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2016 年 6 月 第 160 号 エグゼクティブ ニュース テーマ: 日 本 の 不 動 産 の 現 状 と 課 題 執 筆 者 :オラガ 総 研 株 式 会 社 代 表 取 締 役 牧 野 知 弘 氏 要 旨 ( 以 下 の 要 旨 は 1 分 50 秒 でお 読 みいただけます ) 日 本 銀 行 が 今 年 (2016 年 )1 月 に 導 入 を 決 定 したマイナス 金 利 は 不 動 産 を 中 心 とする ストックビジネスに 恩 恵 をもたらすと 期 待 されています 一 方 で 核 家 族 化 等 から 都 内 や 地 方 では 空 き 家 が 増 加 しており 国 全 体 の 問 題 として 表 面 化 しています 今 回 は 日 本 の 不 動 産 マーケットに 詳 しいオラガ 総 研 株 式 会 社 牧 野 知 弘 代 表 取 締 役 に その 現 状 と 2020 年 の 東 京 オリンピック 前 後 までを 展 望 した 不 動 産 業 界 の 課 題 につ いて 解 説 して 頂 きます 我 が 国 の 不 動 産 マーケットの 現 状 を 概 観 すると 先 ずオフィスビルマーケットは 都 心 部 の 空 室 率 が 4% 程 度 にまで 改 善 し これが 地 方 にも 波 及 しています また マンシ ョンマーケットも 都 心 駅 前 の 超 高 級 マンションで 完 売 が 相 次 いでいるなど 堅 調 です 三 大 都 市 圏 における 地 価 はリーマンショック(2008 年 ) 後 の 大 幅 下 落 から 脱 し 最 近 では 前 年 比 で 増 加 に 転 じており 昨 年 の 不 動 産 取 引 額 も 5 兆 円 台 とリーマンショック 前 の 水 準 に 戻 りました 円 安 を 背 景 とした 外 国 からの 投 資 や 大 幅 に 緩 和 された 金 融 マネーを 原 資 とする 不 動 産 投 資 信 託 を 元 手 に 不 動 産 マーケットは 活 況 を 呈 していると 言 えます このように 最 近 の 不 動 産 業 界 を 取 り 巻 く 環 境 は 一 見 順 調 に 見 えますが 実 態 は 必 ずし もそうとばかりは 言 えず マーケットには 変 化 の 兆 しも 認 められます オフィスビルマ ーケットの 活 況 は その 大 半 が 既 存 ビルの 建 替 需 要 によるもので 今 後 は 新 築 大 規 模 ビ ルが 規 模 の 小 さなビルのテナントを 奪 う オフィスビルドミノ 倒 し 現 象 が 懸 念 されて います 他 方 マンションマーケットでは 2014 年 の 消 費 税 増 税 後 の 消 費 支 出 の 低 迷 がマンション 購 入 にも 影 を 落 とし 始 めています マンション 価 格 の 高 騰 の 半 面 で 首 都 圏 でのマンション 販 売 戸 数 はリーマンショック 直 後 の 戸 数 (36 千 戸 )を 下 回 る 可 能 性 すら 出 て 来 ました 全 国 の 空 き 家 の 戸 数 も 増 加 し 続 けており 2013 年 の 820 万 戸 から 2018 年 には 1,000 万 戸 を 超 えるとの 事 態 も 予 想 されています 人 口 減 少 や 年 齢 構 成 の 高 齢 化 による 不 動 産 需 要 の 減 少 が 見 込 まれるほか 証 券 化 の 手 法 等 で 流 入 した 海 外 投 資 マネーが 瞬 時 に 日 本 から 去 っていく 可 能 性 が 取 り 沙 汰 される など 日 本 の 不 動 産 マーケットは 今 大 きな 転 機 を 迎 えています 一 方 で 明 るい 話 題 は 昨 年 約 2 千 万 人 もの 来 日 客 が 訪 れたホテルマーケットです ホ テル 業 は 収 益 性 が 低 いリスク 資 産 から 長 期 安 定 の 資 産 へと 変 わりつつあります 訪 日 外 国 人 の 増 加 が 不 動 産 マーケットの 重 要 なポジションを 占 めてくることが 予 想 されます 日 本 の 不 動 産 業 界 は ハコ= 