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生 命 保 険 の 金 融 的 機 能 と 課 税 上 の 課 題 - 法 人 税 法 におけるオンバランス 化 への 試 み- 矢 田 公 一 1 法 人 が その 役 員 使 用 人 を 被 保 険 者 として 締 結 した 生 命 保 険 ( 企 業 保 険 )について は 法 人 税 法 上 も 企 業 会 計 上 もその 取 扱 いは 定 められていない 現 行 の 課 税 実 務 の 取 扱 いは 企 業 保 険 に 係 る 保 険 料 について 生 命 保 険 契 約 が 保 障 と 貯 蓄 の 二 面 性 を 有 する ことを 前 提 に 死 亡 保 険 金 に 係 る 保 険 料 は 貯 蓄 性 がなく 満 期 保 険 金 に 係 る 保 険 料 は 貯 蓄 性 を 有 するとの 考 え 方 を 基 本 として その 保 険 金 受 取 人 に 着 目 し 法 人 が 満 期 保 険 金 の 受 取 人 となる 場 合 の 当 該 満 期 保 険 金 に 係 る 保 険 料 を 当 該 法 人 の 資 産 に 計 上 するほか は 期 間 費 用 又 は 給 与 として 損 金 の 額 に 算 入 することとしている しかしながら こうした 現 行 課 税 実 務 の 取 扱 いを 奇 貨 として 多 額 の 解 約 返 戻 金 が 生 ずるような 生 命 保 険 商 品 や 専 ら 保 険 金 受 取 人 への 資 金 移 転 を 目 的 とするものなど 課 税 上 の 弊 害 が 生 ずるものも 見 受 けられる 2 生 命 保 険 は 保 険 期 間 が1 年 である 純 粋 死 亡 保 険 を 除 き 保 険 料 積 立 金 が 積 み 立 てら れることから 保 障 的 要 素 と 並 んで 貯 蓄 的 要 素 があるとされる ところで 保 険 契 約 者 は 保 険 契 約 の 当 事 者 として 解 約 権 契 約 の 変 更 権 などを 有 しており これらの 権 利 の 実 行 により 解 約 返 戻 金 の 支 払 を 受 けるなど 保 険 契 約 の 財 産 的 価 値 を 保 険 契 約 者 が 保 険 給 付 以 外 で 利 用 することが 可 能 である そうすると 生 命 保 険 契 約 の 貯 蓄 的 要 素 は これに 保 険 法 及 び 保 険 契 約 上 の 保 険 契 約 者 の 地 位 権 利 が 加 わることにより 保 険 契 約 者 からみれば 金 融 的 機 能 と 認 識 できるものというべきである 3 生 命 保 険 契 約 の 金 融 的 機 能 の 具 体 的 意 義 として 1 満 期 保 険 金 にみる 金 融 的 機 能 ( 満 期 保 険 金 の 経 済 的 実 質 は 預 金 の 元 本 たる 保 険 料 の 払 戻 しとその 利 息 の 合 計 と 同 視 し 得 る ) 2 保 険 期 間 中 における 財 産 的 価 値 の 利 用 にみる 金 融 的 機 能 ( 保 険 契 約 者 は 保 険 料 積 立 金 の 財 産 的 価 値 の 利 用 が 可 能 ) 3 金 融 商 品 との 類 似 性 にみる 金 融 的 機 能 ( 変 額 保 険 など 投 資 や 貯 蓄 の 機 能 を 明 確 にした 保 険 商 品 が 存 在 )が 挙 げられよう 生 命 保 険 は 保 険 契 約 者 にとって こうした 金 融 的 機 能 を 有 するものであるが 現 行 の 課 税 実 務 の 取 扱 いは 保 険 金 受 取 人 の 別 によりその 取 扱 いを 定 めており 保 険 契 約 者 である 法 人 の 法 人 税 の 課 税 関 係 において こうした 金 融 的 機 能 が 認 識 されないこととなっている 1

これまで 課 税 上 の 弊 害 があるとされた 事 例 をみると 法 人 が 支 払 った 保 険 料 が 期 間 費 用 又 は 給 与 として 損 金 算 入 されたものであり このことは 現 行 の 課 税 実 務 の 取 扱 いが 生 命 保 険 は 保 険 契 約 者 にとって 金 融 的 機 能 があるにも 関 わらず 保 険 料 の 全 部 又 は 一 部 がオフバランスとなっていることによると 指 摘 できる 4 したがって 企 業 保 険 に 関 する 法 人 税 法 上 の 取 扱 いについては 金 融 的 機 能 を 認 識 し た 汎 用 性 のある 制 度 構 築 が 必 要 であり 保 険 契 約 者 の 有 する 金 融 的 機 能 をオンバランス 化 するよう 立 法 的 な 解 決 を 図 るべきである 具 体 的 には 1 死 亡 保 険 については 保 険 料 積 立 金 のもつ 金 融 的 機 能 に 着 目 し 各 期 末 の 解 約 返 戻 金 の 金 額 をもって 資 産 計 上 する 2 生 死 混 合 保 険 については 保 険 金 受 取 人 のいずれもが 当 該 法 人 である 場 合 には 満 期 保 険 金 の 持 つ 金 融 的 機 能 と 保 険 料 と 保 険 金 との 原 価 と 収 益 との 対 応 関 係 とに 着 目 し 保 険 料 の 全 額 を 資 産 計 上 する 3 変 額 保 険 などの 投 資 貯 蓄 型 保 険 については 金 融 商 品 との 類 似 性 にみる 金 融 的 機 能 に 着 目 し 各 期 末 の 時 価 をもって 資 産 計 上 することが 適 当 である 2

目 次 はじめに 3 第 1 章 生 命 保 険 の 多 様 化 金 融 化 と 課 税 問 題 4 第 1 節 養 老 保 険 に 係 る 最 高 裁 判 決 にみる 生 命 保 険 の 機 能 と 課 題 4 1 養 老 保 険 逆 パターン 事 件 の 概 要 4 2 最 高 裁 判 決 の 概 要 4 3 養 老 保 険 契 約 を 介 した 資 金 移 転 と 課 税 上 の 問 題 5 第 2 節 生 命 保 険 商 品 の 多 様 化 金 融 化 8 1 これまでの 課 税 問 題 にみる 生 命 保 険 の 金 融 化 8 2 投 資 貯 蓄 型 生 命 保 険 商 品 の 登 場 11 3 生 命 保 険 商 品 の 財 産 的 価 値 の 商 品 化 13 第 3 節 生 命 保 険 商 品 の 多 様 化 金 融 化 と 検 討 すべき 課 題 15 1 現 行 の 課 税 実 務 の 取 扱 いとその 考 え 方 15 2 検 討 すべき 課 題 17 第 2 章 生 命 保 険 契 約 の 機 能 19 第 1 節 生 命 保 険 契 約 の 意 義 とその 機 能 19 1 生 命 保 険 契 約 の 意 義 と 契 約 の 当 事 者 19 2 生 命 保 険 契 約 と 生 命 保 険 数 理 20 3 生 命 保 険 契 約 の 保 障 的 要 素 と 貯 蓄 的 要 素 21 第 2 節 保 障 と 貯 蓄 の 二 面 性 21 1 生 命 保 険 契 約 が 果 たす 機 能 21 2 保 険 料 積 立 金 の 意 義 23 第 3 節 生 命 保 険 契 約 が 有 する 貯 蓄 的 価 値 25 1 生 命 保 険 の 設 計 の 自 在 性 と 貯 蓄 的 要 素 の 高 まり 25 2 保 険 契 約 者 の 権 利 と 契 約 の 財 産 的 価 値 の 利 用 26 第 3 章 生 命 保 険 契 約 の 金 融 的 機 能 への 対 応 の 必 要 性 30 第 1 節 貯 蓄 的 要 素 から 金 融 的 機 能 への 展 開 30 1 生 命 保 険 の 貯 蓄 的 要 素 がもたらす 課 税 上 の 弊 害 30 2 貯 蓄 的 要 素 の 伸 張 と 現 行 の 課 税 実 務 の 取 扱 いの 限 界 32 i

