1 卒 業 論 文 題 目 頭 頸 部 と 骨 盤 部 の 患 者 set up error の 統 計 学 的 有 意 差 解 析 大 阪 大 学 医 学 部 保 健 学 科 放 射 線 技 術 科 学 専 攻 ( 指 導 : 放 射 線 技 術 科 学 研 究 室 松 本 光 弘 准 教 授 ) 05C07004 植 田 崇 彦 ( 平 成 年 月 日 提 出 )
2 要 旨 [ 背 景 目 的 ] 放 射 線 治 療 では 固 定 具 を 用 いて 放 射 線 治 療 精 度 を 上 げる 努 力 がされている 部 位 別 で 使 用 する 固 定 具 は 異 なり set up の 難 易 度 も 異 なる 大 阪 大 学 医 学 部 附 属 病 院 におい て 頭 頸 部 と 骨 盤 部 の 患 者 set up error( 以 下 SE)に 有 意 差 があるか 検 討 した [ 方 法 対 象 ] 使 用 機 器 はリニアック 治 療 装 置 ONCOR Impression plus4.10 および 6.10 対 象 は 頭 頸 部 照 射 患 者 群 63 名 ( 照 合 回 数 919 回 ) 骨 盤 部 照 射 患 者 群 77 名 ( 照 合 回 数 1512 回 ) で それぞれの SE の 平 均 値 に 有 意 差 があるかどうかを 独 立 2 群 検 定 で 統 計 処 理 した 骨 盤 部 の 内 訳 は 前 後 対 向 2 門 が 30 名 ( 照 合 回 数 221 回 ) 3DCRT が 27 名 ( 照 合 回 数 640 回 ) IMRT が 20 名 ( 照 合 回 数 651 回 )であった 有 意 差 検 定 は X 方 向 (Lateral) Y 方 向 (Long) Z 方 向 (Vertical)と 3 方 向 ベクトル 合 成 (3D)で 行 った [ 結 果 ] 頭 頸 部 の SE の 平 均 値 は X 軸 :0.01(mm) Y 軸 :-0.07(mm) Z 軸 :0.48(mm) 骨 盤 部 の SE の 平 均 値 は X 軸 :0.09(mm) Y 軸 :0.61(mm) Z 軸 :0.90(mm) 頭 頸 部 の SE の 標 準 偏 差 は X 軸 :2.07(mm) Y 軸 :2.23(mm) Z 軸 :2.54(mm) 骨 盤 部 の SE の 標 準 偏 差 は X 軸 :2.28(mm) Y 軸 :1.65(mm) Z 軸 :2.64(mm) 頭 頸 部 と 骨 盤 部 で t 検 定 の p 値 は X 方 向 :0.43 Y 方 向 :1.19 Z 方 向 :0.0001 3D:0.001 となった X 方 向 以 外 で 有 意 差 有 りとなった [ 結 論 考 察 ] 頭 頸 部 の 方 が 骨 盤 部 より SE の 平 均 値 が 小 さく 標 準 偏 差 も Y 軸 以 外 では 小 さくなっ た 頭 頸 部 の 方 が 精 度 はより 良 いが SE の 平 均 値 は 全 て 1mm 以 下 なので 臨 床 的 な 差 はないと 考 えられる 頭 頸 部 の 標 準 偏 差 の Y 軸 だけが 大 きい 値 となった 理 由 には 固 定 具 のシェルのマークに 合 わせて set up している シェル 固 定 の 手 順 が Y 軸 に SE が 生 じる 原 因 となっている 固 定 具 の 透 明 枕 の 素 材 が 堅 いために Y 軸 に SE が 生 じや
すい などが 考 えられる 3
4 1. 緒 言 放 射 線 治 療 精 度 の 維 持 や 向 上 のためには 治 療 計 画 で 定 められた 標 的 体 積 に 対 して いかに 再 現 性 よく 線 量 を 投 与 できるかが 重 要 である 標 的 体 積 の 基 本 的 な 概 念 は 国 際 放 射 線 単 位 および 測 定 委 員 会 (ICRU)report および において 規 定 されている 再 現 性 に 関 しては set up の 精 度 向 上 が 重 要 となってくる 一 般 的 に set up は 患 者 の 皮 膚 面 や 固 定 具 に 記 されたマークと 前 方 および 側 方 の 投 光 機 のレーザー 光 を 一 致 さ せることで 行 う しかし set up の 度 に 僅 かな 体 位 の 変 化 などにより set up error