建 物 ( 住 宅 オフィスビル 商 業 施 設 ) の 価 値 に 重 点 が 置 かれて 来 ました しかし 不 動 産 はその 量 的 充 足 の 役 割 を 終 え これからは 既 存 の 施 設 を 現 代 のニーズに 合 ったものへと 仕 立 て 直 しする 質 的 充 足 が 求 められる 時 代 になってきました そのためには 企 画 立 案 能 力 を 持 った ひと の 育 成 が 不 可 欠 で す 本 格 的 な 人 口 減 少 や 高 齢 化 社 会 が 到 来 する 東 京 五 輪 の 前 後 に こうした 価 値 軸 の 転 換 が 訪 れるだろうと 考 えられます --------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 太 陽 グラントソントン エグゼクティブ ニュース バックナンバーはこちらから http://www.grantthornton.jp/library/newsletter/ 本 ニュースレターに 関 するご 意 見 ご 要 望 をお 待 ちしております Tel: 03-6438-9395 e-mail: mc@jp.gt.com 太 陽 グラントソントン マーケティングコミュニケーションズ 担 当 藤 澤 清 江 --------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- Grant Thornton Japan is a member firm within Grant Thornton International Ltd ('Grant Thornton International'). Grant Thornton International and the member firms are not a worldwide partnership. Services are delivered by the member firms independently. Grant Thornton Japan. All right reserved.

テーマ: 日 本 の 不 動 産 の 現 状 と 課 題 オラガ 総 研 株 式 会 社 代 表 取 締 役 牧 野 知 弘 日 本 の 不 動 産 マーケットは おおむね 順 調 に 推 移 しているというのが メディアも 含 めた 基 本 的 な 見 解 になっている 特 に 本 年 (2016 年 )1 月 に 日 本 銀 行 が 採 用 したいわゆ る マイナス 金 利 政 策 は 不 動 産 を 中 心 としたストックビジネスには 大 いなる 恩 恵 をも たらすとも 期 待 されている 本 稿 では こうした 現 在 の 日 本 の 不 動 産 マーケットが 今 後 どのような 軌 跡 を 描 いてい くのか 順 調 と 言 われるマーケットに 潜 む 変 節 の 兆 しと 2020 年 の 東 京 五 輪 前 後 に 生 じてくる 日 本 の 不 動 産 価 値 に 対 する 意 識 革 命 について 解 説 する 1. マーケットの 状 況 * 地 価 について 三 大 都 市 圏 における 地 価 は リーマンショック 後 の 大 幅 な 下 落 から 徐 々に 回 復 して いる 傾 向 が 鮮 明 になっている ただし 基 準 地 価 格 ベース(2015 年 )でも 三 大 都 市 圏 商 業 地 は 対 前 年 増 加 率 で 4.0~6.1% 程 度 住 宅 地 に 至 っては 0.5~2.1% 程 度 の 小 幅 な 上 昇 にとどまっているのが 実 態 である 図 表 1 2( 次 頁 ) Grant Thornton Japan. All right reserved. 2

