「イスラーム国」の奴隷制に関する法的見解



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22 第 1 章 資 本 金 等 利 益 積 立 金 貴 見 のとおり 資 本 等 取 引 は 本 来 は 増 資 とか 減 資 と か さらには 旧 資 本 積 立 金 額 の 増 加 または 減 少 をいうこと になる ただ 利 益 の 配 当 はいわゆる 資 本 金 等 取 引 である か 損

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Transcription:

原 典 翻 訳 研 究 ファトワー 部 門 捕 虜 と 奴 隷 についての 質 問 と 回 答 ヒンマ 文 庫 ديوان البحوث و الافتاء مكتبة الهمة الدولة الا سلامية سو ال و جواب في السبي و الرقاب ヒジュラ 暦 1436 年 ムハッラム 月 / 西 暦 2014 年 10 月 発 行 ファト ワ ー イスラーム 国 の 奴 隷 制 に 関 する 法 的 見 解 訳 注 解 説 齋 藤 秋 生 子 ( 上 智 大 学 大 学 院 博 士 後 期 課 程 ) 問 1: 捕 虜 とは 何 ですか? 答 1: 捕 虜 とは ムスリムが 獲 得 した 戦 争 [の 家 ]の 人 々 1 の 女 たち( 非 ムスリムの 女 たち) 2 のことです 問 2: 捕 虜 の 法 的 根 拠 とは 何 ですか? 答 2: 捕 虜 の 法 的 根 拠 とは 異 教 徒 たることです すなわち 彼 女 たちを 捕 まえて イスラ ームの 家 に 運 び 込 んだのち イマームによる 彼 女 たちの 取 り 調 べと 選 別 によって 異 教 徒 が 我 々に 捕 虜 として 合 法 とされます 問 3: 不 信 仰 者 の 女 たちすべてを 捕 虜 にすることは 許 されますか? 答 3: 啓 典 の 民 と 偶 像 崇 拝 者 のような 生 まれながらの 不 信 仰 者 の 女 たちを 捕 虜 にすること について ウラマーたちの 間 で 意 見 の 相 違 はありません( 捕 虜 にすることができるとして 意 見 が 一 致 しています) しかし [もともとは]ムスリムである 棄 教 者 を 捕 虜 にすること については 意 見 が 分 かれています すなわち 多 数 派 [のウラマー]は 棄 教 者 の 捕 虜 を 合 法 とする 根 拠 は 不 足 していると 主 張 しており 一 部 のウラマーは 棄 教 者 の 捕 虜 を 合 法 と することに 賛 成 しています 我 々のところでは 多 数 派 の 意 見 が 受 け 入 れられています ア ッラーは 最 もよく 知 りたもうお 方 です 問 4: 捕 虜 の 女 との 性 交 渉 は 許 されますか? 答 4: 捕 虜 の 女 との 性 交 渉 は 許 されます 崇 高 なるアッラーは 信 仰 者 とは [ 中 略 ] 自 分 の 性 器 はこれを 抑 え 己 が 妻 や 右 手 の 所 有 にかかるもの( 女 奴 隷 )を 相 手 にするときに だけ 使 う( コーラン 信 仰 者 たち 章 第 5 節 ) とおっしゃいます 彼 ら( 信 仰 者 たち)の 右 手 が 所 有 しているもの とは 捕 虜 のことです 1

問 5: 所 有 後 すぐに 女 の 捕 虜 と 性 交 渉 することは 許 されますか? 答 5:もしその 女 が 処 女 ( 未 婚 )であれば 所 有 後 すぐに 性 交 渉 することが 許 されます し かし もし 既 婚 女 性 であれば[ 性 交 渉 の 前 に] 子 宮 を 空 にしなければなりません それは アブー ダーウード 3 がアブー サイイド フドリー 彼 にアッラーの 祝 福 あれ の 話 とし て 伝 えているハディースの 通 りです 預 言 者 ムハンマド 彼 にアッラーの 祝 福 と 平 安 あれ がアウタース 4 での 女 の 捕 虜 について もし[ 捕 虜 が] 妊 娠 している 場 合 は 出 産 するまで 性 交 渉 をしてはならな い 妊 娠 していない 場 合 月 経 がくるまで 性 交 渉 をしてはならない 5 とおっしゃい ました( アブー ダーウードのハディース ) 問 6: 女 の 捕 虜 を 売 却 することは 許 されますか? 