道 徳 1 学 習 指 導 充 実 のポイント 道 徳 の 時 間 の 特 質 を 生 かした 指 導 の 工 夫 学 校 の 教 育 活 動 全 体 を 通 じて 行 う 道 徳 教 育 は, 道 徳 的 行 為 が 生 徒 自 身 の 内 面 から 自 発 的, 自 律 的 に 生 起 するように 道 徳 性 を 育 成 することが 目 標 となる その 要 としての 道 徳 の 時 間 では, 将 来 出 会 うであろう 様 々な 場 面, 状 況 においても, 道 徳 的 価 値 を 実 現 するための 適 切 な 行 為 を 主 体 的 に 選 択 し, 実 践 することができるような 内 面 的 資 質 としての 道 徳 的 実 践 力 の 育 成 を 目 標 としている この 点 を 十 分 理 解 し, 道 徳 の 時 間 の 特 質 を 生 か した 指 導 の 工 夫 が 重 要 となる (1) 道 徳 の 時 間 の 特 質 道 徳 の 時 間 以 外 における 道 徳 教 育 と 密 接 な 関 連 を 図 りながら, 計 画 的, 発 的 な 指 導 によって,そ れらを 補 充, 深 化, 統 合 し, 道 徳 的 価 値 の 自 覚 及 び 人 間 としての 生 き 方 についての 自 覚 を 深 め, 道 徳 的 実 践 力 を 育 成 する 1 計 画 的, 発 的 な 指 導 地 域 や 学 校 の 実 態, 生 徒 の 発 達 階 や 特 性 を 考 慮 し, 内 容 のすべてを 確 実 に 計 画 的 に 指 導 する ( 指 導 者 の 恣 意 による 安 易 な 計 画 の 変 更 は 行 わないよう 留 意 する ) 2 学 校 の 教 育 活 動 全 体 で 行 う 道 徳 教 育 を 補 充, 深 化, 統 合 する 学 校 の 諸 活 動 で 考 える 機 会 を 得 られにくい 道 徳 的 価 値 について 補 充 する 道 徳 的 価 値 の 意 味 や 自 己 との 関 わりについて, 一 層 考 えを 深 化 させる 道 徳 的 価 値 相 互 の 関 連 や, 自 己 との 関 わりの 全 体 的 なつながりなどについて 統 合 し, 新 たな 感 じ 方 や 考 えを 生 み 出 す 3 道 徳 的 価 値 の 自 覚 及 び, 人 間 としての 生 き 方 についての 自 覚 を 深 める ア 道 徳 的 価 値 について 理 解 する 価 値 の 自 覚 を 深 めるポイント 価 値 理 解 : 道 徳 的 価 値 が 大 切 であること 道 徳 的 価 値 に 関 わる 多 様 な 人 間 理 解 : 大 切 ではあるが 実 現 は 難 しいことがあること 感 じ 方, 考 え 方 を 知 る 他 者 理 解 : 実 現 に 向 けては 多 様 な 感 じ 方, 考 え 方 があること イ 自 分 との 関 わりで 道 徳 的 価 値 を 捉 える 道 徳 的 価 値 について 自 分 との ウ 道 徳 的 価 値 に 関 わる 課 題 をもち, 人 間 としての 生 き 方 につい 関 わりで 考 える ての 自 覚 を 深 める 4 道 徳 的 実 践 力 を 育 成 する 道 徳 的 価 値 を 視 点 に 自 分 自 身 道 徳 的 実 践 力 とは, 将 来 出 会 うであろう 様 々な 場 面, 状 況 にお を 振 り 返 る 生 き 方 を 考 える いても, 道 徳 的 価 値 を 実 現 するための 適 切 な 行 為 を 主 体 的 に 選 択 よりよくなろうとする 自 分 し, 実 践 することができるような 内 面 的 資 質 であり, 主 として 道 伸 ばしたい 自 己 徳 的 心 情, 判 断 力, 実 践 意 欲 と 態 度 を 包 括 する 現 在 の 生 活, 将 来 の 生 き 方 の 道 徳 の 時 間 では,その 特 質 を 十 分 理 解 し, 指 導 者 による 価 値 の 一 課 題 など 方 的 な 押 し 付 けや, 単 なる 生 活 経 験 の 話 合 いなどに 終 始 しないよ う 留 意 する 適 切 な 行 為 を 主 体 的 に 実 践 できるようになるために は, 価 値 について 自 分 との 関 わりで 考 え, 心 情, 判 断 力, 実 践 意 欲 を 育 むことが 重 要 となる - 中 道 1- 道 徳 的 実 践 力 の 育 成 道 徳 的 実 践 力 道 徳 的 態 度 道 徳 的 実 践 意 欲 道 徳 的 心 情 道 徳 的 判 断 力 道 徳 性 道 徳 的 習 慣 道 徳 的 行 為 道 徳 的 態 度 道 徳 的 実 践 意 欲 道 徳 的 心 情 道 徳 的 判 断 力
