環 境 負 荷 削 減 環 境 影 響 評 価 Green by ICT By ICT 効 果 評 価 技 術 の 開 発 NTT 環 境 エネルギー 研 究 所 ではNTTグループの 環 境 ビジョン THE GREEN VISION 2020 の 目 標 達 成 に 向 け,ICTを 利 活 用 することによる 社 会 の 環 境 負 荷 削 減 効 果 を 企 業 レベルで 評 価 するBy ICT 効 果 評 価 技 術 を 開 発 しました.これにより,NTTグループが 提 供 するICTサービスによる 環 境 負 荷 削 減 効 果 の 総 量 を 売 上 高 や 契 約 数 などの 経 営 指 標 を 用 いて 簡 易 に 算 出 することが 可 能 となりました. な が お 長 尾 友 美 はんのえ 飯 と も み しんすけ 橋 真 輔 た け い ゆういちろう / 武 井 雄 一 郎 NTT 環 境 エネルギー 研 究 所 企 業 目 標 としてのGreen by ICT 地 球 温 暖 化 の 緩 和 に 向 けて, 社 会 全 体 の 環 境 負 荷 を 削 減 するためにICTの 利 活 用 が 期 待 されています (1).ICTを 用 いてエネルギー 利 用 効 率 の 改 善, 製 品 の 生 産 消 費 の 効 率 化 削 減, 人 物 品 の 移 動 の 削 減 が 可 能 となり,これ らの 活 動 から 排 出 されていたCO 2 量 を 削 減 できます.このような 社 会 全 体 の CO 2 排 出 削 減 となるICT 利 活 用 の 取 り 組 みは Green by ICT と 呼 ばれて います. NTTグループは2020 年 度 に 向 けた 環 境 ビジョン THE GREEN VISION 2020 を 策 定 しました (2).このビジョ ンではGreen by ICTに 加 え Green of ICT Green with Team NTT の 3 つの 取 り 組 み 方 針 を 掲 げていま す.そのうちGreen by ICTでは, 低 炭 素 社 会 の 実 現 に 向 けてICTを 普 及 拡 大 し,お 客 さまに 広 く 利 活 用 していた だくことにより,2020 年 までに 社 会 全 体 で2000 万 t 以 上 のCO 2 排 出 量 を 削 減 する という 貢 献 目 標 を 掲 げていま す.この 貢 献 目 標 の 対 象 はNTTグルー プ 各 社 がお 客 さまに 提 供 するすべての ICTサービスを 指 します.したがって, 目 標 の 達 成 度 を 管 理 するには 各 社 が 提 供 するICTサービスが 社 会 で 利 活 用 さ れることによるCO 2 排 出 量 削 減 効 果 (By ICT 効 果 )の 総 量 を 評 価 する 必 要 があります. By ICT 効 果 評 価 技 術 の 開 発 ICTサービス 個 々のBy ICT 効 果 は, 環 境 効 率 評 価 ガイドライン (3) に 従 い, ICTサービスを 利 用 する 際 のCO 2 排 出 量 と,ICTサービスと 同 機 能 を 有 する 他 手 段 ( 従 来 手 段 )を 利 用 する 際 の CO 2 排 出 量 のそれぞれをLCA(Life Cycle Assessment:ライフサイクル アセスメント)の 手 法 によって 計 算 し, それらの 比 較 によって 算 出 します (4). 算 出 イメージを 図 1に 示 します.NTT グループにおいてもソリューション 環 境 ラベル 制 度 (5) などを 通 して 数 多 くの ICTサービスのBy ICT 効 果 が 評 価 さ れています. 前 述 のように 企 業 目 標 としてのBy ICT 効 果 を 評 価 する 場 合 にはその 企 業 がお 客 さまに 提 供 するすべてのICT サービスを 対 象 とします.しかし, 企 業 レベルでみるとICTサービスの 数 は 膨 大 であり, 限 られた 経 営 資 源 ですべ てのICTサービスのBy ICT 効 果 を 1 つ ひとつ 評 価 し, 積 み 上 げて 集 計 するこ とは 困 難 です.そのため, 一 般 的 に 企 業 が 公 表 している 売 上 高 や 契 約 数 など の 経 営 指 標 を 用 いることにより, 企 業 レベルのBy ICT 効 果 の 総 量 を 簡 易 に 推 計 する 手 法 の 構 築 が 課 題 でした. この 課 題 を 解 決 するため,By ICT 効 果 は 企 業 が 提 供 するICTサービス の 数 を 示 す 値 ( 規 模 量 )に 比 例 する という 仮 定 の 下, 規 模 量 に 対 して 規 模 量 の 単 位 当 りのCO 2 排 出 削 減 量 ( 集 計 用 原 単 位 )を 乗 じることにより 規 模 量 全 体 のBy ICT 効 果 を 推 計 する 評 価 技 術 を 開 発 しました.