3 貯 蓄 的 要 素 から 金 融 的 機 能 への 視 点 の 転 換 33 第 2 節 生 命 保 険 契 約 の 貯 蓄 的 要 素 金 融 的 機 能 をめぐるこれまでの 議 論 35 1 生 命 保 険 契 約 の 金 融 商 品 該 当 性 に 関 する 議 論 35 2 これまでの 生 命 保 険 契 約 の 貯 蓄 的 要 素 をめぐる 学 説 上 の 議 論 の 動 向 38 3 米 国 における 保 険 と 投 資 の 区 分 の 議 論 40 第 3 節 米 国 における 生 命 保 険 課 税 制 度 42 1 米 国 における 生 命 保 険 商 品 課 税 の 概 要 42 2 米 国 における 企 業 保 険 の 課 税 関 係 46 第 4 節 小 括 - 金 融 的 機 能 に 着 目 した 課 税 上 の 議 論 の 必 要 性 - 47 1 生 命 保 険 契 約 の 金 融 的 機 能 の 具 体 的 意 義 47 2 金 融 的 機 能 を 踏 まえた 新 たな 議 論 の 必 要 性 49 3 金 融 的 機 能 から 生 ずる 課 税 上 の 弊 害 への 対 応 の 方 向 性 51 第 4 章 生 命 保 険 契 約 のオンバランス 化 への 試 み 53 第 1 節 生 命 保 険 契 約 の 立 法 的 解 決 の 必 要 性 と 検 討 すべき 課 題 53 1 課 税 庁 の 通 達 を 根 拠 とした 対 応 の 限 界 53 2 オンバランス 化 への 模 索 56 3 法 人 税 法 における 時 価 評 価 とオンバランス 化 58 第 2 節 オンバランス 化 の 基 本 的 方 向 性 60 1 オンバランス 化 の 基 本 的 考 え 方 60 2 オンバランス 化 の 具 体 的 提 言 62 第 3 節 生 命 保 険 契 約 に 係 る 給 与 課 税 の 取 扱 い 64 1 現 行 取 扱 いとその 問 題 点 64 2 オンバランス 化 と 給 与 課 税 66 むすびに 代 えて 67 ii

はじめに 1 生 命 保 険 は 広 く 国 民 一 般 に 普 及 し 個 人 を 保 険 契 約 者 とする 保 険 契 約 に 限 らず 法 人 を 保 険 契 約 者 とし その 役 員 又 は 使 用 人 を 被 保 険 者 とする 生 命 保 険 契 約 ( 以 下 企 業 保 険 という )も 広 く 利 用 されている しかし 法 人 における 保 険 加 入 の 動 機 は 様 々で あり 単 に 万 一 のための 保 障 機 能 のみを 期 待 しているものではないことが 窺 える 例 えば 最 近 企 業 保 険 に 関 し 養 老 保 険 の 保 険 料 の 取 扱 いをめぐって 最 高 裁 判 所 の 判 断 が 示 された( 最 二 小 判 平 24.1.13) 本 事 件 は 法 人 が 契 約 した 養 老 保 険 に 関 し て その 保 険 料 につき 現 行 の 課 税 実 務 の 取 扱 い( 法 人 税 基 本 通 達 )で 明 定 されていな い 受 取 人 の 形 態 ( 逆 パターン)を 前 提 に 納 税 者 が 同 通 達 の 定 めを 類 推 して 経 理 処 理 し 保 険 金 受 取 人 である 当 該 法 人 の 役 員 らが 自 己 資 金 を 負 担 することなく 法 人 の 負 担 によ り 満 期 保 険 金 を 受 け 取 ったという 事 案 であった 訴 訟 における 争 点 は 保 険 契 約 者 で ある 法 人 が 支 払 った 保 険 料 が 満 期 保 険 金 受 取 人 の 一 時 所 得 の 計 算 上 その 収 入 を 得 る ために 支 出 した 金 額 に 当 たるか 否 かであり 本 事 件 の 下 級 審 判 決 以 後 の 識 者 の 議 論 も その 点 に 集 中 していた 感 があった しかし 本 事 件 の 本 質 は 企 業 保 険 の 保 険 料 に 係 る 現 行 の 課 税 実 務 の 取 扱 いが 保 険 料 の 支 払 と 死 亡 保 険 金 満 期 保 険 金 の 給 付 との 関 係 に 着 目 して 保 険 金 受 取 人 の 別 によ り その 内 容 を 定 めていることを 奇 貨 として 満 期 保 険 金 の 受 取 りという 形 で 保 険 金 受 取 人 である 当 該 法 人 の 役 員 らに 資 金 移 転 がなされたことにあるといえる したがって 最 高 裁 判 決 以 後 も 本 質 的 な 課 税 上 の 問 題 は 何 ら 解 決 していないと 指 摘 できる 2 これまでも 企 業 保 険 をめぐっては 保 険 料 の 経 理 処 理 に 関 して 課 税 上 様 々な 問 題 が 生 じていた 例 えば 定 期 保 険 ( 死 亡 保 険 ) 契 約 であって 保 険 期 間 が 極 めて 長 期 に 及 ぶものや 保 険 金 額 が 保 険 期 間 の 後 半 に 急 激 に 逓 増 していくこととしたもの あるいは 保 険 金 の 支 払 対 象 となる 保 険 事 故 を 介 護 費 用 のように 被 保 険 者 が 高 齢 者 となってから 生 ずるものとしたものなどが 開 発 販 売 され これらの 保 険 は その 保 険 設 計 から 相 当 多 額 の 解 約 返 戻 金 が 生 ずるものであるところ 満 期 保 険 金 がないためその 保 険 料 が 損 金 の 額 に 算 入 されるとする 現 行 の 課 税 実 務 の 取 扱 いを 奇 貨 として 節 税 商 品 として 販 売 さ れ 法 人 の 利 益 調 整 の 具 とされた iii

これらの 保 険 については その 都 度 課 税 庁 から 個 別 の 取 扱 通 達 が 発 出 され 是 正 が 図 られてきたが それは 個 別 商 品 への 対 処 療 法 的 な 手 当 てにとどまり 抜 本 的 な 解 決 には 至 っていない 3 生 命 保 険 契 約 は 人 の 生 死 を 保 険 事 故 とし 保 険 事 故 の 発 生 により 保 険 給 付 が 行 われ るものであることから 一 般 に 預 貯 金 や 有 価 証 券 などの 金 融 商 品 とは 異 なるものと 認 知 されている しかしながら 生 命 保 険 契 約 の 多 くは 長 期 にわたる 契 約 であるため 保 険 料 中 から 責 任 準 備 金 ( 保 険 料 積 立 金 )が 積 み 立 てられ 運 用 利 息 とともに 将 来 の 保 険 金 支 出 に 充 てられることや 保 険 期 間 の 中 途 において 解 約 権 を 行 使 した 場 合 には 解 約 返 戻 金 が 生 じ 保 険 給 付 以 外 にもキャッシュフローを 得 ることが 可 能 であることなどから 生 命 保 険 契 約 は 元 来 保 障 と 貯 蓄 の 二 面 性 を 有 するものであるとされる 伝 統 的 な 生 命 保 険 契 約 に 対 する 理 解 は 保 障 的 要 素 を 中 核 としつつ それに 貯 蓄 的 要 素 が 随 伴 しているものとされてきたが 生 命 保 険 契 約 が 本 来 的 に 有 する 保 障 と 貯 蓄 の 二 面 性 から 上 記 のように 保 険 契 約 を 介 して 保 険 金 受 取 人 への 資 金 移 転 を 図 ることや その 設 計 の 自 在 性 と 相 まって 貯 蓄 的 要 素 の 部 分 を 拡 張 し 保 険 給 付 以 外 のキャッシュフ ローを 得 ることが 主 目 的 ともいえる 商 品 をも 開 発 することが 可 能 となっており 近 年 に おいてその 傾 向 には 顕 著 なものがある また これに 加 えて 投 資 信 託 の 仕 組 みを 応 用 した 生 命 保 険 商 品 など 投 資 や 貯 蓄 の 機 能 が 明 確 にされた 商 品 がみられ さらには 生 命 保 険 契 約 の 買 取 事 業 を 行 う 事 業 者 が 登 場 し 生 命 保 険 契 約 の 流 動 化 を 試 みる 動 きもみられる このような 状 況 は 生 命 保 険 商 品 の 多 様 化 金 融 化 ともいうべき 現 象 が 生 じてきているといえよう 4 現 行 の 課 税 実 務 の 取 扱 いは 保 険 契 約 者 である 法 人 が 支 払 った 保 険 料 が 死 亡 保 険 金 に 充 てられるとみられる 場 合 には その 保 険 料 は 原 則 として 当 該 法 人 の 損 金 の 額 に 算 入 するとしている すなわち 生 命 保 険 の 保 障 的 要 素 に 係 る 保 険 料 は 掛 け 捨 ての 保 険 料 として 損 金 性 を 認 めているといえる このため 企 業 保 険 の 保 険 料 は 多 くの 場 合 その 保 険 料 の 全 部 又 は 一 部 が 損 金 算 入 され それらの 保 険 料 から 積 み 立 てられる 保 険 料 積 立 金 はオフバランスとなる( 上 述 の 課 税 上 の 問 題 があるとした 生 命 保 険 契 約 にあって も 保 険 料 積 立 金 はオフバランスとなっている ) そして 上 述 のように 生 命 保 険 契 約 を 介 して 資 金 移 転 が 行 われたり 中 途 解 約 によ 2