が 生 じるのは 避 けられない よって ICRU report 62 では 新 たに internal margin と set up margin の 考 えが 導 入 され それぞれの 施 設 で 適 切 な margin を 設 定 すること が 求 められている 放 射 線 治 療 の 部 位 によって 固 定 具 や set up 法 はそれぞれ 異 なる 大 阪 大 学 医 学 部 附 属 病 院 放 射 線 治 療 部 において 固 定 具 は 頭 頸 部 ではシェル 固 定 を 用 いている 骨 盤 部 の 前 立 腺 強 度 変 調 放 射 線 治 療 ( 以 下 IMRT)にはバックロック( 真 空 吸 引 式 固 定 具 ) 前 後 対 向 二 門 や 3 次 元 原 体 照 射 ( 以 下 3DCRT)にはフットロック ニーロックを 用 いている これら 固 定 具 の 特 徴 や set up 法 はそれぞれ 異 なる そこ で 今 回 の 研 究 では 頭 頸 部 と 骨 盤 部 の 部 位 別 で set up error に 統 計 学 的 有 意 差 が 生 じ るか 精 度 に 臨 床 的 な 優 劣 があるか set up margin はどれほどに 設 定 すべきかを 検 討 した
5 2. 使 用 器 具 および 概 略 2-1. 固 定 具 2-1-1. 頭 頸 部 頭 頸 部 の 固 定 具 は Fig.1 に 示 すスタンダード 台 と 透 明 枕 Fig.2 に 示 す 熱 可 塑 性 シェ ルを 組 み 合 わせて 使 用 されている 熱 可 塑 性 シェルはお 湯 (80~100 )に 暫 くつけ シ ェルが 透 明 になったらしっかりと 湯 切 りをして 患 者 の 顔 に 合 わす 鼻 の 先 をつまんで 上 に 持 ち 上 げるなどして 型 をとった 後 団 扇 で 急 速 冷 却 する 透 明 枕 は 6 種 類 あり 患 者 の 頭 の 形 に 最 も 適 したものを 選 ぶ 透 明 枕 はスタンダード 台 (with Lock bar)で 固 定 する Fig.1:スタンダード 台 (with Lock bar)( 左 )と 透 明 枕 ( 右 )
Fig.2: 熱 可 塑 性 シェル 6
7 2-1-2. 骨 盤 部 前 後 対 向 2 門 と 3DCRT ではニーロックとフットロックが 使 われ IMRT では 真 空 吸 引 式 固 定 具 であるバックロックが 使 われている バックロックの 中 にはパウダービー ズが 入 っており 空 気 を 抜 くことで 患 者 個 々の 体 型 に 合 った 固 定 具 を 作 ることができ る Fig.3:ニーロック 固 定 具 とフットロック 固 定 具
Fig.4:バックロック 固 定 具 8
9 2-2. 使 用 機 器 使 用 器 具 リニアック 治 療 装 置 ONCOR Impression plus4.10 および 6.10 固 定 具 頭 頸 部 熱 可 塑 性 シェル 透 明 枕 (A-F) 骨 盤 部 バックロック : Vac-Lok Cushions フットロック : meditec MT-AFS-01 MODEL CIVCO ニーロック : MT-AKS-02 CIVCO
10 3. 方 法 3-1. 対 象 大 阪 大 学 医 学 部 附 属 病 院 で 行 われた 放 射 線 治 療 のデータから 頭 頸 部 と 骨 盤 部 の 放 射 線 治 療 患 者 140 名 を 対 象 とした それぞれの 患 者 ごとの X 軸 Y 軸 Z 軸 の set up error( 以 下 SE)をデータとして 読 み 取 った また 患 者 データは 暗 号 化 して 用 いた 今 回 の 研 究 の 対 象 データを Table1 に 示 す 患 者 数 ( 人 ) 照 合 回 数 ( 回 ) 頭 頸 部 63 919 前 後 対 向 2 門 30 221 骨 盤 部 3DCRT 27 640 Table1: 頭 頸 部 と 骨 盤 部 の 患 者 数 と 照 合 回 IMRT 20 651 Table1 の 通 り 患 者 数 140 名 照 合 回 数 2431 回 を 対 象 のデータとして 扱 った
