュの 効 果 が 期 待 できることが 明 らかとなっている しかしながら 先 行 研 究 は 主 に 高 齢 の 女 性 や 医 学 的 な 疾 患 がある 女 性 を 対 象 としており 対 象 が 限 定 的 である さらに 化 粧 は 日 常 的 にお こなわれる 行 動 であるにもかかわらず 先 行 研 究 の 多 くが 専 門 的 な 技 術 を 前 提 としてのメイク アップの 感 情 調 整 作 用 に 注 目 している そして 実 験 室 で 処 理 統 制 をおこない 生 理 的 心 理 的 な 反 応 を 測 定 する 研 究 方 法 による 条 件 統 制 に 重 きが 置 かれる 社 会 的 文 脈 から 切 り 離 された 実 験 室 内 での 感 情 測 定 に 止 まり 現 実 の 生 き 生 き とした 感 情 を 離 れた 心 理 的 現 象 を 対 象 としてい る そのため 先 行 研 究 の 知 見 の 多 くは 限 定 的 で 課 題 が 残 る 阿 部 (2001)は 肌 に 触 れることでリラクセー ションを 導 くと 指 摘 している すなわち 顔 面 への 顔 料 の 塗 抹 である 化 粧 は その 施 術 におい て 肌 に 触 れることを 余 儀 なくされ 感 情 調 整 作 用 が 肌 に 触 れることによるものか 顔 料 の 塗 抹 によるものかを 曖 昧 にしている さらに 化 粧 のもたらす 感 情 調 整 作 用 につい て 余 語 (2001)は 専 門 家 が 化 粧 を 施 術 する 際 に 顔 に 触 れたりしながら 被 施 術 者 に 視 覚 的 触 覚 皮 膚 感 覚 的 に 自 己 を 確 認 する 過 程 を 作 り 出 し 言 語 的 非 言 語 的 相 互 作 用 を 活 発 化 させ ることが 情 動 を 活 性 化 させると 指 摘 している したがって 化 粧 専 門 家 の 介 入 は 感 情 調 整 作 用 が 純 粋 に 化 粧 によるものか 専 門 家 との 言 語 的 コミュニケーションによるものかをも 曖 昧 にする これらの 課 題 を 克 服 し 化 粧 がもたらす 感 情 調 整 作 用 に 関 する 心 理 学 的 な 効 果 を 検 討 するた め 平 松 (2009)は 女 性 を 対 象 に 化 粧 行 動 の なかでも 専 門 家 の 介 入 を 必 要 とせず 肌 への 接 触 176
男 性 による 化 粧 行 動 としてのマニキュア 塗 抹 がもたらす 感 情 状 態 の 変 化 に 関 する 研 究 も 少 ない とりわけ 簡 便 なマニキュアを 塗 抹 す ることによって ストレス 増 減 の 変 化 や 感 情 調 整 作 用 にどのような 影 響 があるのかを 検 討 して いる その 結 果 マニユア 使 用 後 で 緊 張 不 安 抑 うつ 落 ち 込 み 怒 り 敵 意 疲 労 混 乱 が マニキュア 使 用 前 に 比 べ 低 下 し 活 気 がマニ キュア 使 用 前 に 比 べ 上 昇 することが 明 らかと なっている この 結 果 は マニキュアの 塗 抹 が 感 情 調 整 作 用 として 機 能 し リラクセーションに 効 果 があ ることを 示 唆 している しかしながら 研 究 協 力 者 が 女 性 に 限 定 されていたため 男 性 に 同 様 の 効 果 が 認 められるかは 不 明 である そこで 本 研 究 では 平 松 (2009)の 研 究 をも とに 男 性 によるマニキュアの 塗 抹 が 感 情 調 整 作 用 として 機 能 するのかについて 検 討 したい Ⅱ 研 究 の 方 法 1) 時 期 および 研 究 協 力 者 2009 年 10 月 に 大 阪 の 私 立 短 期 大 学 の 学 生 を 対 象 に 実 施 した 研 究 には マニキュアの 使 用 経 験 のない 男 子 学 生 15 名 ( 平 均 年 齢 =20.87 