老後資金の計算の問題

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平成16年度

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減 少 率 ) と 平 均 余 命 の 伸 びを 勘 案 した 一 定 率 (0.3%) の 合 計 である スライド 調 整 率 を 差 し 引 いて 年 金 額 の 改 定 が 行 われる( 図 表 ) ただし マクロ 経 済 スライドが 完 全 に 実 施 されるのは 賃 金 や 物 価 があ

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職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 (5 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 区 類 団 府 分 似 体 平 均 年 齢

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2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 22 年 4 月 1 日 現 在 ) ( 単 位 : ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 7 級 1 号 給 の 給 料 月 額 最 高 号 給 の 給 料 月 額 135,6 243,7 185,8 222,9 261,9


2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

2 前 項 前 段 の 規 定 にかかわらず 年 俸 制 教 職 員 から 申 し 出 があった 場 合 においては 労 使 協 定 に 基 づき その 者 に 対 する 給 与 の 全 額 又 は 一 部 を 年 俸 制 教 職 員 が 希 望 する 金 融 機 関 等 の 本 人 名 義 の 口

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公表表紙

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損 益 計 算 書 自. 平 成 26 年 4 月 1 日 至. 平 成 27 年 3 月 31 日 科 目 内 訳 金 額 千 円 千 円 営 業 収 益 6,167,402 委 託 者 報 酬 4,328,295 運 用 受 託 報 酬 1,839,106 営 業 費 用 3,911,389 一

公 的 年 金 制 度 について 制 度 の 持 続 可 能 性 を 高 め 将 来 の 世 代 の 給 付 水 準 の 確 保 等 を 図 るため 持 続 可 能 な 社 会 保 障 制 度 の 確 立 を 図 るための 改 革 の 推 進 に 関 する 法 律 に 基 づく 社 会 経 済 情

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論点整理② 利用目的の範囲の考え方

常 勤 職 員 の 育 児 休 業 の 取 得 率 をみると 5.5% 99.3%となっており 前 年 度 に 比 べ は0.9ポイント は1.2ポイントの 増 加 ( 前 年 度 4.6% 98.1%)となっています 取 得 率 (%) 育 児 休 業 取 得 率 ( 常 勤 職 員 ) 取 得

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就 業 規 則 ( 福 利 厚 生 ) 第 章 福 利 厚 生 ( 死 亡 弔 慰 金 等 ) 第 条 法 人 が 群 馬 県 社 会 福 祉 協 議 会 民 間 社 会 福 祉 施 設 等 職 員 共 済 規 程 に 基 づき 群 馬 県 社 会 福 祉 協 議 会 との 間 において 締 結 す

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3 職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 (23 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 平 均 給 与 月 額

(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 き 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている

プラス 0.9%の 年 金 額 改 定 が 行 われることで 何 円 になりますか また どのような 計 算 が 行 われているのですか A これまでの 年 金 額 は 過 去 に 物 価 が 下 落 したにもかかわらず 年 金 額 は 据 え 置 く 措 置 をと った 時 の 計 算 式 に 基

職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 ( 平 成 年 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 福 岡 県 技 能 労 務 職 歳 1,19,98 9,9 歳 8,

(4) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 国 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている.

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平成21年10月30日

130117_『高齢社会をむかえた東京23区の将来 人口と建物の関係から見て

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 (24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 号 級 の 給 料 月 額 最 高 号 級 の 給 料 月 額 1 級 ( 単 位 : ) 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 7 級 8 級 9 級 1 級 135,6 185,8 222,9 261,

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(1)1オールゼロ 記 録 ケース 厚 生 年 金 期 間 A B 及 びCに 係 る 旧 厚 生 年 金 保 険 法 の 老 齢 年 金 ( 以 下 旧 厚 老 という )の 受 給 者 に 時 効 特 例 法 施 行 後 厚 生 年 金 期 間 Dが 判 明 した Bは 事 業 所 記 号 が

技 能 労 務 職 公 務 員 民 間 参 考 区 分 平 均 年 齢 職 員 数 平 均 給 与 月 額 平 均 給 与 月 額 平 均 給 料 月 額 (A) ( 国 ベース) 平 均 年 齢 平 均 給 与 月 額 対 応 する 民 間 の 類 似 職 種 東 庄 町 51.3 歳 18 77

