中国都市交通の現状と課題

中 国 都 市 交 通 の 現 状 と 課 題 ( 財 ) 自 治 体 国 際 化 協 会 CLAIR REPORT NUMBER 8 ( July 5, 2005 ) 財 団 法 人 自 治 体 国 際 化 協 会 ( 北 京 事 務 所 )

目 次 はじめに 概 要 ⅰ 第 章 中 国 都 市 交 通 発 展 の 歴 史 第 節 初 期 の 交 通 輸 送 の 全 体 状 況 第 2 節 新 中 国 の 交 通 発 展 の 状 況 数 量 規 模 からみる 迅 速 な 拡 大 2 品 質 レベルの 大 幅 な 向 上 第 3 節 輸 送 構 成 の 著 しい 改 善 2 3 第 2 章 中 国 都 市 交 通 の 現 状 第 節 都 市 間 の 交 通 鉄 道 2 道 路 第 2 節 都 市 内 の 交 通 地 下 鉄 2 電 車 3 公 共 バス 4 タクシー 5 私 用 自 動 車 6 自 転 車 4 4 4 6 8 9 9 0 2 5 第 3 章 都 市 交 通 行 政 機 構 第 節 中 華 人 民 共 和 国 交 通 部 交 通 部 () 交 通 部 の 主 要 な 職 能 (2) 交 通 部 の 機 構 (3) 交 通 部 の 傘 下 機 関 第 2 節 交 通 管 理 北 京 市 公 安 交 通 管 理 局 第 3 節 道 路 建 設 北 京 市 市 政 管 理 委 員 会 () 主 な 職 能 (2) 内 部 部 門 (3) 傘 下 の 事 業 機 構 7 7 7 8 8 8

第 4 節 都 市 計 画 北 京 市 規 画 委 員 会 () 主 要 な 職 能 (2) 機 構 の 設 置 (3) 傘 下 団 体 2 中 国 主 要 都 市 の 企 画 局 第 5 節 研 究 機 構 国 家 知 能 交 通 システム 工 事 技 術 研 究 センター 2 中 国 城 市 規 画 設 計 研 究 院 () の 業 務 所 及 びセンター (2)5ケ 所 の 分 院 (3) 業 務 範 囲 第 6 節 各 機 構 間 の 関 係 20 2 2 24 第 4 章 北 京 市 の 交 通 状 況 第 節 全 体 状 況 都 市 間 交 通 の 状 況 2 市 内 交 通 状 況 第 2 節 道 路 交 通 北 京 市 車 両 保 有 量 とその 増 加 状 況 2 道 路 交 通 の 運 営 状 況 () 公 共 交 通 システム (2) タクシー (3) 軌 道 交 通 (4) 静 態 交 通 3 交 通 渋 滞 悪 化 の 原 因 27 28 29 29 32 33 34 36 第 5 章 中 国 の 都 市 交 通 問 題 第 節 中 国 都 市 交 通 の 課 題 交 通 渋 滞 2 駐 車 場 不 足 3 交 通 秩 序 の 混 乱 4 交 通 公 害 5 不 合 理 な 都 市 計 画 6 公 共 交 通 システム 7 法 規 体 系 と 部 門 間 の 調 整 8 交 通 道 徳 文 化 交 通 道 徳 意 識 の 低 さ 9 その 他 原 因 37 37 37 40 40 4 4 42 43

() 自 転 車 交 通 政 策 (2) 公 務 用 自 動 車 (3) タクシー 45 第 6 章 都 市 交 通 問 題 に 対 する 取 組 み 第 節 交 通 渋 滞 緩 和 対 策 高 速 軌 道 交 通 システムの 建 設 2 自 動 車 台 数 増 加 への 対 応 () 上 海 市 のナンバープレート 政 策 (2) 広 州 市 の 取 組 み 第 2 節 環 境 対 策 第 3 節 道 路 交 通 安 全 法 の 施 行 第 4 節 2008 年 オリンピック 開 催 に 向 けて 46 46 46 47 47 48 48 49 50 参 考 資 料 一 覧 5

