5. 動 物 相 (1) 総 論 登 米 市 の 動 物 相 の 分 布 については 北 から 南 へ 流 れる 北 上 川 を 境 とし 東 側 と 西 側 とに 大 きく 区 分 で きる これは 東 の 森 林 地 帯 と 西 の 水 田 地 帯 とでは 植 生 や 水 辺 環 境 さらには 人 為 的 影 響 の 程 度 が 異 なり それが 動 物 の 生 息 環 境 の 違 いをもたらしているからである 北 上 川 東 側 山 間 部 はほとんどが 森 林 でおおわれており そこにはイヌワシに 代 表 される 生 態 系 の 上 位 種 が 生 息 する 全 体 的 に 林 業 が 盛 んで 比 較 的 手 入 れがされているため 林 には 樹 洞 性 のムササビやフク ロウが 生 息 し 個 体 数 も 多 い さらに 大 型 哺 乳 類 のカモシカやニホンジカ ツキノワグマが 近 年 確 認 され ており それらの 生 息 に 適 した 環 境 条 件 が 登 米 市 内 に 広 く 残 っているためといえるが 樹 皮 剥 ぎや 幼 木 の 食 害 など 林 業 との 共 存 という 点 では 今 後 注 意 が 必 要 である また この 地 域 の 谷 間 の 集 落 では 水 田 が 広 がっており 爬 虫 類 両 生 類 水 生 昆 虫 が 豊 富 で それらを 餌 とするタヌキやイタチ 全 国 的 に 個 体 数 が 減 少 している 猛 禽 類 のサシバなどが 生 息 する また 山 あいの 渓 流 には 絶 滅 危 惧 種 のカジカ( 大 卵 型 )やギバチが 生 息 し 川 魚 の 餌 となるカゲロウやトビゲラ トンボの 仲 間 が 多 く 生 息 している 一 部 で 移 入 種 であるニジマスが 確 認 されているものの 豊 かな 自 然 が 健 在 している 一 方 北 上 川 の 西 側 は 主 に 平 野 部 で 大 部 分 が 水 田 地 帯 となっており 秋 から 春 にかけては 伊 豆 沼 を 中 心 にガン 類 の 重 要 な 採 餌 場 所 となっている さらに 水 田 や 沼 地 周 辺 のヨシ 原 河 畔 林 などは 多 くの 小 型 の 冬 鳥 にとっても 重 要 な 生 息 環 境 となっており それを 狙 う 猛 禽 類 の 個 体 数 も 増 え 冬 季 はにぎやか である しかし この 水 田 の 広 がりに 比 べて 魚 類 やタニシなどの 貝 類 またそれを 捕 食 するサギ 類 などの 個 体 数 は 意 外 に 少 なく 登 米 市 内 の 水 田 地 帯 の 動 物 相 はやや 単 調 である これは 近 年 の 圃 場 整 備 や 稲 作 様 式 の 変 化 による 影 響 と 考 えられる 水 田 地 帯 の 生 態 系 は その 季 節 変 化 も 含 めて 一 般 に 考 えられ ている 以 上 に 多 様 である 地 域 の 生 態 系 に 大 きな 影 響 を 与 える 圃 場 整 備 などについては 平 成 14 年 に 改 正 された 土 地 改 良 法 に 基 づく 農 業 農 村 整 備 事 業 における 環 境 と 調 和 の 基 本 方 針 により 実 施 すべき と 考 えられる 水 田 地 帯 の 中 にはところどころに 低 丘 陵 があり これが 水 田 とは 違 った 生 息 空 間 を 提 供 している 特 に 平 筒 沼 周 辺 ではアカシデを 中 心 とする 自 然 林 がみられ 林 内 ではカモシカの 生 息 が 確 認 された この 種 の 分 布 状 況 について 詳 細 は 不 明 だが 地 形 的 に 考 えても 断 片 的 である 可 能 性 があり この 森 林 環 境 を 保 全 する 意 義 は 極 めて 大 きいといえる また 長 沼 や 平 筒 沼 など 沼 地 が 点 在 しているのも 登 米 市 の 特 徴 であるといえる 昆 虫 相 は トンボ 類 を 中 心 に 豊 富 で 秋 の 風 物 詩 ともいえるアキアカネやノシメトンボの 大 群 はもちろんのこと オオセスジイトト ンボやチョウトンボなど 全 国 的 に 絶 滅 の 危 機 にさらされている 種 の 個 体 数 も 多 い しかしながら 魚 類 相 に ついてみれば 外 来 種 の 割 合 が 高 い 特 にオオクチバスが 極 めて 多 く 一 昔 の 状 態 からすれば 沼 地 の 生 態 系 は 大 きく 変 わってきている 可 能 性 がある しかし 機 織 沼 のように 地 元 の 住 民 が 定 期 的 に 駆 除 対 策 を 行 っている 場 所 は タナゴ 類 などの 小 魚 が 多 く 比 較 的 健 全 な 状 態 が 保 たれている 今 後 行 政 と 地 元 漁 業 組 合 そして 地 元 市 民 との 連 携 による 生 態 系 の 保 全 に 向 けた 積 極 的 な 取 り 組 みが 急 務 といえる 以 下 に 分 類 群 ごとの 調 査 結 果 について 記 述 する - 115 -
(2) 哺 乳 類 1 調 査 方 法 a. 文 献 調 査 登 米 市 の 哺 乳 類 相 に 関 する 文 献 を 収 集 し 過 去 に 登 米 市 で 記 録 されている 種 を 整 理 した 整 理 の 対 象 とした 文 献 を 以 下 に 示 す < 文 献 A> 宮 城 県 の 動 物 情 報 ( 宮 城 野 野 生 動 物 研 究 会, 2002) < 文 献 B> 鱒 淵 観 音 堂 県 自 然 環 境 保 全 地 域 学 術 調 査 報 告 書 ( 宮 城 県, 1999) < 文 献 C> 河 川 水 辺 の 国 勢 調 査 (ダム 水 源 地 環 境 整 備 センター, 2000) < 文 献 D> 中 山 間 地 域 総 合 整 備 事 業 東 和 地 区 (2004) b. 