答 6: 捕 虜 と 女 奴 隷 の 売 買 および 贈 与 は 許 されます なぜなら 彼 女 たちが 完 全 な 所 有 財 産 であれば 正 当 な 売 買 と 交 換 条 件 において 自 由 に 処 分 することが 可 能 だからです 問 7: 売 買 において 母 親 とその 子 を 引 き 離 すことは 許 されますか? 答 7: 売 買 と 贈 与 において 母 親 と 法 的 に 大 人 に 達 していない 子 6 との 間 を 引 き 離 すことは 許 されません 子 が 法 的 に 大 人 に 達 していれば 母 子 を 引 き 離 すことが 許 されます 問 8: 2 人 かそれ 以 上 の 者 が 女 の 捕 虜 を 共 同 で 購 入 した 場 合 その 所 有 者 全 員 が 彼 女 と 性 交 渉 することは 合 法 ですか? 答 8: 完 全 な 所 有 権 を 得 ていないとすれば 女 の 捕 虜 との 性 交 渉 は 許 されません 共 同 所 有 では 女 の 捕 虜 の 所 有 が 不 完 全 なので 捕 虜 を 共 同 所 有 した 他 のメンバーの 持 ち 分 を 買 い 取 るか あるいは 他 の 所 有 者 から 贈 与 されなければ 性 交 渉 は 許 されません 問 9: 女 の 捕 虜 が 所 有 者 の 子 を 妊 娠 した 場 合 [ 所 有 者 は] 彼 女 を 売 却 することが 許 されま すか? 答 9: 所 有 者 が 彼 女 を 売 却 することは 許 されません なぜなら 彼 女 は ウンム ワラド 7 になるからであり 所 有 者 が 死 亡 すれば 彼 女 は 自 由 になるからです 問 10:もし 所 有 権 を 持 った 女 の 捕 虜 を 残 したまま[ 所 有 者 の] 男 性 が 死 亡 したら 彼 女 た ちの 所 有 権 はどうなりますか? 答 10: 女 の 捕 虜 たちは 所 有 者 の 遺 産 の 一 部 として 分 配 されます( 売 ることができます) しかし 死 亡 した 所 有 者 の 父 親 または 息 子 が 彼 女 と 性 的 関 係 にあれば あるいは 複 数 の 相 続 人 が 共 同 所 有 していれば 性 交 渉 なしにその 女 捕 虜 たちは[ 売 られずに] 仕 事 に 従 事 し 続 けます 2

問 11: 夫 は 妻 の 女 奴 隷 8 と 性 交 渉 することは 許 されますか? 答 11: 女 奴 隷 は 夫 の 所 有 ではないので 夫 が 自 分 の 妻 の 女 奴 隷 と 性 交 渉 することは 許 され ません 問 12: 所 有 者 の 同 意 があれば 男 性 が 自 分 の 女 奴 隷 ではない 女 奴 隷 に 接 吻 することは 許 さ れますか? 答 12: 快 楽 のために 男 性 が 自 分 の 女 奴 隷 以 外 の 女 奴 隷 と 接 吻 することは 許 されません ま た 完 全 な 所 有 権 がなければ 快 楽 は 許 されません 問 13: 法 的 に 成 人 に 達 していない 女 奴 隷 と 性 交 渉 することは 許 されますか? 答 13:[ 体 が 成 熟 して] 性 交 渉 に 適 していれば 法 的 に 成 人 に 達 していない 女 奴 隷 と 性 交 渉 することは 許 されています しかし [ 体 が 成 熟 しておらず] 性 交 渉 に 適 していなければ 性 交 渉 なしの 快 楽 で 満 足 しなければなりません 問 14: 礼 拝 における 女 奴 隷 の 欠 陥 とは 何 ですか? 答 14: 礼 拝 における 女 奴 隷 の 欠 陥 は 彼 女 の 欠 陥 として 外 見 に 表 れています すなわち 頭 首 両 手 両 足 がむきだしであることです 問 15: 女 奴 隷 がヒジャーブなしで 他 人 の 男 性 の 前 に 出 ることは 許 されますか? 答 15: 誘 惑 のおそれがないならば 女 奴 隷 が 頭 首 両 手 両 足 を 覆 わずに 他 人 の 男 性 の 前 に 出 ることは 許 されます しかし 誘 惑 のおそれがある 場 合 は それは 禁 じられています 問 16: 姉 妹 を 一 緒 に 右 手 の 所 有 9 にすることは 許 されますか? 