糖尿病診療における早期からの厳格な血糖コントロールの重要性



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目次

認 定 看 護 師 専 門 看 護 師 集 中 ケア 新 生 児 集 中 ケア A 呼 吸 ケアチーム 加 算 150 点 呼 吸 ケアチームの 設 置 救 急 看 護 小 児 救 急 看 護 慢 性 呼 吸 器 疾 患 看 護 急 性 重 症 患 者 看 護 A 247 認 知 症

17 外 国 人 看 護 師 候 補 者 就 労 研 修 支 援 18 看 護 職 員 の 就 労 環 境 改 善 運 動 推 進 特 別 20 歯 科 医 療 安 全 管 理 体 制 推 進 特 別 21 在 宅 歯 科 医 療 連 携 室 整 備 22 地 域 災 害 拠 点 病

頸 がん 予 防 措 置 の 実 施 の 推 進 のために 講 ずる 具 体 的 な 施 策 等 について 定 めることにより 子 宮 頸 がんの 確 実 な 予 防 を 図 ることを 目 的 とする ( 定 義 ) 第 二 条 この 法 律 において 子 宮 頸 がん 予 防 措 置 とは 子 宮

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主 要 な が ん 治 療 に つ い て 入 院 に か か る 医 療 費 の 支 払 い か ら 計 算 し た も の で す 例 え ば 胃 が ん に つ い て は 平 均 入 院 費 は 総 額 約 万 円 で 自 己 負 担 額 は 約 3 3 万 円 程 度 必 要

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母 子 医 療 対 策 費 462 (313,289) 国 4,479 1 不 妊 治 療 助 成 事 業 8,600 不 妊 治 療 費 用 の 一 部 を 助 成 し 経 済 的 負 担 の 軽 減 を 図 る 230, ,608 不 妊 治 療 費 の 増 加 による 増 額 分

第 3 回 肥 満 質 質 基 本 形 酸 質 胃 腸 酵 素 酸 分 解 小 腸 吸 収 血 中 注 入 酸 各 細 胞 質 材 料 使 不 要 質 分 解 再 利 用 糖 不 足 酸 肝 臓 窒 素 除 去 糖 生 成 源 低 血 糖 時 補 充 大 栄 養 素 脂 肪 炭 水 化 物 大 栄

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5 月 27 日 4 子 宮 頸 癌 1 GIO: 子 宮 頸 癌 の 病 態 診 断 治 療 について 理 解 する SBO: 1. 子 宮 頸 癌 の 発 癌 のメカニズムや 発 癌 過 程 について 説 明 できる 2. 子 宮 頸 癌 および 前 癌 病 変 の 分 類 ついて 説 明 でき

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全設健発第     号

ウ 一 日 当 たりの 摂 取 目 安 量 粒 ~ 粒 お 召 し 上 がりください という 旨 の 幅 の 両 端 をもって 表 示 することも 可 能 です エ 栄 養 成 分 の 量 及 び 熱 量 ( 栄 養 成 分 表 示 ) 一 日 の 摂 取 目 安 量 当 たりの 栄 養 成 分 の

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送 信 局 を 電 気 通 信 事 業 者 に 貸 し 付 けるとともに 電 気 通 信 事 業 者 とあらかじめ 契 約 等 を 締 結 する 必 要 があること なお 既 に 電 気 通 信 事 業 者 において 送 信 局 を 整 備 している 地 域 においては 当 該 設 備 の 整 備

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75 歳 以 上 の 方 の 後 期 高 齢 者 医 療 制 度 75 歳 になると 全 ての 方 が 後 期 高 齢 者 医 療 制 度 に 加 入 して 医 療 を 受 けます 後 期 高 齢 者 医 療 制 度 は 東 京 都 後 期 高 齢 者 医 療 広 域 連 合 が 主 体 となり 区