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マスミューチュアル 定 額 終 身 保 険 の 特 徴 としくみ Point 1 健 康 状 態 の 告 知 は Point 2 ありません 固 定 利 率 で る 保 険 す 契 約 積 立 す * 被 保 険 者 が 入 院 中 の 場 合 など ご 加 入 いただけない 場 合 がございます

所 得 の 種 類 と 所 得 金 額 の 計 算 方 法 所 得 の 種 類 要 件 計 算 方 法 事 業 雑 営 業 等 農 業 小 売 業 製 造 業 飲 食 業 理 容 業 保 険 外 交 員 大 工 集 金 人 ピアノ 講 師 など 農 産 物 の 生 産 果 樹 の 栽 培 家 畜 の

私立大学等研究設備整備費等補助金(私立大学等

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添 付 資 料 の 目 次 1.サマリー 情 報 (その 他 )に 関 する 事 項... 2 (1) 当 四 半 期 連 結 累 計 期 間 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動... 2 (2) 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の 作 成 に 特 有 の 会 計 処 理 の 適 用.

平 成 34 年 4 月 1 日 から 平 成 37 年 3 月 31 日 まで 64 歳 第 2 章 労 働 契 約 ( 再 雇 用 希 望 の 申 出 ) 第 3 条 再 雇 用 職 員 として 継 続 して 雇 用 されることを 希 望 する 者 は 定 年 退 職 日 の3か 月 前 まで

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( 注 )1 ラスパイレス 指 数 とは 全 地 方 公 共 団 体 の 一 般 行 政 職 の 給 料 月 額 を 一 の 基 準 で 比 較 するため の 職 員 数 ( 構 成 )を 用 いて 学 歴 や 経 験 年 数 の 差 による 影 響 を 補 正 し の 行 政 職 俸 給 表 (

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 22 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 号 給 の 給 料 月 額 ( 単 位 : ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 7 級 135, , , , , ,600

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商 品 の 特 徴 とイメージ 図 しあわせ ずっと は 外 貨 建 て 運 用 の 終 身 保 険 に 円 建 て 資 産 自 動 確 保 *1 機 能 を 組 み 合 わせた 商 品 です 外 貨 建 終 身 保 険 のイメージ 図 *1 円 建 て 資 産 自 動 確 保 とは 外 貨 建 て

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Ⅰ 年 金 制 度 昭 和 37 年 12 月 1 日 に 地 方 公 務 員 等 共 済 組 合 法 が 施 行 され 恩 給 から 年 金 へ 昭 和 61 年 4 月 から 20 歳 以 上 60 歳 未 満 のすべての 国 民 が 国 民 年 金 に 加 入 厚 生 年 金 基 金 職 域

(4) ラスパイレス 指 数 の 状 況 (H20.4.1) 96.7 (H25.4.1) (H25.7.1) (H25.4.1), (H25.4.1) 参 考 値 98.3 (H25.7.1) (H20.4.1) (H25.4

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四 勤 続 20 年 を 超 え30 年 までの 期 間 については 勤 続 1 年 につき100 分 の200 五 勤 続 30 年 を 超 える 期 間 については 勤 続 1 年 につき100 分 の100 2 基 礎 調 整 額 は 職 員 が 退 職 し 解 雇 され 又 は 死 亡 した

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Transcription:

