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失 敗 しないマンション 管 理 ~トラブル 事 例 を 参 考 に~ 講 師 : 福 岡 マンション 問 題 研 究 会 弁 護 士 碇 啓 太 (いかり けいた) 1

講 師 自 己 紹 介 弁 護 士 碇 啓 太 (いかり けいた) 福 岡 県 弁 護 士 会 所 属 松 坂 法 律 事 務 所 810 0042 福 岡 市 中 央 区 赤 坂 1 丁 目 12 番 15 号 読 売 福 岡 ビル4 階 TEL092(725)5432 FAX092(781)7662 ( 略 歴 ) 福 岡 県 立 筑 紫 丘 高 等 学 校 中 央 大 学 法 学 部 法 律 学 科, 中 央 大 学 法 科 大 学 院 平 成 21 年 弁 護 士 登 録 松 坂 法 律 事 務 所 在 籍 中 央 大 学 通 信 教 育 学 部 勉 強 会 講 師 西 南 大 学 法 科 大 学 院 チューター ( 特 に 多 い 取 扱 い 分 野 )*マンション 関 係 以 外 では 交 通 事 故, 過 払 金 請 求, 債 務 整 理, 債 権 ( 貸 金, 賃 料 ) 回 収, 遺 産 分 割, 遺 言 書 作 成, 金 融 法 務 2

マンションとは 法 律 上,マンションとは, 2 以 上 の 区 分 所 有 者 が 存 する 建 物 で, 人 の 居 住 の 用 に 供 す る 専 有 部 分 のあるもの 形 態 * 投 資 型,リゾート 型, 単 棟 型, 団 地 型 3

マンションを 巡 って 生 じる 法 律 問 題 滞 納 管 理 費 等 請 求 漏 水 事 故 騒 音 問 題 ペット 飼 育 問 題 反 社 会 的 勢 力 ( 暴 力 団 など) 総 会 運 営, 規 約 建 築 物 の 瑕 疵 4

誰 が 当 事 者 か? ( 誰 が 問 題 解 決 に 当 たるべきか) 当 事 者 間 での 話 合 いによる 解 決 当 事 者 とは 誰 か どこまで 管 理 組 合 として 介 入 して 行 くのか 区 分 所 有 者 と 第 三 者 区 分 所 有 者 と 区 分 所 有 者 区 分 所 有 者 と 管 理 組 合 管 理 組 合 と 第 三 者 5

管 理 組 合 とは 区 分 所 有 者 全 員 によって 構 成 される 団 体 区 分 所 有 法 3 条 区 分 所 有 者 は, 全 員 で, 建 物 並 びにその 敷 地 及 び 附 属 施 設 の 管 理 を 行 うための 団 体 を 構 成 し,この 法 律 の 定 めると ころにより, 集 会 を 開 き, 規 約 を 定 め, 及 び 管 理 者 を 置 くことができる ( 省 略 ) 民 法 上 の 権 利 能 力 なき 社 団 ( 参 考 ) 管 理 組 合 法 人 6

理 事 長 とは 理 事 長 とは, 管 理 組 合 の 代 表 者 理 事 長 は, 管 理 者 とされている 場 合 がほと んど 管 理 者 とは, 区 分 所 有 建 物, 敷 地 及 び 附 属 施 設 の 管 理 を 行 うために 選 任 された 者 管 理 者 の 選 任 は, 規 約 に 別 段 の 定 めがない 限 り, 集 会 の 決 議 によって 行 われる( 法 25 条 ) 7

理 事 長 の 職 務 の 根 拠 となる 法 令 等 区 分 所 有 法 民 法 管 理 規 約 及 びその 細 則 一 般 的 法 令 その 他 8

理 事 長 の 職 務 の 根 拠 となる 法 令 等 建 物 の 区 分 所 有 等 に 関 する 法 律 第 1 章 建 物 の 区 分 所 有 第 1 節 総 則 第 2 節 共 用 部 分 等 第 3 節 敷 地 利 用 権 第 4 節 管 理 者 第 5 節 規 約 及 び 集 会 第 6 節 管 理 組 合 法 人 第 7 節 義 務 違 反 者 に 対 する 措 置 第 8 節 復 旧 及 び 立 替 え 第 2 章 団 地 第 3 章 罰 則 9

