ホロラクトフェリンは 抗 癌 剤 のアジュバント 腸 溶 性 ラクトフェリン 研 究 会 常 任 理 事 安 藤 邦 雄 ラクトフェリンは 二 つの 3 価 鉄 イオンをキレートする 分 子 量 78kDa の 一 本 鎖 糖 タンパク 質 であり 外 界 と 直 接 接 触 する 粘 膜 を 覆 う 粘 液 に 含 まれ 生 体 防 御 の 一 翼 を 担 っていると 考 えられる がんの 一 次 予 防 と 二 次 予 防 に 関 しては 国 立 がんセンターの 津 田 等 (1) はウシ ラクトフェリン(BLF)を 化 学 発 癌 剤 に 暴 露 されたラットに 摂 取 させると 大 腸 肺 食 道 膀 胱 および 舌 における 発 ガンを 抑 制 し がんの 転 移 を 減 少 させることを 報 告 している 本 誌 でたびたび 紹 介 したように BLF はワクチンの 効 果 を 強 めるアジュバントだが BLF ががん 化 学 療 法 剤 の 効 力 を 増 強 するかどうかは 組 織 的 に 研 究 されていなかった Kanwar 等 はマウスにがんを 移 植 する 前 から 少 量 の 鉄 飽 和 型 BLF(ホロ BLF)を 飼 料 に 混 合 して 摂 取 さ せ 移 植 したがんの 直 径 が 0.6cm に 達 した 時 点 で 1 回 だけがん 化 学 療 法 剤 を 投 与 すると がんを 完 全 に 退 縮 (regression)させることを 見 出 した 彼 らが 使 用 した 移 植 がんは C57BL/6 系 マウスに 原 発 し 遠 隔 転 移 を 好 発 する 同 系 悪 性 腫 瘍 で がん 化 学 療 法 剤 はタキソー ル アンスラサイクリン 系 抗 生 物 質 5-フルオロウラシル(5-FU) 等 である 化 学 療 法 剤 は 1 回 投 与 するだけだが EL-4 悪 性 リンパ 腫 とルイス 肺 がんを 完 全 に 退 縮 させる つまり 化 学 療 法 剤 による 刺 激 は 原 発 巣 と 同 時 に 全 身 に 転 移 したがんを 一 掃 したことを 意 味 する 興 味 深 いことに 鉄 飽 和 度 が 低 い BLF すなわち アポ BLF( 鉄 飽 和 度 4%) 天 然 型 BLF( 鉄 飽 和 度 ;15%)と 50% 鉄 飽 和 BLF を 与 えた 群 は ホロ BLF ほど 顕 著 な 効 果 は 認 められなかっ た ホロ BLF は 腫 瘍 局 所 における 血 管 新 生 と 血 流 を 減 少 させ 脾 臓 細 胞 の 腫 瘍 に 対 する 細 胞 傷 害 活 性 腫 瘍 細 胞 のアポトーシスと 腫 瘍 への 細 胞 浸 潤 を 増 大 させる また ホロ BLF 摂 取 は 腸 管 と 腫 瘍 内 における Th1 と Th2 サイトカインと 一 酸 化 窒 素 (NO) 産 生 を 増 加 させ た 化 学 療 法 剤 は 造 血 機 能 を 傷 害 し 末 梢 血 中 の 赤 血 球 と 白 血 球 数 を 減 少 させるが ホロ BLF を 摂 取 させると 血 球 数 はまったく 減 少 しない そこで Kanwar 等 は BLF を 真 に 有 効 に するには 鉄 イオンを 飽 和 させねばならないと 主 張 している 1.ホロ BLF はがん 化 学 療 法 剤 の 効 力 を 増 強 し 腫 瘍 を 退 縮 させる 一 群 10 頭 のマウスにアポ BLF( 鉄 飽 和 度 4%) 天 然 型 BLF( 鉄 飽 和 度 約 15%) 50% 鉄 飽 和 BLF と 100% 鉄 飽 和 BLF を 1.29%(W/W) 添 加 した ANI93G 基 礎 飼 料 を 与 えて 飼 育 し た 目 的 は BLF が がん 化 学 療 法 剤 の 効 力 を 高 めるかどうか および 鉄 が 何 らかの 役 割 を 果 たすかどうか を 検 討 するためである 対 照 のマウスは ANI93G 基 礎 飼 料 