May-14 Jun-14 Jul-14 Aug-14 Sep-14 Oct-14 Nov-14 Dec-14 Jan-15 Feb-15 Mar-15 Apr-15 May-15 Jun-15 Jul-15 Aug-15 Sep-15 Oct-15 Nov-15 Dec-15 Jan-16 Feb-16 Mar-16 Apr-16 May-14 Jun-14 Jul-14 Aug-14 Sep-14 Oct-14 Nov-14 Dec-14 Jan-15 Feb-15 Mar-15 Apr-15 May-15 Jun-15 Jul-15 Aug-15 Sep-15 Oct-15 Nov-15 Dec-15 Jan-16 Feb-16 Mar-16 Apr-16 太 陽 グラントソントン エグゼクティブ ニュース 2016 年 6 月 第 160 号 図 表 2 0% 地 価 はエリア 全 体 の 上 昇 下 落 とは 関 係 なく ピンポイントで 例 えば 投 資 マネーが 流 入 するような 個 別 エリアの 価 格 のみが 激 しく 上 下 動 する 傾 向 にある したがって 全 体 平 均 値 での 上 昇 は 穏 やか であっても 個 別 案 件 では 上 昇 率 が 顕 著 になっている 印 象 がある *オフィスビルマーケット 東 京 都 心 5 区 ( 千 代 田 中 央 港 渋 谷 新 宿 )のオフィスビル( 基 準 貸 付 床 100 坪 以 上 ) 空 室 率 は 4%フラットにまで 改 善 している 2 年 前 と 比 較 しても 2.6 ポイントの 改 善 である 平 均 賃 料 は 空 室 率 の 改 善 から 遅 れる 傾 向 があるが ようやく 坪 当 たり 18,000 円 台 を 窺 う 程 度 には 上 昇 してきた 図 表 3 図 表 3 6.80 % 6.60 6.40 6.20 6.00 5.80 5.60 5.40 5.20 5.00 4.80 4.60 4.40 4.20 4.00 オフィスビル 空 室 率 推 移 ( 過 去 2 年 : 都 心 5 区 ) 円 18,100 18,000 17,900 17,800 17,700 17,600 17,500 17,400 17,300 17,200 17,100 17,000 16,900 16,800 16,700 16,600 16,500 オフィスビル 平 均 賃 料 推 移 ( 過 去 2 年 : 都 心 5 区 ) 出 所 : 三 鬼 商 事 Grant Thornton Japan. All right reserved. 3

空 室 率 の 改 善 は 福 岡 や 札 幌 といった 地 方 都 市 にも 波 及 しており オフィスビル 需 要 は 堅 調 であるとの 不 動 産 会 社 首 脳 のコメントも 目 立 つ *マンションマーケット マンションマーケットは 都 心 の 新 築 物 件 を 中 心 に 価 格 の 値 上 がり が 顕 著 になって いる 首 都 圏 (1 都 3 県 )の 新 築 マンション 価 格 はこの 3 年 間 で 平 均 価 格 が 約 21%も 上 昇 している 都 心 駅 前 で 分 譲 される 超 高 層 マンションでは 完 売 が 相 次 ぎ 今 後 はこ れまでの 専 有 坪 当 たり 600 万 円 から 700 万 円 が 最 高 価 格 帯 であった 超 高 級 マンションが 坪 当 たり 1,000 万 円 を 超 えるような 物 件 の 供 給 も 計 画 されている 図 表 4 図 表 4 出 所 : 不 動 産 経 済 研 究 所 * 不 動 産 取 引 額 不 動 産 取 引 額 も 都 市 未 来 総 合 研 究 所 によれば 2014 年 度 には 取 引 額 で 5 兆 円 台 リ ーマンショック 前 の 水 準 に 戻 ったとされ 2015 年 度 もほぼ 同 様 の 取 引 額 とみられてい る 取 引 の 主 体 は 円 安 を 背 景 とした 外 国 人 投 資 家 や J-REIT( 不 動 産 投 資 信 託 )が 主 体 とみられ 不 動 産 マーケットは 活 況 を 呈 している 図 表 5 図 表 5 出 所 : 都 市 未 来 総 合 研 究 所 Grant Thornton Japan. All right reserved. 4