理 事 長 の 権 限 及 び 義 務 区 分 所 有 法 26 条 1 項 管 理 者 は, 共 用 部 分 並 びに 第 21 条 に 規 定 する 場 合 における 当 該 建 物 の 敷 地 及 び 附 属 施 設 を 保 存 し, 集 会 の 決 議 を 実 行 し, 並 びに 規 約 で 定 めた 行 為 をする 権 利 を 有 し, 義 務 を 負 う 2 項 管 理 者 は,その 職 務 に 関 し, 区 分 所 有 者 を 代 理 する 第 18 条 4 項 の 規 定 による 損 害 保 険 契 約 に 基 づく 保 険 金 額 並 びに 共 用 部 分 等 について 生 じた 損 害 賠 償 金 及 び 不 当 利 得 による 返 還 金 の 請 求 並 びに 受 領 についても, 同 様 と する 4 項 管 理 者 は, 規 約 又 は 集 会 の 決 議 により,その 職 務 に 関 し, 区 分 所 有 者 のために, 原 告 又 は 被 告 となることがで きる 10

理 事 長 の 権 限 及 び 義 務 委 任 契 約 に 関 する 規 定 が 適 用 される(26 条 ) 1 善 管 注 意 義 務 ( 民 法 644 条 ) 2 報 告 義 務 ( 民 法 645 条 ) 3 受 取 物 引 渡 義 務 ( 民 法 646 条 1 項 ) 4 報 酬 支 払 請 求 ( 民 法 648 条 1 項, 商 法 512 条 * 特 約 がある 場 合 のみ) 5 費 用 前 払 請 求 権 ( 民 法 649 条 ) 6 費 用 償 還 請 求 権 ( 民 法 650 条 ) 損 害 賠 償 請 求 権 ( 同 条 3 項 ) 11

理 事 長 の 権 限 及 び 義 務 共 用 部 分 等 の 保 存 集 会 決 議 の 実 行 規 約 で 定 めた 行 為 の 実 行 集 会 の 招 集 規 約 と 集 会 議 事 録 の 保 管 及 び 閲 覧 ( 法 33 条, 42 条,45 条 ) 事 務 の 報 告 (43 条 ) 12

理 事 長 の 権 限 及 び 義 務 保 存 行 為 管 理 者 は, 共 用 部 分, 及 び 区 分 所 有 者 らの 共 有 に 属 する 当 該 建 物 の 敷 地 及 び 附 属 施 設 につい て,その 滅 失, 毀 損 を 防 止 して 現 状 の 維 持 を 図 る 権 利 を 有 し 義 務 を 負 う(26 条 1 項 ) 管 理 者 は, 独 自 の 判 断 で 保 存 行 為 を 行 うことが できる 管 理 ( 利 用 改 良 行 為 ) 及 び 変 更 等 の 行 為 につ いては 集 会 の 決 議 が 必 要 集 会 の 招 集 (34 条 ) 13

理 事 長 の 権 限 及 び 義 務 保 存 行 為 と 狭 義 の 管 理 行 為 * 区 分 所 有 法 18 条 1 項 共 用 部 分 の 管 理 に 関 する 事 項 は, 前 条 の 場 合 を 除 いて, 集 会 の 決 議 で 決 する ただし, 保 存 行 為 は, 各 共 有 者 が することができる 保 存 行 為 とは, 一 般 に 共 用 部 分 の 滅 失 棄 損 を 防 止 し て 現 状 の 維 持 を 図 る 行 為 日 常 の 管 理 費 用 で 賄 える 範 囲 内 の 比 較 的 軽 度 かあるい は 緊 急 を 要 する 維 持 行 為 狭 義 の 管 理 行 為 これを 超 えて, 修 繕 積 立 金 を 取 り 崩 す 必 要 がある 修 繕, 分 担 金 を 負 担 する 必 要 のある 修 繕 14

理 事 長 の 権 限 及 び 義 務 集 会 決 議 の 実 行 管 理 者 は, 集 会 で 決 議 された 内 容 を 実 行 する 権 利 を 有 し 義 務 を 負 う(26 条 1 項 ) 例 適 当 な 業 者 への 委 託 管 理 者 が 集 会 決 議 に 基 づく 職 務 を 執 行 せず に 管 理 組 合 に 損 害 を 与 えた 場 合 区 分 所 有 者 全 員 に 対 して 損 害 賠 償 債 務 を 負 うことになる 規 約 で 定 めた 行 為 の 実 行 15

