大規模地震への対策 -マンションにおける防災対策の重要性-

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送 信 局 を 電 気 通 信 事 業 者 に 貸 し 付 けるとともに 電 気 通 信 事 業 者 とあらかじめ 契 約 等 を 締 結 する 必 要 があること なお 既 に 電 気 通 信 事 業 者 において 送 信 局 を 整 備 している 地 域 においては 当 該 設 備 の 整 備

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6 構 造 等 コンクリートブロック 造 平 屋 建 て4 戸 長 屋 16 棟 64 戸 建 築 年 1 戸 当 床 面 積 棟 数 住 戸 改 善 後 床 面 積 昭 和 42 年 36.00m m2 昭 和 43 年 36.50m m2 昭 和 44 年 36.

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事 業 概 要 利 用 時 間 休 館 日 使 用 方 法 使 用 料 施 設 を 取 り 巻 く 状 況 や 課 題 < 松 山 駅 前 駐 輪 場 > JR 松 山 駅 を 利 用 する 人 の 自 転 車 原 付 を 収 容 する 施 設 として 設 置 され 有 料 駐 輪 場 の 利 用

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(4) 運 転 する 学 校 職 員 が 交 通 事 故 を 起 こし 若 しくは 交 通 法 規 に 違 反 したことにより 刑 法 ( 明 治 40 年 法 律 第 45 号 ) 若 しくは 道 路 交 通 法 に 基 づく 刑 罰 を 科 せられてから1 年 を 経 過 していない 場 合 同

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佐渡市都市計画区域の見直し

大 田 区 保 育 従 事 職 員 宿 舎 借 り 上 げ 支 援 事 業 Q&A 目 次 Ⅰ 補 助 事 業 全 般 について P3~P4 Ⅱ 補 助 対 象 施 設 について P5 Ⅲ 補 助 対 象 職 員 について P6~P10 Ⅳ 補 助 対 象 経 費 について P11~P13 2

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主要生活道路について

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川崎市木造住宅耐震診断助成金交付要綱

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

17 外 国 人 看 護 師 候 補 者 就 労 研 修 支 援 18 看 護 職 員 の 就 労 環 境 改 善 運 動 推 進 特 別 20 歯 科 医 療 安 全 管 理 体 制 推 進 特 別 21 在 宅 歯 科 医 療 連 携 室 整 備 22 地 域 災 害 拠 点 病


背 景 と 目 的 - 東 日 本 震 災 では の 上 部 構 造 の 流 出 が 多 発 - は 復 旧 に 時 間 を 要 する 一 方 交 通 機 能 の 回 復 は 待 ったなし 活 動 項 目 数 活 動 項 目 数 ( 全 体 ) 全 体 は24hで ピー

安 芸 太 田 町 学 校 適 正 配 置 基 本 方 針 の 一 部 修 正 について 1 議 会 学 校 適 正 配 置 調 査 特 別 委 員 会 調 査 報 告 書 について 安 芸 太 田 町 教 育 委 員 会 が 平 成 25 年 10 月 30 日 に 決 定 した 安 芸 太 田

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住宅税制について

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Microsoft Word - H27概要版

損 益 計 算 書 自. 平 成 26 年 4 月 1 日 至. 平 成 27 年 3 月 31 日 科 目 内 訳 金 額 千 円 千 円 営 業 収 益 6,167,402 委 託 者 報 酬 4,328,295 運 用 受 託 報 酬 1,839,106 営 業 費 用 3,911,389 一

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総合評価点算定基準(簡易型建築・電気・管工事)

給 与 所 得 控 除 控 除 額 の 計 算 については 次 のとおりです 給 与 等 の 収 入 金 額 給 与 所 得 控 除 額 180 万 円 以 下 の 場 合 180 万 円 を 超 え 360 万 円 以 下 の 場 合 360 万 円 を 超 え 660 万 円 以 下 の 場 合


