気 候 変 動 の 観 測 予 測 及 び 影 響 評 価 統 合 レポート 日 本 の 気 候 変 動 とその 影 響 (2012 年 度 版 ) 2013 年 3 月 文 部 科 学 省 気 象 庁 環 境 省
目 次 はじめに 1 第 1 章 気 候 変 動 のメカニズム 2 1.1 気 候 変 動 とその 要 因 2 1.1.1 気 候 とは 2 1.1.2 気 候 を 決 める 要 因 と 気 候 システム 2 コラム 1 平 年 値 の 基 準 期 間 3 1.2 温 室 効 果 ガス 濃 度 の 変 化 4 1.3 近 年 の 地 球 温 暖 化 の 原 因 5 コラム 2 炭 素 循 環 7 コラム 3 太 陽 活 動 と 気 候 8 コラム 4 地 球 温 暖 化 は 止 まった のではないか 9 コラム 5 気 候 における 様 々な 変 動 や 変 化 とその 用 語 について 10 第 2 章 気 候 変 動 の 観 測 結 果 と 将 来 予 測 11 2.1 気 候 に 関 する 観 測 事 実 11 2.1.1 気 温 11 2.1.2 降 水 量 12 コラム 6 アメダスでみた 短 時 間 強 雨 の 観 測 回 数 の 変 化 14 2.1.3 海 洋 15 2.1.4 海 氷 16 2.1.5 台 風 17 コラム 7 世 界 における 極 端 な 現 象 の 変 化 17 2.2 将 来 予 測 される 気 候 変 動 18 2.2.1 気 候 変 動 予 測 と 将 来 シナリオ 18 コラム 8 IPCC の 評 価 報 告 書 における 可 能 性 と 確 信 度 の 表 現 20 2.2.2 気 温 21 2.2.3 降 水 量 23 2.2.4 降 雪 量 最 深 積 雪 25 2.2.5 台 風 25 コラム 9 極 端 に 強 い 台 風 のシミュレーション 26 2.2.6 海 面 水 温 27 2.2.7 海 面 水 位 27 コラム 10 RCP シナリオを 用 いた 予 測 28 第 3 章 気 候 変 動 による 影 響 29 コラム 11 気 候 システムの 急 変 ~ ティッピング ポイント とは? 29 3.1 気 候 変 動 の 分 野 別 影 響 ( 世 界 ) 30 コラム 12 海 外 での 極 端 な 気 象 気 候 現 象 と 日 本 に 及 ぼす 影 響 32 3.2 日 本 における 気 候 変 動 の 影 響 33 3.2.1 各 分 野 への 影 響 とその 捉 え 方 33 3.2.2 水 環 境 水 資 源 35 コラム 13 日 本 の 1 人 あたり 水 資 源 量 36 コラム 14 年 超 過 確 率 1/100 の 現 象 とは? 37 3.2.3 水 災 害 沿 岸 38
コラム 15 近 年 における 水 災 害 事 例 39 コラム 16 複 合 災 害 について 41 コラム 17 深 層 崩 壊 について 42 3.2.4 自 然 生 態 系 43 コラム 18 生 物 多 様 性 のモニタリング 47 3.2.5 食 料 48 3.2.6 健 康 52 コラム 19 ヒートアイランド 現 象 52 3.2.7 国 民 生 活 55 第 4 章 将 来 の 気 候 変 動 に 対 する 適 応 策 の 現 状 と 課 題 56 4.1 我 が 国 における 適 応 の 取 組 56 4.1.1 個 別 分 野 での 適 応 の 取 組 56 4.1.2 モニタリング 及 び 予 測 56 4.1.3 関 係 府 省 における 連 携 56 4.2 我 が 国 における 適 応 の 取 組 強 化 の 必 要 性 59 4.3 適 応 策 の 概 念 と 枠 組 み 及 び 課 題 等 59 4.3.1 適 応 とは 59 4.3.2 適 応 策 の 枠 組 み 59 4.3.3 適 応 策 の 課 題 と 留 意 すべき 事 項 59 コラム 20 現 時 点 の 科 学 的 知 見 を 踏 まえた 適 応 策 の 方 向 性 と 取 組 のステップ 60 4.4 適 応 に 関 する 今 後 の 我 が 国 の 取 組 について 62 4.5 諸 外 国 における 適 応 の 取 組 63 コラム 21 イギリスの 適 応 政 策 の 概 要 64 コラム 22 自 治 体 における 適 応 への 取 組 65 コラム 23 自 治 体 の 取 組 の 支 援 66 コラム 24 行 政 企 業 等 の 多 主 体 が 連 携 した 適 応 への 取 組 67 おわりに 68 謝 辞 68 付 録 気 候 変 動 の 観 測 予 測 影 響 評 価 に 関 する 研 究 調 査 69 1. 観 測 分 野 での 取 組 69 コラム 25 アルゴ(Argo) 計 画 70 コラム 26 温 室 効 果 ガス 世 界 資 料 センター(WDCGG) 71 コラム 27 民 間 航 空 機 による 二 酸 化 炭 素 の 観 測 71 コラム 28 GOSAT( 温 室 効 果 ガス 観 測 技 術 衛 星 いぶき ) 72 コラム 29 GCOM-W( 水 循 環 変 動 観 測 衛 星 しずく ) 72 2. 予 測 分 野 での 取 組 73 3. 影 響 評 価 分 野 での 取 組 73 4.データインフラ 構 築 の 取 組 75 コラム 30 気 候 変 動 予 測 研 究 とスーパーコンピュータ 75 略 語 集 76 参 考 文 献 78 温 暖 化 の 観 測 予 測 及 び 影 響 評 価 統 合 レポート 専 門 家 委 員 会 名 簿 85
はじめに 気 候 変 動 に 関 する 政 府 間 パネル(IPCC 1 以 下 IPCC という)が 2007 年 に 公 表 した 第 4 次 評 価 報 告 書 (AR4 2 以 下 AR4 という) は 気 候 システムの 温 暖 化 には 疑 う 余 地 がない ことを 示 し 20 世 紀 半 ば 以 降 に 観 測 された 世 界 平 均 気 温 の 上 昇 のほとんどは 人 為 起 源 の 温 室 効 果 ガス 濃 度 の 観 測 された 増 加 によってもたらされた 可 能 性 が 非 常 に 高 い ことを 明 らかにした また 多 くの 自 然 システムが 地 域 的 な 気 候 変 動 とり わけ 気 温 上 昇 の 影 響 を 受 けつつあることを 示 し た また 温 室 効 果 ガスの 増 加 と 個 々の 極 端 現 象 を 結 びつけて 論 ずることは 難 しいが その 頻 度 の 増 加 や 影 響 の 大 きさの 拡 大 の 傾 向 に 温 室 効 果 ガ スの 増 加 が 関 係 している 可 能 性 が 指 摘 されてい る 極 端 現 象 の 増 加 は 人 間 社 会 に 対 して 大 きな 影 響 をもたらす 可 能 性 が 高 い このため IPCC はこれまでに 観 測 された 極 端 現 象 の 傾 向 や 将 来 予 測 それに 伴 って 増 大 する 災 害 リスクの 管 理 に ついてとりまとめ 2012 年 に 気 候 変 動 への 適 応 推 進 に 向 けた 極 端 現 象 及 び 災 害 のリスク 管 理 に 関 する 特 別 報 告 書 (SREX 3 以 下 SREX という)として 公 表 した 気 候 変 動 に 伴 う 様 々な 影 響 を 防 ぐために 我 が 国 をはじめ 各 国 で 進 めている 対 策 は 大 きく 緩 和 策 と 適 応 策 に 分 けられる 緩 和 策 は 省 エネルギーや 再 生 可 能 エネルギー 導 入 等 による 温 室 効 果 ガスの 排 出 削 減 や 森 林 等 の 吸 収 源 の 増 加 などで 気 候 に 対 する 人 為 的 影 響 を 抑 制 する 対 策 である 一 方 適 応 策 は 気 候 変 動 がもたらす 水 資 源 食 料 生 物 多 様 性 等 への 様 々な 影 響 に 対 して 人 や 社 会 経 済 のシステムを 再 構 築 すること で 影 響 を 軽 減 しようという 対 策 である( 図 1) AR4 は 最 も 厳 しい 緩 和 努 力 をもってしても 今 後 数 十 年 の 気 候 変 動 の 更 なる 影 響 を 回 避 する ことができないため 適 応 は 特 に 至 近 の 影 響 への 対 応 において 不 可 欠 であり また 緩 和 され ない 気 候 変 動 は 長 期 的 には 自 然 システム 人 為 システム 及 び 人 間 システムの 適 応 能 力 を 超 え る 可 能 性 が 高 い と 述 べている このため 同 統 合 報 告 書 は 適 応 策 と 緩 和 策 のどちらも その 一 方 だけでは 全 ての 気 候 変 動 の 影 響 を 防 ぐことは できないが 両 者 は 互 いに 補 完 しあい 気 候 変 動 のリスクを 大 きく 低 減 することが 可 能 である と 述 べている 本 レポートの 目 的 は 2009 年 に 公 表 した 温 暖 化 の 観 測 予 測 及 び 影 響 評 価 統 合 レポート 日 本 の 気 候 変 動 とその 影 響 のとりまとめの 後 に 得 られ た 知 見 を 加 え 日 本 を 中 心 とする 近 年 の 気 候 変 動 の 現 状 と 将 来 の 予 測 及 び 気 候 変 動 が 及 ぼす 影 響 につ いて 体 系 だった 情 報 を 提 供 することである さらに 国 や 地 方 の 行 政 機 関 や 国 民 が 気 候 変 動 に 対 する 適 応 策 を 考 える 際 に 役 立 つ 最 新 の 科 学 的 知 見 を 提 供 することである 本 レポートでは 第 1 章 でまず 気 候 変 動 対 策 を 考 えるにあたって 必 要 となる 基 本 的 な 用 語 概 念 や 気 候 変 動 の 要 因 メカニズムについて 解 説 する 第 2 章 ではこれまでの 観 測 結 果 に 基 づく 近 年 の 気 候 変 動 の 現 状 と 将 来 予 測 第 3 章 では 気 候 変 動 により 現 在 生 じている 影 響 及 び 将 来 予 測 される 影 響 につい て 分 野 ごとに 示 す 第 4 章 では 適 応 策 の 必 要 性 と 考 え 方 適 応 策 に 関 する 現 状 の 取 組 と 課 題 について 解 説 する なお 付 録 として 気 候 変 動 に 関 する 観 測 予 測 とその 影 響 評 価 に 対 する 取 組 についてまと めた 科 学 的 信 頼 性 を 確 保 するとともに できるだけ 最 新 の 研 究 成 果 を 反 映 させるため 本 レポートは 主 として IPCC AR4 及 び AR4 で 用 いられた 気 候 予 測 モデルの 結 果 政 府 が 設 置 した 検 討 委 員 会 政 府 の 研 究 プロジェクト 及 び 定 常 観 測 や 予 測 実 験 の 成 果 報 告 書 等 の 既 存 の 資 料 をもとにとりまとめた な お 本 レポートの 理 解 を 助 ける 用 語 等 の 解 説 また 関 心 が 高 いと 思 われるトピックについてコラムと して 話 題 提 供 した とりまとめにあたっては 観 測 予 測 影 響 評 価 の 各 分 野 の 専 門 家 からなる 気 候 変 動 の 観 測 予 測 及 び 影 響 評 価 統 合 レポート 専 門 家 委 員 会 ( 委 員 長 : 住 明 正 国 立 環 境 研 究 所 理 事 )を 設 置 し 委 員 の 協 力 を 得 て 報 告 書 の 構 成 内 容 等 の 検 討 査 読 等 を 実 施 した 1 IPCC: Intergovernmental Panel on Climate Change 2 AR4: Fourth Assessment Report: Climate Change 2007 3 SREX: Special Report on Managing the Risks of Extreme Events and Disasters to Advance Climate Change Adaptation 1
気 候 変 動 ( 地 球 温 暖 化 ) 人 間 活 動 による 温 室 効 果 ガス 濃 度 の 上 昇 を 抑 制 影 響 最 大 限 の 緩 和 策 でも 避 けられな い 影 響 を 軽 減 緩 和 策 温 室 効 果 ガスの 排 出 削 減 と 吸 収 対 策 例 省 エネルギー 対 策 再 生 可 能 エネルギーの 普 及 拡 大 CO 2 の 吸 収 源 対 策 CO 2 の 回 収 貯 留 適 応 策 悪 影 響 への 備 えと 新 しい 気 候 条 件 の 利 用 例 渇 水 対 策 治 水 対 策 洪 水 危 機 管 理 熱 中 症 予 防 感 染 症 対 策 農 作 物 の 高 温 障 害 対 策 生 態 系 の 保 全 図 1 気 候 変 動 と 緩 和 策 適 応 策 の 関 係 第 1 章 気 候 変 動 のメカニズム この 章 では 気 候 変 動 対 策 を 考 えるにあたって 必 要 となる 基 本 的 な 用 語 や 概 念 及 び 近 年 の 気 候 変 動 の 要 因 について 解 説 する 1.1 気 候 変 動 とその 要 因 1.1.1 気 候 とは 気 候 とは 一 般 に 十 分 に 長 い 時 間 について 平 均 した 大 気 の 状 態 のことをいう 平 均 によって 短 期 間 の 変 動 が 取 り 除 かれるため それぞれの 場 所 で 現 れやすい 気 象 の 状 態 と 考 えることができる 具 体 的 には ある 期 間 における 気 温 や 降 水 量 などの 平 均 値 や 変 動 の 幅 によって 表 される(コラム 1 参 照 ) 平 均 期 間 より 長 い 時 間 で 見 ると 気 候 は 必 ずしも 定 常 的 なものではなく 様 々な 変 動 や 変 化 をしてい る このような 変 動 や 変 化 を 広 く 気 候 変 動 と 呼 ぶ 本 レポートでは 基 本 的 に 人 為 的 要 因 によると 推 定 される 長 期 的 な 変 動 や 変 化 を 対 象 として 気 候 変 動 の 語 を 用 いるが 自 然 変 動 を 含 む 気 候 の 変 化 や 変 動 を 気 候 変 動 と 記 述 しているところもある ( 詳 しくはコラム 5 参 照 ) 互 に 関 連 する 一 つのシステムとして 捉 えて 気 候 シ ステム と 呼 ぶ 地 球 規 模 の 気 候 は 気 候 システムに 外 部 から 強 制 力 が 加 わることで 変 化 する 外 部 強 制 力 には 自 然 的 要 因 によるものと 人 為 的 要 因 によるものがある 自 然 的 要 因 としては 太 陽 活 動 の 変 動 や 火 山 噴 火 に よる 大 気 中 の 微 粒 子 エアロゾル 4 の 増 加 などが あり 人 為 的 要 因 としては 人 間 活 動 に 伴 う 化 石 燃 料 の 燃 焼 や 土 地 利 用 の 変 化 などによる 温 室 効 果 ガ スの 増 加 やエアロゾルの 増 加 などが 挙 げられる( 表 1.1.1) 一 方 気 候 は 外 部 強 制 力 を 受 けなくとも 気 候 システム 内 部 の 要 因 によっても 変 動 する( 内 部 的 な 自 然 変 動 ) 内 部 の 要 因 とは 大 気 海 洋 陸 面 が 自 然 法 則 に 従 って 相 互 作 用 することであり これ による 自 然 変 動 の 代 表 的 な 例 にはエルニーニョ/ ラニーニャ 現 象 がある 地 球 全 体 の 平 均 気 温 は 地 球 に 入 ってくるエネル ギー( 太 陽 放 射 )と 地 球 から 出 ていくエネルギー( 外 向 きの 長 波 放 射 )のバランスによって 決 まっている 人 為 的 要 因 が 大 きくなると 図 1.1.1 のように 地 球 規 模 でのエネルギーのバランスに 変 化 をもたらし 気 候 に 大 きな 影 響 を 与 えることになる 1.1.2 気 候 を 決 める 要 因 と 気 候 システム 気 候 は 大 気 の 平 均 的 な 状 態 を 示 すものであるが 大 気 や 水 の 循 環 には 海 洋 陸 面 雪 氷 が 深 くかかわ っている このため 大 気 と 海 洋 陸 面 雪 氷 を 相 4 エアロゾル: 大 気 中 に 浮 遊 する 固 体 又 は 液 体 の 微 粒 子 エ ーロゾルともいう 2