歳 SD=0.62)が 協 力 した 2) 方 法 すべての 研 究 協 力 者 が 同 一 の 講 義 室 に 集 ま り 同 時 に 研 究 を 実 施 した 実 施 場 所 は 150 名 収 容 可 能 な 静 かな 講 義 室 を 用 意 した 環 境 は 室 温 20 前 後 湿 度 50% 前 後 であり 研 究 協 力 者 は 席 を 空 けて 着 座 した 研 究 は 次 の 手 順 でおこなった 1) 実 施 前 に 排 尿 を 済 ませたことを 確 認 し 研 究 の 目 的 や 個 人 が 特 定 されることがない ことを 口 頭 で 説 明 した 2) 注 意 事 項 の 説 明 の 後 ネイルカラーを8 色 から トップコートを3 色 のなかから そ れぞれ1つを 研 究 協 力 者 が 自 由 に 選 んだ 3)ネイルカラーとトップコートの 選 択 後 5 分 間 の 安 静 状 態 を 保 ち Profile of Mood States (POMS)に 回 答 を 求 めた(マニキュ ア 使 用 前 ) 4) 研 究 実 施 者 によってPOMSへの 回 答 に 不 備 がないことを 確 認 後 研 究 協 力 者 はそれぞ れ 自 身 の 手 ですべての 指 にネイルカラー とトップコートを 塗 抹 した 5)ネイルカラーとトップコートか 乾 くまでの 5 分 間 着 座 したまま 安 静 状 態 を 保 った 6)その 後 POMSに 回 答 を 求 めた(マニキュ ア 使 用 後 ) 7) 研 究 実 施 者 によってPOMSへの 回 答 に 不 備 がないことを 確 認 後 退 室 した 3) 記 録 Lazarus(1990)やLazarus & Folkman(1984) は ストレスは 情 動 という 大 項 目 の1つの 側 面 に 過 ぎず ストレスの 生 理 的 変 化 の 測 定 から 離 れて 情 動 の 測 定 に 向 かうべきと 指 摘 する すなわち ストレス 研 究 に 対 して 量 的 で 生 理 学 的 な 側 面 だけではなく 質 的 で 心 理 学 的 な 側 面 へのアプローチの 必 要 性 を 主 張 する 本 研 究 においても 平 松 (2009)と 同 様 に ストレス 反 応 を 生 理 的 反 応 に 限 定 せず 感 情 の 変 容 を 含 めてストレスをとらえる そこで ス トレス 変 化 の 測 定 方 法 として 生 理 的 指 標 を 用 い る 代 わりに 気 分 測 定 尺 度 であるProfile of Mood States (POMS)を 指 標 として 用 いた Profile of Mood States(POMS)とは Mc- Nair et al(1992a)(1992b)により 人 間 の 情 動 を 気 分 や 感 情 情 緒 といった 主 観 的 側 面 から アプローチすることを 目 的 に 1950 年 代 終 わり から1960 年 代 初 めにかけ 米 国 で 開 発 された Tension-Anxiety : T-A ( 緊 張 不 安 ) Depression-Dejection : D-D ( 抑 うつ 落 ち 込 み) 177
佛 教 大 学 教 育 学 部 学 会 紀 要 第 10 号 (2011 年 1 月 ) Anger-Hostility : A-H ( 怒 り 敵 意 ) Vigor : V ( 活 気 ) Fatigue : F ( 疲 労 ) Confusion : C ( 混 乱 ) の6つの 下 位 尺 度 からなる65 項 目 に よる 気 分 を 評 価 する 質 問 紙 法 の1つである 米 国 ではPOMSの 利 用 に 際 して 米 国 教 育 学 会 (AERA) 米 国 心 理 学 会 (APA) 全 米 教 育 測 定 協 議 会 (NCME)の3 団 体 が 検 査 の 実 施 者 は 大 学 などで 心 理 検 査 および 測 定 に 関 