新 春 対 談 福 島 原 発 事 故 1000 日 国 民 は 何 を 知 ったのか 知 らないのか 対 談 : 光 平 さん( 元 駐 スイス 大 使 ) 博 史 さん( 前 衆 議 院 議 員 ) 司 会 : 仁 也 (KAZE to HIKARI) 以 下 敬 称 略 第 一 部 原 点 を 見 つめる そもそも なぜ 原 発 に 反 対 なのか れそうです 新 年 を 迎 えるにあたり 今 日 はお 二 人 にあらため 新 年 明 けましておめでとうございます 3.11 か らすでに 1000 日 が 過 ぎ あまりに 多 くのことが ありました ともすると 私 たちはその 細 部 に 追 われて なぜ 原 発 に 反 対 するのかその 原 点 すら 忘 て なぜ 反 対 することを 決 意 されたのか お 伺 い します はじめに 外 務 省 にお 勤 めされ 国 連 局 審 議 官 駐 セネガル 大 使 衆 議 院 渉 外 部 長 そして 駐 スイス 大 使 として 日 本 の 外 交 で 大 変 ご 活 躍 さ れてきた 光 平 さんからお 願 いします 1
多 数 出 てきているからです それにもかかわらず 原 発 を 動 かす 新 設 するなどはあり 得 ないことで す 参 考 : 避 難 者 調 査 福 島 県 内 90,384 人 ( 昨 年 12.12 現 在 ) 福 島 県 外 49,554 人 ( 昨 年 11.14 現 在 ) 福 島 県 は 震 災 当 時 直 接 死 で 亡 くなられた 方 を 1,603 人 とし その 後 避 難 先 などの 関 連 死 明 けましておめでとうございます 実 は 私 は 早 く から 原 発 に 反 対 しています 1999 年 に 外 務 省 を 退 職 した 後 に 浜 岡 原 発 の 全 国 署 名 運 動 の 先 駆 け となる 有 識 者 声 明 に 参 加 しました 当 時 スリー マイル 事 故 以 来 二 十 数 年 にわたって 諸 外 国 は 原 発 を 製 造 することをやめていました ところが 日 本 だけはそれから 22 基 も 作 っているという 異 常 な 状 況 に 危 険 性 の 認 識 について 日 本 は 世 界 から ずれていると 思 ったのです で 亡 くなった 方 を 1,604 人 と 発 表 ( 昨 年 12 月 19 日 )しています 関 連 死 は 驚 くべき 数 値 で 津 波 や 地 震 で 亡 くなった 方 をわずかながらも 超 え てしまいました この 内 訳 を 丁 寧 に 分 析 されるべ きだと 考 えています さて 私 たちは 経 済 成 長 のために 電 力 を 必 要 とし 科 学 を 信 じて 原 発 を 容 認 してきた 歴 史 がありま す 今 回 の 事 故 はとても 古 いタイプの 原 発 なので 仕 方 なかった さらに 改 良 したものがあるし あ るいはもっと 優 れたものを 開 発 すべきだという 意 見 があります こうした 近 代 主 義 からの 科 学 論 についてはどう 思 いますか 東 電 関 係 者 以 外 では 初 めて 福 島 第 一 原 発 の 一 号 機 に 被 ばく 覚 悟 で 建 屋 内 部 に 入 られ 原 発 爆 発 の 原 因 は 地 震 ではないかと 示 唆 された 前 衆 議 院 議 員 博 史 さんはどうですか 明 けましておめでとうございます しかし そう 口 にしながらも 私 は 胸 が 痛 みます それはいまだ に 14 万 人 もの 福 島 県 の 人 たちが 避 難 先 でこのお 正 月 を 迎 えざるを 得 ない さらに 放 射 能 の 影 響 と しか 思 えないような 甲 状 腺 がんが 子 どもたちに あの 事 故 は 古 いタイプの 原 発 だから 事 故 が 起 き 2
