ニュートン 的 な 物 理 では, 時 空 は 認 識 の a priori な 形 式 ( 物 の 入 れ 物 )として 措 定 され る 2 このように 空 間 の 概 念 を 相 対 化 しようとするならば,そもそも 空 間 とは 何 かを 突 き 詰 めて 考 えなくてはならない. 数 学

Similar documents
(Microsoft Word - \221\346\202P\202U\201@\214i\212\317.doc)

積 載 せず かつ 燃 料 冷 却 水 及 び 潤 滑 油 の 全 量 を 搭 載 し 自 動 車 製 作 者 が 定 める 工 具 及 び 付 属 品 (スペアタイヤを 含 む )を 全 て 装 備 した 状 態 をいう この 場 合 に おいて 燃 料 の 全 量 を 搭 載 するとは 燃 料

Ⅰ 調 査 の 概 要 1 目 的 義 務 教 育 の 機 会 均 等 その 水 準 の 維 持 向 上 の 観 点 から 的 な 児 童 生 徒 の 学 力 や 学 習 状 況 を 把 握 分 析 し 教 育 施 策 の 成 果 課 題 を 検 証 し その 改 善 を 図 るもに 学 校 におけ

[2] 控 除 限 度 額 繰 越 欠 損 金 を 有 する 法 人 において 欠 損 金 発 生 事 業 年 度 の 翌 事 業 年 度 以 後 の 欠 損 金 の 繰 越 控 除 にあ たっては 平 成 27 年 度 税 制 改 正 により 次 ページ 以 降 で 解 説 する の 特 例 (


財団法人○○会における最初の評議員の選任方法(案)

数学

神 戸 法 学 雑 誌 65 巻 1 号 45 神 戸 法 学 雑 誌 第 六 十 五 巻 第 一 号 二 〇 一 五 年 六 月 a b c d 2 a b c 3 a b 4 5 a b c

Taro-H19退職金(修正版).jtd

<4D F736F F D E598BC68A8897CD82CC8DC490B68B7982D18E598BC68A8893AE82CC8A C98AD682B782E993C195CA915B C98AEE82C382AD936F985E96C68B9690C582CC93C197E1915B927582CC898492B75F8E96914F955D89BF8F915F2E646F6

平成25年度 独立行政法人日本学生支援機構の役職員の報酬・給与等について

している 5. これに 対 して 親 会 社 の 持 分 変 動 による 差 額 を 資 本 剰 余 金 として 処 理 した 結 果 資 本 剰 余 金 残 高 が 負 の 値 となるような 場 合 の 取 扱 いの 明 確 化 を 求 めるコメントが 複 数 寄 せられた 6. コメントでは 親

4 教 科 に 関 する 調 査 結 果 の 概 況 校 種 学 年 小 学 校 2 年 生 3 年 生 4 年 生 5 年 生 6 年 生 教 科 平 均 到 達 度 目 標 値 差 達 成 率 国 語 77.8% 68.9% 8.9% 79.3% 算 数 92.0% 76.7% 15.3% 94

KINGSOFT Office 2016 動 作 環 境 対 応 日 本 語 版 版 共 通 利 用 上 記 動 作 以 上 以 上 空 容 量 以 上 他 接 続 環 境 推 奨 必 要 2

Taro-2220(修正).jtd

平 成 27 年 11 月 ~ 平 成 28 年 4 月 に 公 開 の 対 象 となった 専 門 協 議 等 における 各 専 門 委 員 等 の 寄 附 金 契 約 金 等 の 受 取 状 況 審 査 ( 別 紙 ) 専 門 協 議 等 の 件 数 専 門 委 員 数 500 万 円 超 の 受

Microsoft PowerPoint - 報告書(概要).ppt

0605調査用紙(公民)

為 が 行 われるおそれがある 場 合 に 都 道 府 県 公 安 委 員 会 がその 指 定 暴 力 団 等 を 特 定 抗 争 指 定 暴 力 団 等 として 指 定 し その 所 属 する 指 定 暴 力 団 員 が 警 戒 区 域 内 において 暴 力 団 の 事 務 所 を 新 たに 設

Microsoft Word - 全国エリアマネジメントネットワーク規約.docx

Taro-j5_11 観量性理論2016_03.jt

( 復 興 特 別 法 人 制 具 体 的 内 容 ) 復 興 特 別 法 人 制 具 体 的 な 内 容 は 次 とおりです 1 納 義 務 者 法 人 は 基 準 法 人 額 につき 復 興 特 別 法 人 を 納 める 義 務 があります( 復 興 財 源 確 保 法 42) なお 人 格 な

景品の換金行為と「三店方式」について

容 積 率 制 限 の 概 要 1 容 積 率 制 限 の 目 的 地 域 で 行 われる 各 種 の 社 会 経 済 活 動 の 総 量 を 誘 導 することにより 建 築 物 と 道 路 等 の 公 共 施 設 とのバランスを 確 保 することを 目 的 として 行 われており 市 街 地 環

第1章 財務諸表

私立大学等研究設備整備費等補助金(私立大学等

募集新株予約権(有償ストック・オプション)の発行に関するお知らせ


損 益 計 算 書 自. 平 成 26 年 4 月 1 日 至. 平 成 27 年 3 月 31 日 科 目 内 訳 金 額 千 円 千 円 営 業 収 益 6,167,402 委 託 者 報 酬 4,328,295 運 用 受 託 報 酬 1,839,106 営 業 費 用 3,911,389 一

<重要な会計方針及び注記>

若 しくは 利 益 の 配 当 又 はいわゆる 中 間 配 当 ( 資 本 剰 余 金 の 額 の 減 少 に 伴 うものを 除 きます 以 下 同 じです )を した 場 合 には その 積 立 金 の 取 崩 額 を 減 2 に 記 載 す るとともに 繰 越 損 益 金 26 の 増 3 の