答 16: 姉 妹 および 女 奴 隷 とその 父 方 のおば 女 奴 隷 とその 母 方 のおばを 一 緒 に 右 手 の 所 有 にすることは 許 されます しかし 両 方 と 性 交 渉 することは 許 されません 2 人 のうちの 一 方 の 女 奴 隷 と 性 交 渉 をした 場 合 は もう 一 方 とは 性 交 渉 することが 許 されません この 禁 止 は 一 般 的 な 禁 止 事 項 です 問 17: 性 交 中 絶 とは 何 ですか? 答 17: 性 交 中 絶 とは 女 性 器 の 中 に 精 液 を 放 出 しないことです 問 18: 男 性 は 自 分 の 女 奴 隷 を 性 交 中 絶 することが 許 されますか? 答 18: 女 奴 隷 の 意 志 の 有 無 にかかわらず 性 交 渉 中 に 男 性 は 女 奴 隷 と 性 交 中 絶 することが 許 されます 問 19: 女 奴 隷 を 殴 ることは 許 されますか? 3

答 19: 女 奴 隷 を 躾 のために 殴 ることは 許 されます しかし 顔 を 殴 ることが 禁 止 されている ように 体 に 怪 我 を 負 わせたり 自 分 の 怒 りを 発 散 させたり 懲 らしめるために 殴 ること は 禁 止 されています 10 問 20: 主 人 のもとから 逃 亡 した 女 奴 隷 に 対 する 処 罰 規 定 はどのようなものですか? 答 20: 男 奴 隷 あるいは 女 奴 隷 の 逃 亡 は 大 罪 です ジャリールがシャウビーに 伝 え シャウビーがマンスール ブン アブドゥッラフ マーンに 伝 え マンスールが[ハディース 学 者 の]ムスリム イブン ハッジャー ジュ 11 に 伝 えたところによれば 主 人 のもとから 逃 亡 した 奴 隷 は 誰 でも 主 人 のも とに 戻 るまで 不 信 仰 者 である また マンスールによれば 神 かけて このように 預 言 者 ムハンマド 彼 にアッラ ーの 祝 福 と 平 安 あれ がおっしゃったと 伝 えられている しかし 私 は ここバスラ においてこのハディースが 私 を 通 じて 伝 えられているということを 好 まない( ムス リム イブン ハッジャージュのハディース ) 問 21: 主 人 から 逃 亡 した 女 奴 隷 への 現 世 での 処 罰 は 何 ですか? 答 21:アッラーの 法 では 女 奴 隷 への 処 罰 規 定 はありません しかし 逃 亡 を 思 い 止 まらせる ため そのような 女 奴 隷 は 厳 しく 非 難 されることになっています 問 22:ムスリマもしくは 啓 典 の 民 である 女 奴 隷 との 結 婚 は 許 されますか? 答 22:ムスリマもしくは 啓 典 の 民 である 女 奴 隷 と 自 由 人 男 性 との 結 婚 は 許 されません た だし 自 分 が 不 貞 をおかす 心 配 をしている 自 由 人 男 性 の 場 合 には[ 女 奴 隷 との 結 婚 は] 許 されます 12 不 貞 とは 姦 淫 のことです 崇 高 なるアッラーはおっしゃいました 資 産 が 足 りなくて 信 仰 深 い 身 分 のよい 女 を 娶 れない 者 は 自 分 の 右 手 の 所 有 にか かる 信 仰 深 い 端 女 を[ 妻 にする]がよい( コーラン 婦 人 章 第 25 節 ) アッラーのお 言 葉 は 次 のように 続 きます これは 特 に 放 蕩 を 心 配 する 人 々のためにもうけた 規 定 だが どのような 場 合 にもで きれば 欲 情 の 度 を 過 さぬことこそ 望 ましい アッラーはよく 赦 し 給 う お 情 深 い 方 におわします( コーラン 婦 人 章 第 25 節 ) 問 23:もし 女 奴 隷 が 結 婚 したら 彼 女 には 所 有 者 に 対 してベッドをともにする 義 務 はあり ますか? 4

