禁 煙 科 学 4 巻 (2010)-11-P1 原 著 大 学 における5 年 間 の 敷 地 内 全 面 禁 煙 化 が 喫 煙 率 に 与 える 効 果 小 牧 宏 一 1) 鈴 木 幸 子 1) 吉 田 由 紀 2) 那 須 野 順 子 1) 市 村 彰 英 1) 新 井 恵 1) 室 橋 郁 生 1) 要 旨 背 景 : 敷 地 内 全 面 禁 煙 の 効 果 についてこれまでにも 報 告 があるが 経 時 的 結 果 に 統 計 学 的 に 十 分 な 検 討 は 尐 ない 目 的 : 本 学 においても2005 年 6 月 1 日 に 敷 地 内 全 面 禁 煙 を 実 施 し 5 年 が 経 過 してその 効 果 について 敷 地 内 全 面 禁 煙 が 学 生 の 喫 煙 率 にいかなる 影 響 を 与 えるか 本 学 学 生 を 対 象 とした 調 査 から 大 学 敷 地 内 全 面 禁 煙 化 の 効 果 を 検 討 する 方 法 :2005 年 から2010 年 に 毎 年 4 月 に 全 学 生 を 対 象 とした 無 記 名 自 記 式 調 査 紙 調 査 を 実 施 した 検 討 は6 年 間 の 在 籍 学 部 学 生 7441 人 調 査 紙 回 収 6947を 対 象 に 解 析 した 質 問 項 目 は 喫 煙 状 況 敷 地 内 全 面 禁 煙 賛 否 などである 従 属 変 数 に 喫 煙 状 況 (0 非 喫 煙 者 1 喫 煙 者 )を 説 明 変 数 に 性 別 (0 女 子 1 男 子 ) 年 齢 ( 歳 ) 調 査 年 (2005 年 を 対 照 として2006 年 から2010 年 )を 投 入 して 二 項 ロジスティック 回 帰 分 析 してオッズ 比 (OR)と95% 信 頼 区 間 (95%CI)を 求 めた 統 計 はSPSS 19 (W)を 使 用 し 有 意 水 準 は0.05とした 結 果 : 二 項 ロジスティック 回 帰 分 析 による 喫 煙 者 比 率 は 禁 煙 化 前 の2005 年 を1とすると2006 年 はOR 0.626(95%CI 0.419-0.935, p=0.022) 2007 年 OR 0.549(95% CI 0.373-0.808, p=0.002) 2008 年 OR 0.524 (95% CI 0.361-0.758, p<0.001) 2009 年 OR 0.446(95%CI 0.309-0.645, p<0.001) 2010 年 OR 0.483(95%CI 0.337-0.692, p<0.001)で 禁 煙 化 後 の 各 調 査 年 でORは 有 意 に 低 くなった 結 論 : 大 学 敷 地 内 全 面 禁 煙 化 実 施 後 の 喫 煙 者 比 は 有 意 に 減 尐 し 敷 地 内 全 面 禁 煙 化 は 喫 煙 者 を 減 らす 事 が 出 来 た 大 学 敷 地 内 全 面 禁 煙 は 有 効 であり 今 後 も 堅 持 される 必 要 がある 緒 言 全 国 大 学 禁 煙 化 プロジェクトは 21 世 紀 を 支 える 大 学 生 を 非 喫 煙 者 で 社 会 に 送 ろう のテーマの 元 に2004 年 に 高 橋 ら 1,2) により 組 織 された 大 学 禁 煙 化 の 推 進 は1 受 動 喫 煙 の 防 止 2 学 生 の 喫 煙 開 始 の 防 止 3 喫 煙 大 学 生 と 喫 煙 教 職 員 の 禁 煙 促 進 による 健 康 増 進 4 周 囲 住 民 への 啓 発 からなり 目 標 到 達 への 手 法 として 大 学 内 敷 地 全 面 禁 煙 化 が 提 唱 されている 本 学 でも 喫 煙 率 抑 制 を 目 的 に 2002 年 にたばこ 自 販 機 撤 去 に 始 まり 健 康 増 進 法 施 行 に 合 わせて2003 年 には 屋 内 禁 煙 化 と 屋 外 喫 煙 所 設 置 の 分 煙 化 を 実 施 した しかし 鈴 木 ら 3) が 報 告 したように 学 内 に 1) 埼 玉 県 立 大 学 保 健 医 療 福 祉 学 部 2) 