1. 前 払 式 支 払 手 段 サーバ 型 の 前 払 式 支 払 手 段 に 関 する 利 用 者 保 護 等 発 行 者 があらかじめ 利 用 者 から 資 金 を 受 け 取 り 財 サービスを 受 ける 際 の 支 払 手 段 として 前 払 式 支 払 手 段 が 発 行 される 場 合

表紙

( 別 途 調 査 様 式 1) 減 損 損 失 を 認 識 するに 至 った 経 緯 等 1 列 2 列 3 列 4 列 5 列 6 列 7 列 8 列 9 列 10 列 11 列 12 列 13 列 14 列 15 列 16 列 17 列 18 列 19 列 20 列 21 列 22 列 固 定

Microsoft Word - H27概要版

Taro-1-14A記載例.jtd

リング 不 能 な 将 来 減 算 一 時 差 異 に 係 る 繰 延 税 金 資 産 について 回 収 可 能 性 がないも のとする 原 則 的 な 取 扱 いに 対 して スケジューリング 不 能 な 将 来 減 算 一 時 差 異 を 回 収 できることを 反 証 できる 場 合 に 原 則

1 書 誌 作 成 機 能 (NACSIS-CAT)の 軽 量 化 合 理 化 電 子 情 報 資 源 への 適 切 な 対 応 のための 資 源 ( 人 的 資 源,システム 資 源, 経 費 を 含 む) の 確 保 のために, 書 誌 作 成 と 書 誌 管 理 作 業 の 軽 量 化 を 図

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 役 名 法 人 の 長 理 事 理 事 ( 非 常 勤 ) 平 成 25 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 16,936 10,654 4,36

平成24年度税制改正要望 公募結果 153. 不動産取得税

説 明 内 容 料 金 の 算 定 期 間 と 請 求 の 単 位 について 分 散 検 針 制 日 程 等 別 料 金 料 金 の 算 定 期 間 と 支 払 義 務 発 生 日 日 程 等 別 料 金 の 請 求 スケジュール 料 金 のお 支 払 い 方 法 その 他 各 種 料 金 支 払

<4D F736F F D D3188C091538AC7979D8B4B92F F292B98CF092CA81698A94816A2E646F63>

は 固 定 流 動 及 び 繰 延 に 区 分 することとし 減 価 償 却 を 行 うべき 固 定 の 取 得 又 は 改 良 に 充 てるための 補 助 金 等 の 交 付 を 受 けた 場 合 にお いては その 交 付 を 受 けた 金 額 に 相 当 する 額 を 長 期 前 受 金 とし

積 み 立 てた 剰 余 金 の 配 当 に 係 る 利 益 準 備 金 の 額 は 利 益 準 備 金 1 の 増 3 に 記 載 します ⑸ 平 成 22 年 10 月 1 日 以 後 に 適 格 合 併 に 該 当 しない 合 併 により 完 全 支 配 関 係 がある 被 合 併 法 人 か

学校教育法等の一部を改正する法律の施行に伴う文部科学省関係省令の整備に関する省令等について(通知)

( 別 紙 ) 以 下 法 とあるのは 改 正 法 第 5 条 の 規 定 による 改 正 後 の 健 康 保 険 法 を 指 す ( 施 行 期 日 は 平 成 28 年 4 月 1 日 ) 1. 標 準 報 酬 月 額 の 等 級 区 分 の 追 加 について 問 1 法 改 正 により 追 加

3. 選 任 固 定 資 産 評 価 員 は 固 定 資 産 の 評 価 に 関 する 知 識 及 び 経 験 を 有 する 者 のうちから 市 町 村 長 が 当 該 市 町 村 の 議 会 の 同 意 を 得 て 選 任 する 二 以 上 の 市 町 村 の 長 は 当 該 市 町 村 の 議

定款  変更

1 変更の許可等(都市計画法第35条の2)

退職手当とは

PowerPoint プレゼンテーション

(2)大学・学部・研究科等の理念・目的が、大学構成員(教職員および学生)に周知され、社会に公表されているか

Box-Jenkinsの方法

財団法人山梨社会保険協会寄付行為

Microsoft Word - 佐野市生活排水処理構想(案).doc

第一部【証券情報】

目 標 を 達 成 するための 指 標 第 4 章 計 画 における 環 境 施 策 世 界 遺 産 への 登 録 早 期 登 録 の 実 現 史 跡 の 公 有 地 化 平 成 27 年 度 (2015 年 度 )までに 235,022.30m 2 施 策 の 体 系 1 歴 史 的 遺 産 とこ


PowerPoint プレゼンテーション

< F2D A C5817A C495B6817A>

預 金 を 確 保 しつつ 資 金 調 達 手 段 も 確 保 する 収 益 性 を 示 す 指 標 として 営 業 利 益 率 を 採 用 し 営 業 利 益 率 の 目 安 となる 数 値 を 公 表 する 株 主 の 皆 様 への 還 元 については 持 続 的 な 成 長 による 配 当 可

22 第 1 章 資 本 金 等 利 益 積 立 金 貴 見 のとおり 資 本 等 取 引 は 本 来 は 増 資 とか 減 資 と か さらには 旧 資 本 積 立 金 額 の 増 加 または 減 少 をいうこと になる ただ 利 益 の 配 当 はいわゆる 資 本 金 等 取 引 である か 損

税金読本(8-5)特定口座と確定申告

* 解 雇 の 合 理 性 相 当 性 は 整 理 解 雇 の 場 合 には 1 整 理 解 雇 の 必 要 性 2 人 員 選 択 の 相 当 性 3 解 雇 回 避 努 力 義 務 の 履 行 4 手 続 きの 相 当 性 の 四 要 件 ( 要 素 )で 判 断 され る 部 門 閉 鎖 型