のみを 与 えた 飼 料 の 摂 取 開 始 2 週 間 後 EL-4 悪 性 リンパ 腫 細 胞 2X10 5 個 を 皮 下 に 移 植 し さらに 数 週 間 後 腫 瘍 直 径 が 0.6cm に 達 した 時 点 でマウスにタキソール 30mg/kg を 1 回 だけ 皮 下 投 与 した BLF 混 合 飼 料 を 摂 取 させると 対 照 群 と 比 べた 腫 瘍 の 成 長 は 0 日 ~49 日 目 にか けて 13~31% 抑 制 された それに 加 え ホロ BLF 群 の 1 頭 は 腫 瘍 生 着 を 拒 絶 し 腫 瘍 フリ 1
腫 瘍 の 直 径 (cm) ーであった( 図 1) タキソールの 抗 がん 効 果 は 鉄 飽 和 度 を 異 にする BLF のあいだで 大 きく 異 なる 対 照 飼 料 群 ではタキソールの 抗 がん 効 果 が 見 られない 一 方 ホロ BLF を 摂 取 したマウスは タキ 1.2 ソール 投 与 2 週 間 後 でがんの 直 安 楽 死 ライン 径 が 半 分 以 下 に 縮 小 し 3 週 後 にはがんが 退 縮 (regression) 0.8 した 鉄 飽 和 度 が 低 い BLF を 摂 取 したマウスは がんを 退 縮 0.4 させなかった ホロ BLF 混 合 0.0 0 7 14 21 28 35 42 49 56 63 時 間 (days) 70 77 飼 料 を 摂 取 したマウスから 得 た 脾 臓 細 胞 の ex vivo における がん 細 胞 傷 害 効 果 は がんを 退 縮 させる 効 果 と 並 行 し ホロ 図 1.ホロ BLF の 経 口 投 与 によるタキソールの 抗 腫 瘍 効 果 増 強 C57BL/6 マウス(n=10) 8-10 週 齢 を 使 用 飼 料 は ANI93G アポ BLF( 鉄 飽 和 度 4%) 天 然 型 BLF( 鉄 飽 和 度 約 15%) 50% 鉄 飽 和 BLF 100% 鉄 飽 和 BLF を 1.29%(W/W)ANI93G に 添 加 した 飼 料 を 与 えて 飼 育 した ;BLF 無 添 加 対 照 群 ;ホロ BLF 群 ;アポ BLF 群 ;50% 鉄 飽 和 BLF 群 ; 天 然 型 BLF 群 タキソールの 投 与 ; 無 添 加 対 照 群 ホロ BLF 群 50% 鉄 飽 和 群 は 49 日 目 天 然 型 BLF 摂 取 マウスは 対 照 マウス のそれと 比 べて 有 意 に 6 倍 も 高 く 50%ホロ BLF 群 と 比 べ 1.5 倍 天 然 型 と 比 べ 3.4 倍 アポ BLF と 比 べ 2.4 倍 (それぞれ P<0.001) 高 値 であった BLF 群 は 56 日 目 に 投 与 主 要 の 直 径 が 1cm を 越 えた 時 点 でマウスは 安 楽 死 させた ホロ BLF だけが 腫 瘍 を 完 全 に 退 縮 させる 2.ホロ BLF は 高 い 化 学 療 法 係 数 でがんを 退 縮 させる いろいろな 濃 度 にホロ BLF を 添 加 した 飼 料 を 調 製 し 腫 瘍 移 植 マウスにおけるがん 化 学 療 法 剤 の 効 力 増 強 をしらべた( 図 2) ホロ BLF;0.04% 群 と 同 4.2% 群 では がん 化 学 療 法 剤 を 投 与 する 移 植 4-5 週 の 時 点 で がんの 成 長 速 度 は 対 照 群 とほぼ 同 等 だったが 0.21~1.0% を 飼 料 に 添 加 した 群 は 対 照 群 と 比 べ 同 時 期 における 腫 瘍 の 増 殖 は 明 らかに 鈍 化 した (P<0.05) 移 植 を 拒 絶 した 腫 瘍 フリーのマウスは ホロ BLF の 0.04% 群 で 1/10 0.21% 群 で 2/10 1% 群 で 3/10 であった マウスの 腫 瘍 が 直 径 0.6cm に 達 した 49-56 日 目 にタキソ ールを 投 与 したところ これら 3 群 ではすべてのがんが 退 縮 した しかし ホロ BLF4.2% 群 はタキソールを 投 与 すると がんは 2 週 にかけて 退 縮 するが 2 週 目 から 増 殖 が 再 開 され た 56 日 目 の 対 照 群 マウスから 得 た 脾 臓 細 胞 とホロ BLF 群 の 77 日 目 に 得 た 脾 臓 細 胞 のがん 細 胞 傷 害 効 果 は がんの 退 縮 に 比 例 していた( 図 3) 脾 臓 細 胞 のがん 細 胞 傷 害 作 用 は 0.21-1.0%のホロ BLF 群 が 最 高 で タキソールとの 併 用 で 急 速 かつ 完 全 ながん 退 縮 を 引 き 起 こす 効 果 と 移 植 がんの 生 着 を 阻 止 する 活 性 とは 相 関 している 対 照 的 にがん 細 胞 傷 害 活 性 が 最 低 のホロ BLF4.2% 群 は タキソールと 相 乗 的 な 抗 癌 作 用 を 示 さなかった 2
腫 瘍 の 直 径 (cm) 1.2 1.0 0.8 0.6 0.4 02 0.0 安 楽 死 ライン 0 7 14 21 28 35 42 49 56 63 70 77 時 間 (days) 図 2.ホロ BLF の 用 量 依 存 性 C57BL/6 マウス(n=10) 8-10 週 齢 を 使 用 飼 料 は ANI93G EL-4 悪 性 リンパ 腫 は 5X10 5 を 14 日 目 に 移 植 ホロ BLF は 飼 料 に 各 0.04% 0.21% 1.0% 及 び 4.2% 添 加 して 飼 育 した 対 照 群 は ANI93G 飼 料 のみで 飼 育 した ;BLF 無 添 加 対 照 群 ; ホロ BLF4.2% 群 ; 同 1.0% 群 ; 同 0.21% 群 ; 同 0.04% 群 タキソールは ホロ BLF0.21% 群 とホロ BLF1.0% 群 (56 日 目 に 投 与 ) を 例 外 として がん 移 植 の 49 日 目 に 投 与 がんが 生 着 しなかった 個 体 数 ;0.21% 群 3/10 1.0% 群 2/10 0.04% 群 1/10 この 実 験 で 明 らかになったことの 一 つ は ホロ BLF には 明 らかな 容 量 依 存 性 が あることであり 最 小 の 0.04%と 最 大 の 1%とのあいだには 25 倍 の 開 きがあるこ とは 注 目 に 値 する 通 常 のがん 化 学 療 法 剤 は 有 効 量 と 最 大 耐 過 量 との 比 が 通 常 1 この 比 が 5 もあれば 安 全 な 化 学 療 法 剤 と 評 されるからである がん 細 胞 傷 害 活 性 (%) 100 80 60 40 20 0 ** ** ホロ BLF4.2% 群 の 脾 臓 細 胞 は 1.0% 0.21% 0.04% 群 と 比 べ 32% 34%および 42%の 細 胞 傷 害 効 果 しか 示 さない この 事 実 は 腫 瘍 の 退 縮 を 引 き 起 こすには あ る 閾 値 レベル 以 上 のが ん 細 胞 傷 害 効 果 が 必 要 なことを 示 唆 する ホ ロ BLF を 0.04 1.0 お よび 0.21% 含 有 飼 料 を 摂 取 し がん 移 植 を 完 全 に 拒 絶 した 6 頭 にお けるがん 細 胞 傷 害 作 用 は 対 照 と 比 べ 2.6 倍 ~4 倍 高 いのである ** 0.04% 0.21% 1.0% 4.2% ホロBLF 添 加 量 ** 無 添 加 対 照 図 3.ホロ BLF 摂 取 マウス 脾 臓 細 胞 のがん 細 胞 傷 害 活 性 (ex vivo) 図 2 に 示 す 実 験 のマウスから 脾 臓 細 胞 を 採 取 してエフェク ター 細 胞 とし 培 養 EL-4 悪 性 リンパ 腫 細 胞 を 標 的 としてが ん 細 胞 と 混 合 し がん 細 胞 障 害 効 果 を 測 定 した エフェクタ ー 細 胞 :がん 細 胞 の 混 合 比 点 線 のバー(100:1) 縞 バー (50:1) 白 バー(24:1) 各 バーは 平 均 値 +SE を 示 す **P<0.001 Student s t-test. 3