11 3-2. 検 定 頭 頸 部 と 骨 盤 部 の SE の 値 に 有 意 差 があるかどうかを 独 立 2 群 検 定 (Student T-test) で 統 計 処 理 をした 有 意 差 検 定 は X 軸 (Lateral) Y 軸 (Long) Z 軸 (Vertical)の 各 軸 と 3 軸 ベクトル 合 成 (3D)で 行 った また 有 意 差 解 析 の 危 険 率 を 5%とした 3-3.ヒストグラム 解 析 頭 頸 部 と 骨 盤 部 のヒストグラムと 累 積 比 率 のグラフを X 軸 (Lateral) Y 軸 (Long) Z 軸 (Vertical) 3 軸 ベクトル 合 成 (3D)のそれぞれにおいて 作 成 した X 軸 Y 軸 Z 軸 のヒストグラムの 評 価 には 尖 度 と 歪 度 を 用 いた 尖 度 は 正 規 分 布 と 比 較 して 分 布 の 相 対 的 な 鋭 角 度 あるいは 平 坦 度 を 表 す 指 標 である 尖 度 が 正 の 値 をとると 尖 った 分 布 であり 負 の 値 なら 平 坦 性 を 表 す 値 が±1.5 の 間 ならばほぼ 標 準 的 な 分 布 と 考 え てよい 次 に 歪 度 は 分 布 の 平 均 周 辺 の 両 側 の 非 対 称 度 を 表 す 指 標 である 正 の 歪 度 は 対 象 となる 分 布 が 正 の 方 向 に 伸 びる 非 対 称 な 側 を 持 つことを 示 す 負 の 歪 度 はその 逆 である したがって 歪 度 が 0 であれば 対 象 分 布 を 示 す 値 が±1.5 の 間 であればほぼ 標 準 的 な 分 布 と 考 えてよい
12 3-4. set up margin( 以 下 SM) Set up error の 比 較 として set up margin も 参 考 値 として 求 めた SM の 設 定 にお いて 日 本 では らや van らの 式 がよく 引 用 される SM 式 を 構 成 する systematic error(σ) random error(σ)の 算 出 式 を 以 下 の 式 (1) (2)に 示 した Σ= σ= :ある 患 者 の set up error の 平 均 値 : 患 者 個 々の set up error の 平 均 値 の 平 均 値 :ある 患 者 の set up error の 標 準 偏 差 式 (1)は 患 者 ごとの SE の 平 均 値 の 標 準 偏 差 を 示 している 式 (2)は 患 者 ごとの SE の 標 準 偏 差 の 平 均 値 を 示 す さらに Stroom らの 式 を 以 下 に 示 す Set up margin[mm]=2.0σ+0.7σ (3) 松 本 らの によると SM を 精 度 よく 計 算 するためには 照 合 回 数 が 15 回 以 上 患 者 数 が 15 人 以 上 必 要 と 述 べている よって 本 研 究 では 照 合 回 数 が 15 回 以 上 の 患 者 を SM の 算 出 の 対 象 とした その 対 象 データを Table2 に 示 す Table2:SM の 算 出 に 用 いた 頭 頸 部 と 骨 盤 部 の 患 者 数 と 照 合 回 患 者 数 ( 人 ) 照 合 回 数 ( 回 ) 頭 頸 部 30 564 前 後 対 向 2 門 0 0 骨 盤 部 3DCRT 20 570 IMRT 20 651
13 4. 検 定 結 果 とヒストグラム 解 析 4-1. 各 軸 の 検 定 結 果 Table3 Table4 に 頭 頸 部 と 骨 盤 部 の SE の 平 均 値 と 標 準 偏 差 の 結 果 を 示 す Table5 には 各 軸 の P 値 の 結 果 を 示 す X(mm) Y(mm) Z(mm) 平 均 値 0.01-0.07 0.48 標 準 偏 差 2.07 2.23 2.54 Table3: 頭 頸 部 の SE の 平 均 値 標 準 偏 差 の 結 果 X(mm) Y(mm) Z(mm) 平 均 値 0.09 0.61 0.90 標 準 偏 差 2.28 1.65 2.64 Table4: 骨 盤 部 の SE の 平 均 値 標 準 偏 差 の 結 果 Table5: 各 軸 の P 値 の 結 果 X 軸 Y 軸 Z 軸 P 値 0.43 P<0.01 P<0.01 Table3 と Table4 の 結 果 を 比 較 すると 平 均 値 は X,Y,Z 軸 の 全 てで 頭 頸 部 の 方 が 小 さくなった 標 準 偏 差 は Y 軸 のみ 頭 頸 部 の 方 が 大 きくなった Table5 より Y 軸 Z 軸 において P 値 が1% 未 満 となり 有 意 差 有 りとなった
