長 野 県 知 事 村 井 仁 様 平 成 19 年 (2007 年 )11 月 14 日 長 野 県 本 人 確 認 情 報 保 護 審 議 会 会 長 清 水 勉 上 伊 那 情 報 センター 訪 問 報 告 書 第 1 はじめに 日 本 では 1990 年 代 半 ば 以 降 コンピュータ(パソコン)や 携 帯 電 話 の 普 及 インタ ーネットの 拡 大 などを 背 景 に 情 報 化 社 会 が 本 格 化 した 1994 年 には 高 度 情 報 通 信 社 会 の 構 築 に 向 けた 施 策 を 総 合 的 に 推 進 するための 高 度 情 報 通 信 社 会 推 進 本 部 が 内 閣 に 設 置 された 1999 年 8 月 に 住 基 ネット 法 案 ( 改 正 住 民 基 本 台 帳 法 )が 成 立 した 後 2000 年 には 森 喜 朗 内 閣 の 所 信 表 明 演 説 で e-japan(イー ジャパン) 構 想 が 示 され IT 基 本 法 の 制 定 IT 国 家 戦 略 の 取 りまとめ 高 速 インタ ーネット(ブロードバンド)の 整 備 や 低 廉 化 電 子 政 府 の 早 期 実 現 などが 提 言 された これらは 2000 年 から 2001 年 にかけて 高 度 情 報 通 信 ネットワーク 社 会 形 成 基 本 法 (IT 基 本 法 ) 内 閣 に 置 かれた 高 度 情 報 通 信 ネットワーク 社 会 推 進 戦 略 本 部 (IT 戦 略 本 部 ) e-japan 戦 略 などとして 具 体 化 された e-japan 戦 略 は 高 速 で 安 価 な 世 界 最 高 水 準 のインターネット 網 を5 年 以 内 に 3000 万 世 帯 に 普 及 電 子 商 取 引 の 普 及 電 子 政 府 の 実 現 人 材 育 成 の 強 化 の4つを 重 点 政 策 として 日 本 が5 年 以 内 に 世 界 最 先 端 のIT 国 家 となることを 目 指 す 国 家 戦 略 である 同 戦 略 はその 後 各 年 ごとに 重 点 計 画 や 政 策 パッケージが 示 され 現 在 も 推 進 されている 法 案 成 立 から3 年 の 準 備 期 間 を 経 て 住 基 ネットは 2002 年 8 月 に 第 1 次 稼 働 を 開 始 したが その 直 前 まで 国 民 は 国 からも 自 治 体 からも 住 基 ネットに 関 する 情 報 をほとん ど 与 えられず したがって プライバシー 保 護 上 の 問 題 点 や 自 治 事 務 としての 住 基 ネッ トの 費 用 対 効 果 問 題 などを 意 識 することもなかった 住 基 ネットの 直 接 の 担 い 手 である 市 町 村 の 住 基 ネット 担 当 者 ですら どのようなことが 始 まろうとしているのかをほとん ど 理 解 していなかったのである このような 経 過 を 見 るだけでも 住 基 ネットが 全 国 の 市 町 村 の 希 望 に 応 える 仕 組 みとしてつくられたものではないことは 明 らかである 住 基 ネットの 稼 働 開 始 に 懸 念 の 表 明 をした 自 治 体 が 全 国 に 現 れ 住 基 ネットへの 接 続 をしな い あるいは 中 止 する 自 治 体 も 現 れた 1
長 野 県 では 本 人 確 認 情 報 保 護 審 議 会 において 住 基 ネットの 安 全 性 の 検 証 を 行 うなど 個 人 情 報 の 保 護 に 強 い 問 題 意 識 を 持 ち 全 国 の 自 治 体 でも 例 を 見 ない 先 進 的 な 取 り 組 み を 行 ってきた 第 2 自 治 体 訪 問 1 自 治 体 の 実 情 調 査 第 2 期 審 議 会 は 昨 年 2 月 7 日 から8 日 にかけて 県 内 の4 自 治 体 (1 市 2 町 1 村 )の 現 場 調 査 を 実 施 した 