2 学 習 評 価, 工 夫 改 善 のポイント (1) 評 価 を 行 う 際 の 留 意 点 道 徳 教 育 における 評 価 が, 教 師 が 生 徒 の 人 間 的 な 成 長 を 見 守 り, 生 徒 自 身 が 自 己 のよりよい 生 き 方 を 求 めていく 努 力 を 評 価 し,それを 勇 気 づける 働 きをもつものであることを 念 頭 におき, 教 師 と 生 徒 の 温 かな 人 格 的 な 触 れ 合 いや,カウンセリングマインドに 基 づき, 共 感 的 に 理 解 するよ うにする 生 徒 理 解 の 観 点 を 固 定 的 に 考 えず, 多 面 的 で 幅 広 い 視 点 に 立 った 評 価 を 心 掛 けるとともに, 児 童 の 一 時 期 の 様 子 だけで 即 断 することなく, 長 期 的 な 評 価 を 行 うようにする 生 徒 自 身 のよりよく 生 きようとする 意 欲 や 努 力 に 目 を 向 け, 道 徳 性 に 関 する 自 己 理 解 や 自 己 評 価 を 生 かすよう 努 める (2) 道 徳 の 時 間 における 評 価 について 1 道 徳 の 時 間 の 評 価 の 在 り 方 道 徳 の 時 間 は, 内 面 的 資 質 である 道 徳 的 実 践 力 の 育 成 をめざし, 道 徳 的 価 値 の 自 覚 及 び 人 間 と しての 生 き 方 についての 自 覚 を 深 めるための 学 習 を 行 う 時 間 である したがって, 道 徳 の 時 間 の 評 価 は, 生 徒 が 価 値 の 自 覚 や 人 間 としての 生 き 方 についての 自 覚 を 深 めることができたか そ のための 指 導 方 法 は 適 切 であったか という 点 について 行 い, 指 導 方 法 の 改 善 に 努 めることが 大 切 である 2 道 徳 の 時 間 の 評 価 の 具 体 化 道 徳 の 時 間 の 評 価 の 観 点 は, 道 徳 教 育 の 評 価 の 観 点 と 同 様 に 道 徳 性 の 諸 様 相 内 容 項 目 等 を 窓 口 に,ねらいと 関 連 させて 設 定 することが 一 般 的 である その 観 点 をもとに, 生 徒 が 価 値 の 自 覚 や 人 間 としての 生 き 方 についての 自 覚 を 深 めることができたかどうかについて 評 価 を 行 う 評 価 の 方 法 としては, 授 業 中 の 発 言 や 学 習 シートなどの 記 述 内 容, 質 問 紙 などを 活 用 するこ となどが 考 えられる しかし,1 時 間 で 評 価 することは, 子 どもに 行 為 の 変 化 を 求 める 指 導 に 陥 りがちであるため, 押 し 付 けにならないよう 配 慮 する 必 要 がある 3 学 習 指 導 と 評 価 の 事 例 道 徳 の 時 間 では, 価 値 の 自 覚 を 深 めることをねらいとした 学 習 が されるが, 児 童 が 十 分 考 えを 深 められないまま 授 業 が 進 行 してしまうことがある そこで,ねらいとする 価 値 に 迫 るために, 各 発 問 に 対 して 期 待 する 児 童 の 反 応 が 見 られなかった 場 合 の 手 だてを 明 記 した 評 価 事 例 を 示 す 事 例 1 事 例 2 事 例 3 主 題 名 人 に 迷 惑 をかけないために 第 1 学 年 公 徳 心 社 会 連 帯 資 料 名 キャッチボール 主 題 名 自 分 らしさ 第 2 学 年 向 上 心 個 性 の 伸 長 資 料 名 自 分 の 個 性 に 自 身 をもつ 主 題 名 思 いやりの 心 第 3 学 年 人 間 愛 思 いやり 資 料 名 月 明 かりで 見 送 った 夜 汽 車 - 中 道 2-