埼 玉 県 立 大 学 保 健 センター おける 受 動 喫 煙 防 止 と 学 生 の 喫 煙 率 抑 制 は 十 分 でなかっ たため 2004 年 に 全 国 大 学 禁 煙 化 プロジェクトに 参 加 し 2005 年 6 月 1 日 に 敷 地 内 全 面 禁 煙 を 実 施 した 敷 地 内 全 面 禁 煙 化 実 施 にあわせて1 禁 煙 教 育 2 広 報 活 動 3 無 料 ニコチンパッチによる 禁 煙 サポート 4 喫 煙 状 況 調 査 5 違 反 者 対 策 を 実 施 し 5 年 が 経 過 した 全 国 では 多 くの 大 学 が 前 後 して 敷 地 内 全 面 禁 煙 化 とな り その 効 果 について 中 島 4) らや 山 本 ら 5) は 禁 煙 化 後 の3 年 の 経 過 を 検 討 した 縦 断 的 研 究 で 喫 煙 率 の 低 下 があったと する 報 告 をしている しかし 率 の 減 尐 は 論 じられてい るが 統 計 学 的 に 十 分 な 検 討 がされているとは 言 えず 喫 煙 率 の 線 形 傾 向 性 多 変 量 解 析 での 検 討 が 必 要 であると 責 任 者 連 絡 先 : 小 牧 宏 一 埼 玉 県 越 谷 市 三 野 宮 820( 343-8540) 埼 玉 県 立 大 学 TEL/FAX:048-973-4328 E-mail:komaki-koichi@spu.ac.jp
禁 煙 科 学 4 巻 (2010)-11-P2 考 えた そこで 今 回 の 目 的 は5 年 間 の 敷 地 内 全 面 禁 煙 が 学 生 の 喫 煙 率 にいかなる 影 響 を 与 えるか 本 学 の 全 学 学 生 を 対 象 とした 調 査 から 線 形 傾 向 性 をコクラン アーミ テージ 検 定 で 検 討 し 係 わる 因 子 を 二 項 ロジスティック 回 帰 分 析 で 検 討 した 表 2 学 部 4 年 生 を 対 象 とした 調 査 紙 回 収 数 および 回 収 率 と 属 性 対 象 と 方 法 1) 学 部 全 学 生 を 対 象 として 2005 年 から2010 年 に 毎 年 4 月 の 健 康 診 断 時 に 全 学 生 を 対 象 とした 無 記 名 自 記 式 調 査 紙 調 査 を 実 施 した 本 学 は 学 部 と 短 期 大 学 部 の 併 設 校 であったが 短 期 大 学 部 は 2007 年 までに 閉 科 し 2009 年 に 大 学 院 を 開 設 したため 年 度 ごとに 履 修 学 生 構 成 が 複 雑 に 変 化 している このた め 今 回 の 検 討 は 学 部 学 生 に 対 象 を 絞 って 解 析 した 対 象 は6 年 間 で 学 部 在 籍 者 数 7441 人 とし 調 査 紙 回 収 数 は 6947 枚 回 収 率 93.3%であった 調 査 年 別 の 学 部 学 生 数 は 2005 年 704 人 2006 年 908 人 2007 年 1130 人 2008 年 1393 人 2009 年 1646 人 2010 年 1660 人 と 定 員 増 のため 増 加 し 男 女 比 では 男 子 学 生 の 割 合 が2005 年 14.3% 2006 年 17.1% 2007 年 18.5% 2008 年 18.6% 2009 年 18.2% 2010 年 17.6%と 増 加 した 年 齢 は 現 役 入 学 生 が 多 いため 各 年 とも 平 均 年 齢 は20 歳 前 後 にある 回 収 数 を 在 籍 数 で 除 し た 回 収 率 は 2005 年 92.0% 2006 年 91.7% 2007 年 93.2% 2008 年 93.2% 2009 年 92.2% 2010 年 96.3%で あった( 表 1) 2)4 年 生 を 対 象 として また 本 来 の 卒 業 するまでに 喫 煙 を 開 始 する 学 生 を 減 らす 効 果 があったか 検 討 するため 大 学 最 終 学 年 である4 年 生 のみを 年 毎 に 抽 出 して 解 析 対 