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15 Fig.5: 頭 頸 部 と 骨 盤 部 のヒストグラム(X 軸 ) Fig.6: 頭 頸 部 と 骨 盤 部 の 累 積 比 率 (X 軸 ) Table6:Fig.5 のヒストグラムの 尖 度 と 歪 度 頭 頸 部 骨 盤 部 尖 度 1.1-0.2 歪 度 1.5 1.1
16 Fig.5 は 頭 頸 部 と 骨 盤 部 の X 軸 のヒストグラムを 示 す Fig.6 は 頭 頸 部 と 骨 盤 部 の X 軸 の 累 積 比 率 を 示 しており Fig.5 の 比 率 をマイナス 方 向 から 足 し 合 わせていったも のである よって -10mm では 0%となり+10mm では 100%の 値 をとるグラフとな っている X 軸 の 頭 頸 部 と 骨 盤 部 の 平 均 値 はほぼ 同 じであり 尖 度 と 歪 度 がともに± 1.5 の 間 となった よって ヒストグラムは 正 規 分 布 に 近 いグラフとなっており Fig.5 のヒストグラムからわかるように 良 く 似 た 形 になっている したがって Fig.6 では 頭 頸 部 と 骨 盤 部 の 累 積 比 率 はほぼ 同 じグラフになった
17 Fig.7: 頭 頸 部 と 骨 盤 部 のヒストグラム(Y 軸 ) Fig.8: 頭 頸 部 と 骨 盤 部 の 累 積 比 率 (Y 軸 ) Table7:Fig.7 のヒストグラムの 尖 度 と 歪 度 頭 頸 部 骨 盤 部 尖 度 1.4 1.3 歪 度 1.6 1.6
18 Fig.7 は 頭 頸 部 と 骨 盤 部 の Y 軸 のヒストグラムを 示 す Fig.8 は 頭 頸 部 と 骨 盤 部 の Y 軸 の 累 積 比 率 を 示 す 尖 度 と 歪 度 が 共 に 良 く 似 た 値 となっているのでヒストグラム の 形 は 良 く 似 ている しかし 平 均 値 に 差 が 生 じているので Fig.7 のヒストグラムで はグラフにズレが 生 じている よって Fig.8 の-5~2mm 程 の 範 囲 に 差 が 生 じている
19 Fig.9: 頭 頸 部 と 骨 盤 部 のヒストグラム(Z 軸 ) Fig.10: 頭 頸 部 と 骨 盤 部 の 累 積 比 率 (Z 軸 ) Table8:Fig.9 のヒストグラムの 尖 度 と 歪 度 頭 頸 部 骨 盤 部 尖 度 1.0 0.6 歪 度 1.5 1.3
20 Fig.9 は 頭 頸 部 と 骨 盤 部 の Z 軸 のヒストグラムを 示 す Fig.10 は 頭 頸 部 と 骨 盤 部 の Z 軸 の 累 積 比 率 を 示 す 頭 頸 部 と 骨 盤 部 の 尖 度 と 歪 度 がともに±1.5 の 間 である し かし Fig.9 のヒストグラムからわかるように 骨 盤 部 のヒストグラムは 正 規 分 布 と は 少 し 異 なる 変 動 をしている よって Fig.10 の-2~5mm 程 の 範 囲 で 差 が 生 じた
21 4-2. 3D の 検 定 結 果 とヒストグラム 解 析 Table9 に 3D の SE の 平 均 値 と 標 準 偏 差 と P 値 の 結 果 を 示 す Table9:3D の SE の 平 均 値 標 準 偏 差 と P 値 の 結 果 平 均 値 (mm) 標 準 偏 差 (mm) 頭 頸 部 3.26 2.32 骨 盤 部 3.54 1.88 P 値 P<0.01 3D の 結 果 では 平 均 値 は 頭 頸 部 の 方 が 小 さくなり 標 準 偏 差 は 骨 盤 部 の 方 が 小 さくなった また P 値 は 1%となり 有 意 差 有 りとなった
