パイプの 溶 接 (その3) JFE エンジニアリング 株 式 会 社 勝 木 誠 7. 配 管 導 管 溶 接 特 有 の 周 辺 技 術 配 管 導 管 溶 接 の 現 場 では パイプ 特 有 の 周 辺 技 術 が 多 々 使 用 されている その 中 のいくつかの 技 術 を 以 下 に 紹 介 する 7-1. 開 先 加 工 パイプは 通 常 メーカーからベベル 角 度 30 程 度 に 加 工 されて 出 荷 されており そのままの 開 先 で 使 用 する 場 合 には 開 先 面 のさびなどを 除 去 する 目 的 で またルート 面 を 均 一 に 加 工 する 目 的 で グラ インダ 成 形 することが 多 い しかし 定 尺 以 外 の 短 い 寸 法 ( 切 り 管 と 称 する)を 使 用 する 場 合 には 切 断 開 先 加 工 が 必 要 となる 一 般 に 開 先 加 工 は 手 動 ガス 切 断 もしくはパイプ 専 用 の 半 自 動 ガス 切 断 機 で 切 断 し グラインダで 開 先 面 を 取 り 直 すことが 多 い 一 方 切 り 管 を 大 量 に 使 用 する 場 合 や 特 殊 な 開 先 で 溶 接 する 場 合 および 精 度 の 良 い 開 先 を 確 保 し たい 場 合 などでは 専 用 の 機 械 式 開 先 加 工 機 で 加 工 するケースも 多 く 見 られる パイプ 端 面 を 開 先 加 工 する 開 先 加 工 機 の 一 例 を 図 1 1) に 切 断 と 開 先 加 工 を 同 時 に 実 施 可 能 な 開 先 加 工 機 の 一 例 を 図 2 1) に 示 す 図 1 開 先 加 工 機 ( 小 径 管 の 端 面 加 工 ) 図 2 開 先 加 工 機 ( 切 断 開 先 加 工 同 時 施 工 ) また 比 較 的 大 径 管 ではパイプは 必 ずしも 円 形 ではないので 均 一 なルート 面 確 保 を 目 的 として 内 面 倣 いの 開 先 加 工 機 も 実 用 化 されている( 図 3) 1
図 3 開 先 加 工 機 ( 大 径 管 の 内 面 倣 い 加 工 ) 7-2. 開 先 合 わせ( 芯 出 し) 方 法 パイプの 開 先 合 わせ( 芯 出 し)は 対 象 が 丸 いパイプであり 同 時 にエルボ T レジューサ 等 の 配 管 部 品 も 多 々 使 用 されることから 適 当 なジグが 必 要 となる またスペーサなどを 用 いて ルート ギャップを 適 切 にセットすること 以 外 に パイプではパイプの 周 長 差 がそのまま 開 先 部 の 目 違 いにつ ながるので パイプの 周 長 管 理 も 開 先 合 わせの 重 要 な 項 目 となる このパイプの 周 長 差 が 過 度 に 大 き い 場 合 には パイプの 組 合 せを 替 えるなどの 処 置 が 必 要 となり またパイプの 周 長 差 が 比 較 的 少 ない 場 合 には 目 違 いを 均 等 に 振 り 分 けることが 必 要 になる これらの 目 違 いを 防 止 し 開 先 合 わせを 円 滑 に 行 うために 様 々なクランプジグが 開 発 されている もっとも 簡 便 な 開 先 合 わせ 方 法 は 馬 と 呼 ばれるストロングバックによる 開 先 合 わせである しか しこのストロングバック 方 式 は パイプの 板 厚 が 比 較 的 薄 いこともあり ストロングバックの 溶 接 跡 の 処 理 方 法 問 題 から 使 用 を 制 限 しているケースも 多 い クランプジグは 管 への 装 置 位 置 により 外 面 (エキスターナル) 方 式 と 内 面 (インターナル) 方 式 に 大 別 される さらにその 作 動 源 