<4D F736F F D A778F4B8E7793B188C45F8FAC81458ED089EF816A8DD593632E646F63>

Microsoft Word - ★HP版平成27年度検査の結果

2 県 公 立 高 校 の 合 格 者 は このように 決 まる (1) 選 抜 の 仕 組 み 選 抜 の 資 料 選 抜 の 資 料 は 主 に 下 記 の3つがあり 全 高 校 で 使 用 する 共 通 の ものと 高 校 ごとに 決 めるものとがあります 1 学 力 検 査 ( 国 語 数

特定非営利活動法人 定款例

答申第585号

安 芸 太 田 町 学 校 適 正 配 置 基 本 方 針 の 一 部 修 正 について 1 議 会 学 校 適 正 配 置 調 査 特 別 委 員 会 調 査 報 告 書 について 安 芸 太 田 町 教 育 委 員 会 が 平 成 25 年 10 月 30 日 に 決 定 した 安 芸 太 田

Microsoft Word 役員選挙規程.doc

SXF 仕 様 実 装 規 約 版 ( 幾 何 検 定 編 ) 新 旧 対 照 表 2013/3/26 文 言 変 更 p.12(1. 基 本 事 項 ) (5)SXF 入 出 力 バージョン Ver.2 形 式 と Ver.3.0 形 式 および Ver.3.1 形 式 の 入 出 力 機 能 を

Microsoft Word - 構造振動特論-08回-2012.doc

<4D F736F F D AC90D1955D92E CC82CC895E DD8C D2816A2E646F63>

主要生活道路について

佐渡市都市計画区域の見直し

質 問 票 ( 様 式 3) 質 問 番 号 62-1 質 問 内 容 鑑 定 評 価 依 頼 先 は 千 葉 県 などは 入 札 制 度 にしているが 神 奈 川 県 は 入 札 なのか?または 随 契 なのか?その 理 由 は? 地 価 調 査 業 務 は 単 にそれぞれの 地 点 の 鑑 定


Microsoft Word - 奨学金相談Q&A.rtf

Microsoft PowerPoint - エントリー04_結婚TextVoice

( 会 員 の 資 格 喪 失 ) 第 8 条 会 員 が 次 のいずれか に 該 当 する 場 合 には その 資 格 を 喪 失 する (1) 退 会 したとき (2) 成 年 被 後 見 人 又 は 被 保 佐 人 となったとき (3) 死 亡 し 若 しくは 失 踪 宣 告 を 受 け 又

<4D F736F F D208CF689768ED C8FE395FB978E8CEA8BA689EF814592E88ABC2E646F63>

(6) 事 務 局 職 場 積 立 NISAの 運 営 に 係 る 以 下 の 事 務 等 を 担 当 する 事 業 主 等 の 組 織 ( 当 該 事 務 を 代 行 する 組 織 を 含 む )をいう イ 利 用 者 からの 諸 届 出 受 付 事 務 ロ 利 用 者 への 諸 連 絡 事 務

[Case 2-1] 横 浜 さんは 首 尾 良 く 就 職 できて 昨 年 4 月 から 新 社 会 人 となり 仕 事 をしている 学 生 の 時 よりは 自 由 な 時 間 は 減 ったが 毎 月 まとまった 給 与 がもらえて 学 生 の 時 よりはる かに 自 分 の 自 由 になるお 金

6 構 造 等 コンクリートブロック 造 平 屋 建 て4 戸 長 屋 16 棟 64 戸 建 築 年 1 戸 当 床 面 積 棟 数 住 戸 改 善 後 床 面 積 昭 和 42 年 36.00m m2 昭 和 43 年 36.50m m2 昭 和 44 年 36.

その 他 事 業 推 進 体 制 平 成 20 年 3 月 26 日 に 石 垣 島 国 営 土 地 改 良 事 業 推 進 協 議 会 を 設 立 し 事 業 を 推 進 ( 構 成 : 石 垣 市 石 垣 市 議 会 石 垣 島 土 地 改 良 区 石 垣 市 農 業 委 員 会 沖 縄 県 農

目 次 Ⅰ. 運 営 費 交 付 金 収 益 化 基 準 の 見 直 し P3 Ⅱ. 行 政 執 行 法 人 創 設 に 伴 う 運 営 費 交 付 金 の 会 計 上 の 取 扱 い P19 2

Ⅰ 人 口 の 現 状 分 析 Ⅰ 人 口 の 現 状 分 析 1 人

公営住宅法施行令の一部を改正する政令―公営住宅法施行令例規整備*

Microsoft Word - A04◆/P doc

Q5 育 児 休 業 を 請 求 する 際 の 事 務 手 続 は? A5 育 児 休 業 を 請 求 しようとする 職 員 は, 育 児 休 業 承 認 請 求 書 ( 様 式 第 1 号 )に 子 の 氏 名 や 請 求 する 期 間 等 を 記 入 し, 育 児 休 業 を 始 めようとする1

N 一 般 の 住 宅 について 控 除 の 対 象 となる 借 入 金 は 平 成 26 年 4 月 平 成 31 年 6 月 30 日 までの 入 居 の 場 合 は4,000 万 円 ( 平 成 26 年 3 月 までの 入 居 の 場 合 は2,000 万 円 )までとなります 建 物 や

   新潟市市税口座振替事務取扱要領

c. 投 資 口 の 譲 渡 に 係 る 税 務 個 人 投 資 主 が 投 資 口 を 譲 渡 した 際 の 譲 渡 益 は 株 式 等 に 係 る 譲 渡 所 得 等 として 原 則 20%( 所 得 税 15% 住 民 税 5%)の 税 率 による 申 告 分 離 課 税 の 対 象 となりま

