沖 合 底 びき 網 漁 業 の 再 生 に 向 けた 挑 戦 銚 子 市 漁 業 協 同 組 合 銚 子 沖 合 漁 業 生 産 組 合 網 代 慶 二 郎 1. 地 域 及 び 漁 業 の 概 要 銚 子 市 は 千 葉 県 北 東 部 に 位 置 し, 沖 合 では 黒 潮 と 親 潮 がぶつかるため 好 漁 場 が 形 成 され, 古 くから 漁 業 の 盛 ん な 地 域 である 私 たちが 所 属 する 銚 子 市 漁 業 協 同 組 合 ( 図 1)は, 平 成 8 銚 子 市 漁 業 年 9 月 に 銚 子 地 区 の 6 漁 協 が 合 併 し 設 立 した 組 合 で,287 協 同 組 合 名 (H23.3.31 現 在, 正 179 名, 准 108 名 )の 組 合 員 がいる まき 網, 沖 合 底 びき 網,さんま 棒 受 網 などの 沖 合 漁 業 か ら, 一 本 釣 り,はえなわ, 小 型 底 びき 網 などの 沿 岸 漁 業 まで, 様 々な 漁 業 が 営 まれている 図 1 組 合 の 位 置 私 たちが 営 む 沖 合 底 びき 網 漁 業 は,1そう 曳 きによる 板 曳 き(トロール) 漁 法 により( 図 2), 底 魚 のヒラメ カレイ 類 をはじめ,エビ カニ 類,タコ イカ 類 まで 様 々な 魚 種 を 漁 獲 している 漁 協 所 属 の 沖 底 船 5 隻 の 平 成 22 年 水 揚 量 は1 千 4 百 トン, 水 揚 高 は6 億 7 千 万 円 で, 銚 子 漁 港 全 体 (21 万 トン,254 億 円 )の 水 揚 量 の 0.6%, 金 額 で 2.7%と 少 ないが, 多 種 多 様 な 魚 介 類 を 水 揚 げする 本 漁 業 は 銚 子 地 域 にとって 重 要 な 漁 業 である 図 2 沖 合 底 びき 網 漁 法 ( 漁 網 図 鑑 下 : 底 曵 網 漁 具 篇 ( 農 林 省 農 林 経 済 局 統 計 調 査 部 編 )より) 2. 研 究 グループの 組 織 と 運 営 銚 子 沖 合 漁 業 生 産 組 合 は, 銚 子 市 漁 協 所 属 の 沖 合 底 びき 網 漁 業 4 経 営 体 が 平 成 19 年 6 月 に 設 立 した 設 立 目 的 は, 経 営 を 一 つにして 無 駄 を 省 き 収 益 を 増 やして 経 営 基 盤 を 強 化 することと, 各 経 営 体 の 資 本 を 集 結 し 将 来 の 代 船 取 得 を 容 易 にすることである 生 産 組 合 の 所 有 船 は 当 初 50トン 及 び 70 トン 型 の 大 型 船 4 隻 でスタートし, 現 在 は 大 型 船 2 隻, 小 型 船 1 隻, 代 船 建 造 中 1 隻 の4 隻 体 制 となっている 1
3. 研 究 実 践 活 動 取 組 課 題 選 定 の 動 機 銚 子 地 域 の 沖 合 底 びき 網 漁 船 は, 当 初 30トンクラスの 掛 け 回 し 漁 法 からス タートし, 昭 和 40 年 代 に 50 トンクラ スの 船 尾 トロール 方 式 に 転 換 した そ の 後 も 大 型 化 が 進 められたが, 資 源 の 減 少 と 過 当 競 争 等 による 経 営 悪 化 によ り, 昭 和 38 年 40 隻 あった 漁 船 が, 平 成 5 年 には 17 隻, 平 成 10 年 には 8 隻 に 減 少 し, 現 在 では 5 隻 となっている ( 図 3) 漁 船 数 ( 40 30 20 隻 ) 10 0 S38 S43 S48 S53 S58 S63 H5 H10 H15 H20 僚 船 が1 隻,また1 隻 と 廃 業 していく 中 で,このままでは 銚 子 地 域 の 沖 合 底 びき 網 漁 業 が 無 くなってしまうとの 危 機 感 から, 私 たちは 生 き 残 りをかけて, 漁 業 の 構 造 改 革 に 取 り 組 むこととした 銚 子 地 域 の 沖 合 底 びき 網 漁 業 が 抱 える 問 題 は,1 長 引 く 景 気 低 迷 ( 魚 価 低 迷 )や 原 油 高 騰 などの 社 会 情 勢 の 