このように 総 じて 日 本 の 不 動 産 マーケットはリーマンショック 後 の 状 態 から 順 調 に 回 復 し 現 在 では 大 幅 に 緩 和 された 金 融 マネーを 背 景 に 活 発 な 取 引 が 行 われており 一 部 ではバブルと 呼 ばれるような 高 額 ( 低 利 回 り)の 取 引 も 目 につくようになっている 2. マーケット 変 節 の 兆 し *マンションマーケットの 変 化 2014 年 4 月 の 消 費 税 増 税 後 消 費 支 出 は 低 迷 状 態 から 脱 することができないでいる 二 人 以 上 世 帯 の 消 費 支 出 については 2016 年 になっても うるう 年 による 1 日 分 の 貢 献 でプラスになった 2 月 を 除 き 対 前 年 比 でマイナスを 記 録 し 続 けている 図 表 6 図 表 6 0.0 6 4 2 0-2 -4-6 -5.1-2.9-1.3 消 費 支 出 推 移 ( 二 人 以 上 世 帯 : 対 前 年 比 ) 4.8-2.0-0.2 2.9-0.4-2.4-2.9-4.4-3.1 1.2-5.3 2016 年 2 月 +1.2% (うるう 年 ) -8-10 -12-10.6 1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月 1 月 2 月 3 月 2015 年 2016 年 出 所 : 総 務 省 こうした 一 般 家 庭 での 消 費 支 出 の 低 迷 はマンション 購 入 にも 影 を 及 ぼし 始 めている 不 動 産 経 済 研 究 所 の 調 べによれば 首 都 圏 マンションの 販 売 戸 数 は 2016 年 1 月 から 4 月 までの 累 計 で 8,402 戸 対 前 年 比 24%も 減 少 している メディアでは マイナス 金 利 政 策 により 住 宅 需 要 の 掘 り 起 こしが 期 待 できるとす る 向 きもあったが さすがに 新 築 マンション 約 21%の 値 上 げはアベノミクスで 喧 伝 さ れてきた 賃 上 げのレベルでは 到 底 追 いつけない 状 況 にあり どうやらこの 効 果 は 既 存 住 宅 ローンの 借 り 換 え 需 要 を 喚 起 するにとどまっている また 富 裕 層 が 相 続 税 対 策 として 購 入 していた タワーマンション 節 税 と 呼 ばれる 超 高 層 マンションの 高 層 部 を 購 入 して 節 税 をする 手 法 が 税 務 当 局 からほぼ 塞 がれる ( 注 ) ことになったこと 中 国 経 済 の 変 調 や 人 民 元 の 下 落 等 の 要 因 から 中 国 人 を 中 心 とした 外 国 人 投 資 家 の 購 入 の 足 取 りが 鈍 ったことは マンション 販 売 の 現 場 を 直 撃 し 始 めている ( 注 ) 従 来 は 同 一 棟 のマンションでは 階 層 差 に 関 係 なく 同 一 の 相 続 評 価 が 受 けられたが 今 後 は 階 層 によって 効 用 比 などに 応 じた 評 価 を 行 うものとした この 状 況 から 今 年 のマンション 販 売 は 首 都 圏 ではどうやらリーマンショック 直 後 の 2009 年 の 36,376 戸 を 下 回 る 可 能 性 まで 浮 上 してきたといえる Grant Thornton Japan. All right reserved. 5

*オフィスビルマーケットの 変 調 この 3 年 間 にわたって 順 調 な 回 復 ぶりをみせたオフィスビルマーケットは 実 は これ からが 正 念 場 である なぜならば 現 在 のオフィスビルマーケットの 活 況 は 必 ずしもオ フィス 床 に 対 する 実 需 によるものではないからである 森 ビルなどの 調 査 によれば 今 後 5 年 間 東 京 都 心 3 区 ( 千 代 田 中 央 港 )で 供 給 が 予 定 されているオフィスビルは 約 423 万 m2( 約 128 万 坪 )であるが このうちの 約 7 割 約 305 万 m2が 既 存 ビル の 建 替 えと 言 われている 建 替 えるためには 当 然 既 存 テナントはビルを 退 去 せざるを 得 ない 新 規 開 発 物 件 は 容 積 率 の 割 り 増 しもあるので 300%ほどの 容 積 率 アップ 部 分 ( 注 ) を 割 り 戻 して 考 えても 建 物 取 り 壊 しの 為 退 