理 事 長 の 権 限 及 び 義 務 集 会 の 招 集 及 び 事 務 の 報 告 管 理 者 は, 区 分 所 有 者 の 集 会 を 少 なくとも 毎 年 1 回 招 集 しなければならない(34 条 2 項 ) この 集 会 においてその 事 務 に 関 する 報 告 を する 義 務 を 負 う(43 条 ) 義 務 を 怠 った 場 合 又 は 虚 偽 の 報 告 をした 場 合 処 罰 対 象 (20 万 円 以 下 の 過 料,71 条 4 号 ) 16

理 事 長 の 権 限 及 び 義 務 規 約 及 び 集 会 議 事 録 の 保 管 閲 覧 管 理 者 が 規 約 及 び 集 会 議 事 録 を 保 管 する 義 務 を 負 う(33 条 1 項,42 条 5 項 ) 規 約 及 び 集 会 議 事 録 の 保 管 場 所 について 見 や すい 場 所 に 掲 示 しなければならない( 同 条 3 項 本 文,42 条 5 項 ) 利 害 関 係 人 の 請 求 がある 場 合 には 正 当 な 理 由 がある 場 合 を 除 いては 規 約 の 閲 覧 を 拒 むことが できない( 同 条 2 項,42 条 5 項 ) 義 務 の 懈 怠 は 処 罰 対 象 (20 万 円 以 下 の 過 料 71 条 1 号 及 び2 号 ) 17

専 有 部 分 と 共 用 部 分 概 念 専 有 部 分 とは, 区 分 所 有 権 の 目 的 たる 建 物 の 部 分 (2 条 3 項 ) 共 用 部 分 とは, 専 有 部 分 以 外 の 建 物 の 部 分, 専 有 部 分 に 属 しない 建 物 の 附 属 物 及 び 第 4 条 2 項 の 規 定 ( 規 約 )により 共 用 部 分 とさ れた 付 属 の 建 物 * 配 電 線,ガス 管, 水 道 管,テラス,ベランダ? 18

専 有 部 分 と 共 用 部 分 専 有 部 分 専 有 部 分 とは, 区 分 所 有 権 の 目 的 たる 建 物 の 部 分 (2 条 3 項 ) 元 来 その 所 有 者 が 排 他 的 に 支 配 できる 部 分 居 住 部 分 とその 付 属 物 19

専 有 部 分 と 共 用 部 分 共 用 部 分 共 用 部 分 とは,1 専 有 部 分 以 外 の 建 物 の 部 分,2 専 有 部 分 に 属 しない 建 物 の 附 属 物 及 び3 第 4 条 2 項 の 規 定 ( 規 約 )により 共 用 部 分 とされた 付 属 の 建 物 1 専 有 部 分 を 除 く 部 分 はすべて 共 用 部 分 2 共 用 部 分 と 一 体 となるもの 例 ガス, 水 道, 電 気,エレベーター 3 専 有 部 分 としての 要 件 を 満 たす 部 分 を 規 約 によって 共 用 部 分 としたもの( 登 記 する) 20

専 有 部 分 と 共 用 部 分 具 体 例 集 会 室 廊 下 階 段 室,エレベーター 室, 玄 関,ロビー 倉 庫, 車 庫 管 理 人 室 ピロティ バルコニー,ベランダ * 専 用 使 用 権 屋 上 部 分 外 壁, 屋 根 隔 壁 * 規 約 による 合 意 給 排 水 管 主 管 ( 縦 管 )は 共 用 部 分, 枝 管 ( 横 管 )で 専 有 部 分 内 にあるもの は 専 有 部 分 に 属 する 21

具 体 例 の 検 討 滞 納 管 理 費 等 請 求 漏 水 事 故 反 社 会 的 勢 力 ペット 飼 育 問 題 騒 音 問 題 総 会 運 営 規 約 の 改 正 22

滞 納 管 理 費 等 請 求 事 例 私 が 理 事 長 をしているマンションの 所 有 者 の1 人 が,7 年 前 から 管 理 費 及 び 修 繕 積 立 金 を 支 払 ってくれていません 過 去 には 何 度 も 支 払 うようにお 願 いをしていた みたいですが,ここ 近 年 は 不 払 いの 状 態 が 当 た り 前 になっているみたいです 滞 納 金 額 は, 管 理 費 と 修 繕 積 立 金 併 せて84 万 円 になっています どうしたらいいでしょうか 23

