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図1 厚板製造プロセス TMCP の概要と金属組織の変化の様子 却の状態で生じさせ 結晶粒を微細にすることやベイナイ 2つの社内研究プロジェクトを経て 1981 年には八幡製鐵 トやマルテンサイトにすることで鋼材の強度の増加や靱性 所にオンライン冷却のパイロットプラントが 1983 年に を著しく向上させることができる は君津製鐵所に本格的なオンライン冷却の製造設備が 実際の TMCP では制御圧延や加速冷却に加えて再加熱 CLC 冷却装置として完成した この CLC 冷却装置は冷却 を低温で行うことやTiやNbといったMAE Micro Alloying 前に HL Hot Leveler 熱間矯正機 を有し ロールによ Element の固溶 析出を利用して粒成長や再結晶を抑制 る鋼板の拘束 スプレーによる強冷却 鋼板通過型冷却な して 制御圧延や加速冷却の細粒化を最大限に得ることが どを特徴とする当時としては極めてユニークな設備仕様を 行われている 制御圧延の歴史は 1950 年代の欧州にお 持つ当社独自のオンライン冷却装置で 冷却の均一性 形 ける低温仕上圧延 再結晶γ低温域圧延 に端を発し 状 緩冷却からDQの強冷却まで自在に行うことができる 1958 年には米国の National Steel による Nb 鋼の実用化 5)に 特徴があった 今日の加速冷却装置は CLC 冷却装置の特 より大きく進展した 1960 年代には BISRA 英国鉄鋼公 徴のいずれかを導入しているものが多い 社 や日本の研究者により制御圧延の研究が行われた こ 一方 国内では 当時の日本鋼管 株 が1980年にOLAC れらの成果は1969年に日本の各社によりX65の実用化とし 川崎製鉄 株 当時 を設置し 10) 住友金属工業 株 て結実した 1) 株 神戸製鋼所もそれぞれ独自の冷却装置を実用化した その後 当社では1 000 以下の低温加熱とCR 制御圧 これにより TMCP技術は世界に先駆けて日本の技術とし 延 厳密には未再結晶域圧延 あるいは2相域圧延を行 て確立した 6) う NIC Nippon Steel Inter-critical Rolling プロセスや LCB 現在では CLCの適用鋼材は 造船 建築 海洋構造物 7) 鋼 Ultra Low Carbon Bainite 鋼 極低炭素ベイナイト鋼 ラインパイプ 建産機 タンク ペンストックなど全分野 8) の実用化 圧延中の冷却制御 やこのプロセスを利用して に広がり 厚板製造に不可欠の技術となっている 特に 造られた高いアレスト性能を有するHIAREST 表層超細 造船分野への適用はCLCの開発と同時に行われ新HT50を 粒 鋼が実用化された 他社では住友金属工業 株 のSHT 開発した この鋼材は 従来のノルマライジングまたは 9) 法 圧延中に冷却 再加熱を行う という特殊な制御圧 CR の HT50 に比べて細粒化や組織強化により同一成分で 延がなされた 一方 加速冷却は制御圧延の発達により広 100N mm2程度の強度アップが可能であり その分Ceqを く実用化されることとなるが その研究開発の歴史は古 大幅 0.4 0.3 に低減できた 4) これにより溶接部の く 当社では 1960 年に広畑製鐵所で DQ Direct Quench 硬さを低減でき 溶接性が飛躍的に改善した 図2 2 直接焼入れ による HT60 TS590N mm 鋼 の製造が行 また CLC冷却装置は広い冷却速度範囲を有しており われた また 1970 年には熱処理の RQ Roller Quench 強冷却機能を利用した焼入れ 焼戻しのプロセスとして 設備を用いた加速冷却による極低 Ceq 炭素当量 のク HT60 HT120 TS570 1 180N mm2 鋼 の高強度鋼材 ラックフリータイプの HT50 TS490N mm2 鋼 の製造が に適用されている また その発展形のプロセス11)も含め 行われている 橋梁 SM570TMC て 造船 YP315 460N mm2 鋼 その後 1972 1974年にはDQの総合的研究が行われ 建築 BT-HT325 690 海洋 高性能鋼 BHS500 700 38