コラム 1 平 年 値 の 基 準 期 間 気 候 の 地 域 性 や 時 間 的 変 化 を 解 析 する 際 の 基 準 としてしばしば 用 いられる 平 年 値 は 世 界 気 象 機 関 (WMO)により 30 年 間 の 平 均 値 として 定 義 されている 30 年 が 使 われているのは 1 世 代 30 年 と 言 われるように 社 会 の 変 化 の 時 間 スケールが 30 年 程 度 であるためである 我 が 国 の 気 象 庁 では 平 年 値 を 10 年 毎 に 更 新 しており 2011 年 より 1981~2010 年 の 平 均 を 用 い ている しかし 気 候 を 定 義 する 時 間 スケールは 様 々であり 実 際 には 30 年 とは 異 なる 平 均 期 間 が 使 われることもある また 平 年 値 がどの 30 年 間 を 用 いているかも 国 によって あるいは 統 計 に よって 異 なるので 相 互 に 比 較 するときには 注 意 が 必 要 である 本 レポートでは 原 則 として 1981~2010 年 の 平 均 を 平 年 値 として 用 いた 外 部 強 制 力 主 な 自 然 的 要 因 主 な 人 為 的 要 因 表 1.1.1 地 球 規 模 の 気 候 を 決 める 主 な 要 因 太 陽 活 動 の 変 動 地 球 の 公 転 軌 道 の 変 動 火 山 の 噴 火 によるエアロゾルの 増 加 化 石 燃 料 等 を 起 源 とする 温 室 効 果 ガス( 二 酸 化 炭 素 等 )の 排 出 による 大 気 組 成 の 変 化 森 林 伐 採 や 土 地 利 用 の 変 化 大 気 汚 染 物 質 ( 硫 酸 塩 エアロゾルや 黒 色 炭 素 など)の 排 出 大 気 上 端 で 受 け 取 る 太 陽 放 射 量 の 変 化 地 表 で 受 取 る 日 射 量 の 変 化 宇 宙 に 出 ていく 長 波 放 射 量 の 変 化 地 表 面 の 反 射 率 の 変 化 二 酸 化 炭 素 吸 収 源 の 変 化 水 循 環 の 変 化 地 表 で 受 取 る 日 射 量 の 変 化 雲 粒 径 や 雲 量 変 化 を 通 した 雲 の 反 射 率 の 変 化 内 部 の 要 因 熱 帯 太 平 洋 の 海 面 水 温 が 数 年 規 模 で 変 動 するエルニーニョ/ラニーニャ 現 象 (ENSO)や 太 平 洋 十 年 規 模 振 動 (PDO)など をもたらす 大 気 - 海 洋 相 互 作 用 など 図 1.1.1 年 平 均 した 地 球 全 体 のエネルギー 収 支 と 人 為 的 要 因 が 影 響 する 主 な 過 程 出 典 :IPCC 2007a を 改 変 加 筆 3
放 射 強 制 力 5 は 気 候 に 与 える 影 響 力 を 定 量 的 に 評 価 し 比 較 するための 物 差 しとなるもので 地 球 のエネルギー 収 支 のバランスを 変 化 させる 様 々な 人 為 起 源 及 び 自 然 起 源 の 要 因 の 影 響 力 を 示 す 正 の 放 射 強 制 力 は 地 表 を 加 熱 し 負 の 放 射 強 制 力 は 冷 却 する 産 業 革 命 以 前 (1750 年 頃 )を 基 準 とした 2005 年 時 点 の 放 射 強 制 力 の 内 訳 をみると( 図 1.1.2) 正 の 放 射 強 制 力 については 長 寿 命 の 温 室 効 果 ガ ス( 二 酸 化 炭 素 メタン 一 酸 化 二 窒 素 ハロカ ーボン 類 ) 及 び 対 流 圏 オゾンの 増 加 による 温 室 効 果 の 寄 与 が 大 きい 一 方 負 の 放 射 強 制 力 は 主 に 人 為 起 源 のエアロゾル( 硫 酸 塩 など)によって もたらされている エアロゾルは 直 接 太 陽 放 射 を 散 乱 吸 収 して 日 射 を 減 衰 させる( 日 傘 効 果 ) また 雲 の 凝 結 核 となることから 雲 粒 径 や 雲 量 の 変 化 を 通 じて 間 接 的 に 雲 アルベド( 反 射 率 )を 増 加 させ 地 表 に 届 く 日 射 を 減 少 させる 図 1.1.2 2005 年 時 点 で 世 界 平 均 した 放 射 強 制 力 の 推 定 値 (1750 年 頃 を 基 準 ) 火 山 によるエアロゾルは 自 然 起 源 の 放 射 強 制 力 として 付 加 的 に 寄 与 するが 影 響 が 一 時 的 であるため この 図 に は 含 まれていない 色 つきの 棒 グラフについた 細 い 黒 線 は 個 々の 値 の 90% 信 頼 区 間 を 示 す 出 典 :IPCC 2007a 1.2 温 室 効 果 ガス 濃 度 の 変 化 温 室 効 果 ガス 濃 度 は 20 世 紀 後 半 以 降 世 界 各 地 でモニタリングされるようになった 日 本 で も 気 象 庁 が 綾 里 ( 岩 手 県 ) 南 鳥 島 ( 東 京 都 ) 与 那 国 島 ( 沖 縄 県 )において 国 立 環 境 研 究 所 が 落 石 岬 ( 北 海 道 ) 波 照 間 島 ( 沖 縄 県 )において それぞれ 二 酸 化 炭 素 などの 温 室 効 果 ガス 及 び 他 の 微 量 ガスの 観 測 を 継 続 的 に 行 っている 大 気 中 の 二 酸 化 炭 素 濃 度 は 北 半 球 の 春 から 夏 に 減 少 し 秋 から 翌 春 に 増 加 する 季 節 変 動 を 伴 い ながら 年 々 明 瞭 に 増 加 している( 図 1.2.1) 季 節 変 動 は 主 に 陸 域 生 態 系 の 活 動 ( 植 物 の 光 合 成 や 土 壌 有 機 物 の 分 解 )によるもので 南 半 球 は 北 半 球 に 比 べて 陸 地 が 少 なく 森 林 等 の 植 物 も 少 ない ため 季 節 変 動 が 小 さい 世 界 気 象 機 関 (WMO 6 以 下 WMO という) の 温 室 効 果 ガス 世 界 資 料 センター(WDCGG 7 以 下 WDCGG という)の 解 析 によると 二 酸 化 炭 素 の 世 界 平 均 濃 度 は 2011 年 時 点 で 390.9 ppm 8 と 産 業 革 命 以 降 40% 増 加 した( 表 1.2.1) また 最 近 10 年 は 年 平 均 2.0ppmの 割 合 で 増 え ており 増 加 率 は 1990 年 代 ( 年 平 均 1.5ppm) よりも 大 きくなっている 二 酸 化 炭 素 以 外 の 温 室 効 果 ガス 濃 度 も 増 加 しており 特 にメタンの 2011 年 の 平 均 濃 度 は 1,813ppb 9 と 産 業 革 命 以 降 154%の 増 加 となっている( 表 1.2.1) 図 1.2.2 は 氷 床 コアから 得 られた 過 去 80 万 年 における 二 酸 化 炭 素 濃 度 と 気 温 の 変 化 である これまで およそ 10 万 年 毎 に 氷 期 と 間 氷 期 が 繰 り 返 され 寒 冷 な 氷 期 に 比 べて 温 暖 な 間 氷 期 には 二 酸 化 炭 素 濃 度 が 高 かったこと 氷 期 の 最 寒 冷 期 と 間 氷 期 の 間 で 約 100ppm の 濃 度 差 があったこ とがわかる これらは 地 球 の 公 転 軌 道 や 自 転 軸 の 傾 きの 周 期 的 な 変 動 に 起 因 する 気 候 の 変 動 を きっかけとして 二 酸 化 炭 素 などの 温 室 効 果 ガス 濃 度 が 変 化 し さらに 気 候 の 変 動 を 促 進 した 結 果 と 考 えられている 近 年 の 二 酸 化 炭 素 濃 度 ( 図 1.2.1)は 過 去 80 万 年 のいずれの 間 氷 期 におけ る 濃 度 (~300ppm)よりも 遙 かに 高 く 過 去 80 万 年 にわたる 地 球 大 気 の 歴 史 の 中 でも 極 めて 特 殊 であることがわかる 5 放 射 強 制 力 :IPCC 第 1 次 評 価 報 告 書 で 対 流 圏 の 上 端 ( 圏 界 面 )における 平 均 的 な 正 味 の 放 射 の 変 化 と 定 義 され ている 平 衡 状 態 にある 大 気 と 地 表 とのエネルギーのバラン スがさまざまな 要 因 によって 変 化 した 際 の 変 化 量 を 圏 界 面 に おける 単 位 面 積 あたりの 放 射 量 の 変 化 (W/m 2 )で 表 した 指 標 である 6 WMO: World Meteorological Organization 7 WDCGG: World Data Centre for Greenhouse Gases 8 ppm: 容 積 比 で 100 万 分 の 1 9 ppb: 容 積 比 で 10 億 分 の 1 4
410 400 落 石 岬 綾 里 南 鳥 島 与 那 国 島 波 照 間 島 二 酸 化 炭 素 濃 度 (ppm) 390 380 370 360 350 二 酸 化 炭 素 (CO 2 ) 濃 度 340 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 年 図 1.2.1 大 気 中 の 二 酸 化 炭 素 平 均 濃 度 の 経 年 変 化 WMO 温 室 効 果 ガス 世 界 資 料 センター(WDCGG) 及 び 国 立 環 境 研 究 所 の 観 測 データを 使 用 表 1.2.1 温 室 効 果 ガス 等 の 世 界 平 均 濃 度 (2011 年 ) 大 気 中 の 濃 度 参 考 数 値 温 室 効 果 ガス 産 業 革 命 以 前 2011 年 平 均 濃 度 前 年 との 差 の 種 類 寿 命 ( 年 ) (1750 年 頃 ) ( 産 業 革 命 以 降 の 増 加 率 ) 二 酸 化 炭 素 約 280ppm 390.9ppm(+40%) +2.0ppm 不 定 メタン 約 715ppb 1813 ppb(+154%) +5 ppb 12 一 酸 化 二 窒 素 約 270ppb 324.2ppb(+20%) +1.0ppb 114 WMO(2012) 及 び IPCC(2007a)を 基 に 作 成 図 1.2.2 氷 床 コアから 推 定 した 二 酸 化 炭 素 濃 度 と 気 温 の 変 化 過 去 80 万 年 以 降 の 二 酸 化 炭 素 の 大 気 中 濃 度 ( 下 段 T は 氷 河 期 の 終 了 )と 氷 床 コア 採 取 点 における 気 温 偏 差 ( 上 段 ) 二 酸 化 炭 素 濃 度 の 異 なる 色 の 印 は 異 なる 研 究 を 示 す なお 近 年 の 急 激 な 二 酸 化 炭 素 濃 度 の 増 加 は 反 映 していない 出 典 :Lüthi et al., 2008 1.3 近 年 の 地 球 温 暖 化 の 原 因 19 世 紀 後 半 以 降 世 界 の 平 均 気 温 や 海 面 水 位 は 長 期 的 に 上 昇 している( 図 1.3.1) また 海 洋 表 層 の 貯 熱 量 は 1950 年 以 降 上 昇 と 下 降 を 繰 り 返 しつつ 増 加 しており 水 温 の 上 昇 が 海 面 のみ ならず 海 洋 内 部 まで 及 んでいることを 示 してい る これらの 観 測 結 果 により 気 候 システムが 温 暖 化 していることには 疑 う 余 地 がないとされて いる(IPCC, 2007a) 観 測 された 地 球 温 暖 化 が 自 然 変 動 によるもの なのか 人 為 的 要 因 によるものなのかは 気 候 モ デルで 強 制 力 を 分 離 して 計 算 した 結 果 から 推 測 5
