こうえいフォーラム 第 18 号 / 29.12 REAL-TIME PREDICTION OF RUNOFF USING A SEQUENTIAL-LEARNING DISTRIBUTED MODEL 一 言 正 之 * 小 野 寺 勝 ** 桜 庭 雅 明 * 杉 山 実 * 森 田 格 * Masayuki HITOKOTO, Masaru ONODERA, Masaaki SAKURABA, Minoru SUGIYAMA and Itaru MORITA We developed a real-time runoff prediction model based on a distributed model and sequential learning method. The distributed model can evaluate the river channel water level and surface groundwater level. This model can be used for real-time prediction of flood and land slide disaster, which are caused by soil and topographic conditions. The distributed model, based on an unstructured triangular mesh, is composed of rainfall infiltration, surface flow, subsurface flow, discharge flow and river flow models. To shorten the calculation time, we applied a parallel computation technique based on MPI(Message Passing Interface). For the sequential learning model, we proposed a hybrid method composed of inverse analysis and a neural network. We applied this model to the Sumiyoshi basin, and the predicted data showed good agreement with observed data. Keywords:distributed model, neural network, inverse analysis, sediment disaster, real-time prediction 1. はじめに 例 年 発 生 する 土 砂 災 害 被 害 に 対 するソフト 対 策 として 我 が 国 では 警 戒 避 難 システムの 整 備 が 進 められている 警 戒 避 難 システムでは 対 象 とする 流 域 における 土 砂 災 害 危 険 度 を 迅 速 かつ 適 切 に 評 価 する 必 要 がある 現 状 では 土 砂 災 害 警 戒 避 難 の 評 価 方 法 として 基 準 雨 量 等 による 概 略 的 な 評 価 方 法 が 用 いられる 1) ことが 多 いが 評 価 精 度 や 避 難 単 位 の 設 定 などに 課 題 が 残 されている 一 方 洪 水 の 予 測 評 価 方 法 としては 貯 留 関 数 法 とフィードバック 手 法 によ る 予 測 が 一 般 的 に 用 いられているが こうしたモデルでは 流 域 の 面 的 な 物 理 特 性 の 把 握 は 難 しい 本 論 文 は 土 砂 災 害 危 険 度 の 評 価 をリアルタイムかつ 高 精 度 に 行 うことを 目 的 としたシステム 構 築 のうち システム 全 体 の 精 度 と 時 間 に 対 して 最 も 支 配 的 である 流 出 解 析 部 分 のモデル 構 築 につ いて 述 べるものである 土 砂 災 害 予 測 