老 後 資 金 の 計 算 の 問 題 バームスコーポレーション 有 限 会 社 杉 山 明

1 一 般 的 な 老 後 資 金 の 計 算 65 歳 の 男 性 と 60 歳 の 女 性 の 夫 婦 について いくらの 資 金 があれば 老 後 を 過 ごしていけるのかを 考 えてみ たい 老 後 資 金 の 計 算 は 次 のように 計 算 することが 一 般 的 である これから 必 要 になるお 金 これから 手 に 入 るお 金... (1) (1) これから 必 要 になるお 金 これから 必 要 となるお 金 は 生 活 費 ということになる 生 活 費 は 世 帯 によって 異 なるがここでは 次 のように 仮 定 しよう 夫 婦 がともに 生 存 しているとき... 月 額 35 万 円 夫 婦 がいずれか 生 存 しているとき... 月 額 25 万 円 金 額 の 次 に 必 要 になるのが 期 間 である どの 程 度 の 期 間 生 活 費 が 必 要 になるのかということである もち ろん 人 が 将 来 どの 程 度 生 存 するのかわからない そのため 通 常 は 平 均 余 命 という 数 値 を 使 用 する 平 均 余 命 とは 性 別 ごとにある 年 齢 の 人 が 平 均 するとあと 何 年 生 きるのかという 統 計 値 で 厚 生 労 働 省 が 公 表 している シニアになる 時 期 を 65 歳 と 考 えれば 65 歳 の 平 均 余 命 を 用 いることになる 男 性 の 場 合 約 19 年 女 性 の 場 合 約 24 年 短 い 男 性 の 平 均 余 命 の 期 間 は 夫 婦 二 人 で 過 ごす 期 間 女 性 の 平 均 余 命 から 男 性 のそれを 引 いた 期 間 は 女 性 が 一 人 で 過 ごす 期 間 として 計 算 する 図 表 1 65 歳 時 の 男 女 別 の 平 均 余 命 男 性 18.74 年 女 性 23.80 年 ところで 現 在 考 えているのは 男 性 65 歳 女 性 60 歳 の 組 み 合 わせである それゆえ 女 性 の 平 均 余 命 は 60 歳 のものを 使 う 必 要 がある 女 性 の 60 歳 のときの 平 均 余 命 は 28.28 年 である この 夫 婦 の 場 合 二 人 で 過 ごす 期 間 が 19 年 (65 歳 の 男 性 の 平 均 余 命 ) 妻 が 一 人 で 過 ごす 期 間 が 9 年 (60 歳 の 女 性 の 平 均 余 命 から 65 歳 の 男 性 の 平 均 余 命 を 差 し 引 いた 期 間 )と 考 えればよいであろう これまでの 仮 定 から 生 活 費 について 計 算 してみよう 35 万 円 12 か 月 19 年 + 25 万 円 12 か 月 9 年 = 10,733 万 円.. (2) 1 億 733 万 円 が これから 必 要 になるお 金 ということになる (2) これから 手 に 入 るお 金 次 に これから 手 に 入 るお 金 を 計 算 してみよう これから 手 に 入 るお 金 の 主 なものは 年 金 である 年 金 には いくつかの 種 類 がある 人 によって 受 け 取 る 年 金 の 金 額 や 期 間 が 異 なる その 主 な 内 容 は 図 表 2 公 1 / 10

必要老後資金の計算 的年金等の種類と内容のとおりである このうち 公的年金と呼ばれるものは 基礎年金 国民年金 と厚生年金である 老後資金の計算では 通常 多くの人に当てはまる公的年金のみを考えて計算に 含める 図表 2 公的年金等の種類と内容 種類 金額 老齢基礎年金 公的年金 780,100 円 満額 老齢厚生年金 公的年金 勤務期間 標準報酬 月 額により年金額は異なる 企業年金 確定給付企業年金 年金の種類等により金額は異なる 確定拠出年金など 中小企業退職金共済など 納付期間 掛金等により異なる 注意しておきたいのは 公的年金のうちでも老齢厚生年金である 老齢厚生年金は 1 か月以上働いて いると受け取れるしくみであり 働いていた期間に応じて年金額が増加するしくみでもある したがって 妻 の就労状態によって見込まれる金額が異なるのである 厚生労働省の統計によれば 男性の公的年金 基礎年金 厚生年金 受給額の平均は月額 16.6 万円 女性は 10.2 万円である 12 倍すると それぞれ 199.2 万円と 122.4 万円になる ここ では 夫の年金年額を 200 万円 妻の年金年額を 120 万円として考える 計算は以下のようになる 200 万円 19 年 + 120 万円 14 年 + (40 万円 120 万円 3 4 + 80 万円) 9 年 = 7,010 万円... (3) なお 式の中で 40 万円 と 120 万円 3/4 のいずれか大きい金額を計算しているが これは 夫が 先に死亡した場合の遺族厚生年金の金額と 妻自身の老齢厚生年金の金額のいずれか大きな金額を 受け取るという意味である (3) 老後資金の計算と問題点 これまでの計算結果を当てはめると 老後のために準備しておきたい金額は 3,723 万円ということになる これから必要になるお金 (1 億 733 万円) これから手に入るお金 (7,010 万円) = 3,723 万円... (4) これまでの計算過程を読んでいただいた方には おそらく 2 とおりの意見があるだろう 一つは 金額が大き すぎるという意見である この意見は正しい ただし 退職金が含まれていないので 退職金を含めて 3,700 万円と考えるとよい もう一つの意見は 仮定ばかりでまったく信用できないし 現価計算もされていないのでまったく根拠がな 2 / 10