4 学 習 指 導 と 評 価 の 実 践 事 例 事 例 1 自 分 の 考 えを 基 に 表 現 する 機 会 の 充 実 を 図 った 事 例 主 題 名 人 に 迷 惑 をかけないために 4 (2) 公 徳 心 資 料 名 キャッチボール キャッチボール ( 出 典 : 学 研 ) 中 学 校 第 1 学 年 公 徳 心, 社 会 連 帯 1 本 時 の 目 標 自 己 中 心 的 な 言 動 が 周 りにどのような 影 響 を 与 えるか 考 えることを 通 して, 周 囲 の 人 へ 配 慮 し て 生 活 しようとする 意 欲 を 育 む 2 本 時 の 主 題 設 定 の 理 由 (1)ねらいとする 価 値 について 人 は, 自 己 中 心 的 で 自 分 勝 手 な 言 動 はよくないということを 感 じているが, 時 として, 他 への 配 慮 を 欠 いた 行 動 をとってしまうことがある しかし, 社 会 生 活 においては, 一 人 一 人 が 共 に 手 を 携 え, 協 力 し 安 心 して 生 活 できる 社 会 をつくっていこうとする 自 覚 は 欠 かすことができない よりよい 社 会 を 実 現 するためには, 他 への 配 慮 を 心 がけた 言 動 が 大 切 であると 考 える そこで, 自 分 自 身 の 言 動 が 相 手 にどのような 影 響 を 与 えるかを 考 えることを 通 して, 周 囲 の 人 へ 配 慮 して 生 活 しようとする 意 欲 を 育 みたいと 考 え, 本 主 題 を 設 定 した (2)ねらいにかかわる 生 徒 の 実 態 生 徒 は, 授 業 中 や 当 番 活 動 等 の 中 でも 集 団 生 活 を 円 滑 に 進 めていこうと, 周 りの 人 への 配 慮 を しながら 行 動 している しかし,いらだちや 不 安 を 感 じたり, 緊 張 したりする 場 面 などでは,つ い 自 己 中 心 的 な 言 動 をとってしまうことがある そこで, 自 分 自 身 がとる 行 動 が 周 りにどのように 影 響 するのか 気 付 かせ, 周 りの 人 への 配 慮 を した 行 動 を 選 択 できるようにしたい (3) 資 料 について 野 球 部 に 所 属 している 明 夫 は, 風 邪 を 引 いている 先 輩 の 代 わりに 登 板 する 可 能 性 があることを 監 督 から 告 げられ, 肩 を 慣 らすために 投 球 練 習 をしようと 考 えた しかし, 練 習 場 所 がなかった ので, 歩 行 者 の 通 路 で 行 うことにした キャッチボールをしていると, 通 行 しようとする 子 ども を 連 れたおばさんに 注 意 を 受 けるが, 反 発 し, 練 習 を 続 ける 明 夫 は 試 合 に 出 ることになったが,2 打 席 目 にピッチャーの 投 げたボールが 顔 面 に 直 撃 してし まう 明 夫 は 父 の 車 で 病 院 へ 行 くことになるが, 通 路 を 遮 るように 駐 車 された 車 によって, 動 く ことができない その 様 子 から, 主 人 公 の 心 が 揺 れ 動 くという 内 容 である 主 人 公 の 試 合 前 後 での 心 情 の 変 化 と, 生 徒 自 身 のこれまでの 行 動 を 照 らし 合 わせて 考 えること を 通 して, 自 分 の 言 動 による 他 への 影 響 を 考 え, 周 りに 配 慮 をした 行 動 を 心 がけることが 大 切 で あるということに 気 付 かせたい (4) 新 学 習 指 導 要 領 の 趣 旨 を 生 かした 道 徳 の 時 間 のねらい 達 成 のために 活 用 した 手 だて 表 現 し 考 えを 深 める 指 導 の 工 夫 : 自 分 の 考 えを 基 に 表 現 する 機 会 の 充 実 本 時 のねらいに 迫 るためには,まず 誰 にも 登 場 人 物 のような 弱 い 心 があることを 確 認 する 必 要 がある そこで, 少 人 数 のグループで,これまでの 経 験 について 話 すことによって, 主 人 公 の 心 情 に 共 感 できるようにしたい - 中 道 3-