図2 強度と炭素当量の関係 図4 船体用で最も強度の高い鋼板の推移 図3 厚板分野の強度クラスとCLCおよびHTUFF の適用状況 図5 CLC-μとHLの外観 君津製鐵所 構造物 YP355 550N mm2 鋼 建産機 HT80 120 計も重要な支配因子となるために 材質予測モデルは重要 ラインパイプ X65 120 タンク ペンストック HT80 なツールとして使用されている 100 などが TMCP で製造されている 図3 3) 図4 近年 当社では CLC を第2世代の CLC μ ミュー 14) に船体用鋼の高強度化と CLC 活用の変遷を示す CLC 技 へ更新した 図5 CLC μでは これまでのCLCにく 術の適用により鋼材の高強度化が進んできたことが判る らべても冷却時の鋼板の上下面 幅方向にさらに均一な冷 一方で このような TMCP を十分に使いこなすために 却を行えるよう水の核膜沸騰特性や流れの解析 鋼板の変 は 鋳造 再加熱 圧延 冷却 焼戻しなどの製造工程に 形挙動を考慮した新しい冷却方式を開発した また 冷却 おける粒成長 加工と回復 再結晶 MAEの固溶と析出 ゾーン細分化による多段冷却の実現やこれまでの CLC 以 変態といった冶金現象を定量的に把握して 最適に制御す 上に広い冷却速度範囲の実現など世界でも最新の能力を持 ることが必要である また 金属組織と強度 靱性などの つ加速冷却装置となった これらの能力を使ってさらに新 材質を関係づけておくことも重要である この観点から当 しい商品開発を行っている 例えば 地震地帯や不連続凍 社では一貫プロセスのメタラジーとして 製造工程で生じ 土地帯に敷設されるラインパイプには 地盤変動による曲 る冶金現象をモデル化する 材質予測モデル の開発 12, 13) げ 曲げ戻しに対する変形性能が要求されるが X80クラ を行ってきた ス以上の高強度においても充分高い変形性能を有する鋼板 これは 再加熱 圧延 冷却中の温度や鋼材中の加工歪 を開発し 実用に至っている また マイナス40 以下の みを計算するプロセスモデルと再結晶や変態による組織変 極寒冷地においてもこれまでにない優れた溶接性と溶接継 化を計算する金属組織モデル 金属組織から材質を予測す 手靭性を有する海洋構造物用鋼板や橋梁用高性能鋼 る組織材質モデルからなる 成分やプロセス条件 熱履 SBHS500の製造など多くの新商品の製造に使われている 歴 圧延パスの温度 圧下量などの圧延条件 水量 冷却 2.2 HAZ 靭性制御技術 時間などの CLC 冷却条件 を与えることで製造工程での 金属組織変化や最終的にえられる強度やシャルピー靱性 厚鋼板は溶接構造用鋼として使用する場合がほとんどで vtrs を計算する このようなモデルを利用することで あることから 良好な溶接性や溶接継手部の靭性確保は極 成分や圧延条件を設計したり 最適プロセスを検討するこ めて重要となる 特に 溶接熱影響部 HAZ の靭性向上 とができる TMCPでは 成分に加えてプロセス条件の設 技術は厚鋼板開発の最重要技術の1つとしてこれまで多く 39

図8 超大入熱溶接条件 39kJ mm における造船用鋼の継 手ミクロ組織20) 図10 コンテナ船サイズと使用最大板厚の関係 裂伝播停止靭性 Kca として 4 000N mm1.5 6 000N mm1.5 が必要 ② ボンドに沿った伝播亀裂は 入熱にかかわら ず継手靭性が十分であれば伝播する間に母材に逸れて伝播 停止する という結論が得られていた23) そこで 溶接部 の脆性破壊発生を防止するとともに 重要部材に高靭性母 材を配置してアレスト性を確保することで二重の安全性が 実現されており 万が一の脆性破壊発生の場合でも 大規 模な船体の破壊は防止できると考えられた 図9 HAZ靭性制御技術と開発鋼材の変遷 脆性破壊の発生特性は 中央切り欠きタイプのディープ ノッチ試験を用いて評価されてきた また 船級規則の要 求シャルピー衝撃値とディープノッチのKc値との整合性 HAZ 靭性のさらなる向上を目指すためには 靭性支配 が報告されており 船級規則の要求シャルピー衝撃値を満 因子の明確化 HAZ靭性予測技術の確立も重要である そ 足すれば 破壊の発生特性を確保できると考えられる