できる 図 1.3.2 は 世 界 の 平 均 地 上 気 温 の 変 化 に ついて 観 測 値 とモデルによる 再 現 シミュレーシ ョンを 比 較 したものである 自 然 起 源 と 人 為 起 源 の 強 制 力 の 双 方 を 考 慮 した 気 候 モデルの 計 算 結 果 ( 赤 陰 影 )は 観 測 された 気 温 の 変 化 ( 黒 線 ) 特 に 20 世 紀 後 半 の 気 温 上 昇 をよく 再 現 している 一 方 人 為 起 源 の 強 制 力 を 考 慮 していない 計 算 結 果 ( 青 陰 影 )では この 気 温 上 昇 は 再 現 されてい ない この 違 いは 陸 域 に 限 らず 海 洋 においても 同 じである( 図 1.3.2 (b), (c)) 以 上 に 紹 介 した 観 測 結 果 及 び 気 候 モデルによ る 20 世 紀 気 候 再 現 実 験 の 結 果 等 に 基 づき IPCC(2007a)は 20 世 紀 半 ば 以 降 に 観 測 された 世 界 平 均 気 温 の 上 昇 のほとんどは 人 為 起 源 の 温 室 効 果 ガス 濃 度 の 観 測 された 増 加 によってもた らされた 可 能 性 が 非 常 に 高 い とした 1990 年 との 差 mm 1981~2010 年 の 平 均 からの 差 1981~2010 年 の 平 均 からの 差 10 22 J (a) 世 界 の 平 均 気 温 (b) 世 界 の 平 均 海 面 水 位 (c) 世 界 の 海 洋 貯 熱 量 (0-700m) 図 1.3.1 (a) 世 界 の 平 均 気 温 (b) 潮 位 計 ( 青 )と 衛 星 ( 赤 )デ ータによる 世 界 の 平 均 海 面 水 位 (c) 世 界 の 海 洋 貯 熱 量 (0~700m) 気 温 と 海 洋 貯 熱 量 は 1981 年 ~2010 年 の 平 均 からの 差 水 位 は 1990 年 を 0 としたとき の 差 で 示 している 滑 らかな 曲 線 は 5 年 移 動 平 均 値 丸 印 は 各 年 の 値 をそれぞれ 示 す エ ラーバーは 90%の 信 頼 区 間 を 示 す データソース:(a) (c) 及 び(b)の 衛 星 データ は 気 象 庁 の 解 析 値 (b)の 潮 位 計 データは Church and White (2011)による 解 析 値 であ る 作 成 : 気 象 庁 図 1.3.2 観 測 された 地 上 気 温 の 変 化 と 気 候 モデルによるシミュレーションの 比 較 1901~1950 年 平 均 からの 偏 差 の 10 年 間 平 均 値 (a) 世 界 全 体 (b) 陸 域 のみ (c) 海 洋 のみの 結 果 黒 線 : 観 測 値 ( 気 象 庁 による 解 析 値 ) 陰 影 : 第 5 期 結 合 モデル 相 互 比 較 計 画 (CMIP5) 10 の 複 数 のモデルのシミュレーション 結 果 の 5~95%が 含 まれる 範 囲 ( 青 ) 自 然 起 源 の 強 制 力 のみを 用 いた 15 のモデルのシミュレーション 結 果 ( 赤 ) 自 然 起 源 と 人 為 起 源 の 両 方 の 強 制 力 を 用 いた 35 のモデルのシミュレーション 結 果 作 成 : 気 象 研 究 所 10 結 合 モデル 相 互 比 較 計 画 :Coupled Model Intercomparison Project (CMIP) 気 候 モデルの 開 発 は 各 国 でそれぞれ 行 われて いるが 世 界 気 候 研 究 計 画 (WCRP)の 下 にある 結 合 モデル 作 業 部 会 (WGCM)では 国 際 的 な 気 候 モデルの 開 発 を 推 進 する ため 実 験 設 定 を 共 通 にしたシミュレーション 結 果 の 相 互 比 較 により 気 候 モデルの 性 能 を 評 価 し 気 候 予 測 の 可 能 性 や 不 確 実 性 を 探 求 するプロジェクトとして Coupled Model Intercomparison Project を 行 っている CMIP は IPCC 評 価 報 告 書 における 温 暖 化 の 原 因 特 定 や 将 来 予 測 に 関 する 主 要 な 結 論 の 科 学 的 根 拠 となるデータを 提 供 する 役 割 を 果 たしている CMIP3 は 第 3 期 CMIP5 は 第 5 期 結 合 モデル 相 互 比 較 計 画 である 6
コラム 2 炭 素 循 環 大 気 中 の 温 室 効 果 ガス 濃 度 は 地 球 規 模 の 炭 素 循 環 や 窒 素 循 環 の 結 果 として 変 化 する 代 表 的 な 生 元 素 ( 生 体 の 維 持 活 動 に 不 可 欠 な 元 素 )である 炭 素 や 窒 素 は 大 気 や 水 の 循 環 地 殻 変 動 などにより 循 環 し 海 洋 への 溶 解 や 生 物 の 光 合 成 呼 吸 分 解 など 生 物 化 学 過 程 による 変 化 を 受 ける 炭 素 循 環 では 図 に 示 すよう に 大 気 海 洋 陸 域 生 態 系 が 主 要 な 炭 素 の 貯 蔵 庫 となっており これらの 貯 蔵 庫 間 で 炭 素 が 交 換 され 循 環 する 結 果 として 大 気 中 二 酸 化 炭 素 の 濃 度 が 決 まる 大 気 と 海 洋 中 での 主 な 炭 素 の 形 態 はガスとしての 二 酸 化 炭 素 と 溶 存 無 機 炭 酸 種 であるが 陸 域 生 態 系 では 植 物 体 を 構 成 する 有 機 物 とそれが 変 化 した 土 壌 有 機 物 や 腐 食 物 質 が 主 要 な 存 在 形 態 となる 循 環 する 炭 素 の 一 部 は 重 要 な 温 室 効 果 ガスであるメタンとして 存 在 し 生 物 化 学 過 程 がその 存 在 量 と 循 環 量 を 決 める 主 要 なプロセスとなっている 窒 素 を 含 む 主 要 な 温 室 効 果 ガスは 一 酸 化 二 窒 素 であり 二 酸 化 炭 素 と 同 様 に 大 気 海 洋 陸 域 生 態 系 間 での 循 環 過 程 が 存 在 する 産 業 革 命 以 降 人 類 が 大 量 に 消 費 するようになった 化 石 燃 料 は 数 億 年 以 上 も 昔 の 生 物 の 死 骸 が 地 下 の 熱 や 圧 力 の 作 用 で 変 化 してできたもので 炭 素 を 含 んでいる 化 石 燃 料 の 消 費 は 長 い 年 月 をかけて 地 下 に 蓄 積 されてきた 炭 素 を 短 期 間 で 大 気 中 に 放 出 することであり 地 球 上 の 炭 素 循 環 に 不 均 衡 をもたらす 自 然 の 炭 素 循 環 量 に 比 較 すると 人 為 起 源 の 炭 素 交 換 量 は 小 規 模 に 見 えるものの 産 業 革 命 以 前 には 均 衡 し ていた 収 支 に 不 均 衡 をもたらし 貯 蔵 庫 の 炭 素 現 存 量 を 変 化 させている 大 気 貯 蔵 庫 の 二 酸 化 炭 素 量 の 増 加 は 地 球 温 暖 化 の 最 大 の 原 因 となっており 近 年 (2000 年 代 )は 1990 年 代 に 比 べ 化 石 燃 料 からの 放 出 の 増 大 で 大 気 中 の 二 酸 化 炭 素 濃 度 の 年 々の 増 加 量 が 大 きくなった 1990 年 代 の 炭 素 循 環 ( 単 位 : 億 トン) 呼 吸 と 土 地 利 用 変 化 1,212 総 生 産 1,226 陸 域 吸 収 26 陸 の 植 生 土 壌 腐 食 (23,000) CO 2 交 換 量 自 然 + 人 為 起 源 人 為 起 源 のみ 大 気 (7,600) 土 地 利 用 変 化 16 陸 域 流 出 4 風 化 ( 地 表 )2 河 川 流 出 8 風 化 ( 地 層 ) 大 気 増 加 32 放 出 906 吸 収 922 海 洋 (380,000) 堆 積 2 2 海 洋 表 層 堆 積 物 (1,500) 海 洋 吸 収 22 64 化 石 燃 料 (35,000) 人 為 起 源 の CO 2 交 換 量 の 推 移 ( 単 位 : 億 トン) CO 2 交 換 量 ( 炭 素 換 算 ) 億 t/ 年 100 50 0 50 放 出 源 吸 収 源 100 1750 1800 1850 1900 1950 2000 ( 億 t/ 年 ) 化 石 燃 料 土 地 利 用 変 化 陸 域 吸 収 大 気 増 加 海 洋 吸 収 年 1990 年 代 (IPCC AR4) 2000 年 代 64 79±5 16 10±7 26 25±10 ( 残 差 ) 32 41±2 22 23±5 (5モデル) 地 球 の 炭 素 循 環 ( 上 )1990 年 代 の 炭 素 循 環 各 数 値 は 炭 素 重 量 に 換 算 した 二 酸 化 炭 素 貯 蔵 量 ( 中 の 数 値 1750~2004 年 末 の 積 算 値 単 位 : 億 トン)と 移 動 量 ( 矢 印 青 : 産 業 革 命 前 の 自 然 の 循 環 + 人 為 起 源 オレンジ: 人 為 起 源 のみ 1990 年 代 (1990~1999 年 )の 平 均 値 単 位 : 億 トン/ 年 )を 表 している IPCC(2007a)をもとに 作 成 ただし 炭 素 貯 留 量 は 有 効 数 字 2 桁 で 示 した ここでは 示 さな いが これら 炭 素 貯 留 量 は 推 定 誤 差 を 含 んでおり 誤 差 の 大 きさは 項 目 別 に 大 きく 異 なる 移 動 量 のうち 数 値 を 3 ないし 4 桁 目 まで 示 したものがあるのは 小 さい 移 動 量 を 含 めた 収 支 を 整 合 させる 目 的 であり 移 動 量 の 有 効 数 字 は 1 ないし 2 桁 程 度 である ( 下 ) 人 為 起 源 の CO 2 交 換 量 の 推 移 産 業 革 命 以 降 の 推 移 を 放 出 源 吸 収 源 別 に 示 したもの Global Carbon Project, 2011(グラフと 2000 年 代 (2000~2010 年 )の 数 値 )に 1990 年 代 の 数 値 (IPCC, 2007a)を 加 筆 7
コラム 3 太 陽 活 動 と 気 候 太 陽 活 動 はさまざまな 時 間 スケールの 変 動 を 繰 り 返 している とりわけ 平 均 約 11 年 の 周 期 変 動 が 卓 越 して おり その 指 標 となっている 黒 点 数 の 増 減 と 太 陽 面 の 爆 発 現 象 (フレアー)によってもたらされる 地 球 の 現 象 すなわちオーロラの 出 現 地 球 磁 場 と 電 離 層 の 乱 れなどがよく 対 応 していることは 古 くから 知 られていた 一 方 日 射 強 度 に 関 しては 地 上 観 測 から 確 かな 関 係 を 見 出 すのは 困 難 であったが 1979 年 以 降 人 工 衛 星 による 直 接 観 測 によって 黒 点 数 の 増 減 に 対 応 して 0.1% 程 度 の 変 動 が 確 認 された それから 30 年 余 り 経 過 し その 間 系 統 的 なトレンドは 見 出 されず 近 年 の 温 暖 化 の 原 因 としては 無 視 できる 大 きさ( 温 室 効 果 ガス 増 加 によ る 放 射 強 制 力 の 数 % 以 下 )であることが 明 らかになった 2012 年 東 京 天 文 台 と NASA の 研 究 チームは 過 去 20 年 間 で 太 陽 活 動 は 次 第 に 低 下 しており 太 陽 観 測 衛 星 ひので の 観 測 結 果 を 含 めた 分 析 から 黒 点 の 原 因 となる 太 陽 磁 場 の 構 造 が 通 常 と 異 なる 事 を 明 らかに した 東 京 天 文 台 は 今 後 も 黒 点 活 動 の 低 下 傾 向 は 続 くだろうとの 見 解 を 示 している しかし 衛 星 観 測 によ る 太 陽 放 射 強 度 は 通 常 の 11 年 周 期 変 動 と 同 様 に 回 復 してきており すぐには 地 球 の 温 度 の 低 下 をもたらすと は 考 えられない 100 年 以 上 前 の 歴 史 時 代 の 気 候 の 変 化 に 関 しては 太 陽 活 動 の 変 動 による 日 射 の 変 化 が 影 響 しているとする 考 えが 有 力 である 歴 史 時 代 の 気 候 の 変 化 は 歴 史 記 録 や 樹 木 の 年 輪 堆 積 物 中 の 花 粉 の 分 析 など 様 々な 代 替 データで 研 究 されている また 掘 削 抗 中 の 地 中 温 度 から 過 去 の 温 度 を 推 定 することも 行 われている(Pollack and Smerdon, 2004, IPCC, 2007a など) これらを 総 合 して 15 世 紀 半 ば~19 世 紀 半 ばの 期 間 は 低 温 傾 向 が 続 いたと 推 定 されており 小 氷 期 と 呼 ばれている この 中 で およそ 1645~1715 年 の 期 間 は 黒 点 数 が 著 しく 減 少 し(マウンダー 極 小 期 として 知 られる) その 前 後 を 含 んで 宇 宙 線 を 遮 蔽 する 太 陽 磁 場 も 弱 かったこ とから 太 陽 活 動 低 下 の 時 期 であった 小 氷 期 の 気 温 は 20 世 紀 初 頭 に 比 べて 0.5 程 度 (0.3~0.7 ) 低 か ったと 推 定 されている( 下 図 ) 現 在 問 題 とされている 人 為 起 源 の 温 暖 化 が 2~3 であることを 考 えると 仮 に 太 陽 活 動 が 弱 まりその 影 響 があったとしても 温 度 上 昇 を 大 幅 に 減 らすものとは 考 えにくい また デンマークの 宇 宙 物 理 学 者 スベンスマルクは 太 陽 活 動 の 間 接 的 な 温 暖 化 への 影 響 として 以 下 のような 説 を 唱 えている この 説 は 日 射 強 度 の 変 化 が 人 工 衛 星 による 直 接 観 測 によってきわめて 小 さい(0.1%)ことが 明 らかになったのち 直 接 の 加 熱 の 変 化 でない 別 のプロセスで 太 陽 活 動 が 気 候 に 影 響 を 与 え 得 るものとしてヨ ーロッパを 中 心 に 他 分 野 の 科 学 者 の 注 目 を 浴 びた 地 球 には 銀 河 からの 宇 宙 線 ( 超 新 星 爆 発 などで 発 生 した 高 エネルギーの 粒 子 )が 降 り 注 いでおり それが 空 気 を 電 離 してイオンを 作 っていることが 知 られている スベ ンスマルクは 雲 粒 を 作 る 凝 結 核 の 中 でも 重 要 とされる 硫 酸 エアロゾルが ガス 状 態 の 硫 酸 から 最 初 の 微 小 な 核 を 作 るのにイオンが 重 要 な 働 きをするとの 考 えを 取 り 上 げた 銀 河 宇 宙 線 は 太 陽 磁 場 の 活 動 が 強 いと 地 球 を 含 む 太 陽 系 空 間 に 入 りにくくなるので 太 陽 活 動 によって 宇 宙 線 の 強 度 は 変 わる そこで 太 陽 活 動 に 応 じて 雲 核 の 数 が 変 わり 雲 量 の 変 化 をもたらして 日 射 加 熱 を 変 え それによって 気 候 が 変 わる 可 能 性 があると 考 えた 硫 酸 エアロゾル 生 成 のメカニズムは 専 門 の 研 究 者 の 間 でも 議 論 されていたので この 仮 説 を 検 証 するため 欧 州 原 子 核 研 究 機 構 (CERN)では 2010 年 2011 年 に 硫 酸 ガスを 含 むチャンバーに 高 エネルギー 粒 子 を 照 射 する 実 験 を 行 った その 結 果 イオンは 有 効 でなく 専 門 家 が 考 えていたように 空 気 中 にごく 微 量 含 まれるアンモ ニアやそのほかの 物 質 の 方 が 重 要 との 結 論 が 得 られた(Duplissy et al., 2010, Kirkby et al., 2011) スベンス マルクは 近 年 の 温 暖 化 に 関 して 宇 宙 線 の 減 少 傾 向 から 雲 量 が 減 ったためと 推 定 していた しかし その 後 太 陽 活 動 は 弱 まる 傾 向 になり 宇 宙 線 は 記 録 的 強 さとなって スベンスマルクの 説 によれば 宇 宙 線 が 雲 を 増 やす なら 低 温 化 すべきであるが 実 際 には 気 温 低 下 は 起 きていない 従 って 20 世 紀 後 半 の 温 暖 化 は 温 室 効 果 ガス の 増 加 ではなく 太 陽 活 動 によるものとすることは 何 重 にも 困 難 になった 掘 削 孔 中 の 地 中 温 度 からの 推 定 値 復 元 された 過 去 1300 年 の 北 半 球 の 気 温 の 変 化 黒 線 は 観 測 機 器 による 記 録 その 他 の 色 が 示 すのは 複 数 の 代 替 データによる 12 の 研 究 結 果 出 典 :IPCC, 2007a 8