滞 納 管 理 費 等 請 求 理 事 長 としてやるべきこと 管 理 費 の 滞 納 がないか 確 認 滞 納 者 に 対 する 催 告 僅 少 な 場 合 は 支 払 督 促, 少 額 訴 訟 を 利 用 する 弁 護 士 へ 依 頼 するタイミング 滞 納 金 額 が 過 大 又 は 長 期 弁 護 士 名 義 による 催 告 及 び 交 渉 訴 訟 提 起 ( 簡 易 裁 判 所, 地 方 裁 判 所 ) 24

滞 納 管 理 費 等 請 求 管 理 費 等 発 生 の 根 拠 区 分 所 有 法 19 条 各 共 有 者 は, その 持 分 に 応 じ て 共 用 部 分 の 負 担 に 任 じ ( 参 考 )14 条 各 共 有 者 の 持 分 は,その 有 する 専 有 部 分 の 床 面 積 の 割 合 による 管 理 規 約 及 び 議 事 録 の 確 保 ポイント 時 効 5 年 ( 最 高 裁 で 確 定 ) 請 求 の 相 手 方 区 分 所 有 者 の 特 定 承 継 人 遅 延 損 害 金 の 請 求 将 来 請 求 2 年 分 25

滞 納 管 理 費 等 請 求 通 常 の 回 収 の 流 れ 1 催 告 ( 内 容 証 明 ) 2 訴 訟 ( 福 岡 地 方 ( 簡 易 ) 裁 判 所 への 訴 え 提 起 ) 3 強 制 執 行 1 債 権 の 差 押 2 不 動 産 の 差 押 3 動 産 の 差 押 弁 護 士 へ 依 頼 例 ) 給 与, 預 金, 売 掛 金 例 ) 当 該 居 室,その 他 例 ) 自 動 車, 現 金 26

滞 納 管 理 費 等 請 求 先 取 り 特 権 を 利 用 した 回 収 (7 条 ) 先 取 り 特 権 とは メリット: 判 決 文 を 取 得 せずに 回 収 できる デメリット: 交 渉 の 機 会 がない 後 に 続 く 手 続 との 関 係 賃 料 に 対 する 物 上 代 位 27

滞 納 管 理 費 等 請 求 * 滞 納 区 分 所 有 者 に 出 て 行 ってもらう 不 動 産 の 差 押 無 剰 余 取 り 消 し 不 動 産 を 競 売 にかけて 売 却 しても 税 金 や 抵 当 権 者 への 支 払 のために, 管 理 費 等 の 回 収 ができない 場 合 形 式 競 売 (59 条 競 売 ) 要 件 1 共 同 利 益 違 反 行 為 2 共 同 生 活 上 の 障 害 が 著 しいこと 例 4~7 年 の 滞 納,100 万 円 3 他 の 方 法 によってはその 障 害 を 除 去 して 共 同 生 活 の 維 持 を 図 ることが 困 難 であること 28

滞 納 管 理 費 等 請 求 内 容 証 明 利 用 の 意 味 催 告 による 時 効 の 停 止 ( 民 法 153 条 ) 内 容 証 明 の 利 用 方 法 29

支 払 督 促 利 用 方 法 メリット デメリット 少 額 訴 訟 メリット デメリット 通 常 訴 訟 メリット デメリット 法 的 手 続 きの 利 用 30

滞 納 管 理 費 等 請 求 弁 護 士 費 用 の 回 収 弁 護 士 費 用 は, 自 由 化 されている 内 容 証 明 作 成 のみ3 万 円 前 後 交 渉 着 手 金 10~20 万 円 報 酬 15%くらい 規 約 に 弁 護 士 費 用 まで 請 求 できる 旨 を 明 記 されているか 31

漏 水 事 故 事 例 うちのマンションで 漏 水 事 故 が 発 生 して, 区 分 所 有 者 の 人 が 居 室 を 利 用 できない 状 態 に なっています そのため,そこの 人 が 管 理 組 合 に 補 償 しろ と 言 ってきています どうしたらいいでしょうか 32

漏 水 事 故 ポイント 漏 水 事 故 の 原 因 の 特 定 (ベランダ, 給 排 水 管 等 ) 共 用 部 分 か 専 有 部 分 か 共 用 部 分 であれば 管 理 組 合 に 責 任 が 発 生 し うる 発 見 次 第 防 止 措 置 を 講 じる 専 有 部 分 であれば 区 分 所 有 者 間 の 問 題 損 害 保 険 の 利 用 33