1 はじめに 計 画 の 目 的 国 は 平 成 18 年 度 に 住 生 活 基 本 法 を 制 定 し 住 まいに 関 する 基 本 的 な 計 画 となる 住 生 活 基 本 計 画 ( 全 国 計 画 )を 策 定 し 住 宅 セーフティネットの 確 保 や 住 生 活 の 質 の 向 上

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2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 役 名 法 人 の 長 理 事 理 事 ( 非 常 勤 ) 平 成 25 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 16,936 10,654 4,36

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長崎市民間建築物耐震化推進事業の概要

入 札 参 加 者 は 入 札 の 執 行 完 了 に 至 るまではいつでも 入 札 を 辞 退 することができ これを 理 由 として 以 降 の 指 名 等 において 不 利 益 な 取 扱 いを 受 けることはない 12 入 札 保 証 金 免 除 13 契 約 保 証 金 免 除 14 入

1 書 誌 作 成 機 能 (NACSIS-CAT)の 軽 量 化 合 理 化 電 子 情 報 資 源 への 適 切 な 対 応 のための 資 源 ( 人 的 資 源,システム 資 源, 経 費 を 含 む) の 確 保 のために, 書 誌 作 成 と 書 誌 管 理 作 業 の 軽 量 化 を 図

弁護士報酬規定(抜粋)

Transcription:

NRI Public Management Review 大 規 模 地 震 への 対 策 -マンションにおける 防 災 対 策 の 重 要 性 - 野 村 総 合 研 究 所 社 会 システムコンサルティング 部 上 級 コンサルタント 大 沼 健 太 郎 ICT メディア 産 業 コンサルティング 部 副 主 任 コンサルタント 岸 浩 稔 1. 都 市 部 での 大 規 模 地 震 はわが 国 にとって 最 大 級 のリスク スの 地 震 を 主 な 対 象 としており 今 後 30 年 間 に 70%の 確 率 で 発 生 すると 予 測 されてい る 首 都 直 下 地 震 による 被 害 を 最 小 限 にとど 平 成 25 年 12 月 に 首 都 直 下 地 震 の 被 害 想 定 が 中 央 防 災 会 議 首 都 直 下 地 震 対 策 検 討 ワー キンググループから 公 表 された 最 も 被 害 の 大 きいケースでは 首 都 圏 の 広 範 囲 で 震 度 7 の 揺 れが 発 生 し 死 者 最 大 約 2.3 万 人 を 含 む 甚 大 な 被 害 となる その 経 済 的 被 害 額 は 約 95 兆 円 にのぼる( 図 表 1 参 照 ) め 早 期 に 復 旧 復 興 を 進 めることができる 環 境 整 備 に 向 けて 官 民 を 挙 げて 取 り 組 むこと は わが 国 にとって 喫 緊 の 課 題 である 本 稿 では 都 市 部 での 大 規 模 な 地 震 災 害 の 対 策 としてマンション *1 に 着 目 し マンショ ンにおける 防 災 の 必 要 性 や 進 め 方 について 検 討 する 同 想 定 は 首 都 直 下 のマグニチュード 7 クラ 図 表 1 首 都 直 下 地 震 の 被 害 想 定 および 都 心 南 部 首 都 直 下 地 震 の 震 度 分 布 図 1. 地 震 の 揺 れによる 被 害 揺 れによる 全 壊 家 屋 約 17.5 万 棟 建 物 倒 壊 による 死 者 最 大 約 1.1 万 人 揺 れによる 建 物 被 害 に 最 大 約 7.2 万 人 伴 う 要 救 助 者 震 度 分 布 ( 都 心 南 部 直 下 地 震 ) 2. 市 街 地 火 災 の 多 発 と 延 焼 最 大 約 41.2 万 棟 震 度 2 以 下 焼 失 建 物 倒 壊 等 と 合 わせ 最 大 約 61 万 棟 震 度 3 最 大 約 1.6 万 人 震 度 4 死 者 建 物 倒 壊 等 と 合 わせ 最 大 約 2.3 万 人 震 度 5 震 度 5 強 3.インフラ ライフライン 等 の 被 害 震 度 6 発 災 直 後 は 都 区 部 の 約 5 割 が 停 電 震 度 6 強 電 力 供 給 能 力 が5 割 程 度 に 落 ち 1 週 間 以 上 不 安 定 な 状 況 が 続 く 震 度 7 固 定 電 話 携 帯 電 話 とも 9 割 の 通 話 規 制 が1 日 以 上 継 続 通 信 メールは 遅 配 が 生 じる 可 能 性 携 帯 基 地 局 の 非 常 用 電 源 が 切 れると 停 波 上 下 水 道 都 区 部 で 約 5 割 が 断 水 約 1 割 で 下 水 道 の 使 用 ができない 地 下 鉄 は1 週 間 私 鉄 在 来 線 は1か 月 程 度 運 行 停 止 する 可 能 性 交 通 主 要 路 線 の 道 路 啓 開 には 少 なくとも1~2 日 を 要 し その 後 緊 急 交 通 路 として 使 用 都 区 部 の 一 般 道 はガレキによる 狭 小 放 置 車 両 等 の 発 生 で 交 通 麻 痺 が 発 生 出 所 ) 内 閣 府 首 都 直 下 地 震 対 策 検 討 ワーキンググループ 最 終 報 告 ( 平 成 25 年 12 月 )より NRI 作 成 *1 文 中 に 特 に 言 及 がない 場 合 本 稿 で マンション とは 分 譲 賃 貸 の 双 方 を 合 わせた 集 合 住 宅 を 指 す NRI パブリックマネジメントレビュー September 2014 vol.134-1-