象 とした 在 籍 数 に 対 す る 回 収 率 は 2005 年 90.6% 2006 年 76.7% 2007 年 86.8% 2008 年 87.2% 2009 年 82.3% 2010 年 89.7%で あった( 表 2) 表 1 学 部 生 全 員 を 対 象 とした 調 査 紙 回 収 数 及 び 回 収 率 と 属 性 3) 方 法 無 記 名 自 記 式 質 問 紙 を 用 い 質 問 項 目 は 喫 煙 状 況 敷 地 内 全 面 禁 煙 に 対 する 意 見 禁 煙 に 関 してなどである 質 問 紙 での 喫 煙 者 の 定 義 は この1ヶ 月 で1 本 でも 喫 煙 し たもの とした 性 別 年 齢 喫 煙 有 無 の 項 目 が 記 載 さ れている 回 答 を 有 効 回 答 として 対 象 とした 喫 煙 率 の 年 次 による 経 過 の 線 形 傾 向 の 検 定 としてコク ラン アーミテージ 検 定 を 用 いた 敷 地 内 全 面 禁 煙 が 喫 煙 率 に 与 える 影 響 を 検 討 するために 従 属 変 数 に 喫 煙 状 況 (0 非 喫 煙 1 喫 煙 )を 説 明 変 数 に 性 別 (0 女 子 1 男 子 ) 年 齢 調 査 年 (2005 年 を 対 照 に2006 年 から2010 年 まで)を 投 入 して 二 項 ロジスティック 回 帰 分 析 を 用 い オッズ 比 odds ratio(or)と95% 信 頼 区 間 confidence intervals (95%CI) を 求 めた 敷 地 内 禁 煙 賛 否 の 検 討 には 解 析 にはPearsonのχ 2 検 定 を 使 用 した SPSS Ver.19 for Windows およびR 検 定 を 使 用 し 有 意 水 準 は 0.05とし た 4) 倫 理 的 配 慮 予 め 調 査 の 意 義 と 回 答 は 自 由 である 旨 の 告 示 をした 調 査 は 無 記 名 で 個 人 が 特 定 できないよう 配 慮 して 回 収 処 理 した 結 果 1) 学 部 学 生 における 喫 煙 率 推 移 学 部 学 生 の 喫 煙 率 は 2005 年 9.4% 2006 年 6.1% 2007 年 5.5% 2008 年 5.5% 2009 年 4.7% 2010 年 5.3% で 減 尐 した( 図 1) 喫 煙 率 の 傾 向 性 の 検 討 をコクラン アーミテージ 検 定 で 行 うと 傾 き:χ 2 T 11.448 自 由 度 1 p<0.001 直 線 からの 乖 離 性 :χ 2 Q 8.627 自 由 度 4 p=0.071 非 一 様 性 :χ 2 H 20.076 自 由 度 5 p=0.001で 有 意 な 線 形 傾 向 性 を 認 め 年 毎 に 有 意 に 減 尐 した
禁 煙 科 学 4 巻 (2010)-11-P3 尐 させる 効 果 があったか 大 学 最 終 学 年 である4 年 生 のみ を 解 析 対 象 として 検 討 すると 喫 煙 率 は2005 年 15.2% 2006 年 15.3% 2007 年 4.3% 2008 年 10.5% 2009 年 7.1% 2010 年 9.2%で 減 尐 した( 図 2) 図 1 学 部 学 生 の 喫 煙 率 の 推 移 二 項 ロジスティック 回 帰 分 析 での 喫 煙 率 比 ORは 禁 煙 化 前 の2005 年 を1とすると 2006 年 OR 0.626(95%CI 0.419-0.935, p=0.022) 2007 年 OR 0.549(95%CI 0.373-0.808, p=0.002) 2008 年 OR 0.524 (95%CI 0.361-0.758, p<0.001) 2009 年 OR 0.446(95%CI 0.309-0.645, p<0.001) 2010 年 OR 0.483(95%CI 0.337-0.692, p<0.001) で 禁 煙 化 後 のORは 有 意 に 低 くなった すなわち 敷 地 内 全 面 禁 煙 化 により 学 部 