はじめに 都 市 交 通 問 題 は 今 世 紀 に 入 ってから 先 進 国 をずっと 悩 ませている 複 雑 で 深 刻 な 問 題 で ある 都 市 交 通 は 政 治 経 済 文 化 人 口 などの 多 方 面 に 関 わる 問 題 であり 同 時 に 人 々 の 日 常 生 活 と 密 接 な 関 係 にある 課 題 でもある 90 年 代 から 中 国 経 済 は 持 続 的 に 高 度 成 長 を 続 けており 都 市 化 の 急 激 な 進 展 に 伴 って 都 市 経 済 や 社 会 活 動 は 日 に 日 に 活 発 になっている このような 情 勢 下 で 都 市 交 通 もいま だかつてないスピードで 発 展 してきた 中 国 の 都 市 交 通 の 将 来 展 望 は 先 進 諸 国 がこれま で 歩 んできた 車 社 会 の 利 便 性 や 快 適 性 などの 利 点 と 大 量 自 動 車 交 通 によってもたらされる 交 通 渋 滞 大 気 汚 染 交 通 事 故 の 多 発 などの 社 会 的 弊 害 というジレンマに 陥 ることになる こうした 弊 害 に 対 して 今 のうちにその 対 策 と 方 向 性 を 見 出 していかなければならない 時 期 に 差 しかかっているといえる 既 に 中 国 の 主 要 都 市 特 に 北 京 など 大 都 市 での 交 通 問 題 はきわめて 深 刻 である 北 京 は 500 万 以 上 ( 戸 籍 人 口 0 万 人 流 動 人 口 365 万 人 )の 人 口 を 擁 し 2008 年 オリンピ ック 開 催 を 控 え 国 際 的 大 都 市 へと 変 貌 している その 都 市 交 通 問 題 は 中 国 都 市 交 通 問 題 の 縮 図 ともいわれており この 調 査 では 北 京 の 都 市 交 通 を 主 な 手 がかりとして 現 在 の 中 国 における 都 市 交 通 の 現 状 及 び 課 題 を 報 告 する ( 財 ) 自 治 体 国 際 化 協 会 北 京 事 務 所 長