2.マンションにおける 防 災 対 策 がなぜ 重 要 か 本 稿 において マンションに 着 目 する 理 由 は 以 下 の 3 点 である 1) 理 由 1: 都 市 部 ではマンション 居 住 者 が 多 い 平 成 26 年 7 月 に 公 表 された 総 務 省 住 宅 土 地 統 計 によると 全 国 における 住 宅 総 数 52,103,800 戸 のうち マンション(ここでは 鉄 骨 造 もしくは 鉄 筋 鉄 骨 造 の 共 同 住 宅 を 指 す)は 19,281,900 戸 となってい る(37%) 一 方 で 東 京 23 区 内 における 住 宅 総 数 4,596,500 戸 のうち マンションは 2,978,500 戸 (65%)である このように 東 京 都 ( 特 に 都 心 部 )ではマ ンションに 居 住 する 人 の 割 合 が 他 地 域 よりも 高 い すなわち マンションにおける 防 災 の 取 り 組 みを 進 めることは 多 くの 住 民 の 生 命 財 産 を 直 接 的 に 守 ることにつながる 2) 理 由 2: 短 期 間 で 人 口 が 急 増 した 地 域 で は 避 難 所 の 不 足 が 危 惧 される 複 数 の 超 高 層 マンションが 短 期 間 で 建 設 さ れると 地 域 の 人 口 は 短 期 間 で 急 増 する 一 方 で 発 災 時 に 被 災 者 が 一 時 的 に 生 活 の 拠 点 とする 避 難 所 の 多 くは 公 共 施 設 が 指 定 されて いる マンションの 建 設 ラッシュに 伴 う 地 域 の 人 口 急 増 に 比 べて 公 共 施 設 の 整 備 が 遅 れる 場 合 避 難 者 数 ( 需 要 )に 対 して 避 難 所 定 員 数 ( 供 給 )が 不 足 することが 懸 念 される こ の 懸 念 への 対 策 としては 在 宅 避 難 を 促 し 避 難 者 数 ( 需 要 )を 減 らすことが 考 えられる マンションは 鉄 骨 もしくは 鉄 骨 鉄 筋 造 が 多 い 一 方 で 戸 建 ては 木 造 が 多 い 鉄 骨 もし くは 鉄 骨 鉄 筋 造 は 木 造 よりも 一 般 的 に 揺 れ や 火 災 に 強 い つまり 大 規 模 な 地 震 が 発 生 し また 地 震 に 伴 う 火 災 も 生 じた 場 合 であ っても マンション 居 住 者 の 方 が 戸 建 て 居 住 者 よりも 住 む 場 所 を 失 う 可 能 性 が 低 い すな わち マンション 居 住 者 は 発 災 後 も 自 室 内 で 生 活 できる 可 能 性 が 戸 建 て 居 住 者 よりも 高 い 従 って 自 室 での 生 活 を 継 続 する(= 在 宅 避 難 )ために 発 災 前 から 準 備 しておくこ とが 重 要 となる 堅 牢 な 建 造 物 であるマンションの 住 民 が 避 難 所 に 頼 らず 自 宅 での 避 難 生 活 を 継 続 す ることができれば 結 果 的 に 避 難 所 の 混 雑 混 乱 を 最 小 限 に 抑 えることができる 3) 理 由 3:マンション 居 住 者 の 復 旧 復 興 が 長 期 化 すると 社 会 全 体 の 復 旧 復 興 が 遅 れる 前 述 のとおり 都 市 部 の 住 民 の 多 くはマン ションに 居 住 している 換 言 すれば 発 災 後 の 社 会 を 復 旧 復 興 させる 推 進 力 を 担 う 人 々 の 多 くは マンション 居 住 者 でもある 従 っ て マンションにおける 被 害 を 最 小 限 にとど めることは 社 会 全 体 の 復 旧 復 興 に 取 り 組 むまでの 期 間 の 短 縮 につながる このように 都 市 部 のマンションは 住 居 形 態 として 重 要 な 役 割 を 果 たしている すなわ ちマンションにおける 防 災 対 策 を 推 進 するこ とは 直 接 的 にも 間 接 的 にも 都 市 部 におけ る 被 害 の 軽 減 につながる 3. 巨 大 地 震 が 発 生 したとき マンションで 何 が 起 こるか マンションは 戸 建 てとは 異 なる 特 徴 を 持 つ ため 大 規 模 地 震 発 生 時 にはマンション 特 有 の 課 題 が 生 じる 可 能 性 がある 具 体 的 には 次 のような 被 害 が 想 定 される NRI パブリックマネジメントレビュー September 2014 vol.134-2-