3.ホロ BLF は 数 種 のがん 化 学 療 法 剤 と 相 乗 的 な 抗 癌 作 用 を 示 す 前 述 のようにホロ BLF は 悪 性 リンパ 腫 に 対 しタキソールと 相 乗 的 な 併 用 効 果 を 示 すが この 効 果 がタキソールと EL-4 悪 性 リンパ 腫 の 組 合 せに 限 定 されるのか それとも 他 のがん 化 学 療 法 剤 例 えば ドキソルビシン エピルビシン 5-FU サイクロフォスファマイド メトトレキセート 等 の 主 要 ながん 化 学 療 法 剤 と 相 乗 的 な 抗 癌 作 用 を 示 すのか を 解 明 する ことは 重 要 である 表 1.ホロ BLF のがん 化 学 療 法 剤 との 相 乗 効 果 濃 度 依 存 ガン 化 学 療 法 剤 がん 腫 相 乗 効 果 タキソール EL-4 Regression して 治 癒 ドキソルビシン EL-4 同 上 エピルビシン EL-4 ルイス 肺 がん 同 上 5-フルオロウラシル EL-4 B16 黒 色 腫 EL-4 は regression 治 癒 B16 は 化 学 療 法 剤 投 与 3 週 目 から 増 殖 再 開 時 間 サイクロフォスファアミト EL-4 化 学 療 法 剤 投 与 3 週 目 から 増 殖 再 開 依 存 メトトレキセート EL-4 無 効 C57BL/6 マウスを 標 準 飼 料 AIN93G で 飼 育 ホロ BLF 添 加 量 :1.2% がん 化 学 療 法 剤 は 2X10 5 の 腫 瘍 細 胞 を 移 植 して 2 週 後 に 皮 下 注 射 タキソールの 投 与 量 は 30mg/kg ドキソルビシンは 15mg/kg これらはがんの 直 径 が 0.6cm に 到 達 した 段 階 で 1 回 だけ 投 与 した 表 1 にホロ BLF がん 化 学 療 法 剤 がん 腫 の 組 合 せで 行 われた 実 験 の 結 果 を 要 約 した い ずれの 組 合 せでも 対 照 群 に 移 植 したがんは 急 速 に 成 長 し がん 化 学 療 法 剤 は 単 独 でも 併 用 でもがんを 退 縮 させる 効 果 はなかった ただし ドキソルビシンは EL-4 の 増 殖 を 3 週 間 遅 らせ 両 者 の 併 用 は 5 週 間 遅 らせた 対 照 的 にホロ BLF 群 に 移 植 した 腫 瘍 は がん 化 学 療 法 剤 を 投 与 する 前 から 対 照 群 と 比 べてがん 増 殖 が 遅 延 し さらに がん 化 学 療 法 剤 を 投 与 すると がんは 1 週 間 以 内 に 半 分 以 上 に 縮 小 し 2 週 間 後 には 完 全 に 消 失 した 劇 的 な 効 果 を 示 すのは 濃 度 依 存 性 薬 剤 に 多 く サイクロフォスファマイド メトトレキセイト 等 の 時 間 依 存 性 薬 剤 は 無 効 である 担 がんマウスから 腫 瘍 組 織 を 採 取 し 腫 瘍 細 胞 のアポトーシス 白 血 球 浸 潤 および 血 管 新 生 をしらべた 対 照 マウスの 腫 瘍 は 殆 どアポトーシス 細 胞 を 含 まなかったが ホロ BLF 対 照 群 マウスの 腫 瘍 切 片 はおびただしい 数 のアポトーシス 細 胞 で 満 たされており(アポト ーシス 指 数 ;1.9 倍 P<0.001) さらに ホロ BLF とタキソール ドキソルビシンあるいは 両 剤 併 用 群 におけるアポトーシス 細 胞 は ホロ BLF 対 照 と 比 べ それぞれ 4.2 倍 5.4 倍 お よび 4.9 倍 であった ホロ BLF マウスから 得 た 脾 臓 細 胞 のがん 細 胞 傷 害 活 性 は 対 照 群 の それと 比 べて 3.6 倍 (P<0.001) 亢 進 していた それとは 対 照 的 にタキソールとドキソルビシ ンは 脾 臓 細 胞 のがん 細 胞 傷 害 活 性 を 2.3 倍 (P<0.05)あるいは 2.0 倍 (P<0.05)しか 亢 進 さ せなかった ホロ BLF とタキソール ホロ BLF とドキソルビシンあるいは 両 者 の 併 用 は 脾 臓 細 胞 におけるがん 細 胞 傷 害 活 性 を 4.9 倍 5.5 倍 および 7 倍 亢 進 させた 4