22 Fig.11: 頭 頸 部 と 骨 盤 部 のヒストグラム(3D) Fig.12: 頭 頸 部 と 骨 盤 部 の 累 積 比 率 (3D) Fig.11 は 頭 頸 部 と 骨 盤 部 の 3D のヒストグラムを 示 した Fig.12 は 頭 頸 部 と 骨 盤 部 の 3D の 累 積 比 率 を 示 した Fig.11 では 骨 盤 部 が 少 し 右 にシフトしている Fig.12 では set up error が 0[mm]のときに 累 積 比 率 が 100[%]であるヒストグラムが 理 想 である よって グラフが 左 上 にある 程 より 良 い 結 果 となるので 頭 頸 部 の 方 が 精 度 が 高 いと いえる
23 4-3. SM Table10 にΣとσの 値 を 示 す また Table10 の 結 果 を 式 (3)に 代 入 して 求 めた SM の 値 を Table11 に 示 す Table10: 頭 頸 部 と 骨 盤 部 のΣとσの 値 X(mm) Y(mm) Z(mm) 頭 頸 部 Σ 1.1 1.3 0.9 σ 1.9 2.2 2.8 骨 盤 部 Σ 1.3 1.0 1.2 σ 1.8 1.2 2.5 Table11: 頭 頸 部 と 骨 盤 部 の SM の 値 X(mm) Y(mm) Z(mm) 頭 頸 部 3.5 4.1 3.8 骨 盤 部 3.9 2.8 4.2 Table11 の 数 値 を 少 数 点 以 下 第 一 位 で 四 捨 五 入 すると X 軸 と Z 軸 は 同 値 となるが Y 軸 は 頭 頸 部 が 4mm 骨 盤 部 が 3mm となり 1mm の 違 いがでた
24 5. 考 察 頭 頸 部 の 固 定 具 であるシェルは 上 から 患 者 を 押 さえつけての 固 定 なので 患 者 の 動 き を 制 御 しやすい また 患 者 一 人 一 人 に 合 ったシェルを 作 っているので 精 度 の 高 い 患 者 固 定 を 可 能 としている 一 方 骨 盤 部 の 固 定 具 であるバックロックやフットロック は 患 者 が 固 定 具 の 上 にのるだけなので 動 きやすい また 患 者 体 型 の 影 響 も 大 きい 以 上 のことが 骨 盤 部 より 頭 頸 部 の 方 が 平 均 値 の 値 が 小 さくなり 3D でも 頭 頸 部 の 方 が 良 い 結 果 になった 原 因 だと 考 えられる しかし 平 均 値 の 差 は 全 て 1mm 以 内 であ ったため 臨 床 的 な 差 はないといえる 平 均 値 は 全 て 頭 頸 部 の 方 が 小 さいのに 対 して 標 準 偏 差 は Table3,4,9 より Y 軸 と 3D では 骨 盤 部 より 頭 頸 部 の 方 が 大 きい 値 となっ た この 理 由 には 頭 頸 部 はシェルのマークを 目 印 にして set up しているが SE の 評 価 は X 線 透 過 像 による 画 像 照 合 によって 行 われていることが 原 因 だと 考 えられる また 患 者 の 顎 にシェルをかけてから 頭 を 固 定 していくというシェルの 固 定 手 順 にも Y 軸 方 向 に SE が 生 じる 原 因 となっているのではないかと 考 えられる そして 透 明 枕 は 患 者 の 頭 の 形 に 必 ず 一 致 しているとは 考 えにくく 素 材 も 堅 いため 患 者 の 頭 が 動 きやすいことも 考 えられる 以 上 により Y 軸 では 骨 盤 部 より 頭 頸 部 の 方 が 標 準 編 差 は 大 きくなり その 影 響 で 3D でも 頭 頸 部 の 方 が 大 きくなったと 考 えられる 最 後 に SM は Y 軸 だけ 骨 盤 部 より 頭 頸 部 の 方 が 大 きい 値 となった 結 果 に 対 しては 次 の ことが 考 えられる Table10 より Y 軸 のΣの 値 は 頭 頸 部 が 1.3mm 骨 盤 部 が 1.0mm であり σの 値 は 頭 頸 部 が 2.2mm 骨 盤 部 が 1.2mm であった この 結 果 が SM に 大 きくでた Σとσは 共 に SE の 標 準 偏 差 に 関 係 があり Table3,4 より Y 軸 の 標 準 偏 差 は 頭 頸 部 の 方 が 大 きい よって 頭 頸 部 の Y 軸 の 標 準 偏 差 が 骨 盤 部 より 大 きいことが Σとσの 値 を 大 きくし 結 果 として Y 軸 の SM が 骨 盤 部 より 頭 頸 部 の 方 が 大 きくなっ たと 考 えられる