3 指 導 と 評 価 の 計 画 ( 本 時 の ) 過 程 学 習 活 動 と 主 な 発 問 学 習 の 様 子 を 見 取 る 視 点 指 導 上 の 工 夫 留 意 点 失 敗 したことを 想 起 して, 互 導 いに 話 をしている 入 前 1 班 の 中 で 自 分 の 体 験 を 話 す 悪 い と 思 いながらもつい ついやってしまったことはあ るか 2 資 料 キャッチボール を 読 み, 主 人 公 の 心 情 を 考 え, 話 し 合 う 明 夫 たちが 通 路 で 練 習 したの はどうしてだろう おばさんに 注 意 されたとき, どんな 気 持 ちで 怒 鳴 り 返 した のだろう ワゴン 車 の 運 転 手 の 人 が 怒 鳴 り 返 した 言 葉 を 聞 いて, 明 夫 はどんなことを 思 ったのだろ う 自 分 の 置 かれている 状 況 か ら, 自 分 自 身 のことを 優 先 し てしまった 主 人 公 の 心 情 に 共 感 している 悪 いことと 知 っているのにどうして 練 習 したのだろう と 発 問 する 周 りの 人 に 配 慮 することの 大 切 さを 分 かっていながら も, 自 己 中 心 的 な 態 度 をとら ざるを 得 ないという 葛 藤 し た 気 持 ちに 気 付 いている 文 章 の 中 にムッとしたとあるが, 主 人 公 は 何 にいらだっ ていたのだろう と 補 助 的 に 発 問 する 運 転 手 の 発 言 と 主 人 公 のと った 言 動 とを 照 らし 合 わせ て 考 え, 自 己 中 心 的 な 態 度 を 押 し 通 すことは 避 けるべき であることに 気 付 いている ワゴン 車 の 運 転 手 はどんな 気 持 ちで 怒 鳴 り 返 したのだろ う と 補 足 する その 後, ハッとしたとあるが, 主 人 公 は 何 に 気 付 いたの だろうか と 発 問 する 指 導 者 から 具 体 的 な 例 を 提 示 することで, 生 徒 が 考 えやすくなるようにする 周 りのことを 考 えずに,つ い 行 動 してしまうことが 誰 にもあることに 気 付 か せる 自 己 中 心 的 な 行 動 をとっ た 背 景 を 確 認 しながら 主 人 公 が 葛 藤 している 様 子 を 感 じさせる 運 転 手 の 発 言 と 主 人 公 の とった 言 動 とを 照 らし 合 わせて 考 え, 自 己 中 心 的 な 言 動 によって 周 りの 人 が 受 ける 影 響 について 考 え させる 後 3 自 分 自 身 の 行 動 を 振 り 返 り, 日 常 生 活 ではどのような 心 がけが 必 要 かを 考 える 周 りのことを 考 えて 行 動 す るためには,どのようなこと を 大 切 にしたらいいのだろ う 普 の 生 活 の 中 で, 行 動 する 時 に 周 りの 人 に 配 慮 するこ とを 心 がけることが 大 切 で あることに 気 付 いている どのように 考 えると 周 囲 の 人 に 配 慮 した 行 動 ができるか 具 体 的 な 考 えがもてるようにする もし,あなたが 明 夫 だったらどうしますか 今 回 の 出 来 事 について 正 しい 行 動 を 考 え させる 続 けて, では,そのような 行 動 をとるためには 普 からどのようにしていれば よいのか 考 えさせる - 中 道 4-
終 末 周 囲 の 人 への 配 慮 ができずに 嫌 な 思 いをした 教 師 の 経 験 談 を 聞 き, 価 値 の 実 現 に 向 けた 意 欲 をもつ 周 りの 人 の 幸 せを 考 えた 行 動 をとることが, 社 会 人 とし ての 大 切 さであると 気 付 い ている 周 りの 人 への 配 慮 のない 行 為 は,いつまでも 嫌 な 思 いが 残 ることが 伝 わるよ うにする 4 学 習 指 導 と 評 価 の 様 子 (1) 本 時 の 評 価 ( 期 待 する 姿 ) 周 囲 の 人 に 配 慮 した 行 動 を 行 うために 必 要 であるということについて, 自 分 なりの 考 えをもっ ている 評 価 のための 資 料 として, 以 下 のような 学 習 シートを 活 用 した (2) 継 続 する 事 後 指 導 心 のノート P90~P93 の 記 入 の 折 に 触 れて 行 う 学 級, 学 校 生 活 の 中 で 周 囲 の 人 へ 配 慮 した 行 動 だと 感 じられた 場 面 を 取 り 上 げ, 認 める また, 感 じてほしい 場 面 があれば, 全 体 に 状 況 を 伝 え,どうするべきか 考 えさせる - 中 道 5-
事 例 2 表 現 する 機 会 を 充 実 させ, 自 己 理 解 を 深 めることにつながった 事 例 主 題 名 自 分 らしさ 1-( -(5) 向 上 心, 個 性 の 伸 長 資 料 名 自 分 の 個 性 に 自 信 をもつ ( 出 典 : 光 村 図 書 ) 中 学 校 第 2 学 年 1 本 時 の 目 標 自 分 自 身 を 見 つめ, 他 人 に 合 わせるのではなく, 自 分 らしさに 気 付 き,それを 伸 ばそうとする 意 欲 を 育 てる 2 本 時 の 主 題 設 定 の 理 由 (1)ねらいとする 価 値 人 は,その 時 代 の 流 行 に 左 右 されやすく, 同 じような 服 装 や 髪 型 をし, 同 じようなものを 持 つ ことで, 安 心 感 を 得 る 傾 向 がある その 中 で, 人 と 違 うものを 持 っていると, 時 として 時 代 遅 れ や 特 異 な 存 在 として 視 線 を 向 けられることがある そして, 自 分 が 人 からどう 見 られて いるかということを 優 先 するあまり, 自 分 らしさを 忘 れ, 自 分 に 自 信 がもてない 場 合 が 多 い 人 は, 一 人 一 人 がそれぞれ 違 うことを 認 識 し, 自 分 の 好 きなこと,やりたいことが 他 人 と 違 っ ていても, 自 分 に 自 信 をもちながら, 自 分 らしさを 大 切 にしようとする 意 欲 を 育 てていきたいと 考 え, 本 主 題 を 設 定 した (2)ねらいにかかわる 生 徒 の 実 態 中 学 生 の 時 期 は, 自 己 理 解 が 深 まり, 自 分 なりの 在 り 方 や 生 き 方 についての 関 心 が 高 まってく る また, 周 りからどう 見 られるかということも 気 になるようになり, 自 分 と 他 人 を 比 較 し, 劣 等 感 に 悩 むこともある そして, 他 人 と 同 じように 扱 われることを 嫌 ったり, 反 対 に 他 人 と 異 な ることへの 不 安 から, 他 人 に 合 わせたり, 個 性 を 伸 ばすことに 消 極 的 になったりすることもある そこで, 自 分 らしさについて 考 え, 個 性 を 大 切 にしようとする 意 欲 を 育 てていきたい (3) 資 料 について 筆 者 は 小 学 生 の 頃, 絵 を 描 くことが 好 きで, 絵 描 きになりたかった そのとき 出 会 った 絵 の 先 生 は, 筆 者 にいつも 好 きなように 絵 を 描 かせてくれた また,その 先 生 からは 絵 のことよりも 音 楽 について 教 わることが 多 かった 中 学 1 年 生 から1 年 半, 筆 者 はメキシコで 暮 らした 帰 国 後, そのときメキシコで 流 行 っていたヒッピースタイルで 友 だちに 会 いに 行 くが, 友 だちには 受 け 入 れてもらえなかった しかし, 筆 者 は 悲 観 的 になることはなかった 高 校 時 代 に, 母 の 一 言 で 雅 楽 の 道 に 入 ったことなどの 経 験 から, 人 と 違 う 自 分 の 個 性 に 自 信 をもつことが 大 切 だと 筆 者 は 考 えたからである 筆 者 の 生 き 方 を 通 し, 自 分 