(1)1オールゼロ 記 録 ケース 厚 生 年 金 期 間 A B 及 びCに 係 る 旧 厚 生 年 金 保 険 法 の 老 齢 年 金 ( 以 下 旧 厚 老 という )の 受 給 者 に 時 効 特 例 法 施 行 後 厚 生 年 金 期 間 Dが 判 明 した Bは 事 業 所 記 号 が

<4D F736F F F696E74202D2082C882E982D982C DD8ED88EE688F882CC82B582AD82DD C668DDA9770>

1 総 合 設 計 一 定 規 模 以 上 の 敷 地 面 積 及 び 一 定 割 合 以 上 の 空 地 を 有 する 建 築 計 画 について 特 定 行 政 庁 の 許 可 により 容 積 率 斜 線 制 限 などの 制 限 を 緩 和 する 制 度 である 建 築 敷 地 の 共 同 化 や

Speed突破!Premium問題集 基本書サンプル

職 員 の 等 に 関 する 条 例 第 24 条 の 承 認 は 正 規 の 勤 務 時 間 の 始 め 又 は 終 わりにおいて 30 分 を 単 位 として 行 う ものとする 2 育 児 を 原 因 とする 特 別 休 暇 を 承 認 されている 職 員 に 対 する の 承 認 については

T T VWAPギャランティ 取 引 とは T T VWAPギャランティ 取 引 とは これまでの 成 行 や 指 値 とは 異 なる 東 海 東 京 証 券 が 提 供 する 新 しい 形 の 売 買 方 法 です その 方 法 とは 1 金 融 商 品 取 引 所 ( 以 下 取 引 所 )に

Transcription:

時 空 とは 何 か: 渦 をテーマとして 吉 田 善 章 ( 東 京 大 学 大 学 院 新 領 域 創 成 科 学 研 究 科 ) 物 理 学 が 考 える 時 空 とは 何 かを 紹 介 し,その 一 つの 発 展 マクロな 系 を 渦 という 時 空 によって 捉 えようという 試 み を 通 じて, 標 準 的 な 時 空 概 念 を 脱 構 築 しよう. 持 続 性 反 復 性 の 原 風 景 である 振 り 子 の 運 動 は 最 も 基 本 的 な 渦 である. 流 体 の 渦 はこれよりはるかに 興 味 深 い 現 象 であり, 渦 をメタファーと するさまざまな 事 象, 心 象, 社 会 現 象 に 共 通 する 自 己 組 織 化 する 時 空 のイメ ージが 渦 の 数 理 によって 見 えてくる. Keywords: 自 己 組 織 化, 持 続 性, 葉 層 構 造, 不 変 量,オブザーバブル 1. 時 空 を 考 える 物 理 学 は 第 一 義 的 には 物 の 学 である. 物 の 運 動, 状 態 の 変 化 について 客 観 的 定 量 的 な 理 論 の 確 立 を 目 指 す. 理 論 は 数 学 を 言 語 として 書 かれる ガリレオ 曰 く 自 然 は 数 学 という 言 葉 で 書 かれた 書 物 である. 数 学 は 極 言 すれば 空 間 の 学 である. 空 間 とは 何 か, 空 間 はどのように 表 現 される のか, 空 間 はどのように 変 換 するのか,などをさまざまな 抽 象 概 念 を 創 造 しながら 探 求 する. 空 間 の 中 におかれた 物 という 認 識 において 物 理 と 数 学 に 共 通 のテーマが 生 じ ると 言 ってよいだろう. 物 の 見 え方 に 主 観 ( 物 の 見 方 )が 介 入 していることを 発 見 して 以 来 (すなわちコペル ニクス 的 転 回 ), 物 がおかれた 空 間 と 物 の 見 え 方 の 関 係 を 調 べることが 物 理 学 の 中 心 的 なテーマとなった. 空 間 の 表 現 の 変 換 = 変 数 変 換 によって 方 程 式 を 見 やすい 形 に 書 き 換 えるという 数 学 的 なテクニックが 理 論 家 の 生 業 を 支 えているのだが, 翻 って 考 えると, 方 程 式 などはおよそ 表 層 的 なものであって,より 深 層 に 根 本 的 な 構 造 があると 思 われて くる. 物 の 本 質 を 捉 えるためには, 物 の 見 方 すなわち 空 間 の 表 現 を 相 対 化 しなくてはな らない. このようなわけで 時 空 ( 以 下, 時 間 の 軸 1 を 意 識 するときは 時 空 ということにする) が 物 と 並 行 して 理 論 の 二 項 を 構 成 することになるのだが,ここに 一 つの 論 点 がある. 1 空 間 と 同 じように 時 間 を 実 数 軸 で 表 現 するのが 物 理 の 時 間 概 念 の 特 徴 である. 物 体 の 運 動 を 記 述 す るための 時 間 は 普 通 は 一 つの 実 数 軸 で 十 分 である.しかし 物 理 学 でも 色 々な 局 面 で 複 数 の 時 間 的 な 変 数 を 措 定 することがある.それらは, 必 ずしも 実 数 軸 とは 限 らず,+の 方 向 だけであったり, 直 線 ではなくサ イクルであったり,あるいは 離 散 数 であったりする. 1