答 23:イブン クダーマ マクディスィー13 はこう 言 いました 右 手 に 所 有 する 者 について 所 有 者 には[ 結 婚 の] 権 利 がない しかし もし 女 奴 隷 が 結 婚 を 望 むならば 徳 をもって 扱 わなければならない たとえば 所 有 者 は 彼 女 を 妾 にするか 結 婚 させるか あるいは 売 却 するかしなければならない( マグニー のハディース ) 問 24: 自 分 以 外 の 男 性 が 所 有 する 女 奴 隷 と 結 婚 したら 彼 女 との 性 交 渉 を 許 されるのは 誰 ですか? 答 24: 所 有 者 以 外 の 者 と 結 婚 した 女 奴 隷 と 所 有 者 との 間 の 性 交 渉 は 許 されていません し かし 所 有 者 には 彼 女 を 働 かせる 権 利 があり 夫 には 彼 女 と 快 楽 をともにする 権 利 がありま す 問 25: 女 奴 隷 に 対 して ハッド 刑 14 は 適 用 されますか? 答 25:もし 女 奴 隷 が ハッド 刑 の 対 象 となる 罪 を 犯 せば ハッド 刑 が 科 せられます しかし ハッド 刑 は 自 由 人 の 半 分 です 崇 高 なるアッラーはおっしゃいました だが 正 式 に 妻 となった 後 で 女 が 不 貞 をはたらいた 時 は その 罰 は 自 由 身 分 の 婦 人 の 場 合 の 半 分 これは 特 に 放 蕩 を 心 配 する 人 々のためにもうけた 規 定 だが どのよ うな 場 合 でもできれば 欲 情 の 度 を 過 さぬことこそ 望 ましい アッラーはよく 赦 し 給 う お 情 深 い 方 におわします( コーラン 婦 人 章 第 25 節 ) 問 26: 女 奴 隷 が 所 有 者 から 自 分 自 身 を 買 い 戻 すことは 許 されますか? 答 26:はい 許 されます この 行 為 は ムカータバ 15 と 呼 ばれます 問 27: 女 奴 隷 の 解 放 への 報 酬 は 何 ですか? 答 27: 崇 高 なるアッラーは 奴 隷 を 解 いてやるの 謂 い( 奴 隷 を 開 放 することが 天 国 への 道 である)( コーラン 邑 章 第 13 節 ) また 預 言 者 ムハンマド 彼 にアッラーの 祝 福 と 平 安 あれ は 信 仰 深 い 女 奴 隷 を 解 放 した 者 には アッラーはすべての 仲 間 たちとともに 地 獄 から 彼 を 解 放 される( ムスリム イブン ハッジャージュのハディース ) とおっしゃ います ナワウィー16 は このハディースは 奴 隷 を 解 放 することの 徳 をあらわしている 奴 隷 を 解 放 した 者 は アッラーのお 赦 しによって 地 獄 行 きから 免 れ 天 国 に 行 くことがで きる( ミンハージュ 17 ) と 説 明 します 問 28: 過 失 殺 人 罪 の 償 いは 何 ですか? 答 28:その 償 いは 信 仰 心 のある 奴 隷 1 人 の 解 放 です その 余 裕 がない 者 は 2 か 月 間 断 食 5

しなさい 崇 高 なるアッラーはおっしゃいました 信 徒 が 信 徒 を 殺 すことは 絶 対 に 許 されぬ 誤 ってした 場 合 は 別 として もし 誰 か 信 徒 を 誤 って 殺 した 場 合 には [その 罪 ほろぼしに] 信 仰 深 い 奴 隷 を 一 人 解 放 してやる こと 無 論 血 の 代 償 は 相 手 方 の 家 族 に 支 払 うこと 但 し 相 手 方 がそれを 自 由 意 思 で 喜 捨 するならそれでもよい また[ 被 害 者 が] 汝 らの 敵 方 の 部 族 の 者 で しかも 信 者 である 場 合 は 信 仰 深 い 奴 隷 を 一 人 解 放 すること また 汝 らとの 間 に 協 定 関 係 のある 部 族 の 者 である 場 合 は 血 の 代 価 を 相 手 の 家 族 に 支 払 った 上 信 仰 深 い 奴 隷 を 一 人 解 放 すること もしそれだけの 資 力 がないなら 二 ヵ 月 間 連 続 断 食 する こ れはアッラーの 定 め 給 うた 贖 罪 じゃ まことにアッラーは 全 てを 知 り 一 切 に 通 じ 給 う( コーラン 婦 人 章 第 94 節 ) 問 29: 偽 証 罪 の 償 いは 何 ですか? 