自 身 を 見 つめ, 自 分 はどうありたいかのか, 自 分 ら しさに 気 付 かせたい (4) 新 学 習 指 導 要 領 の 趣 旨 を 生 かし 道 徳 の 時 間 のねらい 達 成 のために 活 用 した 手 だて 表 現 し 考 えを 深 める 指 導 の 工 夫 : 自 分 の 考 えを 基 に 表 現 する 機 会 の 充 実 個 性 について 自 分 のこととして 考 えることは 難 しいが, 友 達 のことなら 考 えやすく, 多 くの 意 見 が 出 しやすいと 考 えられる そこで, 筆 者 の 個 性 に 対 する 考 え 方 や, 筆 者 の 生 き 方 を 通 して, 個 性 について 少 人 数 グループで 話 合 うことにより, 自 分 自 身 の 個 性 について 考 え,ねらいに 迫 り たい - 中 道 6-
3 指 導 と 評 価 の 計 画 ( 本 時 の ) 過 程 学 習 活 動 と 主 な 発 問 学 習 の 様 子 を 見 取 る 視 点 指 導 上 の 工 夫 留 意 点 導 入 前 1 自 分 の 経 験 を 振 り 返 る 友 だちから 自 分 の 好 みを 否 定 され,その 後, 友 だちに 合 わせ るようになった 経 験 はないか 2 資 料 自 分 の 個 性 に 自 信 をも つ を 読 み, 筆 者 の 生 き 方 につ いて 知 る 中 学 の 友 人 が 口 もきかずに 去 ってしまったが, 落 ち 込 まなか ったのはなぜか 今 までの 自 分 を 振 り 返 って いる 自 分 と 他 人 の 違 いを 認 めて, 自 分 の 個 性 に 自 信 をもって いたからだという 筆 者 の 気 持 ちに 気 付 いている 筆 者 が 中 学 生 の 時, 筆 者 のヒッピースタイルは 友 達 に 受 け 入 れられなかったが, 筆 者 はそのスタイルを 変 えることなく, みんなと 同 じになろうとしなかったのはなぜか 考 えさせる 経 験 を 想 起 しやすいよ うに, 具 体 的 な 事 例 を あげ, 考 えさせる 自 分 たちは 周 りの 意 見 に 左 右 されがちだが, 決 心 がゆるがなかった 筆 者 の 気 持 ちを 考 えさ せる 筆 者 が 雅 楽 の 道 に 進 もうと 決 心 した 時, 周 りの 反 応 は 否 定 的 であったが,なぜ 進 もうと 決 め たのか 筆 者 の 選 択 に 対 して, 否 定 的 な 反 応 が 多 かったが,それに 惑 わされることなく, 自 分 の 意 志 を 貫 いた 筆 者 の 気 持 ち に 気 付 いている 周 り の 反 応 だ け で な く,そのときの 筆 者 の 気 持 ちも 考 えさせる ( 必 要 に 応 じて, 雅 楽 を 聞 かせる ) 雅 楽 の 道 に 進 むにあたって,どんなことを 考 えたのだろうと 問 う 筆 者 はどのようなことが 個 性 的 と 考 えているだろうか 他 人 の 意 見 に 流 されること なく, 自 分 らしさを 大 切 にし ようという 筆 者 の 考 え 方 を 理 解 している 自 己 中 心 的 または 非 常 識 な 存 在 とは,どのような 存 在 なのか, 考 えさせる 人 間 として 基 本 的 なこ とができないと, 個 性 的 とは 言 わないことも 確 認 する 3 自 分 自 身 について 考 える 自 分 自 身 は,どのような 個 性 をもっているか 自 分 自 身 と 向 き 合 い, 個 性 や 自 分 らしさについて, 真 剣 に 考 えている グループになり 互 い の 個 性 について 考 え させる 個 性 とは 何 か, 考 えさえる 筆 者 は,どのような 個 性 をもっているか, 考 えさせる 筆 者 は, 個 性 のことを 他 にどのような 表 現 を 使 って 言 っているか 考 えさせ, 再 度, 問 いについて 考 えさせる - 中 道 7-