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厚 生 年 金 は 退 職 後 の 所 得 保 障 を 行 う 制 度 であり 制 度 発 足 時 は 在 職 中 は 年 金 を 支 給 しないこととされていた しかしながら 高 齢 者 は 低 賃 金 の 場 合 が 多 いと いう 実 態 に 鑑 み 在 職 者 にも 支 給 される 特 別

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( 別 紙 ) 以 下 法 とあるのは 改 正 法 第 5 条 の 規 定 による 改 正 後 の 健 康 保 険 法 を 指 す ( 施 行 期 日 は 平 成 28 年 4 月 1 日 ) 1. 標 準 報 酬 月 額 の 等 級 区 分 の 追 加 について 問 1 法 改 正 により 追 加

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国 家 公 務 員 の 年 金 払 い 退 職 給 付 の 創 設 について 検 討 を 進 めるものとする 平 成 19 年 法 案 をベースに 一 元 化 の 具 体 的 内 容 について 検 討 する 関 係 省 庁 間 で 調 整 の 上 平 成 24 年 通 常 国 会 への 法 案 提

一 方 でも 自 分 から 医 師 に 症 状 の 変 化 について 伝 えている 割 合 は シーズン 前 では 満 足 な と 同 じ %でしたが シーズン 開 始 直 後 から 高 くなり シーズン 後 半 では の 31%を 上 回 り 42%となっています (グラフ 3) ギャップ 3:

ほかに パート 従 業 員 らの 厚 生 年 金 加 入 の 拡 大 を 促 す 従 業 員 五 百 人 以 下 の 企 業 を 対 象 に 労 使 が 合 意 すれば 今 年 十 月 から 短 時 間 で 働 く 人 も 加 入 できる 対 象 は 約 五 十 万 人 五 百 人 超 の 企 業

平 成 25 年 度 修 繕 費 事 業 計 画 書 様 式 E 自 動 車 事 業 費 ( 款 ) 営 業 費 用 ( 項 ) 車 両 保 存 費 ( 目 ) 車 両 修 繕 費 ( 節 ) 自 動 車 本 部 運 輸 課 車 両 係 ( ) 担 当 者 名 堤 智

Transcription:

2016 年 6 月 23 日 放 送 新 しい 糖 尿 病 治 療 薬 の 使 い 方 虎 の 門 病 院 内 分 泌 代 謝 科 部 長 森 保 道 糖 尿 病 の 90% 以 上 を 占 める 2 型 糖 尿 病 は インスリン 作 用 の 障 害 とインスリン 分 泌 不 全 の 2 つの 病 態 によって 血 糖 調 節 機 構 が 破 たんし 慢 性 の 高 血 糖 を 呈 する 疾 患 です インスリン 抵 抗 性 は 肥 満 や 内 臓 脂 肪 の 蓄 積 および 遺 伝 体 質 がその 要 因 であり 適 切 な 体 重 となるような 食 事 療 法 および 運 動 療 法 が 病 態 の 改 善 に 有 効 であります 一 方 インス リン 分 泌 不 全 には 遺 伝 的 要 因 に 加 えて 高 血 糖 による 膵 β 細 胞 障 害 があり 糖 毒 性 とよばれるように 高 血 糖 そのものが 膵 β 細 胞 でのインスリンの 合 成 や 分 泌 を 障 害 する ことが 知 られています したがって 2 型 糖 尿 病 の 治 療 には 適 切 な 生 活 習 慣 を 指 導 す るとともに 病 態 に 適 した 薬 剤 を 選 択 し 糖 尿 病 発 症 の 早 期 から 良 好 な 血 糖 コントロー ルを 維 持 していくことが 薦 められます 糖 尿 病 治 療 薬 には 飲 み 薬 である 経 口 血 糖 降 下 薬 と 注 射 薬 であるインスリン 薬 および GLP-1 受 容 体 作 動 薬 があります 本 日 は 経 口 血 糖 降 下 薬 のお 話 しを 中 心 に 新 しい 治 療 薬 の 使 い 方 をご 紹 介 していきます 経 口 血 糖 降 下 薬 に 関 しては 我 が 国 において 長 い 間 スルホニル 尿 素 薬 略 して SU 薬 が 主 に 使 用 されてきました SU 薬 は 膵 臓 からのインスリン 分 泌 を 強 力 に 刺 激 し 優 れた 血 糖 改 善 効 果 を 持 ちます 英 国 で 行 われた UKPDS という 大 規 模 臨 床 試 験 においても その 長 期 有 効 性 が 実 証 されています しかしながら SU 薬 は 低 血 糖 を 生 じやすい 体 重 増 加 が 多 い 長 期 間 の 使 用 で 徐 々に 効 果 が 低 下 してくる 二 次 無 効 がみられる 点 などか ら 近 年 使 用 が 減 少 しております 先 の UKPDS を 含 めた 欧 米 の 大 規 模 臨 床 試 験 などから メトホルミンを 主 体 としたビグアナイド 薬 について 血 糖 降 下 作 用 のほかに 心 筋 梗 塞 な