調 査 結 果 についてはすでに 第 2 回 審 議 会 において 報 告 審 議 しているが その 後 の 自 治 体 アンケート 調 査 さらに 今 回 始 めて 報 告 する 上 伊 那 情 報 センター 訪 問 に 連 なる 出 発 点 となるものなので 改 めて 訪 問 した 自 治 体 の 実 情 につ いて 整 理 することにした 2 運 用 状 況 市 町 村 事 務 において 効 率 化 が 図 られた 点 は 転 入 通 知 が 従 来 のはがきによる 確 認 からコンピュータ ネットワークによる 確 認 になったことで 確 認 作 業 が 速 やかにで き 楽 になった という 一 点 にほぼ 尽 きる 他 方 住 基 ネットの 導 入 維 持 管 理 は 相 当 の 費 用 を 要 するとともに 担 当 職 員 数 は 市 町 村 規 模 の 大 小 に 関 わらず 一 定 数 必 要 で あり 転 入 件 数 の 少 ない 小 規 模 自 治 体 になるほど 費 用 対 効 果 の 点 から 効 率 化 の 実 感 は 希 薄 である 住 基 カードの 発 行 枚 数 はどの 自 治 体 でも 極 めて 少 ない 住 基 カードの 活 用 法 として 住 民 票 や 印 鑑 証 明 書 を 自 動 交 付 機 によって 発 行 する 際 に 本 人 確 認 の 方 法 として 住 基 カードを 使 用 している 自 治 体 では 住 基 カードの 発 行 数 が 伸 びている しかし このよ うなサービスは 全 国 統 一 基 準 で 作 られている 住 基 カードによる 必 要 はない むしろ 住 基 カードに 限 定 してしまうと 外 国 人 は 在 留 資 格 がある 者 であっても 自 動 交 付 機 の 利 便 性 を 受 けられない 住 民 の 福 祉 や 利 便 という 観 点 からすると 自 治 体 が 独 自 のカ ード(IC カードである 必 要 もない )を 作 る 方 が 実 際 的 である 住 基 カードでなければできない 手 続 である 付 記 転 入 転 出 届 出 制 度 は 総 務 省 が 住 基 ネットの 住 民 メリットとしているものだが 自 治 体 実 務 からすると 却 って 引 越 しに 伴 う 諸 手 続 が 自 治 体 にとっても 住 民 にとっても 面 倒 になるという 実 情 があることから 利 用 実 績 はほとんどない このような 費 用 対 効 果 のバランスを 失 している 状 態 で 住 基 ネット 関 連 機 器 の 更 新 期 を 迎 えるが どの 自 治 体 においても 住 基 ネットの 有 効 利 用 に 苦 慮 している 3 自 治 事 務 としての 政 策 的 位 置 づけ 住 基 ネットは 自 治 事 務 ( 地 方 自 治 法 第 2 条 第 8 項 )である したがって 市 町 村 では 行 政 事 務 における 住 基 ネットの 位 置 づけを 明 確 にし その 活 用 法 を 積 極 的 に 検 2
討 し 実 行 してゆくべきものである ところが 訪 問 したいずれの 自 治 体 でも 自 治 体 としての 住 基 ネットに 対 する 積 極 的 な 政 策 的 な 位 置 づけや 目 標 などはなく 議 会 においても 住 基 ネットに 関 する 議 論 はほ とんど 行 われていなかった また 住 基 カードの 発 行 枚 数 がどの 自 治 体 も 極 めて 少 なく 住 基 ネットに 対 する 住 民 からの 意 見 や 要 望 もなかった 4 セキュリティ 対 策 セキュリティ 対 策 とはPDCAサイクルが 基 本 であり 具 体 的 にはセキュリティポ リシー 等 ルールを 定 め 内 部 の 人 間 に 周 知 徹 底 し 運 用 の 課 程 でルールが 徹 底 されて いること そして 監 査 を 行 い 監 査 の 結 果 改 善 すべきところがあれば 