答 29:その 償 いは 多 数 派 意 見 (ジュムフール) 18 にあるように 貧 しい 人 たち 10 人 に 食 事 または 衣 服 を 与 えること または 信 仰 心 のある 奴 隷 1 人 の 解 放 です どれを 選 ぶかはそ の 人 の 選 択 によります その 余 裕 がない 者 は 3 日 間 断 食 しなさい 崇 高 なるアッラーはお っしゃいました 誓 約 する 際 に 少 し 軽 はずみな 言 葉 使 いをしたくらいでアッラーは 別 に 汝 らをお 咎 め になりはせぬ だが 正 式 に 誓 約 しておきながら[それを 破 れば] 咎 め 給 う そのよ うな 場 合 罪 の 贖 いとしては 汝 らが 普 段 家 族 に 食 わせている 食 物 の 中 くらいのも のを 貧 者 十 人 に 供 すること あるいは 衣 類 を 与 えること さもなければ 奴 隷 を 一 人 解 放 してやること これだけの 資 力 がない 場 合 は 三 日 間 の 断 食 でもよい これが 正 式 に 立 てた 誓 約 [を 破 った 場 合 ]の 贖 いである だが 勿 論 誓 約 は 守 るにしくは ない こうしてアッラーがいろいろと 神 兆 を 説 き 明 し 給 うのも みな 汝 らに 感 謝 の 心 を 起 させようがため( コーラン 食 卓 章 第 89 節 ) 問 30: ズィハール 離 婚 19 に 対 する 償 いとは 何 ですか? 答 30: ズィハール 離 婚 に 対 する 償 いは 多 数 派 意 見 の 原 則 にあるように 信 仰 心 のある 奴 隷 を 1 人 解 放 することです その 余 裕 のない 者 は タルティーブのハディース 20 のように 連 続 する 2 か 月 間 断 食 をし それもできなければ 貧 しい 人 たち 60 人 に 食 事 を 与 えます 崇 高 なるアッラーはおっしゃいました 自 分 の 妻 を 背 中 云 々 の 文 句 で 離 縁 しはしたが その 前 言 をひるがえしたくなっ た 場 合 には 両 人 互 いの 体 に 手 を 出 す 前 に 奴 隷 を 一 人 解 放 すること[ 宗 教 的 な 償 い の 行 為 として] これだけはぜひ 実 行 するように よいか アッラーはお 前 たちのす 6

ることを 何 から 何 まで 御 存 知 だぞ だがもしそれだけの 資 力 がない 場 合 には 両 人 互 いの 体 に 手 を 出 す 前 に 二 ヵ 月 続 けて 断 食 すればよい それもできぬとあらば 貧 者 六 十 人 に 食 を 与 えよ これはお 前 たちアッラーと 使 徒 にたいする 信 仰 を 守 る 所 以 これはアッラーの 戒 律 であるぞ 信 仰 に 背 く 者 は 苦 しい 罰 を 蒙 ろう( コーラン 言 いがかりつける 女 章 第 3-4 節 ) 問 31:ラマダーン 月 の 日 中 に 妻 または 女 奴 隷 と 性 交 渉 することの 罪 に 対 する 償 いは 何 です か? 答 31:その 償 いは 奴 隷 を 1 人 解 放 することです タルティーブ ムスナドのハディース 集 によれば 奴 隷 解 放 の 余 裕 がない 者 は 連 続 する 2 か 月 間 断 食 をするか それもできなかっ た 者 は 60 人 の 貧 しい 人 に 食 事 を 与 えなさい アブー フライラ 21 彼 にアッラーの 祝 福 あれ が 伝 えたところによれば ラマダ ーン 月 の 日 中 に 妻 と 性 交 渉 した 者 が アッラーの 使 徒 ムハンマド 彼 にアッラーの 祝 福 と 平 安 あれ に 意 見 を 求 めた そこで 預 言 者 ムハンマドは 彼 に あなたは 奴 隷 を 所 有 しているか? と 尋 ねると 彼 は いいえ と 答 えた 預 言 者 が 2 か 月 間 断 食 をできるか? と 尋 ねると 彼 は いいえ と 答 えた そこで 預 言 者 ムハン マドは 60 人 の 貧 しい 人 たちに 食 べ 物 を 与 えなさい とおっしゃり [ 彼 は 預 言 者 に 同 意 した] 問 32: 罪 の 償 いのために 奴 隷 を 解 放 することにおいて 奴 隷 に 信 仰 心 があるという 条 件 は 必 要 なのですか? 