どの 大 血 管 合 併 症 予 防 効 果 があることが 示 さ れおり 欧 米 のガイド ラインでは 2 型 糖 尿 病 の 第 一 選 択 薬 としてメ トホルミンが 挙 げられ るようになっています このため 我 が 国 におい ても 近 年 メトホルミン の 有 用 性 が 見 直 され メトホルミンを 使 用 さ れている 患 者 さんが 大 変 増 加 しております メトホルミンには 主 に 肝 臓 でのインスリン 抵 抗 性 の 改 善 作 用 があります 単 独 使 用 では 低 血 糖 のリスクが 非 常 に 低 く また 体 重 を 増 やさない 点 が SU 薬 よりも 優 れております メトホルミンの 副 作 用 はほとんどが 消 化 器 症 状 ( 食 欲 不 振 嘔 吐 下 痢 味 覚 異 常 など) です ただしメトホルミンは 腎 臓 排 泄 性 の 薬 剤 であり 高 齢 者 や 腎 機 能 低 下 の 症 例 心 臓 や 肺 の 機 能 が 低 下 した 症 例 では 血 中 濃 度 が 高 まり 乳 酸 アシドーシスという 重 い 副 作 用 を 生 じるリスクがあります ので これらの 症 例 には 使 用 を 避 けることが 重 要 です また 日 頃 使 用 している 患 者 さんにお いても 発 熱 下 痢 がみられる 場 合 や ヨード 造 影 剤 使 用 前 後 で は 一 時 的 に 中 止 するように 指 導 しています メトホルミンはいわば 古 くて 新 しい 経 口 薬 といえるでしょ う これからお 話 しします 経 口 薬 は 実 際 に 新 しい 薬 剤 です 消 化 管 由 来 のインクレチン(GLP 1 や GIP)の 働 きを 高 め 血 糖 改 善 作 用 のある DPP4 阻 害 薬 が 導 入 され 低 血 糖 や 体 重 増 加 の 少 ない 薬 剤 として 普 及 が 進 んでおります また 全 く 新 しい 機 序 の 薬 剤 として 腎 臓 でのブドウ 糖 再 吸 収 を 抑 制 し 尿 糖 排 泄 を 促 進 して 血 糖 降 下 作 用 を 持 つ SGLT2 阻 害 薬 が 開 発 され 臨 床 現 場 での 導 入 が 始 まっています