い というものであろう 実 は この 意 見 も 正 しい 平 均 余 命 を 超 えて 生 存 する 可 能 性 もある シニアの 生 活 は 65 歳 からというのも 根 拠 に 乏 しい 年 金 が 65 歳 から 受 け 取 れるというのも 怪 しい 図 表 3 計 算 の 仮 定 (その1)のようにこれまでの 計 算 は 仮 定 だらけである 図 表 3 計 算 の 仮 定 (その1) 項 目 現 状 夫 婦 が 生 活 する 生 活 費 平 均 的 な 値 夫 婦 が 生 存 する 期 間 平 均 余 命 老 後 生 活 に 入 る 時 期 65 歳 と 仮 定 これから 手 に 入 る 金 額 公 的 年 金 のみ 公 的 年 金 額 平 均 値 を 使 用 さらに マクロ 経 済 と 現 価 計 算 に 関 する 予 想 が 全 く 盛 り 込 まれていない 現 在 の 生 活 費 が 35 万 円 であったとしても 自 分 たちがシニア 世 代 になった 時 の 金 額 は インフレによりもっ と 増 えている 現 在 の 老 齢 基 礎 年 金 の 年 金 額 が 780,100 円 であったとしても 自 分 が 受 け 取 るときの 年 金 額 は 変 わっている こちらは インフレに 加 えて 人 口 動 態 の 問 題 が 絡 む そして 10 年 後 の 100 万 円 と 現 在 の 100 万 円 は 同 じ 価 値 ではない ここで 問 題 になるのは 割 引 率 である 割 引 率 を 使 うと 現 価 計 算 が 可 能 になる 割 引 率 は 裏 返 せば 資 産 運 用 利 回 りの 問 題 である 準 備 した 資 金 を 何 パーセントで 利 殖 できるのかという 問 題 が 含 まれていない このような 状 態 を 知 ってまで 3,723 万 円 を 信 用 することができるだろうか 図 表 4 計 算 の 仮 定 (その2) 項 目 現 状 インフレ 見 込 んでいない 人 口 動 態 見 込 んでいない 現 価 計 算 行 っていない 3 / 10

2 カイゼンされたモデルを 使 った 老 後 資 金 の 計 算 一 般 的 な 計 算 方 法 を 少 し 改 善 してみよう 改 善 するポイントは 図 表 5 カイゼンするポイントにまとめた とおりである 図 表 5 カイゼンするポイント 項 目 現 状 カイゼン 夫 婦 が 生 活 する 生 活 費 平 均 的 な 値 同 左 夫 婦 が 生 存 する 期 間 平 均 余 命 死 亡 率 に 基 づく 予 想 老 後 生 活 に 入 る 時 期 65 歳 と 仮 定 同 左 これから 手 に 入 る 金 額 公 的 年 金 のみ 同 左 公 的 年 金 額 現 在 の 金 額 を 使 用 年 金 額 の 増 加 を 予 想 インフレ 見 込 んでいない インフレを 予 想 人 口 動 態 見 込 んでいない 公 的 年 金 の 増 加 に 含 めて 予 想 現 価 計 算 行 っていない 資 産 運 用 の 期 待 利 回 りとして 予 想 (1) 死 亡 率 に 基 づく 予 想 平 均 余 命 に 替 えて 実 際 の 死 亡 率 に 基 づく 生 存 予 想 を 計 算 に 含 めるようにする ここで 使 用 する 死 亡 率 は 第 21 回 完 全 表 ( 厚 生 労 働 省 )である 65 歳 の 男 性 と 60 歳 の 女 性 の 組 み 合 わせによる 生 存 予 想 は 図 表 6 予 想 生 存 分 布 65 歳 男 性 X60 歳 女 性 のようになる オレンジの 部 分 がともに 生 存 し ている 確 率 えんじの 部 分 が 夫 のみ 生 存 している 確 率 青 の 部 分 が 妻 のみ 生 存 している 確 率 そして 緑 の 部 分 がともに 死 亡 している 確 率 を それぞれ 表 している たとえば 夫 75 歳 妻 70 歳 の 時 点 で ともに 生 存 している 確 率 は 62% 妻 のみ 生 存 している 確 率 は 29%である 4 / 10