答 32: 法 学 者 たちは [ 故 意 の] 殺 人 の 償 いのための 奴 隷 の 解 放 については その 奴 隷 が 信 仰 心 のある 者 ではなければならないと 同 意 していますが 偽 証 罪 ズィハール 離 婚 および ラマダーン 月 の 日 中 における 性 交 渉 の 罪 への 償 いについては 意 見 が 分 かれています 多 数 派 意 見 の 原 則 では 奴 隷 に 信 仰 心 がなければ 解 放 は 有 効 ではないとしており 一 方 でハナ フィー 派 は 奴 隷 が 信 仰 者 ではなくても [ 故 意 の] 殺 人 への 償 い 以 外 では 解 放 が 有 効 であ るとしています 公 正 かつ 正 しいファトワーとは 多 数 派 の 意 見 の 原 則 に 従 ったファトワ ーです 以 上 は 現 代 イスラーム 法 の 解 釈 に 対 する 法 的 見 解 です 崇 高 なるアッラーはもっともご 存 じであり もっとも 賢 明 なお 方 である 研 究 ファトワー 部 門 ヒジュラ 暦 1432 年 ムハッラム 月 / 西 暦 2014 年 10 月 7

解 説 2014 年 10 月 11 日 イスラーム 国 の 広 報 誌 ダービク(Dābiq) 4 号 において ヤジー ディー 教 徒 の 奴 隷 化 がイスラーム 法 において 合 法 であるという 主 張 が 掲 載 された 本 ファ トワー 集 はそれを 受 けて イスラーム 国 支 配 領 域 の 男 性 住 民 (おもに 戦 闘 員 )に 向 けて 発 行 されたものである 本 文 中 では 棄 教 者 を 除 くムスリム 啓 典 の 民 多 神 教 徒 を 奴 隷 にできるとあるものの 実 際 の 運 用 面 においてはヤジーディー 教 徒 の 女 性 のみを 対 象 にし ているとみられる 回 答 はコーランやハディースに 依 拠 しているものとそうでないものに 分 かれている 少 なくともそれらに 依 拠 しているものに 関 しては とりわけ イスラーム 国 独 自 の 奴 隷 制 解 釈 というわけではなく 特 段 目 新 しい 見 解 というわけではないことを 指 摘 することができる 問 答 27 から 32 までは 奴 隷 制 の 運 用 というより むしろ 奴 隷 に ついてコーランで 言 及 された 箇 所 の 紹 介 といえよう 奴 隷 となったのちに イスラーム 国 支 配 領 域 から 脱 出 したヤジーディー 教 徒 の 女 性 の 証 言 によれば 10 歳 以 上 の 男 性 が 全 員 殺 害 された 後 女 性 と 子 供 が 奴 隷 として 売 られ たとある[CNN 2014]ため この 証 言 が 正 しければ 奴 隷 は 女 性 と 9 歳 以 下 の 子 供 に 限 定 さ れるようである それを 反 映 して 本 ファトワー 集 でも 捕 虜 や 奴 隷 は 女 性 形 をとっ ている また 所 有 者 の 子 を 産 んだ 女 奴 隷 は ウンム ワラド になるという 規 定 ( 答 9) があることからか 避 妊 薬 を 服 用 させられたというヤジーディー 教 徒 女 性 の 証 言 もある [New York Times 2016] 証 言 は 全 体 の 一 部 でしかないものの この 事 例 は 奴 隷 をウンム ワ ラドにしないための 方 策 がとられていることを 示 している そのため ウンム ワラドの 規 定 がある 本 ファトワー 集 の 存 在 が( 男 性 ) 奴 隷 所 有 者 に 認 知 されていた 可 能 性 が 高 いだ ろう また イスラーム 国 が 現 代 において 奴 隷 制 を 敷 いた 意 図 は 戦 闘 員 を 含 む イス ラーム 国 移 住 者 の 男 女 比 が 男 性 に 偏 っているため 男 性 移 住 者 の 結 婚 願 望 あるいは 性 的 欲 求 を 満 たすための 方 策 であると 考 えられる 本 ファトワー 集 においても 質 疑 応 答 全 32 項 目 のうち 11 項 目 が 性 交 渉 に 関 する 内 容 となっており 奴 隷 とされた 女 性 は( 強 制 ) 労 働 の 担 い 手 というよりも 男 性 所 有 者 の 性 的 対 象 として 位 置 付 けられている 本 ファトワー 集 を 発 行 した 研 究 ファトワー 部 門 は イスラーム 国 支 配 領 域 住 民 に 向 けてファトワーを 発 行 する 機 関 である ファトワーの 内 容 は 奴 隷 制 のほか トルコか ら 輸 入 された 肉 を 食 べることの 是 非 