学 生 の 喫 煙 率 は 有 意 に 低 下 した また 年 齢 が1 歳 上 昇 するごとにOR 1.062(95%CI 1.062-1.112, p<0.001)で 有 意 に 喫 煙 率 が 高 くなり 学 年 が 進 行 すると 喫 煙 率 が 高 くなる また 男 子 学 生 は 女 子 学 生 を1とするとOR 3.660(95%CI 2.946-4.547, p<0.001)で 有 意 に 喫 煙 率 は 高 い( 表 3) 表 3 学 部 学 生 を 対 象 とした 二 項 ロジスティック 回 帰 分 析 学 部 全 学 生 を 対 象 に 従 属 変 数 に 喫 煙 状 況 (0 非 喫 煙 者 1 喫 煙 者 )を 説 明 変 数 に 性 別 (0 女 子 学 生 1 男 子 学 生 ) 年 齢 ( 歳 ) 調 査 年 (2005 年 を 対 照 として2006 年 から2010 年 )を 投 入 して 二 項 ロジスティック 回 帰 分 析 してオッズ 比 (OR)と95% 信 頼 区 間 (95%CI)を 求 めた 2)4 年 生 における 喫 煙 率 推 移 年 齢 すなわち 学 年 が 進 行 するに 従 って 喫 煙 率 が 増 加 す るため 本 来 の 卒 業 するまでに 喫 煙 を 開 始 する 学 生 を 減 図 2 学 部 4 年 生 の 喫 煙 率 の 推 移 4 年 生 のみを 対 象 にした 喫 煙 率 の 傾 向 性 の 検 討 をコクラ ン アーミテージ 検 定 で 行 うと 傾 き:χ 2 T 6.672 自 由 度 1 p<0.01 直 線 からの 乖 離 性 :χ 2 Q 12.753 自 由 度 4 p=0.013 非 一 様 性 :χ 2 H 19.426 自 由 度 5 p=0.002 で 有 意 な 線 形 傾 向 は 認 めなかったが 年 毎 に 減 尐 する 傾 向 は 認 めた 4 年 生 のみを 対 象 にした 二 項 ロジスティック 回 帰 分 析 で 喫 煙 率 ORは 禁 煙 化 前 の2005 年 を1とすると 喫 煙 率 が2005 年 を1とすると 2006 年 OR 1.052(95%CI 0.551-2.006, p=0.878) 2007 年 OR 0.236(95%CI 0.098-0.571, p=0.001) 2008 年 OR 0.552(95%CI 0.279-1.093, p=0.088) 2009 年 OR 0.363(95%CI 0.198-0.666, p=0.001) 2010 年 OR 0.465(95%CI 0.264-0.818, p=0.008) で2006 年 と2008 年 を 除 いてORは 有 意 に 低 い 調 査 年 によ りばらつきはあるが4 年 生 においても 敷 地 内 全 面 禁 煙 は 喫 煙 率 を 減 らした 男 子 学 生 は 女 子 学 生 を1とするとOR 4.493(95%CI 2.992-6.746, p<0.05)で 喫 煙 率 は 高 い 年 齢 はOR 0.969(95%CI0.899-1.044, p=0.40730)で 単 一 年 齢 集 団 のため 差 がなかった( 表 4) 3) 敷 地 内 全 面 禁 煙 化 に 対 する 賛 否 意 見 の 推 移 敷 地 内 全 面 禁 煙 に 対 する 賛 否 を 問 うと 賛 成 の 割 合 は 2005 年 75.3% 2006 年 87.5% 2007 年 93.4% 2008 年 93.5% 2009 年 95.3% 2010 年 95.5%でPearsonのχ 2 検 定 で は 有 意 に 増 加 した