漏 水 事 故 主 な 請 求 根 拠 条 文 民 法 709 条 故 意 又 は 過 失 によって 他 人 の 権 利 又 は 法 律 上 保 護 される 利 益 を 侵 害 した 者 は,これによって 生 じた 損 害 を 賠 償 する 責 任 を 負 う 民 法 717 条 1 項 土 地 の 工 作 物 の 設 置 又 は 保 存 に 瑕 疵 が あることによって 他 人 に 損 害 を 生 じたときは,その 工 作 物 の 占 有 者 は, 被 害 者 に 対 してその 損 害 を 賠 償 する 責 任 を 負 う ただし, 占 有 者 が 損 害 の 発 生 を 防 止 するのに 必 要 な 注 意 をしたときは, 所 有 者 がその 損 害 を 賠 償 しなければな らない 同 条 3 項 前 ニ 項 の 場 合 において, 損 害 の 原 因 について 他 にその 責 任 を 負 う 者 があるときは, 占 有 者 又 は 所 有 者 は, その 者 に 対 して 求 償 権 を 行 使 することができる 34

漏 水 事 故 漏 水 事 故 原 因 の 特 定 区 分 所 有 法 9 条 建 物 の 設 置 又 は 保 存 に 瑕 疵 があることにより 他 人 に 損 害 を 生 じたとき は,その 瑕 疵 は, 共 用 部 分 の 設 置 又 は 保 存 に 瑕 疵 があるものと 推 定 する 瑕 疵 の 存 在 場 所 が 不 明 な 場 合 は 共 用 部 分 に 存 在 すると 推 定 し, 賠 償 請 求 権 者 の 立 証 責 任 の 軽 減 を 図 った 35

漏 水 事 故 ( 共 用 部 分 ) 漏 水 事 故 と 管 理 組 合 の 責 任 ~ 管 理 組 合 の 土 地 工 作 物 責 任 を 認 めた 事 例 裁 判 例 ( 福 岡 高 判 平 成 12 年 12 月 27 日 )は, 屋 上 の 排 水 ド レーンからの 漏 水 事 故 によって 被 害 を 受 けた 区 分 所 有 者 が 管 理 組 合 及 び 管 理 業 者 に 対 して 民 法 717 条 2 項 の 土 地 工 作 物 責 任 に 基 づく 損 害 賠 償 請 求 をした 事 案 において, 屋 上 排 水 ドレーンが 共 用 部 分 であ ることは 当 事 者 間 に 争 いがない 管 理 組 合 は 屋 上 排 水 ドレーンのゴミ 詰 まりによる 漏 水 事 故 の 結 果 を 予 見 してこれを 回 避 することが 可 能 であり,そうすべき 義 務 があったというべきであり,これを 怠 った 過 失 を 認 め ることができる と 判 示 した 36

漏 水 事 故 ( 専 有 部 分 )ベランダからの 漏 水 ~ 占 有 者 区 分 所 有 者 の 土 地 工 作 物 責 任 を 肯 定 した 事 例 ~ 裁 判 例 ( 東 京 地 判 平 成 4 年 3 月 19 日 )は, 本 件 豪 雨 による 浸 水 事 故 は, 被 告 ( 賃 借 人 )が 忠 実 に 南 側 排 水 口 及 び 東 側 排 水 口 の 塵 芥 を 完 全 に 除 去 していれば, 発 生 を 回 避 することができた 可 能 性 を 否 定 することはできな い 被 告 ( 賃 借 人 )の 過 失 と 事 故 の 発 生 の 因 果 関 係 の 存 在 を 否 定 することはできない 本 件 事 故 の 発 生 には, 本 件 ベランダの 構 造 が 大 きく 影 響 を 与 えて いることは 否 定 することができない 責 任 を 所 有 者 たる 被 告 が 負 わなければならない 37