現 地 調 査 登 米 市 に 生 息 する 哺 乳 類 の 詳 細 を 把 握 するため 定 点 調 査 5 地 域 において 環 境 条 件 時 期 等 を 勘 案 し 調 査 を 実 施 した なお これらの 調 査 地 域 以 外 で 確 認 した 種 についても 任 意 に 記 録 した 調 査 実 施 日 秋 季 : 平 成 18 年 11 月 14~17 日, 平 成 19 年 8 月 29~30 日 冬 季 : 平 成 19 年 2 月 19~23 日 春 季 : 平 成 19 年 5 月 8~12 日 夏 季 : 平 成 19 年 6 月 17~21 日 調 査 方 法 < 直 接 観 察 フィールドサイン 法 > 地 域 内 の 路 上 や 林 内 を 歩 き 哺 乳 類 を 目 視 または 足 跡 や 糞 食 痕 などの 生 活 痕 跡 により 確 認 する <コウモリ 類 調 査 > 夕 方 から 夜 に コウモリが 採 餌 の 際 超 音 波 を 発 する 習 性 を 利 用 し バットディテクター ( 超 音 波 を 感 知 する 機 器 )を 用 いて 種 の 特 定 を 行 った < 自 動 写 真 撮 影 調 査 > 哺 乳 類 の 体 温 に 反 応 してシャッターがおり るカメラ(センサーカメラ)を 夜 間 に 設 置 し 姿 を 撮 影 することにより 確 認 する 写 真 Ⅱ-5-1. バットディテクター ( 超 音 波 を 感 知 する 機 器 ) - 116 -
2 調 査 結 果 文 献 において 記 録 されていた 種 は 7 目 13 科 21 種 であった 現 地 調 査 では 6 目 10 科 19 種 が 確 認 さ れ 登 米 市 で 確 認 された 哺 乳 類 は 合 計 7 目 14 科 25 種 となった 県 内 の 平 野 から 山 地 に 生 息 するおおよ その 種 が 網 羅 されている 現 地 調 査 では 捕 獲 調 査 以 外 で 確 認 するのが 困 難 なトガリネズミ 類 ネズミ 類 と ツキノワグマを 除 いて 平 野 から 山 地 に 生 息 する 種 のほとんどを 確 認 することができた しかし ニホンジカとカモシカの 食 痕 や 足 跡 コウモリの 超 音 波 など それだけでは 種 の 同 定 が 困 難 なものも 多 く この 場 合 確 実 な 確 認 以 外 はリス ト 中 で の 記 号 を 用 い 生 息 の 可 能 性 があるというレベルで 記 録 するにとどめた 表 Ⅱ-5-1. 哺 乳 類 目 録 目 名 科 名 種 名 学 名 文 献 現 地 文 献 調 査 現 地 調 査 調 査 調 査 A B C D 大 萱 大 関 機 織 平 筒 長 沼 任 意 摘 要 モグラ トガリネズミ ジネズミ Crocidura dsinezumi モグラ ヒミズ Urotrichus talpoides アズマモグラ Mogera wogura コウモリ キクガシラコウモリ キクガシラコウモリ Rhinolophus ferrumequinus ヒナコウモリ モモジロコウモリ Myotis macrodactylus アブラコウモリ Pipistrellus abramus ヤマコウモリ Nyctalus aviator VU( 宮 ), NT( 環 ) ヒナコウモリ Vespertilio superans VU( 宮 ) サル オナガザル ニホンザル Macaca fuscata LP( 宮 ) ウサギ ウサギ ノウサギ Lepus brachyurus ネズミ リス ニホンリス Sciurus lis ムササビ Petaurista leucogenys ネズミ ハタネズミ Microtus montebelli アカネズミ Apodemus speciosus ヒメネズミ Apodemus argenteus ドブネズミ Rattus norvegicus 外 (ネズミ 科 の 一 種 ) (Muridae gen sp.) ネコ クマ ツキノワグマ Selenarctos thibetanus イヌ タヌキ Nyctereutes procyonoides キツネ Vulpes vulpes イタチ テン Martes melampus イタチ Mustela itatsi アナグマ Meles meles ジャコウネコ ハクビシン Paguma larvata 外 ウシ シカ ニホンジカ Cervus nippon ウシ カモシカ Capricornis crispus 要 ( 宮 ), 特 天 7 目 14 科 25 種 22 20 20 13 9 1 16 12 9 12 11 11 ( 宮 ): 宮 城 県 レッドデータブック (2001), ( 環 ): 環 境 省 レッドリスト(2007) [カテゴリー 区 分 ] VU: 絶 滅 危 惧 Ⅱ 類, NT: 準 絶 滅 危 惧, LP: 絶 滅 の 恐 れのある 地 域 個 体 群, 要 : 要 注 目 種 特 天 : 特 別 天 然 記 念 物 外 : 外 来 種 文 献 調 査 で 記 録 がなく 新 たに 確 認 された 種 は 以 下 のとおり 3 種 があげられた a. ヒナコウモリ ヤマコウモリ (ヒナコウモリ 科 ) 大 萱 沢 では 春 季 と 夏 季 に また 他 の 山 沿 いのいたるところで 春 季 にヒナコウモリを 確 認 した ヒナコ ウモリは 市 街 地 から 山 地 に 生 息 する 種 であり 個 体 数 も 少 なくないと 思 われ 登 米 市 では 広 く 生 息 して いる 可 能 性 がある 平 筒 沼 では 春 季 と 夏 季 にヤマコウモリと 思 われる 超 音 波 を 記 録 したが ヒナコウモリとの 判 別 が 難 し く 今 回 は 生 息 の 可 能 性 ありという 記 録 にとどめた ヤマコウモリは 主 に 大 径 木 のあるような 林 に 生 息 し ているといわれ 県 内 の 確 実 な 記 録 も 少 なく 情 報 不 足 であるが 登 米 市 での 生 息 の 可 能 性 は 高 い - 117 -