変 化 から 儲 からない 漁 業 となっていたこと,2 漁 船 の 船 齢 が 20~ 30 年 と 高 く, 著 しい 老 朽 化 により 維 持 費 が 増 え 経 営 を 圧 迫 していたこと,3 代 船 建 造 しようにも 個 々の 経 営 体 では 資 金 調 達 ができないことなどであった 特 に 代 船 建 造 は, 個 別 経 営 体 が 単 独 の 努 力 で 解 決 できる 問 題 ではなく, 儲 かる 漁 業 へ の 転 換 を 図 る 上 でも 急 務 であった 私 たちは,これらの 問 題 解 決 へ 向 け 協 議 を 重 ね,1 生 産 の 改 善,2 流 通 販 売 の 改 善 として 次 のことに 取 り 組 むこととした 1) 生 産 の 改 善 1 協 業 化 による 経 費 の 削 減 2 小 型 船 への 転 換 による 生 産 コストの 削 減 2) 流 通 販 売 の 改 善 1 品 質 管 理 の 向 上 2 新 たな 流 通 経 路 の 開 拓 3 漁 獲 物 の 高 付 加 価 値 化 図 3 沖 合 底 びき 網 漁 船 数 の 推 移 4. 研 究 実 践 活 動 状 況 及 び 成 果 1) 生 産 の 改 善 1 協 業 化 による 経 費 の 削 減 協 業 化 による 経 費 削 減 の 取 り 組 みとして,まず 個 々の 経 営 体 でそれぞれ 行 っていた 経 理 処 理 を 整 理 統 合 して 事 務 員 1 名 で 実 施 する 体 制 を 整 えた また, 漁 網 やロープなど の 資 材 を 一 括 購 入 することなどにより, 一 般 管 理 費 漁 具 費 は4 経 営 体 個 別 時 の3 千 8 百 万 円 から 2 千 8 百 万 円 へと 約 1 千 万 円 削 減 できたこともあり, 償 却 前 利 益 は 大 幅 に 増 加 した( 表 1) また, 協 業 化 では, 各 経 営 体 は 出 資 金 を 出 すとともに, 効 率 的 な 管 理 をするため 漁 船 を 生 産 組 合 にリースしている 生 産 組 合 は 各 経 営 体 に 傭 船 料 を 支 払 い, 船 員 の 報 酬 や 漁
船 の 維 持 管 理 をはじめとした 経 費 を 負 担 表 1 協 業 化 による 削 減 効 果 ( 単 位 : 百 万 円 ) する 船 員 への 報 酬 は, 船 間 差 をなくす 均 等 割 りにすることも 検 討 したが,それ H14~18 平 均 (4 経 H20~22 平 均 ( 生 効 果 では 船 員 の 努 力 が 報 われず, 競 争 原 理 が 営 体 合 算 ) 産 組 合 ) 働 かなくなり 活 力 低 下 を 招 くので, 船 ご 一 般 管 理 費 との 歩 合 制 を 採 用 した 報 酬 の 支 払 いに 漁 具 費 38.2 28.1-10.1 ついては, 漁 労 長 をはじめとする 全 ての 船 員 が 納 得 するまで 船 員 組 合 と 何 度 も 償 却 前 利 益 32.4 62.9 30.5 交 渉 し, 時 間 をかけて 調 整 して 労 働 協 約 書 という 形 に 整 理 した 2 小 型 船 への 転 換 による 生 産 コストの 削 減 私 たちは, 代 船 取 得 に 向 けて 国 の 漁 船 漁 業 構 造 改 革 総 合 対 策 事 業 を 活 用 して 大 型 船 か ら 小 型 船 へ 転 換 することを 決 意 し, 漁 協, 国, 県, 市 に 働 きかけて 地 域 プロジェクトを 立 ち 上 げ, 改 革 計 画 を 策 定 し 平 成 19 年 度 に 国 の 認 定 を 受 けた 今 までの 大 型 化 に 逆 行 する 小 型 化 に 際 しては,1 漁 船 が 小 さくなることで 水 揚 げが 減 り, 売 り 上 げ 減 が 経 営 圧 迫 材 料 となること,2 小 型 船 は 安 定 性 に 欠 け, 沖 合 いでの 操 業 に 危 険 が 増 すこと,3 代 船 建 造 投 資 で 資 金 不 足 になることなどの 不 安 があった 不 安 の 解 消 に 役 立 