システムの 全 体 構 成 は 図 - 1 のように 流 出 解 析 モデル 斜 面 安 定 解 析 モデル 土 石 流 解 析 による 被 害 範 囲 予 測 モデル 情 報 表 示 伝 達 システムの 流 れで 示 されるが システム 全 体 の 精 度 向 上 とリアルタイム 化 は 流 出 解 析 モデルの 精 度 向 上 と 解 析 の 高 速 化 に 依 存 して いる そこで 開 発 した 流 出 解 析 モデルでは 1 流 域 内 の 水 位 分 布 を 適 切 に 計 算 するために 分 布 型 流 出 解 析 モデル * 中 央 研 究 所 総 合 技 術 開 発 部 ** 社 会 システム 事 業 部 統 合 情 報 技 術 部 を 適 用 して 流 域 地 下 水 位 および 河 道 の 水 位 を 面 的 に 評 価 可 能 とした 2リアルタイムに 評 価 が 可 能 となるように 流 出 解 析 モデルに 並 列 計 算 法 を 適 用 して 計 算 の 高 速 化 を 図 っ た 3また 各 出 水 に 対 して 計 算 精 度 を 向 上 させるために 逆 解 析 によるパラメータの 最 適 化 を 行 い その 最 適 化 した パラメータを 教 師 データとして 過 去 の 出 水 履 歴 を 学 習 する ようにニューラルネットワークによる 逐 次 学 習 モデルを 連 携 させた 開 発 したモデルについては 六 甲 砂 防 事 務 所 管 内 の 住 吉 川 流 域 を 対 象 として 再 現 解 析 に 適 用 し 計 算 精 度 の 検 証 お よび 逐 次 学 習 の 効 果 について 考 察 を 行 った 水 位 分 布 流 量 崩 壊 土 砂 量 レーダ 雨 量 データ 解 析 サーバ 流 出 解 析 モデル 2 次 元 斜 面 流 出 モデル +2 次 元 飽 和 側 方 流 モデル +1 次 元 河 道 流 モデル 斜 面 安 定 解 析 モデル 無 限 長 斜 面 安 定 解 析 モデル (モンテカルロ 法 ) 被 害 範 囲 予 測 モデル 崩 壊 土 砂 到 達 範 囲 予 測 モデル +2 次 元 土 砂 氾 濫 解 析 モデル 学 習 パラメータ 崩 壊 範 囲 氾 濫 範 囲 学 習 サーバ 学 習 モデル パラメータ 逆 解 析 +ニューラルネットワーク 情 報 表 示 伝 達 サーバ 土 砂 災 害 警 戒 避 難 情 報 表 示 システム 雨 量 水 位 観 測 所 レーダ 雨 量 崩 壊 危 険 度 予 測 結 果 土 砂 氾 濫 範 囲 予 測 結 果 図 - 1 土 砂 災 害 予 測 システムの 構 成 なお 本 稿 で 紹 介 するモデルは H2 六 甲 山 系 警 戒 避 難 システム 導 入 調 整 業 務 にて 適 用 したものである 37
2. モデルの 概 要 本 検 討 で 構 築 したモデルは リアルタイムに 予 測 計 算 を 行 い かつ 過 去 に 計 算 された 結 果 を 学 習 して 逐 次 計 算 精 度 を 高 めることを 目 的 としている ここで 用 いる 計 算 モデル は 1 流 出 解 析 2 逆 解 析 によるパラメータの 推 定 3 ニューラルネットワークによるパラメータの 逐 次 学 習 によ る 再 設 定 で 構 成 される 本 モデルの 計 算 フローを 図 - 2 に 示 す 1) 斜 面 流 斜 面 流 における 基 礎 方 程 式 は 以 下 の 通 りである (1) (2) 逆 解 析 によるパラメータの 推 定 流 出 解 析 の 繰 り 返 し 計 算 に よ り 水 文 パラメータを 逆 解 析. 過 去 のケースに 対 する 最 適 化 パラメータを 出 力 ニューラルネットワークの 構 築 入 力 層 に 観 測 データ, 出 力 層 に 水 文 パラメータを 設 定 してNNを 構 築. 水 文 パラメータの 学 習 - 再 設 定. 