去 したと 想 定 されるテナント 面 積 は 約 230 万 m2にも 及 ぶことにな る この 数 値 は 都 心 部 におけるこれまでの 空 室 率 の 改 善 度 合 いをほぼ 説 明 することが できる 数 値 なのである つまりここ 3 年 間 でのオフィスビルの 空 室 率 の 改 善 は 実 需 の 増 加 というよりも 既 存 ビルの 取 り 壊 しに 伴 うテナントの 退 避 需 要 によるものなので ある ( 注 ) 容 積 率 : 敷 地 面 積 に 対 する 延 べ 床 面 積 の 割 合 用 途 地 域 毎 に 50%~1,300%の 範 囲 で 制 限 が 定 め られている 2001 年 小 泉 内 閣 による 規 制 緩 和 で 都 心 部 を 中 心 に 容 積 率 の 大 幅 緩 和 が 行 われた エ リアによるが 都 心 部 では 300% 程 度 の 緩 和 になったところが 多 い したがって 今 後 これらの 建 替 え 案 件 が 続 々 竣 工 を 迎 える 2020 年 までに 壮 絶 なテ ナント 争 奪 合 戦 が 勃 発 するであろうことは 想 像 に 難 くない 新 築 大 規 模 ビルは 既 存 の 大 型 ビルのテナントを 奪 う 大 型 ビルは 中 型 を 中 型 は 小 規 模 ビルに 襲 い 掛 かる オフィスビルドミノ 倒 し 現 象 が 生 じる 可 能 性 が 高 いのである * 空 き 家 の 急 増 と 住 宅 問 題 総 務 省 住 宅 土 地 統 計 調 査 によれば 2013 年 我 が 国 の 空 き 家 数 は 820 万 戸 総 住 宅 数 に 占 める 空 き 家 の 割 合 空 き 家 率 は 13.5%と いずれも 過 去 最 高 を 記 録 した こ の 数 値 は 戦 後 一 貫 して 増 加 し 続 けているが この 状 況 が 継 続 すると 2018 年 の 次 回 調 査 で 空 き 家 数 は 1,000 万 戸 を 超 え 2023 年 には 日 本 の 住 宅 の 5 軒 に 1 軒 が 空 き 家 になる という 事 態 も 予 想 されている( 野 村 総 研 による) 図 表 7 図 表 7 出 所 : 総 務 省 住 宅 土 地 統 計 調 査 Grant Thornton Japan. All right reserved. 6

この 問 題 はこれまでは 地 方 の 問 題 と 考 えられてきたが すでに 東 京 都 内 の 空 き 家 数 は 81 万 7 千 戸 と 国 内 ダントツの 一 位 都 内 の 空 き 家 の 6 割 以 上 がマンションの 空 き 住 戸 ともいわれる 空 き 家 問 題 は 首 都 東 京 までをも 揺 るがす 最 早 国 全 体 の 問 題 となって きている ここ 数 年 の 特 徴 は 個 人 の 持 ち 家 の 空 き 家 の 増 加 である その 数 は 320 万 戸 にも 及 ん でいる 核 家 族 化 の 進 展 と 都 心 部 での 生 活 基 盤 を 求 める 若 年 層 の 増 加 により 都 市 部 郊 外 の 空 き 家 が 急 増 していることが 背 景 にある 一 方 でマンションは 累 計 戸 数 600 万 戸 時 代 を 迎 え そのうちの 約 6 分 の 1 が 旧 耐 震 の 老 朽 化 マンションとなっている 建 物 の 老 朽 化 にあわせて 住 民 の 高 齢 化 や 空 き 住 戸 も 目 立 つようになり 建 物 大 規 模 修 繕 や 建 替 えなどの 議 論 が 困 難 となる 管 理 費 や 修 繕 積 立 金 の 滞 納 が 問 題 となるマンションも 増 加 しつつある こうした 問 題 の 放 置 はやがて マ ンションのスラム 化 ひいては 多 くの 都 市 における 治 安 の 悪 化 などの 都 市 問 題 に 発 展 す る 可 能 性 を 秘 めているといえよう このように 現 在 は 一 見 順 調 に 映 る 不 動 産 マーケットに 変 化 の 兆 し が 現 れつつあ る その 背 景 は 日 本 の 人 口 減 少 や 年 齢 構 成 の 急 速 な 高 齢 化 現 