ニッセイ 基 礎 研 究 所 212-11-16 落 ち 込 みが 続 くユーロ 圏 経 済 経 済 調 査 部 門 上 席 主 任 研 究 員 伊 藤 さゆり (3)3512-1832 ito@nli-research.co.jp 1. ユーロ 圏 危 機 国 の 情 勢 は 依 然 として 厳 しいが 危 機 対 策 に 成 長 と 雇 用 の 支 援 政 府 と 銀 行 の 信 用 力 の 相 互 作 用 を 断 ち 切 る 方 法 が 検 討 され 始 めたこと ECBがOMT 導 入 を 決 めたことが 危 機 が 制 御 不 能 な 状 態 に 陥 るとの 観 測 の 沈 静 化 に 効 果 を 発 揮 している 2. しかし 危 機 国 の 経 済 が 落 ち 込 み 債 務 問 題 が 悪 化 する 循 環 は 未 だ 止 まったわけではな い ドイツなど 健 全 国 の 経 済 も 域 外 の 需 要 鈍 化 の 影 響 もあり 勢 いを 失 っている 3. OMT 導 入 を 含 むECBの 非 標 準 的 政 策 は 銀 行 の 資 金 繰 りの 安 定 に 貢 献 したが 経 済 の 先 行 き 不 透 明 感 から 資 金 需 要 は 伸 びず 銀 行 も 貸 出 への 慎 重 姿 勢 を 崩 せない 4. 危 機 国 の 景 気 後 退 の 深 まりに 起 因 する 悪 循 環 に 歯 止 めを 掛 けるには 危 機 国 の 継 続 的 な 改 革 努 力 はもちろんのこと 成 長 戦 略 の 着 実 な 実 行 金 融 安 全 網 の 柔 軟 活 用 や 成 長 戦 略 を 通 じて 危 機 国 の 構 造 転 換 を 後 押 しすること 統 合 深 化 への 協 議 を 深 めて 域 内 の 銀 行 市 場 の 分 断 や 格 差 解 消 への 期 待 を 醸 成 することも 欠 かせない ユーロ 圏 と 独 仏 危 機 国 の 実 質 GDP 13 12 11 1 99 98 97 96 95 94 93 92 91 9 89 (28/1-3=1) ドイツ ユーロ 圏 スペイン アイルランド ポルトガル ギリシャ 8 9 1 11 12 ( 資 料 )eurostat 1
( 緊 張 緩 和 につながった2つの 決 定 ) ユーロの 危 機 は 皮 切 りとなったギリシャ 政 府 による 財 政 統 計 の 不 正 の 表 面 化 から3 年 にわたり 緊 張 の 高 まり と 政 策 対 応 の 効 果 による 緊 張 の 緩 和 というサイクルを 繰 り 返 してきた この 間 緊 張 の 高 まり のきっかけとなってきたのはギリシャである ギリシャは ユーロ 圏 と 国 際 通 貨 基 金 (IMF)による 支 援 体 制 に 入 った 後 も 支 援 プログラムが 想 定 する 軌 道 から 政 府 債 務 残 高 のGDP 比 が 大 きく 乖 離 し 続 け 無 秩 序 な 債 務 不 履 行 やユーロ 圏 からの 離 脱 という 思 惑 を 招 いて きた 今 月 12 日 のユーログループ(ユーロ 圏 財 務 相 会 合 )は ギリシャの 支 援 条 件 の 履 行 状 況 について 協 議 し ギリシャ 政 府 が 求 めていた 財 政 再 建 目 標 の 達 成 期 限 の2 年 延 長 を 認 める 点 では 合 意 した しかし 支 援 実 行 の 最 終 決 定 については 今 月 2 日 開 催 の 臨 時 会 合 に 先 送 りすることとなり 不 透 明 感 が 拭 い 去 れない 状 況 が 続 いている ユーロ 圏 内 でのドイツ 国 債 に 対 する 1 年 国 債 の 利 回 り 格 差 (スプレッド)は 市 場 の 緊 張 の 度 合 いを 把 握 する 指 標 の1つである 夏 場 以 降 全 体 にスプレッドは 縮 小 傾 向 にあった しかし 足 も とでは ポルトガルとスペインの 縮 小 傾 向 は 途 切 れつつある( 図 表 1) 両 国 は ともに 厳 