見 直 しを 行 ってい くことである 現 状 を 広 範 に 調 査 しその 原 因 を 明 確 にした 上 で 対 策 を 協 議 し 既 存 ネ ットワークも 含 めてセキュリティ 管 理 の 仕 組 みを 改 めて 構 築 する 必 要 がある しかるに 各 自 治 体 とも 共 通 してセキュリティポリシー 文 書 は 定 められているもの の 具 体 的 な 手 順 書 の 整 備 や 運 用 要 領 に 対 する 職 員 教 育 が 不 十 分 である 決 定 的 に 監 査 というものが 欠 落 しており 組 織 としてのセキュリティ 管 理 の 仕 組 みが 機 能 してい ないのではないかと 思 われる 5 共 同 利 用 の 可 能 性 と 課 題 住 基 ネットは 自 治 体 規 模 の 大 小 に 関 わらず 同 じようにシステムを 構 築 運 用 してい かなくてはいけないものである 現 地 調 査 を 行 った 一 つの 自 治 体 は 広 域 連 合 による 共 同 利 用 を 行 っていたが 費 用 対 効 果 の 点 から 見 ると 複 数 の 小 規 模 自 治 体 が 共 同 利 用 す る 手 法 は 効 率 的 であるのではないかと 考 えられる しかし 住 基 ネットの 管 理 運 用 を 巡 る 各 自 治 体 と 広 域 連 合 との 法 的 責 任 関 係 が 不 明 確 である 例 えば 広 域 連 合 に 起 因 して 個 人 情 報 漏 洩 事 故 が 発 生 した 場 合 の 説 明 責 任 が 広 域 連 合 にあるのか 自 治 体 にあるのか セキュリティ 対 策 の 改 善 事 故 防 止 にどち らが 責 任 を 負 うのかがはっきりしない また セキュリティポリシー 文 書 が 広 域 連 合 と 自 治 体 のそれぞれで 作 成 し 併 用 されている 状 況 にあるため 両 者 の 内 容 と 運 用 上 の 整 合 がどうとられているのか 不 透 明 な 面 がある 第 3 自 治 体 アンケート 調 査 結 果 本 人 確 認 情 報 保 護 審 議 会 では 県 内 の 市 町 村 における 住 基 ネットの 稼 働 状 況 利 用 実 態 について 調 査 し 昨 年 5 月 住 基 ネットに 関 する 行 政 事 務 の 効 率 化 と 行 政 サービス の 向 上 についての 自 治 体 アンケート 調 査 結 果 報 告 書 (2006 年 5 月 )として 公 表 した 要 約 すれば 県 内 の 自 治 体 では (1) 住 基 ネットは 行 政 事 務 の 効 率 化 職 員 や 予 算 の 削 減 にあまり 役 立 っていない(3 分 の 2 が 効 率 化 していない どうちらともいえ 3
ない と 回 答 ) (2) 住 基 ネットは 住 民 の 利 便 性 を 大 きく 向 上 させていない( 半 数 が 変 わらない と 回 答 ) (3) 住 基 ネットは 費 用 対 効 果 のバランスを 欠 いている(82 自 治 体 中 2 自 治 体 のみが 適 正 なバランス 状 態 にある と 回 答 ) 住 基 ネットは 自 治 体 にとっても 地 域 住 民 にとってもほとんど 役 に 立 たない 費 用 だ けはかかる お 荷 物 になっている ある 市 町 村 の 回 答 にあった 住 基 ネットはだれの ためのネットワークなのか という 疑 問 に どの 自 治 体 も 答 えられないまま 法 律 でや ることになっているからやっているという 状 況 がある 第 4 上 伊 那 情 報 センター 訪 問 1 問 題 提 起 審 議 会 ではこれまで 県 内 市 町 村 について 住 基 ネットの 稼 働 ないし 利 用 実 態 につい て 調 査 してきたが 個 々の 市 町 村 において 住 基 ネットの 導 入 によってそれまで 以 上 に 行 政 事 務 