概 要 第 章 中 国 都 市 交 通 発 展 の 歴 史 49 年 の 新 中 国 建 国 時 の 交 通 輸 送 体 系 は 鉄 道 距 離 2.8 万 キロ 道 路 8.07 万 キロ 内 陸 河 川 航 路 7.86 万 キロであり 旅 客 輸 送 量 は.4 億 人 貨 物 輸 送 量.6 億 トンであった 当 時 先 進 諸 国 は 既 に 総 合 的 な 輸 送 体 系 を 確 立 させており これに 比 べ 中 国 の 交 通 輸 送 体 系 は 著 しく 遅 れていた 新 中 国 建 国 後 計 画 的 重 点 的 に 交 通 輸 送 建 設 が 行 われ 更 に 78 年 に 始 まった 改 革 開 放 後 は 交 通 輸 送 が 国 民 経 済 を 発 展 させるという 戦 略 を 採 り 政 府 が 交 通 基 礎 インフラ への 重 点 投 資 を 行 ったため 最 近 20 年 間 の 発 展 規 模 と 速 度 は それ 以 前 の 30 年 間 に 比 べて 大 幅 に 増 加 した 建 国 初 期 中 国 の 旅 客 貨 物 輸 送 は 鉄 道 輸 送 を 主 としていた しかし 現 在 公 共 道 路 輸 送 と 水 路 輸 送 が 主 体 となり 鉄 道 輸 送 は 減 少 傾 向 にある 全 体 から 見 ると 改 革 開 放 以 降 交 通 基 盤 インフラが 建 設 され 輸 送 設 備 の 改 良 ととも に 旅 客 と 貨 物 輸 送 総 量 の 規 模 が 急 速 に 拡 大 し 品 質 レベルもある 程 度 改 善 され 一 定 規 模 の 現 代 化 交 通 輸 送 システムが 形 成 された とりわけ 電 化 鉄 道 高 速 道 路 は 急 速 に 発 展 し ている これは 交 通 輸 送 の 発 展 が 新 しい 段 階 に 入 ったことを 表 している 第 2 章 中 国 都 市 交 通 の 現 状 現 在 中 国 において 鉄 道 は 省 間 輸 送 の 主 役 となっており 営 業 キロ 数 7.2 万 キロ 旅 客 輸 送 量 0.56 億 人 貨 物 輸 送 量 20.42 億 トンに 達 する 道 路 建 設 の 進 展 も 著 しく 道 路 距 離 は 76.5 万 キロ そのうち 高 速 道 路 は 2.5 万 キロに 達 した 高 速 道 路 の 建 設 は 非 常 な 速 さ で 発 展 しており 山 東 省 広 東 省 遼 寧 省 河 北 省 江 蘇 省 河 南 省 四 川 省 浙 江 省 湖 南 省 山 西 省 などの 0 省 の 高 速 道 路 距 離 は,000 キロを 越 え 遼 寧 省 と 山 東 省 は 省 都 か ら 省 内 各 都 市 までの 交 通 が 全 て 高 速 道 路 でつながった 旅 客 輸 送 量 は 47.53 億 人 貨 物 輸 送 量 は.63 億 トンに 達 した 都 市 内 の 交 通 輸 送 体 系 についてはいくつかの 都 市 で 地 下 鉄 都 市 電 車 等 高 速 軌 道 交 通 が 建 設 されているが 現 状 では 国 内 にはまだ 高 速 軌 道 交 通 システムを 完 備 している 都 市 は 無 い 状 況 である また 都 市 交 通 の 最 大 の 問 題 として 自 動 車 の 増 加 が 挙 げられる 特 に 経 済 発 展 による 所 得 の 増 加 に 伴 い 私 用 自 動 車 が 著 しい 勢 いで 増 加 している 渋 滞 を 解 消 する ために 多 くの 都 市 では 公 共 交 通 の 発 展 に 力 を 入 れており 自 動 車 数 量 の 抑 制 が 必 要 となる が 今 後 長 期 的 にその 増 加 傾 向 は 継 続 すると 予 測 されている 第 3 章 都 市 交 通 行 政 機 構 交 通 管 理 を 行 う 最 高 レベルの 行 政 機 関 は 中 華 人 民 共 和 国 交 通 部 その 下 に 実 際 の 交 通 管 理 に 携 わる 省 市 レベルの 交 通 管 理 局 が 存 在 する 各 地 方 の 交 通 管 理 局 は 交 通 部 の 地 方 で の 出 先 機 構 であり 主 に 地 方 交 通 基 本 施 設 の 建 設 作 業 を 担 当 する しかし 地 方 交 通 基 本 施 設 の 建 設 は 都 市 全 体 計 画 の 一 部 であるので 地 方 交 通 管 理 局 は 地 方 都 市 計 画 部 門 と 連 携 し 矛 盾 が 生 じた 場 合 は 双 方 が 協 議 して 解 決 することになる 但 し 交 通 管 理 部 門 は 都 市 計 画 部 i