る 多 額 の 解 約 返 戻 金 の 取 得 がなされる 現 状 は オフバランスとされている 保 険 料 積 立 金 により 生 命 保 険 契 約 が むしろ 貯 蓄 的 要 素 を 主 としてその 機 能 を 発 揮 しているものと 指 摘 できる さらに これに 加 えて 最 近 における 生 命 保 険 契 約 の 多 様 化 金 融 化 とい うべき 現 象 が 生 じてきていることをも 考 え 合 わせれば この 際 改 めて 生 命 保 険 契 約 が 有 する 貯 蓄 的 要 素 に 着 目 して 課 税 上 の 課 題 について 検 討 することが 必 要 と 考 える 本 稿 は このような 問 題 意 識 の 下 生 命 保 険 契 約 が 有 する 貯 蓄 的 要 素 が 果 たす 機 能 と は 何 かを 保 険 契 約 者 が 有 する 保 険 法 及 び 契 約 上 の 地 位 権 利 の 内 容 や 生 命 保 険 契 約 の 財 産 的 利 用 の 状 況 などを 検 討 しつつ そこに 生 ずる 課 税 上 の 課 題 について 立 法 的 解 決 を 求 めるための 検 討 を 行 うものである 3

第 1 章 生 命 保 険 の 多 様 化 金 融 化 と 課 税 問 題 第 1 節 養 老 保 険 に 係 る 最 高 裁 判 決 にみる 生 命 保 険 の 機 能 と 課 題 1 養 老 保 険 逆 パターン 事 件 の 概 要 (1) 本 事 件 は 原 告 (Xら4 名 Xとその 配 偶 者 及 びその 他 親 族 披 控 訴 人 被 上 告 人 )が 経 営 する 法 人 が 被 保 険 者 をXら 保 険 期 間 を3 年 ないし5 年 死 亡 保 険 金 の 受 取 人 を 当 該 法 人 満 期 保 険 金 の 受 取 人 をXらとする 養 老 保 険 契 約 を 締 結 し 当 該 法 人 は 負 担 した 保 険 料 について 2 分 の1 相 当 額 を 保 険 料 として 損 金 の 額 に 算 入 し 残 余 をXらに 対 する 貸 付 金 として 経 理 処 理 をし 当 該 養 老 保 険 の 保 険 期 間 の 満 了 に 伴 い 満 期 保 険 金 ( 総 額 約 43 億 7 千 万 円 )を 受 領 したXらは 当 該 法 人 が 損 金 の 額 に 算 入 し た 金 額 を 含 む 保 険 料 の 全 額 を 当 該 満 期 保 険 金 に 係 る 一 時 所 得 の 金 額 の 計 算 上 収 入 を 得 るために 支 出 した 金 額 に 当 たるとして 確 定 申 告 をしたところ 所 轄 税 務 署 長 が 当 該 法 人 が 保 険 料 として 損 金 の 額 に 算 入 した 金 額 は 収 入 を 得 るために 支 出 した 金 額 に 当 たらないとして 更 正 処 分 及 び 過 少 申 告 加 算 税 の 賦 課 決 定 を 行 ったため 原 告 が その 取 消 しを 求 めたものである (2) 第 一 審 判 決 ( 福 岡 地 裁 平 成 21 年 1 月 27 日 判 決 裁 判 所 ホームページ)は 所 得 税 法 34 条 2 項 の 規 定 は 一 時 所 得 の 金 額 の 計 算 上 控 除 の 対 象 が 納 税 者 本 人 が 負 担 した 部 分 に 限 られるかどうか 必 ずしも 明 らかでないところ 所 得 税 法 施 行 令 183 条 2 項 2 号 本 文 の 文 言 からすると 控 除 できる 保 険 料 の 額 は 納 税 者 本 人 に 限 らず 保 険 料 全 額 を 控 除 できるとみるのが 素 直 である 旨 また 控 訴 審 判 決 ( 福 岡 高 裁 平 成 21 年 7 月 29 日 判 決 裁 判 所 ホームページ)は 第 一 審 判 決 を 引 用 した 上 で 所 得 税 法 同 法 施 行 令 及 び 所 得 税 基 本 通 達 を 整 合 的 に 理 解 しようとすれば 納 税 者 以 外 の 者 が 負 担 した 保 険 料 の 額 も 満 期 保 険 金 の 額 から 控 除 することができると 解 するのが 相 当 である 旨 それぞ れ 判 示 し いずれも 原 告 の 請 求 をすべて 認 容 した このため 国 側 が 上 告 受 理 申 立 てをした 2 最 高 裁 判 決 の 概 要 (1) 最 高 裁 判 決 ( 最 高 裁 平 成 24 年 11 月 13 日 第 二 小 法 廷 判 決 民 集 66 巻 1 号 1 頁 )は 4

まず 所 得 税 法 が 定 める 所 得 金 額 の 計 算 方 法 は 個 人 の 収 入 のうちその 者 の 担 税 力 を 増 加 させる 利 得 に 当 たる 部 分 を 所 得 とする 趣 旨 に 出 たものと 解 されるとした 上 で 一 時 所 得 に 係 る 支 出 が 所 得 税 法 34 条 2 項 にいう その 収 入 を 得 るために 支 出 した 金 額 に 該 当 するためには それが 当 該 収 入 を 得 た 個 人 において 自 ら 負 担 して 支 出 したもの といえる 場 合 でなければならないと 解 するのが 相 当 である 旨 判 示 し 収 入 を 得 る 主 体 と 支 出 をする 主 体 が 同 一 であることを 要 するとした (2)そして 本 件 については 保 険 料 のうちXらに 対 する 貸 付 金 として 経 理 をされた 部 分 はXらが 当 該 法 人 からの 貸 付 金 を 原 資 として 当 該 貸 付 金 に 相 当 する 保 険 料 を 支 払 っ た 場 合 と 異 なるところがなく Xらにおいて 当 該 貸 付 金 に 相 当 する 保 険 料 を 自 ら 負 担 して 支 出 したものといえるのに 対 し 当 該 法 人 において 保 険 料 として 経 理 をされた 部 分 ( 損 金 算 入 部 分 )についてはこのように 解 すべき 事 情 があるとはいえず 当 該 部 分 についてまでXらが 自 ら 負 担 して 支 出 したものとはいえないとした 上 で 保 険 料 のう ち 当 該 法 人 が 保 険 料 として 経 理 をされた 部 分 は 所 得 税 法 34 条 2 項 にいう その 収 入 を 得 るために 支 出 した 金 額 に 当 たるとはいえず これを 本 件 の 満 期 保 険 金 に 係 る 一 時 所 得 の 金 額 の 計 算 において 控 除 することはできない 旨 判 示 した(なお 本 判 決 には 須 藤 裁 判 官 の 補 足 意 見 が 付 されている ) 3 養 老 保 険 契 約 を 介 した 資 金 移 転 と 課 税 上 の 問 題 (1) 法 人 を 契 約 者 とし 役 員 又 は 使 用 人 を 被 保 険 者 とする 生 命 保 険 契 約 に 加 入 した 場 合 における 法 人 税 法 上 の 取 扱 いについては 法 令 上 特 段 の 規 定 は 存 せず 課 税 庁 が 公 表 している 法 人 税 基 本 通 達 により 次 のとおり その 取 扱 いが 明 らかにされている 1 死 亡 保 険 である 定 期 保 険 の 保 険 料 については 原 則 として その 支 払 った 保 険 料 は 損 金 の 額 に 算 入 することとされている( 法 人 税 基 本 通 達 9-3-5) 2 生 死 混 合 保 険 である 養 老 保 険 の 保 険 料 については a) 死 亡 保 険 金 及 び 満 期 保 険 金 の 受 取 人 が 当 該 法 人 である 場 合 には その 支 払 った 保 険 料 の 額 は 保 険 事 故 の 発 生 又 は 保 険 契 約 の 解 除 若 しくは 失 効 により 当 該 保 険 契 約 が 終 了 する 時 までは 当 該 法 人 の 資 産 に 計 上 し b) 死 亡 保 険 金 及 び 満 期 保 険 金 の 受 取 人 が 被 保 険 者 又 はその 遺 族 である 場 合 には その 支 払 った 保 険 料 の 額 は 当 該 役 員 又 は 使 用 人 に 対 する 給 与 とされ c) 満 期 保 険 金 の 受 取 人 が 当 該 法 人 で 死 亡 保 険 金 の 受 取 人 が 被 保 険 者 の 遺 族 である 5