ホロ BLF は 対 照 群 と 比 べ がん 組 織 中 の CD4+ DC8+ NK 細 胞 IFN-γ 発 現 細 胞 樹 状 細 胞 を それぞれ 2 倍 2 倍 1.3 倍 2 倍 2.5 倍 増 加 させた 対 照 群 にタキソールを 投 与 すると CD4+と CD8+リンパ 球 のがん 組 織 への 浸 潤 を 1.8 倍 と 1.2 倍 増 加 させたが( 各 P<0.001) NK 細 胞 IFN-γ 発 現 細 胞 および 樹 状 細 胞 は 増 加 しなかった ホロ BLF とタキ ソールあるいはドキソルビシンを 併 用 すると 対 照 群 と 比 べ CD4+ CD8+ NK IFN-γ 発 現 細 胞 樹 状 細 胞 のがん 組 織 への 浸 潤 は それぞれ 5 倍 3.5 倍 4 倍 4 倍 3 倍 図 4. 代 表 的 ながん 組 織 切 片 血 管 5.3 倍 および 3 倍 増 加 した ドキソルビンのみでも 各 免 疫 の 状 態 細 胞 のがん 組 織 浸 潤 は 5 倍 5 倍 2 倍 3 倍 および 2 a と b は 対 照 群 マウスの EL-4 悪 性 リ 倍 増 加 したが ホロ BLF タキソールとドキソルビシンの ンパ 腫 組 織 切 片 における 血 管 の 状 態 C と d はホロ BLF を 与 えタキソール 三 者 併 用 は ほとんど 影 響 がなかった 図 4 に 示 すように を 1 回 投 与 したがん 切 片 の 血 管 A と ホロ BLF を 併 用 すると 腫 瘍 組 織 の 血 管 新 生 が 強 く 阻 害 され b は 抗 -CD31 モノクローナル 抗 体 で 染 色 c と d は 血 流 を 記 録 するため その 結 果 局 所 への 血 流 がほとんど 途 絶 している つまり DiOC7 で 環 流 した 腫 瘍 組 織 は 糧 道 を 絶 たれ 同 時 に 免 疫 細 胞 に 攻 撃 されてア ポトーシスを 起 こさざるを 得 ない 状 態 に 陥 っていることがわかる 4. 化 学 療 法 剤 の 効 力 を 発 揮 させるには 投 与 の 少 なくとも 2 週 間 前 からホロ BLF を 与 え る 必 要 がある 化 学 療 法 剤 を 与 える 前 にホロ BLF をどのくらいの 期 間 与 える 必 要 があるかを 決 める 実 験 を 行 った 上 記 の 条 件 とは 異 なり この 実 験 では EL-4 移 植 と 同 時 にホロ BLF を 摂 取 させた 表 2. 化 学 療 法 剤 投 与 のタイミング ホロ BLF 添 加 量 ホロ BLF の 摂 取 時 期 退 縮 効 果 1.2% EL-4 移 植 と 同 時 3 2 無 効 備 考 3 2 24 日 目 に 対 照 飼 料 に 変 更 EL-4 移 植 12 日 目 から 摂 取 開 始 0 5 EL-4 移 植 度 同 時 に 摂 取 開 始 0 5 ト キソルヒ シン 投 与 3 日 後 から 摂 取 開 始 0 5 0 ホロ BLF を 摂 取 しない 対 照 群 0 5 (n=5)ドキソルビシン:el-4 移 植 の 15 日 目 に 15mg/kg を 1 回 だけ 腹 腔 内 投 与 ホロ BLF の 摂 取 量 : 飼 料 の 1.2% 相 当 量 を 添 加 一 時 的 に 縮 小 する 個 体 が ある ホロ BLF の 効 果 は± 化 学 療 法 剤 はがん 成 長 を まったく 阻 止 しない 先 に 述 べた 腫 瘍 移 植 に 先 立 つ 2 週 前 からホロ BLF を 摂 取 する 条 件 ではないので すべての 担 がんマウスに 腫 瘍 退 縮 を 起 こさないが 明 らかな 傾 向 を 見 て 取 ることができる すなわ 5