門 の 全 体 計 画 に 反 することはできない また 地 方 交 通 基 礎 施 設 の 建 設 経 費 は 上 級 部 門 からの 予 算 配 当 以 外 に 大 部 分 が 地 方 財 政 の 負 担 となるので 各 地 方 の 交 通 管 理 局 は 公 共 道 路 水 運 航 路 の 建 設 などについて 都 市 行 政 管 理 部 門 と 協 力 関 係 を 結 ぶ 交 通 安 全 については 地 方 交 通 管 理 局 は 地 方 公 安 局 と 共 同 して 作 業 を 行 うが 主 要 業 務 は 地 方 公 安 局 が 担 当 する 第 4 章 北 京 市 の 交 通 状 況 北 京 市 の 市 内 交 通 は 道 路 交 通 が 主 体 であり 軌 道 交 通 が 総 旅 客 輸 送 量 に 占 める 割 合 は 0%にすぎない 現 状 の 旅 客 輸 送 交 通 体 系 は 道 路 交 通 に 偏 りすぎており さらに 2003 年 に 発 生 した SARS 騒 動 以 降 私 用 自 動 車 が 急 速 に 増 加 し かつ 使 用 頻 度 が 増 加 したために 北 京 市 では 過 去 最 大 の 交 通 渋 滞 が 出 現 した 第 5 章 中 国 の 都 市 交 通 問 題 中 国 の 大 都 市 では 交 通 渋 滞 駐 車 場 不 足 交 通 秩 序 の 混 乱 交 通 公 害 都 市 計 画 公 共 交 通 システム 法 規 体 系 交 通 道 徳 などの 様 々な 課 題 が 表 面 化 している 急 速 な 自 動 車 の 増 加 により 都 市 交 通 は 需 要 と 供 給 がひどくアンバランスな 状 態 である また 大 部 分 の 大 中 都 市 は 歴 史 が 古 く 多 くは 都 市 機 能 が 中 心 部 に 集 中 する 単 一 中 心 モデルであり 必 然 的 に 交 通 渋 滞 を 引 き 起 こす 都 市 構 造 になっている さらに 公 共 交 通 システムの 全 体 レベルが 高 いとはいえず 多 くの 問 題 を 抱 えている 都 市 計 画 策 定 については 基 本 的 にすべての 都 市 は 産 業 管 理 部 門 が 主 導 して 都 市 全 体 発 展 計 画 を 制 定 するが 計 画 制 定 時 多 くの 都 市 では 交 通 工 事 と 交 通 管 理 の 専 門 家 を 参 与 させていない また 交 通 事 故 の 発 生 は 様 々な 原 因 があるが 交 通 道 徳 意 識 が 低 く 交 通 法 規 を 重 要 視 しないことが 事 故 発 生 の 重 要 な 要 素 となっている 第 6 章 都 市 交 通 問 題 に 対 する 取 組 み 中 国 の 地 方 政 府 では 交 通 渋 滞 を 解 消 するために 道 路 や 地 下 鉄 などのインフラ 整 備 を 急 速 に 進 めるとともに スムーズな 交 通 の 流 れを 確 保 するために 様 々な 取 組 みを 行 っている 上 海 市 のナンバープレート 政 策 や 広 州 市 の 有 料 道 路 等 の 料 金 所 廃 止 などが 例 として 挙 げら れる こうした 中 現 在 ITS( 高 度 道 路 交 通 システム)の 導 入 が 交 通 問 題 の 有 力 な 解 決 策 として 注 目 されている また 自 動 車 の 急 速 な 普 及 に 伴 う 大 気 汚 染 の 拡 大 については 排 出 ガス 規 制 に 取 り 組 ん でおり ユーロⅡ(EUで 96 年 から 適 用 された 排 出 ガス 規 制 )を 2005 年 内 に 中 国 全 土 で 適 用 し 2008 年 までにユーロⅢ(2000 年 EU 排 出 ガス 規 制 )を 実 施 することを 目 指 して いる 北 京 市 上 海 市 広 州 市 ではすでにEU 基 準 の 導 入 を 中 央 政 府 に 先 駆 けて 実 施 して いる 2004 年 5 月 から 人 命 尊 重 歩 行 者 優 先 を 掲 げた 道 路 交 通 安 全 法 が 施 行 され 全 国 的 に 交 通 秩 序 は 好 転 しており 交 通 渋 滞 の 緩 和 にも 期 待 される ii