った 点 は,この 事 業 では 漁 協 が 生 産 組 合 の 建 造 した 改 革 船 を 借 り 上 げて 実 証 試 験 を 行 い, 傭 船 料 に 減 価 償 却 費 が 含 まれるため, 実 施 期 間 の3カ 年 で 船 価 の 約 3 割 を 回 収 できる 見 込 みがついた ことである そして, 改 革 船 を 小 型 化 すれば 減 トン 分 に 応 じた 補 助 金 が 出 るので, 資 金 力 がなくひっ 迫 した 代 船 問 題 を 抱 える 私 たちにとっては 渡 りに 船 の 事 業 であった また, 改 革 船 は 小 型 船 ながら 千 葉 の 大 型 船 の7~8 割 の 水 揚 げをしてい る 福 島 県 相 馬 原 釜 の 底 びき 網 漁 船 を 参 考 にし,19 トン 船 を 新 たに 建 造 し 3 図 4 建 造 した 改 革 船 (19トン 型 ) た( 図 4) 代 わりに 最 も 船 齢 の 高 い 表 2 主 要 魚 種 の 水 揚 量 の 比 較 (H20~22 平 均 ) 74 トン 船 を 廃 船 し, 減 トン 分 の 漁 船 単 位 :トン 漁 業 再 生 交 付 金 を 受 け, 建 造 資 金 の 魚 種 名 大 型 船 (3 隻 平 均 ) 小 型 船 一 部 とした ヤリイカ 101.2 81.5 心 配 していた 水 揚 量 は, 予 想 どお マアジ 50.8 16.0 り 減 少 し, 平 成 20~22 年 度 漁 期 平 均 スルメイカ(まいか) 39.6 25.3 ホウボウ 13.9 9.2 の 水 揚 量 は 大 型 船 の 66%であり, 水 アオメエソ(めひかり) 5.8 12.2 揚 高 は 大 型 船 の78%であった( 表 2) ボタンエビ 0.2 3.2 水 揚 量 より 水 揚 高 の 減 少 割 合 が 少 な その 他 81.4 46.8 いのは, 漁 具 が 小 さくなったことで 計 292.9 194.2 水 揚 高 ( 百 万 円 ) 137.6 107.0 大 型 船 では 利 用 できなかったボタン
エビ 漁 場 で 操 業 が 可 能 となったこと が 大 きな 要 因 で,ヤリイカが 来 遊 し ない 時 期 に 単 価 の 高 いボタンエビ 操 業 を 行 ったからである 経 費 の 削 減 では, 小 型 化 により 大 型 船 で 一 番 負 担 の 大 きかった 船 舶 検 査 費 用 が 不 要 となった 修 繕 費 は 年 間 3 百 万 円 程 度 となり( 表 3), 老 朽 化 の 著 しい 大 型 船 の 約 1 千 2 百 万 円 に 比 べ 9 百 万 円 の 削 減 となった ま た, 小 型 船 は 銚 子 で 上 架 できるので, 館 山 の 造 船 所 へ 回 航 する 必 要 がなく 表 3 小 型 船 による 実 証 試 験 の 収 支 計 画 と 実 績 なり,ペンキ 塗 りも 地 元 で 乗 組 員 が 行 えるので, 経 費 がかからなくなった さらに, 漁 船 を 小 型 化 したことで, 年 間 燃 油 消 費 量 (H20~22 年 度 漁 期 平 均 )は 大 型 船 351 kl (3 隻 平 均 )に 対 し 小 型 船 232 kl と34% 減 少 し, 平 均 燃 油 単 価 73 円 /Lと して 約 9 百 万 円 の 経 費 削 減 効 果 があった 船 員 を 大 型 船 の7 名 から 2 名 削 減 し5 名 とした 燃 油 代 などの 経 費 削 減 に 加 え, 水 揚 げが 大 型 船 の 実 績 を 参 考 にした 計 画 より 好 調 であったこともあり, 船 員 の 報 酬 が 増 えた 船 員 報 酬 の 増 加 は, 現 場 のやる 気 を 高 め, 新 しいことを 積 極 的 に 取 り 組 もうとする 意 識 を 船 主 と 船 員 で 共 有 することにつながった また, 船 員 資 格 に 関 しては, 総 トン 数 が 20 トン 未 満 なので 機 関 士 が 不 要 となり, 人 員 確 保 がしやすくなるメリットがあった これらの 