写真Ⅱ-5-2. アブラコウモリの超音波 横のメモリは 0.2 秒間隔 縦のメモリは 10kHz 間隔で, 30 80kHz の範囲を表示 b. ニホンジカ シカ科 機織沼周辺の住民からの聞き取りにより 春季と夏季に多くの確認情報を頂いた 特に付近の畑や 東和総合運動場などで時々目撃されているようである 県内でのニホンジカの記録は 牡鹿半島から 気仙沼まで広くあり 今回機織沼周辺でも多数確認されていることから 登米市でも北上川東側には 広く分布していると思われる ただし 個体数の多少については不明である 大萱沢 大関川 機織沼の現地調査では 食痕や足跡だけでカモシカと見分けがつかない場合が 多く 目視と聞き取り以外での確認は生息の可能性ありという記録にとどめた 北上川西側では今のところ確実な記録はないが 今後発見される可能性はある ③ 定点調査 5 地域における哺乳類相の概要 大萱沢地域 大萱沢地域においてはよく手入れされたスギ林が広がっており その周辺では高い確率でムササビを 観察することができた 鳴声も頻繁に聞かれ いつも決まった場所での確認であることから 付近で繁殖し ていると思われる 成長したスギは樹洞ができている場合があり また落葉広葉樹が葉を落とした冬季で も常緑のスギの葉は餌となるため ムササビは好んで利用する そのほか ノウサギやリス タヌキなどの痕跡も多く確認された 確認が多かったのは 針葉樹林の間に わずかに広がっている広葉樹林内で 構造が単純な針葉樹林に比べ 餌や隠れ場所が多く存在するた めと考えられる 大関川地域 大関川地域でもムササビが確認された しかし 大萱沢地域ほど発達したスギ林も見られず 上流部の ごく限られた場所で数回確認されただけである - 118 -
センサーカメラを 使 った 自 動 撮 影 では タヌキ アナグマ ハクビシンなどが 多 数 撮 影 された 特 に ハ クビシンは 夜 間 に 林 道 を 歩 いている 姿 をよく 見 かけた また タヌキやキツネ イタチのフンの 確 認 も 多 く 哺 乳 類 全 般 にわたって 個 体 数 が 多 いと 思 われる こ れは 上 流 部 から 中 流 部 にかけて 針 葉 樹 林 のほかに 広 葉 樹 林 も 適 度 に 広 がり またその 谷 あいには 田 畑 が 見 られること から 木 の 実 以 外 にもカエルやヘビ 昆 虫 類 といった 餌 が 豊 富 なためといえる このように 森 林 と 人 里 が 隣 接 するい わゆる 里 山 環 境 は 哺 乳 類 が 一 番 多 く 生 息 する 環 境 である 写 真 Ⅱ-5-3. アナグマ 機 織 沼 地 域 機 織 沼 の 周 囲 では アズマモグラやタヌキの 確 認 が 少 なく センサーカメラでも 哺 乳 類 を 撮 影 すること ができなかった しかし 沼 の 北 東 側 に 位 置 する 丘 陵 地 の 林 内 または 林 縁 に 接 する 畑 地 で リスやタヌ キ キツネの 足 跡 や 食 痕 が 多 数 確 認 できた さらに ニホンジカもしくはカモシカの 足 跡 も 頻 繁 に 確 認 でき 個 体 数 も 少 なくないものと 思 われる この 場 所 による 確 認 数 の 違 いは 沼 の 北 東 側 に 配 置 されている 用 水 路 が 機 織 沼 と 丘 陵 地 とを 分 断 しているためと 思 われる 機 織 沼 は 周 辺 環 境 を 含 め 動 物 が 生 息 するには 適 した 地 域 といえる 用 水 路 の 上 に 動 物 が 渡 れる 場 所 を 増 やすなど 容 易 な 方 法 でより 多 くの 動 物 が 生 息 する 場 所 になると 考 えられる また 沼 地 と 水 田 地 帯 が 隣 接 するような 環 境 では 普 通 イタチの 確 認 が 多 いが ここでは 一 度 も 確 認 でき なかった 今 後 の 調 査 により 確 認 される 可 能 性 が 高 い 平 筒 沼 地 域 平 筒 沼 東 側 では 夕 方 におびただしい 数 のコウモリ 類 を 確 認 した ほとんどは 家 屋 にねぐらをとるアブラ コウモリであった また 水 面 すれすれを 飛 翔 し 採 餌 するモモジロコウモリのほか 一 日 に 数 個 体 程 度 であ るが ヒナコウモリもしくはヤマコウモリと 思 われる 超 音 波 を 確 認 した また 沼 周 辺 の 樹 林 内 に 設 置 したセンサーカメラでは タヌキとハクビシンが 多 く 撮 影 された ハクビシン は 冬 季 に 幼 獣 も 撮 影 されており この 周 辺 には 多 く 生 息 していると 思 われる 平 筒 沼 北 東 側 にある いこいの 森 では カモシカの 食 痕 が 確 認 された 当 初 登 米 市 の 北 上 川 西 側 地 域 には カモシカは 分 布 していないとされていたが 地 元 の 人 の 目 撃 情 報 や 林 内 にため 糞 が 確 認 される など カモシカの 生 息 は 明 らかである 登 米 市 のカモシカの 分 布 状 況 や 個 体 数 は 不 明 であるが その 生 息 環 境 も 含 めた 保 全 は 強 く 必 要 である - 119 -
長 沼 地 域 長 沼 地 域 での 現 地 調 査 は 主 に 南 西 側 で 実 施 した 長 沼 の 水 辺 にごく 近 い 低 木 状 の 落 葉 広 葉 樹 林 内 では イタチのけもの 道 が 網 の 目 状 に 走 っており ひ と 目 で 個 体 数 が 多 いことがわかる 日 中 でも 路 上 を 歩 いている 姿 を 多 数 目 撃 した センサーカメラでは イ タチのほかにタヌキやハクビシンが 頻 繁 に 撮 影 された しかし それ 以 外 の 環 境 では ほとんど 確 認 がで きなかった これは 沼 に 隣 接 する 低 木 林 では 両 生 類 や 爬 虫 類 昆 虫 類 など 餌 が 多 いこと また 人 があまり 入 り 込 まない ことから 生 息 環 境 として 適 しているため と 考 えられる カモシカと 思 われる 足 跡 やノウサギ リスの 食 痕 もあり 個 体 数 は 少 ないと 思 われるが 長 沼 周 辺 には 様 々な 哺 乳 類 が 生 息 している 沼 本 体 だけでなく その 周 辺 の 湿 地 低 木 林 丘 陵 地 の 樹 林 などを 適 度 に 残 していくことにより 動 物 全 体 の 個 体 数 は 維 持 できるものと 考 えられる 写 真 Ⅱ-5-4. ハクビシン - 120 -
