提 言 の 趣 旨 歴 史 的 な 政 権 交 代 の 結 果 日 本 の 外 交 安 全 保 障 政 策 が 民 主 党 によって 見 直 されること となった 民 主 党 はマニフェストの 中 で 日 本 外 交 の 基 礎 として 緊 密 で 対 等 な 日 米 同 盟 関 係 をつくるため 主 体 的 な 外 交 戦 略 を 構 築 するとし 日 米 地 位 協 定 の 改 定 を 提 起 し 米 軍 再 編 や 在 日 米 軍 基 地 のあり 方 についても 見 直 しの 方 向 で 臨 む ことを 掲 げている 鳩 山 民 主 党 代 表 は 政 権 発 足 前 からインド 洋 における 海 上 自 衛 隊 による 給 油 活 動 の 停 止 や 普 天 間 飛 行 場 の 県 外 移 設 などを 示 唆 していたが 鳩 山 新 政 権 の 発 足 で このような 方 針 が 実 行 に 移 されるのかどうか 国 の 内 外 で 注 目 を 集 めている 東 京 財 団 安 全 保 障 研 究 プロジェクトでは 鳩 山 新 政 権 が 外 交 安 全 保 障 戦 略 を 見 直 す 上 で 必 要 不 可 欠 と 考 える 10 項 目 の 指 針 を 提 言 としてまとめた 言 うまでもなく これは 比 較 的 緊 急 性 を 要 する 必 要 最 小 限 の 指 針 であり 日 本 の 外 交 安 全 保 障 戦 略 の 全 体 像 を 示 す ものではない より 包 括 的 な 日 本 の 安 全 保 障 戦 略 については 当 プロジェクトが 2008 年 10 月 に 発 表 し た 提 言 新 しい 日 本 の 安 全 保 障 戦 略 - 多 層 協 調 的 安 全 保 障 戦 略 を 参 照 されたい これは 2004 年 防 衛 大 綱 以 降 の 日 本 を 取 り 巻 く 安 全 保 障 環 境 の 変 化 に 対 応 する 新 たな 安 全 保 障 戦 略 の 指 針 を 国 家 戦 略 から 説 き 起 こして 提 示 したものである 政 権 交 代 は 内 政 外 交 を 問 わず 政 策 の 根 本 に 立 ち 返 ってその 意 義 と 有 効 性 を 再 評 価 するとともに 環 境 の 変 化 に 対 応 する 新 しいアプローチを 導 入 する 好 機 でもある 鳩 山 新 政 権 には 外 交 安 全 保 障 政 策 において 国 益 を 増 進 するようなチェンジを 期 待 したい プロジェクト リーダー: 北 岡 伸 一 ( 東 京 財 団 上 席 研 究 員 東 京 大 学 大 学 院 法 学 政 治 学 研 究 科 教 授 ) 山 口 昇 ( 防 衛 大 学 総 合 安 全 保 障 研 究 科 教 授 ) プロジェクト メンバー: 神 谷 万 丈 ( 防 衛 大 学 校 総 合 安 全 保 障 研 究 科 教 授 ) 神 保 謙 ( 東 京 財 団 研 究 員 慶 應 義 塾 大 学 総 合 政 策 学 部 准 教 授 ) 渡 部 恒 雄 ( 東 京 財 団 上 席 研 究 員 ) 本 提 言 に 関 するお 問 い 合 わせ 先 : 東 京 財 団 政 策 研 究 部 片 山 正 一 電 話 :03-6229-5630 e-mail:katayama@tkfd.or.jp
日 本 の 安 全 保 障 : 鳩 山 新 政 権 への10の 提 言 鳩 山 新 政 権 は 50 年 以 上 も 続 いた 自 由 民 主 党 中 心 の 政 権 から 本 格 的 な 政 権 交 代 をした 歴 史 的 な 政 権 である その 外 交 姿 勢 と 政 策 は 一 部 からは 懸 念 を 持 たれているが マニフ ェストやこれまでの 首 脳 の 発 言 などから 推 察 される 優 先 課 題 の 中 には 緊 密 で 対 等 な 日 米 関 係 アジア 外 交 の 強 化 平 和 の 構 築 に 向 けた 役 割 の 提 唱 など 今 後 の 取 るべき 方 針 として 肯 定 的 に 評 価 できる 点 が 多 い 政 権 として これらに 関 して 体 系 的 かつ 具 体 的 な 施 策 を 早 急 に 示 すことが 期 待 される さらに 