が 効 率 化 し 職 員 の 減 少 や 費 用 の 削 減 に 役 立 ったという 結 果 が 生 じていな いことを 確 認 した 自 治 体 財 政 が 逼 迫 し かつ 今 後 さらに 厳 しくなるであろうことを 前 提 に 考 えると 市 町 村 が 多 額 の 経 費 と 人 材 を 投 入 して 住 基 ネットの 稼 働 を 継 続 することを 意 義 あら しめるためには ひとつの 自 治 体 を 超 えた 管 理 ないし 利 用 という 方 向 性 を 考 えなけれ ばならない 第 1 期 審 議 会 が 行 った 提 案 はまさにこのような 視 点 に 立 ったものであっ た そこで 審 査 会 では 平 成 18 年 (2006 年 )12 月 25 日 国 内 でも 数 少 ない 県 内 で は 唯 一 の 住 基 ネットを 複 数 の 自 治 体 で 共 同 管 理 している 上 伊 那 情 報 センターを 訪 問 し その 実 績 ないし 実 情 や 問 題 点 について 伺 うことにした 2 上 伊 那 情 報 センター (1) 広 域 連 合 上 伊 那 情 報 センターは 上 伊 那 広 域 連 合 規 約 に 基 づいて 設 置 されている 広 域 連 合 は 地 方 自 治 法 上 の 制 度 であり 広 域 行 政 の 推 進 を 図 り 地 方 分 権 の 推 進 に 資 するシステムとして 制 度 化 されたものである すなわち 地 方 自 治 法 284 条 3 項 は ( 市 町 村 )は その 事 務 で 広 域 にわたり 処 理 することが 適 当 であると 認 め るものに 関 し その 協 議 により 規 約 を 定 め 都 道 府 県 知 事 の 許 可 を 得 て 広 域 連 合 を 設 けることができると 規 定 している 広 域 連 合 は 広 域 的 な 政 策 や 行 政 需 要 へ の 対 応 という 面 において 組 織 する 市 町 村 から 独 立 して 機 能 を 発 揮 し 得 るような 制 度 とされている 具 体 的 には 1 広 域 連 合 の 側 から 規 約 の 変 更 を 広 域 連 合 組 織 市 町 村 に 要 請 するこ 4
とができる 2 広 域 計 画 の 実 施 上 支 障 がある 場 合 には 広 域 連 合 組 織 市 町 村 に 対 し て 改 善 策 等 の 勧 告 ができる 3 広 域 連 合 組 織 市 町 村 から 拠 出 される 広 域 連 合 への 分 賦 金 の 金 額 は 客 観 的 な 指 標 に 基 づくものとし 財 政 面 での 独 立 性 を 担 保 する など である (2) 上 伊 那 広 域 連 合 上 伊 那 広 域 連 合 は 伊 那 市 駒 ヶ 根 市 辰 野 町 箕 輪 町 飯 島 町 南 箕 輪 村 中 川 村 宮 田 村 の2 市 3 町 3 村 で 構 成 されている 上 伊 那 広 域 連 合 規 約 第 4 条 (11)で 上 伊 那 情 報 センターの 設 置 管 理 及 び 運 営 に 関 する 事 務 を 規 定 している これは 住 基 ネットの 管 理 運 用 が 住 民 基 本 台 帳 法 に 規 定 された 市 町 村 の 自 治 事 務 ( 地 方 自 治 法 2 条 8 項 )であり かつ 個 々の 市 町 村 が 単 独 で 管 理 運 用 するには 人 材 面 でも 財 政 面 でも 難 しい 面 があることなどから 広 域 にわたり 処 理 することが 適 当 であると 認 めるもの に 該 当 するという 解 釈 を したものと 解 される (3) 管 理 と 端 末 利 用 上 伊 那 広 域 連 合 を 構 成 する8 市 町 村 では 住 基 ネットの 管 理 と 端 末 での 利 用 とを 分 け 前 者 を 上 伊 那 広 域 連 合 の 上 伊 那 情 報 センターで 行 い 住 基 