(3) 鳥 類 1 調 査 方 法 a. 文 献 調 査 登 米 市 の 鳥 類 相 に 関 する 文 献 調 査 には 以 下 の 文 献 を 使 用 した < 文 献 A> 宮 城 県 の 鳥 類 分 布 ( 日 本 野 鳥 の 会 宮 城 県 支 部, 2002) < 文 献 B> 鱒 淵 観 音 堂 県 自 然 環 境 保 全 地 域 学 術 調 査 報 告 書 ( 宮 城 県, 1999) < 文 献 C> 河 川 水 辺 の 国 勢 調 査 (ダム 水 源 地 環 境 整 備 センター, 2003) < 文 献 D> 自 然 環 境 保 全 再 生 活 動 企 画 運 営 業 務 報 告 書 ( 特 定 非 営 利 活 動 法 人 あぐりねっと 21, 2006) < 文 献 E> 中 山 間 地 域 総 合 整 備 事 業 東 和 地 区 (2004) b. 現 地 調 査 登 米 市 に 生 息 する 鳥 類 の 詳 細 を 把 握 するため 定 点 調 査 5 地 域 において 環 境 条 件 時 期 等 を 勘 案 し 調 査 を 実 施 した なお これらの 調 査 地 域 以 外 で 確 認 した 種 についても 任 意 に 記 録 した 調 査 実 施 日 秋 季 : 平 成 18 年 11 月 14~17 日, 平 成 19 年 8 月 29~30 日 冬 季 : 平 成 19 年 2 月 19~23 日 春 季 : 平 成 19 年 5 月 8~12 日 夏 季 : 平 成 19 年 6 月 17~21 日 調 査 方 法 < 定 点 センサス 法 > 対 象 地 域 内 の 見 晴 らしのよい 場 所 に 調 査 定 点 を 設 け 双 眼 鏡 および 望 遠 鏡 を 併 用 し 定 点 周 辺 に 出 現 する 鳥 類 主 に 猛 禽 類 を 中 心 に 記 録 した <ルートセンサス 法 > 調 査 ルート 上 を 2km/h 程 度 でゆっくり 歩 き 双 眼 鏡 を 使 用 して 目 視 並 びに 鳴 声 によって 鳥 類 の 種 類 と 個 体 数 を 記 録 した 2 調 査 結 果 文 献 調 査 の 結 果 記 録 されている 種 は 16 目 45 科 206 種 で 山 地 から 平 地 湖 沼 や 湿 地 など 様 々な 環 境 に 生 息 する 鳥 類 を 含 んでおり またシロハヤブサやオニアジサシなどの 迷 鳥 も 含 まれていた 現 地 調 査 の 結 果 は 16 目 42 科 131 種 で 文 献 調 査 と 合 わせ 計 16 目 45 科 214 種 が 記 録 された 現 地 調 査 では 沼 地 周 辺 で 冬 季 にカモ 類 や 猛 禽 類 などが 山 地 周 辺 では 年 中 カラ 類 などが 多 く 確 認 された また 登 米 市 全 体 ではフクロウが 頻 繁 に 確 認 された - 121 -
表 Ⅱ-5-2. 鳥 類 目 録 目 名 科 名 種 名 学 名 文 献 現 地 文 献 名 現 地 調 査 調 査 調 査 A B C D E 大 萱 大 関 機 織 平 筒 長 沼 任 意 摘 要 カイツブリ カイツブリ カイツブリ Tachybaptus ruficollis ハジロカイツブリ Podiceps nigricollis ミミカイツブリ Podiceps auritus カンムリカイツブリ Podiceps cristatus ペリカン ウ カワウ Phalacrocorax carbo ウミウ Phalacrocorax capillatus コウノトリ サギ サンカノゴイ Botaurus stellaris NT( 宮 ), EN( 環 ) ヨシゴイ Ixobrychus sinensis NT( 環 ) ゴイサギ Nycticorax nycticorax ササゴイ Butorides striatus アカガシラサギ Ardeola bacchus アマサギ Bubulcus ibis ダイサギ Egretta alba チュウサギ Egretta intermedia NT( 宮 ), NT( 環 ) コサギ Egretta garzetta アオサギ Ardea cinerea コウノトリ コウノトリ Ciconia boyciana CR( 環 ), 特 天 トキ ヘラサギ Platalea leucorodia 要 ( 宮 ), DD( 環 ) カモ カモ シジュウカラガン Branta canadensis CR+EN( 宮 ), CR( 環 ), 国 内 コクガン Branta bernicla VU( 宮 ), VU( 環 ), 天 然 マガン Anser albifrons NT( 宮 ), NT( 環 ), 天 然 カリガネ Anser erythropus NT( 宮 ), NT( 環 ) ヒシクイ(ヒシクイ) Anser fabalis serrirostris NT( 宮 ), VU( 環 ), 天 然 ヒシクイ(オオヒシクイ) Anser fabalis middendorffii NT( 宮 ), NT( 環 ), 天 然 ヒシクイssp. Anser fabalis ssp. ハクガン Anser caerulescens 要 ( 宮 ), DD( 環 ) サカツラガン Anser cygnoides 要 ( 宮 ), DD( 環 ) コブハクチョウ Cygnus olor 外 オオハクチョウ Cygnus cygnus コハクチョウ Cygnus columbianus オシドリ Aix galericulata マガモ Anas platyrhynchos カルガモ Anas poecilorhyncha コガモ Anas crecca トモエガモ Anas formosa VU( 環 ) ヨシガモ Anas falcata オカヨシガモ Anas strepera ヒドリガモ Anas penelope アメリカヒドリ Anas americana オナガガモ Anas acuta シマアジ Anas querquedula ハシビロガモ Anas clypeata ホシハジロ Aythya ferina キンクロハジロ Aythya fuligula スズガモ Aythya marila コオリガモ Clangula hyemalis ホオジロガモ Bucephala clangula ミコアイサ Mergus albellus カワアイサ Mergus merganser タカ タカ ミサゴ Pandion haliaetus NT( 宮 ), NT( 環 ) ハチクマ Pernis apivorus NT( 宮 ), NT( 環 ) トビ Milvus Migrans オジロワシ Haliaeetus albicilla VU( 宮 ), EN( 環 ), 天 然, 国 内 オオワシ Haliaeetus pelagicus VU( 宮 ), VU( 環 ), 天 然, 