生 産 努 力 や 経 費 削 減 により 減 価 償 却 費 を 除 く 経 費 は 約 8 千 万 円 であり, 償 却 前 利 益 は 2 千 5 百 万 円 となった( 表 3) 償 却 前 利 益 を 次 の 代 船 建 造 資 金 とする 場 合, 船 を 20 年 間 使 用 すると 仮 定 して, 見 込 2 千 万 円 20 年 で4 億 円 となり 船 価 2 億 円 の 船 を 自 己 資 本 で 建 造 できるだけの 収 益 能 力 が 小 型 船 にあると 見 通 しが 立 った 2) 流 通 販 売 の 改 善 漁 獲 物 の 中 でヤリイカは, 水 揚 金 額 が 2 億 円 ( 平 成 18~20 年 平 均 )と 沖 底 水 揚 高 の 約 3 割 を 占 める 重 要 な 魚 種 であり( 図 5), 収 入 増 にはヤリイカの 単 価 向 上 が 最 も 効 果 的 との 判 断 から 高 付 加 価 値 化 の 対 象 魚 種 とした 1 品 質 管 理 の 向 上 9% 5% 6% 20% 8% 8% 6% 5% 33% ヤリイカ スルメイカ ヒラメ ホウボウ マダイ チダイ カレイ 類 メヒカリ アジ 類 その 他 図 5 沖 合 底 びき 網 漁 業 ( 漁 協 所 属 船 )の 魚 種 別 水 揚 げ 金 額 割 合 (H18~20 年 平 均 ) 沖 底 の 通 常 操 業 は 1 泊 2 日 であり, 漁 獲 物 のヤリイカは 樽 氷 により 魚 倉 内 で 保 管 され るが, 初 日 に 漁 獲 したヤリイカは 船 内 で 一 昼 夜 保 管 され, 白 く 変 色 し 魚 価 が 下 がる そ こで 変 色 防 止 のために, 船 上 で 発 砲 スチロール 箱 に 詰 め 保 管 し 出 荷 する 高 鮮 度 出 荷 試 験 を 行 った( 図 6) 収 入 水 揚 量 (トン) 水 揚 高 ( 百 万 円 ) 大 型 船 (70トン 型 ) H14~18 年 度 漁 期 平 均 (5か 年 ) 計 画 ( 小 型 化 に よる 見 込 み) 単 位 : 百 万 円 実 績 H20~22 年 度 漁 期 平 均 233 170 194 102.2 76.2 107.0 経 費 94.1 57.9 81.6 修 繕 費 12.4 1.5 3.8 燃 油 代 25.5 21.0 17.7 人 件 費 35.8 22.3 33.7 その 他 20.5 13.1 26.4 償 却 前 利 益 8.1 18.3 25.4
銚 子 漁 港 魚 市 場 で 平 成 20 年 3 月 に 3 日 間, 計 123 箱 (547 kg)を 出 荷 して 買 受 人 にア ンケート 調 査 を 実 施 した アンケートでは, 落 札 した32 業 者 のうち12 業 者 から 回 答 が あり,4 割 が 肯 定 的 意 見 ( 鮮 度 が 良 い, 手 間 がかからない, 買 いやすい )で,6 割 が 否 定 的 意 見 ( 規 格 が 一 定 でない, 詰 め 替 えの 手 間 がある, イカ 全 体 を 見 られ ない )であった( 図 7) 銚 子 漁 港 では 箱 詰 め 出 荷 品 の 取 扱 いがほとんどないため,こ のような 結 果 になったと 思 われる 58% 42% 箱 詰 め 継 続 賛 成 従 来 どおり 樽 氷 で 良 い 図 6 ヤリイカの 箱 詰 め 図 7 箱 詰 め 出 荷 アンケート 結 果 遅 い 入 港 時 間 や 市 場 休 場 日 により 翌 朝 入 札 となる 場 合 想 定 した 試 験 ( 最 終 曳 網 のイカ を 陸 上 で 保 管 し, 翌 朝 入 札 した 試 験 )では, 箱 詰 めは 樽 氷 より 単 価 が 220 円 /kgアップ した しかし, 日 帰 り 操 業 の 試 験 では 樽 氷 も 鮮 度 が 良 く, 箱 詰 めと 樽 氷 の 単 価 の 差 は 19 円 /kgとほとんどなく, 箱 詰 め 出 荷 の 資 材 費 などをカバーできなかった 通 常 操 業 の 初 日 漁 獲 物 など 長 時 間 保 管 されたイカは 箱 詰 