場 合 には 保 険 料 の2 分 の1 相 当 額 を 資 産 に 計 上 し 残 額 を 損 金 の 額 に 算 入 する こととされている( 同 9-3-4) なお 定 期 保 険 養 老 保 険 のいずれの 場 合 も 死 亡 保 険 金 の 受 取 人 が 被 保 険 者 の 遺 族 とされていて それが 役 員 又 は 部 課 長 その 他 特 定 の 使 用 人 のみを 被 保 険 者 としてい る 場 合 には 当 該 役 員 又 は 使 用 人 に 対 する 給 与 とされる (2) 本 事 件 における 養 老 保 険 契 約 は 上 記 の 法 人 税 基 本 通 達 に 定 めがない 受 取 人 の 形 態 であり 上 記 2の c)と 逆 のパターンであることから 逆 パターンの 養 老 保 険 などと 称 されている 本 判 決 は 第 一 審 判 決 及 び 控 訴 審 判 決 が 課 税 処 分 当 時 の 所 得 税 法 施 行 令 183 条 2 項 2 号 や 所 得 税 基 本 通 達 34-4が 一 時 所 得 の 金 額 の 計 算 上 収 入 を 得 た 者 以 外 の 者 が 負 担 した 保 険 料 の 額 も 控 除 の 対 象 となるかのような 規 定 振 りとなっているとして 保 険 料 の 全 額 が 控 除 対 象 となると 判 断 しているのに 対 して 下 位 規 範 ではなくあくま で 所 得 税 法 34 条 2 項 が 何 を 定 めているかを 解 釈 すべきであるとの 考 え 方 に 立 った 上 で 同 項 の 趣 旨 と 文 言 を 踏 まえつつ 上 記 の 解 釈 を 導 いたものと 説 明 される 1 確 かに 原 告 が 主 張 するように 所 得 税 法 施 行 令 及 び 所 得 税 基 本 通 達 の 文 言 はやや 難 解 であり 誤 解 を 招 き 易 いところもあって 所 得 税 法 34 条 2 項 の 規 定 の 文 言 上 控 除 される 保 険 料 について 明 示 の 規 定 がないことから 控 除 される 保 険 料 は 納 税 者 本 人 が 負 担 したものに 限 られるのか それとも 保 険 料 の 全 額 であるのかいずれとも 読 めると 解 釈 する 向 きもあろう しかしながら 本 判 決 は 個 人 の 所 得 税 の 課 税 標 準 である 所 得 の 概 念 を 個 人 の 担 税 力 を 増 加 させる 利 得 に 当 たる 部 分 であることと 解 した 上 収 入 を 得 る 主 体 と 当 該 収 入 から 控 除 される 支 出 をする 主 体 が 同 一 であることが その 収 入 を 得 るために 支 出 した 金 額 との 文 言 の 前 提 であるとし 法 の 規 定 の 趣 旨 解 釈 か ら 結 論 を 導 いているものであり 極 めて 妥 当 な 判 決 であると 考 える なお 本 判 決 の 後 に 同 旨 の 判 決 として 最 高 裁 第 一 小 法 廷 平 成 24 年 1 月 16 日 判 決 ( 裁 判 集 民 事 239 号 555 頁 )があり 本 判 決 と 同 様 の 結 論 を 示 している (3) 本 事 件 の 争 点 は 満 期 保 険 金 受 取 人 における 一 時 所 得 の 金 額 の 計 算 上 の その 収 入 を 得 るために 支 出 した 金 額 をめぐって 租 税 法 の 解 釈 適 用 が 争 われた 事 例 であり 第 一 審 判 決 の 直 後 から 識 者 による 活 発 な 議 論 がなされた 2 しかし それは (いわば 1 2 小 林 宏 司 時 の 判 例 ジュリスト 1447 号 89 頁 ( 平 24) 第 一 審 判 決 控 訴 審 判 決 に 関 する 評 釈 論 説 として 佐 藤 孝 一 判 批 月 刊 税 務 事 例 42 巻 8 6

当 然 のことではあるが ) 争 点 に 沿 って 主 に 租 税 法 規 の 文 理 解 釈 のあり 方 限 界 など に 集 中 しており そのことは 本 判 決 以 後 も 同 様 の 傾 向 にある 3 しかし 筆 者 としては 本 事 件 の 意 義 の 一 つには 養 老 保 険 契 約 が 企 業 保 険 として なされた 場 合 に その 受 取 人 の 設 定 いかんにより 契 約 者 である 法 人 から 保 険 金 受 取 人 への 資 金 移 転 ( 利 益 移 転 ) 作 用 が 生 ずることをあらためて 明 らかにしたところにあ り また 本 事 件 の 本 質 もその 点 にあると 指 摘 しておきたい いわゆる 逆 パターンの 養 老 保 険 は 全 額 損 金 プランなどと 称 して 販 売 されており 販 売 している 各 生 保 会 社 は 上 記 (1)の2のcの 取 扱 いを 類 推 し 死 亡 保 険 金 の 受 取 人 が 法 人 であることから 保 険 料 の2 分 の1 相 当 額 は 損 金 に 残 額 は 被 保 険 者 たる 役 員 使 用 人 等 への 給 与 として 経 理 処 理 が 可 能 であるとしている( 本 事 件 では 当 該 残 額 を 被 保 険 者 に 対 する 貸 付 金 としているため 給 与 課 税 すらも 行 われていない ) 生 死 混 合 保 険 である 養 老 保 険 は 死 亡 保 険 と 異 なり 被 保 険 者 の 保 険 期 間 中 の 死 亡 保 険 期 間 の 終 期 ( 満 期 時 )における 生 存 のいずれの 場 合 にも 保 険 金 が 支 払 われる 保 険 契 約 であり 当 然 のことながら 被 保 険 者 には 必 ずいずれかの 保 険 事 故 が 生 ずる 可 能 性 がある しかしながら 生 命 保 険 の 標 準 生 命 表 ( 生 保 標 準 生 命 表 2007( 死 亡 保 険 用 男 ) 4 )に よれば 1 年 間 の 死 亡 率 が 10%を 超 えるのは 男 性 の 場 合 被 保 険 者 の 年 齢 が 85 歳 を 超 えてからであり 40 歳 の 者 が 60 歳 までの 20 年 間 に 死 亡 する 確 率 は 7.55%にとどま り 仮 に 当 該 20 年 間 を 保 険 期 間 として 養 老 保 険 契 約 を 締 結 した 場 合 には ほとんど の 場 合 に 満 期 保 険 金 が 支 払 われることとなろう この 傾 向 は 保 険 期 間 が 短 期 となれ ば 更 に 顕 著 となり 50 歳 から 60 歳 までの 10 年 間 50 歳 から 55 歳 の5 年 間 及 び 50 歳 から 53 歳 の3 年 間 の 死 亡 率 は それぞれ 5.41% 2.19% 及 び 1.20%にすぎない 5 したがって 養 老 保 険 契 約 は そのそもそもの 機 能 として リスクの 移 転 取 引 とい 号 1 頁 ( 平 22) 山 畑 博 史 判 批 速 報 判 例 解 説 6 号 315 頁 ( 平 22) 池 本 征 男 判 批 国 税 速 報 6119 号 24 頁 ( 平 22) 増 田 秀 敏 判 批 TKC 税 研 情 報 19 巻 5 号 1 頁 ( 平 22) 青 山 慶 二 法 人 が 拠 出 する 生 命 保 険 金 の 課 税 問 題 TKC 税 研 情 報 20 巻 6 号 72 頁 ( 平 22) 岩 崎 政 明 判 批 ジュリスト 1407 号 173 頁 ( 平 22)などがある 3 最 高 裁 判 決 に 対 する 評 釈 として 高 橋 祐 介 判 批 ジュリスト 1441 号 8 頁 ( 平 24) 堀 招 子 判 批 税 経 通 信 67 巻 5 号 143 頁 ( 平 24) 品 川 芳 宣 判 批 TKC 税 研 情 報 21 巻 4 号 146 頁 ( 平 24) 4 社 団 法 人 日 本 アクチュアリー 会 による なお 同 会 は 保 険 業 法 122 条 の2 第 2 項 3 号 の 規 定 により 内 閣 総 理 大 臣 からの 委 託 を 受 け 同 法 116 条 2 項 の 規 定 に 基 づく 責 任 準 備 金 の 計 算 の 基 礎 となる 生 命 表 ( 死 亡 率 )を 作 成 している 5 高 橋 前 掲 注 (3)9 頁 も 厚 生 労 働 省 簡 易 生 命 表 の 死 亡 率 を 用 いて 同 様 の 指 摘 をしている 7