ネットに 関 する 住 民 対 応 は 各 自 治 体 の 市 民 課 住 民 課 窓 口 で 行 っている 住 基 ネットの 管 理 は 上 伊 那 広 域 連 合 の 事 務 事 業 のひとつという 位 置 づけがなされている (4) 費 用 負 担 上 伊 那 広 域 連 合 規 約 第 17 条 第 2 項 別 表 によれば 上 伊 那 情 報 センターに 関 す る 関 係 市 町 村 の 負 担 金 額 の 負 担 割 合 は 建 設 費 については 伊 那 市 45% 他 の 市 町 村 55%( 均 等 割 20% 人 口 割 80%) 管 理 費 については 利 用 件 数 割 100% としている なお 利 用 件 数 割 の 算 定 基 礎 は 予 算 の 属 する 年 度 の 前 年 度 の1 月 1 日 から 当 該 年 度 の 12 月 31 日 までの 間 における 関 係 市 町 村 の 利 用 件 数 による ( 同 規 約 備 考 5) 効 率 的 な 管 理 という 点 では 個 々の 市 町 村 が 対 応 するよりも 財 政 面 でも 人 材 面 でもより 優 れているといえる (5) 責 任 領 域 の 明 確 化 の 必 要 広 域 連 合 は 法 律 的 には 個 々の 市 町 村 とは 別 の 法 人 格 である そして 住 基 ネッ トについては 住 基 ネットのCSの 管 理 を 広 域 連 合 で 行 い その 利 用 端 末 は 各 市 町 村 という 仕 組 みにしてある そうすると どこでどのような 問 題 が 起 こったかによ って だれがどのような 責 任 を 負 うかという 点 について 違 いが 生 じてくる したが って 両 者 の 責 任 領 域 と 責 任 内 容 や 問 題 が 発 生 した 場 合 の 対 処 法 について 規 程 で 明 確 にしておく 必 要 がある 5
住 基 ネットの 管 理 に 関 してトラブルが 生 じ 住 民 等 に 被 害 が 生 じてしまった 場 合 広 域 連 合 としてどのような 責 任 を 負 うのか 加 盟 市 町 村 としてどのような 責 任 を 負 うのかについては 訪 問 時 当 時 までには 検 討 はなされていなかった 住 基 ネット 稼 働 以 前 においてすでにデータの 共 同 管 理 をしてきた 実 績 からすると 文 書 化 しなく ても 黙 示 的 に 了 解 されているのかもしれない しかし 従 来 上 伊 那 情 報 センターで 扱 っていたデータとは 異 なり 住 民 票 コー ドという 秘 匿 性 の 高 い 個 人 データ( 住 基 法 42 条 は 秘 密 漏 えい 違 反 を2 年 以 下 の 懲 役 又 は 百 万 円 以 下 の 罰 金 を 規 定 しており この 罰 則 規 定 は 国 家 公 務 員 法 地 方 公 務 員 法 の 守 秘 義 務 違 反 よりも 遥 かに 重 い )を 含 んでいることなどからすると 明 文 化 しておくべきである 愛 媛 県 愛 南 町 等 における 住 民 情 報 ( 住 民 票 コードを 含 む )の 大 量 流 出 事 件 では 市 町 村 で 把 握 していない 外 部 の 委 託 業 者 の 下 請 のところで 住 民 の 個 人 情 報 が 大 量 流 出 し そのことを 愛 南 町 等 では 速 やかに 事 実 を 把 握 することすらできていなかっ た センター 方 式 で 管 理 していたとしても 本 人 確 認 情 報 の 処 理 について 外 部 に 委 託 することがあるならば 同 様 の 事 件 が 発 生 しないという 保 障 はないし 加 盟 市 町 村 の 立 場 において 住 民 に 対 する 説 明 責 任 を 免 れるということはない したがって 住 民 等 に 対 する 損 害 賠 償 の 問 題 だけでなく 住 民 に 対 する 説 明 