後 4 これから 伸 ばしたいと 思 う 個 性 について 考 える 自 分 の 個 性, 自 分 らしさを 伸 ばすためにどのようなこと ができるか 自 分 らしさを 伸 ばすために 何 ができるかを 真 剣 に 考 え ている 筆 者 は, 個 性 を 伸 ばすためにどのようなことをしたか 自 分 自 身 をじっくり みつめ,ワークシート に 記 入 させる 終 末 4 心 のノート P.34~36 を 読 み, 価 値 への 思 いをふくら ませる 価 値 の 自 覚 を 深 めている 価 値 への 思 いをふくら ませることができるよ うに, 読 んで 終 わらせ る 4 学 習 指 導 と 評 価 の 様 子 (1) 本 時 の 評 価 ( 期 待 する 姿 ) 筆 者 の 生 き 方 や 個 性 に 対 する 考 えを 通 して, 自 己 を 見 つめ, 自 分 らしさを 見 つけることがで きたか 評 価 のための 資 料 として, 以 下 のような 学 習 シートを 活 用 した (2) 継 続 する 事 後 指 導 学 活 などで,1 日 を 振 り 返 り, 生 徒 のよかったところを 取 り 上 げ, 褒 める 生 徒 と 教 師 の 交 換 ノートを 通 し, 生 徒 のよい 点 を 褒 める - 中 道 8-
事 例 3 自 分 の 考 えを 基 に 表 現 する 機 会 の 充 実 を 図 った 事 例 主 題 名 思 いやりの 心 2-( -(2) 人 間 愛, 思 いやり 資 料 名 月 明 かりで 見 送 った 夜 汽 車 ( 出 典 : 中 学 生 の 道 徳 あかつき) 中 学 校 第 3 学 年 1 本 時 の 目 標 人 間 愛 に 基 づいた 人 とのかかわりの 大 切 さを 自 覚 し, 他 の 人 の 立 場 を 尊 重 し 行 動 しようとする 心 情 を 育 てる 2 本 時 の 主 題 設 定 の 理 由 (1)ねらいとする 価 値 他 の 人 とのかかわりの 中 で, 温 かい 人 間 愛 の 精 神 を 深 め,これを 身 に 付 けることは 人 間 として きわめて 大 切 なことである 思 いやりの 心 は, 自 分 が 他 に 能 動 的 に 接 するときに 必 要 な 心 の 在 り 方 であり, 他 の 人 の 立 場 を 尊 重 しながら, 親 切 にし,いたわり, 励 ます 生 き 方 として 現 れる す なわち, 思 いやりの 心 の 根 底 には, 人 間 尊 重 の 精 神 に 基 づく 人 間 に 対 する 深 い 理 解 と 共 感 がなけ ればならない そこで, 単 に 思 いやりの 大 切 さを 考 えるだけではなく, 思 いやりとは 相 手 にとってどのような ことが 望 ましいのかをふまえて 行 動 することだと 気 付 くことで, 人 間 愛 に 満 ちた 心 情 を 育 てたい と 考 え, 本 主 題 を 設 定 した (2)ねらいにかかわる 生 徒 の 実 態 学 級 の 中 で, 困 っている 仲 間 に 声 をかけることのできる 生 徒 がいる 反 面,これまでの 人 間 関 係 から 周 囲 の 様 子 を 気 にして 自 分 の 気 持 ちを 抑 えてしまう 生 徒 も 少 なくない また, 何 気 ない 言 動 で 相 手 の 心 を 傷 つけるなど, 自 己 中 心 的 に 行 動 する 場 面 もしばしば 見 られる 円 満 な 人 間 関 係 を 築 くためにも, 他 の 人 とのかかわりを 見 つめ 直 し, 相 手 の 立 場 を 尊 重 しようとする 心 情 を 育 み たい (3) 資 料 について 文 化 祭 準 備 のため, 先 生 たちが 夜 遅 くまで 忙 しく 飾 り 付 けをしている 小 学 校 が 舞 台 である 準 備 の 途 中 で, 国 体 に 参 加 するため I 先 生 が 申 し 訳 なさそうに 出 かける I 先 生 の 乗 る 夜 汽 車 が 学 校 の 脇 にさしかかろうという 時 間, I 先 生 に 安 心 して 出 かけてもらうために 電 気 を 消 しました という 校 内 放 送 が 流 れ, 真 っ 暗 な 校 内 から 全 職 員 が 月 明 かりの 中 をゆく 夜 汽 車 を 見 送 る 思 いやる 人 