ニュートン 的 な 物 理 では, 時 空 は 認 識 の a priori な 形 式 ( 物 の 入 れ 物 )として 措 定 され る 2 このように 空 間 の 概 念 を 相 対 化 しようとするならば,そもそも 空 間 とは 何 かを 突 き 詰 めて 考 えなくてはならない. 数 学 独 特 の 謎 めいた 言 い 方 では, 空 間 とは 可 換 環 であ る.この 考 え 方 は 認 識 論 に 素 朴 な 根 拠 をもつ.ある( 原 始 的 な) 生 物 における 自 己 = identityとは,その 外 延 を 定 義 づけている 境 界 ( 表 皮 )を 空 間 の 中 に 認 識 することである とすると, 自 己 の 定 義 (あるいは 自 己 の 経 験 )に 空 間 の 概 念 が 先 立 っている. 空 間 を 意 識 することがなければ 自 己 と 外 部 の 差 異 を 認 識 することはないのである(より 高 度 な 意 味 でのidentityは 物 理 空 間 を 超 えたさまざまな 時 空 の 中 の 固 有 領 域 だといえるだ ろう). 物 理 学 では,a priori な 時 空 の 中 に 点 や 曲 線 などの 幾 何 学 的 対 象 をおくことで 物 のidentityを 表 現 する. 一 方,このような 理 論 の 書 き 方 を 批 判 し, 空 間 の 絶 対 性 を 否 定 す るのがマッハ 的 な 空 間 論 であり,その 系 譜 にアインシュタインの 時 空 論 が 位 置 づけられ る.アインシュタイン 方 程 式 は, 空 間 と 物 が 相 互 関 係 をもつこと( 物 があると 空 間 が 曲 がること)を 示 している. 2 3. 大 雑 把 に 説 明 しよう. 空 間 とは 要 素 = 点 の 入 れ 物 であるが,それは 単 に 入 れ 物 で あるだけではなく,そこにある 要 素 たちをそれぞれ 名 指 せる 概 念 装 置 を 備 えていなくて はならない.それが 可 換 環 である. 一 つの 点 を 他 と 区 別 するidentityとは, 裏 返 して 考 え ると,その 一 つを 除 いて 他 を 同 一 視 するということだ.まず 全 ての 点 を 同 一 視 する( 同 族 とみなす)ことから 始 め, 同 一 性 の 度 合 いを 僅 かに 減 らすことで, 一 点 のみ 残 して 他 を 全 て 同 一 視 する 基 準 が 得 られる. 実 際 には 次 のようにすればよい. 各 点 に 数 値 ( 重 複 も 許 す)を 与 えてそれぞれのidentityとする( 背 番 号 のようなものだと 思 おう). それぞ れの 点 が 幾 つもの 数 値 をもつことを 許 す( 各 点 がもつ 多 面 的 なidentityを 表 わす).ある 数 値 aに 対 して,こ れ をidentityの 一 つとしてもっている 点 たちで 同 族 G(a) を 作 ること にする.まず, 全 ての 点 に 全 ての 数 値 ( 実 数 )を 与 えよう.すると, 任 意 の a に 対 し てG(a) は 全 ての 点 の 集 合 となる.つまり 全 ての 点 は 同 族 である( 可 能 なかぎり 全 ての 数 値 をidentityとしてもっているという 意 味 で).そうなったのは 全 ての 点 に 分 け 隔 てな く 全 ての 数 値 をばらまいたからだ.この 十 全 なidentityの 分 布 を 自 明 なイデアル(ideal) という.これに 最 大 限 近 いが 僅 かに 公 平 性 を 欠 いた 分 布 ( 極 大 イデアルという)が 一 つ の 点 を 名 指 すidentityである.それは 次 のようなものだ.まず 一 つの 点 x だけに0を 与 え, 他 の 点 には0でない 数 値 を 背 番 号 として 与 えよう. 次 に 各 点 において,それぞれの 空 間 と 時 間 を 悟 性 の a prior とするのはカントの 超 越 論 的 哲 学.カントはニュートンの 著 作 から 多 くを 学 んだといわれている. 3 環 とは 何 らかの 足 し 算 と 掛 け 算 が 定 義 された 代 数 系.それが 可 換 であるとは, 掛 け 算 が 順 序 を 交 換 して 計 算 してもよい 演 算 になっているという 意 味. 数 の 掛 け 算 は 可 換 である( 小 学 校 で 教 わるように 2 3=3 2). 非 可 換 な 掛 け 算 の 例 は 行 列 の 掛 け 算. 2

背 番 号 に 色 々な 数 を 掛 けて 変 換 した 数 値 たちの 全 集 合 を 作 らせ,それを 各 点 のidentity とする.こうしてつくられたidentityの 分 布 は 点 x だけ 残 して 十 全 である. 実 際, 任 意 の 実 数 は, 一 つの0でない 実 数 にある 数 を 掛 けることで 生 み 出 せるから,x 以 外 の 点 は 全 ての 実 数 をidentityとして 獲 得 する.しかし0は 何 を 掛 けても0のままであるから, 点 x は 一 つの 背 番 号 0しかもたない.したがって 任 意 の a ( 0) に 対 してG(a) は 点 x だ け 除 いた 全 ての 点 集 合 となる. 裏 返 せば点 x を 名 指 したことになる. いささかひねくれた identity 論 のようだが, 数 学 者 の 論 考 は 本 質 を 射 抜 いていている. 上 の 説 明 では, 最 初 に 一 つ 点 x を 選 んで,そこから 極 大 イデアルを 生 成 したので, 既 に 名 指 した x の identity を 一 巡 りしてリフレーズすることになったのだが, 実 は 最 初 に 証 明 可 能 なのは 極 大 イデアルが 存 在 すること,その 極 大 イデアルはどこか 一 点 のみ を 疎 外 した 最 大 限 の 同 族 を 与 えるということである.identity= 疎 外 の 構 造.これを 決 め ているのは 可 換 環 であり, 可 換 環 を 変 形 すると 点 という 概 念 も 変 形 する. 上 記 の 例 では 実 数 の 代 数 ( 最 も 初 等 的 な 可 換 環 )で identity を 表 現 したが,より 高 度 な 代 数 系 を 考 えることでいろいろな 空 間 を 構 築 し, 空 間 におかれた 対 象 の 見 え 方 を 変 形 できるので ある. さて, 私 たちの 関 心 は 渦 である. 渦 とは 空 間 の 構 造 むしろ 歪 み だとい うのがこの 話 のテーマである.そう 考 えるヒントとして 図 1を 参 照 しておこう. 図 1: 一 匹 だけの 羊 は 広 い 野 原 を 自 由 に 動 き 回 るだろう.しかし,この 群 れに 属 す る 羊 が 感 じる 時 空 は, 牧 羊 犬 に 吠 えたてられることと, 周 りにいる 羊 たちの 運 動 によって 歪 む. ( 図 は kurasse.jp/member/little-kinoko778/note/93577 から 引 用 ) 3