す る 科 目 を 履 修 し 卒 業 したか もしくはそれと 同 等 な 教 育 訓 練 を 終 えていることが 必 要 とする Level Bに 定 めている POMS 日 本 語 版 は 横 山 荒 記 (1994a)(1994b) によって 翻 訳 と 信 頼 性 妥 当 性 の 検 証 がおこな われ 1994 年 の 発 行 以 来 精 神 障 害 の 治 療 経 過 職 場 でのスクリーニング 運 動 やリラクセー ション 効 果 の 評 価 測 定 などで 用 いられている 本 研 究 で 用 いたPOMSは 日 本 語 訳 の 短 縮 版 である 横 山 (2005)によるPOMS 短 縮 版 は 65 項 目 版 と 同 様 の 測 定 結 果 を 提 供 しながらも 項 目 数 を30に 削 減 することにより 研 究 協 力 者 の 負 担 を 軽 減 し 短 時 間 で 変 化 する 介 入 前 後 の 気 分 や 感 情 の 変 化 を 測 定 することが 可 能 となって いる 研 究 協 力 者 のPOMSへの 回 答 は 提 示 された 各 項 目 について まったくない(0) から 非 常 にあてはまる(4) までの5 段 階 のいずれ か1つを 選 択 させた 採 点 は 全 部 の 項 目 が 記 入 されたことを 確 認 後 5 項 目 ずつの 下 位 尺 度 ごとに 合 計 得 点 (0~ 20)を 算 出 し 分 析 デー タとした POMS 下 位 尺 度 について, 本 研 究 における 信 頼 性 を 確 認 するため 内 的 一 貫 性 を 推 定 する Cronbachのα 係 数 を 算 出 したところ 緊 張 不 安 が0.75 抑 うつ 落 ち 込 み が0.77 怒 り 敵 意 が0.77 活 気 が0.79 疲 労 が 0.76 混 乱 が0.58と おおむね 妥 当 な 値 を 示 しており 信 頼 性 のあることが 確 認 された. 4) 統 計 処 理 SPSS Statistics17.0を 用 い 各 データの 平 均 値 を 求 め 差 の 分 布 の 正 規 性 の 検 定 (Shapiro- Wilk) 対 応 のあるt 検 定 をおこない 危 険 率 5% 未 満 を 有 意 水 準 とした Ⅲ 結 果 マニキュア 使 用 前 後 のPOMS 下 位 尺 度 得 点 ( 平 均 値 標 準 偏 差 t 値 )をTable1に POMS 下 位 尺 度 得 点 の 変 化 をグラフ 化 したものをFigure1に 示 す マニキュアの 塗 抹 前 後 で 混 乱 は9.60か ら7.53と 0.5% 水 準 で 有 意 に 減 少 した Ⅳ 考 察 マニキュア 使 用 後 には POMS 下 位 尺 度 得 点 の 混 乱 で 有 意 に 得 点 が 減 少 した 思 考 力 の 低 下 である 混 乱 の 減 少 は 自 覚 的 な 認 識 思 考 障 害 が 軽 減 したことを 示 している この 結 果 から 部 分 的 ではあるものの マニ キュアの 塗 抹 によりリラックス 状 態 を 導 けたと 考 えられる Cash et al(1989)は 化 粧 と 自 己 評 価 との 関 係 を 検 討 し 化 粧 により 自 己 の 顔 や 全 体 的 な 容 姿 に 対 する 満 足 度 が 上 昇 すること 報 告 してい る 日 本 テレビ 系 列 所 さんの 目 がテン! が 2010 年 9 月 25 日 放 送 ( 第 1052 回 )で ネイル を 特 集 している そのなかで マニキュアの ありなしで 普 段 の 行 動 に 何 か 違 いが 出 るのか を 男 性 によるティッシュ 配 り 実 験 で 検 討 してい る( 監 修 : 平 松 隆 円 ) それによると マニキュアを 塗 抹 した 男 性 の 方 が 塗 抹 していない 男 性 よりも 早 くティッシュ 配 りを 終 え マニキュアを 塗 抹 する 男 性 を 入 れ 替 えて 再 度 実 験 しても 同 じ 結 果 となった ま 178
