平 成 22 年 度 日 本 船 舶 海 洋 工 学 会 春 季 講 演 会 2010 年 6 月 8 日 コンテナラッシングの 技 術 課 題 安 藤 英 幸 城 戸 恒 介 株 式 会 社 MTI 技 術 戦 略 グループ 1 Copyright 2006 2010 背 景 2 1
コンテナ 船 の 大 型 化 1960 年 代 にコンテナ 専 用 船 が 登 場 して 以 来 各 種 設 計 製 造 技 術 の 発 展 とともにコンテナ 船 は 大 型 化 を 続 けてきた [1] 1980 年 後 半 のPost Panamax 船 型 の 登 場 後 はその 傾 向 が 特 に 顕 著 で 現 在 では10,000TEUを 超 える 超 巨 大 コンテナ 船 も 就 航 してい る 今 後 も 物 流 効 率 燃 費 効 率 の 良 い 超 大 型 コンテナ 船 建 造 の 傾 向 は 一 定 量 続 くと 考 えられる 3 船 体 の 大 型 化 とラッシング Post Panamax 以 降 オンデッキのコンテナ 積 み 段 数 は 増 え 10,000TEU を 超 える 船 ではオンデッキ 段 数 は 最 大 で8 段 を 超 える オンデッキのコンテナには 荷 崩 れしないようラッシング( 貨 物 の 固 縛 )が 施 される 船 体 の 大 型 化 の 一 方 ラッシング 技 術 は 基 本 的 に 大 きな 変 化 ない 1980 年 代 に 積 荷 時 に 自 動 ロックされるセミオートマティック ツ イストロックが 導 入 されたことなど 技 術 イノベーションは 限 られ る 4 2
荷 役 時 間 の 増 加 とラッシング 作 業 効 率 改 善 船 体 の 大 型 化 に 比 例 して 港 での 荷 役 時 間 は 延 び 特 にラッシング 解 除 作 業 の 発 生 するオンデッキ コンテナの 荷 役 作 業 時 間 の 延 びは 大 きくなる シンガポールや 上 海 のように 超 大 型 コンテナが 寄 航 するターミナル では 寄 港 時 間 の 短 縮 のため ガントリークレーン 荷 役 効 率 ととも に ラッシング 作 業 効 率 の 改 善 が 必 要 となっている 5 コンテナの 流 出 事 故 一 方 で 冬 場 の 荒 天 時 を 中 心 に 現 在 でもオンデッキ コンテナの 流 出 事 故 は 平 均 すると 毎 年 10 件 以 上 あると 言 われる 荒 天 時 の 外 力 が 想 定 以 上 であることや コンテナ 積 み 付 けやラッシ ングに 何 らかの 不 備 があった 結 果 として ラッシングの 破 断 コン テナ 流 出 につながる 6 3
現 状 のラッシング 技 術 7 ラッシング 資 材 コンテナ 船 で 使 用 されるラッシングは ルーズ ギアとフィック ス ギアに 大 別 される フィックス ギアは 船 体 に 溶 接 付 けされたラッシング アイやデッ キ ソケットと 呼 ばれる 資 材 で ルーズ ギアはツイストロックや ラッシング ロッドなど 取 り 外 し 可 能 な 資 材 である デッキソケット ツイストロック(セミオート) 8 4
ラッシング 技 術 の 進 歩 ツイストロックがマニュアルからセミオートマティック(SAT)と 進 み 最 近 では 揚 荷 時 にロック 解 除 を 必 要 としないフルオートマ ティック(FAT)が 登 場 積 み 段 数 を 増 すためより 高 い 位 置 でラッシングを 取 るためのラッシ ング ブリッジと 呼 ばれるアッパーデッキ 上 船 体 構 造 物 の 採 用 船 毎 にCargo Securing Manual(CSM)の 装 備 がIMO のSOLAS 条 約 で 義 務 化 され 船 級 承 認 を 得 るようになった 近 年 ではさらにCSM の 内 容 に 即 した 計 算 をコンピューター 上 で 行 う 機 能 が 普 及 9 フルオートツイストロックの 仕 組 み 積 荷 時 10 5