うよりは リスクの 移 転 取 引 と 結 合 した 貯 蓄 ないし 投 資 取 引 としての 性 格 を 持 ち 6 保 険 期 間 が 短 くなればなるほど 後 者 の 要 素 は 極 大 化 していく このような 養 老 保 険 の 性 格 に 加 えて 本 件 のような 逆 パターンの 形 態 を 採 り かつ 保 険 期 間 も3 年 ないし5 年 である 場 合 それは 保 険 契 約 者 である 法 人 から 保 険 金 受 取 人 への 資 金 移 転 の 取 引 の 作 用 を 強 く 帯 びることが 指 摘 できる しかも 逆 パターン の 形 態 を 採 る 以 上 保 険 料 の 半 額 について 給 与 課 税 を 受 けるだけで( 本 件 の 場 合 はそ れすら 行 われていないが ) 保 険 金 の 満 額 を 取 得 でき また 保 険 金 受 取 人 の 所 得 税 の 課 税 にあっては 税 負 担 が 軽 課 される 一 時 所 得 に 分 類 される 本 件 をこのような 視 点 で 見 ていくと 本 判 決 によっても 養 老 保 険 に 係 る 本 質 的 な 課 税 上 の 問 題 は 何 ら 解 決 していない 7 第 2 節 生 命 保 険 商 品 の 多 様 化 金 融 化 1 これまでの 課 税 問 題 にみる 生 命 保 険 の 金 融 化 (1) 死 亡 保 険 をめぐる 個 別 の 課 税 問 題 死 亡 保 険 とは 前 述 のとおり 被 保 険 者 の 死 亡 を 保 険 事 故 として 保 険 給 付 すなわち 保 険 金 の 支 払 がなされる 保 険 であり いわゆる 掛 け 捨 てといわれ 満 期 保 険 金 の 支 払 がない 保 険 契 約 である したがって 本 来 的 には 貯 蓄 的 要 素 が 存 しないものである ともいえるが 保 険 期 間 中 の 保 険 料 を 一 定 とする 平 準 保 険 料 式 の 下 生 命 保 険 数 理 上 は 保 険 期 間 が1 年 を 超 える 場 合 には 責 任 準 備 金 ( 保 険 料 積 立 金 )が 積 み 立 てられ 保 険 期 間 の 中 途 で 解 約 した 場 合 には 解 約 返 戻 金 が 生 ずることとなる このような 保 険 の 特 性 を 利 用 し 節 税 商 品 として 販 売 されてきたものとして 長 期 平 準 定 期 保 険 と 逓 増 定 期 保 険 を 挙 げておきたい 長 期 平 準 定 期 保 険 とは 満 期 保 険 金 のない 定 期 保 険 であるが 保 険 期 間 を 30 年 から 50 年 といった 極 めて 長 期 の 定 期 保 険 とし 中 途 解 約 の 場 合 に 極 めて 多 額 の 解 約 返 戻 金 が 生 ずる 定 期 保 険 である また 逓 増 定 期 保 険 とは 保 険 期 間 はそれほど 長 期 としな 6 山 下 友 信 保 険 法 28 頁 ( 有 斐 閣 平 17) 7 高 橋 教 授 も 保 険 料 の 半 分 の 負 担 でほぼ 確 実 に 満 期 保 険 金 を 受 け 取 れる 反 面 残 額 について は 給 与 課 税 は 行 われず 受 取 人 側 では 一 時 所 得 課 税 を 受 けるだけで しかも 保 険 金 受 領 時 まで 課 税 されない 点 を 挙 げ 本 件 はこれらの 枠 組 みを 前 提 にしており 本 件 の 抱 える 問 題 は 解 決 さ れていないとする( 高 橋 前 掲 注 (3)9 頁 ) 8

いが 保 険 金 額 を 保 険 期 間 の 経 過 に 応 じて 逓 増 させ 長 期 平 準 定 期 保 険 と 同 様 に 多 額 の 解 約 返 戻 金 が 生 ずる 定 期 保 険 である これらの 保 険 については 前 述 の 法 人 税 基 本 通 達 の 定 めに 従 えば その 保 険 料 は 原 則 として 損 金 の 額 に 算 入 されることとなるが これらの 商 品 はその 保 険 設 計 から 保 険 料 の 中 から 保 険 料 積 立 金 に 積 み 立 てる 部 分 の 金 額 が 多 額 に 含 まれており その 結 果 相 当 多 額 な 解 約 返 戻 金 が 生 ずるものとなっている このため 課 税 庁 は その 支 払 った 保 険 料 を 損 金 の 額 に 算 入 させることは 適 当 ではないとして 個 別 的 な 取 扱 い( 個 別 通 達 )を 発 出 するに 至 っている 8 すなわち 両 者 ともに 被 保 険 者 の 年 齢 と 保 険 期 間 により 個 別 的 な 取 扱 いとする 保 険 契 約 の 対 象 を 定 め 長 期 平 準 定 期 保 険 に 該 当 する 保 険 契 約 については 保 険 期 間 の6 割 相 当 期 間 を 経 過 するまでの 期 間 にあっては 保 険 料 の2 分 の1 相 当 額 を 資 産 に 計 上 す ることとし 逓 増 定 期 保 険 に 該 当 する 保 険 契 約 については 保 険 期 間 の6 割 相 当 期 間 を 経 過 するまでの 期 間 にあっては 保 険 料 の2 分 の1 3 分 の2 又 は4 分 の3 相 当 額 を 資 産 に 計 上 することとされている 長 期 平 準 定 期 保 険 や 逓 増 定 期 保 険 は 中 途 解 約 した 場 合 には 相 当 多 額 の 解 約 返 戻 金 が 生 じる 死 亡 保 険 ( 定 期 保 険 )であり 保 険 料 を 損 金 算 入 する 一 方 で 中 途 解 約 に よるキャッシュフローを 得 ることを 主 たる 目 的 として 契 約 がなされている このこと は 本 来 満 期 保 険 金 がなく 死 亡 時 の 保 障 のみを 目 的 とする 死 亡 保 険 において 保 険 金 給 付 以 外 のキャッシュフローをも 契 約 の 目 的 とするものであり その 意 味 で 死 亡 保 険 の 金 融 化 といえる (2) 貯 蓄 性 の 高 い 保 険 商 品 をめぐる 個 別 の 課 税 問 題 高 齢 化 社 会 の 到 来 により 様 々な 保 険 商 品 が 開 発 され その 中 には 被 保 険 者 が 相 当 程 度 高 齢 化 してから 保 険 金 の 支 出 が 見 込 まれるために 貯 蓄 性 の 高 い 保 険 商 品 も 存 す る 以 下 では 代 表 的 な 例 として 介 護 費 用 保 険 と 個 人 年 金 保 険 を 挙 げておきたい イ 介 護 費 用 保 険 に 係 る 保 険 料 介 護 費 用 保 険 とは 被 保 険 者 が 寝 たきり 又 は 認 知 症 により 介 護 が 必 要 な 状 態 にな ったときに 保 険 事 故 が 生 じたとして 保 険 金 が 支 払 われるものであり 満 期 保 険 金 は ない このため 上 記 の 法 人 税 基 本 通 達 によれば その 保 険 料 は 原 則 として 損 金 の 額 に 算 入 されることとなるが 介 護 費 用 保 険 は 保 険 期 間 が 終 身 であって 保 8 昭 和 62 年 直 法 2-2 法 人 が 支 払 う 長 期 平 準 定 期 保 険 等 の 保 険 料 の 取 扱 いについて 9

険 事 故 の 多 くが 被 保 険 者 が 高 齢 になってから 発 生 するにもかかわらず 各 年 の 支 払 保 険 料 が 毎 年 平 準 化 されていることから 60 歳 ころまでに 中 途 解 約 又 は 失 効 した 場 合 には 相 当 多 額 の 解 約 返 戻 金 が 生 ずるため 支 払 保 険 料 を 単 に 支 払 の 対 象 となる 期 間 の 経 過 により 損 金 の 額 に 算 入 するのは 適 当 でないとされ 個 別 的 な 取 扱 いがな されるに 至 った 9 介 護 費 用 保 険 に 係 る 保 険 料 の 取 扱 いについては 保 険 料 払 込 期 間 のうち 被 保 険 者 が 60 歳 に 達 するまでの 支 払 分 については その 50% 相 当 額 を 資 産 に 計 上 し 被 保 険 者 が 60 歳 に 達 した 場 合 には 当 該 資 産 に 計 上 した 累 積 額 を 60 歳 以 後 の 15 年 で 期 間 の 経 過 により 損 金 の 額 に 算 入 するなどの 個 別 的 な 取 扱 いが 定 められている ロ 個 人 年 金 保 険 に 係 る 保 険 料 個 人 年 金 保 険 は 年 金 支 払 開 始 日 に 被 保 険 者 が 生 存 しているときには 同 日 以 後 一 定 期 間 にわたって 年 金 が 支 払 われ また 同 日 前 に 被 保 険 者 が 死 亡 していたとき には 所 定 の 死 亡 給 付 金 が 支 払 われる 生 命 保 険 であるが いわゆる 満 期 保 険 金 はな く 死 亡 給 付 金 が 保 険 料 払 込 期 間 の 経 過 に 応 じて 逓 増 するなど 同 じく 被 保 険 者 の 生 存 又 は 死 亡 を 保 険 事 故 とする 養 老 保 険 とはその 仕 組 みが 異 なっている 個 人 年 金 保 険 の 保 険 給 付 ( 年 金 )は 年 金 支 払 開 始 日 以 後 となるため その 保 険 料 は 極 めて 貯 蓄 性 の 高 いものであって 前 述 の 法 人 税 基 本 通 達 の 定 めによることは 適 当 でない とされ 個 別 的 な 取 扱 いがなされるに 至 った 10 個 人 年 金 保 険 の 保 険 料 については 1 死 亡 給 付 金 及 び 年 金 の 受 取 人 が 当 該 法 人 で ある 場 合 には 支 払 った 保 険 料 の 額 は 当 該 法 人 の 資 産 に 計 上 する 2 死 亡 給 付 金 及 び 年 金 の 受 取 人 が 被 保 険 者 又 はその 遺 族 である 場 合 には 支 払 った 保 険 料 の 額 は 当 該 役 員 又 は 使 用 人 に 対 する 給 与 とする 3 死 亡 給 付 金 の 受 取 人 が 被 保 険 者 の 遺 族 で 年 余 の 受 取 人 が 当 談 法 人 である 場 合 には その 支 払 った 保 険 料 の 額 のうち 90%に 相 当 する 金 額 は1により 資 産 に 計 上 し 残 額 は 期 間 の 経 過 に 応 じて 損 金 の 額 に 算 入 す ることとされている ただし 役 員 又 は 部 課 長 その 他 特 定 の 使 用 人 (これらの 者 の 親 族 を 含 む )のみを 被 保 険 者 としている 場 合 には 当 該 残 額 は 当 該 役 員 又 は 使 用 人 に 対 する 給 与 とされる 9 平 成 元 年 直 審 4-25 ほか 法 人 又 は 個 人 事 業 主 が 支 払 う 介 護 費 用 保 険 の 保 険 料 の 取 扱 いにつ いて 10 平 成 2 年 直 審 4-19 法 人 が 契 約 する 個 人 年 金 保 険 に 係 る 保 険 料 の 取 扱 いについて 10