国 内 オオタカ Accipiter gentilis NT( 宮 ), NT( 環 ), 国 内 ツミ Accipiter gularis DD( 宮 ) ハイタカ Accipiter nisus NT( 宮 ), NT( 環 ) ノスリ Buteo buteo サシバ Butastur indicus VU( 宮 ), VU( 環 ) クマタカ Spizaetus nipalensis CR+EN( 宮 ), EN( 環 ), 国 内 イヌワシ Aquila chrysaetos CR+EN( 宮 ), EN( 環 ), 天 然, 国 内 ハイイロチュウヒ Circus cyaneus チュウヒ Circus spilonotus NT( 宮 ), EN( 環 ) ハヤブサ シロハヤブサ Falco rusticolus ハヤブサ Falco peregrinus NT( 宮 ), VU( 環 ), 国 内 チゴハヤブサ Falco subbuteo 要 ( 宮 ) コチョウゲンボウ Falco columbarius チョウゲンボウ Falco tinnunculus キジ キジ ヤマドリ Phasianus soemmerringii キジ Phasianus colchicus ツル クイナ クイナ Rallus aquaticus 要 ( 宮 ) ヒクイナ Porzana fusca VU( 環 ) バン Gallinula chloropus オオバン Fulica atra 要 ( 宮 ) チドリ チドリ タマシギ Rostratula benghalensis 要 ( 宮 ) コチドリ Charadrius dubius イカルチドリ Charadrius placidus ムナグロ Pluvialis fulva ダイゼン Pluvialis squatarola ケリ Vanellus cinereus 要 ( 宮 ) タゲリ Vanellus vanellus シギ トウネン Calidris ruficollis ヒバリシギ Calidris subminuta オジロトウネン Calidris temminckii ウズラシギ Calidris acuminata ( 宮 ): 宮 城 県 レッドデータブック (2001), ( 環 ): 環 境 省 レッドリスト(2006) [カテゴリー 区 分 ] CR: 絶 滅 危 惧 ⅠA 類, EN: 絶 滅 危 惧 ⅠB 類, CR+EN: 絶 滅 危 惧 Ⅰ 類, VU: 絶 滅 危 惧 Ⅱ 類, NT: 準 絶 滅 危 惧, DD: 情 報 不 足, LP: 絶 滅 の 恐 れのある 地 域 個 体 群, 要 : 要 注 目 種 特 天 : 特 別 天 然 記 念 物, 天 : 天 然 記 念 物 国 内 : 国 内 希 少 野 生 動 植 物 種 ( 種 の 保 存 法 ) 外 : 外 来 種 - 122 -
表 Ⅱ-5-2. 鳥 類 目 録 (つづき) 目 名 科 名 種 名 学 名 文 献 現 地 文 献 調 査 現 地 調 査 調 査 調 査 A B C D E 大 萱 大 関 機 織 平 筒 長 沼 任 意 摘 要 チドリ シギ ハマシギ Calidris alpina オバシギ Calidris tenuirostris エリマキシギ Philomachus pugnax キリアイ Limicola falcinellus オオハシシギ Limnodromus scolopaceus ツルシギ Tringa erythropus コアオアシシギ Tringa stagnatilis アオアシシギ Tringa nebularia クサシギ Tringa ochropus タカブシギ Tringa glareola キアシシギ Heteroscelus brevipes イソシギ Actitis hypoleucos オグロシギ Limosa limosa オオソリハシシギ Limosa lapponica チュウシャクシギ Numenius phaeopus タシギ Gallinago gallinago オオジシギ Gallinago hardwickii NT( 宮 ), NT( 環 ) セイタカシギ セイタカシギ Himantopus himantopus VU( 環 ) アカエリヒレアシシギ Phalaropus lobatus トウゾクカモメ オオトウゾクカモメ Catharacta maccormicki カモメ ユリカモメ Larus ridibundus セグロカモメ Larus argentatus オオセグロカモメ Larus schistisagus カモメ Larus canus ウミネコ Larus crassirostris ハジロクロハラアジサシ Chlidonias leucoptera クロハラアジサシ Chlidonias hybridus オニアジサシ Hydroprogne caspia アジサシ Sterna hirundo ハト ハト キジバト Streptopelia orientalis カッコウ カッコウ カッコウ Cuculus canorus ツツドリ Cuculus saturatus ホトトギス Cuculus poliocephalus フクロウ フクロウ コミミズク Asio flammeus 要 ( 宮 ) コノハズク Otus scops DD( 宮 ) フクロウ Strix uralensis 要 ( 宮 ) ヨタカ ヨタカ ヨタカ Caprimulgus indicus VU( 環 ) アマツバメ アマツバメ アマツバメ Apus pacificus ブッポウソウ カワセミ ヤマセミ Ceryle lugubris カワセミ Alcedo atthis キツツキ キツツキ アリスイ Jynx torquilla アオゲラ Picus awokera アカゲラ Dendrocopos major コゲラ Dendrocopos kizuki スズメ ヒバリ ヒバリ Alauda arvensis ツバメ ショウドウツバメ Riparia riparia ツバメ Hirundo rustica コシアカツバメ Hirundo daurica イワツバメ Delichon urbica セキレイ キセキレイ Motacilla cinerea ハクセキレイ Motacilla alba