こで当社では HAZ靭性に及ぼす各因子 有効結晶粒径 一方 アレスト特性については 前述のアレストに関す 脆化相 硬さ等 の影響を定量的に把握し これらに及ぼ る既存知見は 板厚40mm以下の鋼板の実験で得られたも す合金元素や溶接熱履歴の影響を定式化することによっ のであり 検証されていない厚手での板厚効果による脆性 て 鋼材の化学成分と溶接条件から遷移温度を予測するモ 破壊特性の低下が推察され 最近のコンテナ船用鋼板の厚 デルの構築を進めている 21) 手化により これら厚手鋼板の破壊性能が危惧されること 3. となった 造船分野における取り組み状況 そこで 新日本製鐵では三菱重工業 株 と共同で50mm 3.1 アレスト特性 コンテナ船用厚手 EH47 鋼 70mmの板厚の鋼板を用いて 8 000ton 80MN の載荷 21世紀に入り コンテナ船は急激に大型化した コンテ 能力を有する大型引張試験機を用いたアレスト実験を行っ ナ船は コンテナの積み下ろしのために大きな開口部を有 た その結果 厚手材では 脆性き裂が溶接継手部から逸 するため 開口部周縁に配置されるハッチサイドコーミン れることが無いこと 50mm以上の厚手材母材では シャ グには厚手の高強度鋼が用いられる 図 10 はコンテナ船 ルピー衝撃値が良好でも 脆性き裂が止められないことが のサイズと使用最大板厚の関係を示した図であるが 両者 有ることを実証し 公表した 24) はほぼ比例関係にあり 10 000TEU になると 100mm 程度 この研究報告は 従来の船舶設計で想定している脆性き の板厚の鋼板が必要になってくる22) 鋼板の脆性破壊特性 裂伝播停止のストーリーが厚手材では成立しないことを示 は板厚を増すほど低下することから コンテナ船用鋼板の 唆しており 大きな衝撃を持って受け止められた 一方 厚手化により これら厚手鋼板の破壊性能が危惧された アレスト特性を確保して 大型コンテナ船の安全性を確保 以下では 造船用鋼の必要特性とコンテナ船用厚手 するソリューションとして 当社は三菱重工業 株 財 EH47 鋼開発の経緯について簡単に示す 日本海事協会と共同で アレスト性を具備し 溶接部破壊 国内造船分野では 脆性破壊の防止に関して 1980 年代 靭性に優れるEH47鋼を開発した これは 脆性破壊発生 までの研究成果から ① 長大き裂のアレストには脆性き 特性向上のために前述した HTUFF 技術を適用して大入 41

熱溶接 HAZ 組織を微細化するとともに アレスト特性向 上のために化学成分と TMCP 条件 加熱温度 CR 温度 圧下率 冷却速度等 の最適化により母材組織微細化を 図ったものである25) 本鋼材は最低使用温度である 10 においても YP460鋼の使用応力下で脆性き裂発生後 短 い距離で停止させることができる このEH47鋼は三菱重 工業 株 で建造された 株 商船三井向けコンテナ船に 初採用され 発生特性とアレスト特性による安全性の向上 と 高強度化による軽量化を両立させた鋼材として大きく 図12 実船適用結果 注目された 3.2 耐食性 原油タンカー用高耐食鋼 NSGP -1 の安全性向上に大きく寄与している 1990年代 図11に一例を示すように 原油タンカー底 3.3 造船疲労ソリューション 板に原因不明の最大深さ10mmにも及ぶ食孔が1タンク当 たり最大千数百個という膨大な頻度で発生し 穴あきによ 多くの溶接鋼構造物の長寿命化のためには耐疲労特性の る海洋汚染の懸念から点検 補修の負荷は急増し 世界的 向上が重要であり ① 疲労き裂の発生抑制技術や ② 疲労 な対策が求められた き裂伝播阻止技術が求められている 特に船舶においては EU 諸国は塗装強制化の国際条約案を国連国際海事機関 外洋での厳しい海象条件を考慮した繰り返し負荷に対して IMO に提示したが 何らかの原因で塗膜に欠陥が生じた 各種規定で定められた寿命や定期検査までの期間を考慮し 場合の腐食懸念は依然高く その結果 塗料 有機揮発物 た耐疲労性能が求められる また ① ② のような疲労 質 VOC の使用量増大という新たな問題が生じている 対策の効果を船舶の疲労設計に合理的に活用していくため 2002年に 新日本製鐵と日本郵船 株 は 鋼材による には気象 