コラム 4 地 球 温 暖 化 は 止 まった のではないか 近 年 世 界 平 均 気 温 の 上 昇 が 停 滞 していることから 地 球 温 暖 化 は 止 まったのではないか という 説 がある 図 A に 示 すように 2000 年 前 後 以 降 黒 線 で 示 される 世 界 の 平 均 気 温 の 観 測 値 の 上 昇 が 横 ばいになってい るように 見 える しかし 過 去 約 120 年 間 の 推 移 にもこのような 気 温 の 一 時 的 な 低 下 や 停 滞 は 見 られ( 図 1.3.1 図 2.1.1) 大 きく 変 動 しながらも 再 び 上 昇 に 向 かいトレンドとして 気 温 は 上 昇 していることがわかる また 気 象 庁 による 世 界 平 均 気 温 の 解 析 では 1891 年 の 統 計 開 始 以 降 の 1 位 から 10 位 までの 高 温 年 はすべて 1998 年 以 降 に 現 れている この 変 動 は 気 候 変 動 予 測 モデルによるシミュレーション(CMIP3 CMIP5)の 幅 ( 細 線 )の 範 囲 内 であり 現 時 点 でトレンドが 変 わったと 判 断 することはできない 図 A 世 界 の 年 平 均 気 温 偏 差 の 推 移 黒 線 : 観 測 値 オレンジ 線 :CMIP3 細 線 : 各 シミュレーション 予 測 値 太 線 :アンサンブル 平 均 値 緑 線 :CMIP5 細 線 : 各 シミュレーション 予 測 値 太 線 :アンサンブル 平 均 値 作 成 : 東 京 大 学 国 立 環 境 研 究 所 2000 年 前 後 からの 世 界 平 均 気 温 の 横 ばい 傾 向 の 要 因 の 可 能 性 の 一 つとして 太 平 洋 十 年 規 模 振 動 (Pacific Decadal Oscillation (PDO)) が 挙 げられている( 図 B) PDO とは 太 平 洋 の 海 面 水 温 が 上 がったり 下 がっ たりする 現 象 で 熱 帯 太 平 洋 が 高 温 のときは 北 部 北 太 平 洋 が 低 温 ( 図 B 左 :PDO 指 数 プラス) 熱 帯 太 平 洋 が 低 温 のときは 北 部 北 太 平 洋 が 高 温 ( 図 B 右 :PDO 指 数 マイナス)というパターンで 数 十 年 の 時 間 規 模 で 不 規 則 に 変 動 する 現 象 である 図 C に 示 されるとおり ここ 数 年 は PDO 指 数 がおおよそマイナスとなってお り 熱 帯 太 平 洋 の 広 い 面 積 で 海 面 水 温 が 相 対 的 に 低 いことを 表 している この 影 響 により 世 界 の 平 均 気 温 の 上 昇 が 横 ばい 傾 向 となっている 可 能 性 がある このように 温 暖 化 のトレンドに PDO に 代 表 される 数 十 年 周 期 の 内 部 的 自 然 変 動 が 重 なったことによっ て 気 温 上 昇 が 一 時 的 に 減 速 または 加 速 したように 見 えることがある 気 候 の 変 化 や 変 動 を 分 析 する 際 には それに 伴 う 時 間 のスケールを 的 確 に 切 り 分 けて 評 価 することが 重 要 である 図 B 太 平 洋 十 年 規 模 振 動 のパターン PDO の 正 極 ( 左 ) 及 び 負 極 ( 右 )の 冬 季 における 海 面 水 温 ( 色 ) 海 面 気 圧 ( 等 値 線 ) 海 面 の 風 応 力 ( 矢 印 )の 典 型 的 な 偏 差 パターン 出 典 : 気 象 庁 2012a( 原 著 論 文 は Mantua et al., 1997) 図 C PDO 指 数 の 時 系 列 (1901 年 ~2012 年 ) 棒 グラフ:PDO 指 数 の 冬 季 平 均 値 実 線 :5 年 移 動 平 均 値 出 典 : 気 象 庁 2012b 9
コラム 5 気 候 における 様 々な 変 動 や 変 化 とその 用 語 について ある 地 点 や 地 域 の 気 候 は 気 温 や 降 水 量 などの 観 測 値 の 平 均 ( 気 候 値 )や 変 動 の 幅 などによって 示 される 長 期 間 にわたる 観 測 から それらの 年 々の 変 動 を 時 系 列 として 示 すことが 出 来 る( 例 として 気 温 の 場 合 のイメー ジを 下 図 に 示 す) 氷 期 間 氷 期 のような 数 万 年 に 及 ぶ 長 期 変 動 から 年 ごとの 暑 さ 寒 さの 違 いのように 気 候 値 を 算 出 する 期 間 の 中 での 短 期 変 動 まで 様 々な 周 期 の 変 動 があり 短 期 変 動 は 気 候 の 揺 らぎあるいは( 短 期 の) 気 候 の 変 動 性 とも 称 される このような 変 動 の 幅 は 平 均 する 領 域 の 広 さにも 依 存 し 世 界 平 均 など 広 い 領 域 での 気 候 値 における 変 動 幅 は 狭 い 領 域 での 変 動 幅 よりも 小 さくなる 長 期 にわたる 観 測 の 全 期 間 にわたって 気 候 値 を 統 計 的 に 算 出 する 期 間 ごとの 平 均 や 短 期 変 動 の 幅 が 事 実 上 同 じとみなせる 場 合 (1a) この 時 系 列 は 定 常 であると 言 われる 実 際 には 長 期 的 に 見 ると 気 候 には 様 々な 要 因 に よって 変 動 や 変 化 があり 多 くの 時 系 列 は 定 常 とならない そのパターンは 平 均 的 な 状 態 がある 方 向 に 継 続 し て 変 化 するもの(1b) 周 期 的 規 則 的 に 変 動 するもの(1c) ある 時 点 を 境 に 平 均 的 な 状 態 が 大 きく 変 化 するも の(1d) に 大 別 できる また 平 均 値 は 変 化 しなくても 短 期 変 動 の 幅 が 増 大 あるいは 減 少 することもある(2a) 多 くの 時 系 列 は これらの 変 動 が 重 なりあっているとみなせる 気 象 学 ではこのような 変 化 や 変 動 を 総 称 して 気 候 変 動 と 呼 んでいるが (1b)のような 長 期 的 に 一 方 向 の 変 化 を 気 候 変 化 と 呼 んで 気 候 変 動 と 区 別 する こともある また 気 候 学 では 長 期 の 変 化 変 動 の 総 称 を 気 候 変 化 とする 場 合 がある 気 候 の 変 動 や 変 化 のパターンの 例 出 典 :WMO 気 候 の 事 典 2004 に 加 筆 なお 気 候 変 動 に 関 する 政 府 間 パネル (IPCC) や 気 候 変 動 に 関 する 国 際 連 合 枠 組 条 約 ( 気 候 変 動 枠 組 条 約 (United Nations Framework Convention on Climate Change (UNFCCC)) 以 下 UNFCCC という) の ような 国 際 機 関 や 条 約 の 行 政 上 の 正 式 名 称 では 英 文 表 記 での 気 候 変 動 に 関 する 国 際 連 合 枠 組 条 の 訳 語 に 気 候 変 動 があてられている 特 に 気 候 変 動 枠 組 条 約 第 1 条 では 気 候 変 動 ( Climate Change )とは 地 球 の 大 気 の 組 成 を 変 化 させる 人 間 活 動 に 直 接 又 は 間 接 に 起 因 する 気 候 の 変 化 であって 比 較 可 能 な 期 間 において 観 測 される 気 候 の 自 然 な 変 動 に 対 して 追 加 的 に 生 ずるものをいう と 定 義 されており 条 約 の 対 象 となる 気 候 変 動 の 要 因 を 人 為 起 源 のものに 限 定 している 本 レポートは UNFCCC で 定 義 された 気 候 変 動 を 対 象 としている 一 方 このコラムの 前 半 に 記 されて いるように 気 候 変 動 という 用 語 は 広 く 自 然 の 気 候 の 変 化 を 指 して 用 いられてきた このため 本 レポート においても 自 然 変 動 を 含 む 気 候 の 変 化 や 変 動 を 気 候 変 動 と 記 述 しているところもある これは 人 為 起 源 の 気 候 変 動 を 分 析 理 解 し さらに 予 測 するには 自 然 変 動 を 含 めた 取 り 扱 いが 必 要 なためであり 文 章 の 前 後 関 係 で 区 別 がつくよう 注 意 を 払 っている 10
第 2 章 気 候 変 動 の 観 測 結 果 と 将 来 予 測 19 世 紀 後 半 以 降 世 界 各 国 や 日 本 で 観 測 機 器 による 気 象 観 測 が 行 われるようになった また 気 候 変 動 の 将 来 予 測 に 向 けた 研 究 が 国 内 外 で 進 められている 本 章 では 様 々な 観 測 データにより 明 らかになった 世 界 及 び 日 本 における 近 年 の 気 候 変 動 の 現 状 を 概 観 するとともに 気 候 変 動 の 将 来 予 測 に 関 する 最 新 の 研 究 成 果 をとりまとめる 2.1 気 候 に 関 する 観 測 事 実 2.1.1 気 温 世 界 の 平 均 気 温 は 1891 年 以 降 100 年 あたり 0.68 の 割 合 で 上 昇 している また 日 本 の 平 均 気 温 は 1898 年 以 降 100 年 あたり 1.15 の 割 合 で 上 昇 している 気 温 の 上 昇 に 伴 って 猛 暑 日 や 熱 帯 夜 の 日 数 が 増 加 している 気 温 の 上 昇 は 世 界 的 に 一 様 に 起 こっているの ではなく 地 域 による 違 いが 現 れている アジア 地 域 では 北 アジア 中 央 アジアといった 北 半 球 中 高 緯 度 に 属 する 地 域 における 気 温 の 上 昇 が 顕 著 である( 図 2.1.2) また これら 長 期 的 な 変 化 傾 向 とともに 顕 著 な 高 温 や 低 温 などの 極 端 な 現 象 も 変 化 している IPCC の SREX では これまでの 観 測 結 果 から 世 界 規 模 で 寒 い 昼 と 寒 い 夜 の 数 が 減 少 し 暑 い 昼 と 暑 い 夜 の 数 が 増 加 した 可 能 性 が 非 常 に 高 いこ とや 多 くの 地 域 で 熱 波 などの 高 温 期 間 の 長 さや 発 生 数 が 増 加 したことの 確 信 度 は 中 程 度 とまと められている(コラム 7) (1) 世 界 の 気 温 地 球 表 面 の 7 割 は 海 洋 が 占 めるため 世 界 の 平 均 気 温 は 陸 上 の 観 測 のみならず 海 面 水 温 のデー タを 併 せて 解 析 している 機 器 を 用 いた 観 測 が 広 く 開 始 された 19 世 紀 後 半 以 降 世 界 の 平 均 気 温 は 変 動 を 繰 り 返 しながら 上 昇 しており 長 期 的 に は 100 年 あたり 0.68 の 割 合 で 有 意 に 上 昇 して い る( 図 2.1.1) 世 界 の 平 均 気 温 の 経 年 変 化 には 二 酸 化 炭 素 など 温 室 効 果 ガスの 大 気 中 濃 度 の 増 加 による 地 球 温 暖 化 の 影 響 に 数 年 ~ 数 十 年 程 度 で 繰 り 返 される 自 然 変 動 が 重 なって 現 れている と 考 えられる 図 2.1.1 世 界 の 年 平 均 気 温 の 変 化 観 測 機 器 によって 得 られた 資 料 に 基 づく 1891~2012 年 の 世 界 全 体 の 年 平 均 気 温 の 推 移 黒 線 は 各 年 の 平 均 気 温 の 平 年 差 ( 平 年 値 との 差 ) 青 線 は 5 年 移 動 平 均 赤 線 は 長 期 変 化 傾 向 を 示 す 平 年 値 は 1981~2010 年 の 30 年 平 均 値 出 典 : 気 象 庁 2012c に 追 加 図 2.1.2 世 界 の 年 平 均 気 温 の 変 化 の 分 布 観 測 機 器 によって 得 られた 資 料 に 基 づいて 推 定 された 1901 ~2005 年 の 年 平 均 気 温 の 変 化 傾 向 (100 年 あたりの 変 化 量 : ) 灰 色 の 領 域 はデータが 不 十 分 な 地 域 出 典 :IPCC 2007a (2) 日 本 の 気 温 日 本 の 平 均 気 温 は 観 測 データの 均 質 性 が 長 期 間 維 持 され かつ 都 市 化 の 影 響 が 比 較 的 少 ないと みられる 気 象 庁 の 17 観 測 地 点 ( 図 2.1.3)の デー タから 求 められている 日 本 の 平 均 気 温 も 世 界 の 平 均 気 温 と 同 様 変 動 を 繰 り 返 しながら 上 昇 しており 長 期 的 には 100 年 あたり 1.15 の 割 合 で 有 意 に 上 昇 している( 図 2.1.4) 1940 年 代 までは 比 較 的 低 温 の 期 間 が 続 いたが その 後 上 昇 に 転 じ 1960 年 頃 を 中 心 と した 高 温 の 時 期 それ 以 降 1980 年 代 半 ばまでの やや 低 温 の 時 期 を 経 て 1980 年 代 後 半 から 急 速 に 気 温 が 上 昇 した 顕 著 な 高 温 を 記 録 した 年 は おおむね 1990 年 代 以 降 に 集 中 している これは 世 界 の 平 均 気 温 と 同 様 に 温 室 効 果 ガスの 増 加 に 伴 う 地 球 温 暖 化 の 影 響 に 数 年 ~ 数 十 年 程 度 で 繰 り 返 される 自 然 変 動 が 重 なって 現 れているため 11