25 6. 結 論 頭 頸 部 と 骨 盤 部 の SE の 統 計 学 的 有 意 差 解 析 の 結 果 Y 軸 Z 軸 に 有 意 差 を 検 出 した しかし それぞれの SE の 平 均 値 の 差 はわずかであり 臨 床 的 に 問 題 とならない 1mm 以 内 であった SM においては Y 軸 に 1mm の 差 が 生 じた これにより 頭 頸 部 固 定 において 体 軸 方 向 の 固 定 に 留 意 しなければならないことが 示 唆 された
26 7. 参 考 文 献 1) ICRU Report 50. Prescribing, Recordind and Reporting Photon Beam Therapy (supplement to ICRU Report 50). International Commission on Radiation Units and Measurements, Bethesda, MD, 1993. 2) ICRU Report 62. Prescribing, Recordind and Reporting Photon Beam Therapy. International Commission on Radiation Units and Measurements, Bethesda, MD, 1999. 3) Stroom JC, de Boer HC, Huizenga H, et al. Inclusion of geometrical uncertainties in radiotherapy treatment planning by means of coverage probability. Int J Radiat Oncol Biol Phys 1999; 43(4): 905-919. 4) van Herk M, Remeijer P, Rasch C, et al. The probability of correct target dosage: dose-population histograms for deriving treatment margins in radiotherapy. Int J Radiat oncol Biol Phys 2000; 47(4): 1121-1135. 5) van Herk M, Remei jer P, Lebesque JV. Inclusion of geometric uncertainties in treatment plan evaluation. Int J Radiat Oncol Biol Phys 2002; 52(5): 1407-1422. 6) 松 本 光 弘 太 田 誠 一 大 野 吉 美 小 縣 裕 二. 放 射 線 治 療 におけるセットアップ マージンに 関 する 検 討. 日 放 技 学 誌 2010;66(9):1186-1196
27 まとめ 7-1. 各 軸 と 3D の 検 定 結 果 のまとめ 1X 軸 以 外 で 頭 頸 部 と 骨 盤 部 の 間 に 統 計 学 的 有 意 差 が 生 じた 2 平 均 値 は 全 て 骨 盤 部 より 頭 頸 部 の 方 が 小 さい 値 となった 33D の 検 定 結 果 から 骨 盤 部 より 頭 頸 部 の 方 が 精 度 は 良 い 結 果 となった 4 標 準 偏 差 は Y 軸 と 3D では 頭 頸 部 より 骨 盤 部 の 方 が 大 きい 値 となった 7-2. SM のまとめ 5SM は Y 軸 だけ 頭 頸 部 より 骨 盤 部 の 方 が 大 きい 値 となった 尖 度 歪 度 Table9:Fig.5,7,9 のヒストグラムの 尖 度 X Y Z 頭 頸 部 1.1 1.4 1.0 骨 盤 部 -0.2 1.3 0.6 Table10:Fig.5,7,9 のヒストグラムの 歪 度 X Y Z 頭 頸 部 1.5 1.6 1.5 骨 盤 部 1.1 1.6 1.3