過 去 の 出 水 履 歴 を 学 習 した 水 文 パラメータを 出 力 流 出 解 析 学 習 された 水 文 パラメータ を 用 いて 流 出 予 測 を 実 施. (3) ここで q gx,q gy は x,y 方 向 の 流 量 フラックス(m 2 /s) h s は 表 面 水 深 (m) H s は 表 面 水 位 (m) n はマニングの 粗 度 係 数 (s/m 1/3 ) r e は 有 効 降 雨 (mm/h)である 式 (1) ~(3)の 離 散 化 後 の 有 限 要 素 方 程 式 は 次 式 で 示 される (4) ここで M は 質 量 行 列 S は 移 流 行 列 u は 未 知 量 ベク トル F は 既 知 ベクトルとする 各 係 数 行 列 は 要 素 内 で 求 めたマトリクスを 全 節 点 上 で 足 し 合 わせることにより 求 めることができる 時 間 方 向 の 離 散 化 にはセレクティブラ ンピング 法 を 用 いた 図 - 2 逐 次 学 習 計 算 の 流 れ 3. 非 構 造 格 子 を 用 いた 分 布 型 土 砂 災 害 予 測 モデル 構 築 した 土 砂 災 害 予 測 モデルのうち 流 出 解 析 モデルに ついて 説 明 する なお 本 稿 では 省 略 するが 斜 面 安 定 解 析 モデルや 土 砂 氾 濫 解 析 モデルについては 過 去 の 災 害 事 例 を 元 に 精 度 検 証 計 算 を 実 施 済 みである 2)3)4) (1) 非 構 造 格 子 の 生 成 流 域 および 河 道 の 形 状 を 適 切 に 表 現 するため 非 構 造 の 計 算 格 子 を 作 成 した 格 子 は 1 辺 約 2m の 三 角 形 格 子 で あり 格 子 生 成 にはデローニー 分 割 法 5) を 用 いた 流 域 内 の 河 道 はブレークラインとして 認 識 し 格 子 がまたがな いように 河 道 の 形 状 を 再 現 した なお 標 高 データには 2m 間 隔 のレーザープロファイラデータを 用 いた 図 - 3 に 検 討 の 対 象 とした 住 吉 川 流 域 の 非 構 造 格 子 分 割 ( 節 点 数 26172 要 素 数 51487)および 河 道 網 を 示 す 河 道 (ブレークライン) 標 高 (m) 図 - 3 使 用 した 非 構 造 解 析 メッシュ( 住 吉 川 流 域 ) (2) 流 出 解 析 の 基 礎 方 程 式 本 検 討 で 用 いた 流 出 解 析 モデルは 主 に1 斜 面 表 面 流 2 飽 和 側 方 流 3 河 道 流 4 地 表 浸 透 の4つから 構 成 される モデルの 概 念 図 を 図 - 4 に 示 す これらの 計 算 における 基 礎 方 程 式 および 数 値 解 析 法 を 以 下 に 示 す 38
こうえいフォーラム 第 18 号 / 29.12 実 況 予 測 降 雨 上 流 からの 流 量 河 道 への 流 入 表 面 流 出 4) 地 表 浸 透 地 表 面 から 地 中 への 浸 透 は Smith Parlange の 式 6) を 用 いた (1) 飽 和 側 方 流 地 中 への 浸 透 飽 和 復 帰 流 河 道 流 出 ここで f c は 浸 透 速 度 (cm/s) k s は 飽 和 透 水 係 数 (cm/s) α は 土 壌 水 分 パラメータ I は 積 算 浸 潤 水 量 (cm) Ө s は 飽 和 体 積 含 有 率 Ө r は 残 留 体 積 含 水 率 G は 毛 管 吸 引 力 (cm)である また 式 中 の B は 以 下 で 表 される (11) 図 - 4 流 出 解 析 モデルの 概 念 図 2) 飽 和 側 方 流 飽 和 側 方 流 における 基 礎 方 程 式 は 以 下 の 通 りである (5) 5) 河 道 湧 出 表 層 土 中 復 帰 流 および 表 面 流 の 流 入 による 河 川 への 水 の 供 給 は 以 下 の 式 で 計 算 する (12) (13) (6) (7) ここで Q riv は 河 川 への 流 出 量 (m 