セグロセキレイ Motacilla grandis ビンズイ Anthus hodgsoni タヒバリ Anthus spinoletta サンショウクイ サンショウクイ Pericrocotus divaricatus VU( 宮 ), VU( 環 ) ヒヨドリ ヒヨドリ Hypsipetes amaurotis モズ チゴモズ Lanius tigrinus CR+EN( 宮 ), CR( 環 ) モズ Lanius bucephalus レンジャク キレンジャク Bombycilla garrulus ヒレンジャク Bombycilla japonica カワガラス カワガラス Cinclus pallasii ミソサザイ ミソサザイ Troglodytes troglodytes イワヒバリ カヤクグリ Prunella rubida ツグミ ノゴマ Luscinia calliope コルリ Luscinia cyane ルリビタキ Tarsiger cyanurus ジョウビタキ Phoenicurus auroreus ノビタキ Saxicola torquata LP( 宮 ) イソヒヨドリ Monticola solitarius トラツグミ Zoothera dauma クロツグミ Turdus cardis アカハラ Turdus chrysolaus シロハラ Turdus pallidus ツグミ Turdus naumanni ウグイス ヤブサメ Urosphena squameiceps ウグイス Cettia diphone コヨシキリ Acrocephalus bistrigiceps オオヨシキリ Acrocephalus arundinaceus ムジセッカ Phylloscopus fuscatus メボソムシクイ Phylloscopus borealis エゾムシクイ Phylloscopus tenellipes センダイムシクイ Phylloscopus coronatus キクイタダキ Regulus regulus ( 宮 ): 宮 城 県 レッドデータブック (2001), ( 環 ): 環 境 省 レッドリスト(2006) [カテゴリー 区 分 ] CR: 絶 滅 危 惧 ⅠA 類, EN: 絶 滅 危 惧 ⅠB 類, CR+EN: 絶 滅 危 惧 Ⅰ 類, VU: 絶 滅 危 惧 Ⅱ 類, NT: 準 絶 滅 危 惧, DD: 情 報 不 足, LP: 絶 滅 の 恐 れのある 地 域 個 体 群, 要 : 要 注 目 種 特 天 : 特 別 天 然 記 念 物, 天 : 天 然 記 念 物 国 内 : 国 内 希 少 野 生 動 植 物 種 ( 種 の 保 存 法 ) 外 : 外 来 種 - 123 -
表 Ⅱ-5-2. 鳥 類 目 録 (つづき) 目 名 科 名 種 名 学 名 文 献 現 地 文 献 調 査 現 地 調 査 調 査 調 査 A B C D E 大 萱 大 関 機 織 平 筒 長 沼 任 意 摘 要 スズメ ウグイス セッカ Cisticola juncidis ヒタキ キビタキ Ficedula narcissina オオルリ Cyanoptila cyanomelana サメビタキ Muscicapa sibirica エゾビタキ Muscicapa griseisticta コサメビタキ Muscicapa dauurica カササギヒタキ サンコウチョウ Terpsiphone atrocaudata エナガ エナガ Aegithalos caudatus シジュウカラ コガラ Parus montanus ヒガラ Parus ater ヤマガラ Parus varius シジュウカラ Parus major ゴジュウカラ ゴジュウカラ Sitta europaea メジロ メジロ Apalopteron familiare ホオジロ ホオジロ Emberiza cioides コジュリン Emberiza yessoensis NT( 宮 ), VU( 環 ) ホオアカ Emberiza fucata コホオアカ Emberiza pusilla カシラダカ Emberiza rustica ミヤマホオジロ Emberiza elegans ノジコ Emberiza sulphurata 要 ( 宮 ), NT( 環 ) アオジ Emberiza spodocephala クロジ Emberiza variabilis シベリアジュリン Emberiza pallasi オオジュリン Emberiza schoeniclus ユキホオジロ Plectrophenax nivalis アトリ アトリ Fringilla montifringilla カワラヒワ Carduelis sinica マヒワ Carduelis spinus ハギマシコ Leucosticte arctoa オオマシコ Carpodacus roseus イスカ Loxia curvirostra ベニマシコ Uragus sibiricus ウソ Pyrrhula pyrrhula イカル Eophona personata シメ Coccothraustes Coccothraustes ハタオリドリ ニュウナイスズメ Passer rutilans スズメ Passer montanus ムクドリ コムクドリ Sturnus philippensis ムクドリ Sturnus cineraceus カラス カケス Garrulus glandarius オナガ Cyanopica cyana コクマルガラス Corvus dauuricus ミヤマガラス Corvus frugilegus ハシボソガラス Corvus corone ハシブトガラス Corvus macrorhynchos キジ キジ コジュケイ Bambusicola thoracica 外 16 目 45 科 214 種 206 131 202 73 69 78 12 53 59 59 79 57 100 ( 宮 ): 宮 城 県 レッドデータブック (2001), ( 環 ): 環 境 省 レッドリスト(2006) [カテゴリー 区 分 ] CR: 絶 滅 危 惧 ⅠA 類, EN: 絶 滅 危 惧 ⅠB 類, CR+EN: 絶 滅 危 惧 Ⅰ 類, VU: 絶 滅 危 惧 Ⅱ 類, NT: 準 絶 