やテーブルサッカーをプレイすることの 是 非 など 多 岐 にわたっている[Al-Tamimi 2015: 11] また 発 行 機 関 である ヒンマ 文 庫 は 多 数 ある イ スラーム 国 の 広 報 機 関 の 1 つで 2010 年 ごろに 設 立 されたとされる ヒンマ 文 庫 は 思 想 と 理 論 を 中 心 とした イスラーム 国 の 活 動 家 の 著 作 やパンフレットなどの 活 字 媒 体 を 戦 闘 員 や 支 持 者 向 けに 発 行 している[ 中 東 調 査 会 イスラーム 過 激 派 モニター 班 2015: 90-91] 8

注 1 イスラーム 法 によって 支 配 されている イスラームの 家 の 外 異 教 の 世 界 のことを 戦 争 の 家 と 呼 称 する 2 イスラーム 法 では 男 性 も 捕 虜 および 奴 隷 にすることはできるが 本 ファトワー 集 では 女 性 の 捕 虜 と 奴 隷 について 議 論 されている 3 817 年 -889 年 ハディース 学 者 スナン 様 式 のハディース 集 を 編 纂 し スンナ 派 ハディース 集 である 六 書 の 1 つに 数 えられる[ 大 塚 ほか 編 2002] 4 630 年 のアウタースの 戦 いを 指 す メッカ 征 服 後 預 言 者 ムハンマド 率 いるムスリムの 軍 勢 と 対 立 す る 部 族 連 合 による 戦 いで 圧 倒 的 劣 勢 ではあったもののムスリム 側 が 勝 利 した その 際 ムスリム 側 は 大 量 に 捕 虜 を 得 た 5 未 婚 であっても 本 当 に 妊 娠 していないかどうかを 確 認 するため 6 イスラームでは 男 性 は 夢 精 した 時 点 で 女 性 は 初 潮 を 迎 えた 時 点 で 成 人 と 見 なすが 肉 体 的 特 徴 が 表 れるのが 遅 れているときには 男 女 ともに 15 歳 を 成 人 と 見 なす[ 大 塚 ほか 編 2002] ただし 奴 隷 の 売 買 の 場 合 は 母 親 の 庇 護 を 必 要 とする 7 歳 未 満 は 母 親 から 引 き 離 しての 売 買 が 禁 止 された[ 遠 峰 1964: 73] 7 直 訳 すると 子 の 母 であるが 所 有 者 に 認 知 された 子 供 を 産 んだ 女 奴 隷 のことを 指 す ウンム ワラ ドは 所 有 者 が 死 亡 したら 自 由 になり 遺 贈 財 産 も 受 け 取 れるとされた[ibid.: 76] 8 奴 隷 を 示 すアラビア 語 は 複 数 あり 男 奴 隷 がアブド マムルーク あるいはグラーム 女 奴 隷 はアマあ るいはジャーリヤと 呼 ばれる[ 佐 藤 1991: 2] このファトワー 本 文 では 女 奴 隷 としてアマが 使 用 されている 9 右 手 の 所 有 とは 奴 隷 のこと コーランにも 出 てくる 表 現 である 10 所 有 者 は 奴 隷 に 能 力 以 上 のことをさせてはならず 仕 事 のあとで 必 要 な 休 息 を 与 えなければならないと いう 規 定 がある[ 遠 峰 1964: 73] 11 817/821-875 年 ハディース 学 者 スンナ 派 ハディース 集 の 最 高 峰 とされる 二 大 真 正 集 の 1 つを 編 纂 し アブー ダーウードのハディース 同 様 六 書 の 1 つにも 数 えられる[ 大 塚 ほか 編 2002] 12 不 貞 をするくらいならば 女 奴 隷 と 結 婚 せよ ということ 13 1147-1223 年 ハンバル 派 の 法 学 者 [ 大 塚 ほか 編 2002] 14 コーランに 定 められており 解 釈 の 余 地 がない 固 定 刑 のこと ハッド 刑 の 執 行 対 象 者 は 正 常 な 成 人 ムス リムである[ibid.] 15 所 有 者 と 奴 隷 との 契 約 に 基 づく 解 放 を 意 味 する キターバ を 結 んだ 奴 隷 を ムカータバ と 呼 ぶ イ スラームでは 奴 隷 が 自 らの 代 金 を 支 払 い 解 放 を 求 めるならば その 要 求 に 応 じることが 推 奨 されてい た[ 遠 峰 1964: 77] 16 1233-1277 年 シャーフィイー 派 法 学 者 ハディース 学 者 