禁 煙 科 学 4 巻 (2010)-11-P4 表 4 学 部 4 年 生 を 対 象 とした 二 項 ロジスティック 回 帰 分 析 度 の 効 果 があると 考 えられる すなわち 敷 地 内 全 面 禁 煙 5) 化 は 効 果 が 認 められる ただし 山 本 らが 指 摘 している ように 大 学 内 の 喫 煙 率 の 変 化 は 学 内 環 境 のみに 影 響 さ れるのではなく 社 会 全 体 の 環 境 にも 影 響 されるため 敷 7) 地 内 全 面 禁 煙 化 の 影 響 を 正 確 に 計 ることは 難 しい 漆 坂 らは2008 年 に 大 学 生 世 代 2180 名 の 喫 煙 調 査 を 行 い 喫 煙 率 21.5% 男 26.9% 女 14.3%と 報 告 した 結 果 と 比 較 する と 本 学 の 喫 煙 率 4.7~6.1% 男 10.0~16.0% 女 5.3~ 2.8%は 低 い 久 根 木 ら 8) は2003 年 に 分 煙 した 大 学 において 学 部 4 年 生 を 対 象 に 従 属 変 数 に 喫 煙 状 況 (0 非 喫 煙 者 1 喫 煙 者 )を 説 明 変 数 に 性 別 (0 女 子 学 生 1 男 子 学 生 ) 年 齢 ( 歳 ) 調 査 年 (2005 年 を 対 照 として2006 年 から2010 年 )を 投 入 して 二 項 ロジスティック 回 帰 分 析 してオッズ 比 (OR)と95% 信 頼 区 間 (95%CI)を 求 めた 考 察 清 原 ら 6) は 学 校 を 敷 地 内 全 面 禁 煙 化 することは 必 ずしも 喫 煙 率 を 低 下 させる 結 果 にはならないとしている 中 島 4) らは 敷 地 内 全 面 禁 煙 化 が 喫 煙 率 を 低 下 させると 結 論 して いるが 粗 の 喫 煙 率 の 減 尐 は 敷 地 内 全 面 禁 煙 化 前 の 期 間 も 存 在 していて 統 計 学 的 な 証 明 はされていない 今 回 の 検 討 では 敷 地 内 全 面 禁 煙 前 の2005 年 に9.4%で あった 喫 煙 率 は 翌 年 には6.1%に 減 尐 して 以 降 横 ばいの 状 況 にある しかし コクラン アーミテージ 検 定 を 用 いると 線 形 傾 向 をもって 有 意 な 減 尐 があるため 敷 地 内 全 面 禁 煙 化 後 も 喫 煙 率 は 減 尐 していると 考 えられる 二 項 ロジスティック 回 帰 分 析 において 調 査 年 のオッズ 比 は 2006 年 から2010 年 の 禁 煙 化 後 の 各 年 で 有 意 に 低 く 敷 地 内 全 面 禁 煙 の 後 は 学 部 学 生 全 体 の 喫 煙 者 を 有 意 に 減 らし たと 考 えられ 敷 地 内 全 面 禁 煙 化 は 有 効 であったと 考 え られる 女 子 学 生 より 男 子 学 生 において 喫 煙 率 が 高 いの は 一 般 社 会 と 同 様 に 男 子 の 喫 煙 への 抵 抗 感 が 尐 ない 事 も 影 響 していると 考 えられる 学 部 4 年 生 については2009 年 と2010 年 は 学 科 構 成 や 定 員 の 変 化 男 子 学 生 比 率 変 化 の 因 子 の 変 化 があって 喫 煙 率 の 変 動 も 大 きいため 評 価 が 難 しいが 2007 年 2009 年 2010 年 で 喫 煙 率 ORは 有 意 に 低 下 し 学 部 全 体 のORと 大 き く 変 わらない 点 から 学 部 全 学 生 に 比 較 してやや 遅 れて 同 じ 程 度 に 喫 煙 者 を 減 らす 効 果 が 現 れていると 考 えられ る 現 在 の 大 学 敷 地 内 全 面 禁 煙 化 による 喫 煙 者 ORは 禁 煙 化 前 に 比 して0.4から0.5である 事 から 半 分 以 下 に 減 らす 程 2000 年 から2005 年 の6 年 間 の 調 査 を 行 っているが 1 年 生 と3 年 生 に 限 られ 時 期 がやや 古 いため 比 較 には 問 題 があ るが 分 煙 後 には3 年 男 子 で19.5%~17.7% 3 年 女 子 では 3.4%~4.6%の 間 にあり 減 尐 傾 向 にないと 結 論 されてお り 減 尐 傾 向 を 続 けている 本 学 では 全 面 禁 煙 化 は 有 効 で あったと 考 えられる 本 研 究 の 限 界 は 単 独 校 での 検 討 であって 非 全 面 禁 煙 化 校 での 縦 