め 出 荷 により 単 価 上 昇 が 見 込 めることが 分 かったが,ヤリイカ 狙 いの 場 合 は 鮮 度 を 重 視 した 日 帰 り 操 業 となり, 市 場 の 評 価 が 箱 詰 めと 樽 氷 で 同 等 であったことから, 市 場 への 箱 詰 め 出 荷 は 行 っていない 2 新 たな 流 通 経 路 の 開 拓 表 4 ヤリイカ 等 の 箱 詰 め 出 荷 量 新 たな 流 通 経 路 の 開 拓 として, 平 成 20 年 度 事 業 年 度 出 荷 量 備 考 に 東 京 の 荷 受 け 業 者 へヤリイカの 箱 詰 め 合 計 (6 月 ~ 翌 5 月 ) (kg) 1 トン(137 箱 )を 出 荷 したところ, 販 売 単 価 は H19 年 度 547 123 箱 浜 値 の 約 1.6 倍 となり 経 費 ( 箱 代, 送 料 など) H20 年 度 1,000 137 箱 をまかなえることが 確 認 できた H21 年 度 1,231 115 箱 現 在, 地 元 特 産 品 を 扱 う 銚 子 物 産 館 と 連 携 し, H22 年 度 1,566 128 箱 ヤリイカ 以 外 の 鮮 魚 も 含 めて 東 京 方 面 の 料 理 店, 居 酒 屋 などに 年 間 1 トン 程 度 を 出 荷 して いる( 表 4) ヒラメ,ホウボウ,マアナゴ, アオメエソ(めひかり),チダイ( 花 鯛 ),アカ ムツ,ユメカサゴ(のどぐろ),ボタンエビな ど 色 々 獲 れる 中 から 旬 の 魚 を 選 び おまかせ 鮮 魚 ( 図 8)として 1 箱 1 万 2 千 円 程 度 ( 税 箱 代 送 料 別 )で 注 文 を 受 け, 平 成 22 年 度 は 128 箱 を 販 売 した 販 売 価 格 は 浜 値 の2 割 増 し 図 8 おまかせ 鮮 魚 の 出 荷 を 目 安 に 設 定 しているので,1 箱 で 約 2 千 円 の 5
利 益 となる まだまだ 不 慣 れな 点 があり, 出 荷 量 はなかなか 伸 びず 試 験 販 売 の 域 だが, 鮮 度 の 良 い 魚 が 安 く 買 えるとあってリピーターが 付 いており, 手 応 えを 感 じている 3 漁 獲 物 の 高 付 加 価 値 化 以 前 から 乗 組 員 がヤリイカの 沖 漬 けをおかず 用 に 作 り 食 べていたこと, 船 上 で 手 間 がかから ない 加 工 品 としてスルメイカではポピュラーだ が,ヤリイカの 商 品 はほとんど 見 かけないとい うことで 沖 漬 けの 商 品 開 発 にチャレンジした 高 鮮 度 出 荷 試 験 にあわせて, 乗 組 員 のレシピ と 地 元 醤 油 企 業 製 品 をもとに3 種 類 の 漬 け 汁 (1 昆 布 つゆ,2 醤 油 酒 みりん,3 昆 布 つゆ みりん)で 沖 漬 け( 計 150kg)を 試 作 した 試 作 品 図 9 試 作 したヤリイカ 沖 漬 け は, 漬 け 汁 とイカを 重 量 比 率 1:2の 目 安 で, 船 上 で 樽 に 漬 け 込 んだものである( 図 9) 試 食 の 結 果,1 昆 布 つゆの 漬 け 汁 が 最 も 高 い 評 価 で 商 品 のタレに 決 定 したが, 操 業 中 ではサイズ 選 別 に 十 分 時 間 をかけられないため 大 きさの 違 いによ る 味 の 濃 さに 差 が 生 じること, 揺 れる 船 上 では 重 量 を 正 確 に 測 定 できないため 毎 回 微 妙 に 味 が 変 わることなど 課 題 が 残 った そこで, 水 揚 げした 新 鮮 なイカで 沖 漬 けを 作 り, 千 葉 県 漁 連 との 連 携 のもと 1 杯 ごと 冷 凍 パ ック 詰 めにして, 年 間 200~300 kgを 加 工 した 図 10 ヤリイカ 沖 漬 けの 試 食 主 に 産 業 祭 りやきんめだい 祭 り 等 のイベントで, ポスターやのぼり 旗 を 掲 げ,チラシや 料 理 冊 子 を 配 布 し, 漁 獲 物 の PR をしながら, 沖 漬 けの 試 食 販 売 をしている( 図 10) 今 年 のきんめだい 祭 りでは,1 杯 約 200~400g を3 ~6 杯 入 で1,200 円 /kgを 目 安 に 販 売 したところ, 好 評 であった 以 上 の 私 たちの 取 り 組 みは, 生 産 組 合 経 営 が 平 成 20~22 年 の 3 年 間 黒 字 という 形 で 現 れているので, 今 後 も 取 り 組 みを 継 続 し, 頑 張 りたいと 思 っている 5. 