サービス 階 層 と ユーザを 考 慮 し,NTTグループのサー ビスを ソリューション 法 人 向 け ネットワークサービス 一 般 向 けネッ トワークサービス に 分 類 し,それぞ れに 対 応 する 評 価 技 術 を 開 発 しました ( 図 2). 規 模 量 は 経 営 指 標 であるソ リューションの 売 上 高 やネットワーク サービスの 契 約 数 とします. 以 下,そ れぞれの 評 価 技 術 について 説 明 します. ソリューションの 評 価 技 術 ソリューションの 評 価 技 術 (6) は, 規 模 量 であるソリューションの 売 上 高 に 集 計 用 原 単 位 を 乗 じることによって By ICT 効 果 を 推 計 するものです. 集 計 用 原 単 位 はソリューション 売 上 高 100 万 円 当 りのCO 2 排 出 削 減 量 です. NTTグループ 各 社 において 実 際 に 販 14
特 集 売 提 供 しているソリューションの By ICT 効 果 を 環 境 効 率 評 価 ガイドラ インに 従 ってそれぞれ 評 価 し,それら ソリューションの 売 上 高 と 合 わせてプ ロットして 導 出 した 一 次 の 回 帰 式 の 傾 きを 集 計 用 原 単 位 とします. 回 帰 式 は, 公 務 や 金 融 保 険 業, 情 報 通 信 業 と いったソリューションの 販 売 提 供 先 の 産 業 分 類 ごとに 導 出 します( 図 3). ソリューションを 産 業 分 類 ごとにグ ルーピングすることでBy ICT 効 果 と 売 上 高 とに 高 い 相 関 が 得 られることを 確 認 しています.この 産 業 分 類 別 の 集 計 用 原 単 位 に,それぞれ 産 業 分 類 別 の 売 上 高 を 乗 じ, 合 計 することにより, 企 業 の 全 ソリューションのBy ICT 効 果 が 推 計 されます( 図 4). この 考 え 方 をNTTグループ 以 外 の 企 業 と 共 有 し, 社 会 的 な 認 知 を 得 るこ とを 目 的 とし,2012 年 度 にLCA 日 本 フォーラムに ICT 事 業 の 組 織 のLCA 15
研 究 会 を 立 ち 上 げました. 研 究 会 では 企 業 レベルのBy ICT 効 果 を 算 出 する 方 法 のガイドライン 化 を 進 めていま す. 本 算 出 方 法 により, 企 業 が 環 境 目 標 を 定 量 的 に 設 定 し, 目 標 の 達 成 度 を 定 量 的 に 管 理, 公 開 できる 社 会 の 基 盤 づくりを 行 います. 将 来 的 には, 企 業 レベルのBy ICT 効 果 を 集 約 し, 国 レ ベルのBy ICT 効 果 を 定 量 的 に 算 出 す る 手 法 を 確 立 してICTの 環 境 貢 献 度 を 図 ることを 目 指 しています. 法 人 向 けネットワークサービス の 評 価 技 術 法 人 向 けネットワークサービスの 評 価 技 術 は, 専 用 線 やIP-VPNサービス を 対 象 としています. 専 用 線 サービス を 利 用 する 代 表 的 なモデル 企 業 を 想 定 し, 当 該 モデル 企 業 当 りのCO 2 排 出 削 減 量 を 算 出 したものを 集 計 用 原 単 位 と します.これにサービス 契 約 数 を 乗 じ て 代 表 的 な 専 用 線 やIP-VPNサービス のBy ICT 効 果 を 推 計 します.モデル 企 業 当 りのBy ICT 効 果 は 環 境 効 率 評 価 ガイドラインに 従 って 評 価 しまし た. 評 価 イメージを 図 5に 示 します. サービス 契 約 数 はサービスに 必 要 とす る 回 線 数 と 法 人 契 約 数 より 求 めたモデ ル 企 業 の 数 とします.モデル 企 業 ごと に 算 出 した 集 計 用 原 単 位 にサービス 契 約 数 を 乗 じて 各 サービスのBy ICT 効 果 を 求 め,それらを 合 計 することによ り 法 人 向 けネットワークサービス 全 体 のBy ICT 効 果 が 推 計 されます. 一 般 向 けネットワークサービス の 評 価 技 術 一 般 向 けネットワークサービスの 評 価 技 術 (7) は,フィーチャーフォンおよ 16