しい 財 政 緊 縮 策 が 一 因 となって 経 済 が 落 ち 込 み 財 政 赤 字 の 削 減 に 手 間 取 る 悪 循 環 に 陥 っている スペイ ンが ESMに 銀 行 支 援 に 加 えて 財 政 面 での 支 援 を 要 請 するのも 時 間 の 問 題 という 見 方 も 払 拭 さ れていない 図 表 1 ユーロ 圏 内 の 対 ドイツ 1 年 国 債 利 回 り 格 差 (bp) 15 1 ホ ルトカ ル 5 8/7 9/1 9/7 1/1 1/7 11/1 11/7 12/1 12/7 スヘ イン アイルラント ヘ ルキ ー ( 資 料 )Datastream ( 緊 張 緩 和 につながった2つの 決 定 ) ギリシャ 支 援 プログラムは 修 整 を 繰 り 返 し 他 の 危 機 国 も 成 長 と 雇 用 の 落 ち 込 みが 財 政 金 融 の 問 題 解 決 を 遅 らせる 悪 循 環 への 不 安 が 消 えていない それでも ギリシャ 国 債 を 保 有 する 民 間 投 資 家 の 損 失 負 担 (PSI)の 議 論 をきっかけに 銀 行 の 損 失 や 財 政 危 機 拡 大 への 懸 念 が 広 がった 昨 年 夏 や ギリシャの 議 会 選 挙 を 巡 る 混 乱 で ユーロ 離 脱 問 題 が 現 実 味 を 帯 びた 今 年 5~6 月 のように 2
ユーロの 危 機 が 制 御 不 能 な 状 態 に 陥 るといった 不 安 に 火 が 付 く 気 配 はない ユーロ 市 場 のムードを 変 えたのは2つの 政 策 決 定 だ 1つは6 月 の 欧 州 連 合 (EU) 首 脳 会 議 に おける 危 機 対 策 の 軌 道 修 正 である ( 注 1) 同 会 議 では EUとして 成 長 と 雇 用 の 回 復 を 目 指 す 成 長 戦 略 で 合 意 財 政 緊 縮 と 銀 行 健 全 化 への 取 り 組 みが 景 気 の 落 ち 込 みを 招 き 財 政 と 銀 行 の 問 題 の 解 決 を 却 って 困 難 にする 悪 循 環 への 配 慮 を 示 した 同 時 に 年 末 までにユーロ 圏 の 統 合 を4つの 側 面 ( 財 政 同 盟 銀 行 同 盟 経 済 同 盟 政 治 同 盟 )から 深 める 工 程 表 をまとめ 政 府 と 銀 行 の 信 用 力 の 相 互 作 用 を 断 ち 切 るという 方 向 性 を 打 ち 出 した もう1つは 欧 州 中 央 銀 行 (ECB)による 新 たな 国 債 買 い 入 れプログラム OMTの 導 入 であ る ECBがOMTの 導 入 を 正 式 に 決 めたのは9 月 の 政 策 理 事 会 だが 7 月 26 日 にドラギ 総 裁 が ロンドンで 行 った 講 演 における 我 々の 使 命 の 範 囲 内 でできることは 何 でもやる という 発 言 をき っかけに 金 融 安 全 網 の 能 力 不 足 の 結 果 危 機 が 制 御 不 能 な 状 態 に 陥 るテール リスク( 発 生 する 確 率 が 低 いが 発 生 した 場 合 には 巨 額 の 損 失 をもたらすリスク)が 封 じ 込 められるという 期 待 が 膨 らんだ ( 注 1)Weekly エコノミスト レター212-7-2 号 6 月 首 脳 合 意 に 見 るユーロ 危 機 のこれから をご 参 照 下 さい ( 続 く 景 気 の 落 ち 込 み ) このようにユーロ 圏 の 危 機 対 策 として 成 長 と 雇 用 の 支 援 という 観 点 が 採 りいれられたこと 政 府 と 銀 行 の 信 用 力 の 相 互 作 用 を 断 ち 切 る 方 法 が 具 体 的 に 検 討 され 始 めたこと ECBがOMT 導 入 を 決 めたことは 危 機 が 制 御 不 能 な 状 態 に 陥 るとの 観 測 の 沈 静 化 に 効 果 を 発 揮 している しかし 危 機 国 の 経 済 が 落 ち 込 み 債 務 問 題 