た と 言 うのであれば 事 故 原 因 を 明 らかにして くださいと 言 いたい 原 因 をあいまいにしながら 古 いタイプが 原 因 だ というのは 理 屈 が 成 り 立 っ ていないのです 推 進 派 の 人 たちは 大 変 頭 がいい のでしょうか 彼 らの 作 る 分 厚 い 資 料 は だ と 思 う というような 責 任 回 避 がいつでも できるような 表 現 が 使 われ 事 実 関 係 を 断 定 する 表 現 は 一 切 ありません ですから 彼 らは 同 じよ も 原 発 の 安 全 性 を 高 める などと 言 う 議 論 自 体 はじめから 意 味 をなさないのです 福 島 の 事 故 は そのことを 立 証 しました 人 間 社 会 が 受 け 入 れが たい 原 発 事 故 は 放 射 能 を 放 出 する それは 一 人 の 人 間 のすべてを 奪 い 去 るものであると なぜ 人 類 は 原 子 力 から 決 別 しないのか それは 真 の 指 導 者 がいないからです 知 性 だけではだめです 感 性 と 思 いやりが 新 しい 指 導 者 には 求 められます うに 新 しい 原 発 でも 安 全 などけっして 断 定 など しないのです ところが どんな 原 発 であろうが 放 射 能 自 体 はそもそも 無 害 化 できないのです 安 全 保 障 と 原 発 安 倍 政 権 が 唱 える 積 極 的 平 和 主 義 では 集 団 的 自 衛 権 の 行 使 を 重 視 しています 軍 事 同 盟 国 ア メリカとより 連 携 を 強 めて 安 全 保 障 を 高 める と いうことがその 目 的 だとしています しかしそれ 以 前 に 原 発 は 攻 撃 される 対 象 としてとても 危 険 な 気 がしますが その 点 についてはどうでしょう か 私 は 原 発 は 日 本 の 安 全 保 障 上 の 重 要 な 問 題 だと 3.11 以 前 から 指 摘 してきました そして 福 島 の 事 故 は それを 立 証 したと 思 います いかなる 核 兵 器 よりも 恐 ろしい 超 巨 大 核 兵 器 そのものであ その 通 りだと 思 います ドイツを 代 表 する 学 術 研 究 機 関 マックス プランク 原 子 力 研 究 所 の 元 所 長 のハンス = ペーター デュール 博 士 は 人 間 社 会 が 受 容 できない 危 険 を 持 つ 科 学 技 術 は 事 故 の 可 能 性 が 完 全 にゼロでなければ 忘 れ 去 るべき である と 言 っています 放 射 能 被 害 をもたらす 原 発 はこれに 当 てはまります ですから そもそ るということです そうではあれば 4 号 機 問 題 ( 大 量 の 使 用 済 核 燃 料 が 不 安 定 な 状 態 に 置 かれ ている)は もっとも 窮 迫 した 世 界 の 安 全 保 障 問 題 であるわけです にもかかわらず 従 来 型 の 安 全 保 障 論 をやっているのは 不 可 解 です 原 発 の 安 全 保 障 における 脆 弱 性 というのは 決 定 3
的 なものです 政 治 の 分 野 では これについては その 威 信 は 失 墜 しましたね 誰 も 言 わない なぜなら テロや 軍 事 行 動 からそ の 脆 弱 性 を 回 避 する 方 法 が まったくないからで す この 議 論 を 始 めると 原 発 がそこにあること が そもそも 不 都 合 な 事 実 になってしまいます 集 団 自 衛 権 の 観 点 から アメリカは 日 本 をどう 見 ていると 思 いますか 今 回 の 原 子 力 規 制 委 員 会 による 新 安 全 基 準 に は そうしたものはまったくありません 今 回 の 新 安 全 基 準 では 敷 地 外 のことについ てはまったく 触 れていません 敷 地 の 外 には 送 受 電 網 が 膨 大 にあります この 中 には 原 発 停 止 時 の 電 力 の 受 電 ラインも 含 まれ テロがこれを 攻 撃 したならば 原 発 はたちまち 外 部 電 源 を 失 いメル トダウンにつながります そうかと 言 って それ らを 防 衛 する 範 囲 はあまりに 広 大 になります 川 内 さんがおっしゃる 通 り これに 対 処 すべき 方 法 はないのです 原 子 力 規 制 委 員 会 の Web ページには 委 員 長 が 報 道 関 係 者 と 会 話 する 議 事 録 が 全 部 残 っている のですが それを 見 ると 委 員 長 は 私 のできるこ とは 全 部 やっている と 言 わんばかりです 東 日 本 の 津 波 が 来 たら 健 全 性 は 