漏 水 事 故 ( 共 用 部 分 ) 漏 水 事 故 と 管 理 組 合 の 責 任 ~ 漏 水 の 予 見 可 能 性 がなく 管 理 義 務 違 反 を 否 定 した 事 例 ~ 裁 判 例 ( 東 京 地 判 平 成 17 年 9 月 1 日 )は, 区 分 所 有 者 が 屋 上 か らの 漏 水 を 理 由 に 管 理 組 合 に 対 して 損 害 賠 償 請 求 をした 事 案 で, 平 成 15 年 末 に 上 記 屋 上 部 分 も 含 めて 大 規 模 修 繕 を 行 ったにもかかわらず, 平 成 16 年 10 月 5 日 には, 同 様 の 漏 水 が 発 生 していること, 平 成 11 年 8 月 14 日 及 び2 9 日 の 降 雨 は, 最 大 1 時 間 降 水 量 30.5ミリメートルあるい は58.5ミリメートルという 激 しいものであったことなどを 考 えると, 平 成 11 年 8 月 の 時 点 で, 被 告 が,かかる 漏 水 を 予 見 し,それを 回 避 することが 可 能 であったにもかかわらず これを 怠 ったと 認 めることはできず, 被 告 に 管 理 義 務 違 反 があったとはいえない 38

ペット 飼 育 問 題 事 例 私 が 理 事 長 をしているマンションで, 区 分 所 有 者 Aさんが 飼 育 している 犬 が 区 分 所 有 者 B さんの 子 供 Cの 足 にかみついて,Cは10 針 を 縫 う 大 けがをしたとのことでした Bさんが 管 理 組 合 は 何 をしているのか, 管 理 規 約 を 見 せろ, 管 理 組 合 が 損 害 を 賠 償 しろと 言 ってきています 管 理 組 合 としては,どうしたらいいでしょうか 39

ペット 飼 育 問 題 ポイント ペット 飼 育 の 問 題 点 糞 尿 によるマンションの 汚 損, 鳴 き 声 による 騒 音 等 専 有 部 分 の 利 用 は 制 限 できる 規 約 の 確 認 義 務 違 反 者 に 対 する 措 置 共 同 利 益 違 反 行 為 として 法 57 条 による 差 止 損 害 賠 償 弁 護 士 費 用 相 当 額 の 損 害 賠 償 40

ペット 飼 育 問 題 区 分 所 有 法 57 条 1 項 区 分 所 有 者 が 第 6 条 1 項 に 規 定 する 行 為 をし た 場 合 又 はその 行 為 をするおそれがある 場 合 には, 他 の 区 分 所 有 者 の 全 員 又 は 管 理 組 合 法 人 は, 区 分 所 有 者 の 共 同 の 利 益 のため, その 行 為 を 停 止 し,その 行 為 の 結 果 を 除 去 し, 又 はその 行 為 を 予 防 するため 必 要 な 措 置 を 執 ることを 請 求 することができる 41

ペット 飼 育 問 題 区 分 所 有 法 57 条 1 項 1( 要 件 ) 区 分 所 有 者 が 第 6 条 1 項 に 規 定 する 行 為 をした 場 合 又 は その 行 為 をするおそれがある 場 合 2( 主 体 ) 他 の 区 分 所 有 者 の 全 員 又 は 管 理 組 合 法 人 は, 3( 目 的 ) 区 分 所 有 者 の 共 同 の 利 益 のため, 4( 効 果 ) その 行 為 を 停 止 し,その 行 為 の 結 果 を 除 去 し, 又 はその 行 為 を 予 防 するため 必 要 な 措 置 を 執 ることを 請 求 すること ができる 42

ペット 飼 育 問 題 ペット 不 可 マンションでの 犬 の 飼 育 ~ 共 同 利 益 に 反 すると し 飼 育 の 禁 止 賠 償 を 認 めた 事 例 ~ 裁 判 例 ( 東 京 地 判 平 成 6 年 3 月 31 日 )は, 管 理 組 合 が 区 分 所 有 者 に 対 して, 区 分 所 有 法 57 条 1 項 による 差 止 ( 飼 育 禁 止 ) 及 び 損 害 賠 償 ( 弁 護 士 費 用 )を 求 めた 事 案 において, 規 約 24 条 に 基 づく 細 則 の 本 件 規 定 により, 犬 猫 の 飼 育 を 禁 止 しているが, 犬 猫 を 飼 育 する 行 為 は, 区 分 所 有 法 6 条 1 項 所 定 の 区 分 所 有 者 の 共 同 の 利 益 に 反 する 行 為 に 該 当 するものとして, 同 法 57 条 1 項 により 差 止 ( 飼 育 禁 止 ) 請 求 の 対 象 となる 差 止 請 求 認 容 本 件 規 定 に 違 反 し 犬 を 飼 育 し 続 けている 被 告 らの 行 為 は, 原 稿 を 構 成 する 区 分 所 有 者 の 共 同 の 利 益 に 反 する 違 法 な 行 為 不 法 行 為 を 構 成 する 弁 護 士 費 用 の 損 害 賠 償 を 認 めた 43