が 悪 化 する 循 環 は 未 だ 止 まったわけではない 15 日 に 公 表 された7~9 月 期 のユーロ 圏 GDP( 速 報 値 )は.1%のマイナス 成 長 と 落 ち 込 みが 続 い ていることが 確 認 された 世 界 同 時 不 況 による 景 気 後 退 局 面 を 脱 した 後 ユーロ 圏 では 北 部 を 中 心 とするドイツなど 対 外 債 権 国 と 高 水 準 の 対 外 債 務 を 抱 える 南 部 の 間 での 水 準 と 方 向 の 乖 離 すな わち 厳 しい 落 ち 込 みが 続 く 南 部 と 緩 やかながらも 拡 大 が 続 く 北 部 との 二 分 化 が 続 いていた 7 ~9 月 期 も ドイツは 前 期 比.2% は 同.3%と 二 大 国 が 持 ちこたえたが ポルトガル が 同 マイナス.8% スペインが 同 マイナス.3% が 同 マイナス.2%と 落 ち 込 みが 続 い た( 表 紙 図 表 参 照 ) ギリシャは 前 年 同 期 比 マイナス 7.2%ととりわけ 深 刻 である しかし 1 月 以 降 資 金 調 達 の 問 題 が 少 なく 財 政 緊 縮 の 影 響 が 相 対 的 に 小 さい 健 全 国 の 経 済 も 危 機 国 の 需 要 の 縮 小 に 米 中 など 域 外 の 需 要 鈍 化 が 加 わったことで 勢 いを 失 っている ユーロ 圏 の 実 質 GDPと 連 動 性 が 高 い 総 合 PMIや 欧 州 委 員 会 景 況 感 指 数 などの 低 下 は 続 き ドイツでも 代 表 的 なサーベイ 調 査 であるIfo 企 業 景 況 感 指 数 の 現 状 指 数 が 1 月 に 大 きく 低 下 した Ifo 調 査 では 6カ 月 先 の 見 通 しに 関 する 見 通 し 指 数 がようやく 下 げ 止 まったものの 金 融 市 場 の 参 加 者 を 対 象 とするため より 先 行 性 が 高 いZEW 指 数 では6カ 月 先 の 悪 化 を 見 込 む 割 合 が 前 月 よりも 増 えている 健 全 国 の 失 速 で 1~12 月 期 には 南 北 間 の 方 向 の 乖 離 は 修 正 されそうだが 南 北 の 経 済 が 共 に 拡 大 に 転 じた 場 合 と 異 なり 厳 しい 落 ち 込 みから 抜 け 出 せない 南 部 とその 影 響 で 成 長 が 停 止 落 ち 込 み 始 めた 北 部 という 構 図 は 望 ましいものでない 3
( 市 場 と 景 気 のギャップ ) 市 場 が 極 度 の 緊 張 状 態 から 脱 する 一 方 景 気 の 悪 化 が 止 まらない 一 因 は 域 外 経 済 の 成 長 鈍 化 が 特 に 輸 出 主 導 型 の 健 全 国 の 経 済 に 影 響 を 及 ぼしていることがあるが ユーロ 圏 固 有 の 要 因 としては (1) 危 機 国 における 過 剰 債 務 問 題 とその 原 因 である 競 争 力 回 復 のための 取 り 組 みが 短 期 的 に 景 気 を 下 押 しする 効 果 が 働 いていること (2) 年 央 以 降 の 政 策 が 成 長 戦 略 を 除 いて 景 気 への 直 接 的 な 影 響 が 限 られ 成 長 戦 略 の 景 気 下 支 え 効 果 も 規 模 が 限 られている 上 に 効 果 の 発 現 は 段 階 的 なものであるといった 要 因 を 挙 げることができる (1) 危 機 国 の 改 革 の 負 の 効 果 危 機 国 が 継 続 的 な 支 援 の 受 け 入 れ あるいは 信 用 力 の 回 復 のために 取 り 組 む 財 政 緊 縮 策 の 景 気 下 押 し 効 果 は スペイン 以 外 の 危 機 国 では 211 年 ~212 年 より 縮 小 するが 213 年 も 続 く 見 通 しだ( 図 表 2) なお 213 年 はが 財 政 赤 字 の 名 目 GDP 比 3%の 目 標 達 成 