保 てるかと 言 われる と よく 分 からない そういうことがないように 願 っていますけれども 余 り 難 しいことを 聞 かな いでください 朝 から 疲 れています ( 昨 年 10 月 30 日 記 者 会 見 )と かなりお 疲 れのようです これ 以 上 は 勘 弁 してほしい という 感 じですね アメリカは 福 島 事 故 で 脆 弱 性 を 露 呈 した 原 発 を 100 基 以 上 も 抱 えた 現 状 に 震 え 上 がっていると 思 っています 簡 単 には 戦 争 などできない 本 当 に 戦 争 などをしてしまったら その 反 撃 でテロに よって 攻 撃 されることは 現 実 的 脅 威 です 日 本 も 同 様 に 脆 弱 ですが 集 団 的 自 衛 権 により 日 本 がア メリカと 行 動 を 共 にして 戦 争 などに 巻 き 込 まれ たら テロ 対 象 国 となり 簡 単 にやられてしまい ます これだけ 脆 弱 ならば その 防 衛 ができない 敷 地 内 のことでも 彼 らが 十 分 な 役 割 を 果 たして いるとは 思 えません 安 全 が 保 証 されていない 中 で 大 飯 原 発 を 稼 働 させる 規 制 委 員 会 は 完 全 に しかも あふれ 出 る 放 射 能 のリスクは 日 本 にとど まらない このことが 3.11 で 世 界 的 に 周 知 され たわけです 集 団 的 自 衛 権 については この 一 点 をもって 私 は 反 対 ですね 4
その 論 点 は 国 民 の 皆 さんにきちんと 理 解 してほ しいですね アメリカは 先 制 的 自 衛 権 ( 防 衛 のた めに 先 制 攻 撃 する 権 利 )を 行 使 すると 言 い 放 ち 北 朝 鮮 や 中 国 に 限 定 した 安 全 保 障 に 限 らず 地 球 の 裏 側 まで 行 動 を 共 にすると 9.11 のようなこと が 日 本 の 原 発 で 起 きる 可 能 性 があるわけですね 中 東 などで 実 際 にこれを 行 使 してきた 国 です で すから 日 本 が 集 団 的 自 衛 権 で 一 緒 に 行 動 すると 日 本 が 反 撃 されるわけです ドラマ 半 沢 直 樹 ではないですが 100 倍 返 し されるわけです 参 ります ( 一 同 笑 ) 使 用 済 み 核 燃 料 の 問 題 原 子 炉 の 核 燃 料 は 使 用 前 核 燃 料 よりも 使 用 済 核 燃 料 こそが 放 射 能 そのものとなります 人 間 が 近 づくと 10 秒 程 度 で 死 に 至 るという 放 射 線 量 を 放 ちます 私 は 東 電 と 直 接 電 話 で 話 したと ころ 1 時 間 あたり 数 千 シーベルト 以 上 になる と 回 答 がありました 以 上 と 言 ったの は 単 位 が 千 ではなく 万 になることもあるかと 問 うと あります とはっきり 答 えたのです 現 在 全 国 に 17,000 トン 以 上 あります 使 用 済 核 燃 料 は 原 発 そのものの 問 題 からある 意 味 独 立 してい て 原 発 に 反 対 しようが 賛 成 しようが あるいは 原 発 がなくなったとしても 避 けて 通 れない 巨 大 5
な 問 題 として 存 在 し 続 けます 1000 年 経 った 遺 跡 は 立 派 なものですが これは 10 万 年 経 っても 放 射 能 を 放 つ 悪 魔 の 遺 跡 として 地 球 上 に 大 量 に 残 るわけです 私 は 目 の 前 にある 事 故 収 束 も 当 面 きわめて 大 事 ですが これはより 大 きな 問 題 だ と 考 えています 日 本 学 術 会 議 は 暫 定 保 管 というモラトリアム 期 間 の 設 定 を 提 唱 しています これは いきなり 最 終 処 分 に 向 かうのではなく 問 題 の 適 切 な 対 処 方 策 確 立 のために 数 十 年 から 数 百 年 程 度 は い ったん 乾 式 キャスクなどに 貯 蔵 しようというも のです この 期 間 を 利 用 して 容 器 の 耐 久 性 の 向 最 終 処 分 方 法 は 誰 にも 分 からないのです 推 進 派 も 将 来 何 とかします という 