DPP-4 阻 害 薬 について 御 紹 介 していきます 食 後 に 小 腸 から 分 泌 される GLP 1(グルカゴン 様 ペプチド 1) と GIP(ガストリックインヒビ トリーポリペプチド)はインク レチンとよばれ 食 後 の 膵 β 細 胞 からの 速 やかなインスリン 分 泌 を 促 す 働 きがあります DPP-4 阻 害 薬 はインクレチンを 分 解 するジペプチジルペプチ ダーゼ 4(DPP-4)を 阻 害 し 主 に GLP-1 によるインスリン 分 泌 促 進 作 用 を 高 める 薬 剤 です 血 糖 値 が 高 いときに 限 ってインスリン 分 泌 を 促 進 するため 低 血 糖 を 生 じにくいことと 血 糖 を 上 昇 させるグルカゴンの 過 剰 な 分 泌 が 抑 えられる 利 点 が 知 られています したがっ て 空 腹 時 血 糖 値 と 食 後 血 糖 値 のいずれも 改 善 する 作 用 がある DPP4 阻 害 薬 は シタグリ プチンであるジャヌビア やグラクティブが 2009 年 に 発 売 されたことを 皮 切 りに つぎつぎと 発 売 され 現 在 毎 日 服 用 する タイプの DPP4 阻 害 薬 は 7 種 類 が 発 売 されており また 我 が 国 の 経 口 糖 尿 病 薬 で 最 も 使 用 頻 度 の 高 い 薬 になっています DPP4 阻 害 薬 は 単 独 で 使 用 した 際 の 低 血 糖 が 非 常 に 少 な いこと 体 重 が 増 えにくいこと また 腎 機 能 の 低 下 した 症 例 にも 使 用 できる 薬 剤 肝 機 能 が 低 下 した 症 例 にも 使 用 できる 薬 剤 があります いずれの DPP4 阻 害 薬 にも 共 通 した 問 題 として SU 薬 との 併 用 の 際 に 重 い 低 血 糖 症 を 生 じることがある 点 です 日 本 糖 尿 病 学 会 から 注 意 喚 起 していますように SU 薬 との 併 用 に 際 しては SU 薬 を 適 切 な 用 量 まで 減 量 するなどの 注 意 が 必 要 となります

この DPP4 阻 害 薬 に 週 1 回 のタイプが 新 たに 加 わりました 2015 年 にトレラグリプ チンであるザファテック 錠 そしてオマリグリプチンであるマリゼブがいずれも 発 売 開 始 となりました 週 1 回 の 服 用 にもかかわらず 一 日 1 回 から 2 回 服 用 する 従 来 の DPP4 阻 害 薬 と 比 較 して 同 等 の 血 糖 改 善 効 果 を 持 っています さまざまな 用 途 が 想 定 されます が 服 用 管 理 の 困 難 な 高 齢 者 糖 尿 病 の 患 者 さんには 大 変 朗 報 であると 考 えています 忙 しい 働 き 盛 りの 会 社 員 の 方 にもわずかな 手 間 で 糖 尿 病 を 改 善 する 新 薬 として 期 待 が 寄 せられています DPP4 阻 害 薬 はメトホルミンと 併 用 した 場 合 には よりよい 血 糖 改 善 効 果 があり 体 重 増 加 が 少 なく 低 血 糖 も 生 じにくい 組 み 合 わせです 2015 年 にビルダグリプチンと メトホルミンの 合 剤 であるエクメット 配 合 錠 が 発 売 されました このような 合 剤 は 患 者 さんの 服 薬 アドヒアランスを 向 上 することが 期 待 されています ただし メトホルミ ンの 使 用 上 の 注 意 がそのまま 当 てはまりますので 禁 忌 の 症 例 や 一 時 中 止 の 対 応 をよく ご 確 認 ください メトホルミンのほかにも DPP4 阻 害 薬 で 治 療 されている 患 者 さんの 血 糖 管 理 をより 強 化 する 方 法 があります 先 のナテグリニド ミチグリニドなどの 速 効 型 インスリン 分 泌 促 進 薬 (いわゆるグリニド 薬 )は, 膵 臓 β 細 胞 の SU 受 容 体 にすばやく かつ 短 時 間 作 用 する 速 効 型 インスリン 分 泌 促 進 薬 です SU 薬 と 比 較 して 作 用 が 緩 やかで 作 用 時 間 も 短 いため DPP4 阻 害 薬 との 併 用 においては SU 薬 と 比 べて 低 血 糖 や 体 重 増 加 がより 生 じにくく 有 効 な 血 糖 低 下 作 用 が 認 められることがわかってきました 肥 満 や 高 インスリン 血 症 を 認 める 糖 尿 病 患 者 さんでは DPP4 阻 害 薬 とメトホルミン にα グルコシダーゼ 阻 害 薬 を 加 える 方 法 があります α グルコシダーゼは ショ 糖 な ど 二 糖 類 の 水 解 を 阻 害 する 酵 素 群 である この 酵 素 を 阻 害 することにより 腸 管 から 糖 質 の 吸 収 を 遅 くし 食 後 の 急 激 な 血 糖 の 上 昇 を 抑 制 し 食 後 の 高 インスリン 血 症 を 緩 和 す る 作 用 がある 肥 満 や 高 インスリン 血 症 を 認 める 2 型 糖 尿 病 患 者 さんに 新 しい 治 療 選 択 肢 が 出 てき ました それが SGLT2 阻 害 薬 です 腎 臓 の 近 位 尿 細 管 にあるブドウ 糖 輸 送 蛋 白 である SGLT2 の 働 きを 抑 え 糸 球 体 で 濾 過 された 原 尿 に 含 まれるブトウ 糖 の 大 半 を 尿 糖 として 排 泄 する 薬 剤 です 一 部 の 海 外 では 2012 年 頃 から 使 用 されていましたが 2014 年 に 日 本 で 最 初 の SGLT 阻 害 薬 であるイプラグリフロジン スーグラ 錠 が 発 売 され それ 以 降 我 が 国 では 6 剤 の SGLT2 阻 害 薬 が 順 次 導 入 されています SGLT2 阻 害 薬 は 血 糖 値 の 低 下 作 用 に 加 えて 血 圧 低 下 作 用 体 重 減 少 効 果 を 持 っています 長 期 の 有 効 性 に 関 する 重 要 な 報 告 が 2015 年 に 発 表 されました エンパグリフロジンという SGLT2 阻 害 薬 を 使 用