のため 増 税 や 歳 出 削 減 を 予 定 しており についても 財 政 緊 縮 策 の 景 気 下 押 し 効 果 が 続 く 見 通 しである 図 表 2 危 機 国 の 構 造 的 財 政 収 支 の 対 GDP 比 2-2 -4-6 -8-1 -12-14 ( 名 目 GDP 比 %) ギリシャ ポルトガル スペイン アイルランド -16 8 年 9 年 1 年 11 年 12 年 推 定 13 年 予 測 ( 注 ) 構 造 的 財 政 収 支 は 景 気 循 環 的 な 要 因 と 一 時 的 な 措 置 の 影 響 を 除 いた 財 政 赤 字 裁 量 的 な 財 政 政 策 により 変 動 する 213 年 1 月 発 効 予 定 の 新 たな 財 政 条 約 では 構 造 的 財 政 赤 字 が 名 目 GDPの.5%を 超 えないように 求 める 213 年 は 11 月 7 日 に 公 表 された 欧 州 委 員 会 の 秋 季 経 済 見 通 し 作 成 時 までに 公 表 された 政 策 に 基 づく 予 測 値 ( 資 料 ) 欧 州 委 員 会 秋 季 経 済 見 通 し 南 欧 では 財 政 緊 縮 とともに 競 争 力 回 復 のために 労 働 市 場 の 改 革 にも 取 り 組 んでいる 解 雇 規 制 の 緩 和 や 賃 金 決 定 の 柔 軟 化 などの 措 置 は 短 期 的 にはむしろ 失 業 の 増 大 と 所 得 の 減 少 につながる 危 機 国 では 新 規 投 資 促 進 のための 規 制 緩 和 も 進 めているが 経 済 の 先 行 き 不 透 明 感 に 金 融 環 境 の 厳 しさも 解 消 していないため 成 長 産 業 への 新 規 参 入 といった 動 きは 阻 まれやすい 危 機 国 にお ける 失 業 の 増 大 には 歯 止 めが 掛 かっておらず 特 に 若 年 層 の 失 業 率 はギリシャの 57% スペインの 54.2%など 全 体 の 失 業 率 の2 倍 以 上 と 危 機 のしわ 寄 せが 深 刻 である( 図 表 3) 失 業 の 長 期 化 も 目 4
だっており 危 機 の 社 会 的 なコストは 広 がり 続 けている 図 表 3 危 機 国 の 若 年 者 失 業 率 の 推 移 % 6 ギリシャ 5 4 スペイン ポルトガル 3 2 ユーロ 圏 1 ドイツ 99 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 11 12 ( 資 料 )eurostat (2) 危 機 対 策 の 景 気 刺 激 効 果 一 連 の 対 策 のうち 欧 州 金 融 安 定 ファシリティー(EFSF) 及 び 欧 州 安 定 メカニズム(ESM) という 金 融 安 全 網 は 過 剰 債 務 や 低 い 競 争 力 銀 行 システムの 不 良 債 権 といった 問 題 の 解 決 を 促 す ことにはなるが 解 決 策 ではない 景 気 を 直 接 的 に 押 し 上 げる 効 果 や 役 割 は 負 っていない 統 合 の 深 化 への 取 り 組 みは 財 政 と 銀 行 の 相 互 作 用 を 断 ち 切 ることに 加 えて ユーロの 制 度 的 な 欠 陥 を 修 復 し ユーロの 存 続 に 対 する 期 待 を 高 める 上 で 不 可 欠 だ ただ 危 機 国 の 資 金 繰 り 難 の 解 決 策 として 期 待 される 債 務 の 共 通 化 や 金 融 危 機 あるいは 経 済 成 長 のための 財 源 の 共 有 化 といった 領 域 にどこまで 踏 み 込 めるかは 未 知 数 である そもそも 統 合 の 深 化 は 向 こう 1 年 で 段 階 的 な 実 現 を 目 指 すものであり 短 期 的 な 景 気 押 し 上 げ 効 果 は 期 待 できるものではない ECBによる3 年 物 資 金 供 給 やOMTなどのいわゆる 非 標 準 的 政 策 も これまでのところ 