ち 化 学 療 法 剤 投 与 による 刺 激 でがんを 退 縮 させるには 少 なくとも 投 与 の 2 週 間 前 から ホロ BLF を 摂 取 させる 必 要 があり 24 日 目 から 対 照 飼 料 に 切 り 替 えても 効 果 に 影 響 はない 5.ホロ BLF は 化 学 療 法 剤 に 続 発 する 造 血 障 害 を 阻 止 する 細 胞 毒 系 の 抗 がん 剤 は 骨 髄 の 造 血 機 能 を 傷 害 し 白 血 球 減 少 症 と 貧 血 を 起 こす 表 3. 血 球 のカウントとがん 組 織 の 血 管 計 測 実 験 群 血 球 数 a 表 面 積 あたりの 血 管 カウント b 白 血 球 赤 血 球 CD31 CD105 DiOC7 基 礎 飼 料 対 照 健 常 群 2.7±1.0 5.5±1.1 NA NA NA 担 が ん マ ウ ス 基 礎 飼 料 対 照 2.5±0.5 4.5±1.5 32.3±9.9 16.5±6.6 38.5±8.8 ホロ BLF 3.5±1.2 8.2±2.5 20.4±7.7* 9.0±5.2* 18.4±8.6* タキソール ND ND 10.5±6.7** 4.5±3.2** 11.3±5.3** ト キソルヒ シン ND ND 11.5±5.3** 6.5±4.5** 13.4±6.7** タキソール+ト キソルヒ シン 0.3±0.1 2.1±1.5 ND ND ND ホロ BLF+タキソール 3.7±1.5 8.3±2.5 7.5±3.**2 4.4±2.2** 10.4±3.6** ホロ BLF+ト キソルヒ シン 3.8±1.5 8.5±2.5 8.5±4.2** 5.6±3.1** 10.7±3.9** ホロ BLF+ 両 者 併 用 3.9±2.0 8.7±3.5 5.2±2.2** 2.4±1.0** 5.8±2.5** n=10 略 号 :NA; no application, ND; not done. 数 値 は mean±se P: 基 礎 対 照 飼 料 摂 取 群 に 対 する 有 意 差 *P<0.05, **P<0.001 a 平 均 血 球 数 : 剖 検 時 に 心 臓 から 採 血 しカウント 赤 血 球 =2x10 6 / l 白 血 球 =2x10 3 / l b 腫 瘍 血 管 の 密 度 表 3 に 示 すように タキソールとドキソルビシンを 併 用 し 1 回 だけ 投 与 しただけで 7 日 後 でも 白 血 球 と 赤 血 球 を 明 らかに 減 少 させる つまり 両 薬 剤 は 骨 髄 抑 制 と 貧 血 を 起 こす のである ホロ BLF 摂 取 は 両 化 学 療 法 剤 を 投 与 されたマウス 末 梢 血 の 赤 血 球 と 白 血 球 数 を 正 常 以 上 のレベルに 回 復 させた 赤 血 球 と 白 血 球 数 を 健 常 マウスと 比 較 すると 担 がん マウスのほうが 50% 以 上 多 い また 脾 臓 重 量 も 担 がんマウスと 比 べると 20% 前 後 増 加 し 対 照 群 と 比 べた 脾 臓 の CD4+ CD8+ NK IFN- 発 現 の 樹 状 細 胞 等 を 増 加 させた(P<0.001) 小 腸 の 粘 膜 固 有 層 でも 樹 状 細 胞 を 例 外 として 同 様 の 傾 向 があった 6. 小 腸 上 皮 と 結 合 したホロ BLF は パイエル 板 に 取 り 込 まれ Th1 および Th2 サイトカイ ンの 産 生 を 増 大 させる ホロ BLF は 小 腸 上 皮 に 結 合 し パイエル 板 から 体 内 に 取 り 込 まれ Th1 と Th2 サイトカイ ン 及 び NO 産 生 を 増 加 させる ビオチン 化 したホロ BLF を 小 腸 ループに 加 えた 実 験 結 果 を 図 5 に 示 す ホロ BLF は 小 腸 絨 毛 と 小 腸 粘 膜 固 有 層 に 分 布 し さらに パイエル 板 とも 結 合 し リンパ 管 に 遊 走 しているリンパ 球 と 結 合 して 細 胞 に 取 り 込 まれインターナリゼーション が 起 こすらしい 6