2. 渦 とは 何 か 風 の 吹 くまま というように, 普 通 の 風 は 色 々 な 方 向 にランダムに 起 こる 空 気 の 流 れである.しか し,これが 渦 を 形 成 すると つむじ 風, 竜 巻, 台 風,ジェット 気 流 ( 極 渦 )のようにさまざまなス ケールの 渦 がある 秩 序 と 持 続 性 をもった 運 動 になる( 図 2). 渦 は 一 度 発 生 すると 安 定 的 に 持 続 する 局 所 的 な 運 動 である. 渦 がその 中 におかれた 物 に 与 える 効 果 は,ランダ ムな 揺 動 ではなく, 複 雑 でありながらある 種 の 秩 序 と 持 続 性 をもつ.こういう 意 味 で, 渦 はそれ 自 体 が 運 動 であると 同 時 に 局 所 的 な 時 空 の 構 造 だと 言 え る.その 特 徴 は 自 発 的 に 生 成 し 発 展 することである. 渦 が 時 空 の 構 造 だと 言 うとき,それは a priori で はなく, 自 己 組 織 化 するダイナミックな 構 造 を 意 味 している. 水 や 空 気 などの 流 体 に 現 れる 渦 が 渦 の 原 義 で あるが, 私 たちは 渦 に 多 様 な 意 味 を 重 ねる. 自 然 現 象, 心 象 ( 図 3), 社 会 現 象 の 様 々な 局 面 に 渦 のメタファーが 現 れる.それらはいずれも 特 異 な 時 空 のイメージを 喚 起 するものだ. 周 辺 の 事 物 を 巻 き 込 みながら 発 生 成 長 減 衰 消 滅 する,すな わち 動 きのうちで 構 造 をつくるもの,それが 渦 のイメージである. 渦 に 関 わる 哲 学 史 科 学 史 をひもといてみよ う. 古 くはデモクリトスの 原 子 論 に 動 と 相 を 繋 ぐ 道 具 概 念 として 渦 が 語 られている.ダビンチもガリレ オも 水 流 に 現 れる 渦 をスケッチして, 彼 らの 関 心 の 痕 跡 を 残 している.デカルトやオイラーは,コスモ ロジーを 語 る 道 具 として 渦 に 謎 めいた 役 割 を 託 した( 図 4).しかし, 渦 そのものの 正 体 は 未 解 明 であった.ニュートンのプリンキピア 第 2 巻 は 図 2: 大 気 に 現 れる 渦. 図 3: 心 象 に 現 れる 渦 (ゴッホ). 図 4: 学 者 の 想 像 (モデル)に 現 れる 渦.オイラー 惑 星 と 彗 星 の 運 動 理 論 (1744). 4

流 体 を 扱 ったものだが, 第 1 巻 と3 巻 の 成 功 に 比 して 不 名 誉 な 評 価 を 受 けている. 渦 が 難 しい 問 題 だったからだといえるだろう. 流 体 の 渦 を 数 学 的 に 扱 う 研 究 はヘルムホルツ, ケルヴィンに 始 まる.そして 現 代 において, 渦 は 流 体 を 超 えて 抽 象 化 され,さまざまな 数 理 の 中 に 普 遍 的 な 概 念 として 現 れる. 実 は 最 も 基 本 的 な 物 理 現 象 の 一 つである 振 り 子 の 運 動 ガリレオがピサの 僧 院 で 気 付 いた 宇 宙 の 秩 序 の 原 型 は 渦 なのである. 振 り 子 は 往 復 運 動 を 繰 り 返 すように 見 えるが, 錘 の 位 置 だけでなく 速 度 ( 運 動 量 )も 加 えた 2 次 元 の 空 間 ( 位 相 空 間 という) で 表 現 すると, 楕 円 の 上 を 巡 回 する 点 が 現 れる( 図 5).この 楕 円 は 振 り 子 のエネルギ ーの 等 高 線 である. 振 れを 大 きくしてエネルギーを 増 やすと, 大 きな 楕 円 軌 道 の 上 を 巡 回 する. 位 相 空 間 の 渦 が 一 つの 質 点 を 運 ぶ 様 子 を 可 視 的 な 空 間 へ 射 影 することで 現 前 す るのが 錘 の 往 復 運 動 なのである( 図 6). 一 般 化 して 次 のように 考 えることができる. 物 が 棲 む 空 間 は, 私 たちの 目 に 見 えてい る 空 間 ( 配 位 空 間 という)ではなく,そ れ に 運 動 量 の 座 標 を 加 えた 位 相 空 間 (phase space) である. 位 相 空 間 には 二 つのものが 渦 構 造 を 与 えている. 一 つはエネルギー.これが 物 体 の 存 在 を 表 現 している.もう 一 つは 軌 道 を 決 める 幾 何 学. 振 り 子 の 運 動 はエネルギ ーの 等 高 線 を 軌 道 にする. 一 般 化 すると,エネルギーの 勾 配 ベクトル g に 対 してこれ と 直 交 するベクトル v が 軌 道 の 接 ベクトルとなる.v = Mg と 関 係 づける 写 像 M が 空 間 の 幾 何 学 を 定 義 している.これをシンプレクティック (symplectic) 幾 何 学 という. M は 渦 の 生 成 作 用 素 である. 力 学 は 位 相 空 間 の 渦 を 解 析 する 問 題 なのである. 前 節 で 物 理 の 理 論 は 物 と 空 間 の 二 項 で 構 成 される と 言 ったが,もう 少 し 肉 付 けすると 物 はエネルギーとして 定 式 化 され 4, 空 間 はシンプレクティック 幾 何 学 で 構 造 化 される. 図 5: 振 り 子 の 運 動 の 色 々な 表 現 : (a) 可 視 的 な 空 間 ( 配 位 空 間 )における 振 り 子 の 運 動.(b) 位 相 空 間 における 振 り 子 の 運 動.(c) エネルギーH と 位 相 角 τ の 極 座 標 に 変 数 変 換 すると 直 線 運 動 に なり, 周 期 的 時 間 から 直 線 的 時 間 へ 変 換 される. 4 位 相 空 間 上 の 関 数 として 表 現 されたエネルギーをハミルトニアン(Hamiltonian)と 呼 ぶ. 5