男 性 による 化 粧 行 動 としてのマニキュア 塗 抹 がもたらす 感 情 状 態 の 変 化 に 関 する 研 究 た マニキュアを 塗 抹 してティッシュを 配 って いる 男 性 の 視 線 をアイカメラで 検 証 すると マ ニキュアを 塗 抹 していない 男 性 に 比 べ ティッ シュ 配 っている 時 必 ずネイルをした 指 が 視 線 の 先 を 通 り 過 ぎていた これは マニキュアの 塗 抹 により 指 先 や 容 姿 全 体 に 対 する 満 足 感 が 上 昇 し 自 信 へと 結 びつ いていたことが 推 測 される このことから 顔 や 髪 に 施 す 化 粧 は 鏡 を 見 な いと 目 に 入 らないものの マニュキアは 鏡 を 通 さず 直 接 的 に 目 につくため 気 分 が 高 揚 し ポ ジティブな 感 情 を 喚 起 したと 推 察 される また Lazarus et al(1980)は ストレス 対 処 過 程 における 日 常 的 な 気 晴 らしとして 昼 寝 やコーヒーブレイクのような 休 養 を 指 摘 してい る このことから マニキュアを 塗 抹 する 時 間 が 休 養 となり 混 乱 が 低 減 したとも 推 測 される Table1 マニキュア 使 用 前 後 の POMS 下 位 尺 度 得 点 の 平 均 値 と 標 準 偏 差 Table1 マニキュア 使 用 前 後 のPOMS 下 位 尺 度 得 点 の 平 均 値 と 標 準 偏 差 BEFORE AFTER M SD M SD t p 緊 張 不 安 8.33 3.90 7.67 5.91 0.61 抑 うつ 落 ち 込 み 6.47 4.26 5.13 4.50 1.10 怒 り 敵 意 5.73 3.90 5.80 5.25-0.06 活 気 8.29 3.95 9.07 5.09-0.52 疲 労 9.53 5.11 8.47 5.88 0.82 混 乱 9.60 3.31 7.53 4.26 2.36 * *p<.05 12.00 10.00 8.00 6.00 4.00 2.00 BEFORE AFTER 0.00 Figure1 マニキュア 使 用 前 後 の POMS 下 位 尺 度 得 点 の 変 化 Figure1 マニキュア 使 用 前 後 の POMS 下 位 尺 度 得 点 の 変 化 マニキュアを 塗 抹 してティッシュを 配 っている 男 性 の 視 線 をアイカメラで 検 証 すると マニキ ュアを 塗 抹 していない 男 性 に 比 べ ティッシュ 配 っている 時 必 ずネイルをした 指 が 視 線 の 先 ジティブな 感 情 を 喚 起 したと 推 察 される また Lazarus et al(1980)は ストレス 179 対 処 過 程 における 日 常 的 な 気 晴 らしとして 昼 寝 や コーヒーブレイクのような 休 養 を 指 摘 している
佛 教 大 学 教 育 学 部 学 会 紀 要 第 10 号 (2011 年 1 月 ) Ⅴ 今 後 の 課 題 平 松 (2009)の 女 性 を 対 象 としたマニキュ アの 塗 抹 による 化 粧 行 動 の 感 情 調 整 作 用 に 関 す る 研 究 では マニユア 使 用 後 で 緊 張 不 安 抑 うつ 落 ち 込 み 怒 り 敵 意 疲 労 混 乱 のPOMS 下 位 尺 度 得 点 が 有 意 に 低 くなり 活 気 のPOMS 下 位 尺 度 得 点 が 有 意 に 高 くな り 6つの 気 分 すべてに 変 化 が 認 められている しかしながら 男 子 学 生 ではマニキュアの 塗 抹 がもたらすPOMS 下 位 尺 度 得 点 の 有 意 な 変 化 を 示 したのは 混 乱 だけであった これについては より 多 様 なサンプルを 対 象 としての 知 見 の 吟 味 