11 2 投 資 貯 蓄 型 生 命 保 険 商 品 の 登 場 従 来 の 伝 統 的 な 生 命 保 険 商 品 は 契 約 締 結 時 に 約 定 した 予 定 利 率 により 責 任 準 備 金 が 運 用 され 保 険 事 故 が 生 じた 場 合 には 約 定 した 定 額 の 保 険 金 が 給 付 される( 以 下 本 節 において 定 額 型 生 命 保 険 商 品 と 呼 ぶこととする ) しかしながら 近 年 保 険 会 社 における 運 用 実 績 によって 保 険 金 額 や 解 約 返 戻 金 額 が 変 動 する 変 動 型 の 生 命 保 険 商 品 や 保 険 料 を 保 障 部 分 と 貯 蓄 部 分 とに 分 離 し その 運 用 利 率 が 一 定 期 間 毎 に 見 直 される 積 立 利 率 変 動 型 の 生 命 保 険 商 品 が 発 売 されている (1) 変 動 型 生 命 保 険 商 品 イ 変 動 型 生 命 保 険 商 品 の 例 として 変 額 保 険 及 び 変 額 ユニバーサル 保 険 がある 変 額 保 険 とは 投 資 信 託 の 仕 組 みを 持 つもの 12 であり 保 険 契 約 者 が 支 払 った 保 険 料 を 専 ら 特 別 勘 定 において 有 価 証 券 などへの 投 資 によって 運 用 し その 運 用 実 績 によって 保 険 金 額 や 解 約 返 戻 金 額 が 変 動 する(ただし 死 亡 保 険 金 に 関 しては 最 低 保 証 が 設 けられている ) 保 険 契 約 である 13 したがって 定 額 型 生 命 保 険 商 品 が 予 定 利 率 が 保 険 会 社 によって 保 障 されているのとは 異 なり 責 任 準 備 金 の 運 用 リスク は 保 険 契 約 者 にあるといえる 変 額 保 険 は 特 別 勘 定 で 運 用 するファンドを 保 険 契 約 者 が 選 択 することができ また 運 用 実 績 は 毎 年 所 定 の 時 期 に 保 険 契 約 者 に 対 し て 報 告 され 随 時 の 問 い 合 わせに 対 しても 運 用 状 況 が 開 示 される ロ 変 額 ユニバーサル 保 険 14 とは 変 額 保 険 と 同 様 に 運 用 実 績 により 保 険 金 額 及 び 解 約 返 戻 金 額 が 変 動 する 保 険 商 品 であるが 保 険 料 はいったん 特 別 勘 定 に 属 する 積 立 金 へ 入 れられ そこから 付 加 保 険 料 と 基 本 保 険 金 額 に 係 る 危 険 保 険 料 が 控 除 され る 構 造 となっており いわゆる 保 障 部 分 と 投 資 貯 蓄 部 分 が 分 離 されている また それらそれぞれの 保 険 料 の 額 が 開 示 されるという 特 徴 をもつ 11 拙 稿 最 近 の 生 命 保 険 商 品 の 動 向 と 課 税 上 の 取 扱 いに 関 する 一 考 察 税 大 ジャーナル 2012.10 (http://www.nta.go.jp/ntc/kenkyu/journal/saisin/yada.pdf) 参 照 12 吉 牟 田 勲 生 命 保 険 をめぐる 課 税 上 の 諸 問 題 生 命 保 険 経 営 54 巻 3 号 28 頁 ( 昭 63) 13 この 点 保 険 法 における 保 険 契 約 の 定 義 規 定 ( 同 法 2 八 )の 一 定 の 保 険 給 付 との 関 係 が 懸 念 されるが 通 説 は 契 約 上 客 観 的 な 保 険 金 額 算 定 基 準 が 定 まっていれば 保 険 と 認 められ るとする( 江 頭 憲 治 郎 変 額 保 険 ユニバーサル 保 険 ジュリスト 953 号 66 頁 ( 平 2) 糸 川 厚 生 変 額 保 険 と 法 律 問 題 生 命 保 険 経 営 35 巻 6 号 16 頁 ( 昭 42) 山 下 前 掲 注 (33)30 頁 ) 14 米 国 では 1984 年 に 発 売 され 我 が 国 では 平 成 13 年 (2001 年 )にスカンディア 生 命 ( 現 東 京 海 上 フィナンシャル 生 命 )が 発 売 した ただし 同 社 は 昨 今 の 事 業 環 境 を 理 由 に 平 成 24 年 7 月 より 取 扱 いを 一 時 中 止 している 11

(2) 積 立 利 率 変 動 型 生 命 保 険 商 品 積 立 利 率 変 動 型 生 命 保 険 商 品 は 我 が 国 ではアカウント 型 保 険 と 称 して 販 売 されて おり 米 国 のユニバーサル 保 険 をモデルにしたものであるといわれている 15 アカウ ント 型 保 険 は 発 売 している 各 社 によってその 名 称 内 容 に 差 異 があるものの 一 般 には 保 障 部 分 と 貯 蓄 部 分 とを 分 離 し 保 険 料 はいったんアカウントと 呼 ばれる 貯 蓄 部 分 に 入 り そこから 必 要 な 保 障 のための 特 約 保 険 料 にその 一 部 が 充 当 され 残 額 が 積 み 立 てられ 予 定 利 率 で 運 用 される 生 命 保 険 商 品 である 予 定 利 率 は 一 定 の 期 間 毎 に 市 中 金 利 などを 基 準 にして 見 直 され 積 立 金 は 確 定 利 回 りにより 運 用 される(こ の 点 変 額 型 生 命 保 険 商 品 とは 異 なるが 契 約 時 の 予 定 利 率 が 保 険 期 間 終 了 まで 適 用 される 定 額 型 生 命 保 険 商 品 とも 異 なる ) したがって 積 立 利 率 変 動 型 生 命 保 険 商 品 とは 死 亡 保 険 ( 定 期 保 険 ) 付 の 市 中 利 率 感 応 型 定 期 預 金 と 言 い 換 えることができよう 16 (3) 投 資 貯 蓄 型 生 命 保 険 商 品 にみる 多 様 化 金 融 化 変 動 型 生 命 保 険 商 品 にあっては 保 険 料 は 他 の 保 険 料 と 区 別 された 特 別 勘 定 におい て 運 用 され その 保 険 金 額 は 運 用 実 績 により 変 動 するという いわば 投 資 信 託 の 仕 組 みが 生 命 保 険 に 応 用 されたものと 17 いうべき 特 質 があり また 積 立 利 率 変 動 型 生 命 保 険 商 品 にあっては アカウントと 呼 ばれる 貯 蓄 機 能 のための 口 座 を 持 つ いわば 死 亡 保 険 ( 定 期 保 険 ) 付 の 市 中 利 率 感 応 型 定 期 預 金 といえる 特 質 を 持 つものといえる そうすると 変 動 型 生 命 保 険 商 品 及 び 積 立 利 率 変 動 型 生 命 保 険 商 品 と 従 来 の 定 額 型 生 命 保 険 商 品 に 共 通 する 部 分 は 変 動 型 生 命 保 険 商 品 では 最 低 保 証 される 死 亡 保 険 金 に 充 てられるために 定 額 型 生 命 保 険 商 品 の 保 険 料 と 同 様 に 一 般 勘 定 で 運 用 される 保 険 料 の 部 分 と 積 立 利 率 変 動 型 生 命 保 険 商 品 では 保 険 料 のうち 保 障 のためにアカウン トから 支 出 される 特 約 保 険 料 の 部 分 にすぎないこととなる 生 命 保 険 契 約 は 従 来 の 定 額 型 生 命 保 険 商 品 においても 保 険 期 間 中 の 保 険 料 を 一 15 江 澤 雅 彦 アカウント 型 保 険 の 導 入 と 課 題 早 稲 田 商 学 398 号 317 頁 ( 平 15) 16 武 田 教 授 は 昭 和 50 年 代 後 半 から 同 60 年 代 における 一 時 払 養 老 保 険 とそれに 続 く 変 額 保 険 の 販 売 をとらえて 生 命 保 険 の 金 融 化 現 象 が 一 挙 に 進 行 したと 指 摘 する そして 生 命 保 険 の 金 融 化 現 象 を 1 商 品 面 における 金 融 化 現 象 2 資 産 運 用 面 における 金 融 化 現 象 3 販 売 面 にお ける 金 融 化 現 象 に 分 けて 論 じている( 武 田 久 義 生 命 保 険 の 金 融 化 現 象 保 険 学 雑 誌 600 号 85 頁 ( 平 20)) 17 生 命 保 険 協 会 編 エクイティ 保 険 4 頁 ( 生 命 保 険 協 会 昭 47) 12