3 /s) q riv : 河 川 への フラックス(m/s) Δh s は 計 算 1ステップにおける 表 面 水 位 の 上 昇 分 (m) Area は 節 点 面 積 (m 2 )である 節 点 面 積 は 図 - 5 に 示 すように 節 点 の 周 りを 囲 む 要 素 の 中 心 を 結 んだ 多 角 形 で 定 義 する ここで h g は 地 中 内 における 水 深 (m) φ e は 有 効 間 隙 率 H g は 地 下 水 位 q sx,q sy は x,y 方 向 のフラックス(m 2 /s) k x,k y は x,y 方 向 の 透 水 係 数 (cm/s) f は 地 中 への 流 入 量 (cm/s) k out は 基 岩 への 流 出 に 関 する 透 水 係 数 である 式 (5)~(7)に 対 しても 1)と 同 様 に 有 限 要 素 法 を 適 用 した 3) 河 道 流 河 道 流 は 一 次 元 の Dynamic Wave モデルを 基 礎 方 程 式 とする (8) (9) 節 点 面 積 図 - 5 節 点 面 積 の 定 義 (3) 並 列 計 算 手 法 の 適 用 分 布 型 流 出 解 析 の 計 算 高 速 化 を 図 るため 領 域 分 割 型 の 並 列 計 算 を 適 用 した 分 割 数 は 16 とし 各 領 域 を 16 個 のCPUに 割 り 当 てて 計 算 を 行 った 各 領 域 間 のデータ 通 信 には MPI(Message Passing Interface)ライブラリを 用 いた ここで Q は 流 量 (m 3 /s) A は 流 水 断 面 積 (m 2 ) u は 断 面 平 均 流 速 (m/s) R は 径 深 (m) g は 重 力 加 速 度 (m/ s 2 ) t は 時 間 (s) q は 横 流 入 量 (m 2 /s)である 式 (8), (9)に 対 しては 有 限 体 積 法 を 適 用 した 空 間 の 離 散 化 には スタッガード 格 子 を 用 い 移 流 項 には 風 上 差 分 を その 他 の 項 には 中 心 差 分 を 用 いた また 時 間 方 向 は 陽 解 法 によ り 離 散 化 を 行 った 4. 逐 次 学 習 アルゴリズム 本 検 討 の 分 布 型 流 出 解 析 モデルにおいて 土 壌 の 透 水 係 数 と 有 効 間 隙 率 は 流 出 特 性 に 大 きく 影 響 するものである しかし これらのパラメータは 時 間 的 空 間 的 な 変 動 が 大 きいため 学 習 によるパラメータの 逐 次 補 正 が 有 効 と 考 え られる 本 検 討 では 逆 解 析 とニューラルネットワークを 組 み 合 わせてパラメータの 更 新 を 行 う 逐 次 学 習 アルゴリズ ムを 構 築 した 39
(1)パラメータの 逆 解 析 既 往 の 主 な 出 水 に 対 し 透 水 係 数 と 有 効 間 隙 率 の 最 適 値 を 逆 解 析 によって 同 定 した パラメータの 逆 解 析 は6 時 間 毎 に 行 い 出 水 ステージ 毎 にパラメータの 最 適 値 を 求 めた パラメータの 逆 解 析 は 目 的 関 数 を 最 小 化 する 問 題 とし て 解 析 的 に 行 うことができる 7)8) ここでは 目 的 関 数 を 計 算 流 量 と 観 測 流 量 の 差 の 自 乗 和 とした 逆 解 析 アルゴ リズムとして Levenberg-Marquardt 法 に 基 づくオープン ソースソフトである PEST(Parameter ESTimation) 9) を 用 いた (2)ニューラルネットワークによる 逐 次 学 習 上 記 の 逆 解 析 手 法 は 過 去 数 時 間 分 の 出 水 観 測 結 果 に 対 するパラメータの 同 定 を 行 ったものであり より 長 期 にお ける 降 雨 出 水 の 変 動 パターンを 考 慮 したものではない 長 期 過 去 履 歴 の 学 