したハイリスクの 2 型 糖 尿 病 において プラセボと 比 較 して 心 不 全 などの 心 血 管 イベン トの 減 少 と 死 亡 率 低 下 が 報 告 されました このほかにもダパグリフロジンやカナグリフ ロジンでも 現 在 臨 床 研 究 が 進 められており その 成 果 が 待 たれるところです SGLT2 阻 害 薬 を 安 全 に 使 用 する うえでいくつかの 注 意 点 があります 多 量 の 尿 糖 に 伴 う 浸 透 圧 利 尿 のために 脱 水 症 や 起 立 性 低 血 圧 の 恐 れがあり ます 使 用 中 の 患 者 さ んにはこまめに 水 分 補 給 をおこなうよう 指 導 してください また 尿 路 感 染 症 や 性 器 感 染 症 の 発 生 が 高 まるリスク もあり 自 覚 症 状 が 出 た 際 には 医 療 機 関 の 受 診 を 促 してください 尿 糖 が 多 量 に 排 泄 されるため 低 栄 養 にな るリスクがあります 高 齢 者 の 患 者 さんにはサルコペニアを 促 進 する 懸 念 もありますの で 栄 養 状 態 や 筋 量 などの 状 態 を 鑑 みて 慎 重 に 使 用 することが 重 要 です 本 日 御 紹 介 した 経 口 薬 のほかにも 1 週 間 に 1 回 の 注 射 でよい GLP 1 受 容 体 作 動 薬 それから 新 しい 持 効 型 インスリンな どの 糖 尿 病 新 薬 が 登 場 しています その 紹 介 はまたの 機 会 とさせてい ただきますが いずれも 患 者 さんの 病 態 やライフスタイルを 十 分 に 考 慮 して より 適 した 薬 剤 を 選 択 いただ くことが 糖 尿 病 治 療 を 長 く 安 全 に 続 けていただく 秘 訣 となります 具 体 的 な 患 者 さんのご 相 談 については 当 院 の 医 療 連 携 部 や 内 科 外 来 を 通 じ てご 紹 介 いただきますようお 願 いい たします