国 民 の 積 極 的 な 支 持 を 背 景 にし 脱 官 僚 依 存 を 表 明 している 鳩 山 政 権 には ルールと 先 例 を 過 度 に 重 視 するこれまでの 官 僚 依 存 の 政 策 決 定 システムを 打 破 して 日 本 の 政 策 を 前 に 進 める 可 能 性 が 期 待 できる 東 京 財 団 安 全 保 障 研 究 プロジェクトは 本 格 的 な 政 権 交 代 の 時 代 を 迎 えた 日 本 の 将 来 を 展 望 し 鳩 山 新 政 権 に 次 のような 提 言 を 行 う < 日 米 同 盟 の 課 題 > 提 言 1 在 日 米 軍 再 編 合 意 については 沖 縄 における 米 軍 基 地 の 固 定 化 を 招 かぬように 県 外 移 設 にこだわらずに 柔 軟 に 対 応 すべきだ 日 米 両 政 府 で 合 意 している 現 在 の 米 軍 再 編 計 画 は 日 米 両 国 が 様 々なオプションを 検 討 してきた 過 程 で ベストではないにしても 両 国 や 沖 縄 県 にとって 合 意 できる 最 大 公 約 数 的 なものを 模 索 した 結 果 である 米 国 のオバマ 政 権 をとりまく 国 内 政 治 環 境 は 現 在 の 合 意 案 の 根 本 的 な 見 直 しを 許 すような 余 裕 のあるものではない この 再 編 計 画 を 見 直 すこ とは その 目 的 である 沖 縄 の 負 担 の 軽 減 を 長 期 にわたり 停 滞 させるものになりかねない それは 膨 大 な 作 業 を 要 し 新 政 権 の 政 治 アセットを 大 量 に 使 い 果 たすばかりか 結 果 とし て 日 米 政 府 間 に 計 り 知 れない 軋 轢 を 生 む 可 能 性 が 高 い このことによって 市 街 地 の 中 に ある 普 天 間 飛 行 場 の 危 険 を 放 置 し 8 千 人 の 海 兵 隊 の 沖 縄 からグアム 島 への 移 転 や 那 覇 市 以 南 の 米 軍 施 設 の 全 面 返 還 を 停 止 させ さらにこれまで 交 渉 に 尽 力 してきた 米 軍 担 当 者 に 無 力 感 を 与 え 沖 縄 の 基 地 を 固 定 化 するという 結 果 を 招 く 恐 れすらある 提 言 2 日 米 地 位 協 定 の 改 定 は 拙 速 を 避 け 両 国 間 の 長 期 的 な 課 題 として 問 題 提 起 するとと もに 周 辺 の 住 民 の 負 担 軽 減 につながる 運 用 改 善 を 直 近 の 目 標 とする 日 米 地 位 協 定 の 見 直 しは 日 米 の 担 当 者 にとってはパンドラの 箱 を 開 けるとして 一 種 の タブーとされてきた 鳩 山 新 政 権 はこの 問 題 に 積 極 的 に 取 り 組 む 姿 勢 を 示 すべきだ その 際 見 直 しの 目 的 や 優 先 的 重 点 的 に 取 り 組 むべき 分 野 を 明 確 にし 特 別 協 定 の 締 結 も 1
含 め 両 国 間 の 中 長 期 的 な 課 題 として 焦 点 を 絞 った 形 で 問 題 提 起 することが 重 要 だ 同 時 に 現 に 基 地 周 辺 住 民 が 直 面 している 問 題 についても 積 極 的 に 対 応 する 例 えば 在 日 米 軍 基 地 における 騒 音 軽 減 などを 米 国 側 に 働 きかけて 地 位 協 定 の 運 用 上 で 改 善 すべき 点 を 取 り 上 げていく 特 に 在 日 米 軍 では 基 地 司 令 官 の 交 代 に 伴 い 深 夜 の 戦 闘 機 の 離 発 着 訓 練 の 自 粛 等 の 運 用 上 の 制 限 が 的 確 に 引 き 継 がれないケースもあり 日 常 生 活 の 中 で 運 用 の 改 善 が 実 感 されるよう 基 地 周 辺 住 民 の 負 担 を 軽 減 させることが 大 切 だ < 世 界 の 平 和 への 課 題 > 提 言 3 世 界 の 平 和 と 繁 栄 を 実 現 するための 活 動 の 一 環 として 当 面 ソマリア 沖 における 海 賊 対 処 活 動 への 参 加 を 各 国 艦 船 