フルオートツイストロックの 仕 組 み 荷 揚 時 11 荒 天 遭 遇 時 の 外 力 に 関 する 検 討 課 題 12 6
ラッシングに 想 定 される 外 力 船 体 運 動 を 剛 体 運 動 とみなし 船 級 規 則 ないしガイドラインで 規 定 する 外 力 基 準 値 と 各 コンテナ 重 量 に 基 づき 各 ラッシングにかかる 強 度 を 計 算 各 ラッシングのS.W.L(Safety Working Load)を 超 えないように 積 み 付 けを 行 なう S.W.Lには 破 断 強 度 に 対 して50% といった 安 全 率 を 持 って 決 められる 以 上 の 基 準 は 各 船 毎 のラッシングパターンもあわせて CSM (Cargo Securing Manual)に 記 載 される 13 船 体 の 弾 性 体 挙 動 による 最 大 外 力 への 影 響 船 体 の 大 型 化 に 伴 い 従 来 の 船 級 規 則 では 船 体 運 動 を 剛 体 とみなし て 計 算 していた 加 速 度 について ウィッピング や 捻 り といった 弾 性 体 挙 動 がどの 程 度 加 速 度 に 影 響 するかについては 国 内 外 の 船 級 協 会 や 造 船 所 学 会 で 理 論 計 算 や 水 槽 試 験 実 船 計 測 が 進 んでおり 今 後 注 目 される 課 題 である 14 7
実 運 航 における 船 体 動 揺 コンテナ 船 を 運 航 する 船 会 社 においても ウェザールーティングの 進 歩 もあり 以 前 よりは 強 い 荒 天 遭 遇 の 確 率 は 減 ってきていると 考 えられる CSM の 基 づく 外 力 に 実 運 航 でどの 程 度 接 近 しているか 計 測 デー タの 蓄 積 や 乗 組 員 への 提 示 の 仕 組 みといったことも 含 め 確 実 に 基 準 の 外 力 値 の 範 囲 で 運 航 するということを 徹 底 する 運 航 の 仕 組 みは 今 後 改 善 の 余 地 がある 15 実 運 航 での 荒 天 遭 遇 例 ) 1 時 間 の 最 大 ローリング 角 度 と 発 生 頻 度 16 8
コンテナ スタックに 掛 かる 荷 重 のモデル 化 コンテナ 倒 壊 事 故 の 多 くにおいて 隣 接 するコンテナ スタックがもたれか かり ドミノ 倒 しのような 格 好 で 倒 壊 する 事 例 が 多 く 見 られる 隣 接 するコンテナ スタックから 受 ける 荷 重 あるいは 周 期 や 位 相 のずれか ら 生 ずる 衝 撃 等 により 非 線 形 の 挙 動 が 生 じることが 想 定 される それがラッシング 荷 重 にどの 程 度 の 影 響 を 及 ぼすのか あるいはルーズ ギ アの 接 合 点 にある がた の 非 線 形 影 響 はどの 程 度 か こうした 詳 細 を 表 現 できる 有 限 要 素 モデルについて 現 在 東 京 大 学 で 研 究 が 行 われている 様 々なシナリオの 元 荷 重 チェーンのどこがどの 程 度 クリティカルになるか 総 合 的 なリスク 評 価 を 行 う 上 でのプラットフォームとして 期 待 される 17 ラッシング 資 材 機 能 の 検 討 課 題 18 9
ラッシング 資 材 の 軽 量 化 ラッシング 資 材 機 能 の 課 題 として 荷 役 時 間 の 短 縮 の 観 点 からは 軽 量 化 が 求 められる 例 えば 3 段 目 の 下 のコーナーをラッシングするのに 用 いるロン グ ラッシング ロッドは4.8m 17kg 程 の 重 量 がある 重 く ま た 撓 む これを 垂 直 に 立 ち 上 げ 5.2m 上 のコンテナ コーナーキャスティン グにかけ さらに 下 部 を15kg 程 度 のターンバックルを 立 ち 上 げて 接 合 する 作 業 は2 人 がかりでも 大 変 な 重 労 働 である 非 鉄 材 料 の 利 用 など 軽 量 化 を 進 めることは 作 業 性 と 安 全 性 の 向 上 に とって 課 題 である 19 現 行 のロング ラッシングロッド 材 料 : SCM 435 軸 径 : φ 22 重 量 : 17.5 kg (L=4,800mm) 長 さ : 4,500 mm ~ 4,800 mm 重 量 : 16.7 kg ~ 17.5 kg 船 級 規 則 (LR) Tensile load( 引 っ 張 り 荷 重 ) S.W.L 18 ton Proof load 27 ton Breaking load 36 ton 20 10