により ボルト ハンドレバー ジャッキなどを 用 いた 人 力 式 と 空 気 圧 や 油 圧 で 作 動 する 機 械 式 に 分 類 される パイプの 開 先 合 わせでの 力 の 伝 達 や 外 面 からの 溶 接 作 業 を 考 慮 すると 内 面 クランプの 方 が 優 れてい るが 小 径 管 では 管 の 出 し 入 れに 問 題 が 有 り 管 径 や 施 工 環 境 によっての 使 い 分 けが 必 要 となる 比 較 的 小 径 管 の 外 面 クランプ(ボルト 式 )の 一 例 を 図 4 に 大 径 の 外 面 クランプ(ボルト 式 )の 一 例 を 図 5 に またクランプ 部 分 に 裏 当 て 銅 板 を 装 着 した 自 動 溶 接 用 の 内 面 クランプ( 空 気 圧 式 )の 一 例 を 図 6 に 示 す 図 4 小 径 管 ボルト 式 外 面 クランプ 2
図 5 大 径 管 ボルト 式 外 面 クランプ 図 6 裏 当 て 銅 板 を 装 着 した 空 気 圧 式 内 面 クランプ 7-3.バックシールド ステンレス 鋼 配 管 を 初 めとして アルミニウム 合 金 配 管 Cr 量 の 多 い Cr-Mo 鋼 配 管 チタン 合 金 配 管 などで 初 層 ティグ 溶 接 を 行 う 場 合 には 内 面 酸 化 を 防 ぐ 目 的 でバックシールドを 行 う 必 要 がある バックシールドには 通 常 不 活 性 ガスであるアルゴンが 一 般 的 に 使 用 されている 小 径 管 のバックシールドでは 管 の 両 端 をふさぎ 管 内 面 を 全 体 置 換 する 方 法 があり バックシール ドを 簡 便 に 実 施 するジグも 市 販 されている( 図 7 1) ) しかしながら 管 径 がある 程 度 大 きい 場 合 や 全 体 置 換 をする 配 管 長 さが 長 い 場 合 には バックシ ールドに 必 要 なアルゴンガス 量 が 多 大 となり 局 部 バックシールド 方 法 が 必 要 となる バックシール ド 方 法 は 施 工 会 社 が 色 々なジグを 考 案 し 現 場 で 使 用 しており また 色 々なタイプのジグ 類 も 市 販 され ている 例 えば 図 8 1) に 示 すように 溶 接 部 を 局 部 的 に 仕 切 りその 中 にガスを 流 すタイプや 同 様 な タイプで 仕 切 り 部 がガスバックになっているものや 仕 切 り 部 を 水 溶 性 のペーパーで 構 築 し 後 で 洗 い 流 すものなどがある バックシールドのポイントは 下 記 の 点 が 挙 げられる 1 溶 接 する 箇 所 以 外 の 開 先 部 はテープなどでふさいで ガスの 流 出 をできるだけ 防 ぐ 2 バックシールドガスが 排 出 されるようなジグを 使 用 している 場 合 は 問 題 ないが 排 出 機 能 のな いジグを 使 用 する 場 合 には 初 層 終 了 近 傍 でバックシールドの 流 量 をほぼ 0 まで 落 とし 背 面 側 の 圧 力 が 上 がり 過 ぎないようにし 終 了 部 近 傍 でのガスの 噴 出 しを 防 止 する 3 溶 接 の 積 層 方 法 や 材 質 によっても 変 わるが 通 常 は 2 層 目 終 了 までバックシールドガスを 流 す 但 し 2 層 目 溶 接 中 のバックシールドガス 流 量 は 初 層 の 流 量 よりも 少 なくて 良 い 4 材 質 求 められる 性 能 によってバックシールド 精 度 は 異 なるが 酸 素 濃 度 計 を 用 いるなどして 内 部 の 酸 素 量 をある 値 以 下 になることを 確 認 してから 溶 接 を 開 始 する また 同 じティグ 溶 接 でも フラックス 入 りのティグ 溶 加 棒 で 溶 接 する 方 法 がある この 方 法 では 被 覆 アーク 溶 接 と 同 じように 内 面 ビードもフラックスで 覆 われるため バックシールドは 不 用 である しかしながら 内 面 のスラグ 除 去 の 問 題 作 業 性 がやや 難 しいことなどから 適 用 対 象 は 限 定 されてい る 3
