聞 き 手 の 側 においては 話 し 手 の 発 話 を 理 解 することが 話 し 手 の 意 図 を 認 知 することと 緊 密 に 結 びつい ている 字 義 通 りの 発 話 において 話 し 手 の 側 と 聞 き 手 の 側 を 結 ぶ 橋 渡 しは 彼 らが 使 用 している 共 通



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聞 き 手 の 側 においては 話 し 手 の 発 話 を 理 解 することが 話 し 手 の 意 図 を 認 知 することと 緊 密 に 結 びつい ている 字 義 通 りの 発 話 において 話 し 手 の 側 と 聞 き 手 の 側 を 結 ぶ 橋 渡 しは 彼 らが 使 用 している 共 通 の 言 語 によって 与 えられる この 橋 渡 しは 以 下 のように 機 能 する 1 一 つの 文 を 理 解 することはその 文 の 意 味 を 知 ることである 2 文 の 意 味 は 規 則 によって 決 定 される そして その 規 則 はその 文 の 発 話 の 条 件 を 特 定 するのみならず その 発 話 がいかなるものとして 見 なされるかということをも 特 定 する 3 一 つの 文 を 発 話 してそれを 意 味 するということは a 規 則 の 内 のあるものによって 特 定 されたある 種 の 事 態 が 成 立 しているということを 聞 き 手 に 対 して 知 らせる( 認 知 させる 気 づかせる)ということを 意 図 (i-1)し bこの 意 図 (i-1)を 聞 き 手 に 認 知 させるという 手 段 によってこれらの 事 柄 を 聞 き 手 に 知 らせる( 認 知 させ る 気 づかせる)ということを 意 図 (i-2)し c 発 話 された 文 に 関 する 規 則 について 聞 き 手 が 持 っている 知 識 を 利 用 してこの 意 図 (i-1)を 聞 き 手 に 認 知 させるということを 意 図 するということである [ 訳 文 をパラフレーズした] 4 かくして その 文 は 聞 き 手 においてある 種 の 発 語 内 的 効 果 を 生 じさせるという 意 図 を 達 成 するための 慣 習 的 な 手 段 を 提 供 しているのである 話 し 手 は その 文 を 発 話 してそれを 意 味 するとき この 三 つの 意 図 a,b,cをもつことになる 聞 き 手 がこの 発 話 を 理 解 するということは まさにこれらの 意 図 が 達 成 され るということにほかならない すなわち 一 般 には 聞 き 手 がその 文 を 理 解 するとき すなわち その 文 の 意 味 を 知 っているとき さらに 換 言 するならば その 文 の 各 要 素 を 支 配 する 規 則 を 知 っているときにこれらの 意 図 は 達 成 される (サール 言 語 行 為 邦 訳 pp. 84f) 上 記 の3を 例 で 示 す ハロー を 発 話 して それを 意 味 するということは 条 件 a 自 分 が 挨 拶 されているということを 聞 き 手 に 対 して 知 らせるということを 意 図 1 し 条 件 b この 自 分 が 挨 拶 しているという 意 図 1 を 聞 き 手 に 認 知 させるという 手 段 によって 聞 き 手 が 挨 拶 されているということを 聞 き 手 に 知 らせるということを 意 図 2 し 条 件 c ハロー という 文 に 関 する 規 則 について 聞 き 手 がもっている 知 識 を 利 用 してこの 聞 き 手 に 挨 拶 しようという 意 図 1 を 聞 き 手 に 認 知 させるということを 意 図 3 するということである (サール 言 語 行 為 邦 訳 p. 85) サールはグライスの 条 件 を 次 のように 改 訂 する 非 自 然 的 意 味 に 関 してグライスが 最 初 に 行 なった 分 析 と なにごとかを 述 べてそれを 意 味 するというまっ たく 異 なる 概 念 に 関 する 私 の 改 訂 された 分 析 との 差 異 は 以 下 のように 要 約 できる 1 グライスの 最 初 の 分 析 話 し 手 がXによってなにごとかを 非 自 然 的 に 意 味 するとは a Sは Xの 発 話 が 聞 き 手 Hにおいて 一 定 の 発 語 媒 介 行 為 PEを 生 じさせることを 意 図 (i-1)し b,sは Uがこの 意 図 (i-1)の 認 知 によって(by means of recognition) 効 果 PEを 生 じさせることを 意 図 す ることである 2 改 訂 された 分 析 Sが 文 Tを 発 話 して それを 意 味 する(すなわち 彼 が 述 べることを 文 字 通 りに 意 味 するということ) とは SがTを 発 話 して かつ a Sは Tの 発 話 UがHにおいて Tに 関 する 規 則 (の 内 のあるもの)によって 特 定 された 事 態 の 知 識 17