断 的 喫 煙 率 と 比 較 していないために 検 討 とし ては 十 分 でない しかし 本 邦 では 非 禁 煙 化 校 でも 喫 煙 率 の 縦 断 的 調 査 は 禁 煙 化 が 前 提 であることが 多 く 全 く 無 介 入 である 大 学 では 喫 煙 率 の 調 査 は 行 われず 報 告 はな いため 比 較 検 討 が 出 来 なかった 今 後 とも 大 学 の 敷 地 内 禁 煙 化 は 重 要 な 手 段 であり 継 続 されるべきであるが 一 層 の 効 果 を 上 げるには 加 えて 他 の 複 数 の 因 子 すなわち Wakefield 9) らが 報 告 している ように 大 学 入 学 前 の 高 校 での 積 極 的 な 喫 煙 防 止 教 育 や 法 規 で 公 衆 の 場 の 禁 煙 化 タバコ 価 格 の 値 上 げが 必 要 と 考 えられる 結 語 詳 細 な 統 計 的 検 討 から 本 学 の 敷 地 内 全 面 禁 煙 化 により 学 部 生 の 喫 煙 率 を 減 らす 効 果 があり 敷 地 内 全 面 禁 煙 は 有 効 な 方 法 である しかし その 効 果 は 喫 煙 者 を40から 50% 程 度 に 減 らす 効 果 と 考 えられ 更 に 喫 煙 者 を 減 らすに は 対 策 が 必 要 である 謝 辞 この 研 究 は2005 年 度 から2010 年 度 埼 玉 県 立 大 学 奨 励 研 究 費 を 使 用 して 実 施 された
禁 煙 科 学 4 巻 (2010)-11-P5 文 献 1) 高 橋 裕 子. 大 学 禁 煙 化 プロジェクト. 日 本 禁 煙 科 学 会 吉 田 修, 富 永 祐 民, 中 原 俊 隆, 高 橋 裕 子 ( 編 ). 禁 煙 科 学. 文 光 堂 ( 東 京 )2007: 276-278 2) 大 学 禁 煙 化 プ ロ ジ ェ ク ト. http://www.narawu.ac.jp/hoken/annai3.htm 3) 鈴 木 幸 子, 小 牧 宏 一, 今 井 充 子, 市 村 彰 英, 押 野 修 司, 田 口 孝 行, 室 橋 郁 生, 萱 場 一 則, 山 口 恵, 坂 井 祥 子, 吉 田 由 紀. 柳 川 洋 保 健 医 療 福 祉 系 大 学 におけ る 敷 地 内 全 面 禁 煙 施 行 前 の 学 生 の 喫 煙 に 関 する 調 査 結 果. 埼 玉 県 立 大 学 紀 要 8, 2007: 45-49 4) 中 島 素 子, 三 浦 克 之, 森 河 裕 子, 西 条 旨 子, 中 西 由 美 子, 櫻 井 勝, 中 川 秀 昭. 大 学 敷 地 内 禁 煙 実 施 による 医 学 生 の 喫 煙 率 と 喫 煙 に 対 する 意 識 への 影 響. 日 本 公 衆 衛 生 雑 誌 55(9), 2008: 647-654 5) 山 本 眞 由 美, 田 中 生 雅, 佐 渡 忠 洋, 清 水 克 時. 大 学 の 禁 煙 推 進 の 取 り 組 みと 学 生 の 喫 煙 率 変 化 10 年 の 取 り 組 みを 経 過 して. 学 校 保 健 研 究 52(1), 2010: 71-74 6) 清 原 康 介, 井 谷 百 合, 松 本 善 孝, 高 橋 裕 子. 学 校 内 敷 地 内 禁 煙 化 と 教 職 員 のタバコに 対 する 意 識 および 態 度 敷 地 内 禁 煙 化 実 施 校 と 未 実 施 校 との 比 較 検 討. 禁 煙 科 学 2(3), 2008: 11-15 7) 漆 坂 真 弓, 木 村 紀 美, 齋 藤 昭, 吉 田 光 子, 一 戸 佳 代 子, 三 浦 有 希, 吉 岡 利 忠. A 県 内 の 大 学 生 専 門 学 校 生 の 喫 煙 の 実 態. 青 森 県 立 保 健 大 学 雑 誌 10(2), 2009: 175-190 8) 久 根 木 康 子, 田 中 由 紀 子, 高 山 昌 子, 藤 井 香, 木 村 奈 々, 齋 藤 圭 美, 松 本 可 愛, 肥 後 綾 子, 森 正 明, 広 瀬 寛, 和 井 内 由 充 子, 辻 岡 三 南 子, 河 邊 博 史, 齊 藤 郁 夫. キャンパス 内 分 煙 と 喫 煙 率 の 推 移. 