と,それを 受 ける 人 と,その 双 方 向 の 温 かい 気 持 ちを 考 えることを 通 して 人 間 愛 に 満 ちた 心 情 を 育 てたい (4) 新 学 習 指 導 要 領 の 趣 旨 を 生 かし 道 徳 の 時 間 のねらい 達 成 のために 活 用 した 手 だて 表 現 し 考 えを 深 める 指 導 の 工 夫 : 自 分 の 考 えを 基 に 表 現 する 機 会 の 充 実 本 当 の 思 いやりとはどのようなものなのか, 少 人 数 グループでの 話 し 合 いを 深 めることにより, ねらいに 迫 ることが 期 待 できる - 中 道 9-
3 指 導 と 評 価 の 計 画 ( 本 時 の ) 過 程 学 習 活 動 と 主 な 発 問 学 習 の 様 子 を 見 取 る 視 点 指 導 上 の 工 夫 留 意 点 導 入 1 学 園 祭 の 準 備 で, 仲 間 に 手 伝 ってもらい 助 かったこ とやうれしかったことがあ りましたか 自 分 自 身 の 立 場 で 考 えて いる 経 験 を 想 起 させ, 本 時 のねら いとする 価 値 について 方 向 付 けを 行 う 2 資 料 月 明 かりで 見 送 っ た 夜 汽 車 P.96~97を 読 み, 登 場 人 物 の 心 情 を 話 し 合 う 途 中 で 出 かけなければなら なかったI 先 生 は,どんな 気 持 ちだったのだろうか 仲 間 のことを 思 い, 申 し 訳 ないと 感 じている 心 情 に 共 感 している I 先 生 が 出 かけなければならない 理 由 を 問 い, 考 えさ せる I 先 生 とその 他 の 先 生 が 普 から 互 いを 思 いやる 心 でつな がっていることにもふれる 前 駅 にいるI 先 生 の 気 持 ちを 考 えてから, 月 明 かりの の 夜 汽 車 P.98を 読 む Y 先 生 が 学 校 中 の 電 気 を 消 したのは,どのような 思 い からですか I 先 生 を 思 いやる 心 情 を 理 解 している Y 先 生 の 行 為 を 相 手 が 気 付 い ていないということにもふれ る 学 校 中 の 電 気 がついていたら,I 先 生 はどのような 気 持 ちになるか, 考 えさせる みんなは, 何 に 対 して オ ー という 声 をあげ 拍 手 をしたのだろう 相 手 に 気 付 かれぬように 行 われた 思 いやりを 通 し, 本 当 の 思 いやりとはどの ようなものなのか 考 えて いる 何 に 対 して 拍 手 をした のか,グループで 意 見 交 換 を 行 う Y 先 生 に 対 してだけの 拍 手 だったのだろうか などについて 考 えさせる 3 本 当 の 思 いやりとは 何 か を, 自 分 のこととして 考 え る 本 当 の 思 いやりとはどのよ うなものだろう 他 の 人 の 立 場 を 尊 重 しな がら 行 動 することの 大 切 さに 気 付 いている 互 いを 思 いやる 心 について, ワークシートに 文 章 化 させ る 後 どのように 考 え, 行 動 することが 本 当 の 思 いやりなの だろうかと, 具 体 的 に 考 えさせる - 中 道 10-
終 末 4 学 級 での 思 いやりにあふ れた 行 動 を, 身 近 なエピソ ードとして 紹 介 する 価 値 の 自 覚 を 深 めている 思 いやりの 気 持 ちの 美 しさ, 温 かさを 感 じさせる 4 学 習 指 導 と 評 価 の 様 子 (1) 本 時 の 評 価 ( 期 待 する 姿 ) 人 間 愛 に 基 づく 他 の 人 とのかかわりの 大 切 さを 自 覚 し, 他 の 人 の 立 場 を 尊 重 しながら 行 動 し ようとする 考 え 方 をもっている 評 価 のための 資 料 として, 以 下 のような 学 習 シートを 活 用 した (2) 継 続 する 事 後 指 導 学 級 集 団 における 望 ましい 人 間 関 係 を 整 えるなど, 思 いやりの 心 と 態 度 が 育 まれるような 環 境 を 整 備 する - 中 道 11-