( 認 知 意 識 )を 生 じさせることを 意 図 (i-1)し (この 効 果 を 発 語 内 的 効 果 IEと 呼 ぼう) b Sは この 意 図 (i-1)の 認 知 によって(by means of recognition) IEを 生 じさせることを 意 図 し c Sは Tの( 要 素 )を 支 配 する 規 則 (の 内 のあるもの)に 関 するHの 知 識 によって(を 手 段 とし て) この 意 図 (i-1)が 認 知 されることを 意 図 することである ( 言 語 行 為 原 文 pp. 49f. 邦 訳 p. 86f) グライスの 論 文 意 味 での 条 件 は 論 文 話 し 手 の 意 味 と 意 図 では 次 のように 定 義 されている U は xを 発 話 することでごとかを 意 味 した が 真 であるのは ある 受 け 手 A に 関 して U が 次 の ことを 意 図 しながらxを 発 話 した 場 合 であり その 場 合 に 限 られる (1)A が 特 定 の 反 応 rを 示 すこと (2)A が U は(1)を 意 図 していると 思 う( 認 識 する)こと (3)A が(2)の 実 現 を 踏 まえて(to be based on the fullfillment of (2)) (1)を 実 現 すること (Studies in the Way of Words, p.105 論 理 と 会 話 訳 139) グライスの 条 件 (1)はaに (2)はcに (3)はbに 書 き 換 えられている (ただし サールは 意 図 してcとbの 順 序 を 逆 転 させたのではない グライスの 論 文 意 味 での 非 自 然 的 意 味 の 成 立 条 件 をグラ イスが 3 条 件 に 整 理 しなおしたのは サールのこの 批 判 の 後 に 書 かれた 話 し 手 の 意 味 と 意 図 だったの で サールは 意 図 して 逆 転 させたのではない ) これを 用 いて サールは 次 のように 言 語 行 為 の 成 立 を 説 明 する (2)サールによる 発 語 内 行 為 の 成 立 の 説 明 1 いかにして 約 束 するか 複 雑 な 方 法 ( 102-110) 話 し 手 Sが 聞 き 手 Hがいるときに 文 Tを 発 話 することにする このとき SがTを 字 義 通 りに 発 話 しつつ かつ 欠 陥 なくHに 対 してpという 約 束 をするならば そして その 場 合 に 限 って 次 の1から9の 条 件 が 成 立 する (1) 正 常 入 出 力 条 件 Normal input and output conditions が 成 立 している これには 話 し 手 と 聞 き 手 が 当 該 言 語 を 使 いこなせるということ 自 分 達 の 行 っていることを 自 覚 している こと 身 体 的 欠 陥 がないこと 劇 中 で 役 を 演 じているのでもなければ 冗 談 をいっているのでもないという ことが 含 まれる (2)SはTという 発 言 において 命 題 pを 表 現 する (3)pと 表 現 することによって Sは S 自 身 について 将 来 の 行 為 Aを 述 定 している 条 件 (2)(3)を 一 括 して 命 題 内 容 条 件 propositional content condition と 呼 ぶ 厳 密 には 対 象 について 述 定 することが 可 能 であるものは 行 為 ではなく 表 現 である 従 って この 条 件 は 本 来 は 次 のように 述 べるこ とができるであろう すなわち pと 表 現 する 際 に Sが 自 分 について ある 表 現 を 述 定 し その 表 現 の 意 味 として その 対 象 についてその 表 現 が 真 であれば その 対 象 が 将 来 の 行 為 Aを 遂 行 するということも 真 で あるという 場 合 が 考 えられる (4)Hは SがAをしないよりはする 方 を 好 むであろう また Sは HがSがAをしないよりは する 方 を 好 むと 思 っている 約 束 と 威 嚇 THREAT との 決 定 的 な 相 違 は 約 束 が 相 手 に 味 方 して 何 事 かをおこなうという 制 約 であり 相 手 に 敵 対 してそのことを 行 うという 制 約 ではないのに 対 して 威 嚇 は 相 手 に 敵 対 して 何 事 かを 行 うという 制 約 であり 相 手 に 味 方 してそのことを 行 うということではないという 点 である さらに 約 束 は 通 常 たとえば 招 待 とは 異 なり 約 束 を 必 要 とする 機 会 や 状 況 を 要 求 する そのような 機 会 や 状 況 に 不 可 欠 の 特 性 は 約 束 の 相 手 がそうしてもらうことを 望 んでいるということ および 約 束 する 本 18