慶 應 保 健 研 究 25(1), 2007: 89-93 9) Wakefield MA, Chaloupka FJ, Kaufman NJ, Orleans CT, Barker DC, Ruel EE. Effect of restrictions on smoking at home, at school, and in public place on teenage smoking: crss sectional study. BMJ 321(5), 2000: 333-337 Title: Effect of a 5-year total ban on smoking in Saitama Prefectural University Authors: Koichi Komaki 1), Yuki Yoshida 1), Sachiko Suzuki 2), Junko Nasuno 2), Akehide Ichimura 2), Megumi Arai 2), Ikuo Murohashi 2) Organization: Saitama Prefectural University, Health Center Saitama Prefectural University, School of Health and Social Services Address: 820 San-nomiya, Koshigaya city, Saitama 343-8540, Japan Key words: total smoking ban, student, smoking survey Abstract Background: Saitama Prefectural University prohibited smoking in all university buildings and grounds in June 2005. Method: To evaluate the effect of a 5-year total ban on smoking, 6947 students were surveyed using a selfreported questionnaire on smoking attitudes every April from 2005 to 2010. Multivariate logistic regression analysis was conducted on the response variable of smoking (0 no, 1 yes) and with the explanatory variables of gender (0 women, 1 men), age, and survey year (2006 to 2010 compared to 2005). Results: The odds ratios (OR) and 95% confidence intervals (95%CI) for smoking for each of the 5 years were: OR=0.626 (95%CI 0.419 to 0.935, p=0.022) in 2006, OR=0.549 (95%CI 0.373 to 0.808, p=0.002) in 2007, OR=0.524 (95%CI 0.361 to 0.758, p<0.001) in 2008, OR=0.446 (95%CI 0.309 to 0.645, p<0.001) in 2009, and OR=0.483 (95% CI 0.337 to 0.692, p<0.001) in 2010, compared to 1.000 (reference) in 2005. Conclusion: A total ban on smoking at a university reduced the ratio of student smokers.