景 気 浮 揚 効 果 を 発 揮 してはいない ECBは ユーロ 圏 の 銀 行 を 対 象 に 四 半 期 ごとに 行 う 銀 行 貸 出 サー ベイ の 直 近 の 調 査 を OMTの 導 入 公 表 後 の9 月 2 日 から 1 月 9 日 にかけて 実 施 している O MTのアナウンスメント 効 果 も 反 映 されていると 思 われる 同 サーベイの 結 果 には ユーロ 圏 全 体 の 銀 行 の 資 金 繰 りが 資 本 調 達 コストの 面 でも 市 場 アクセスの 面 でも7~9 月 期 に 大 きく 改 善 1~ 12 月 期 も 一 層 の 改 善 が 見 込 まれている 様 子 が 確 認 できる ( 注 2) しかし 経 済 の 先 行 き 不 透 明 感 から 銀 行 は 貸 出 基 準 を 厳 格 化 する 方 針 であり( 図 表 4) 企 業 の 設 備 投 資 資 金 の 需 要 も 冷 え 込 んでいる 銀 行 貸 出 の 増 加 は 期 待 できない 内 容 である ( 注 2)ドラギ 総 裁 は 11 月 の 政 策 理 事 会 後 の 記 者 会 見 における 質 疑 応 答 で OMTの 効 果 として MMFを 始 めとす る 域 外 からの 資 金 の 還 流 ユーロ 圏 の 銀 行 に 対 するエクスポージャーの 持 ち 直 しなどを 挙 げた 詳 細 は 経 済 金 融 フラッシュ No.12-123 11 月 ECB 政 策 理 事 会 : 市 場 の 緊 張 は 緩 和 も 経 済 活 動 は 弱 い をご 参 照 下 さい 5
% 7 6 5 4 図 表 4 ユーロ 圏 銀 行 の 企 業 向 けの 貸 出 条 件 DI* 厳 格 化 実 績 3 2 見 通 し 1-1 -2 緩 7 8 9 1 11 12 13 和 (*) 厳 格 化 と 答 えた 銀 行 の 割 合 と 緩 和 と 答 えた 銀 行 の 割 合 の 差 ( 資 料 )ECB 銀 行 貸 出 サーベイ 212 年 1 月 6 月 のEU 首 脳 会 議 で 合 意 した 成 長 戦 略 も EUの 単 一 市 場 を 完 成 に 近 づけるための 規 制 改 革 制 度 調 和 といった 項 目 を 含 むもので 短 期 的 かつ 直 接 的 な 景 気 刺 激 効 果 が 期 待 されるのは 総 額 12 億 ユーロの 投 資 促 進 策 に 限 られる 12 億 ユーロは EUの 国 民 総 所 得 (GNI GDP+ 海 外 からの 所 得 の 純 受 け 取 り)の1%に 相 当 し 1EUの 政 策 金 融 機 関 である 欧 州 投 資 銀 行 (EI B)の 融 資 の 6 億 ユーロ 2EU 財 政 の 域 内 格 差 是 正 のための 基 金 である 構 造 基 金 の 55 億 ユー ロ 3EUが 推 進 するインフラ プロジェクトを 請 け 負 う 民 間 事 業 体 が 発 行 するプロジェクト 債 を 通 じて 調 達 する 45 億 ユーロからなる 1 月 の 首 脳 会 議 では 成 長 戦 略 の 進 捗 状 況 の 評 価 も 行 われたが 1のEIBの 融 資 枠 拡 大 に 必 要 な 1 億 ユーロの 増 資 を 向 こう 数 週 間 以 内 に 実 施 する 予 定 2は 実 行 のための 構 造 基 金 のプロ グラムの 見 直 しを 実 施 中 と ともに 準 備 段 階 にあることが 明 らかにされた また 3のプロジェク ト 債 は EUの 成 長 戦 略 の 推 進 のために 新 たに 導 入 されるもので シニア 債 と 劣 後 債 のトランシェ に 分 割 して 発 行 する 劣 後 債 を 引 き 受 ける EIB の 資 産 の 劣 化 を 防 ぐため EU 財 政 が 保 証 を 供 与 する 設 計 となっているが EUの 欧 州 委 員 会 とEIBとのリスク 分 担 についての 合 意 文 書 の 調 印 は 今 月 7 日 に 終 