図 表 2 大 規 模 地 震 発 生 時 にマンションで 起 こり 得 る 被 害 の 様 相 マンションの 特 徴 発 災 時 の 被 害 の 様 相 東 日 本 大 震 災 の 例 エレベーターが 停 止 した 場 合 災 害 時 要 支 人 は 乗 っていなかったが おもりやレール 援 者 が 高 層 階 から 地 上 に 降 りられない 場 合 が が 外 れた 等 でエレベーターが 落 下 した 例 が ある また 地 上 低 層 階 から 高 層 階 に 昇 るこ ある とが 難 しくなり 物 資 の 配 給 等 に 支 障 が 出 る 1. 高 層 の 建 物 である 2. 管 理 会 社 が 主 として マンションの 日 常 管 理 を 担 う 3. 分 譲 マンションの 場 合 建 物 等 を 複 数 人 で 共 有 ( 区 分 所 有 )している 低 層 の 建 物 に 比 べて 揺 れが 長 く 大 きくな る 可 能 性 がある そのため 家 具 等 の 転 倒 移 動 によって 被 害 が 生 じたり ドアの 歪 み 等 で 居 室 内 に 閉 じ 込 められたりしてしまう 住 民 同 士 のコミュニケーションが 少 ない 場 合 がある そのため 安 否 確 認 の 実 施 や 救 命 救 助 活 動 に 遅 れが 生 じる 共 有 部 分 の 管 理 変 更 について 個 人 で 意 思 決 定 ができず 管 理 組 合 での 議 決 が 必 要 と なる そのため 管 理 組 合 の 合 意 形 成 がない と 事 前 対 策 や 復 旧 復 興 の 取 り 組 みが 円 滑 に 進 まない 注 ) 宮 城 県 内 で 活 動 するマンション 管 理 士 等 へのヒアリングによる 低 層 階 ではそれほど 大 きくは 揺 れなかっ たが 15 階 程 度 の 高 層 階 では 部 屋 の 中 の 物 がすべて 散 乱 したマンションがある 住 民 同 士 で 安 否 確 認 をするためには 居 住 者 リストが 必 要 だが 個 人 情 報 の 問 題 等 から 協 力 を 得 るのは 難 しい マンションの 箇 所 によって 被 害 に 差 がある 場 合 限 られた 予 算 の 中 でどこを 優 先 的 に 修 繕 するかは 管 理 組 合 の 間 で 大 きな 問 題 になった 4.マンションにおいて 平 常 時 から 取 り 組 む べき 防 災 対 策 マンションには 図 表 2で 示 したような 特 有 の 課 題 が 生 じ 得 る さらに 大 規 模 地 震 によ る 被 害 の 様 相 は 発 災 直 後 発 災 当 日 ~1 週 間 程 度 発 災 1 週 間 後 以 降 という 時 間 の 経 過 に 伴 い 変 化 していく 従 って それぞ れの 段 階 で 発 生 し 得 る 被 害 を 事 前 に 想 定 し 