が 必 要 であるものの 男 女 で 違 いが 認 められた 理 由 の 一 つとしてマニキュ アの 使 用 経 験 があげられる 平 松 (2009)では マニキュアの 使 用 経 験 の ある 女 子 学 生 が 研 究 協 力 者 であったが 本 研 究 ではマニキュアの 使 用 経 験 のない 男 子 学 生 が 研 究 協 力 者 であった そのため 今 後 は 男 女 それぞれにおいてマ ニキュアの 塗 抹 経 験 の 有 無 とPOMS 下 位 尺 度 得 点 の 変 化 の 交 互 作 用 を 検 討 する 必 要 がある 謝 辞 本 研 究 は 2009 年 度 京 都 大 学 ベンチャー ビ ジネス ラボラトリー 若 手 研 究 費 助 成 ( 研 究 課 題 : 化 粧 がもたらす 感 情 調 整 に 関 する 基 礎 的 研 究 )を 受 けている また 研 究 をおこなうにあたり 関 西 外 国 語 大 学 の 吉 里 光 世 氏 の 協 力 を 得 た 末 筆 ながら 深 く 感 謝 の 意 を 表 す 参 考 文 献 阿 部 恒 之 1998 日 常 生 活 の 快 適 性 の 測 定 山 﨑 勝 男 藤 沢 清 柿 本 昇 治 ( 編 ) 新 生 理 心 理 学 3 北 大 路 書 房 129-132 阿 部 恒 之 2001 スキンケアへの 期 待 の 変 遷 と 心 理 学 的 効 果 高 木 修 ( 監 ) 大 坊 郁 夫 ( 編 ) 化 粧 行 動 の 社 会 心 理 学 北 大 路 書 房,149-157 有 川 順 子 羽 柴 早 百 里 大 城 喜 美 子 川 島 眞 2003 メイクアップがアトピー 性 皮 膚 炎 女 性 患 者 のQOLに 与 える 影 響 について 臨 床 皮 膚 科 浅 井 泉 余 語 優 美 浜 治 世 1992 老 人 性 痴 呆 の 情 動 活 性 化 の 試 み 日 本 心 理 学 会 第 56 回 大 会 発 表 論 文 集 662 浅 井 泉 浜 治 世 1992 老 人 性 痴 呆 の 情 動 活 性 化 の 試 み: 化 粧 を 一 つの 手 段 として 日 本 健 康 心 理 学 会 第 5 回 大 会 発 表 論 文 集 40-41 Cash TF, Dawson K, Davis P, Bowen M, Galumbeck C 1989 Effects of cosmetics use on the physical attractiveness and body image of American college woman, Journal of Social Psychology, 129, 349-355 大 坊 郁 夫 1996 化 粧 心 理 学 の 動 向 高 木 修 ( 監 ) 被 服 と 化 粧 の 社 会 心 理 学 北 大 路 書 房 28-46 浜 治 世 日 比 野 英 子 藤 田 裕 子 1990 化 粧 によ る 情 動 活 性 化 の 試 み 日 本 心 理 学 会 第 54 回 大 会 発 表 論 文 集 714 浜 治 世 浅 井 泉 余 語 真 夫 1991 化 粧 による 情 動 活 性 化 の 試 み 日 本 健 康 心 理 学 会 第 4 回 大 会 発 表 論 文 集 84-85 畑 山 俊 輝 山 田 嘉 明 平 田 忠 丸 山 欣 哉 1986 美 粧 行 為 の 心 理 的 効 果 に 関 する 研 究 :(3) 脈 拍 指 標 の 結 果 とまとめ 日 本 心 理 学 会 第 50 回 大 会 発 表 論 文 集 306 平 松 隆 円 2009 POMSを 用 いたマニキュアによ る 化 粧 行 動 の 感 情 調 整 作 用 に 関 する 研 究 佛 教 大 学 教 育 学 部 学 会 紀 要 8 107-112 伊 波 和 恵 浜 治 世 1997 老 年 期 痴 呆 症 者 におけ る 情 動 活 性 化 の 試 み- 化 粧 を 用 いて- 健 康 心 理 学 