わったところである EIBは 最 初 のプロジェクト 債 の 発 行 を 213 年 初 めと 見 込 ん でおり 1 億 ユーロの 増 資 を 受 けた 6 億 ユーロの 融 資 拡 大 も 213 年 の 融 資 計 画 に 盛 り 込 む 投 資 促 進 策 の 効 果 は 213 年 入 り 後 に 少 しずつ 表 れてくることになりそうだ ( 危 機 国 の 景 気 悪 化 による 債 務 問 題 の 悪 化 に 歯 止 めを 掛 けることが 優 先 すべき 課 題 ) EUの 欧 州 委 員 会 は 今 月 7 日 に 公 表 した 秋 季 経 済 見 通 し で ユーロ 圏 全 体 の 成 長 見 通 しを 今 年 1~12 月 期 は 前 期 比.2%のマイナス 213 年 1~3 月 期 は 同.1%へのプラス 転 化 を 予 測 するが 4~6 月 期 以 降 の 拡 大 テンポも 緩 慢 で 213 年 年 間 の 成 長 率 を.1%に 半 年 前 の 1.%か ら 大 きく 下 方 修 正 した 6
欧 州 中 央 銀 行 (ECB)/ユーロシステムが 四 半 期 ごとに 公 表 する 経 済 見 通 しも 来 月 6 日 公 表 予 定 で 四 半 期 ごとの 内 訳 は 公 表 されないため 景 気 の 反 転 時 期 や 回 復 ペースについての 直 近 の 判 断 は 必 ずしも 明 確 ではない ただ 今 月 の 政 策 理 事 会 の 声 明 文 では 今 年 末 までに 景 気 が 持 ち 直 す 兆 候 はない との 文 言 を 挿 入 ドラギ 総 裁 も 質 疑 応 答 で 見 通 しを 前 回 9 月 (213 年 の 成 長 率 中 央 値 で.5%)から 下 方 修 正 する 可 能 性 を 示 唆 している 欧 州 委 員 会 見 通 し 同 様 に 辛 うじて2 年 連 続 のマイナス 成 長 を 回 避 するといった 見 通 しとなりそうだ 注 意 しなければいけないのは EU 機 関 によるこれらの 見 通 しは 金 融 安 全 網 が 危 機 の 沈 静 化 と 拡 大 阻 止 に 十 分 な 役 割 を 果 たすことや 統 合 深 化 への 取 り 組 みなどの 約 束 した 政 策 を 実 行 に 移 すこ と さらに 外 部 環 境 についても 中 国 経 済 の 持 ち 直 し 米 国 経 済 の 緩 やかな 回 復 と 財 政 の 崖 回 避 を 前 提 としていることだ 外 部 環 境 が 想 定 よりも 下 振 れた 場 合 自 律 的 な 回 復 力 に 乏 しいユーロ 圏 の 成 長 の 回 復 時 期 が 213 年 1~3 月 期 よりもさらに 後 連 れする 可 能 性 が 高 まる ユーロ 圏 の 危 機 対 策 はテールリスクの 封 じ 込 めにとりあえず 成 果 を 収 めた 段 階 だが 先 行 きには 課 題 が 山 積 している その 中 で 危 機 国 の 景 気 後 退 が 深 まり 債 務 問 題 が 一 層 悪 化 し 社 会 的 なコ ストが 増 大 する 事 態 に 歯 止 めをかけることは 優 先 課 題 だ 危 機 国 の 継 続 的 な 改 革 努 力 はもちろんの こと 成 長 戦 略 の 着 実 な 実 行 金 融 安 全 網 の 柔 軟 活 用 や 成 長 戦 略 を 通 じて 危 機 国 の 構 造 転 換 を 後 押 しすること 統 合 深 化 への 協 議 を 深 めて 域 内 の 銀 行 市 場 の 分 断 や 格 差 解 消 への 期 待 を 醸 成 することも 欠 かせない (お 願 い) 本 誌 記 載 のデータは 各 種 の 情 報 源 から 入 手 加 工 したものであり その 正 確 性 と 安 全 性 を 保 証 するものではありません また 本 誌 は 情 報 提 供 が 目 的 であり 記 載 の 意 見 や 予 測 は いかなる 契 約 の 締 結 や 解 約 を 勧 誘 するものでもありません 7