定 とする 平 準 保 険 料 の 下 責 任 準 備 金 ( 保 険 料 積 立 金 )が 積 み 立 てられることから その 性 質 は 保 障 と 貯 蓄 の 二 面 性 を 有 するものであるといえるが 変 動 型 生 命 保 険 商 品 や 積 立 利 率 変 動 型 生 保 商 品 は より 投 資 貯 蓄 機 能 に 重 点 をおいた あるいはその 目 的 を 明 確 にした 商 品 であるといえる 3 生 命 保 険 商 品 の 財 産 的 価 値 の 商 品 化 (1) 生 命 保 険 買 取 事 業 の 登 場 とその 概 要 生 命 保 険 買 取 事 業 とは 生 命 保 険 の 売 却 を 希 望 する 者 から 余 命 に 応 じて 割 り 引 いた 価 格 で 死 亡 保 険 金 を 受 け 取 る 権 利 を 買 取 るものである 事 業 の 仕 組 みとしては 買 取 会 社 が 買 い 取 った 保 険 契 約 を 被 保 険 者 が 死 亡 するまで 保 有 する 買 取 型 と 買 い 取 った 保 険 契 約 を 投 資 家 に 転 売 又 は 流 動 化 して 販 売 する 完 全 転 売 型 複 数 投 資 家 型 あるいは 信 託 利 用 型 といった 形 式 があるとされる 18 生 命 保 険 買 取 事 業 は 米 国 では 1980 年 代 末 に 生 まれ 保 険 を 解 約 しなくとも 買 い 取 り 制 度 を 利 用 することによって 解 約 返 戻 金 よりも 高 い 市 場 価 格 を 手 にすることがで きるものとして 市 場 が 発 展 し 約 1 兆 3,000 億 円 の 市 場 規 模 といわれている また 英 国 では 約 2,000 億 円 ドイツでも 約 800 億 円 の 市 場 規 模 とされる 19 生 命 保 険 買 取 事 業 の 買 取 りの 仕 組 みを 買 取 型 を 例 にとれば 買 取 りを 希 望 する 保 険 契 約 者 は 仲 介 ブローカーを 通 じて または 直 接 買 取 会 社 に 買 取 依 頼 を 行 い 買 取 会 社 は 買 取 可 能 と 判 断 した 場 合 には 買 取 価 格 等 の 条 件 を 保 険 契 約 者 に 提 示 する 保 険 契 約 者 との 間 で 合 意 に 達 すれば 被 保 険 者 は 同 一 のまま 保 険 契 約 者 及 び 保 険 金 受 取 人 名 義 を 買 取 会 社 に 変 更 し 保 険 契 約 者 は 売 却 代 金 を 受 け 取 る その 後 の 保 険 料 の 支 払 は 買 取 会 社 が 行 うこととなる 20 (2) 我 が 国 における 生 命 保 険 買 取 事 業 の 展 開 我 が 国 おいては 平 成 16 年 に 初 めての 生 命 保 険 買 取 会 社 が 設 立 された しかし ながら 我 が 国 の 生 命 保 険 会 社 は 一 般 的 に 保 険 契 約 者 の 地 位 の 変 更 には 保 険 会 社 の 同 意 が 必 要 である 旨 の 約 款 の 定 めを 有 しているところ 保 険 契 約 者 からの 求 めに 応 18 古 澤 優 子 アメリカで 拡 がる 生 命 保 険 買 取 事 業 と 我 が 国 における 展 望 Business&Economic Review 2005 年 8 月 号 (http://www.jri.co.jp/page.jsp?id=4798) 19 久 保 英 也 生 命 保 険 買 取 契 約 の 価 格 構 造 と 契 約 者 還 元 の 可 能 性 保 険 学 雑 誌 606 号 43 頁 ( 平 21) 20 山 下 典 孝 保 険 契 約 関 係 者 の 変 動 をめぐる 法 的 諸 問 題 保 険 学 雑 誌 598 号 5 頁 ( 平 19) 13

じて 生 命 保 険 契 約 を 買 い 取 った 当 該 買 取 会 社 が 保 険 会 社 に 同 意 を 求 めたところ 保 険 会 社 がこれに 同 意 を 与 えなかったため 当 該 契 約 の 保 険 契 約 者 が 保 険 会 社 に 対 し 買 取 会 社 への 保 険 契 約 者 及 び 保 険 金 受 取 人 の 変 更 につき 同 意 を 与 えるよう 訴 訟 を 提 起 する という 事 件 が 発 生 している 第 一 審 ( 東 京 地 裁 平 成 17 年 11 月 17 日 判 決 判 例 時 報 1918 号 115 頁 )は 保 険 契 約 者 の 請 求 を 棄 却 し また 控 訴 審 ( 東 京 高 裁 平 成 18 年 3 月 22 日 判 決 判 例 時 報 1928 号 133 頁 )も 生 命 保 険 会 社 には 保 険 契 約 上 の 地 位 の 譲 渡 についての 同 意 を 原 則 とし て 拒 否 することができるのであり その 形 式 的 理 由 は 契 約 の 性 質 から 導 かれるもので はあるが 本 件 事 案 に 鑑 みれば 一 般 的 には 生 命 保 険 契 約 における 保 険 契 約 者 の 地 位 が 売 買 取 引 の 対 象 となることによる 不 正 の 危 険 の 増 大 や 社 会 一 般 の 生 命 保 険 制 度 に 対 する 信 頼 の 毀 損 が 実 質 的 な 理 由 として 存 在 するとして 保 険 契 約 者 の 請 求 を 退 けた 21 我 が 国 の 生 命 保 険 会 社 は 上 記 の 事 例 からも 明 らかなように 一 般 的 に 生 命 保 険 契 約 上 の 地 位 の 譲 渡 を 一 定 の 要 件 が 充 足 された 場 合 に 限 ることとしており 上 記 判 決 が 確 定 したことにより 我 が 国 において 生 命 保 険 会 社 が 販 売 する 生 命 保 険 契 約 の 買 取 り は 困 難 となったといえよう ただし 簡 易 生 命 保 険 ( 現 在 のかんぽ 生 命 保 険 )にあっては 保 険 者 の 同 意 を 得 る ことなく 保 険 契 約 者 の 地 位 を 任 意 に 承 継 できる 旨 規 定 されており 現 実 にも 上 記 の 買 取 会 社 は 簡 易 保 険 の 買 取 事 業 を 継 続 している 22 (3) 生 命 保 険 買 取 事 業 にみる 生 命 保 険 契 約 の 財 産 的 価 値 23 生 命 保 険 契 約 は 後 述 するように 従 来 から 保 障 と 貯 蓄 の 二 面 性 を 有 するもの とされ 保 険 料 から 積 み 立 てられた 保 険 料 積 立 金 を 前 提 に 解 約 権 を 行 使 した 場 合 に 解 約 返 戻 金 が 支 払 われることや 払 済 保 険 延 長 保 険 に 変 更 した 場 合 の 一 時 払 い 保 険 料 に 充 当 される 財 源 となること さらには 契 約 者 貸 付 として 解 約 返 戻 金 の 範 囲 内 で 資 金 の 融 通 を 受 けることができる しかし 今 日 では これに 加 えて 生 命 保 険 買 取 事 業 にみられるように 保 険 料 か ら 積 み 立 てられた 保 険 料 積 立 金 を 前 提 としたものでだけでなく 生 命 保 険 契 約 の 本 来 21 本 判 決 の 主 な 評 釈 として 笹 本 幸 祐 判 批 保 険 法 判 例 百 選 156 頁 ( 平 22) 肥 塚 肇 雄 判 批 金 融 法 務 事 情 1783 号 37 頁 甘 利 公 人 判 批 判 例 評 論 575 号 34 頁 ( 平 19) 野 村 修 也 判 批 保 険 事 例 研 究 会 レポート 207 号 ( 生 命 保 険 文 化 センター 平 18) 参 照 22 http://viatical.jp/index.htm 23 國 崎 裕 生 命 保 険 第 4 版 169 頁 ( 東 京 大 学 出 版 会 昭 48) 14