と 考 えられる 顕 著 な 高 温 や 低 温 などの 極 端 な 現 象 について 日 最 高 気 温 が 35 以 上 ( 猛 暑 日 )の 日 数 及 び 日 最 低 気 温 が 25 以 上 ( 熱 帯 夜 11 )の 日 数 は 統 計 期 間 1931~2012 年 での 変 化 傾 向 をみると それぞ れ 10 年 あたり 0.2 日 1.4 日 の 割 合 でいずれも 有 意 に 増 加 している 一 方 日 最 低 気 温 が 0 未 満 ( 冬 日 )の 日 数 は 同 期 間 において 10 年 あたり 2.2 日 の 割 合 で 有 意 に 減 少 している( 図 2.1.5) 北 緯 東 経 図 2.1.3 日 本 の 平 均 気 温 平 均 降 水 量 の 算 出 に 用 いたデータの 観 測 地 点 図 赤 丸 は 平 均 気 温 の 算 出 に 用 いた 17 地 点 を 緑 丸 は 平 均 降 水 量 の 算 出 に 用 いた 51 地 点 を 示 す なお 宮 崎 は 2000 年 5 月 に 飯 田 は 2002 年 5 月 に 庁 舎 を 移 転 したため 移 転 による 観 測 データへの 影 響 を 評 価 し その 影 響 を 除 去 するための 補 正 を 行 ったうえで 利 用 している 出 典 : 気 象 庁 2005 図 2.1.5 猛 暑 日 ( 上 ) 熱 帯 夜 ( 中 ) 冬 日 ( 下 )の 年 間 日 数 の 経 年 変 化 国 内 15 地 点 ( 図 2.1.3 の 赤 丸 の 17 地 点 から 庁 舎 移 転 のあっ た 宮 崎 飯 田 を 除 いた 地 点 )の 出 現 日 数 から 求 めた 1 地 点 あ たりの 年 間 日 数 (1931~2012 年 ) 棒 グラフは 各 年 の 値 青 線 は 5 年 移 動 平 均 赤 線 は 長 期 変 化 傾 向 を 示 す 出 典 : 気 象 庁 2012c に 追 加 図 2.1.4 日 本 の 年 平 均 気 温 の 変 化 国 内 17 地 点 ( 図 2.1.3)での 1898~2012 年 の 年 平 均 気 温 の 推 移 黒 線 は 各 年 の 平 均 気 温 の 平 年 差 ( 平 年 値 との 差 ) 青 線 は 5 年 移 動 平 均 赤 線 は 長 期 変 化 傾 向 を 示 す 平 年 値 は 1981 ~2010 年 の 30 年 平 均 値 出 典 : 気 象 庁 2012c に 追 加 11 熱 帯 夜 : 熱 帯 夜 は 夜 間 の 最 低 気 温 が 25 以 上 のことを 指 すが ここでは 日 最 低 気 温 25 以 上 の 日 を 便 宜 的 に 熱 帯 夜 と 呼 んでいる 2.1.2 降 水 量 世 界 及 び 日 本 の 年 降 水 量 は 大 きく 変 動 してい る 日 本 は 1970 年 代 以 降 年 ごとの 変 動 が 大 き い 1mm 以 上 の 降 水 の 年 間 日 数 は 減 少 する 一 方 大 雨 の 年 間 日 数 に 増 加 傾 向 が 現 れている (1) 世 界 の 降 水 量 世 界 ( 陸 域 )の 年 降 水 量 は 変 動 を 繰 り 返 しな がらも 1950 年 代 と 2000 年 代 半 ば 以 降 に 多 い 時 期 が 現 れている( 図 2.1.6) 降 水 量 は 気 温 と 異 12
なり 全 球 で 一 様 な 変 化 傾 向 はなく 年 降 水 量 の 長 期 変 化 傾 向 は 地 域 によって 大 きく 異 なり 年 降 水 量 が 増 加 している 地 域 や 減 少 している 地 域 がある 降 水 量 の 変 動 は 空 間 的 時 間 的 に 非 常 に 大 きく はっきりした 長 期 変 化 傾 向 が 見 られない 地 域 もある( 図 2.1.7) また IPCC の SREX は これまでの 観 測 結 果 から 強 い 大 雨 の 発 生 数 が 増 加 した 地 域 が 減 少 した 地 域 よりも 多 い 可 能 性 が 高 いとしている(コ ラム 7) (2) 日 本 の 降 水 量 日 本 の 年 降 水 量 は 観 測 データの 均 質 性 が 長 期 間 維 持 されている 気 象 庁 の 51 観 測 地 点 ( 図 2.1.3) のデータから 求 めている その 変 化 を 見 ると 1920 年 代 半 ばまでと 1950 年 代 頃 に 多 雨 期 がみ られ 1970 年 代 以 降 は 年 ごとの 変 動 が 大 きくな っている( 図 2.1.8) 降 水 日 数 の 変 化 を 見 ると 日 降 水 量 1.0mm 以 上 の 日 数 には 有 意 な 減 少 傾 向 ( 日 降 水 量 が 1.0mm 未 満 あるいは 無 降 水 の 日 数 に 有 意 な 増 加 傾 向 )が 見 られる( 図 2.1.9) 極 端 な 降 水 現 象 の 変 化 として 日 降 水 量 100mm 以 上 の 日 数 及 び 日 降 水 量 200mm 以 上 の 日 数 の 変 化 傾 向 をみると いずれも 有 意 な 増 加 傾 向 が 見 られ 長 期 的 にはそれぞれ 100 年 あたり 0.25 日 0.04 日 の 割 合 で 増 加 している( 図 2.1.10) 図 2.1.6 世 界 ( 陸 域 )の 年 降 水 量 の 変 化 世 界 の 陸 上 の 観 測 地 点 での 1901~2012 年 の 年 降 水 量 の 推 移 棒 グラフは 各 年 の 年 降 水 量 の 平 年 差 ( 平 年 値 からの 差 ) 青 線 は 5 年 移 動 平 均 を 示 す 平 年 値 は 1981~2010 年 の 30 年 平 均 値 出 典 : 気 象 庁 2012c に 追 加 図 2.1.8 日 本 の 年 平 均 降 水 量 の 変 化 国 内 51 地 点 ( 図 2.1.3)の 1898~2012 年 の 年 降 水 量 の 推 移 棒 グラフは 各 年 の 年 降 水 量 の 平 年 差 ( 平 年 値 からの 差 ) 青 線 は 5 年 移 動 平 均 を 示 す 平 年 値 は 1981~2010 年 の 30 年 平 均 値 出 典 : 気 象 庁 2012c に 追 加 図 2.1.7 世 界 ( 陸 域 )の 年 降 水 量 の 変 化 の 分 布 1961~1990 年 の 平 均 を 基 準 とした 1901~2005 年 の 世 界 ( 陸 域 )の 年 降 水 量 の 傾 向 (100 年 あたりの 変 化 率 :%) 灰 色 の 領 域 はデータが 不 十 分 な 地 域 +を 付 した 領 域 は 5%の 危 険 率 で 有 意 なトレンドであることを 示 す 出 典 :IPCC 2007a 図 2.1.9 日 降 水 量 1.0mm 以 上 の 年 間 日 数 の 変 化 国 内 51 地 点 ( 図 2.1.3)の 出 現 日 数 から 求 めた 1 地 点 あたり の 年 間 日 数 (1901~2012 年 ) 棒 グラフは 各 年 の 値 青 線 は 5 年 移 動 平 均 を 赤 線 は 長 期 変 化 傾 向 を 示 す 作 成 : 気 象 庁 13
図 2.1.10 日 降 水 量 100mm 以 上 ( 左 ) 200mm 以 上 ( 右 )の 年 間 日 数 の 変 化 国 内 51 地 点 ( 図 2.1.3)の 出 現 日 数 から 求 めた 1 地 点 あたりの 年 間 日 数 (1901~2012 年 ) 棒 グラフは 各 年 の 値 青 線 は 5 年 移 動 平 均 を 赤 線 は 長 期 変 化 傾 向 を 示 す 出 典 : 気 象 庁 2012c に 追 加 コラム 6 アメダスでみた 短 時 間 強 雨 の 観 測 回 数 の 変 化 現 在 気 象 庁 では 全 国 約 1,300 箇 所 の 地 域 気 象 観 測 所 (アメダス)( 気 象 台 測 候 所 特 別 地 域 気 象 観 測 所 を 含 む)において 降 水 量 の 観 測 を 行 っている 観 測 開 始 年 は 地 点 により 異 なるものの 多 くの 地 点 では 1970 年 代 後 半 に 観 測 を 始 めており 35 年 間 程 度 のデータが 利 用 可 能 となっている 気 象 台 や 測 候 所 等 における 約 100 年 間 の 観 測 データと 比 べるとアメダスの 35 年 間 は 短 いが アメダスの 地 点 数 は 気 象 台 や 測 候 所 等 の 約 8 倍 あり 面 的 に 緻 密 な 観 測 が 可 能 であることから 短 時 間 強 雨 などは 比 較 的 よく 捉 えることができる アメダスで 観 測 された 1 時 間 降 水 量 ( 毎 正 時 前 1 時 間 降 水 量 )50mm 及 び 80mm 以 上 の 短 時 間 強 雨 の 観 測 回 数 の 30 年 余 りの 変 化 傾 向 をみると いずれも 1976~2012 年 の 期 間 において 増 加 傾 向 が 明 瞭 に 現 れている ただし 短 時 間 強 雨 の 発 生 回 数 は 年 ごとの 変 動 が 大 きく それに 対 してアメダスの 観 測 期 間 は 比 較 的 短 いこと から 変 化 傾 向 を 確 実 に 捉 えるためには 今 後 のデータの 蓄 積 が 必 要 である アメダス 地 点 で 1 時 間 降 水 量 が 50mm 以 上 ( 左 ) 及 び 80mm 以 上 ( 右 )となった 年 間 観 測 回 数 の 変 化 (1,000 地 点 あたりの 観 測 回 数 に 換 算 ) 棒 グラフは 各 年 の 値 (1976~2012 年 ) 青 線 は 5 年 移 動 平 均 赤 線 は 期 間 にわたる 変 化 傾 向 を 示 す 出 典 : 気 象 庁 2012c に 追 加 14
2.1.3 海 洋 世 界 の 平 均 海 面 水 温 平 均 海 面 水 位 はいずれも 上 昇 している 一 方 日 本 近 海 の 平 均 海 面 水 温 は 概 ね 上 昇 傾 向 を 示 しているが 平 均 海 面 水 位 は 約 20 年 周 期 の 変 動 が 顕 著 であり 世 界 平 均 海 面 水 位 にみられるような 明 瞭 な 上 昇 傾 向 はみられない (1) 世 界 の 海 面 水 温 海 面 水 位 海 洋 酸 性 化 世 界 全 体 の 年 平 均 海 面 水 温 は 1891~2012 年 において 100 年 あたり 0.51 の 割 合 で 有 意 に 上 昇 している( 図 2.1.11) また 世 界 全 体 の 年 平 均 海 面 水 位 は 20 世 紀 を 通 じて 0.17m 上 昇 したと 見 積 もられており 海 洋 表 層 の 貯 熱 量 は 長 期 的 に 有 意 な 上 昇 傾 向 にある( 図 1.3.1) 海 面 水 位 の 上 昇 の 要 因 は 海 洋 の 昇 温 ( 貯 熱 量 の 増 加 )に 伴 う 熱 膨 張 と 氷 河 氷 帽 及 びグ リーンランドや 南 極 の 氷 床 といった 陸 氷 の 融 解 や 海 洋 等 への 流 出 によると 考 えられている 産 業 革 命 以 後 大 気 中 に 放 出 された 化 石 燃 料 起 源 の 二 酸 化 炭 素 のうち 約 3 分 の 1 が 海 洋 に 吸 収 されていると 見 積 もられており 吸 収 された 二 酸 化 炭 素 によって 海 水 は 酸 性 化 している これまで に 観 測 結 果 に 基 づいて 太 平 洋 大 西 洋 南 大 洋 北 極 海 などで 海 洋 酸 性 化 が 起 きていると 報 告 され ている 北 西 太 平 洋 における 気 象 庁 の 海 洋 気 象 観 測 船 による 観 測 データによると この 海 域 での 冬 季 の 表 面 海 水 中 の 水 素 イオン 濃 度 (ph)は 北 緯 10~30 度 で 10 年 あたり 0.014~0.018(1984~ 2012 年 冬 季 の 平 均 ) 低 下 している( 図 2.1.12) 図 2.1.12 東 経 137 度 に 沿 った 冬 季 表 面 海 水 中 の 水 素 イオン 濃 度 (ph)の 変 化 赤 線 は 北 緯 30 度 緑 線 は 北 緯 20 度 青 線 は 北 緯 10 度 での 解 析 結 果 各 線 は 観 測 値 (1984~2012 年 ) 黒 破 線 は 期 間 に わたる 変 化 傾 向 を 示 す 水 素 イオン 濃 度 (ph)とは 酸 性 / アルカリ 性 を 示 す 指 数 で ph7 が 中 性 小 さいほど 酸 性 が 強 くなり 大 きいほどアルカリ 性 が 強 くなる 二 酸 化 炭 素 濃 度 や 全 炭 酸 濃 度 をもとに 緯 度 帯 ごとに 表 面 海 水 中 の 水 素 イオ ン 濃 度 (ph)を 計 算 した 出 典 : 気 象 庁 2012d (2) 日 本 の 海 面 水 温 海 面 水 位 日 本 付 近 の 海 域 別 の 年 平 均 海 面 水 温 は 2012 年 までの 約 100 年 間 で 100 年 あたり 0.63~ 1.72 の 割 合 で 上 昇 した( 図 2.1.13) これらの 上 昇 率 は 世 界 全 体 の 年 平 均 海 面 水 温 の 上 昇 率 ( 図 2.1.11)より 大 きな 値 となっている 図 2.1.11 世 界 全 体 の 年 平 均 海 面 水 温 の 変 化 観 測 船 の 観 測 等 により 得 られた 資 料 に 基 づく 1891~2012 年 の 世 界 全 体 の 年 平 均 海 面 水 温 の 推 移 黒 線 は 各 年 の 平 均 海 面 水 温 の 平 年 差 ( 平 年 値 との 差 ) 青 線 は 5 年 移 動 平 均 赤 線 は 長 期 変 化 傾 向 を 示 す 平 年 値 は 1981~2010 年 の 30 年 平 均 値 出 典 : 気 象 庁 2012c に 追 加 図 2.1.13 日 本 付 近 の 海 面 水 温 の 変 化 1900~2012 年 の 年 平 均 海 面 水 温 の 長 期 変 化 傾 向 (100 年 あ たりの 変 化 率 : )を 無 印 は 信 頼 度 99% ** 付 は 信 頼 度 90%で 統 計 的 に 有 意 [#]は 変 化 傾 向 が 明 確 に 見 出 せないこと を 示 す 出 典 : 気 象 庁 2012c を 更 新 15