図 7 ワンタッチ 管 閉 塞 治 具 (バックシールド 用 ) 図 8 局 部 バックシールド 治 具 7-4. 非 破 壊 検 査 パイプの 溶 接 は 板 厚 が 比 較 的 薄 いものが 多 いこともあり 非 破 壊 検 査 は 外 観 検 査 と 放 射 線 透 過 試 験 が 一 般 的 に 使 用 されている 検 査 率 は 適 用 される 法 規 基 準 によって 決 まるが 施 主 の 仕 様 により 高 い 検 査 率 で 実 施 していることが 多 い 放 射 線 透 過 試 験 では 小 径 管 では 図 9 2) に 示 すような 二 重 壁 片 面 撮 影 方 法 が 比 較 的 大 径 管 では 図 10 2) に 示 すような 内 部 線 源 撮 影 方 法 が 用 いられている 内 部 線 源 撮 影 方 法 は 360 照 射 形 なので 撮 影 が1 回 で 済 み 作 業 効 率 が 非 常 に 高 く 管 径 150mmΦまでの 自 走 式 内 部 線 源 撮 影 X 線 装 置 も 実 用 化 されている 図 9 二 重 壁 片 面 撮 影 方 法 図 10 内 部 線 源 撮 影 方 法 8. 配 管 導 管 溶 接 の 自 動 化 機 械 化 8-1. 自 動 化 機 械 化 の 現 状 配 管 導 管 溶 接 は 第 1 報 3) 第 2 報 4) で 報 告 したように プレファブ 溶 接 では 下 向 き 姿 勢 で 溶 接 が 行 えることもあり 自 動 化 機 械 化 が 進 んでいる しかし 現 場 溶 接 では 固 定 管 全 姿 勢 溶 接 のため 溶 接 制 御 そのものが 難 しく さらに 配 管 の 径 管 厚 もまちまちであり 段 取 り 作 業 が 大 変 なために 配 管 の 分 野 での 自 動 化 機 械 化 率 は 低 い また 現 状 では 現 場 の 自 動 化 機 械 化 溶 接 の 施 工 方 法 はガ 4
スシールド 溶 接 方 法 になるが ガスシールドアーク 溶 接 はとくに 風 に 弱 く 風 養 生 の 大 変 さも 適 用 率 向 上 を 阻 害 している 大 きな 要 因 になっている 一 方 導 管 分 野 では 1つのラインではほぼ 同 径 同 厚 のパイプ 溶 接 となることもあり 管 径 管 厚 の 大 きい 導 管 では 現 場 溶 接 でも 自 動 化 機 械 化 が 進 んでいる この 導 管 分 野 では 1960 年 代 から 機 械 化 の 取 り 組 みが 進 められて 来 ており その 歴 史 に 裏 付 けられた 自 動 化 機 械 化 の 文 化 が 高 い 適 用 率 の 一 因 であると 考 えられる 8-2. 自 動 溶 接 の 適 用 例 配 管 分 野 では 小 径 管 のノンフィラーティグ 自 動 溶 接 機 やステンレス 鋼 および Cr-Mo 鋼 配 管 向 け の 全 姿 勢 ティグ 自 動 溶 接 機 が 開 発 され 現 場 工 事 でも 適 用 されている ノンフィラー 溶 接 は 開 先 を I 形 開 先 で 実 施 することがほとんどであり 全 姿 勢 ティグ 自 動 溶 接 では 初 層 の 裏 波 を 凸 ビードにするた めに U 形 開 先 で 溶 接 することが 多 い 一 方 導 管 溶 接 ではマグ 溶 接 による 自 動 化 が 実 用 化 されている 