責 任 の 果 たし 方 について 上 伊 那 情 報 センターと 加 盟 市 町 村 との 連 携 のあり 方 も 検 討 し ておく 必 要 がある さらに 上 伊 那 広 域 連 合 最 適 化 計 画 の 概 要 ( 平 成 19 年 2 月 23 日 )によれば 行 政 改 革 の 必 要 性 ( 職 員 減 予 算 減 )ほかの 理 由 から 基 幹 系 システムの 最 適 化 とし て 今 後 外 部 調 達 外 部 化 を 進 めることになり 専 門 業 務 の 外 部 化 により 作 業 効 率 を 上 げ 行 政 運 営 のトータルコストを 削 減 するとのことである これについては 地 域 における 雇 用 機 会 創 出 の 可 能 性 というプラス 面 も 考 えられるが 同 時 に 第 三 者 が 組 織 内 部 に 入 ってきてデータ 管 理 という 重 要 な 役 割 を 直 接 担 うことになるだ けに その 者 (の 行 動 )を 実 効 的 に 適 正 に 管 理 することが 必 要 不 可 欠 となる 3 セキュリティ 乃 至 技 術 上 の 問 題 (1) 個 別 自 治 体 のワークフロー 統 合 に 関 する 問 題 上 伊 那 情 報 センターでは 従 来 参 加 自 治 体 が 電 算 関 連 業 務 を 統 合 実 施 してきた という 経 緯 がある すなわち 昭 和 50 年 代 に 税 金 の 計 算 を 統 合 的 に 行 うという 作 業 から 始 まって 徐 々に 電 算 関 連 業 務 の 拡 張 を 行 っているため 比 較 的 にスムーズに 電 算 関 連 業 務 の 共 同 化 拡 張 を 行 うことが 可 能 だった しかし そのような 過 程 に おいてさえも 自 治 体 間 で 統 一 されていない 業 務 プロセス ワークフローを 共 同 電 6
算 化 する 際 に 自 治 体 間 で 相 当 な 折 衝 と 作 業 があったとのことである 上 伊 那 情 報 センターで 住 基 ネットの 管 理 を 共 同 で 行 うことは 自 治 体 事 務 の 電 算 化 の 初 期 段 階 から 統 合 してきたという 条 件 が 大 きく 影 響 している 現 状 は 住 基 ネットはすでに 各 自 治 体 で 運 用 が 開 始 されて 数 年 が 経 過 している 状 況 であり その 運 用 に 関 しても 前 回 のフィールド 調 査 の 結 果 を 見 ると 自 治 体 規 模 の 差 異 地 域 固 有 の 事 情 で 異 なる 業 務 フロー ワークフローが 採 用 されている 可 能 性 が 高 い 住 基 ネット 業 務 だけの 統 合 では 業 務 の 集 約 メリットが 低 い また 既 に 運 用 が 開 始 されて 一 定 の 時 間 が 経 過 したシステムのワークフローを 統 合 するためには 相 当 高 額 なコストがかかることが 想 定 され 財 政 が 逼 迫 している 現 在 の 多 くの 市 町 村 に とっては 実 行 がきわめて 難 しい 業 務 統 合 時 のコストパフォーマンスについては 個 別 ケースに 応 じて 検 討 を 進 めた 上 でその 合 理 性 を 判 断 すべきだが 今 回 のヒアリングから 業 務 の 統 合 については ほぼ 同 じワークフローの 業 務 を 単 純 にシステム 統 合 するという 当 初 の 想 定 より 高 い コストがかかることが 考 えられる (2) 技 術 担 当 人 材 に 関 する 問 題 上 伊 那 情 報 センターの 人 材 は 各 自 治 体 より 派 遣 されてくる 人 材 により 構 成 され ている その 人 材 は 上 伊 那 情 報 センターが 要 望 するスキルに 応 じて 派 遣 されてくる ものではなく 各 自 治 体 の 事 情 により 派 遣 されてくる 派 遣 期 間 を 長 