への 給 油 活 動 などを 含 めたものに 拡 大 するとともに 国 連 PKO( 平 和 維 持 活 動 )への 参 加 について 長 期 的 なビジョンを 描 きつつこれを 拡 大 していく 世 界 の 平 和 と 繁 栄 を 実 現 するため 日 本 として 国 際 社 会 における 地 位 に 相 応 しく ま た 目 に 見 える 形 で 協 力 していくことが 重 要 だ 近 年 国 際 テロ 海 賊 行 為 大 量 破 壊 兵 器 の 拡 散 パンデミック( 爆 発 的 な 感 染 症 )などの 温 床 となり 得 る 世 界 の 貧 困 地 域 におけ る 開 発 支 援 と 治 安 維 持 の 必 要 性 は 増 しつつある 日 本 がこれらの 活 動 に 積 極 的 に 関 与 する ことに 対 する 国 際 社 会 の 期 待 も 大 きい 特 に ソマリア 沖 に 展 開 する 各 国 艦 船 への 給 油 は 潜 在 的 ニーズもあり 日 本 が 貢 献 できる 活 動 の 一 つである しかるに 現 在 の 日 本 の 国 連 PKO への 派 遣 人 員 は 50 人 に 満 たないのが 現 状 だ 国 連 PKO などへの 参 加 拡 大 は 民 主 党 マニ フェストに 掲 げられているだけでなく オバマ 政 権 の 国 連 重 視 の 立 場 とも 一 致 するもので ある また このような 非 伝 統 的 脅 威 への 対 処 は 2005 年 に 日 米 安 全 保 障 協 議 委 員 会 (2 プラス2)で 合 意 された 世 界 における 共 通 の 戦 略 目 標 でもあり 米 国 との 間 における 新 たな 協 力 分 野 として オバマ 政 権 に 対 して 積 極 的 に 提 唱 していくべきだ 提 言 4 アフガニスタン 復 興 支 援 に 関 し 当 面 インド 洋 における 給 油 活 動 のなんらかの 形 での 継 続 もしくは 他 の 協 力 活 動 による 代 替 を 追 及 するとともに 長 期 的 には 復 興 のため に 必 要 な 要 員 を 訓 練 し 彼 らを 支 援 していくための 国 際 職 業 訓 練 支 援 施 設 をアフガニス タン 周 辺 国 もしくは 日 本 に 建 設 し これを 維 持 運 営 することを 目 指 す アフガニスタン 復 興 支 援 において インド 洋 における 給 油 活 動 は 何 らかの 形 で 継 続 する ことが 望 ましいが 同 時 に 治 安 維 持 インフラ 整 備 および 経 済 復 興 のため 日 本 は 積 極 的 な 協 力 策 を 打 ち 出 すべきだ 現 在 警 察 活 動 そのものについて 欧 州 および 米 国 をはじめと する 国 際 的 な 取 り 組 みが 進 展 しつつある 一 方 これに 付 随 する 支 援 機 能 を 充 実 させる 上 で 日 本 が 協 力 する 余 地 は 大 きい たとえば 警 察 消 防 機 能 の 一 部 である 救 急 医 療 チーム (Emergency Medical Team)の 要 員 をアフガニスタン 国 外 において 教 育 し 救 命 機 器 救 2
急 車 両 などの 必 要 機 材 とともに 本 国 に 送 り 込 むことである さらに 機 材 の 整 備 補 給 や 要 員 の 再 教 育 といったアフターサービスを 継 続 的 に 提 供 することによってその 効 果 の 定 着 を 期 することができる また 中 長 期 的 には 農 業 技 術 や 農 業 産 品 の 加 工 技 術 に 関 するプロ フェッショナルを 育 成 することは アフガニスタンの 社 会 経 済 インフラ 建 設 のためにき わめて 有 用 であり これらの 分 野 に 関 する 教 育 についても 同 時 に 着 手 すべきだ 提 言 5 核 なき 世 界 という 理 想 を 実 現 するために 積 極 的 に 提 案 し 行 動 すべきだ 核 軍 縮 は 重 要 だが 米 国 の 核 の 傘 の 信 頼 性 を 損 なってはならない 日 本 が 核 軍 縮 核 廃 絶 と 核 の 傘 維 持 政 策 を 