海象などで変動する応力振幅やき裂進展先の残 防食対策が実現できれば 海洋汚染リスク低減と同時に 留応力の状態をも考慮して 疲労寿命を高い精度で予想す VOC 抑制等の多大な貢献に繋がると考え 協同で研究開 ることが必要である このため造船をはじめとした溶接構 発に着手した 造物の疲労問題には ① ② と ③ 疲労寿命推定技術を合 その結果 独自に孔食過程を解明し食孔内部を再現する わせた 疲労トータルソリューション が極めて重要であ 試験方法を考案し 試験結果と実船孔食速度の定量的対応 り この詳細については第3章3 5 原理原則に迫る現 を明確化した さらに漏洩リスク排除 メンテナンス負荷 象解析 2 疲労トータルソリューション技術 で紹介す 最小化 VOC 低減そして経済性を両立する耐食目標を明 る らかにして 世界初の原油タンカー底板用耐食鋼NSGP - 3.4 造船分野における溶接技術 1 Nippon Steel Green Protect-1 を開発した 26) 本鋼を超 大型タンカーに適用することで実船での効果確認を行い 造船分野における溶接技術の進歩としては 高効率化や 図12 27) 2007年度に市販を開始した 本鋼はこれまで 継手の高強度 高靱性化に対応する新技術の開発が行われ に9隻に適用されている 2010 年に IMO 第 87 回海上安 た まず コンテナ船の大型化に伴う板厚の増大に対し 全委員会で原油タンカーの貨物タンクの腐食防止措置を 高能率なワンパス溶接を可能とする 2電極 V E G A 規定した条約改正が採択され 塗装とともにNSGP -1を Vibratory Electro-Gas Arc welding 溶接法 を新日本製鐵 含む耐食鋼が有効な耐食技術として認められた 腐食評価 日鐵住金溶接工業 株 および三菱重工業 株 の3社の 試験方法およびクライテリアは IMOルールとなり 船舶 共同研究を通じて開発した 28) 本溶接法の概要を図 13 に 示す 2電極VEGA 溶接法は 従来の1電極VEGA 溶接 法を2電極化することにより 適用板厚範囲の増大と溶接 速度の向上を図ったものである 2電極化の開発にあたっ ては ① 2電極の極性の適正化 ② 電極間距離の適正化 ③ 溶接材料のフラックス組成の適正化 ④ 2電極の揺動 条件の適正化を検討し アーク干渉やスラグ スパッタ跳 ね現象の抑制を図っている これらの開発を通じ 板厚 65mmを超える厚手鋼板に対する施工においても良好な作 業性を備えつつ安定した溶込みを実現し 施工工数の短縮 図11 原油タンカー底板に発生する食孔の概要 COT Cargo Oil Tank と溶接欠陥の効果的な排除を可能とする立向エレクトロガ 42

4. 建築分野における取り組み状況 1995年に起きた阪神淡路大震災の教訓をもとに建築構 造物の破壊性能に関する研究が進み 鉄骨構造物の品質 が見直されて 合理的な実施工に結び付けようとする試 みが進んだ31) その結果 建築鉄骨の溶接部に対して従来 よりも高い破壊靭性が要求されるようになり 例えば 高 層建築物に用いられる鉄骨の溶接部に対して 0 で70J 程度の高いシャルピー吸収エネルギーを要求する物件も 登場した32) 加えて 建築構造物の複合用途化 大型化や 無柱大スパン空間の実現要求による高強度化 厚手化と 鉄骨製作での高能率溶接施工の要求が高まった31, 33) 日本 では特に超高層建築物のもっとも一般的なディテールは4 面ボックス柱であるが32) これに対しては 高能率溶接の 例として ダイアフラム溶接部のエレクトロスラグ溶接 Electroslag Welding ESW や多電極のサブマージアーク 溶接 Submerged Arc Welding SAW などがあり 溶接 入熱量は 50 100kJ mm に及ぶ 従来の建築鉄骨用鋼材にこのような大入熱溶接を適用す ると HAZ のミクロ組織が著しく粗大化し 靭性が劣化す 図13 2電極VEGA 溶接法の模式図 る懸念があった そこで 大入熱溶接を適用しても高い HAZ靭性を確保できる建築鉄骨用鋼材の開発が望まれた スアーク溶接技術として 2001年以来 三菱重工業 株 新日本製鐵ではこのようなニーズに対しても 既述の のコンテナ船建造において適用されてきた また 前述し