期 化 すること で 一 定 程 度 スキルが 向 上 するが 派 遣 期 間 が 過 ぎれば 派 遣 元 の 市 町 村 に 戻 ってゆ き 新 たな 人 材 が 派 遣 されてくる このため 上 伊 那 情 報 センターに 新 任 の 担 当 者 が 着 任 した 場 合 人 材 育 成 やノウハウの 継 承 等 に 時 間 を 要 するとともに 教 育 コス トがかかり 業 務 が 軌 道 に 乗 るまでに 時 間 がかかる 市 町 村 からの 人 材 の 派 遣 にについて 上 伊 那 情 報 センター 側 に 人 選 の 権 限 が 与 えら れていないため 技 術 を 担 当 する 人 材 のマネジメントに 難 しさが 生 じており これ が 運 用 において 負 担 となっている (3) その 他 運 用 に 関 する 諸 問 題 情 報 システムの 設 備 は 物 理 的 に 区 画 された 部 屋 に 設 置 されており また 住 基 ネッ トや 総 合 行 政 情 報 ネットワークの 設 備 については よりセキュリティレベルの 高 い 物 理 的 に 区 画 されたエリアに 設 置 して 運 用 されており その 点 については 特 段 の 問 題 は 認 められなかった 一 方 建 物 の 入 り 口 に 当 該 建 物 が 情 報 センター であることが 分 かる 表 示 が 7
なされている 点 靴 箱 の 氏 名 表 示 により 職 員 の 氏 名 が 分 かるようになっている 点 に ついては この 情 報 センターの 重 要 性 を 鑑 みて 改 善 する 点 があるように 思 われる 4 自 治 体 ( 職 員 )の 問 題 上 伊 那 情 報 センターに 住 基 ネットの 管 理 業 務 を 委 託 している 自 治 体 の 住 基 ネット 担 当 職 員 は 住 基 ネットのシステム 運 用 に 関 する 知 識 に 乏 しい 住 基 ネットに 関 わる 市 町 村 の 職 員 は 原 則 として 情 報 政 策 担 当 職 員 及 び 住 民 基 本 台 帳 事 務 担 当 職 員 ( 以 下 役 場 職 員 という )である しかし 外 部 の 共 同 情 報 センターで 住 基 ネットの 共 同 管 理 を 行 っている 場 合 ( 以 下 センター 方 式 という )と 住 基 ネット 管 理 業 務 を 自 庁 で 行 っている 場 合 ( 以 下 自 庁 方 式 という )では 役 場 職 員 の 住 基 ネットに 関 する 認 識 は 異 なる 自 庁 方 式 では 基 本 的 に 情 報 セキュリティ 対 策 や 日 常 のデータ 保 守 作 業 を 役 場 職 員 が 行 うことが 多 い セキュリティ 管 理 体 制 は 基 本 的 には24 時 間 365 日 体 制 であり バックアップ 作 業 などのデータ 保 守 作 業 は 毎 日 の 業 務 である 更 に 住 基 ネット 保 守 業 務 を 外 部 委 託 する 場 合 具 体 的 な 委 託 先 の 選 定 や 契 約 事 務 から 完 了 検 査 などの 実 務 を 行 うのは 役 場 職 員 であるから 住 基 ネットに 対 する 危 機 管 理 意 識 はその 役 割 ととも に 必 然 的 に 大 きくなる 上 伊 那 広 域 連 合 構 成 市 町 村 のようなセンター 方 式 では サーバ 本 体 のデータ 保 守 作 業 などの 管 理 業 務 やセキュリティ 管 理 体 制 は 上 伊 那 情 報 センター 職 員 ( 以 下 センタ ー 職 員 という )によって 担 われることになるので センター 方 式 における 役 場 職 員 の 主 な 業 務 は 住 基 ネット 端 末 の 管 理 操 作 のみということになる 広 域 連 合 と 構 成 市 町 村 の 関 係 は 規 約 に 基 づく 共 同 処 理 だから 契 約 という 