同 時 に 追 求 することは 決 して 矛 盾 ではない オバマ 大 統 領 は プラハで 米 国 は 廃 絶 のために 行 動 するが 核 兵 器 が 存 在 する 限 りは 世 界 の 平 和 と 安 全 に 果 す 核 の 役 割 を 認 め 自 国 と 同 盟 国 への 攻 撃 を 抑 止 するための 核 を 維 持 し 続 けると 宣 言 した 鳩 山 政 権 もこれに 呼 応 すべきだ 最 近 の 世 界 的 な 核 軍 縮 の 機 運 の 高 まりは 日 本 にとって 核 軍 縮 へのアイデアを 世 界 に 再 発 信 し 実 現 可 能 な 政 策 を 主 導 していくチャンスだ 同 時 に 核 廃 絶 という 理 想 が 実 現 されるまでの 間 核 を 持 たない 日 本 の 安 全 をいかに 守 るのかが 問 題 である 日 本 周 辺 では ロシアが 冷 戦 終 結 後 20 年 を 経 て なお 巨 大 な 核 兵 器 を 維 持 し 中 国 は 核 戦 力 の 近 代 化 と 増 強 を 進 め 北 朝 鮮 も 核 実 験 やミサ イル 実 験 を 繰 り 返 しており 核 の 危 険 はむしろ 高 まった ここで 鍵 となるのが 米 国 の 核 兵 器 の 抑 止 効 果 だ 核 軍 縮 は 重 要 だが 核 の 傘 の 信 頼 性 を 損 ない 日 本 の 安 全 を 危 険 に 曝 すことがあってはならない 日 本 が 核 の 傘 を 信 頼 して 非 核 政 策 をとり 続 けることは それ 自 体 がグローバルな 核 軍 縮 核 廃 絶 への 大 きな 貢 献 なのである 提 言 6 核 兵 器 のこれ 以 上 の 拡 散 を 防 止 し 北 朝 鮮 に 核 放 棄 を 迫 っていくために NPT( 核 兵 器 不 拡 散 条 約 )レジームを 通 じての 外 交 努 力 と 日 米 同 盟 を 中 核 とした 軍 事 的 圧 力 を ともに 強 めていくべきだ 核 不 拡 散 は 核 軍 縮 以 上 に 緊 急 性 が 高 い 課 題 である 北 朝 鮮 の 核 武 装 が 既 成 事 実 化 したり 国 際 テロリストが 核 を 手 にしたりすれば 日 本 の 安 全 が 直 接 に 脅 かされる これを 防 ぐた めには NPT レジームを 通 じた 外 交 努 力 がきわめて 重 要 だ 鳩 山 政 権 は 国 際 原 子 力 機 関 (IAEA)の 今 後 の 活 動 を 全 面 的 に 支 援 すべきだ 一 方 核 不 拡 散 は 外 交 努 力 だけでは 実 現 できない 日 本 の 安 全 に 深 刻 な 影 響 を 及 ぼす 北 朝 鮮 による 核 保 有 と 北 朝 鮮 から 他 の 国 家 や 国 際 テロ 集 団 などへの 核 流 出 を 阻 止 するためには 軍 事 を 含 めたあらゆる 面 での 国 際 的 な 圧 力 が 不 可 欠 だ 特 に 肝 要 なのは 日 米 同 盟 を 強 固 に 維 持 することだ 米 国 による 核 抑 止 の 確 保 はもちろん 通 常 兵 器 やミサイル 防 衛 などを 含 め 自 衛 隊 と 米 軍 が 密 接 な 意 思 疎 通 と 連 携 の 下 に 北 朝 鮮 と 向 き 合 うという 態 勢 が 維 持 されなければならない 3
提 言 7 国 連 外 交 を 飛 躍 的 に 強 化 し 日 本 の 発 案 である 人 間 の 安 全 保 障 について 大 いに 指 導 力 を 発 揮 しつつ 安 保 理 常 任 理 事 国 を 目 指 す 努 力 を 継 続 する まず 首 相 は 毎 年 9 月 に 開 催 される 国 連 総 会 の 一 般 討 論 に 必 ず 出 席 するとともに より 多 くの 日 本 人 を 平 和 維 持 活 動 の 代 表 等 の 国 連 の 主 要 なポストに 送 り 込 むことを 通 じて 国 連 活 動 における 日 本 のリ ーダーシップ 発 揮 に 努 めるべきだ 鳩 山 首 相 の 国 連 訪 問 と 気 候 変 動 に 関 する 大 胆 な 提 言 が 世 界 に 大 きな 印 象 を 与 えたように 唯 一 の 普 遍 的 機 関 である 