HTUFF を適用することで 建築鉄骨用高 HAZ 靭性鋼を た高アレスト性を有し 溶接部破壊靱性に優れたEH47 鋼 開発することに成功した 33-36) 図 14 に BT-HT355C および の開発にあたっては 同時に 大入熱の適用を可能とする BT-HT440C の4面ボックス柱を例として 大入熱継手靭 フラッ 溶接材料開発を行い YP460N mm2級高靭性fcw 性を0 におけるシャルピー吸収エネルギーの平均値で示 クス入りワイヤ 溶接材料 EG-47T を開発した 本溶接材 すが 70J を超える良好な靭性が得られている 33) 料を適用することで 2電極VEGA 溶接法により作製し 現実に使用される様々な板厚に対する鋼材開発および新 たEH47鋼溶接継手の機械的特性は 船級規格の要求水準 鋼材に適用する溶接技術の開発に際しては ESW のよう 29) を十分満足したものが得られている な大入熱溶接時におけるオーステナイト域での滞留時間に 一方 タンカー建造にあたっては 二重構造 ダブルハ 加えて 特にオーステナイトからフェライトへの変態メカ ル ダブルボトム 法制化の動き等により 板継ぎ工程の ニズムに大きく影響する 800 から 500 の冷却時間に代 より高能率化が必要となっている 造船の大板継ぎには 表されるような溶接時の冷却挙動を知ることが重要であ 高能率溶接方法として従来から F C u B F l u x C o p p e r る また 実際の施工への適用のためには適正な溶込み形 Backing 片面サブマージアーク溶接が各造船所で広く適 状を得るための溶接条件を提案することも必要になる そ 用されてきたが 更なる高能率化の背景から FCuB片面 こで当社では 利用技術の一環として 溶込み形状と温度 溶接の速度を2倍以上にすることを目標に 新日本製鐵 履歴を推定する手法も開発し 実測値と良く一致すること 日鐵住金溶接工業 株 ユニバーサル造船 株 有明工 を確認している 37) 場の共同研究により 4電極による高速片面溶接法 NH- その他 ここでは詳述はしないが 建築分野において 30) HISAW 法 を開発した 本溶接法は 裏当て銅板上に は 第1章1 4 社会の発展を支える鋼材と鋼構造 イ 裏フラックスを散布し エアーホースによりこれを大板の ンフラ分野 で述べられている通り 建築物の安全性向 裏面に押し上げながら 表側より4電極のサブマージアー 上のため さらには施工性 意匠性の向上を図るために ク溶接を行い 第1 第2電極で裏ビードを 第3 第4 耐火鋼や低降伏点鋼等が開発され 広く利用されている 電極で表ビードを同時に形成する施工方法であり たとえ 5. ば板厚16mmの場合1.5m minの高速溶接速度が得られる 建産機分野における取り組み状況 この新しい溶接方法は既に造船所のブロック組立てライン 近年 新興国における旺盛な産業基盤整備を背景に 油 で実用化されている 圧ショベル トラクターショベル クレーン他の建設機 43

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植森龍治 Ryuji UEMORI 長 工博 千葉県富津市新富 20-1 293-8511 皆川昌紀 Masanori MINAGAWA 主幹研究員 藤岡政昭 Masaaki FUJIOKA 主幹研究員 白幡浩幸 Hiroyuki SHIRAHATA 主任研究員 井上健裕 Takehiro INOUE 主幹研究員 Ph.D. 野瀬哲郎 Tetsuro NOSE 鉄鋼研究所 接合研究センター所長 工博 執筆協力 金子道郎 Michio KANEKO 主幹研究員 工博 橋場裕治 Yuji HASHIBA 鉄鋼研究所 接合研究センター 主任研究員 市川和利 Kazutoshi ICHIKAWA 主幹研究員 Ph.D. 中村修一 Shuichi NAKAMURA 鉄鋼研究所 接合研究センター 研究員 島貫広志 Hiroshi SHIMANUKI 主幹研究員 工博 斎藤直樹 Naoki SAITOH 名古屋技術研究部 研究審議役 井上裕滋 Hiroshige INOUE 鉄鋼研究所 接合研究センター 主幹研究員 工博 星野 学 Manabu HOSHINO 大分技術研究部 主幹研究員 47