同 様 な 分 布 パターンはホロ BLF のモノクローナル 抗 体 で 染 色 した 切 片 でも 得 られた この 結 果 はホロ BLF がパイエル 板 から 取 り 込 まれ 小 腸 の 遺 伝 子 発 現 を 含 む 粘 膜 免 疫 を 調 節 す ることを 示 唆 する a b c ホロ BLF を 経 口 摂 取 したマウスの 小 腸 にお ける Th1 と Th2 サイトカインの 発 現 パターを しらべた 小 腸 磨 砕 物 に 含 まれる IL-18 TNF- IFN- 等 の 炎 症 性 サイトカインおよび 図 6.ビオチン 化 ホロ BLF の 小 腸 パイエル 板 への 結 合 PBS にビオチン 化 BLF を 溶 かし 小 腸 ループに 4 時 間 インキュベートした (a) 小 腸 ループの 切 片 を ビオチン 化 BLF 検 出 のため 染 色 した 一 つは 蛍 光 性 のイソチオシアン 酸 を 結 合 させたストレプトア ヴィジン 染 色 今 一 つはテトラメチルローダミン とカップルした 抗 BLF ウサギ 抗 体 で 染 色 絨 毛 上 皮 と 粘 膜 固 有 層 は 矢 印 で 示 す 倍 率 ;40 倍 PP:パ イエル 板 (b) ストレプタヴィジン-パーオキシ ダーゼ 法 でビオチニル BLF を 検 出 倍 率 ;40 倍 IL-4 IL-5 IL-6 IL-10 等 の 消 炎 性 サイト カインレベルは マウスが 担 がんか 否 かにか かわりなく 5 倍 から 75 倍 も 劇 的 に 増 加 して いた IL-4 IL-5 IL-6 IFN- TNF- の 発 現 は 担 がん 非 担 がんにかかわりなく 増 加 し たが IL-18 と IL-10 は 担 がん 状 態 で 半 分 以 下 に 減 少 した タキソールとドキソルビシン は 単 独 で 上 記 サイトカインのレベルを 4 倍 から 20 倍 上 昇 させた ホロ BLF は 腫 瘍 部 位 において 上 記 サイトカインレベルを 増 加 させた NO は 腫 瘍 組 織 で 1.6 倍 (P<0.001) 小 腸 で 3 倍 から 8 倍 増 加 した 7.むすび 鉄 の 過 剰 摂 取 は 発 がんと 正 相 関 (3) するので 避 けるべきであるが 本 研 究 においてホロ BLF を 飼 料 に 1.2% 混 合 して 摂 取 した 際 の 鉄 含 量 は 無 視 しうる 程 度 の 0.0053%から 0.0069%に 増 加 するだけである そのためか ホロ BLF を 摂 取 したマウスは 何 らの 中 毒 症 状 も 示 さな かった さらに 最 小 有 効 量 のホロ BLF0.04%の 場 合 飼 料 の 鉄 含 量 は 0.00005% 増 加 する に 過 ぎない ホロ BLF は 腫 瘍 のアポトーシス 増 大 に 直 結 する 宿 主 の 防 衛 反 応 を 促 進 する その 抗 がん 効 果 (in vivo)とエフェクター 細 胞 による 腫 瘍 傷 害 活 性 (ex vivo)は 相 関 するので ホロ BLF が 腫 瘍 免 疫 を 賦 活 することを 示 唆 している 事 実 シャピロ 等 (4) は 遺 伝 子 組 換 ヒトラク トフェリン(TLF)の 抗 腫 瘍 活 性 が CD8(+) T リンパ 球 と CD1 をノックアウトしたマウスで 失 われることから TLF の 抗 腫 瘍 活 性 は キラーT 細 胞 とナチュラルキラー 