騒 音 問 題 事 例 私 が 理 事 長 をしているマンションの 上 下 階 で トラブルが 起 こっています 上 階 の 人 の 子 供 が 夜 の12 時 近 くまでドタバ タと 走 り 回 ってうるさくて, 眠 れません 管 理 組 合 として, 注 意 をするなど 責 任 もって どうにかしてくださいと 言 われています どうしたらよいでしょうか 44

騒 音 問 題 ポイント 基 本 的 には 区 分 所 有 者 間 の 問 題 ただし, 管 理 組 合 としての 社 会 的 役 割 受 任 限 度 論 精 神 的 苦 痛 に 対 する 損 害 賠 償 が 認 められるか 否 か の 判 断 基 準 騒 音 基 準 加 害 者 側 の 対 応, 防 音 対 策 をとったか 管 理 組 合 としての 介 入 騒 音 をめぐる 発 言 と 名 誉 棄 損 ( 東 京 地 判 平 成 9 年 4 月 17 日 ) 45

騒 音 の 問 題 床 のフローリング 化 による 騒 音 の 発 生 ~どの 程 度 に まで 達 すれば 不 法 行 為 となるのか~ 裁 判 例 ( 東 京 地 判 八 王 子 支 部 平 成 8 年 7 月 30 日 )は, 加 害 行 為 の 有 用 性, 妨 害 予 防 の 簡 便 性, 被 害 の 程 度 及 びそ の 存 続 期 間,その 他 の 主 観 的 及 び 客 観 的 な 諸 般 の 事 情 に 鑑 み, 平 均 人 の 通 常 の 感 覚 ないし 感 受 性 を 基 準 として 判 断 して, 一 定 の 限 度 までの 騒 音 被 害 生 活 妨 害 は,このような 集 合 住 宅 における 社 会 生 活 上 やむを 得 ないものとして 受 忍 すべきである 一 方, 右 の 受 忍 限 度 を 超 える 騒 音 被 害 生 活 妨 害 は, 不 法 行 為 を 構 成 する 46

反 社 会 的 勢 力 への 対 処 事 例 最 近,ある 区 分 所 有 者 方 が 居 室 を 売 却 された のですが,どうやらその 居 室 の 買 受 人 が 入 れ 墨 をしていて, 深 夜 も 同 じような 風 貌 の 人 が 何 人 も 集 まってきていて,お 酒 を 飲 みながら 大 声 で 騒 いでいます 注 意 をしにいったときに, 部 屋 の 中 が 少 し 見 え たのですが, 部 屋 の 中 が 改 造 されていて, 組 と 書 いた 提 灯 がずらっと 並 んでいました 理 事 長 として 何 かしないといけないと 思 うので すが,どうしたらいいでしょうか 47

反 社 会 的 勢 力 への 対 処 ポイント 反 社 会 的 勢 力 がマンションにいる 場 合 の 影 響 弁 護 士, 警 察, 暴 力 団 追 放 センターへの 相 談 条 例 制 定 人 格 権 に 基 づく 暴 力 団 事 務 所 使 用 禁 止 の 仮 処 分, 訴 訟 区 分 所 有 法 に 基 づく 義 務 違 反 者 に 対 する 措 置 暴 力 団 員 立 入 禁 止 使 用 禁 止 請 求 48

反 社 会 的 勢 力 への 対 処 法 的 手 段 の 例 共 同 利 益 違 反 行 為 の 禁 止 (6 条 1 項 ) 1 共 同 の 利 益 に 反 する 行 為 の 停 止 等 の 請 求 (57 条 ) 例 : 工 作 物 ( 標 章 物,テレビカメラ) 撤 去 命 令 2 使 用 禁 止 の 請 求 (58 条 ) 例 : 暴 力 団 事 務 所 として 使 用 していた 専 有 部 分 の3 年 間 の 使 用 禁 止 3 区 分 所 有 権 の 競 売 の 請 求 (59 条 ) 4 占 有 者 に 対 する 引 渡 請 求 (60 条 ) 例 : 占 有 者 である 暴 力 団 組 長 に 対 する 明 渡 請 求 ( 参 考 ) 人 格 権 に 基 づく 請 求 49