特 集 びスマートフォンでモバイルネット ワークを 利 用 した 場 合 と,PCでブロー ドバンドネットワークを 利 用 した 場 合 を 対 象 としています.それぞれ, 規 模 量 である 回 線 契 約 数 に 集 計 用 原 単 位 を 乗 じることによってBy ICT 効 果 を 算 出 します. 集 計 用 原 単 位 は, 一 般 向 け ネットワークサービスの 代 表 的 な 利 用 シーンと,それらに 対 応 する 従 来 手 段 のそれぞれのCO 2 排 出 量 の 比 較 から 算 出 した 回 線 当 りのCO 2 排 出 削 減 量 で す.ブロードバンドネットワークおよ びモバイルネットワークの 利 用 シーン 利 用 シーン 表 代 表 的 な 利 用 シーンの 選 定 結 果 は 多 岐 にわたるため, 統 計 資 料 を 参 考 に 利 用 率 が10% 以 上 の 利 用 シーンを 選 定 し, 代 表 的 な 利 用 シーンとしまし た( 表 ).これら 代 表 的 な 利 用 シーン の 利 用 頻 度 および 比 較 対 象 となる 従 来 手 段,およびその 利 用 頻 度 をユーザア ンケートにより 求 め, 環 境 効 率 評 価 ガ イドラインに 従 い 各 利 用 シーンのCO 2 排 出 量 を 算 出 しました( 図 6). ユ ー ザアンケートは1160 人 を 対 象 として Webで 行 いました. 算 出 した 集 計 用 原 単 位 に,それぞれ 契 約 数 を 乗 じること により, 一 般 向 けネットワークサー Xi FOMA フレッツ 光 フィーチャー フォン 利 用 スマートフォン 利 用 PC 利 用 通 話 電 子 メール 音 楽 ( 着 メロ 含 む) 画 像 ゲーム 芸 能 スポーツニュース 検 索 リンク 集 掲 示 板 個 人 のホームページ ブログ SNS 無 料 動 画 有 料 動 画 グルメタウン 情 報 携 帯 電 話 メーカサイト 地 図 交 通 情 報 時 刻 表 一 般 のニュース 天 気 予 報 オンラインバンキング オンラインショッピング オークション 懸 賞 アンケート バーゲン 割 引 クーポン 株 式 市 況 情 報 雑 学 教 養 ビスのBy ICT 効 果 が 推 計 されます. 2013 年 度 By ICT 効 果 の 試 算 By ICT 効 果 評 価 技 術 を 用 いて2013 年 度 のNTTグループのBy ICT 効 果 を 試 算 し,その 結 果 を NTTグループ CSR 報 告 書 2014 に 掲 載 しています ( 図 7). 試 算 結 果 は ソリューション 法 人 向 けネットワークサービス 一 般 向 けネットワークサービス の 評 価 結 果 を 含 んでいます.2010 年 度 は 1037 万 t-co 2 であったのに 比 べ,2013 年 度 は2964 万 t-co 2 となりました.By ICT 効 果 が 大 きく 伸 びたのは 一 般 向 け ネットワークサービスのうちブロード バンドネットワークおよびスマート フォンを 利 用 したモバイルネットワー クの 利 用 時 間 が 増 加 したためです. 2011 年 度 からPCとスマートフォンの 1 日 当 りの 利 用 時 間 が 急 激 に 増 加 し ていることが 評 価 結 果 に 表 れているも のと 考 えられます. 今 後 の 展 開 NTTグループでは 今 後 もさまざま な 分 野 においてICT 活 用 の 範 囲 を 拡 げ ることにより, 社 会 の 環 境 負 荷 低 減 に 取 り 組 んでいきます.その 取 り 組 みを By ICT 効 果 評 価 手 法 によって 定 量 的 に 評 価 し 社 会 に 対 して 公 表 していくこ とでNTTグループの 環 境 貢 献 をア ピールしていきます.また,すでに 開 始 しているソリューションの 評 価 技 術 のガイドライン 化 をはじめ,By ICT 効 果 評 価 技 術 の 普 及 展 開 を 行 っていき ます. 参 考 文 献 (1) 林 折 口 染 村 杉 山 : ICT 利 活 用 による 環 境 負 荷 削 減 効 果 の 見 える 化, NTT 技 術 ジャーナル,Vol.22,No.11,pp.45-48,2010. (2) NTT CSR 推 進 室 : NTTグループCSR 報 告 書 17
2010, 2010. (3) LCA 日 本 フォーラム: 平 成 17 年 度 情 報 通 信 技 術 (ICT)の 環 境 効 率 評 価 ガイドライン, 2006. (4) 飯 橋 武 井 北 林 : 環 境 アセスメント 共 通 基 盤 の 開 発, NTT 技 術 ジャーナル,Vol.24, No.11,pp.29-32,2012. (5) 飯 橋 津 田 中 村 : ICTサービスの 環 境 影 響 評 価 と 社 会 うるおい 指 標, NTT 技 術 ジャー ナル,Vol.21,No.8,pp.32-36,2009. (6) 長 尾 飯 橋 櫻 井 田 中 斉 藤 : ICTサービ スによる 環 境 負 荷 削 減 効 果 推 計 手 法, 第 9 回 日 本 LCA 学 会 研 究 発 表 会,pp.240-241,2014. (7) 飯 橋 武 井 櫻 井 長 尾 斉 藤 : ネットワー クサービスの 環 境 負 荷 削 減 効 果, 信 学 ソ 大, p.98,2014. ( 左 から) 長 尾 友 美 / 飯 橋 真 輔 / 武 井 雄 一 郎 NTT 環 境 エネルギー 研 究 所 環 境 推 進 プロジェクト TEL ₀₄₂₂-₅₉-₄₅₄₀ FAX ₀₄₂₂-₅₉-₅₆₈₁ E-mail nagao.tomomi lab.ntt.co.jp 18