シャーフィイー 派 法 学 の 大 成 者 とされる[ 大 塚 ほか 編 2002] 17 上 記 のナワウィーによるムスリムのハディース サヒーフ ムスリム の 注 釈 書 18 イスラーム 法 では スンナ 派 4 法 学 派 の 内 3 つ 以 上 の 法 学 派 の 見 解 が 一 致 した 場 合 その 意 見 を 多 数 派 意 見 (ジュムフール)とする 原 則 が 確 立 している 19 語 源 は 背 中 を 意 味 するザフル イスラーム 以 前 のアラブ 社 会 では 夫 が 妻 に お 前 の 背 中 は 私 の 母 の 背 中 だ と 宣 言 することで 妻 を 母 すなわち 結 婚 相 手 とならない 女 性 とすることで 夫 としての 義 務 から 逃 れた ただし ズィハール 離 婚 された 妻 は 夫 の 家 を 離 れることができず 再 婚 の 自 由 もなかったために イスラームではこれを 女 性 虐 待 の 悪 習 と 見 なし 禁 止 した[ibid.] 20 イバード 派 のハディース 集 タルティーブ ムスナド のことと 思 われる 21?-678/679 年 ムハンマドの 教 友 で 高 弟 の 1 人 本 名 がはっきりしないが 猫 好 きのためアブー フラ イラ 子 猫 (フライラ)の 父 として 知 られる[ibid.] 出 典 Sabi Reqab <https://archive.org/details/hemaa77>(2016 年 5 月 9 日 最 終 閲 覧 ) Al-Hayat Media Center. Dābiq Issue 4, 2015. <http://media.clarionproject.org/files/islamic-state/islamic-state-isis-magazine-issue-4-the-failed-crusade.pdf>(2016 年 5 月 9 日 最 終 閲 覧 ) 9

参 照 文 献 井 筒 俊 彦 訳 1957-1958. コーラン ( 上 )( 中 )( 下 ) 岩 波 文 庫. 大 塚 和 夫 小 杉 泰 小 松 久 男 東 長 靖 羽 田 正 山 内 昌 之 編 2002. 岩 波 イスラーム 辞 典 岩 波 書 店. 佐 藤 次 高 1991. マムルーク: 異 教 の 世 界 からきたイスラムの 支 配 者 たち 東 京 大 学 出 版 会. 中 東 調 査 会 イスラーム 過 激 派 モニター 班 2015. イスラーム 国 の 生 態 がわかる 45 のキーワード 明 石 書 店. 遠 峰 四 郎 1964. イスラム 法 入 門 紀 伊 國 屋 新 書. 柳 橋 博 之 2001. イスラーム 家 族 法 : 婚 姻 親 子 親 族 創 文 社. Al-Tamimi, Aymenn Jawad. 2015. The Evolution in Islamic State Administration: The Documentary Evidence, Perspectives on Terrorism. <http://www.aymennjawad.org/17687/the-evolution-in-islamic-state-administration> (2016 年 4 月 24 日 最 終 閲 覧 ) ニュース 記 事 'Treated like cattle': Yazidi women sold, raped, enslaved by ISIS, CNN, October 30, 2014. <http://edition.cnn.com/2014/10/30/world/meast/isis-female-slaves/>(2016 年 4 月 24 日 最 終 閲 覧 ) To Maintain Supply of Sex Slaves, ISIS Pushes Birth Control, New York Times, March 12, 2016. <http://www.nytimes.com/2016/03/13/world/middleeast/to-maintain-supply-of-sex-slaves-isis-pushes-birth-control.ht ml>(2016 年 4 月 24 日 最 終 閲 覧 ) 10