図 表 6 予 想 生 存 分 布 65 歳 男 性 X60 歳 女 性 (2) インフレ 人 口 動 態 割 引 率 の 予 想 厚 生 労 働 省 は 平 成 26 年 の 公 的 年 金 の 財 政 検 証 結 果 を 公 表 している その 資 料 に 基 づけば 厚 生 労 働 省 は 今 後 のインフレの 予 想 を 0.6%~2.0%の 範 囲 で 予 想 している この 資 料 では 8 つのケース を 仮 定 してそれぞれ 年 金 額 等 を 試 算 しているが ここでは ケース E をベースに 予 想 をしたい ケース E で は 以 下 のような 予 想 が 含 められている 図 表 7 公 的 年 金 財 政 検 証 ( 平 成 26 年 )ケース E による 予 想 インフレ 実 質 賃 金 上 昇 経 済 成 長 年 金 額 増 加 1.2% 1.3% 0.4% 0.55% 図 表 7 公 的 年 金 財 政 検 証 ( 平 成 26 年 )ケース E による 予 想 によれば 所 得 代 替 率 ( 現 役 世 代 の 所 得 に 対 する 公 的 年 金 額 の 割 合 )は 2043 年 に 約 50%にまで 下 がることが 予 想 されている これからを 勘 案 して インフレについては 1% 公 的 年 金 の 増 加 率 は 0.5%としておきたい 割 引 率 とは 将 来 の 金 額 を 現 在 の 勝 に 割 り 戻 すときに 使 う 利 回 りである これは 現 在 手 元 にある 資 金 を どの 程 度 の 利 回 りで 運 用 し 続 けられるかということである シニア 層 の 世 代 がインフレ 率 を 超 えた 運 用 利 回 りを 維 持 することは 現 実 的 でなく むしろ インフレ 率 を 下 回 る 利 回 りの 設 定 が 現 実 的 である 割 引 率 は 0.5%として 設 定 したい 5 / 10

必要老後資金の計算 図表 8 仮定したマクロ経済関連の数値 (3) 項目 設定値 インフレ率 1% 年金増加率 0.5% 割引率 0.5% これから必要になるお金 これから必要になるお金は以下のように計算される (1+𝑖𝑛𝑓)𝑖 1 (1+𝑑𝑖𝑠)𝑖 1 (35 𝑝1 + 25 𝑝2 ) 𝑝1 : 二人がともに生存している確率 𝑝2 : いずれかか一方のみが生存している確率 𝑖𝑛𝑓: インフレ率 𝑑𝑖𝑠: 割引率... (5) この結果 必要になるお金の現在価値は 1 億 2,369 万円と計算される (4) これから手に入るお金 これから手に入るお金は以下のように計算される (1+𝑔)𝑖 1 3 (1+𝑑𝑖𝑠𝑐)𝑖 1 ((200 + 120) 𝑝1 + 200 𝑝3 + (120 + 200 ) 𝑝4 ) 𝑝3 : 4 夫のみ生存している確率 𝑝4 : 妻のみ生存している確率... (6) この結果 これから手に入るお金の現在価値は 8,579 万円と計算される (5) 老後資金の計算 (3)と(4)の結果から 必要となる老後資金は次のように計算できる ライフプラン これから必要になるお金 (1 億 2,369 万円) これから手に入るお金 (8,579 万円) = 3,790 万円... (7) 一般的な計算による必要老後資金は 3,723 万円と計算されたが 計算の結果は かなり似通ったもの になっている ただし 金額は仮定により容易に変動する 図表 9 計算方法により結果は大きく異なる 一般的な計算 カイゼンされたモデル 3,723 万円 3,790 万円 一般的な老後資金の計算方法で計算した結果のみを信じてはいけない理由はココにある 改善された モデルでは 各種の仮定を変化させることにより 必要となる金額がどの程度変わるのかを知ることができる 6 / 10