国 連 は 日 本 のメッセージを 世 界 に 発 するのにもっとも 適 した 場 であり 多 くのバイ( 二 国 間 )の 会 談 がセットできる 日 本 人 が 国 連 でより 能 動 的 に 行 動 し 事 務 次 長 事 務 次 長 補 のポストをより 多 く 獲 得 し かつて 明 石 康 氏 がカンボジアとユ ーゴスラビアで 特 別 代 表 を 務 めたように 紛 争 解 決 の 現 場 でも 日 本 人 がリーダーシップを とることが 重 要 だ 国 連 を 主 導 して 人 間 の 尊 厳 と 自 立 支 援 を 重 視 する 人 間 の 安 全 保 障 の 理 念 をさらに 世 界 に 広 め 紛 争 の 平 和 的 解 決 法 の 支 配 人 権 の 尊 重 などに 尽 力 すべき だ そのためにも 日 本 が 安 保 理 常 任 理 事 国 の 地 位 を 獲 得 できるよう 安 保 理 改 革 に 取 り 組 む 来 年 4 月 には 日 本 が 安 保 理 議 長 となるので 首 相 または 外 相 が 出 席 して 議 論 をリ ードすることを 今 から 準 備 しておくべきだ このようにして 国 連 の 活 性 化 を 推 進 すれば 世 界 とアジア 地 域 の 安 定 に 貢 献 し 日 本 自 身 の 安 全 を 高 めることにつながる <アジア 太 平 洋 地 域 にどう 向 き 合 うか> 提 言 8 鳩 山 新 政 権 が 目 指 す アジア 太 平 洋 地 域 の 域 内 協 力 体 制 を 確 立 するためには 中 国 との 戦 略 的 関 係 を 促 進 する 一 方 で 同 盟 国 である 米 国 はもちろん 韓 豪 そして ASEAN などとの 連 携 を 強 化 していくことが 不 可 欠 だ 多 層 的 に 協 力 関 係 を 構 築 し 地 域 の 安 定 を 図 るべきだ アジア 太 平 洋 地 域 には 有 効 な 多 国 間 の 安 全 保 障 枠 組 みがなく 過 去 の 戦 争 や 領 土 問 題 政 治 体 制 の 違 いなどから 国 家 間 に 不 信 感 が 存 在 する 新 政 権 は まず 隣 国 である 中 国 韓 国 との 関 係 を 改 善 強 化 し 同 時 に 他 の 地 域 協 力 枠 組 みを 構 築 すべきだ 米 国 の 協 力 抜 きにはこの 地 域 の 安 定 はあり 得 ないため 地 域 安 全 保 障 協 力 の 枠 組 みと 緊 密 で 対 等 な 日 米 関 係 を 有 機 的 に 連 携 させることが 重 要 であり 地 域 協 力 と 日 米 協 力 を 同 時 に 深 化 させ る 必 要 がある 例 えば 豪 州 と 韓 国 などの 米 国 の 同 盟 国 との 協 力 関 係 を 強 化 し ASEAN 地 域 フォーラム 等 との 連 携 を 図 るなど 地 域 に 幾 重 にもネットワークを 構 築 し 連 動 させて いくべきだ 中 国 との 関 係 構 築 は 最 も 重 要 な 課 題 の 一 つである 中 国 の 発 展 は 世 界 の 経 済 に 貢 献 する 一 方 で 軍 事 力 の 増 強 は 地 域 の 潜 在 的 な 不 安 定 要 因 となっている 特 に 軍 事 力 の 全 体 像 が 見 えにくく 政 策 決 定 過 程 も 不 透 明 なことが 他 国 の 懸 念 を 招 いている 中 国 の 台 頭 が 地 4
域 と 世 界 の 安 定 を 脅 かすことがないように 中 国 を 促 していく 必 要 がある 具 体 的 には 軍 事 力 の 透 明 化 や 東 シナ 海 ガス 田 開 発 食 の 安 全 など 日 中 両 国 間 に 存 在 する 懸 念 事 項 を 一 つひとつ 解 決 し 戦 略 的 な 協 力 関 係 を 樹 立 していくべきだ < 平 和 な 日 本 を 守 るための 指 針 と 政 策 インフラの 整 備 > 提 言 9 防 衛 政 策 について 明 確 な 指 針 を 示 し これに 基 づいて 計 画 的 に 防 衛 力 を 整 備 してい く 上 で 新 たな 防 衛 計 画 の 大 綱 を 策 定 することは 