研 究 6 29-38 Lazarus RS, Kanner A, Folkman S 1980 Emotions: a cognitive-phenomenological analysis. In R. Plutchik H. Kellerman (eds.)emotion: Theory, Research, and Experience, volume 1: Theories of Emotion, New York, Academic Press, 189-217 Lazarus RS 林 峻 一 郎 ( 訳 ) 1990 ストレスと コーピング/ラザレス 理 論 への 招 待 星 和 書 店 81-108 180
男 性 による 化 粧 行 動 としてのマニキュア 塗 抹 がもたらす 感 情 状 態 の 変 化 に 関 する 研 究 Lazarus RS, Folkman S 1984 Stress, Appraisal, and Coping. New York, Springer Publishing Company 松 井 豊 1993 メイクアップの 社 会 心 理 学 的 効 用 資 生 堂 ビューティーサイエンス 研 究 所 ( 編 ) 化 粧 心 理 学 フレグランスジャーナル 社 144-154 McNair DM, Lorr M, Droppleman LF 1992a Profile of Mood States. San Diego, Educational and Industrial Testing Service McNair DM, Lorr M, Droppleman LF 1992b POMS Manual. Toronto, Multi-Health Systems Inc Parkinson, B & Totterdell, P 1999 Classifing affect-regulation strategies, Cognition and Emotion, 13, 277-303 ポーラ 化 粧 品 本 舗 ポーラ 化 成 工 業 ( 編 ) 1999 あなたのキレイ 応 援 読 本 肌 とこころが 輝 くため に ポーラ 化 粧 品 本 舗 豊 増 功 次 原 田 悟 史 2008 中 高 年 期 女 性 の 精 神 面 に 及 ぼすリラクセーションプログラムを 用 いた ハート 美 人 養 成 講 座 の 効 果 久 留 米 大 学 健 康 スポーツ 科 学 センター 研 究 紀 要 15(1) 27-33 Yamada, Y, Hatayama, T, Hirata, K. Abe, T & Suzuki, Y 1986 A psychological effect of facial estherapy, Tohoku Psychological Folia, 45, 6-16 余 語 真 夫 津 田 兼 六 浜 治 世 鈴 木 ゆかり 互 恵 子 1990 女 性 の 精 神 的 健 康 に 与 える 化 粧 の 効 用 健 康 心 理 学 研 究 3 28-32 余 語 真 夫 2001 適 応 力 としての 化 粧 高 木 修 ( 監 ) 大 坊 郁 夫 ( 編 ) 化 粧 行 動 の 社 会 心 理 学 北 大 路 書 房,123-135 横 山 和 仁 荒 記 俊 一 1994 日 本 版 POMS 検 査 用 紙 金 子 書 房 横 山 和 仁 荒 記 俊 一 1994 日 本 版 POMS 手 引 き, 金 子 書 房 横 山 和 仁 2005 POMS 短 縮 版 手 引 きと 事 例 解 説, 金 子 書 房 Zillmann, D 1988 Mood Management Through Communication Choices, American Behavioral Scientist, 31 (3), 327-340 181
佛 教 大 学 教 育 学 部 学 会 紀 要 第 10 号 (2011 年 1 月 ) 182