波 及 効 果 私 たちの 販 売 流 通 に 関 する 改 革 の 取 り 組 みがきっかけとなり, 生 産 組 合, 千 葉 県 漁 連, 銚 子 物 産 館 で 組 織 する LLP 法 人 銚 子 底 魚 有 限 責 任 事 業 組 合 が 平 成 23 年 1 月 に 設 立 された このLLP 法 人 は, 沖 底 船 のほかに 小 底 船 の 漁 獲 物 も 買 い 付 けるようになり, これらの 漁 獲 物 の 単 価 アップに 貢 献 している さらに, 漁 協 と 県 漁 連 が 今 後 整 備 する 予 定 の 漁 獲 物 加 工 処 理 施 設, 直 販 施 設,レストランの 運 営 面 でLLP 法 人 は 中 核 的 役 割 を 担 うことになっている これらの 施 設 を 運 営 し, 地 魚 を 直 販 加 工 販 売 することで 魚 価 が 向 上 し, 観 光 客 への 銚 子 特 産 物 の PR となり, 地 域 活 性 化 へと 波 及 効 果 の 輪 が 広 がって
いくことを 期 待 している また, 私 たちの 協 業 化 の 取 り 組 みは, 水 産 経 済 新 聞 等 で 取 り 上 げられたこともあり, 沖 底 に 限 らず 各 地 で 同 様 な 問 題 を 抱 える 漁 業 者 ( 小 底,まき 網,かつお まぐろ 延 縄 等 ) から 多 数 問 い 合 わせがあり, 視 察 を 受 け 入 れている そして, 東 日 本 大 震 災 により 被 災 した 漁 業 者 の 皆 様 にも 経 営 再 建 のモデルとして, 少 しでも 参 考 になればと 考 えている 6. 今 後 の 課 題 や 計 画 と 問 題 点 小 型 化 漁 船 2 隻 目 の 改 革 計 画 を 昨 年 策 定 し 国 の 認 定 を 受 けた 2 隻 目 の 改 革 コンセプ トは, 生 産 に 関 してはブリッジを 船 首 方 向 に 移 動 させ 作 業 スペースを 確 保 し, 仕 切 り 板 や 開 口 部 を 設 けることで 漁 獲 物 の 選 別 取 り 外 しを 迅 速 省 力 化 することや 殺 菌 冷 却 水 の 導 入 による 高 鮮 度 保 持, 軽 量 網 導 入 による 燃 油 の 節 約, 小 型 船 2 隻 体 制 での 漁 場 探 索 に よる 漁 獲 効 率 の 向 上 を 掲 げている 流 通 販 売 に 関 しては, 銚 子 物 産 館 と 連 携 した 鮮 魚 の 直 販 は 居 酒 屋 だけでなく 一 般 消 費 者 にも 裾 野 を 広 げ 継 続 するとともに,LLP 法 人 が 中 心 となり 加 工 品 の 製 品 開 発 から 買 付, 加 工, 販 売 まで 一 貫 した 体 制 で 実 施 していくことで 銚 子 産 底 魚 の 消 費 拡 大, 漁 業 経 営 の 安 定, 地 域 の 活 性 化 を 目 指 すことを 掲 げている しかし, 残 念 なことに 建 造 中 の 代 船 が 東 日 本 大 震 災 で 被 災 し, 工 事 が 半 年 遅 れの 状 況 となっている 福 島 第 一 原 子 力 発 電 所 の 事 故 による 放 射 能 風 評 被 害 や 平 成 24 年 3 月 末 には 農 林 漁 業 用 A 重 油 の 免 税 還 付 措 置 (2,040 円 /kl)の 期 限 到 来 など, 経 営 環 境 は 厳 しいので, 今 後 も 改 革 の 取 り 組 みを 継 続 し, 収 益 性 を 高 め 経 営 体 質 を 強 化 することで, 将 来 的 に 全 船 の 代 船 建 造 を 進 め, 沖 合 底 びき 網 漁 業 の 明 日 へとつなげていきたい 7