年 金 受 取 り 開 始 年 齢 が 引 き 上 げられたとき あるいは 予 想 以 上 のインフレになったとき 必 要 となる 金 額 は 上 振 れする 一 方 割 引 率 や 年 金 額 の 上 昇 率 が 高 くなると 必 要 となる 金 額 は 下 振 れする 図 表 10 仮 定 を 変 更 すると 金 額 が 変 化 する 現 状 変 更 後 変 更 前 変 更 後 変 化 年 金 受 取 り 年 齢 65 歳 68 歳 4,739 万 円 949 万 円 インフレ 率 1% 2% 5,903 万 円 2,113 万 円 3,790 万 円 割 引 率 0.5% 1% 3,548 万 円 242 万 円 年 金 上 昇 率 0.5% 1% 2,890 万 円 900 万 円 金 額 としていくら 必 要 かという 点 のみならず 私 たちを 取 り 巻 く 環 境 が 変 わったときにどのように 対 応 できるか ということも 考 える 必 要 がある 7 / 10

3 LGBT の 老 後 資 金 (1) 改 善 が 求 められる 公 的 年 金 制 度 LGBT とは 性 的 少 数 者 を 指 す 言 葉 である 現 在 国 レベルで LGBT の 人 が 暮 らしやすい 社 会 の 実 現 に 向 けた 取 り 組 みがなされているが 必 要 老 後 資 金 という 点 からも 改 善 すべき 点 があるのではないだろうか 第 一 に 改 善 されるべきは 遺 族 年 金 の 取 り 扱 いであろう 妻 が 老 齢 厚 生 年 金 を 受 け 取 っている 場 合 を 考 えてみよう 夫 が 死 亡 したときの 取 り 扱 いは 図 表 11 夫 死 亡 時 の 厚 生 年 金 保 険 の 取 り 扱 い 示 すとおりである 図 表 11 夫 死 亡 時 の 厚 生 年 金 保 険 の 取 り 扱 い 妻 が 受 け 取 る 年 金 は 自 分 の 老 齢 厚 生 年 金 と 夫 の 遺 族 厚 生 年 金 のいずれか 大 きい 額 になる 遺 族 厚 生 年 金 の 金 額 は 夫 が 生 存 中 に 受 け 取 っていた 老 齢 厚 生 年 金 の 金 額 から 4 分 の 1 がカットされた 金 額 であるが それでも 自 身 の 老 齢 厚 生 年 金 額 より 大 きい 場 合 が 少 なくないだろう もし 全 く 老 齢 厚 生 年 金 がない 妻 (ずっと 専 業 主 婦 )の 場 合 であれば 夫 の 遺 族 厚 生 年 金 を 受 け 取 る ことができる そして この 取 り 扱 いは 夫 と 妻 が 逆 になった 場 合 でも 同 じである 年 金 は 個 人 ごとというものの 夫 婦 の 場 合 には 便 宜 が 図 られているのが 実 情 である また 事 実 婚 の 場 合 でも 要 件 を 満 たせば 遺 族 年 金 を 受 け 取 ることができる さて LGBT の 場 合 であるが 同 姓 のカップルの 場 合 こういった 便 宜 は 全 く 図 られていない 電 通 ダイバー シティ ラボの 調 査 によれば LGBT に 該 当 する 人 は 全 体 の 7.6%に 達 しており マイノリティとはいえない ほどの 規 模 になっている 事 実 婚 同 様 に 遺 族 年 金 の 受 給 対 象 とする 取 り 組 みがなされるべきであろうと 考 えられる (2) 女 性 同 士 のカップルの 老 後 資 金 老 後 資 金 という 観 点 から 考 えると もっとも 問 題 になりそうなのは 女 性 同 士 のカップルの 場 合 である なぜ なら 男 性 に 比 べて 女 性 の 方 が 長 生 きであり それゆえ 準 備 する 資 金 も 大 きくなるからである 65 歳 と 60 歳 のカップルというケースをそのまま 適 用 し 図 表 12 男 女 の 場 合 と 女 性 同 士 の 場 合 の 比 較 8 / 10