振 り 子 は 2 次 元 の 位 相 空 間 で 運 動 するので, 軌 道 =エネルギーの 等 高 線 は 閉 じた 曲 線 ( 楕 円 )になる( 図 5 (b)).つまり 回 帰 的 な 運 動 が 起 こる. 振 動 を 時 間 と 等 置 すると, 時 間 はサイクルとなる( 時 計 と 同 じだ). 完 全 に 規 則 的 = 回 帰 的 な 運 動 を 記 述 する 時 間 はサイクルである( 実 数 を 周 期 で 除 した 剰 余 ). 周 期 を 延 長 して 実 数 軸 上 の 時 間 を 定 義 することもできる ( 図 5 (c)). 無 限 に 長 い 時 間 が 本 当 に 必 要 となるのは, 非 回 帰 的 な 運 動 =カオスを 記 述 するときである( 図 7).カオスは2より 高 い 次 元 の 空 間 で 起 こる 複 雑 な 運 動 である. 図 6: 位 相 空 間 は 渦 で 埋 められている. 渦 によって 運 ばれる 点 が 位 相 空 間 に 軌 道 を 描 く. その 配 位 空 間 への 射 影 が, 可 視 的 な 世 界 に 物 体 の 運 動 として 現 出 する. 図 7: 位 相 空 間 の 断 面 に 現 れる 軌 道 の 通 過 点.(a) 規 則 的 な 運 動 と,その 間 に 埋 め 込 まれ た 周 期 的 な 運 動.(b) カオスの 軌 道 は 決 して 回 帰 しない. 6

3. 自 己 組 織 化 する 時 空 = 渦 前 節 では, 渦 が 時 空 を 満 たし,そこに 生 起 する 運 動 の 幾 何 学 を 決 定 していること を 示 した. 例 にあげた 振 り 子 の 運 動 はシンプレクティック 幾 何 学 という a priori な 構 造 で 規 定 されている 5.この 古 典 的 な 対 象 を 渦 だと 言 うのは 単 にレトリックだと 批 判 されてもしかたない. 本 当 に 面 白 いのは,そして 科 学 史 哲 学 史 の 中 で 脈 々と 語 られて きた 渦 は,まさに 流 体 の 渦 のように,それ 自 体 が 自 己 組 織 化 する 運 動 であり, 同 時 にそこにおかれた 物 体 を 支 配 する 時 空 の 構 造 でもある 渦 である. まず, 渦 が 葉 (leaf) であることを 述 べよう.ミクロな 物 理 の 描 像 では, 空 間 6 は 過 不 足 のない物 理 量 でパラメタ 化 されている.しかし,マクロな 系 の 空 間 はしばし ば 冗 長 (redundant) であり, 実 は 空 間 に 埋 め 込 まれた 葉 っぱの 上 でしか 運 動 できない ( 図 8).つまり, 全 体 の 運 動 には 束 縛 がかかっているのだ.このような 状 況 を 空 間 の 葉 層 化 (foliation)という. 渦 があることによって 空 間 は 葉 層 化 する.すなわち 渦 はそれ 自 身 の 運 動 を 束 縛 する. 空 間 のパラメタに 過 不 足 がないとはどういうことかを 説 明 しよう. 私 たちが 事 象 とし て 認 識 できるのは 何 らかの 変 化 変 動 だけである.ここでは 時 間 の 軸 上 で 観 測 される 変 化 を 一 般 的 に 運 動 と 呼 ぶ. 運 動 の 表 現 には 二 つの 方 法 がある. (1) 状 態 を 位 相 空 間 の 点 で 表 わし,その 点 の 軌 道 ( 変 化 の 歴 史 )で 運 動 を 表 わす. (2) 状 態 の 観 測 値 (オブザーバブル)の 時 間 変 化 によって 運 動 を 表 現 する. 図 8: 葉 層 化 した 位 相 空 間 のイメージ.アクチュアルな 運 動 は 葉 の 上 に 束 縛 される. 5 その 渦 は 正 準 ハミルトニアン 流 と 呼 ばれる. 6 ミクロの 物 理 学 は, 事 象 を 要 素 還 元 し,その 要 素 を 記 述 するために 必 要 十 分 なパラメタを 発 見 同 定 することを 目 的 とする. 7