総 会 運 営 区 分 所 有 法 30~46 条 集 会 の 開 催 管 理 者 は, 少 なくとも 毎 年 1 回 集 会 を 招 集 ( 法 34 条 ) 招 集 通 知 会 日 より 少 なくとも1 週 間 前 に, 会 議 の 目 的 たる 事 項 を 示 して 各 区 分 所 有 者 に 発 する( 法 35 条 1 項 本 文 ) 決 議 普 通 決 議 事 項 : 区 分 所 有 者 及 び 議 決 権 の 各 過 半 数 特 別 決 議 事 項 : 区 分 所 有 法 の 別 段 の 定 めによる 特 別 定 数 50

総 会 運 営 集 会 招 集 手 続 きに 違 反 した 場 合 の 規 約 改 正 決 議 の 有 効 性 ( 無 効 かどうか)( 東 京 高 判 平 成 7 年 12 月 18 日 ) 無 効 とはならない 法 35 条 5 項 に 規 定 されている 議 案 の 要 領 が 記 載 されているとは 認 められず, 招 集 手 続 きに 瑕 疵 がある しかし, 上 記 招 集 通 知 の 瑕 疵 が 決 議 に 重 大 な 影 響 を 及 ぼすべき 特 段 の 事 情 があったとは 認 められない 51

総 会 運 営 新 規 約 設 定 のための 集 会 招 集 において, 議 案 の 通 知 がなかった 場 合 の 決 議 の 有 効 性 ( 東 京 地 判 昭 和 62 年 4 月 10 日 ) 無 効 決 議 に 手 続 上 の 瑕 疵 がある 場 合, 決 議 の 内 容 や 瑕 疵 の 内 容 程 度 を 勘 案 して, 招 集 手 続 きに 重 大 な 瑕 疵 があるときには 決 議 が 無 効 になるという 枠 組 みが 定 着 している 52

規 約 改 正 区 分 所 有 法 31 条 1 項 規 約 の 設 定, 変 更 又 は 廃 止 は, 区 分 所 有 者 及 び 議 決 権 の 各 四 分 の 三 以 上 の 多 数 による 集 会 の 決 議 によってする この 場 合 において, 規 約 の 設 定, 変 更 又 は 廃 止 が 一 部 の 区 分 所 有 者 の 権 利 に 特 別 の 影 響 を 及 ぼすべきとき は,その 承 諾 を 得 なければならない 衡 平 性 が 必 要 特 別 の 影 響 を 受 ける 者 の 承 諾 53

マンション 管 理 業 者 の 利 用 管 理 業 者 の 利 用 実 態 管 理 業 者 利 用 のメリット 管 理 業 者 利 用 の 注 意 点 54

管 理 組 合 の 団 体 の 利 用 多 くの 理 事 長 が 加 入 している マンション 管 理 士 等 の 専 門 家 によるアドバイ スが 受 けられる 標 準 管 理 規 約 55

弁 護 士 の 利 用 法 律 問 題 全 般 の 相 談 相 談 方 法 電 話, 面 談 交 渉, 訴 訟 手 続 の 依 頼 顧 問 契 約 56

まとめ 理 事 長 = 善 良 なる 管 理 者 の 注 意 義 務 管 理 規 約 は 理 事 長 のバイブル 管 理 組 合 が 取 り 組 むべき 問 題 の 選 別 管 理 費 等 の 時 効 は5 年 漏 水 事 故 の 発 生 原 因 は 共 用 部 分 か 苦 情 申 し 出 があった ら 誠 実 に 対 応 する ペット 飼 育 問 題 への 対 応 反 社 会 的 勢 力 の 排 除 条 項 が 規 約 にあるか 義 務 違 反 者 に 対 する 措 置 総 会 運 営 規 約 の 改 正 専 門 家 をうまく 利 用 すること 57

御 清 聴 ありがとうございました 特 典 本 レジュメ 持 参 の 方 に 限 り, 通 常 は 法 律 相 談 30 分 5250 円 のところを 無 料 で30 分 の 法 律 相 談 に 応 じま す 基 本 的 に3ヶ 月 以 内 弁 護 士 碇 啓 太 (いかりけいた) 福 岡 県 弁 護 士 会 所 属 ( 登 録 番 号 40552) 松 坂 法 律 事 務 所 810 0042 福 岡 市 中 央 区 赤 坂 1 丁 目 12 番 15 号 読 売 福 岡 ビル4 階 TEL092(725)5432 FAX092(781)7662 58