象 によって 引 き 起 こされる 実 需 の 減 少 がある 不 動 産 は 証 券 化 等 の 手 法 を 通 じて 海 外 マネーが 流 入 するように なったことや 団 塊 世 代 の 一 部 富 裕 層 が 潤 沢 な 退 職 金 や 預 貯 金 を 使 って 相 続 対 策 用 や 投 資 用 として 駅 前 タワーマンションの 購 入 などに 充 ててきたが こうした 形 を 変 えた 需 要 は 変 化 するのも 早 い 海 外 投 資 マネーは 世 界 経 済 の 中 に 組 み 込 まれたマネーの 動 き で 瞬 時 に 日 本 から 去 っていく 可 能 性 があるマネーにすぎない また 今 はマンション 需 要 の 一 部 を 担 っている 団 塊 世 代 も 後 期 高 齢 者 となる 2023 年 頃 には 自 らの 高 齢 化 によって 不 動 産 に 投 資 していた 資 金 を 高 齢 者 施 設 入 所 のための 資 金 に 回 さざるを 得 な くなる ビジネスにおけるグローバル 化 も 日 本 が 世 界 経 済 の 中 心 として 君 臨 できた 時 代 はとうの 昔 に 去 る 中 で 新 たなテナント 需 要 を 国 内 外 から 呼 び 込 むことが 難 しい 状 況 になっているといわざるをえない 需 要 が 減 少 していくマーケットには 最 終 的 には 投 資 マネーすら 入 ってこなくなる 日 本 の 不 動 産 マーケットは 今 大 きな 転 機 を 迎 えているのである 3. 訪 日 外 国 人 (インバウンド)と 不 動 産 * 活 況 を 呈 するホテルマーケット 暗 雲 が 漂 い 始 めた 不 動 産 マーケットにあって 唯 一 明 るい 材 料 を 提 供 しているのがホ テルマーケットである 訪 日 外 国 人 (インバウンド)は 2015 年 1,974 万 人 にも 達 し 従 前 の 政 府 目 標 であった 2020 年 2,000 万 人 の 目 標 達 成 に 迫 る 結 果 となった 図 表 8 ( 次 頁 ) Grant Thornton Japan. All right reserved. 7

図 表 8 2016 年 1-4 月 783 万 4600 人 ( 前 年 同 期 比 32.9% 増 ) この 状 況 は 2016 年 も 継 続 しており 熊 本 地 震 による 影 響 は 懸 念 されるものの 年 間 で 2300 万 人 から 2,500 万 人 程 度 に 増 加 するのではないかと 考 えられる 政 府 も 目 標 を 2020 年 4,000 万 人 と 倍 増 の 修 正 インバウンド 需 要 の 取 り 込 みに 対 する 期 待 感 が うかがえる インバウンドの 主 役 は 経 済 成 長 が 著 しく 中 間 所 得 層 が 激 増 するアジアの 国 々だ 2015 年 で 500 万 人 が 訪 日 した 中 国 400 万 人 の 韓 国 台 湾 香 港 にタイ マレーシア といったASEAN 諸 国 がインバウンド 数 を 牽 引 している インバウンドは 全 国 的 にホテルの 稼 働 率 の 向 上 に 貢 献 している 東 京 や 大 阪 京 都 と いった 都 市 では 平 均 稼 働 率 が 80%を 超 え ビジネスマンが 急 な 出 張 で 大 阪 などの 宿 をとろうにも ビジネスホテルはすべて 満 室 といった 事 態 に 陥 ることが 決 して 珍 しい 話 ではなくなっている この 現 象 は 地 方 都 市 にも 飛 び 火 し 北 海 道 の 旭 川 では 急 増 するインバウンド 需 要 にこ たえるためにここ 1 2 年 で 新 たに 3 棟 のホテルが 新 築 されるなど 空 前 のホテル 建 設 ブームが 到 来 している *インバウンドが 不 動 産 マーケットに 与 える 影 響 インバウンドの 激 増 は 不 動 産 マーケットに 新 たにホテルという 稼 げる メニューを 創 設 することに 貢 献 している これまでホテルは 不 動 産 開 発 のメニューの 中 では 収 益 性 が 低 く また 稼 働 の 変 化 が 大 きいリスク 