個 々の 居 住 者 管 理 組 合 ( 分 譲 マンショ ンの 場 合 ) 行 政 支 援 機 関 等 の 各 主 体 が 被 害 軽 減 に 向 けて 平 常 時 ( 発 災 前 )から 各 々 の 役 割 を 果 たすことが 求 められる 発 災 直 後 には 住 民 一 人 ひとりの 生 命 を 守 ることが 最 優 先 課 題 となる 揺 れによって 家 具 や 照 明 等 が 転 倒 落 下 し その 下 敷 きにな って 被 害 に 遭 うことが 危 惧 される またエレ ベーターに 閉 じ 込 められる 可 能 性 もある そ のため 家 具 の 固 定 化 やレイアウトの 工 夫 (タ ンス 等 が 倒 れてもベッド 等 の 上 には 倒 れない ように 配 置 する) エレベーターの 地 震 時 管 制 装 置 の 確 認 ( 揺 れを 感 じた 時 点 でエレベータ ーが 最 寄 り 階 に 自 動 停 止 し 閉 じ 込 めを 防 ぐ) や 防 災 キット バール 等 の 設 置 ( 閉 じ 込 めら れた 際 にエレベーター 内 で 一 定 期 間 は 過 ごす ことができる 環 境 を 整 える)といった 方 策 が 有 効 となる 加 えて 個 々の 居 室 内 に 負 傷 者 がいないかを 確 認 することは 被 害 の 拡 大 防 止 には 有 効 であり そのためには 居 室 の 居 住 者 の 人 数 や 属 性 等 を 把 握 しておく 必 要 がある ただし 居 住 者 の 属 性 等 の 公 開 に 対 して 拒 否 感 を 示 す 居 住 者 もいる 可 能 性 があることから 居 住 者 リストを 防 災 に 限 って 使 用 する 等 の 運 用 ルールを 明 確 にすることも 重 要 である ま た 発 災 時 には 互 いに 協 力 し 合 うという 雰 囲 気 を 醸 成 するために 居 住 者 同 士 のコミュニ ティ 活 動 ( 防 災 訓 練 や 祭 り 等 )を 企 画 実 行 することも 有 効 であろう 発 災 当 日 ~1 週 間 程 度 は マンション 内 で の 生 活 の 継 続 が 求 められる 期 間 である( 地 域 の 避 難 所 は 混 雑 混 乱 している 可 能 性 がある こと マンション 居 住 者 が 避 難 所 に 避 難 する ことでその 混 雑 混 乱 に 拍 車 がかかることを 考 えると マンション 内 の 個 々の 居 室 で 生 活 する 方 が マンション 居 住 者 本 人 地 域 の 双 方 にとって 望 ましいと 考 えられる) 高 層 階 か ら 低 層 階 地 上 に 降 りられなくなり 生 活 物 資 の 補 充 が 困 難 になる 高 層 難 民 の 発 生 NRI パブリックマネジメントレビュー September 2014 vol.134-3-