習 方 法 として ニューラルネットワーク を 用 いて 降 雨 や 流 出 パターンと 最 適 な 水 文 パラメータを 関 連 づける 方 法 が 有 効 と 考 えられる 1)11) 本 検 討 では 逆 解 析 で 求 めた 水 文 パラメータと その 時 の 観 測 雨 量 流 量 等 の 関 係 を 用 いてニューラルネットワー クを 構 築 した ネットワークはフィードフォーワード 型 ( 中 間 層 が1つ)とし ネットワークの 最 適 化 は 誤 差 逆 伝 搬 法 により 行 った また 入 力 層 については 観 測 所 の 時 間 雨 量 や 流 量 を 基 本 として 全 44 ケースについて 検 討 を 行 った 図 - 6 にニューラルネットワークの 構 造 を 示 す 重 み 係 数,バイアス 入 力 出 力 3 予 測 再 現 計 算 : 構 築 されたニューラルネットワークを 用 いて 近 年 最 大 の 出 水 である 24 年 1 月 の 予 測 再 現 計 算 を 行 い 精 度 を 検 証 した (1) 最 適 化 計 算 による 水 文 パラメータの 算 出 ニューラルネットワーク 構 築 の 準 備 段 階 として 降 雨 流 量 データが 整 備 されている 23 ~ 26 年 の 住 吉 川 の 29 出 水 を 対 象 とし 逆 解 析 による 水 文 パラメータの 算 出 を 実 施 した 逆 解 析 を 行 った 主 な 条 件 は 表 - 1 に 示 す 通 り であり 逆 解 析 は6 時 間 ごとに 行 われた 図 - 7 に 例 示 す るように いずれの 出 水 に 関 しても 流 出 の 立 ち 上 がり ピー ク 流 量 タイミングなど 共 に 精 度 良 く 再 現 することができ た また 流 出 ピーク 時 の 地 下 水 深 分 布 を 図 - 8 に 示 す 河 道 周 辺 などの 谷 部 の 地 下 水 深 が 上 昇 する 様 子 が 表 現 され ている (2)ニューラルネットワークの 構 築 最 適 化 された 水 文 パラメータを 用 いて ニューラルネッ トワークを 構 築 した ここでのニューラルネットワークで は 入 力 層 を 雨 量 や 流 量 等 の 観 測 量 とし 出 力 層 を 透 水 係 数 有 効 間 隙 率 とした 計 算 条 件 を 表 - 2 に 示 す ニューラル ネットワークの 構 築 に 当 たっては 入 力 層 の 設 定 によって 得 られる 解 が 異 なってくるため 本 検 討 では 表 - 3 に 示 す 組 み 合 わせにより 試 行 演 算 を 行 い もっとも 適 切 にパラ メータ 推 定 が 行 われたケースを 設 定 条 件 とした( 表 - 4) このときの 判 定 基 準 として ネットワークによって 得 られ たパラメータと 逆 解 析 によって 得 られたパラメータとの 相 関 が 最 も 高 いケースを 採 用 するものとした 5 流 量 [m 3 /s] 4 3 2 流 域 平 均 降 雨 観 測 流 量 計 算 流 量 2 4 6 降 水 量 [mm/h] 入 力 層 中 間 層 出 力 層 レーダー 雨 量 中 間 素 子 透 水 係 数 観 測 流 量 ( 入 力 層 の2 倍 程 度 ) 有 効 間 隙 率 図 - 6 ニューラルネットワークの 構 造 5. 実 流 域 へのモデル 適 用 本 検 討 で 構 築 したモデルを 以 下 の 手 順 で 検 証 した 1 最 適 化 計 算 :23 年 ~ 26 年 の 計 29 出 水 に 対 して 逆 解 析 による 最 適 化 計 算 を 行 い 最 適 パラメータを 同 定 し た 2ニューラルネットワークの 構 築 : 上 記 1によって 得 ら れた 水 文 パラメータと 時 間 雨 量 観 測 流 量 などの 関 係 か らニューラルネットワークを 構 築 した 1 24/1/19 24/1/19 24/1/2 24/1/2 日 時 24/1/21 24/1/21 24/1/22 図 - 7 最 適 化 計 算 結 果 24 年 1 月 2 日 出 水 対 象 期 間 表 - 1 最 適 化 計 算 の 実 施 条 件 1 回 の 最 適 化 期 間 6 時 間 最 適 化 の 目 的 変 数 23~26 年, 計 29 出 水 流 量 最 適 化 の 変 動 変 数 透 水 係 数 ( 1. 1-3 ~ 2. cm/s), 間 隙 率 (.1~.5) 8 1 4