資 産 としての 意 味 合 いが 強 かったが 安 定 し た 稼 働 率 と 2 3 年 前 と 比 較 して 大 幅 に 上 昇 した 宿 泊 単 価 によって にわかに 長 期 安 定 の 優 良 な 不 動 産 運 用 メニューへと 変 身 することに 成 功 したのである 日 本 に 大 量 にやってきたインバウンドは 東 京 大 阪 京 都 だけでなく 広 く 日 本 中 を 旅 行 することによって 地 方 創 生 の 切 り 札 ともなっている いっぽうで 圧 倒 的 に 不 足 す ることが 予 想 されるホテル 旅 館 は 新 たな 建 設 だけでは 全 く 対 応 できない 状 況 となって いる とりわけ 地 方 では 既 存 施 設 の 老 朽 化 やオーナーの 高 齢 化 が 著 しくなる 中 で 新 たな 投 資 資 金 を 呼 び 込 むまでには 至 っていない 状 況 にあり 今 後 は 前 述 した 空 き 家 を 積 極 Grant Thornton Japan. All right reserved. 8

的 にインバウンドの 宿 泊 施 設 として 活 用 していくような 施 策 も 必 要 になってくるだろ う そのためには 現 在 議 論 されている 民 泊 に 関 する 新 法 については なるべく 制 約 の 少 ない 形 での 普 及 ができる 方 向 での 制 度 整 備 が 待 たれるところである このようにインバウンドの 増 加 はホテルや 旅 館 といった 宿 泊 事 業 や 観 光 事 業 さらに は 爆 買 い 等 で 喧 伝 された 消 費 活 動 により 大 都 市 のみならず 地 方 にも 一 定 の 恩 恵 を 及 ぼし 始 めている 不 動 産 マーケットにとっても 受 け 入 れ 施 設 としてのホテル 投 資 のみ ならず 旺 盛 な 投 資 意 欲 を 利 用 したオフィス マンションなどの 売 買 活 動 が 活 性 化 して おり 今 後 の 不 動 産 マーケットにとっては 重 要 なポジションを 占 めてくることが 予 想 さ れる 図 表 9 図 表 9 費 目 別 訪 日 外 国 人 旅 行 消 費 額 宿 泊 額 8974 億 円 4. 不 動 産 価 値 革 命 日 本 における 不 動 産 の 価 値 はこれまで ハコ= 建 物 の 価 値 に 重 きが 置 かれてきた 感 がある すなわち 人 口 が 増 加 を 続 け 人 々が 住 むハコ( 住 宅 ) 働 くハコ(オフィ スビル) 買 い 物 をするハコ( 商 業 施 設 )が 常 に 不 足 するという 時 代 背 景 をもとに 不 動 産 価 値 が 定 義 されてきたのだ しかし オフィスや 住 宅 を 中 心 に 不 動 産 は 量 的 充 足 としての 役 割 を 終 え 多 くの 不 動 産 がコモディティ( 汎 用 品 ) 化 し 始 めているのが バブル 崩 壊 後 の 日 本 が 歩 み 始 め た 道 である 人 々が 不 動 産 に 対 して 求 める 価 値 は 量 的 充 足 から 質 的 充 足 へとその 軸 足 を 移 し 始 めたのである Grant Thornton Japan. All right reserved. 9

ハード(ハコ)さえ 作 れば ひと は 自 然 と 集 まってくるという 発 想 から 脱 却 し ソ フト( 知 恵 )を 絞 った 企 画 構 成 できる 不 動 産 が 今 後 マーケットの 中 で 勝 利 を 手 に することができるのだ 人 々が 質 的 充 足 を 求 めるとはどういったことだろうか それは 既 存 の 施 設 を 活 用 しながら 現 代 のニーズに 適 合 したものに 仕 立 て 直 し (リニューアル コンバージョ ン)をすること また 住 む 働 く 買 う といった 人 間 の 衣 食 住 の 基 本 を 充 足 す る 段 階 を 超 えて 皆 が 集 まり 価 値 観 を 共 有 化 して 共 に 楽 しみ ともにその 利 便 性 や 親 和 性 を 楽 しむといった その 場 かぎりの 楽 しみを 追 及 する ライヴ 感 覚 を 併 せ 持 った 質 的 