フルオートマティックロックに 関 する 課 題 最 近 のフルオートマティック ツイストロック(FAT)は 揚 荷 時 にロック 解 除 が 不 要 のため 荷 役 作 業 の 安 全 と 効 率 上 のメリットは 大 きい FAT は 荒 天 遭 遇 時 の 鉛 直 方 向 加 速 度 が1G を 超 え 持 ち 上 がるような 加 速 度 のかかる 場 合 にロック 解 除 し 外 れる 懸 念 がある 実 際 に2006 年 2 月 にはビスケ 湾 付 近 であるメーカーのFAL を 採 用 した 船 で3 件 の 事 故 があった 著 者 らも2005 年 の12 月 に 市 場 に 存 在 した5 社 のFAL の 評 価 を 総 合 的 に 行 ったが 荒 天 時 の 外 れやすさには 相 対 的 に 大 きな 差 が 存 在 する FAT の 船 級 規 則 への 反 映 や 荷 役 効 率 改 善 と 荒 天 時 の 安 全 の 両 立 は 追 及 す るべき 課 題 ある 21 経 年 劣 化 の 影 響 コンテナのポストやコーナーキャスティングといったコンテナの 箱 自 体 (ISO 規 則 ) またデッキ ソケットなどラッシング( 船 級 規 則 )に ついて 設 計 時 には 規 則 要 求 を 満 たすものであっても 経 年 劣 化 減 肉 により 強 度 が 要 求 を 不 足 するケースもある コンテナについては CSC(Container Safety Convention: コン テナ 安 全 条 約 )による 承 認 スキームによる 機 能 確 認 やISO で 経 年 劣 化 時 の 強 度 基 準 に 関 する 議 論 が 行 われているが ラッシングについて は 今 のところ 経 年 劣 化 に 関 する 議 論 は 少 なく 各 船 社 の 判 断 に 頼 っ ており 今 後 の 課 題 と 言 える 22 11
ソフトウェアの 検 討 課 題 23 ソフトウェアに 関 する 検 討 課 題 ラッシングがCSM に 準 じているか 現 在 は 積 みつけ 計 画 をBAPLIE 等 の 標 準 形 式 で 積 みつけ 計 算 機 から 出 力 し 専 用 のラッシング 計 算 機 で 確 認 するこ とができるようになっている 本 船 乗 組 員 及 び 陸 のプランナーがこうした ラッシング 強 度 のチェックを 行 うこと ラッシング 計 画 どおりに ラッシングのし 忘 れのチェックや 緩 みがあった 場 合 のまし 締 めなど 実 施 されることを 徹 底 すること コンテナの 重 量 については 申 告 ベースでなく 実 際 の 重 量 計 測 値 を 使 うこと も 計 算 精 度 の 向 上 には 望 ましい 荒 天 遭 遇 時 の 外 力 について パラメトリック ロールの 回 避 など 加 速 度 緩 和 する 航 海 計 画 や 操 船 方 法 の 指 導 ソフトウェアによる 支 援 なども 改 善 の 余 地 ある 24 12
まとめ 25 まとめ 以 上 ラッシングの 技 術 課 題 として 1) 荒 天 遭 遇 時 の 外 力 2) ラッシング 資 材 3) ソフトウェア の3つの 観 点 で 一 見 解 を 述 べた 今 後 これらを 総 合 したリスク アセスメントなど 信 頼 性 工 学 的 な 検 討 も 必 要 だろう 26 13
ご 清 聴 ありがとうございました 27 14