日 本 沿 岸 の 海 面 水 位 は 1906 年 以 降 のデータ を 長 期 的 に 見 た 場 合 約 20 年 周 期 の 変 動 が 顕 著 であり 世 界 全 体 の 海 面 水 位 ( 図 1.3.1(b))にみ られるような 明 瞭 な 上 昇 傾 向 はみられない 日 本 沿 岸 の 海 面 水 位 に 卓 越 している 周 期 的 な 変 動 は 主 に 北 太 平 洋 偏 西 風 の 強 弱 や 南 北 移 動 を 原 因 と した 海 洋 循 環 の 変 動 によることが 海 洋 大 循 環 モ デルを 用 いた 解 析 により 明 らかとなっている 1960~2012 年 の 期 間 でみると 日 本 沿 岸 の 水 位 は 年 あたり 1.1mm で 上 昇 している( 図 2.1.14) 図 2.1.15 北 極 域 の 年 平 均 海 氷 域 面 積 の 変 化 青 線 は 観 測 値 (1979~2012 年 ) 黒 点 線 は 期 間 にわたる 変 化 傾 向 を 示 す NSIDC( 米 国 雪 氷 データセンター) 等 が 提 供 す る 衛 星 観 測 による 輝 度 温 度 ( 赤 外 放 射 エネルギーをプラン クの 法 則 を 用 いて 変 換 した 温 度 )データから 海 氷 の 密 接 度 を 算 出 し 密 接 度 が 15% 以 上 の 領 域 を 海 氷 域 面 積 としている 出 典 : 気 象 庁 2012c に 追 加 図 2.1.14 日 本 沿 岸 の 海 面 水 位 の 変 化 地 盤 変 動 の 影 響 が 小 さい 検 潮 所 の 観 測 結 果 に 基 づく 各 年 の 年 平 均 海 面 水 位 平 年 差 (1906~2012 年 )の 時 系 列 平 年 値 は 1981~2010 年 の 期 間 の 平 均 値 1906~1959 年 は 4 地 点 ( 忍 路 輪 島 浜 田 細 島 )での 平 年 差 を 平 均 した 値 1960 年 以 降 は 変 動 パターンが 類 似 している 4 海 域 ( 北 海 道 東 北 地 方 の 沿 岸 関 東 東 海 地 方 の 沿 岸 近 畿 太 平 洋 側 ~ 九 州 太 平 洋 側 の 沿 岸 北 陸 地 方 ~ 九 州 東 シナ 海 側 )の 海 域 毎 に 求 め た 平 年 差 を 平 均 した 値 青 線 は 4 地 点 平 均 の 平 年 差 の 5 年 移 動 平 均 値 赤 線 は 4 海 域 平 均 の 平 年 差 の 5 年 移 動 平 均 値 を 示 す 青 点 線 は 参 考 のために 4 地 点 平 均 の 平 年 差 の 5 年 移 動 平 均 を 期 間 後 半 について 示 したもの 出 典 : 気 象 庁 2012c に 追 加 (2)オホーツク 海 オホーツク 海 の 積 算 海 氷 域 面 積 ( 前 年 12 月 5 日 ~ 当 年 5 月 31 日 まで 5 日 ごとの 海 氷 域 面 積 の 合 計 )や 最 大 海 氷 域 面 積 ( 海 氷 域 が 年 間 で 最 も 拡 大 した 半 旬 の 海 氷 域 面 積 )は 年 ごとに 大 きく 変 動 しているものの 長 期 的 には 減 少 している オホ ーツク 海 の 積 算 海 氷 域 面 積 は 1971 年 以 降 10 年 あたり 173 万 km 2 の 割 合 で 減 少 し 最 大 海 氷 域 面 積 は 10 年 あたり 5.8 万 km 2 (オホーツク 海 全 体 の 3.7%に 相 当 )の 割 合 で 減 少 した( 図 2.1.16) 2.1.4 海 氷 北 極 域 の 年 平 均 海 氷 域 面 積 は 長 期 的 に 減 少 し ている また オホーツク 海 の 積 算 海 氷 域 面 積 も 長 期 的 に 減 少 している 一 方 南 極 域 の 海 氷 域 面 積 は 増 加 している (1) 極 域 北 極 域 の 年 平 均 海 氷 域 面 積 は 観 測 データのあ る 1979 年 以 降 年 あたり 5.9 万 km 2 の 割 合 で 長 期 的 に 減 少 し 2012 年 には 過 去 最 少 の 1,046 万 km 2 となった( 図 2.1.15) ま た 2012 年 9 月 に は 北 極 域 の 海 氷 域 面 積 は 過 去 最 少 の 336 万 km 2 を 記 録 した( 付 録 のコラム 29 しずく の 項 参 照 ) 一 方 南 極 域 の 海 氷 域 面 積 は 年 あたり 2.5 万 km 2 の 割 合 で 増 加 している 図 2.1.16 オホーツク 海 の 積 算 海 氷 域 面 積 と 最 大 海 氷 域 面 積 の 変 化 赤 線 は 各 年 (1971~2012 年 )の 最 大 海 氷 域 面 積 ( 右 軸 ) 青 線 は 各 年 の 積 算 海 氷 域 面 積 ( 左 軸 ) オレンジと 水 色 の 直 線 は 期 間 にわたる 変 化 傾 向 を 示 す 出 典 : 気 象 庁 2012c に 追 加 16
2.1.5 台 風 台 風 の 発 生 数 及 び 全 発 生 数 に 対 する 強 い 台 風 の 割 合 に 長 期 的 な 変 化 傾 向 は 見 られない 台 風 の 発 生 数 は 最 近 の 数 年 は 平 年 値 を 下 回 る 年 がほとんどであるが 台 風 に 関 する 統 計 がある 1951 年 以 降 において 明 瞭 な 長 期 変 化 傾 向 は 見 ら れない( 図 2.1.17) また 台 風 中 心 付 近 の 最 大 風 速 データが 揃 っている 1977 年 以 降 で 強 い ( 中 心 付 近 の 最 大 風 速 が 33~44m/s) 以 上 の 勢 力 となった 発 生 数 及 び 全 発 生 数 に 対 する 割 合 にも 長 期 変 化 傾 向 は 見 られない( 図 2.1.18) なお IPCC の SREX によると 観 測 結 果 に 基 づいて 熱 帯 低 気 圧 の 活 動 ( 強 度 発 生 頻 度 継 続 期 間 )が 長 期 的 に 増 加 しているとの 報 告 はあるが 過 去 における 観 測 能 力 の 変 化 を 考 慮 すると いず れも 確 信 度 は 低 いとしている(コラム 7) 40 30 発 生 20 数 10 0 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 年 図 2.1.17 台 風 の 発 生 数 の 長 期 変 化 (1951~2012 年 ) 細 い 実 線 は 各 年 の 発 生 数 を 太 い 実 線 は 5 年 移 動 平 均 を 示 す 細 い 破 線 は 平 年 値 (1981~2010 年 の 平 均 値 )を 示 す 出 典 : 気 象 庁 2012c に 追 加 図 2.1.18 強 い 以 上 の 台 風 の 発 生 数 と 全 発 生 数 に 対 する 割 合 (1977~2012 年 ) 細 い 実 線 : 強 い 以 上 の 勢 力 の 台 風 の 発 生 数 ( 青 : 左 軸 )と 全 台 風 に 対 する 割 合 ( 赤 : 右 軸 ) 太 い 実 線 はそれぞれの 5 年 移 動 平 均 を 示 す 出 典 : 気 象 庁 2012c に 追 加 コラム7 世 界 における 極 端 な 現 象 の 変 化 2012 年 に 公 表 された IPCC の SREX では 1950 年 以 降 の 観 測 によれば いくつかの 極 端 現 象 には 変 化 の 証 拠 がある 極 端 現 象 の 変 化 に 対 する 確 信 度 は データの 質 と 量 及 びこれらのデータを 解 析 した 研 究 の 有 無 に 依 存 し 地 域 によっても 極 端 現 象 の 種 類 によっても 異 なる 特 定 の 極 端 現 象 や 世 界 規 模 地 域 スケールでの 極 端 現 象 に 関 する 観 測 された 変 化 に 対 し 確 信 度 が 低 いとされたとしても 変 化 の 可 能 性 を 排 除 するものではない と して 以 下 の 通 り 極 端 現 象 の 変 化 についてまとめられている 種 類 1950 年 以 降 観 測 された 変 化 可 能 性 確 信 度 気 温 世 界 規 模 で 寒 い 昼 と 夜 の 日 数 が 減 少 暑 い 昼 と 夜 の 日 数 が 増 加 可 能 性 は 非 常 に 高 い 多 くの 地 域 で 熱 波 など 高 温 期 間 の 長 さや 発 生 数 が 増 加 確 信 度 は 中 程 度 降 雨 強 い 大 雨 の 発 生 数 が 統 計 的 に 有 意 に 増 加 した 地 域 が 統 計 的 に 有 意 に 減 少 した 地 域 よりも 多 い 可 能 性 は 高 い 低 気 圧 の 活 動 など 干 ばつ 洪 水 熱 帯 低 気 圧 の 活 動 ( 強 度 発 生 数 持 続 時 間 )が 長 期 的 に 増 加 確 信 度 は 低 い( 過 去 の 観 測 能 力 の 変 化 があるため) 温 帯 低 気 圧 の 主 要 な 経 路 が 極 側 へシフト 可 能 性 は 高 い 竜 巻 雹 といった 小 スケールの 現 象 が 地 域 により 増 加 傾 向 にある 確 信 度 は 低 い(データの 不 均 一 観 測 体 制 の 不 十 分 さのため) ヨーロッパ 南 部 西 アフリカでは 干 ばつの 強 度 持 続 期 間 が 増 加 北 アメリカ 中 央 部 オーストラリア 北 西 部 では 干 ばつの 頻 度 強 度 持 確 信 度 は 中 程 度 続 期 間 が 減 少 洪 水 の 強 度 頻 度 が 変 化 しているとの 証 拠 は 限 られており 世 界 規 模 では 変 化 の 方 向 についてすらはっきりしない 海 面 水 位 平 均 海 面 水 位 の 上 昇 に 関 連 し 沿 岸 域 の 極 端 な 高 潮 の 高 さが 上 昇 可 能 性 は 高 い 確 信 度 が 低 い( 証 拠 が 限 られてい るため) 17
2.2 将 来 予 測 される 気 候 変 動 2.2.1 気 候 変 動 予 測 と 将 来 シナリオ (1) 予 測 の 信 頼 性 と 不 確 実 性 気 候 変 動 予 測 は 今 後 大 気 中 の 温 室 効 果 ガス やエアロゾルなどの 濃 度 がどのように 変 化 する のかというシナリオをもとに 気 候 モデルにより 計 算 される 気 候 モデルでは 太 陽 活 動 の 変 動 や 火 山 噴 火 など 自 然 起 源 や 温 室 効 果 ガスやエアロ ゾルなど 人 為 起 源 の 外 部 強 制 力 に 対 する 気 候 シ ステムの 応 答 の 結 果 としての 気 候 の 平 均 的 な 変 化 が 示 される 日 々の 天 気 予 報 は いつどこで どのような 現 象 が 起 こるか を 予 測 しており 計 算 における 初 期 値 ( 観 測 値 や 解 析 値 等 )のわずか な 違 いが 予 測 結 果 に 大 きな 影 響 を 与 えるが 気 候 モデルで 予 測 しているのは 気 候 の 平 均 的 な 状 態 であり これは 外 部 強 制 力 の 変 化 に 大 きく 依 存 していることから 気 候 モデルによる 将 来 予 測 が 可 能 となる 気 候 モデルの 妥 当 性 は 図 1.3.2 に 示 したような 20 世 紀 の 気 候 の 再 現 実 験 において ある 程 度 の 誤 差 を 持 ちつつも 過 去 の 気 温 変 化 を 再 現 していることによって 確 認 されている 一 方 で 気 候 モデルは 基 本 的 には 物 理 法 則 に 基 づいているものの 気 候 システムの 全 てを 気 候 モデルの 中 に 含 めることは 不 可 能 であり 一 部 に 観 測 や 経 験 等 に 基 づいた 近 似 や 仮 定 が 用 いられ ている また 空 間 解 像 度 の 制 約 などにより 気 候 モデルで 用 いる 地 形 は 現 実 のものと 異 なること などから 過 去 の 気 候 の 再 現 や 将 来 の 予 測 におい てある 程 度 の 不 確 実 性 が 生 じる このため IPCC AR4 では 多 数 の 気 候 モデル の 予 測 結 果 を 用 いて 将 来 の 気 候 の 変 化 傾 向 を 不 確 実 性 とともに 示 している 図 2.2.1 は 個 々のモ デルが 予 測 した 気 温 と 降 水 量 の 変 化 を 示 してお り モデルにより 予 測 結 果 にばらつきがあること がわかる このような 気 候 変 動 予 測 の 不 確 実 性 に ついては 異 なる 気 候 モデルの 結 果 を 比 較 したり 同 一 モデルでも 条 件 を 変 えて 計 算 した 複 数 の 結 果 を 比 較 したりすることで 評 価 することができ ると 考 えられている (2) 将 来 シナリオ 気 候 システムの 外 部 強 制 力 として 最 も 大 きい ものは 温 室 効 果 ガスであり( 図 1.1.2 参 照 ) 気 候 変 動 予 測 には 温 室 効 果 ガスの 排 出 量 の 予 測 値 が 必 要 である このためには 人 口 経 済 エネル ギー 需 要 石 油 に 替 わるエネルギー 技 術 開 発 など 図 2.2.1 IPCC AR4 における 大 気 海 洋 結 合 モデ ルの 世 界 平 均 気 温 と 世 界 の 降 水 量 の 将 来 予 測 1980~1999 年 の 平 均 との 比 較 A1B については(3)を 参 照 出 典 :IPCC 2007a 社 会 的 経 済 的 な 側 面 の 将 来 予 測 の 検 討 が 必 要 であ る しかし 研 究 ごとに 異 なる 想 定 を 用 いると 予 測 結 果 を 相 互 に 比 較 することが 困 難 となるうえ 政 策 を 検 討 する 上 での 有 用 性 も 低 下 する そこで 前 提 として 使 用 する 統 一 的 なシナリオを 定 めている IPCCでは これまで 排 出 シナリオに 関 する 特 別 報 告 書 (SRES 12 以 下 SRESシナリオ と いう)を 作 成 しており IPCC AR4 の 将 来 予 測 は このSRESシナリオに 基 づいて 実 施 された 本 レ ポートでは 主 にSRESシナリオに 基 づいた 予 測 結 果 を 示 す なお SRESシナリオにおける 二 酸 化 炭 素 排 出 量 には UNFCCCや 京 都 議 定 書 の 削 減 目 標 の 履 行 などの 積 極 的 な 排 出 削 減 対 策 は 含 まれていない そのため SRESシナリオに 代 わる 気 候 変 動 予 測 のための 新 たなシナリオとして 代 表 的 濃 度 経 路 (RCP 13 シナリオ 以 下 RCPシナリオ という) が 作 成 された 2013~2014 年 に 公 表 されるIPCC 第 5 次 評 価 報 告 書 (AR5 以 下 AR5 という) では このRCPシナリオを 用 いた 結 果 が 示 される 予 定 である(RCPシナリオとそれに 基 づいた 最 新 の 気 候 変 動 予 測 はコラム 10 を 参 照 ) 12 SRES: Special Report on Emissions Scenarios, 2000 13 RCP: Representative Concentration Pathways 18