28 X 軸 以 外 で 頭 頸 部 と 骨 盤 部 の 間 に 統 計 学 的 有 意 差 が 生 じた 尖 度 の 値 が±1.5 の 間 であれば ほぼ 標 準 的 な 分 布 と 考 えてよい また 歪 度 の 値 も ±1.5 の 間 であればほぼ 左 右 対 称 と 評 価 できる X 軸 は 頭 頸 部 と 骨 盤 部 の 平 均 値 がほ ぼ 同 じであり 尖 度 と 歪 度 がともに±1.5 の 間 である よって ヒストグラムは 正 規 分 布 に 近 いグラフとなっており Fig.5 のように 良 く 似 た 形 になっている Fig.6 より 頭 頸 部 と 骨 盤 部 の 累 積 比 率 はほぼ 同 じグラフになっているために 統 計 学 的 有 意 差 が 生 じなかったと 考 えられる これは 頭 頸 部 と 骨 盤 部 はともに X 軸 の set up 精 度 が 高 いことを 示 している Y 軸 は 尖 度 と 歪 度 が 共 に 良 く 似 た 値 となっているのでヒスト グラムの 分 布 は 良 く 似 ている しかし 平 均 値 に 差 が 生 じているので Fig.7 よりグラ フにズレが 生 じている また Fig.8 の-5~2mm 程 の 範 囲 に 差 が 生 じ これが 統 計 学 的 有 意 差 に 繋 がったと 考 えられる この 考 察 は 後 の4で 詳 しく 述 べる Z 軸 は 頭 頸 部 と 骨 盤 部 の 尖 度 と 歪 度 がともに±1.5 の 間 である よって ヒストグラムは 正 規 分 布 に 近 いグラフとなっている Fig.9 のように 平 均 値 は 0.42mm の 差 があり グラフも ズレが 生 じている よって Fig.10 の-2~5mm 程 の 範 囲 で 差 が 生 じ これが 統 計 学 的 有 意 差 に 繋 がったと 考 えられる Fig.9 の 骨 盤 部 のヒストグラムは 正 規 分 布 とは 少 し 異 なる 変 動 をしている これは 骨 盤 部 の Z 軸 は 患 者 の 体 型 の 影 響 を 受 けやすいため set up error が 生 じやすいと 考 えられる
29 平 均 値 は 全 て 骨 盤 部 より 頭 頸 部 の 方 が 小 さい 値 となった 3D の 検 定 結 果 から 骨 盤 部 より 頭 頸 部 の 方 が 精 度 は 良 い 結 果 となった 頭 頸 部 の 固 定 具 であるシェルは 上 から 患 者 を 押 さえつけての 固 定 なので 患 者 の 動 き を 制 御 しやすい また 患 者 一 人 一 人 に 合 ったシェルを 作 っているので 精 度 の 高 い 患 者 固 定 を 可 能 としている 一 方 骨 盤 部 の 固 定 具 であるバックロックやフットロック は 患 者 が 固 定 具 の 上 にのるだけなので 動 きやすい また 患 者 体 型 の 影 響 も 大 きい 以 上 のことが 骨 盤 部 より 頭 頸 部 の 方 が 平 均 値 の 値 が 小 さくなり 3D でも 頭 頸 部 の 方 が 良 い 結 果 になった 原 因 だと 考 えられる 標 準 偏 差 は Y 軸 と 3D では 骨 盤 部 より 頭 頸 部 の 方 が 大 きい 値 となった 頭 頸 部 はシェルのマークを 目 印 にして set up しているが SE の 評 価 は X 線 透 過 像 に よる 画 像 照 合 によって 行 われるために SE が 生 じやすいと 考 えられる また 患 者 の 顎 にシェルをかけてから 頭 を 固 定 していくというシェルの 固 定 手 順 にも Y 軸 方 向 に SE が 生 じる 原 因 となっているのではないかと 考 えられる そして 透 明 枕 は 患 者 の 頭 の 形 に 必 ず 一 致 しているとは 考 えにくく 素 材 も 堅 いため 患 者 の 頭 が 動 きやす いことも 考 えられる 以 上 により Y 軸 では 骨 盤 部 より 頭 頸 部 の 方 が 標 準 編 差 は 大 きくなり その 影 響 で 3D も 頭 頸 部 の 方 が 大 きくなったと 考 えられる SM は Y 軸 だけ 頭 頸 部 より 骨 盤 部 の 方 が 大 きい 値 となった SM の 算 出 式 は 平 均 値 だけでなく 標 準 偏 差 も 大 きな 影 響 をもたらす X 軸 Z 軸 は 平 均 値 と 標 準 偏 差 は 共 に 頭 頸 部 の 方 が 小 さかったので SM も 頭 頸 部 の 方 が 小 さくなっ たと 考 えられる 一 方 Y 軸 の 標 準 偏 差 は 頭 頸 部 の 方 が 大 きく これが 原 因 となって SM が 大 きくなったと 考 えられる Y 軸 の 標 準 偏 差 は 骨 盤 部 より 頭 頸 部 の 方 が 大 きく なった 考 察 は4に 示 した 通 りである