急 務 だ このことは 国 内 外 に 対 して 新 しい 政 権 としての 安 全 保 障 防 衛 戦 略 を 明 確 に 示 すという 点 においても 重 要 である 世 界 の 平 和 と 繁 栄 を 実 現 するために 国 際 的 な 安 全 保 障 協 力 活 動 により 積 極 的 に 取 り 組 むこと より 対 等 で 緊 密 な 日 米 安 全 保 障 協 力 を 目 指 すことは 新 たな 防 衛 大 綱 の 中 心 的 な コンセプトとなり 得 る これらを 実 現 するために 自 衛 隊 が 諸 外 国 の 軍 や 政 府 非 政 府 機 関 と 有 機 的 に 連 携 しつつ 平 和 維 持 活 動 などに 従 事 し 得 るよう 編 成 および 装 備 を 改 善 して いくことは 喫 緊 の 課 題 だ このような 体 制 を 構 築 することは ただちに 米 軍 との 協 力 関 係 を 強 化 することにもなる また 北 朝 鮮 の 核 保 有 を 牽 制 するためにも ミサイルや 大 量 破 壊 兵 器 の 軍 備 管 理 軍 縮 の 努 力 はきわめて 重 要 だ 一 方 現 存 する 脅 威 に 対 しては ミサ イル 防 衛 や 住 民 保 護 施 策 を 推 進 する さらに 冷 戦 期 以 来 艦 艇 航 空 機 戦 闘 車 両 など のハードウェアに 偏 重 しがちな 自 衛 隊 の 能 力 を 情 報 技 術 に 立 脚 した 監 視 警 戒 偵 察 や 指 揮 統 制 機 能 といったソフトウェア 面 の 強 化 と ネットワーク 化 の 推 進 教 育 訓 練 による 隊 員 の 能 力 向 上 によって より 実 効 性 の 高 いものにしていくべきだ 提 言 10 世 界 の 安 全 保 障 問 題 に 効 果 的 に 対 処 するために 日 本 自 らの 情 報 能 力 および 日 米 間 の 情 報 共 有 体 制 を 強 化 すべきだ このことは 日 本 の 主 体 的 判 断 を 可 能 にし より 対 等 な 対 米 関 係 を 実 現 するためにも 必 須 である 日 本 における 情 報 能 力 の 強 化 のための 優 先 課 題 として 衛 星 情 報 や 人 的 情 報 などの 各 種 情 報 を 収 集 するためのセンサー 機 能 情 報 を 集 約 処 理 分 配 する 分 析 処 理 機 能 これ らを 保 護 しつつ 伝 達 する 情 報 通 信 機 能 の 強 化 などがあり そのための 法 的 基 盤 とインフ ラ 整 備 は 優 先 すべき 課 題 である また このような 努 力 は 世 界 随 一 の 能 力 を 有 する 米 国 からの 情 報 を 有 効 に 活 用 しつつ 日 本 として 適 切 な 意 思 決 定 を 行 うことにつながり 日 本 の 政 策 判 断 の 上 でも 緊 密 な 同 盟 関 係 の 維 持 のためにも 極 めて 重 要 だ 法 的 基 盤 として 急 がれる 課 題 の 一 つに 国 会 議 員 の 守 秘 義 務 の 法 制 化 があるが これらは 政 治 主 導 を 掲 げ る 鳩 山 新 政 権 にとって 官 僚 との 情 報 共 有 の 促 進 にも 効 果 的 である 5
日 本 の 安 全 保 障 ~ 鳩 山 新 政 権 への 10 の 提 言 ~ 2009 年 10 月 発 行 発 行 者 東 京 財 団 107-0052 東 京 都 港 区 赤 坂 1-2-2 日 本 財 団 ビル 3F Tel 03-6229-5504( 広 報 代 表 ) Fax 03-6229-5508 E-mail info@tkfd.or.jp URL http://www.tkfd.or.jp 無 断 転 載 複 製 および 転 訳 載 を 禁 止 します 引 用 の 際 は 本 書 が 出 典 であることを 必 ず 明 記 してください 東 京 財 団 は 日 本 財 団 および 競 艇 業 界 の 総 意 のもと 公 益 性 の 高 い 活 動 を 行 う 財 団 として 競 艇 事 業 の 収 益 金 から 出 捐 を 得 て 設 立 され 活 動 を 行 っています