(3)SRES シナリオ これまでの 気 候 変 動 予 測 で 多 く 用 いられてきた SRES シナリオでは 世 界 の 発 展 の 形 態 として 二 つの 軸 で 将 来 の 方 向 を 想 定 し( 図 2.2.2) それぞ れの 将 来 像 のもとに 人 口 経 済 活 動 技 術 発 展 エネルギー 土 地 利 用 などの 変 化 が 整 合 的 に 推 定 されている それぞれの 推 定 について 社 会 経 済 シ ナリオに 基 づき 将 来 の 二 酸 化 炭 素 排 出 量 と 二 酸 化 炭 素 濃 度 に 関 する 6 つのシナリオが 図 2.2.3 に 示 すように 与 えられている 気 候 変 動 予 測 計 算 にお いては 二 酸 化 炭 素 等 の 温 室 効 果 ガス 濃 度 レベル の 代 表 として この 中 から( 低 い 方 から 順 に)B1 A1B A2 の 各 シナリオが 主 に 用 いられている 図 2.2.2 SRES シナリオにおける 4 つの 世 界 像 A1 シナリオはさらに A1B A1T A1FI シナリオに 細 分 され ている よく 用 いられる A1B シナリオは 各 エネルギー 源 のバランスを 重 視 した 高 成 長 型 社 会 シナリオ である 出 典 : 国 立 環 境 研 究 所 2001 より 作 成 図 2.2.3 シナリオ 毎 の 二 酸 化 炭 素 の 排 出 量 (a) と 二 酸 化 炭 素 濃 度 (b) 出 典 : 気 象 庁 2005 (4) 予 測 の 空 間 スケール 気 候 変 動 に 対 するきめ 細 かな 対 策 を 行 うために は 地 域 ごとの 気 候 変 動 を 詳 細 に 予 測 する 必 要 があ る しかしながら 現 状 の 全 球 気 候 モデルは 空 間 解 像 度 が 十 分 でなく 気 候 変 動 に 対 する 地 域 的 な 影 響 評 価 への 利 用 が 難 しい このため 高 解 像 度 の 全 球 気 候 モデルや 全 球 大 気 モデルを 用 いる あるいは 粗 い 空 間 分 布 で 表 された 予 測 結 果 から より 細 かい 空 間 分 布 の 予 測 結 果 を 求 める ダウンスケーリング が 行 われている ダウンスケーリングには 力 学 的 ダウンスケーリング と 統 計 学 的 ダウンスケ ーリング がある 力 学 的 ダウンスケーリングは 全 球 気 候 モデルの 計 算 結 果 を 境 界 条 件 とし より 細 かい 空 間 分 解 能 で 計 算 が 可 能 な 地 域 気 候 モデルでさらに 計 算 し 特 定 の 領 域 における 詳 細 な 気 候 変 動 予 測 を 行 う 手 法 で ある より 空 間 解 像 度 の 高 い 地 形 土 地 利 用 などの 情 報 を 与 えることにより 地 形 性 降 水 など 時 空 間 スケールの 小 さな 現 象 が 表 現 可 能 となる ただし 全 球 気 候 モデル 自 身 が 有 する 不 確 実 性 ( 誤 差 )を 引 き 継 ぐため 空 間 的 に 詳 細 な 表 現 ができても 必 ず しも 予 測 精 度 が 高 くなるわけではないことに 注 意 が 必 要 である 図 2.2.4 は 全 球 気 候 モデル 地 域 気 候 モデル (RCM) 60km 版 RCM 20km 版 気 象 庁 のレーダ ーとアメダスの 観 測 結 果 を 使 用 して 解 析 した 雨 量 (レーダーアメダス; 格 子 間 隔 5km)の 年 平 均 降 水 量 分 布 を 示 したものである 全 球 気 候 モデルでは 日 本 列 島 の 地 形 は 降 水 分 布 に 影 響 を 与 えていない が RCM 60km 版 RCM 20km 版 と 細 かくなる に 従 い レーダーアメダスの 観 測 結 果 に 示 されるよ うな 地 形 の 影 響 を 受 けた 特 徴 的 な 降 水 分 布 の 表 現 が 可 能 となる 統 計 学 的 ダウンスケーリングは 任 意 の 地 点 にお ける 観 測 データと 気 候 モデルによる 現 在 気 候 の 再 現 結 果 から 得 られるその 地 点 周 辺 の 大 気 場 との 間 に 統 計 的 な 関 係 式 を 検 出 し それに 基 づいて 空 間 詳 細 化 を 行 う 手 法 である 観 測 データがあれば 比 較 的 少 ない 計 算 機 資 源 や 計 算 時 間 で 利 用 可 能 である 一 方 現 在 気 候 において 検 出 した 統 計 的 な 関 係 を 将 来 に 外 挿 して 対 象 地 点 の 予 測 を 行 うため 独 立 した 期 間 や 地 点 で 統 計 的 関 係 を 検 証 し 極 端 な 外 挿 になら ないようにする 等 の 注 意 が 必 要 である このように 空 間 スケールの 小 さい 範 囲 の 気 候 変 動 予 測 とその 影 響 評 価 には ダウンスケール 手 法 が 必 要 であり より 精 度 の 高 い 予 測 結 果 を 得 るための 様 々な 研 究 が 進 められている 19
図 2.2.4 日 本 列 島 中 部 の 年 平 均 降 水 量 の 再 現 性 の 比 較 (a) 全 球 気 候 モデル( 解 像 度 280km 相 当 ) ( b) 地 域 気 候 モデル(RCM) 60km 版 ( c)rcm 20km 版 それぞれ 10 年 平 均 値 (d)レーダーとアメダスの 観 測 値 に 基 づく 解 析 によ る 6 年 間 (1995-2000) 平 均 値 出 典 : 高 藪 2005 を 拡 大 (5) 日 本 付 近 の 詳 細 な 予 測 日 本 付 近 を 対 象 とした 地 域 的 に 詳 細 な 気 候 変 動 予 測 は 日 本 のいくつかの 研 究 グループが 高 解 像 度 大 気 海 洋 結 合 モデルや 超 高 解 像 度 全 球 大 気 モデル 日 本 付 近 の 地 域 気 候 モデルなどを 使 って 研 究 を 行 い 成 果 をあげている 本 レポートでは 日 本 付 近 の 詳 細 な 予 測 結 果 として 主 に 気 象 庁 気 象 研 究 所 が 開 発 した 非 静 力 学 地 域 気 候 モデル (NHRCM)により 5km の 解 像 度 で 力 学 的 にダ ウンスケーリングした 21 世 紀 末 (2076~2095 年 )の 予 測 結 果 を 示 している なお 地 域 気 候 モ デルのもととなる 全 球 予 測 結 果 には SRES の A1B シナリオにより 20km の 解 像 度 で 計 算 した 高 解 像 度 全 球 大 気 モデル(MRI-AGCM3.2)の 結 果 を 用 いている( 詳 細 は 気 象 庁, 2013 を 参 照 ) なお 本 レポートに 掲 載 されている 予 測 の 多 く は 特 記 のない 限 りその 前 提 となる 温 室 効 果 ガス の 排 出 については 単 一 のシナリオ そして 単 一 の 気 候 モデルの 結 果 をもとに 記 述 している このた め 用 いるシナリオや 気 候 モデルが 異 なると 計 算 結 果 に 違 いを 生 じる 可 能 性 があることに 注 意 が 必 要 である また 降 水 量 等 の 変 化 の 予 測 は 気 温 に 比 べて 一 般 に 不 確 実 性 が 大 きい これは 台 風 や 梅 雨 前 線 に 伴 う 大 雨 等 の 顕 著 現 象 の 頻 度 や 程 度 は 年 々の 変 動 が 大 きいことに 加 え 空 間 的 な 代 表 性 が 小 さく さ ら に 発 生 頻 度 が 稀 であるため であり このことについても 注 意 が 必 要 である コラム 8 IPCC の 評 価 報 告 書 における 可 能 性 と 確 信 度 の 表 現 IPCC では 評 価 結 果 の 可 能 性 と 確 信 度 を 表 す 用 語 を 一 貫 した 基 準 に 基 づいて 使 用 している 以 下 に IPCC AR5 で 用 いるために 準 備 され SREX でも 用 いられている 可 能 性 と 確 信 度 を 表 現 する 用 語 を 示 す (Mastrandrea et al., 2010) 可 能 性 とは はっきり 定 義 できる 事 象 が 起 こった あるいは 将 来 起 こることについての 確 率 的 評 価 であ る また 確 信 度 とは モデル 解 析 あるいはある 意 見 の 正 しさに 関 する 不 確 実 性 の 程 度 を 表 す 用 語 であ り 証 拠 ( 例 えばメカニズムの 理 解 理 論 データ モデル 専 門 家 の 判 断 )の 種 類 や 量 品 質 及 び 整 合 性 と 特 定 の 知 見 に 関 する 文 献 間 の 競 合 の 程 度 等 に 基 づく 見 解 の 一 致 度 に 基 づいて 定 性 的 に 表 現 される 可 能 性 の 定 義 証 拠 と 見 解 の 一 致 度 の 記 述 およびそれらの 確 信 度 との 関 係 用 語 ほぼ 確 実 発 生 する 可 能 性 >99% 見 解 一 致 度 は 高 い 証 拠 は 限 定 的 見 解 一 致 度 は 高 い 証 拠 は 中 程 度 見 解 一 致 度 は 高 い 証 拠 は 頑 健 見 解 一 致 度 は 中 程 度 見 解 一 致 度 は 中 程 度 見 解 一 致 度 は 中 程 度 可 能 性 が 極 めて 高 い* >95% 証 拠 は 限 定 的 証 拠 は 中 程 度 証 拠 は 頑 健 可 能 性 が 非 常 に 高 い >90% 可 能 性 が 高 い >66% 見 解 一 致 度 は 低 い 見 解 一 致 度 は 低 い 見 解 一 致 度 は 低 い 証 拠 は 限 定 的 証 拠 は 中 程 度 証 拠 は 頑 健 どちらかと 言 えば* >50% どちらも 同 程 度 33%~66% 証 拠 ( 種 類 量 質 整 合 性 ) 可 能 性 が 低 い <33% 可 能 性 が 非 常 に 低 い <10% 可 能 性 の 定 義 のうち *が 付 されているものは IPCC 可 能 性 が 極 めて 低 い* <5% AR4 で 付 加 的 に 用 いられた 定 義 適 切 な 場 合 は AR5 でも 用 ありえない <1% いてよいとされている 見 解 の 一 致 度 高 低 確 信 度 の 尺 度 20
2.2.2 気 温 温 室 効 果 ガス 濃 度 の 増 加 に 伴 い 日 本 の 平 均 気 温 は 上 昇 し その 上 昇 幅 は 世 界 平 均 を 上 回 ると 予 測 される また 平 均 気 温 の 上 昇 に 伴 い 真 夏 日 や 熱 帯 夜 の 日 数 は 増 加 し 冬 日 や 真 冬 日 の 日 数 は 減 少 すると 予 測 される (1) 世 界 の 気 温 21 世 紀 末 までの 世 界 平 均 気 温 は 温 室 効 果 ガ ス 濃 度 の 増 加 に 伴 って 上 昇 し 続 けると 予 測 され ている( 図 2.2.5) 今 後 20 年 間 程 度 は 温 室 効 果 ガスの 排 出 シナリオによらず 気 温 は 10 年 あ たり 約 0.2 の 割 合 で 上 昇 するが その 後 はシナ リオごとの 差 異 が 顕 在 化 し 21 世 紀 末 には 1980 ~1999 年 の 平 均 と 比 較 して B1 シナリオで 1.8 ( 可 能 性 が 高 い 予 測 幅 は 1.1~2.9 ) A1FI シナリ オでは 4.0 ( 可 能 性 が 高 い 予 測 幅 は 2.4~6.4 ) と 予 測 されている 予 測 された 気 温 の 上 昇 量 の 地 理 的 分 布 をみる と 温 室 効 果 ガス 排 出 シナリオによる 分 布 の 差 異 は 小 さく 過 去 数 十 年 に 観 測 された 気 温 上 昇 の 分 布 とも 類 似 している 気 温 上 昇 の 程 度 は 陸 域 と ほとんどの 北 半 球 高 緯 度 で 大 きい( 図 2.2.6) 平 均 気 温 の 上 昇 に 伴 い 世 界 規 模 で 暑 い 昼 や 夜 の 数 が 増 加 するとともに 寒 い 昼 や 夜 の 数 が 減 少 する 可 能 性 が 高 いと 予 測 されている また 日 最 高 気 温 について 数 十 年 間 に 一 度 しか 起 こらなか ったような 暑 い 日 の 頻 度 が 21 世 紀 末 にはさら に 増 加 するとも 予 測 されている (2) 日 本 の 気 温 日 本 の 平 均 気 温 は 世 界 平 均 と 同 様 に 温 室 効 果 ガス 濃 度 の 増 加 に 伴 って 上 昇 し 続 けると 予 測 さ れている( 図 2.2.7) 世 界 平 均 と 同 様 に 21 世 紀 前 半 の 気 温 上 昇 は 温 室 効 果 ガスの 排 出 シナリ オによらないが その 後 はシナリオごとの 差 異 が 顕 在 化 し 21 世 紀 末 には 