こうえいフォーラム第 18 号 / 29.12 3 予測再現計算 構築したニューラルネットワークを用いて 24 年 1 月 2 日出水の予測計算を実施した結果を図 9 に示す また PEST による最適化計算時に用いられた平均的な 水文パラメータを用いた計算結果を図 1 に示す 固定 パラメータを用いた図 1 の計算では出水のピーク規模 や低減部分などを再現できていないのに対し 図 9 の ニューラルネットワークを用いた計算ではピーク規模や波 形を概ね再現できている また ニューラルネットワークを用いた解析は逆解析を 用いた解析に比べ大幅に計算時間が短く リアルタイムで の流出予測が可能となっている さらに今後学習履歴を蓄 積していくことで 予測精度をより高めていくことも可能 であると考えられる 5 観測降雨 観測流量 ニューロン数 4(最小) 25(最大) 中間層 ニューロン数 8(最小) 36(最大) 出力層 ニューロン数 1 8 1 日時 それぞれでネットワークを構築 図 9 NN 予測再現計算結果 24 年 1 月 2 日出水 最適化手法で算出された 透水係数 間隙率 データセット数 5 合計 1,368 4 25 年 648 26 年 2,376 流量[m 3/s] 23 年 3,996 24 年 3,348 3 2 流域平均降雨 観測流量 計算流量 4 2 6 1 8 1 平均流量 3 8 48 時間前 観測点毎 6 分雨量 3 48 時間前 流域平均積算雨量 3 過去 6,12,24 時間 24/1/22 過去 48 時間 24/1/21 1 24/1/21 最小流量 24/1/2 備考 24/1/2 ニューロン数 24/1/19 入力層 24/1/19 表 3 検討した入力層の組み合わせ 降水量[mm/h] 教師データ 1 24/1/22 入力層 6 24/1/21 誤差逆伝播法 2 24/1/21 学習方法 4 24/1/2 フィードフォワード型 24/1/19 ネットワーク型 流量[m 3/s] 表 2 ニューラルネットワークの計算条件 3 2 流域平均降雨 観測流量 計算流量 降水量[mm/h] 4 図 8 住吉川流域 流出ピーク時の地下水深分布 24/1/2 2m 24/1/19 日時 図 1 一般値での再現計算結果 24 年 1 月 2 日出水 表 4 選定した入力層の組み合わせ 12 入力層 流量,.5,1,3,6,12,24,48 時間前 最小流量(48 時間前) 流域平均積算雨量(過去 6,12,24 時間) 中間層 24 入力層 2 6. おわりに 本検討は 土砂災害危険度をリアルタイムかつ高精度に 予測するシステムを開発することを目的とし システム主 要部である流出解析モデルの構築を行ったものである 流 域内の水位分布を適切に計算するために分布型流出解析モ デルを適用し 計算の高速化のために並列計算を適用した 41
過 去 の 出 水 について 精 度 の 高 い 再 現 計 算 を 行 うため 各 出 水 に 対 して 逆 解 析 を 用 いた 最 適 化 計 算 を 行 いパラメータを 同 定 した 過 去 の 出 水 履 歴 を 学 習 して 予 測 計 算 に 反 映 させ るため 得 られたパラメータに 対 してニューラルネット ワークを 構 築 した 構 築 したネットワークを 用 いて 住 吉 川 における 24 年 1 月 2 日 の 出 水 に 対 して 予 測 再 現 計 算 を 行 い 計 算 精 度 および 学 習 効 果 の 検 証 を 行 った 学 習 を 組 み 込 んだ 予 測 計 算 では 出 水 