滅 危 惧, DD: 情 報 不 足, LP: 絶 滅 の 恐 れのある 地 域 個 体 群, 要 : 要 注 目 種 特 天 : 特 別 天 然 記 念 物, 天 : 天 然 記 念 物 国 内 : 国 内 希 少 野 生 動 植 物 種 ( 種 の 保 存 法 ) 外 : 外 来 種 今 回 の 現 地 調 査 で 新 たに 確 認 された 種 は 以 下 のとおり 8 種 である a. カワウ (ウ 科 ) 秋 季 と 冬 季 に 単 独 で 飛 翔 しているのを 確 認 した 記 録 回 数 が 少 なく 調 査 地 付 近 で 繁 殖 はしてい ないと 思 われる b. サカツラガン (カモ 科 ) 春 季 に 蕪 栗 沼 東 側 の 水 田 で 採 餌 しているのを 確 認 した 宮 城 県 では 希 な 冬 鳥 として 過 去 にも 確 認 はあるが 多 くない c. コブハクチョウ (カモ 科 ) 夏 季 に 伊 豆 沼 で 休 息 している 個 体 を 確 認 した 一 年 中 伊 豆 沼 にいるかどうかは 不 明 だが かご 抜 けした 個 体 であると 思 われる - 124 -
d. ヒクイナ (クイナ 科 ) 夏 季 に 機 織 沼 のヨシ 原 内 で 採 餌 しているのを 確 認 した 夜 間 から 早 朝 にかけてさえずっており 繁 殖 している 可 能 性 がある e. タマシギ (チドリ 科 ) 春 季 に 長 沼 の 南 西 側 で 夜 間 に 鳴 声 を 確 認 した 一 度 のみの 確 認 で 繁 殖 の 有 無 は 不 明 である f. ヒレンジャク (レンジャク 科 ) 冬 季 に 大 関 川 沿 いの 広 葉 樹 に 止 まっているのを 確 認 した 冬 鳥 で 見 る 機 会 がやや 少 ない 鳥 である が 今 年 度 は 渡 来 数 が 多 かった g. エゾムシクイ (ウグイス 科 ) 大 萱 沢 大 関 川 平 筒 沼 で 春 季 と 夏 季 にさえずっているのを 確 認 した 山 地 で 普 通 に 見 られる 夏 鳥 で 登 米 市 の 山 沿 いではいたる 所 で 繁 殖 していると 思 われる h. コガラ (シジュウカラ 科 ) 大 萱 沢 地 域 と 大 関 川 地 域 で 秋 季 と 冬 季 に 確 認 した 山 地 で 普 通 に 見 られる 鳥 で 冬 は 平 地 へ 移 動 してくるので 今 回 確 認 できなかった 地 区 でも 多 数 出 現 すると 思 われる 3 定 点 調 査 5 地 域 における 鳥 類 相 の 概 要 大 萱 沢 地 域 今 回 調 査 した 5 地 域 の 中 で 一 番 確 認 種 類 が 少 なかったが これは 大 萱 沢 周 辺 の 大 部 分 をスギの 人 工 林 が 占 めているためと 思 われる しかし 秋 季 を 除 いて 一 年 中 フクロウが 確 認 された 一 度 に 数 箇 所 から 鳴 き 声 が 聞 こえるなど 個 体 数 も 多 いようである おそらく スギ 林 の 間 にある 沢 沿 いの 低 木 林 や 林 縁 部 などに 餌 となるネズミ 類 が 多 く さ らにスギ 林 が 手 入 れされていることから 狩 りに 適 した 林 内 環 境 となっているためといえる 沢 沿 いの 低 木 林 ではミソサザイ キビタキ オオルリなど 丘 陵 や 山 地 の 鳥 類 が 多 数 確 認 でき 環 境 省 レッドリスト (2006)で 絶 滅 危 惧 Ⅱ 類 となったヨタカも 夕 方 から 夜 そして 明 け 方 に 鳴 いているのを 何 度 も 確 認 した 現 在 のような 森 林 施 業 を 続 けていけば 今 後 オオタカなどの 猛 禽 類 が 繁 殖 するような 林 になることも 期 待 できる 大 関 川 地 域 オオタカ ノスリ サシバなど 丘 陵 地 を 代 表 する 猛 禽 類 が 調 査 中 頻 繁 に 確 認 された この 地 域 には 餌 となるキジ ヤマドリのほか 小 鳥 類 やネズミ 類 などが 豊 富 で さらに 大 関 川 沿 いには 水 田 が 続 いており サ シバの 主 要 な 餌 となるカエル 類 が 多 く 生 息 しているためといえる サシバは 近 年 減 少 傾 向 にあると 言 われており 環 境 省 レッドリストでは 新 たに 絶 滅 危 惧 Ⅱ 類 となった - 125 -
種 である 大 関 川 沿 いの 針 葉 樹 林 林 縁 部 で 頻 繁 に 確 認 されていることから 本 地 域 での 繁 殖 の 可 能 性 は 高 いといえる サシバの 生 息 には 樹 林 と 水 田 が 接 している 場 所 が 長 く 続 いていること またある 程 度 広 い 樹 林 があることが 重 要 と 考 えられており 今 後 の 森 林 施 業 や 里 山 環 境 の 保 全 に 注 意 が 必 要 である 機 織 沼 地 域 比 較 的 小 さい 沼 だが 冬 季 にはハクチョウ 類 やカモ 類 が 多 く 飛 来 し 水 鳥 の 越 冬 地 となっている 機 織 沼 の 周 辺 はヨシ 原 に 囲 まれてお り 水 際 付 近 では 一 年 中 カイツブリの 姿 が 見 られ 繁 殖 しているものと 思 われる また 夏 季 には 夜 間 から 明 け 方 にかけ てヒクイナのさえずりが 聞 こえた 沼 の 北 西 側 のヨシ 原 内 で 採 餌 している 姿 を 数 回 確 認 できたことから その 周 辺 で 繁 殖 している 可 能 性 があると 思 われる ヒクイナも 近 年 減 少 していると 言 われ サシバ 同 様 に 環 境 省 レッドリストで 絶 滅 危 惧 Ⅱ 類 となった 種 である 繁 殖 期 に あたる 春 季 ~ 夏 季 にかけては ヨシ 原 の 刈 り 取 りを 避 けるなどの 配 慮 が 必 要 である 写 真 Ⅱ-5-5. 魚 を 捕 まえたミサゴ 平 筒 沼 地 域 平 筒 沼 も 冬 はハクチョウ 類 やカモ 類 が 多 く 機 織 沼 よりも 面 積 が 広 いこともあり 登 米 市 内 でも 有 数 の 水 鳥 の 越 冬 地 となっている 平 筒 沼 はガン 類 のねぐらとはなっていないようだが 2 月 の 調 査 で 早 朝 にマガ ン ヒシクイ オオヒシクイが 多 数 みられ ガン 類 は 北 へ 渡 る 時 期 には 少 数 が 利 用 しているようである 平 筒 沼 周 囲 の 遊 歩 道 を 1 周 すると 水 面 には 水 鳥 が 周 辺 の 草 地 や 樹 木 には 山 野 の 鳥 を 見 ることができ 今 回 調 査 した 5 地 域 の 中 で 一 番 多 くの 種 が 確 認 された また 周 辺 の 山 の 上 空 を 繁 殖 期 でもオオタカやサシバが 飛 翔 し ており 繁 殖 していると 思 われる 沼 の 水 辺 では 見 た 目 の 環 境 とは 違 いサギ 類 が 少 なかった 釣 り 人 が 多 い ことも 原 因 の 一 つだが ブラックバスな どの 肉 食 の 外 来 魚 がサギ 類 の 餌 となる 魚 を 食 べるなどの 影 響 も 考 えられる 写 真 Ⅱ-5-6. 枝 先 にとまるホオジロ - 126 -