生 活 に 伴 って 生 じるゴミ 汚 物 の 管 理 が 適 切 に 行 われないことで 生 活 衛 生 環 境 が 悪 化 する ( 伝 染 病 の 発 生 拡 散 リスクが 高 まる) 行 政 等 による 支 援 物 資 がマンション 住 民 にまで 行 き 届 かない といった 事 態 が 生 じる 可 能 性 が ある 個 々 人 およびマンション 全 体 としての 備 蓄 について 検 討 し 実 行 することや 地 上 低 層 階 から 高 層 階 まで 物 資 を 運 ぶ 搬 送 体 制 ( 中 学 生 高 校 生 が 高 齢 者 等 の 自 宅 まで 水 を 運 ぶ 等 )を 構 築 することが 有 効 である 発 災 1 週 間 後 以 降 は 地 震 によって 破 損 し た 部 分 の 改 修 作 業 に 着 手 する 段 階 である 分 譲 マンションは 所 有 者 が 複 数 にわたる 破 損 した 部 分 によっては 区 分 所 有 者 間 で 改 修 方 法 について 合 意 形 成 が 難 航 することが 考 えら れる 例 えば 破 損 が 複 数 個 所 だった 場 合 の 優 先 順 位 付 け 利 用 者 が 一 部 に 限 られるよう な 施 設 ( 駐 車 場 等 )の 費 用 負 担 の 方 法 等 が 論 点 になる 可 能 性 がある 合 意 形 成 が 難 航 した 場 合 建 物 の 復 旧 時 期 までの 期 間 が 長 期 化 し てしまう 発 災 前 から 被 災 を 想 定 し 費 用 負 担 の 方 法 等 の 基 本 方 針 について 区 分 所 有 者 間 で 合 意 しておくことや 専 門 家 である 第 三 者 (マンション 管 理 士 等 )を 交 えて 議 論 検 討 を 進 めておくことが 必 要 である 後 述 するとおり 発 災 後 の 行 政 や 管 理 会 社 による 活 動 には 限 界 があると 考 えられる 従 って いずれの 段 階 対 策 についても 中 心 となるのは 個 々の 居 住 者 や 管 理 組 合 ( 分 譲 マ ンションの 場 合 )である すなわち 自 助 に 期 待 される( 果 たすべき) 役 割 が 大 きい 図 表 3 マンションにおける 発 災 後 の 被 害 の 様 相 と 有 効 な 対 策 ( 案 ) 必 要 な 対 策 想 定 される 被 害 個 々の 居 住 者 管 理 組 合 行 政 管 理 会 社 支 援 団 体 等 家 具 が 転 倒 し 下 敷 きになる 家 具 の 固 定 レイアウトの 工 夫 家 具 固 定 の 促 進 ( 意 識 啓 発 ) 発 災 直 後 エレベーターに 閉 じ 込 められる 閉 じ 込 められた 際 の 対 応 方 法 についての 事 前 確 認 地 震 時 管 制 運 転 装 置 の 確 認 防 災 キット バール 担 架 等 の 設 置 発 災 当 日 ~ 1 週 間 程 度 安 否 確 認 に 時 間 がかかり 確 認 している 間 に 被 害 が 拡 大 する エレベーターが 停 止 し 高 層 階 から 低 層 階 地 上 に 降 りられない 高 層 難 民 が 発 生 する ゴミ 汚 物 の 管 理 が 適 切 に 行 われない 日 頃 のコミュニケーション 個 々の 居 室 内 の 備 蓄 ゴミ 汚 物 の 管 理 に 関 する ルールの 順 守 居 住 者 リストの 作 成 コミュニティの 形 成 (イベント 開 催 等 ) フロアごとの 備 蓄 高 層 階 への 飲 食 料 等 の 搬 送 体 制 の 構 築 ゴミ 汚 物 の 管 理 に 関 する ルールの 構 築 順 守 徹 底 意 識 啓 発 飲 食 料 が 不 足 する ( 支 援 物 資 の 配 給 が 届 かない) 個 々の 居 室 内 の 備 蓄 高 層 階 への 飲 食 料 等 の 搬 送 体 制 の 構 築 発 災 1 週 間 後 以 降 復 旧 箇 所 について 区 分 所 有 者 間 で 合 意 できない 復 旧 のための 費 用 を 捻 出 できない ( 復 旧 時 の 基 本 的 な 考 え 方 について 自 らの 意 見 を 整 理 する) ( 復 旧 時 の 費 用 捻 出 の 考 え 方 について 自 らの 意 見 を 整 理 する) 復 旧 時 の 基 本 的 な 考 え 方 について 発 災 前 から 協 議 合 意 管 理 費 修 繕 積 立 金 の 見 直 し 地 震 保 険 への 加 入 専 門 家 の 派 遣 支 援 の 準 備 ( 派 遣 制 度 の 構 築 専 門 家 のプール 等 ) 管 理 費 修 繕 積 立 金 の 見 直 し 支 援 NRI パブリックマネジメントレビュー September 2014 vol.134-4-