のピーク 規 模 や 波 形 をよ り 精 度 よく 再 現 できることが 確 認 された 今 後 の 課 題 として 流 域 全 体 における 面 的 な 地 下 水 位 計 算 精 度 を 向 上 させるために 地 下 水 位 や 土 壌 水 分 などの 観 測 結 果 を 用 いてより 詳 細 な 検 証 計 算 を 行 う 必 要 がある ま た 実 際 に 予 測 雨 量 を 用 いてシステムとして 稼 動 した 場 合 の 精 度 検 証 を 行 う 必 要 があると 考 えられる なお 本 モデルは 六 甲 砂 防 管 内 の 他 流 域 についても 同 様 の 検 討 を 行 っており レーダ 予 測 雨 量 を 用 いたリアルタイ ム 予 測 システムとして 構 築 済 みである 構 築 したシステム の 画 面 表 示 例 を 図 - 11 に 示 す 図 のように システムの 表 示 画 面 ではメッシュごとに 危 険 度 および 災 害 到 達 範 囲 が 示 され きめ 細 かな 予 測 を 行 うことが 可 能 である 図 - 11 情 報 表 示 画 面 のサンプル 謝 辞 : 本 検 討 は 近 畿 地 方 整 備 局 六 甲 砂 防 事 務 所 よりデータ の 提 供 他 多 大 なるご 協 力 をいただきました 謹 んでここ に 感 謝 の 意 を 申 し 上 げます 参 考 文 献 1) 国 土 交 通 省 河 川 局 砂 防 部 : 土 砂 災 害 警 戒 避 難 ガイドライン 27. 2) 後 藤 宏 二 石 尾 浩 市 杉 山 実 小 野 寺 勝 石 井 秀 樹 遠 藤 和 志 桜 庭 雅 明 森 田 格 :リアルタイム 土 砂 災 害 予 測 システム 構 築 の 試 み 第 57 回 砂 防 学 会 研 究 発 表 会 概 要 集 pp12-13 27. 3) 後 藤 宏 二 石 尾 浩 市 杉 山 実 小 野 寺 勝 桜 庭 雅 明 森 田 格 一 言 正 之 :リアルタイム 土 砂 災 害 予 測 システム 構 築 の 試 み (その2) 第 57 回 砂 防 学 会 研 究 発 表 会 概 要 集 pp238-239, 28. 4) 後 藤 宏 二 星 野 久 史 杉 山 実 小 野 寺 勝 桜 庭 雅 明 森 田 格 一 言 正 之 千 葉 明 子 :リアルタイム 土 砂 災 害 予 測 システ ム 構 築 の 試 み(その3) 第 58 回 砂 防 学 会 研 究 発 表 会 概 要 集 pp16-161,29. 5) 例 えば 谷 口 健 男 :FEM のための 要 素 自 動 分 割 森 北 出 版 1992. 6) Smith R. E., Parlange J. Y. :A Parameter-Efficient Hydrologic Infiltration Model, Water Resources Research Vol.14 No.3 pp533-538, 1978. 7) 小 林 健 一 郎 市 川 温 立 川 康 人 : 最 適 化 アルゴリズムによる 分 布 型 降 雨 流 出 モデルパラメータの 自 動 推 定 計 算 工 学 講 演 会 論 文 集 Vol.12 pp489-492,27. 8) 小 林 健 一 郎 寶 馨 立 川 康 人 : 最 適 化 手 法 による 分 布 型 降 雨 流 出 モデルのパラメータ 推 定 水 工 学 論 文 集 Vol.51, pp.49-414,27. 9) http://www.sspa.com/pest/ 1) 稲 吉 明 男 長 江 幸 平 田 宮 睦 雄 眞 間 修 一 竹 村 仁 志 :ニュー ラルネットワークモデルによる 二 級 河 川 での 洪 水 予 測 の 基 礎 的 検 討 河 川 技 術 論 文 集 Vol.9,pp.179-184,23. 11) 槻 山 敏 昭 ほか:ニューラルネットワークによる 阿 武 隈 川 洪 水 予 測 の 基 礎 的 検 討 河 川 技 術 論 文 集 Vol.9,pp.173-178, 23. 42