細 胞 に 由 来 するこ とを 示 した ホロ BLF が がん 化 学 療 法 剤 の 抗 腫 瘍 活 性 を 増 強 するメカニズムについてはまだ 解 明 さ れていない 可 能 性 の 一 つにホロ BLF は 消 化 管 を 通 過 する 際 アポ BLF と 比 べ 消 化 酵 素 に 対 する 抵 抗 性 が 強 く 分 解 され 難 いので バイオアベイラビリティが 高 まることが 考 えられ る 例 えば Brock 等 はホロ BLF と 鉄 20% 飽 和 BLF と 比 べ 前 者 はトリプシン 消 化 に 対 しは るかに 強 い 抵 抗 性 を 示 すことを 報 告 している (5) 7
これとは 別 の 可 能 性 はホロ BLF がパイエル 板 からリンパ 管 に 取 り 込 まれる 際 パイエル 板 に 待 機 する 樹 状 細 胞 とリンパ 球 のラクトフェリン 受 容 体 に 結 合 し 3 価 鉄 イオンを 免 疫 細 胞 に 送 り 込 むことにより 免 疫 を 賦 活 するシナリオである 免 疫 担 当 細 胞 への 3 価 鉄 イオン 取 り 込 みが 免 疫 能 を 賦 活 することを 証 明 した 論 文 がある 例 えば ヘミンはまったく 抗 腫 瘍 活 性 を 示 さないが IL-2 と 併 用 すると 腫 瘍 の 成 長 を 抑 制 する (6) 有 機 鉄 化 合 物 のフェ ロセンは in vitro と in vivo でリンパ 球 とマクロファージを 活 性 化 し 経 口 投 与 すると 担 がんマウスに 顕 著 な 抗 腫 瘍 活 性 を 示 す (7) この 報 告 と 一 致 してシーボルト 等 は 鉄 欠 乏 の 幼 児 において 細 胞 性 免 疫 に 質 的 な 欠 陥 が 起 こることを 報 告 している (8) 既 にわが 国 の 国 立 がんセンター(1) および 本 誌 に 2 回 紹 介 したアジェニクス 社 の 遺 伝 子 組 換 えヒト ラクトフェリン(TLF)の 研 究 成 績 (9) から 見 て ラクトフェリンががんの 一 時 予 防 および 二 次 予 防 に 有 用 であることはほぼ 確 かである 問 題 は 実 験 動 物 で 得 られた 成 果 をど のようにしてヒトの 臨 床 で 再 現 することだろう それには Kanwar 等 (2) (10) とアジェニクス 社 が 主 張 するように 経 口 投 与 した intact ラクトフェリン を 如 何 に 多 くパイエル 板 が 存 在 する 回 腸 に 到 達 させるかにかかっている 文 献 (1) Tsuda H et al.; Drug Metab Pharmacokinet. 2004; 19: 245-63. (2) Kanwar JR et al.; Immunol Cell Biol. 2008 Mar-Apr; 86: 277-88. (3) Okada S et al.: Jpn Arch Intern Med. 1982; 29: 485-491. (4) Spadaro M et al.; Cancer Res 2007; 67: 6425-6432. (5) Brock JH et al.; Biochim Biophys Acta 1976; 446: 214-225. (6) Kovjazin R et al.; FASEB J. 2003; 17: 467 469. (7) Tsuji A et al.; Clin Exp Immunol 1993; 93: 308 312. (8) Thibault H et al.; Eur J Pediatr 1993; 152: 120 124. (9) Varadhachary A et al.; Int J Cancer 2004; 111: 303 398. (10) http://www.agennix.com/contentpages/presentations.htm 8