行 為 も 発 生 しない 職 員 の 危 機 管 理 意 識 は 自 らが 受 け 持 っている 業 務 の 責 任 範 囲 において 持 ち 得 るわけであるか ら 自 庁 方 式 に 比 べセンター 方 式 の 役 場 職 員 の 危 機 管 理 意 識 は 小 さいということにな る 決 してセンター 方 式 の 役 場 職 員 の 意 識 が 低 いとか 責 任 感 が 少 ないということでは なく 受 け 持 っている 責 任 の 範 囲 が 狭 いからでありそれは 必 然 といえる それまで 無 かった 住 基 ネットが 後 から 住 民 基 本 台 帳 事 務 に 付 け 加 えられ 住 基 ネッ ト 管 理 業 務 に 大 きな 労 力 を 費 やすこととなったが センター 職 員 が 住 基 ネットの 管 理 業 務 の 多 くを 受 け 持 つセンター 方 式 では 役 場 職 員 は 戸 籍 事 務 や 住 民 基 本 台 帳 事 務 と いった 本 来 の 業 務 に 専 念 できることとなる 窓 口 サービスは 充 実 し 住 民 にとって 大 きなメリットといえるだろう しかし 一 方 で センター 方 式 の 役 場 職 員 は 住 基 ネットのシステム 運 用 に 関 する 知 識 が 乏 しいという 傾 向 も 発 生 する 住 基 ネットに 関 する 第 一 義 的 な 責 任 が 市 町 村 にある ことを 考 えると 何 か 問 題 が 起 こったときに 役 場 職 員 が 情 報 センターの 責 任 範 囲 も 含 8
めて 住 民 にしっかり 説 明 できる 体 制 を 整 えておく 必 要 がある 5 過 失 犯 の 処 罰 化 について 上 伊 那 情 報 センターのようなところでも 必 要 な 職 員 を 安 定 的 に 確 保 できなくなっ たり 予 算 上 の 効 率 化 の 必 要 から 職 員 の 削 減 が 現 実 化 して 来 ており 管 理 業 務 の 委 託 化 の 問 題 が 生 じている 総 務 省 では 上 記 愛 南 町 等 における 住 民 情 報 大 量 流 出 事 件 をきっかけに 委 託 業 者 に 対 する 過 失 犯 処 罰 規 定 の 設 置 を 検 討 しているとのことであるが 過 失 = 注 意 義 務 違 反 の 内 容 は 具 体 的 に 条 文 に 書 かれているわけではないので 処 罰 範 囲 がどこまで 広 がるかが 委 託 業 者 側 にはわからず 業 務 を 引 き 受 けることについて 萎 縮 させるおそれ がある むしろ 契 約 による 責 任 関 係 を 明 確 にすることと 契 約 内 容 どおりに 実 行 されてい るかどうかのチェックを 実 行 することこそを 自 治 体 は 優 先 させるべきである 犯 罪 化 を 進 めることは そこで 扱 っている 情 報 がすべて 捜 査 機 関 に 提 供 され いつ 返 却 されるか 保 障 がないことや 提 供 された 情 報 が 捜 査 終 了 時 に 確 実 に 抹 消 されるこ とをどのようにして 確 認 するかなど 難 しい 問 題 がある そのことをどのように 評 価 するかということも 考 えておく 必 要 がある 第 5 まとめ 住 基 ネットの 管 理 運 用 は 上 伊 那 情 報 センターのように 複 数 の 自 治 体 が 共 同 で 管 理 運 用 する 仕 組 みにしていても コスト 面 管 理 運 用 の 人 材 面 などに 難 しい 問 題 を 抱 えてい る 県 や 各 市 町 村 が 住 基 ネットの 運 用 を 継 続 し 利 用 を 拡 大 するという 方 向 性 を 選 ぶので あれば 住 民 にとって 住 基 ネットが 意 味 のある 存 在 にすべきであるし 住 民 に 対 して 万 全 の 責 任 を 果 たし 続 ける 覚 悟 と 実 行 力 が 必 要 である 9