は 女 性 同 士 のカップルの 場 合 の 不 利 益 を 計 算 したものである 女 性 同 士 の 場 合 必 要 老 後 資 金 は 12% 上 昇 することになる 図 表 12 男 女 の 場 合 と 女 性 同 士 の 場 合 の 比 較 単 位 : 万 円 男 女 のカップル 女 性 同 士 のカップル これから 必 要 になるお 金 12,369 13,263 これから 手 に 入 るお 金 8,579 8,991 必 要 老 後 資 金 3,790 4,272 準 備 すべき 資 金 が 増 える 理 由 は 女 性 同 士 であるために 生 存 する 確 率 が 上 昇 し これから 必 要 になるお 金 が 増 えること そして 一 方 が 亡 くなったときの 遺 族 厚 生 年 金 を 受 け 取 ることができないために これから 手 に 入 るお 金 がそれほど 増 えないことによる 9 / 10

執 筆 者 杉 山 明 バームスコーポレーション 代 表 一 般 社 団 法 人 シニアコンシェルジュ 協 会 理 事 CIIA CMA CFP 1 級 ファイナンシャルプランニング 技 能 士 pinfo@barms.jp メールを 送 信 されるとき @を 小 文 字 に 変 換 してください 外 資 系 生 命 保 険 会 社 の 商 品 開 発 部 門 外 資 系 運 用 会 社 のミドルオフィスを 経 て ファイナンシャ ルプランナーとして 独 立 大 学 専 門 学 校 における 教 育 事 業 会 社 行 政 機 関 金 融 機 関 各 種 団 体 における 講 演 を 通 じ て 金 融 知 力 の 普 及 に 努 める FP 向 けには ライフ プランニング 統 合 ソフト FP-MIRAI を 開 発 近 年 はシニア 向 けサービスに 注 力 し 一 般 社 団 法 人 シニアコンシェルジュ 協 会 を 設 立 税 理 士 弁 護 士 FP 葬 祭 ディレクターなどシニアの 専 門 家 の 活 動 の 基 盤 となる 資 格 シニアコンシェルジュ の 普 及 に 注 力 中 主 な 著 書 (すべて 単 著 ) 老 後 破 産 しないためのお 金 の 本 ( 河 出 書 房 新 社 ) 投 資 信 託 エキスパートハンドブック ( 近 代 セールス 社 ) 1000 億 円 を 動 かすファンドマネージャー 塾 (こう 書 房 ) かしこいお 金 の 育 て 方 マーケティング ノート (INSPRESS 績 文 堂 ) 絵 で 見 てわかる!3 級 FP 要 点 整 理 テキスト 絵 で 見 てわかる!3 級 FP 過 去 問 題 & 解 説 集 ( 近 代 セールス 社 ) 主 な 連 載 保 険 ビジネスインサイド&アウトサイド ( 週 刊 インシュアランス) 1 ランク 上 のファンド 活 用 術 FP-MIRAI 活 用 法 資 産 運 用 う~んと 楽 しく 学 び 塾 (ファイナンシャル アドバイザー) 生 命 保 険 を 見 直 すならコレ ( 日 刊 ゲンダイ) 関 連 URL バームスコーポレーション http://www.barms.jp ライフプランニング 統 合 ソフト FP-MIRAI http://www.fpmirai.com FP2 級 受 検 対 策 ~Terakoya http://www.eefp.net 一 般 社 団 法 人 シニアコンシェルジュ 協 会 http://www.428c.org Akira Sugiyama 2016