状 態 です それが 上 や 放 射 性 廃 棄 物 に 含 まれる 長 寿 命 核 種 の 半 減 期 の 短 縮 技 術 ( 核 変 換 技 術 )などの 科 学 技 術 発 展 に 期 待 したいようです 分 かっていながら なぜ また 再 稼 働 するのかを どうしても 最 初 に 言 いたいです 4 号 機 の 問 題 で 使 用 済 核 燃 料 が 注 目 されてきま した これをうまく 取 り 出 したところで また 大 型 共 同 プールに 移 すのでは 安 全 ではありませ ん 費 用 の 制 約 からそれができない 本 来 直 接 乾 式 キャスクに 移 すべきなのに ここに 事 故 処 理 の 国 策 化 がなされていないことの 問 題 が 象 徴 されております 参 考 : 乾 式 キャスク(dry cask) 使 用 済 み 核 燃 料 をプールに 貯 蔵 するよりは 冷 却 水 の 電 源 喪 失 でメルトダウンを 起 こさないため 優 れた 貯 蔵 方 法 と 言 われる 内 部 では 不 活 性 気 体 でおおわれている ただし プールと 比 べてコストが 高 い 参 考 : 日 本 学 術 会 議 高 レベル 放 射 性 廃 棄 物 の 処 分 について http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-22- k159-1.pdf 暫 定 的 ではあるが 今 考 えうる もっとも 安 全 な 措 置 を きちんと 国 策 として 行 うべきですね それが 乾 式 キャスクなら それをやるべきです ただし このような 対 応 をするには 東 京 電 力 の 体 制 経 営 の 問 題 をどうするのか 国 として 答 え を 出 す 必 要 があります 崩 壊 したきわめて 危 険 な 福 島 原 発 を 発 電 所 だから という 理 由 だけで 一 民 間 企 業 に 任 せるのではなく 国 が 管 理 すべきな のです そして 実 態 はすでに 破 たんしている 東 電 を きちんと 処 理 して その 後 の 体 制 を 作 り 国 策 とすべきです 使 用 済 核 燃 料 の 問 題 も その 延 長 で 国 策 として 初 めて 考 えることができます 6
光 平 氏 プロフィール 博 史 氏 プロフィール 1938 年 東 京 生 まれ 1961 年 鹿 児 島 市 生 まれ 1961 年 東 京 大 学 法 学 部 卒 業 二 年 間 外 務 省 研 修 生 としてフランスに 留 学 その 後 分 析 課 長 中 近 東 第 一 課 長 宮 内 庁 御 用 掛 在 アルジェリ 1986 年 早 稲 田 大 学 政 治 経 済 学 部 卒 業 大 和 銀 行 入 行 1988 年 クロス ヘッド 株 式 会 社 取 締 役 就 任 その 後 衆 議 院 議 員 5 回 当 選 ア 公 使 在 仏 公 使 国 連 局 審 議 官 公 正 取 引 委 員 会 官 房 審 議 官 在 セネガル 大 使 衆 議 院 渉 外 部 長 などを 歴 任 2011 年 9 月 衆 議 院 政 治 倫 理 審 査 会 長 に 就 任 す るも 同 年 12 月 の 衆 議 院 本 会 議 で 原 子 力 協 定 に 反 対 し 辞 任 1996 年 1999 年 在 スイス 大 使 2000 年 2002 年 京 セラ 顧 問 稲 盛 財 団 評 議 員 1999 年 2011 年 東 海 学 園 大 学 教 授 2012 年 衆 議 院 本 会 議 における 社 会 保 障 税 一 体 改 革 関 連 法 案 の 採 決 では 反 対 票 を 投 じた 6 月 30 日 の 鹿 児 島 県 連 常 任 幹 事 会 で 信 念 を 持 っ 現 在 地 球 システム 倫 理 学 会 常 任 理 事 日 本 ナショナルトラスト 顧 問 東 海 学 園 大 学 名 誉 教 て 反 対 票 を 投 じたが 党 の 大 勢 とは 違 う 行 動 だ った として 県 連 代 表 を 辞 任 授 など オフィシャルサイト: http://kurionet.web.fc2.com/murata.html オフィシャルサイト: http://www.kawauchi-hiros 7