5.おわりに 本 稿 では 都 市 部 における 大 規 模 地 震 への 対 策 としてマンションに 着 目 し マンション 特 有 の 被 害 や 求 められる 対 策 実 行 する 上 での 課 題 などについて 述 べてきた 首 都 直 下 地 震 や 南 海 トラフ 巨 大 地 震 等 の 大 規 模 災 害 が 発 生 した 際 には 広 範 囲 にわたっ て 甚 大 な 被 害 が 生 じるものと 考 えられる 消 防 や 警 察 自 衛 隊 といった 公 的 機 関 による 救 急 救 命 活 動 は 緊 急 性 の 高 い 地 域 被 害 を 優 先 させざるを 得 ないうえ 人 的 物 的 リソ ースに 限 界 があることから 倒 壊 焼 失 を 免 れて 被 害 が 比 較 的 小 さいようなマンションは 公 的 機 関 による 災 害 対 応 が 後 回 しにされる 可 能 性 がある また マンションの 多 くは 管 理 会 社 に 日 常 管 理 を 委 託 契 約 しているものの 管 理 会 社 に は 災 害 対 応 が 義 務 付 けられていないケースが 多 い 加 えて 管 理 会 社 も 被 災 する 可 能 性 があ ることから 発 災 時 に 管 理 会 社 が 個 々のマン ションを 支 援 する(できる)とは 限 らない 公 的 機 関 や 管 理 会 社 による 支 援 が 必 ずしも 期 待 できないことを 前 提 に 考 えると マンシ ョンの 居 住 者 ( 分 譲 マンションの 場 合 は 居 住 者 区 分 所 有 者 管 理 組 合 )が 自 ら 問 題 意 識 を 持 ち 防 災 に 取 り 組 むことが 必 要 である 行 政 には マンション 居 住 者 による 自 助 を 促 すための 取 り 組 みが 求 められる 具 体 的 には マンション 居 住 者 に 対 する 意 識 啓 発 管 理 会 社 との 防 災 時 の 協 定 締 結 の 促 進 防 災 リーダーとなれる 人 材 の 育 成 等 が 考 えられる 発 災 後 には 行 政 による 支 援 に 過 度 な 期 待 はで きないが 自 助 を 促 すための 側 方 支 援 を 行 う ことが 行 政 に 期 待 される 役 割 である 都 市 部 を 襲 う 大 規 模 地 震 からの 被 害 を 最 小 限 にとどめるために マンションにおける 防 災 の 取 り 組 みが 進 むことが 期 待 される 筆 者 大 沼 健 太 郎 (おおぬま けんたろう) 株 式 会 社 野 村 総 合 研 究 所 社 会 システムコンサルティング 部 上 級 コンサルタント 専 門 は 住 宅 政 策 防 災 政 策 など E-mail: k-onuma@nri.co.jp 筆 者 岸 浩 稔 (きし ひろとし) 株 式 会 社 野 村 総 合 研 究 所 ICT メディア 産 業 コンサルティング 部 副 主 任 コンサルタント 専 門 は 情 報 通 信 技 術 を 活 用 した 都 市 環 境 防 災 政 策 など E-mail: h-kishi@nri.co.jp NRI パブリックマネジメントレビュー September 2014 vol.134-5-