1980~1999 年 の 平 均 と 比 較 して A2 A1B B1 の 各 シナリオでそれ ぞれ 4.0 3.2 2.1 上 昇 すると 予 測 されて いる これは いずれのシナリオでも 世 界 平 均 気 温 の 上 昇 量 より 大 きい 地 域 気 候 モデルで A1B シナリオについて 予 測 された 気 温 の 上 昇 量 を 地 域 別 ( 図 2.2.8 参 照 )に みると 北 日 本 ほど 昇 温 が 大 きい これは 世 界 平 均 気 温 の 予 測 にみられる 傾 向 と 同 様 の 傾 向 で ある( 図 2.2.9) また 夏 季 に 比 べて 冬 季 の 昇 温 が 大 きいと 予 測 されている 気 温 の 上 昇 に 伴 い 冬 日 や 真 夏 日 などの 日 数 が 変 化 することが 予 測 されている A1B シナリオ による 予 測 では 21 世 紀 末 (2076~2095 年 )に は 真 夏 日 や 熱 帯 夜 の 日 数 は 東 日 本 西 日 本 沖 縄 奄 美 を 中 心 に 増 加 すると 予 測 されている 一 方 で 冬 日 や 真 冬 日 の 日 数 は 北 日 本 を 中 心 に 減 少 すると 予 測 されている ( 図 2.2.10) 図 2.2.5 世 界 平 均 気 温 の 上 昇 量 実 線 は A2 A1B B1 シナリオにおける 複 数 のモデルによ る(1980~1999 年 と 比 較 した) 世 界 平 均 地 上 気 温 の 上 昇 量 を 20 世 紀 の 状 態 に 引 き 続 いて 示 す 陰 影 は 個 々のモデル の 年 平 均 値 の 標 準 偏 差 の 範 囲 橙 色 の 線 は 2000 年 の 濃 度 を 一 定 に 保 った 実 験 のもの 右 側 の 灰 色 の 帯 は 6 つの SRES シナリオにおける 最 良 の 推 定 値 ( 各 帯 の 横 線 ) 及 び 可 能 性 が 高 い 予 測 幅 出 典 :IPCC 2007a 図 2.2.6 地 上 気 温 の 上 昇 量 の 地 理 的 分 布 1980~1999 年 を 基 準 とした 21 世 紀 末 (2090~2099 年 ) の 地 上 気 温 の 変 化 の 予 測 なお 海 面 水 温 の 変 化 は 広 域 的 長 期 的 には 直 上 の 海 上 気 温 の 変 化 と 同 じと 見 なせる 複 数 の 大 気 海 洋 結 合 モデル(AOGCM)によって 計 算 された SRES A1B シナリオでの 予 測 の 平 均 値 を 示 す 出 典 :IPCC 2007a 21
+6 日 +5 本 の +4 平 均 +3 気 温 +2 の +1 上 昇 0 量 ( ) -1 A2 A1B B1 観 測 結 果 -2 1900 2000 2100 年 図 2.2.7 日 本 の 平 均 気 温 の 予 測 IPCC 第 4 次 評 価 報 告 書 で 使 われた 複 数 の 気 候 モデルによる A2 A1B B1 シナリオでの 日 本 の 平 均 気 温 の 予 測 結 果 各 モデルの 格 子 のうち 日 本 の 陸 地 が 占 める 割 合 が 30% 以 上 あ る 格 子 を 選 び それらの 格 子 の 値 の 平 均 値 を 各 モデルの 予 測 結 果 における 日 本 の 気 温 の 予 測 値 とした シナリオごとの 平 均 値 と 予 測 のばらつきの 幅 (± 標 準 偏 差 の 範 囲 )を 赤 緑 青 の 実 線 と 陰 影 で 示 す 黒 線 は 日 本 の 平 均 気 温 の 観 測 結 果 ( 図 2.1.4) 2000 年 以 前 の 陰 影 は 過 去 の 再 現 実 験 の 再 現 値 のばら つきの 幅 (± 標 準 偏 差 ) 1980~1999 年 の 20 年 平 均 値 から の 差 で 示 す 作 成 : 気 象 庁 図 2.2.9 地 域 別 の 年 平 均 気 温 の 変 化 非 静 力 学 地 域 気 候 モデル(NHRCM, 解 像 度 5km)による 地 域 別 の 年 平 均 気 温 の 変 化 予 測 棒 グラフは 1980~1999 年 平 均 と 2076~2095 年 の 差 を 表 わし 縦 棒 は 年 々 変 動 の 標 準 偏 差 ( 左 :1980~1999 年 右 :2076~2095 年 )を 示 す 各 地 域 の 範 囲 は 図 2.2.8 参 照 A1B シナリオによる 予 測 結 果 に 基 づ く 出 典 : 気 象 庁 2013 図 2.2.8 予 測 における 地 域 区 分 図 2.2.10 地 域 別 の 真 夏 日 冬 日 日 数 の 変 化 非 静 力 学 地 域 気 候 モデル(NHRCM, 解 像 度 5km)による 地 域 別 の 真 夏 日 冬 日 の 変 化 予 測 棒 グラフは 1980~1999 年 平 均 と 2076~2095 年 の 日 数 の 差 を 表 わし 縦 棒 は 年 々 変 動 の 標 準 偏 差 ( 左 :1980~1999 年 右 :2076~2095 年 )を 示 す 各 地 域 の 範 囲 は 図 2.2.8 参 照 いずれも A1B シナリオによる 予 測 結 果 に 基 づく 出 典 : 気 象 庁 2013 22
2.2.3 降 水 量 世 界 では 高 緯 度 地 域 で 降 水 量 が 増 加 する 可 能 性 が 非 常 に 高 い 一 方 ほとんどの 亜 熱 帯 陸 域 では 減 少 する 可 能 性 が 高 い 極 端 な 大 雨 の 頻 度 や 総 降 水 量 に 対 する 大 雨 の 割 合 は 21 世 紀 中 に 多 くの 地 域 で 増 加 する 可 能 性 が 高 い 日 本 の 年 降 水 量 は 21 世 紀 末 には 20 世 紀 末 に 対 して 平 均 的 に 5% 程 度 増 加 すると 予 測 され る ただし 降 水 量 は 予 測 の 不 確 実 性 とともに 年 々の 変 動 が 大 きいことに 注 意 する 必 要 がある 1 時 間 降 水 量 50mm 以 上 など 極 端 な 降 水 現 象 の 頻 度 の 増 加 が 予 測 される (1) 世 界 の 降 水 量 大 気 中 の 温 室 効 果 ガス 濃 度 の 増 加 に 伴 って 地 球 上 のほぼ 全 ての 地 域 で 気 温 が 上 昇 するのに 対 し 降 水 量 は 増 加 する 地 域 と 減 少 する 地 域 がある 地 域 ごとにみると 高 緯 度 地 域 では 降 水 量 が 増 加 す る 可 能 性 が 非 常 に 高 い 一 方 ほとんどの 亜 熱 帯 陸 域 では 減 少 する 可 能 性 が 高 いと 予 測 されている また 地 域 によっては 気 候 モデルによる 予 測 の ばらつきが 大 きく 増 加 するか 減 少 するかはっき り 傾 向 が 見 いだせない 地 域 がある( 図 2.2.11) 降 水 量 は 増 加 する 地 域 と 減 少 する 地 域 があるが 極 端 な 大 雨 の 頻 度 あるいは 総 降 水 量 に 占 める 大 雨 の 割 合 は 21 世 紀 中 に 世 界 の 多 くの 地 域 で 増 加 す る 可 能 性 が 高 いと 予 測 されている(IPCC, 2012) 図 2.2.11 2090~2099 年 を 対 象 とする 降 水 量 の 相 対 的 な 変 化 率 (1980~1999 年 が 基 準 ) SRES A1B シナリオの 複 数 の 気 候 モデルの 平 均 上 図 は 12 ~2 月 下 図 は 6~8 月 白 色 の 地 域 は 変 化 の 符 号 が 一 致 し たモデルが 66%に 満 たない 地 域 点 描 の 地 域 は 90% 以 上 の モデルで 変 化 の 符 号 が 一 致 した 地 域 出 典 :IPCC 2007a (2) 日 本 の 降 水 量 日 本 の 年 降 水 量 の 予 測 結 果 は A2 A1B B1 のいずれのシナリオでも 21 世 紀 末 には 20 世 紀 末 に 対 して 平 均 的 に 5% 程 度 増 加 する 傾 向 を 示 し ており シナリオによる 差 異 はほとんどない た だし 降 水 量 については 予 測 の 不 確 実 性 ととも に 年 々の 変 動 が 大 きいことに 注 意 する 必 要 がある ( 図 2.2.12) 図 2.2.12 日 本 の 年 平 均 降 水 量 の 予 測 IPCC AR4 で 使 われた 複 数 の 気 候 モデルによる A2 A1B B1 シナリオの 予 測 結 果 から 算 出 した 日 本 の 年 平 均 降 水 量 の 将 来 予 測 を 観 測 結 果 とともに 示 す 各 モデルの 格 子 のうち 日 本 の 陸 地 が 占 める 割 合 が 30% 以 上 ある 格 子 を 選 び それら の 格 子 の 値 の 平 均 値 を 各 モデルの 予 測 結 果 における 日 本 の 年 平 均 降 水 量 の 予 測 値 とした シナリオごとの 平 均 値 と 予 測 の ばらつきの 幅 (± 標 準 偏 差 )を 赤 緑 青 の 実 線 と 陰 影 で 示 す 黒 線 は 日 本 の 降 水 量 の 観 測 結 果 ( 図 2.1.8) 2000 年 以 前 の 陰 影 は 過 去 の 再 現 実 験 の 再 現 値 のばらつきの 幅 (± 標 準 偏 差 )を 示 す 1980~1999 年 の 20 年 平 均 値 との 比 で 示 す 作 成 : 気 象 庁 地 域 気 候 モデルで A1B シナリオについて 予 測 された 年 降 水 量 の 変 化 を 地 域 別 にみると 北 日 本 で 有 意 に 増 加 すると 予 測 されている( 図 2.2.13) また 梅 雨 期 の 降 水 現 象 の 変 化 に 着 目 して 現 在 と 将 来 予 測 を 比 較 すると 西 日 本 における 梅 雨 後 期 の 降 水 量 が 増 加 するとともに 大 雨 の 頻 度 が 増 加 する 可 能 性 があると 予 測 している 研 究 結 果 があ る( 図 2.2.14) 極 端 な 降 水 現 象 については 全 ての 地 域 で 21 世 紀 末 には 短 時 間 強 雨 (1 時 間 降 水 量 50mm 以 上 )の 年 平 均 発 生 回 数 が 増 加 する 傾 向 が 現 れてい る( 図 2.2.15) また 総 降 水 量 に 対 し 大 雨 によっ てもたらされる 降 水 量 は 増 加 する 傾 向 が 現 れてお り 総 降 水 量 では 減 少 傾 向 が 見 られる 地 域 でも 大 雨 による 降 水 の 寄 与 分 としては 増 加 している 23
( 図 省 略 ) これは 世 界 全 体 について 予 測 されてい る 傾 向 と 一 致 している 一 方 で 日 本 においては 年 間 の 無 降 水 日 数 がほ とんどの 地 域 で 増 加 すると 予 測 されている( 図 2.2.16) これは 気 温 の 上 昇 に 伴 って 降 水 イベント の 間 隔 が 延 びる 可 能 性 が 指 摘 されていることと 整 合 している これらの 極 端 な 降 水 現 象 の 結 果 についても 予 測 の 不 確 実 性 とともに 年 々の 変 動 が 大 きいことに 注 意 が 必 要 である 図 2.2.13 地 域 別 の 年 平 均 降 水 量 の 変 化 非 静 力 学 地 域 気 候 モデル(NHRCM, 解 像 度 5km)による 地 域 別 の 年 平 均 降 水 量 の 変 化 予 測 棒 グラフは 1980~1999 年 平 均 と 2076~2095 年 の 差 を 表 わし 縦 棒 は 年 々 変 動 の 標 準 偏 差 ( 左 :1980~1999 年 右 :2076~2095 年 )を 示 す 各 地 域 の 範 囲 は 図 2.2.8 参 照 A1B シナリオによる 予 測 結 果 に 基 づく 出 典 : 気 象 庁 2013 図 2.2.15 地 域 別 の1 時 間 降 水 量 50mm 以 上 の 年 間 発 生 回 数 の 変 化 非 静 力 学 地 域 気 候 モデル(NHRCM, 解 像 度 5km)による 地 域 別 の 1 時 間 降 水 量 50mm 以 上 の 年 間 発 生 回 数 の 変 化 予 測 棒 グラフは 1 地 点 あたりの 年 間 発 生 回 数 を 表 し( 灰 :1980~ 1999 年 赤 :2076~2095 年 ) 縦 棒 は 年 々 変 動 の 標 準 偏 差 ( 左 :1980~1999 年 右 :2076~2095 年 )を 示 す A1B シナリオによる 予 測 に 基 づく 各 地 域 の 範 囲 は 図 2.2.8 参 照 出 典 : 気 象 庁 2013 図 2.2.14 日 降 水 量 の 季 節 変 化 及 び 総 降 水 量 に 占 める 大 雨 の 割 合 の 将 来 予 測 雲 システム 解 像 地 域 気 候 モデル( 解 像 度 5km)による 予 測 結 果 西 日 本 付 近 の 領 域 ( 東 経 127-137 度 北 緯 30-35 度 )に おける a) 25 年 平 均 日 降 水 量 (mm)の 季 節 変 化 (5 日 移 動 平 均 ) 及 び b) 日 降 水 量 100mm 以 上 の 大 雨 によってもたらされ る 降 水 量 の 総 降 水 量 に 対 する 割 合 (%:5 日 移 動 平 均 )の 現 在 気 候 と 将 来 予 測 の 比 較 A1B シナリオによる 予 測 結 果 に 基 づく a) 日 降 水 量 の 変 化 には レーダーとアメダスによる 観 測 結 果 ( 点 線 ;1996~2009 年 の 平 均 )も 合 わせて 示 す 出 典 :Kanada et al.,2012 を 和 訳 図 2.2.16 地 域 別 の 年 平 均 無 降 水 日 数 の 変 化 非 静 力 学 地 域 気 候 モデル(NHRCM, 解 像 度 5km)による 地 域 別 の 年 平 均 無 降 水 日 数 の 変 化 予 測 棒 グラフは 1980~1999 年 平 均 と 2076~2095 年 の 差 を 表 わし 縦 棒 は 年 々 変 動 の 標 準 偏 差 ( 左 :1980~1999 年 右 :2076~2095 年 )を 示 す 各 地 域 の 範 囲 は 図 2.2.8 参 照 A1B シナリオによる 予 測 結 果 に 基 づく 出 典 : 気 象 庁 2013 24