長 沼 地 域 長 沼 もハクチョウ 類 やカモ 類 の 越 冬 地 であるが 面 積 の 割 には 個 体 数 が 少 ない 冬 期 には 長 沼 北 東 側 の 湿 地 付 近 では 宮 城 県 レッドデータブックで 準 絶 滅 危 惧 のチュウヒが 確 認 され た 長 沼 を 囲 むヨシ 原 や 低 木 林 内 に 餌 となるネズミ 類 が 多 数 生 息 しているためといえる 9 月 の 魚 類 調 査 の 時 には オオバンが 幼 鳥 をつれて 採 餌 しているのが 確 認 された オオバンは ヨシ 原 や 草 地 に 枯 れ 草 を 積 み 上 げて 巣 を 作 る 鳥 である 長 沼 では 水 鳥 以 外 のほとんどの 種 が 周 辺 のヨシ 原 や 低 木 林 で 確 認 されており チュウヒやオオバンなどの 行 動 を 考 えても 沼 本 体 とともに 周 囲 の 環 境 が 重 要 であり 今 後 の 保 全 が 望 まれる 4 伊 豆 沼 における 渡 り 鳥 調 査 の 結 果 について 宮 城 県 では 昭 和 45 年 から 毎 年 ガンカモ 調 査 が 行 なわれている 伊 豆 沼 内 沼 周 辺 の 当 初 の 調 査 では ガン 類 は 190 羽 であったが 昭 和 46 年 にマガンは 天 然 記 念 物 に 指 定 され 個 体 数 が 増 加 しはじめた 1 月 の 調 査 結 果 を 中 心 にみると 調 査 開 始 から 平 成 3 年 頃 まで 多 少 の 年 変 動 はあるものの 5,000 羽 前 後 で 推 移 している 数 年 に 一 度 定 期 的 に 100 羽 以 下 の 年 があるが これは 積 雪 の 多 い 年 で 厳 冬 期 にガ ン 類 は 南 へ 移 動 しているためである 平 成 4 年 に 初 めて 10,000 羽 を 越 え その 頃 から 急 激 に 伊 豆 沼 で 越 冬 する 個 体 数 が 増 加 した そして 平 成 8 年 には 20,000 羽 平 成 11 年 は 30,000 羽 さらに 平 成 18 年 に は 52,000 羽 となり 平 成 19 年 には 伊 豆 沼 内 沼 のほかに 蕪 栗 沼 を 含 めた 総 数 が 100,000 羽 を 越 えた 地 形 的 に 宮 城 県 は 広 大 な 沖 積 平 野 と 多 くの 湖 沼 に 恵 まれている これらの 環 境 は ねぐらとしての 水 面 と 採 食 地 としての 水 田 地 帯 の 両 方 が 必 要 なガン 類 に 適 しており ガン 類 を 引 きつける 要 因 を 備 えていると いえる しかしながら これらの 湖 沼 群 の 大 半 は 干 拓 され 現 在 は 県 北 に 位 置 する 伊 豆 沼 湖 沼 群 などしか 残 されていない さらにこのような 環 境 が 残 されている 県 外 の 地 域 では ねぐらとなる 河 川 や 湖 沼 の 結 氷 餌 の 確 保 が 降 雪 により 困 難 なことなどにより 安 定 したガン 類 の 越 冬 地 にはならず 日 本 に 渡 来 するガン 類 の 約 8 割 が 伊 豆 沼 周 辺 に 集 中 する 結 果 となっている 世 界 的 にみるとガン 類 の 個 体 数 が 増 加 しており これは 地 球 温 暖 化 により 営 巣 場 所 や 餌 の 確 保 が 容 易 になったことに 起 因 し その 結 果 国 内 への 渡 来 数 も 増 加 したものと 推 測 されている 温 暖 化 によって 今 ま で 越 冬 していなかった 北 海 道 などでもマガンは 越 冬 してきているが 全 国 的 にみるとやはり 国 内 に 渡 来 するガン 類 の 大 多 数 が 伊 豆 沼 内 沼 や 蕪 栗 沼 の 周 辺 に 一 極 集 中 する 形 になっている なお 限 られた 地 域 に 多 数 のガン 類 が 集 中 するため 病 原 性 細 菌 の 集 団 感 染 などにより 一 挙 に 個 体 数 を 減 少 させる 危 険 も はらんでいる このように 登 米 市 は 日 本 におけるガン 類 のもっとも 重 要 な 場 所 の 一 つである しかしながら 伊 豆 沼 を 中 心 とした 湖 沼 群 や 周 辺 の 水 田 地 帯 の 面 積 を 考 えても 越 冬 できるガン 類 の 個 体 数 は 限 界 に 近 づいて いるように 思 われる 調 査 を 続 けることにより 今 後 どのようにガン 類 と 付 き 合 っていくべきかが 明 確 になっ ていくであろう - 127 -
11 月 調 査 60,000 50,000 個 体 40,000 数 ( 30,000 羽 ) 20,000 10,000 0 S44 S49 S54 S59 H1 H6 H11 H16 調 査 年 1 月 調 査 60,000 50,000 個 40,000 体 数 ( 30,000 羽 ) 20,000 10,000 0 S45 S50 S55 S60 H2 H7 H12 H17 調 査 年 3 月 調 査 6,000 5,000 個 4,000 体 数 ( 3,000 羽 ) 2,000 1,000 0 S45 S50 S55 S60 H2 H7 H12 H17 調 査 年 図 Ⅱ-5-1. 伊 豆 沼 内 沼 周 辺 におけるガン 類 個 体 数 の 経 年 変 化 ( 宮 城 県 環 境 生 活 部 自 然 保 護 課 調 査 結 果 より) - 128 -