開 先 角 度 は 被 覆 アークで 通 常 用 い られる 60 V 形 開 先 より 狭 開 先 が 使 用 されることが 多 く 現 状 では 40 V 形 開 先 が 主 流 であり 最 近 は 30 V 形 開 先 で 施 工 する 例 も 出 てきている 溶 接 は 初 層 から 全 てマグ 自 動 溶 接 で 実 施 する 場 合 と 初 層 2 層 目 を 手 動 のティグ 溶 接 で 実 施 し 残 層 をマグ 自 動 溶 接 で 実 施 する 場 合 がある 初 層 か ら 全 てマグ 自 動 溶 接 で 実 施 する 場 合 には 図 6 に 示 す 銅 裏 当 て 金 付 きのインターナルクランプなど を 用 いて 銅 板 上 に 裏 波 溶 接 を 実 施 する 現 場 での 溶 接 状 況 を 図 11 に 示 す 溶 接 は 各 層 ごとに 20~30 分 割 で 溶 接 条 件 を 制 御 しており トーチの 上 下 左 右 倣 い 機 能 を 具 備 している 装 置 も 多 い またほとん どの 装 置 がモニタカメラで 溶 接 部 を 監 視 する 機 能 が 付 いており 溶 接 士 は 遠 隔 で 溶 接 を 実 施 すること ができる これらの 自 動 溶 接 の 課 題 は 更 なる 高 能 率 化 であり 1つのガイドレールに2つの 溶 接 ヘッド を 搭 載 するタイプや 1つの 溶 接 ヘッドに2つのト ーチを 搭 載 するタイプも 実 用 化 されている 図 11 導 管 での 自 動 溶 接 8-3. 自 動 溶 接 の 今 後 配 管 溶 接 はプレファブ 化 が 更 に 推 進 されても 現 場 溶 接 は 必 ず 存 在 し その 溶 接 は 固 定 管 の 全 姿 勢 裏 波 溶 接 になる また 導 管 溶 接 はほとんどが 現 場 溶 接 である このような 現 場 溶 接 では 自 動 化 機 械 化 はあまり 進 展 していないが 近 年 プラントそのものが 大 型 化 してきており それに 伴 い 配 管 も 大 径 厚 肉 化 してきている そのため 能 率 向 上 の 面 からも 自 動 化 のニーズは 高 まってきている 一 方 第 1 報 3) で 述 べたように 固 定 管 パイプの 溶 接 には 高 い 技 量 が 要 求 されるため 近 年 問 題 化 されている 高 技 量 者 の 減 少 の 面 からも 自 動 溶 接 のニーズは 高 まっている 現 場 施 工 を 考 慮 した 今 後 のパイプ 自 動 溶 接 は 高 機 能 性 よりも 現 場 での 使 い 勝 手 を 考 慮 し コンパクトで 汎 用 性 の 高 い 機 能 が 求 められていく ものと 考 えられる 5
9.おわりに パイプ 溶 接 の 特 徴 溶 接 方 法 の 概 要 パイプ 溶 接 特 有 の 技 術 自 動 化 などについて 概 説 したが 信 頼 性 の 確 保 と 生 産 性 の 一 層 の 向 上 のための 課 題 は 多 い パイプ 溶 接 は 今 後 もアーク 溶 接 主 体 で 進 むものと 思 われるが 新 しい 溶 接 電 源 など 溶 接 そのものの 技 術 向 上 の 面 はもちろんのこと パイプ 溶 接 独 特 の 周 辺 技 術 にも 目 を 向 けて パイプ 溶 接 施 工 全 体 の 信 頼 性 や 生 産 性 の 向 上 を 図 る 必 要 があると 思 われる 参 考 文 献 1) 愛 知 産 業 カタログより 2) 溶 接 学 会 編 : 溶 接 接 合 便 覧 第 2 版 丸 善 2003 3) WE-COM マガジン Vol.5(2012 年 7 月 号 ) 4) WE-COM マガジン Vol.6(2012 年 10 月 号 ) 6