人 がその 望 みに 気 づいているということである (5) 事 態 の 通 常 の 推 移 において SがAをするということは SにとってもHにとっても 自 明 のこ とではない (4)(5)を 事 前 条 件 preparatory condition と 呼 ぶ (6)SはAを 行 うことを 意 図 している これを 誠 実 性 条 件 sincerity condition と 呼 ぶ (7)Sは Tという 発 言 によって 自 分 がAを 行 うという 義 務 を 負 うことになるということを 意 図 し ている これを 本 質 条 件 essential condition と 呼 ぶ (8)Sは Tという 発 言 によってSがAを 行 う 義 務 を 負 うことになるという 認 知 (K)をHの 中 に 生 じさせることを 意 図 する(i-1)Sは i-1 の 認 知 recognition によってKを 生 じさせることを 意 図 し さ らに i-1 の 認 知 が Tの 意 味 をHが 知 っていることによってなされるように 意 図 している (9)SおよびHによって 使 用 されている 方 言 の 意 味 論 的 規 則 は Tが 正 しくかつ 誠 実 に 発 せられる とき かつそのときに 限 って 条 件 1ー8が 成 立 するという 規 則 である この 条 件 は 発 せられた 文 が その 言 語 の 意 味 論 的 規 則 において 約 束 をするために 使 用 される 文 であると されるということを 明 らかにするために 述 べられている (2)サールによる 指 示 の 成 立 の 説 明 Sが Cという 脈 絡 において Hを 前 にして 表 現 Rを 発 話 するとしてみよう このとき Sが 単 称 同 定 指 示 という 言 語 行 為 を 首 尾 よくかつ 欠 陥 無 く 遂 行 するためには 以 下 の1-7の 条 件 が 成 立 すること が 必 要 かつ 十 分 である 1 正 常 入 出 力 条 件 が 成 立 している 2 Rという 発 話 は 何 らかの 文 (ないし 文 に 類 似 する 言 語 要 素 )Tの 発 話 の 一 部 として 生 起 している 3 Tの 発 話 は 或 る 一 つの 発 語 内 行 為 の 遂 行 (ないしその 遂 行 を 偽 装 するもの)である 4 なんらかの 対 象 Xが 存 在 して そのXに 関 しては RがXの 同 定 記 述 を 含 んでいるか あるいは SがXの 同 定 記 述 をRに 補 充 することができるかのいずれかである この 条 件 は 存 在 公 理 と 同 定 原 理 を 表 現 している 5 Sは Rの 発 言 がHに 対 してXを 選 び 出 すか あるいは 同 定 するものであるということを 意 図 する 6 Sは Rの 発 言 がHに 対 してXを 同 定 するということが Xを 同 定 しようというSの 意 図 をHが 認 知 するということによってなされるということを 意 図 し さらに この 認 知 そのものがまた Rを 支 配 する 規 則 に 関 するHの 知 識 およびCに 対 するHの 自 覚 によって 達 成 されるということを 意 図 する 7 Rを 支 配 する 意 味 論 的 規 則 は そのRが 正 しく 発 話 されることと 以 上 の1-6の 条 件 すべてが 成 立 することとが 同 値 であるという 内 容 のものである ( 邦 訳 pp. 169f) (3)サールによる 述 定 の 成 立 の 説 明 SがHの 前 で 表 現 pを 発 話 するとしよう このとき Pの 字 義 通 りの 発 話 において Sが 首 尾 よく かつ 欠 陥 のない 仕 方 で 対 象 Xに 関 してPを 述 定 することになるのは 次 の1ー8の 条 件 が 成 立 した 時 であり かつ その 時 に 限 る 1 正 常 入 出 力 条 件 が 成 立 する 2 Pの 発 話 が 何 らかの 文 (または 文 に 類 似 する 言 語 単 位 )の 発 話 の 部 分 として 生 起 する 3 Tの 発 話 は なんらかの 発 語 内 行 為 の 遂 行 であるか またはその 遂 行 を 装 うものである 4 Tの 発 話 のためには Xへの 指 示 に 成 功 することが 必 要 である 5 Xは PがXに 関 して 真 であったり 偽 であったりすることが 論 理 的 に 可 能 であるようなタイプま たは 範 疇 のものである 19

6 Sは Tの 発 話 によって Xに 関 してPが 真 であるか 否 かという 疑 問 を 提 起 することを 意 図 して いる(ただしこれは ある 種 の 発 語 内 的 様 式 においてであり その 様 式 は その 文 の 中 の 発 語 内 的 力 表 示 部 分 によって 表 示 されることになる ) 7 Sは Pの 発 話 がXに 関 するPの 真 偽 に 関 する 疑 問 をなんらかの 発 語 内 的 様 式 において 提 起 すると いう 知 識 をHにおいて 生 じさせることを 意 図 する そしてさらに 話 し 手 は その 認 知 が HによるPの 意 味 の 知 識 によって 達 成 されるということを 意 図 する 8 Pを 支 配 する 規 則 は それが 正 しく 発 話 されることの 必 要 十 分 条 件 が 以 上 の1ー7の 条 件 がすべて 満 足 させられているということであるというものである ( 邦 訳 pp. 225f) 20