観 測 値 ( 物 理 量 と 呼 ぶ)の 全 体 集 合 を 随 伴 空 間 という 7. 普 通 は 位 相 空 間 と 随 伴 空 間 を 同 一 視 できる.つまり 位 相 空 間 の 座 標 は 観 測 可 能 な 物 理 量 であり,その 観 測 値 を 全 てそ ろえることで 状 態 が 確 定 する. 第 1 節 で 述 べたように, 空 間 はその 中 の 点 を 名 指 す 概 念 装 置 であるが,その 名 指 しは 観 測 と 等 価 だと 考 えてよい. しかし, 位 相 空 間 は 私 たちが 事 象 をモデル 化 するために a priori に 措 定 するものであ る.はたして 観 測 によって 位 相 空 間 の 中 のあまねく 全 ての 点 が 確 定 するだろうか? 空 間 という 概 念 装 置 が 観 測 という 実 践 的 な( 少 なくとも 理 論 上 の) 行 為 の 結 果 =actuality と 整 合 するとは 限 らない. 観 測 は 動 くもの しか 捉 えることができない. 観 測 にかか らない( 概 念 上 の)パラメタ が 存 在 するとき, 位 相 空 間 は 冗 長 である.つまり 実 際 に 変 動 する 物 理 量 の 軌 道 たち( 余 随 伴 空 間 )は 位 相 空 間 に 埋 め 込 まれた 部 分 多 様 体 = 葉 に なるのである. しかし, 変 化 しないという 意 味 で 観 測 にかからないパラメタは, 無 意 味 ではない.そ れは 物 の 属 性 ではなく,むしろ 空 間 の 構 造 だと 考 えることができる.あるパラ メタが 変 化 しないということは,それを 変 化 させないような 束 縛 が 位 相 空 間 の 上 にある という 意 味 だ.つまり 変 化 しないパラメタは, 実 際 に 物 が 運 動 できる 領 域 = 葉 を 規 定 している. 葉 は, 私 たちが a priori に 措 定 する 空 間 の 中 の 複 雑 に 分 岐 した 多 様 体 であ る.その 全 容 を 知 ることは 極 めて 難 しい.なぜなら 葉 は a priori ではなく,そこにおか れた 物 の 運 動 と 相 互 に 関 係 しながら 自 己 組 織 化 する,つまり 物 という 側 面 も 併 せも つからである. 渦 とはその 大 きさが 循 環 によって 計 られる 物 である(たとえば 流 体 の 渦 は 流 体 を 構 成 するエレメントたちの 運 動 である). 循 環 は 不 変 量 (invariant)である(ケ ルヴィンの 循 環 法 則 ).その 意 味 では 空 間 である. 渦 は,それ 自 身 の 定 義 である 循 環 を 一 定 にするようにしか 運 動 できない. 渦 は 自 らが 定 義 する 葉 の 上 を 巡 るので ある. 渦 という 葉 は, 長 い 時 間 スケールでみると, 完 全 に 不 変 ではない. 渦 は 自 己 組 織 化 し,いずれは 消 滅 し,また 再 生 する. 長 い 時 間 スケール と 言 ったのは, 渦 というマクロな 階 層 の 運 動 構 造 がミクロな 階 層 の 運 動 (たとえば 流 体 の 渦 では, 流 体 を 構 成 する 分 子 たちのランダムな 運 動 = 熱 運 動 )と 相 関 する 時 間 スケールのことである. いわゆる 摩 擦 の 効 果 で,マクロな 運 動 である 渦 流 の 運 動 エネルギーは 熱 エネルギーに 変 換 される. 渦 が 次 第 に 雲 散 霧 消 することは 自 然 の 摂 理 ( 熱 力 学 第 2 法 則 )として 理 7 さらにそれと 共 役 な 状 態 の 集 合 を 余 随 伴 空 間 という. 余 随 伴 空 間 の 軌 道 = 余 随 伴 軌 道 は 運 動 の 正 準 な 表 現 を 与 える.すなわち 観 測 によって 状 態 を 定 義 する ことから 始 めれば,その 変 化 を 表 わす 軌 道 = 余 随 伴 軌 道 はシンプレクティック 幾 何 学 の 構 造 をもつ.これをシンプレクティック 葉 という. 8

解 できるのだが, 不 思 議 なのは 渦 が 生 まれるプロセスである. 実 は 循 環 の 変 化 は 熱 サイクルに 等 しい. 流 体 が 自 発 的 に 熱 機 関 のように 働 けば, 渦 を 生 みだすこと ができるのである.もちろん,ただ 空 間 に 自 由 に 横 たわる 物 質 が 自 ら 機 関 となって 働 き 始 めることはない. 普 通 は 物 の 分 布 の 歪 み(たとえばエントロピーと 温 度 の 分 布 の ずれ)によって 熱 サイクルが 生 まれる.もう 一 つ, 空 間 の 歪 みも 熱 サイクルをつくるこ とができる. 宇 宙 を 満 たす 渦 たち( 図 9)の 起 源 は 何 か? 一 つの 説 として, 相 対 論 の 効 果 による 時 空 の 歪 みが 最 初 の 渦 を 作 ったというモデルがある.それは 電 磁 場 の 渦 すな わち 磁 場 として 今 も 天 体 に 巻 きついている. 図 9: 宇 宙 を 満 たす 渦 (released by NASA). 持 続 する 構 造 の 典 型 は 渦 である.しかし, その 起 源, 生 成 メカニズムは 謎 である. 相 対 論 の 効 果 で 時 空 が 歪 むために 渦 ができる というモデルが 提 唱 されている:S.M. Mahajan and Z. Yoshida, Twisting space-time: Relativistic origin of seed magnetic field and vorticity, Phys. Rev. Lett. 105 (2010) 095005. 参 考 文 献 1. P. Cartier, A mad day's work: from Grothendieck to Connes and Kontsevich the evolution of concepts of space and symmetry, Bull. American Mathematical Society 38 (2001) 389 408. 2. 吉 田 善 章, 非 線 形 とは 何 か 複 雑 性 への 挑 戦 ( 岩 波 書 店, 2008); Z. Yoshida, Nonlinear Science the challenge of complex systems (Springer, 2010). 3. 吉 田 善 章, 時 空 の 問 題 として 見 るプラズマ 物 理 : 渦 とは 何 かをめぐって, 日 本 物 理 学 会 誌 68 (2013), 74 81. 9