充 足 ということであろう 先 述 した ホテル 観 光 施 設 はその 代 表 的 な 不 動 産 であろうし また 既 存 の 空 き 家 の 再 生 行 き 場 を 失 った 中 小 ビルやシャッター 商 店 街 などと 揶 揄 される 地 方 の 商 店 街 作 りすぎてしまった 社 会 インフラ( 空 港 や 駅 港 )などの 不 動 産 にどのような 息 吹 を 吹 き 込 み 人 々の 質 的 充 足 欲 求 に 応 えていけるのか これからの 不 動 産 の 持 つ 課 題 は 大 きなものがある そこには これまでの 圧 倒 的 な 資 本 をバックにしたハコ 作 りから 日 本 の 不 動 産 が 脱 却 して 不 動 産 に 知 恵 を 授 けて エリア 全 体 を 再 生 させるためのソフトウェアやコンテン ツが 必 要 になる 下 表 にあるとおり 人 々の 質 的 充 足 を 満 たすであろう 事 業 メニューと そのメニューに 対 応 した 不 動 産 そしてそれぞれの 施 設 に 応 じてターゲットとなる 顧 客 が 定 まってくるのである 図 表 10 図 表 10 事 業 展 開 の 方 向 性 事 業 メニュー 不 動 産 顧 客 既 存 ストックの 再 生 活 用 空 き 家 空 きマンション 外 国 人 観 光 客 ホテル 観 光 事 業 ホテル 観 光 施 設 外 国 人 ヒ シ ネスハ ーソン エリア 再 生 事 業 中 小 オフィスビル TAMI イベント 事 業 地 方 空 港 高 齢 富 裕 層 イベント 施 設 女 性 勤 労 者 こうした 新 しい 形 で 展 開 される 不 動 産 事 業 でキーワードとなるのは ひと である 不 動 産 を 単 体 ではなくエリア 全 体 で 俯 瞰 し エリアにおける 事 業 戦 略 を 構 築 できる 企 画 立 案 能 力 をもった 人 材 を 育 てることこそ 新 しい 時 代 における 不 動 産 価 値 創 造 を 実 現 で きるのである Grant Thornton Japan. All right reserved. 10

不 動 産 はこれまでのようにその 存 在 自 体 が 価 値 なのではなく いかに 人 々に 効 用 を 与 えることができるのか どれだけ 演 出 できるのかに 価 値 軸 を 置 いた 新 しい 時 代 が 到 来 する この 転 換 点 は 東 京 五 輪 あたりではないかと 私 は 考 えている 五 輪 まではこれまでのや り 方 で まだうまく 行 く と 期 待 している 事 業 者 も 本 格 的 な 人 口 減 少 や 首 都 圏 でも 急 速 にすすむ 高 齢 化 社 会 の 到 来 を 目 の 当 たりにするのが おそらくこの 時 期 だと 考 える からだ 以 上 執 筆 者 紹 介 牧 野 知 弘 (まきの ともひろ) 1959 年 アメリカ 生 まれ オラガ 総 研 株 式 会 社 代 表 取 締 役 < 学 歴 職 歴 > 1983 年 東 京 大 学 経 済 学 部 卒 業 1983 年 第 一 勧 業 銀 行 ( 現 みずほ 銀 行 ) 入 行 1986 年 ボストンコンサルティンググループ 入 社 1989 年 三 井 不 動 産 入 社 2006 年 日 本 コマーシャル 投 資 法 人 執 行 役 員 2009 年 株 式 会 社 オフィス 牧 野 およびオラガHSC 株 式 会 社 設 立 代 表 取 締 役 に 就 任 2015 年 オラガ 総 研 株 式 会 社 設 立 代 表 取 締 役 に 就 任 < 主 要 著 作 > なぜ 町 の 不 動 産 屋 はつぶれないのか なぜビジネスホテルは 一 泊 四 千 円 でやっていけるのか 空 き 家 問 題 インバウンドの 衝 撃 (いずれも 祥 伝 社 新 書 ) ボスコン 流 どんな 時 代 でも 食 ってい ける 戦 略 思 考 (SBクリエイティブ) 2020 年 マンション 大 崩 壊 ( 文 春 新 書 ) 不 動 産 投 資 の 超 基 本 ( 東 洋 経 済 新 報 社 )ほか 多 数 Grant Thornton Japan. All right reserved. 11