の 目 的 である 保 険 事 故 発 生 時 の 保 険 金 としてのキャッシュフローについても 財 産 的 価 値 を 認 めて 売 買 契 約 の 目 的 物 となる 状 況 にある この 状 況 は 生 命 保 険 分 野 において 保 険 者 と 保 険 契 約 者 との 間 の 保 険 リスクが 買 取 会 社 を 介 して 資 本 市 場 へ 移 転 が 進 んでいる 24 ともいえ 死 亡 保 険 金 のみで 満 期 保 険 金 が 存 しない 死 亡 保 険 は 一 般 に 掛 け 捨 てといわれるが 被 保 険 者 の 余 命 の 判 定 いか んによっては 将 来 の 保 険 給 付 を 前 提 に 金 融 取 引 的 な 取 引 がなされるのである 第 3 節 生 命 保 険 商 品 の 多 様 化 金 融 化 と 検 討 すべき 課 題 1 現 行 の 課 税 実 務 の 取 扱 いとその 考 え 方 (1) 現 行 の 課 税 実 務 の 取 扱 いとして 定 着 している 法 人 税 基 本 通 達 の 定 めは 第 1 節 の3 のとおりであり 法 人 を 契 約 者 とし その 役 員 又 は 使 用 人 を 被 保 険 者 とする 保 険 契 約 の 保 険 料 について 生 命 保 険 契 約 が 保 障 と 貯 蓄 の 二 面 性 25 を 持 つことを 前 提 に 支 払 保 険 料 と 死 亡 保 険 金 満 期 保 険 金 等 の 給 付 との 関 係 に 着 目 し 当 該 契 約 に 基 づき 給 付 される 保 険 金 が 満 期 保 険 金 と 死 亡 保 険 金 とのいずれかであるか 及 び 保 険 金 の 受 取 人 が 当 該 法 人 と 役 員 又 は 使 用 人 (これらの 者 の 遺 族 を 含 む )のいずれであるかにより 保 険 料 の 損 金 算 入 の 可 否 又 は 保 険 料 を 資 産 計 上 する 部 分 と 期 間 の 経 過 に 応 じて 損 金 の 額 に 算 入 する 部 分 に 区 分 するとともに 更 に 後 者 の 場 合 においてそれが 使 用 人 等 に 対 す る 経 済 的 利 益 の 供 与 と 認 められるときには 給 与 として 取 り 扱 うこととしているといえ る (2)この 取 扱 いの 考 え 方 について 立 案 担 当 者 の 解 説 によれば 定 期 保 険 の 保 険 料 につ いては 当 該 保 険 は 一 定 期 間 内 に 被 保 険 者 が 死 亡 した 場 合 のみ 保 険 金 が 支 払 われる 死 亡 保 険 であり 養 老 保 険 のように 満 期 保 険 金 がないことからその 保 険 料 には 貯 蓄 性 が ないので 保 険 金 受 取 人 が 1 当 該 法 人 である 場 合 には 一 種 の 金 融 費 用 的 なものとし て 2 被 保 険 者 の 遺 族 である 場 合 には 一 種 の 福 利 厚 生 費 として 考 え 損 金 の 額 に 算 入 することと 説 明 されている 26 24 久 保 英 也 生 命 保 険 の 流 動 化 を 促 進 する 公 正 価 値 の 算 出 CRR WORKING PAPER SERIES J -10( 滋 賀 大 学 経 済 学 部 付 属 リスク 研 究 センター 平 21 http://econ.shiga-u.ac.jp/10/2/3/res.3/j10kubo200911dufe.pdf) 25 國 崎 前 掲 注 (23)169 頁 26 森 文 人 ほか 編 著 法 人 税 基 本 通 達 逐 条 解 説 六 訂 版 845 頁 ( 税 務 研 究 会 出 版 局 平 23) 15

また 養 老 保 険 の 保 険 料 については 生 死 混 合 保 険 である 養 老 保 険 に 死 亡 時 の 死 亡 保 険 金 による 保 障 と 満 期 時 の 満 期 保 険 金 の 給 付 の 二 面 性 があることに 着 目 し 死 亡 保 険 金 及 び 生 存 保 険 金 の 両 方 の 受 取 人 が 法 人 の 場 合 には 支 払 保 険 料 の 全 額 について 資 産 計 上 が 求 められ 被 保 険 者 又 はその 遺 族 である 場 合 には 給 与 として 取 り 扱 うこととし ている また 満 期 保 険 金 の 受 取 人 が 当 該 法 人 で 死 亡 保 険 金 の 受 取 人 が 被 保 険 者 の 遺 族 である 場 合 には 保 険 料 の2 分 の1 相 当 額 は 法 人 が 受 取 人 となっている 生 存 保 険 金 に 係 る 積 立 保 険 料 部 分 として 当 該 法 人 において 資 産 計 上 し 残 額 は 被 保 険 者 の 遺 族 が 受 取 人 となっている 死 亡 保 険 金 に 係 る 危 険 保 険 料 部 分 として 原 則 として 一 種 の 福 利 厚 生 費 として 損 金 に 算 入 することとしている この 場 合 の 2 分 の 1 の 考 え 方 は 法 人 が 一 般 に 45 歳 以 上 の 役 員 等 を 対 象 に 養 老 保 険 に 加 入 する 例 が 多 いとみられるところ こ のような 年 齢 層 を 被 保 険 者 とする 典 型 的 な 養 老 保 険 においては 危 険 保 険 料 と 積 立 保 険 料 の 割 合 がほぼ 同 額 になるとみられるためと 説 明 されている 27 (3)これらの 考 え 方 は 生 命 保 険 契 約 から 生 ずる 保 険 金 が 死 亡 保 険 金 であるのか 生 存 保 険 金 であるのかにより 区 分 し 死 亡 保 険 金 に 充 てられる 保 険 料 については 掛 け 捨 て 部 分 であることから 貯 蓄 性 がないものとし 生 存 保 険 金 に 充 てられる 保 険 料 については 満 期 まで 積 み 立 てられることから 貯 蓄 性 があるものとして 取 り 扱 うこととしているの である そして 更 に 保 険 金 受 取 人 が 法 人 であるか 被 保 険 者 たる 役 員 又 は 使 用 人 (こ れらの 者 の 親 族 を 含 む )であるかにの 別 により 貯 蓄 性 がない 保 険 料 については 単 純 損 金 か 被 保 険 者 に 対 する 給 与 に 貯 蓄 性 がある 保 険 料 については 法 人 の 資 産 に 計 上 す るか 被 保 険 者 に 対 する 給 与 としているのである 死 亡 保 険 金 に 充 てられる 保 険 料 は 保 険 期 間 が1 年 を 超 える 場 合 には 保 険 料 積 立 金 が 積 み 立 てられるが その 額 は 保 険 期 間 の 後 半 には 逓 減 していき 保 険 期 間 の 終 期 に は 零 となるから 被 保 険 者 が 当 該 終 期 に 生 存 している 場 合 には 何 らの 給 付 もなされな い 一 方 満 期 保 険 金 に 充 てられる 保 険 料 は 保 険 料 積 立 金 に 積 み 立 てられ その 額 は 保 険 期 間 中 逓 増 していき 保 険 期 間 の 終 期 には 生 存 している 被 保 険 者 に 係 る 満 期 保 険 金 の 額 と 一 致 する このような 生 命 保 険 数 理 の 観 点 からみれば 上 記 の 現 行 の 取 扱 いの 考 え 方 は 基 本 的 にはこれと 合 致 するものといえよう また 養 老 保 険 の 場 合 において 死 亡 保 険 金 に 充 てられる 保 険 料 と 満 期 保 険 金 に 充 てられる 保 険 料 の 区 分 については 生 死 混 合 保 険 の 保 険 料 は 死 亡 保 険 の 保 険 料 と 生 27 森 ほか 前 掲 注 (26)843 頁 16

存 保 険 の 保 険 料 をそれぞれ 算 出 し 両 者 を 合 計 したものとなることから 厳 密 には 両 者 の 割 合 は 個 別 の 契 約 の 内 容 に 応 じて 定 まるものであるところ 通 常 契 約 者 サイドで これを 知 ることは 困 難 であるとして 実 務 上 の 簡 便 性 に 配 慮 した2 分 の1の 割 合 を 用 いることしており 28 生 命 保 険 数 理 の 考 え 方 と 実 務 上 の 要 請 とを 比 較 衡 量 した 一 定 の 合 理 性 のある 取 扱 いと 考 える 2 検 討 すべき 課 題 (1) 現 行 の 課 税 実 務 の 取 扱 いの 考 え 方 とこれに 対 する 評 価 は 以 上 のとおりであり 一 応 の 合 理 性 を 肯 定 できるものの これまでの 生 命 保 険 契 約 に 係 る 課 税 問 題 に 照 らせば 疑 義 を 唱 えざるを 得 ない まず 死 亡 保 険 の 保 険 料 の 取 扱 いについてみれば 確 かに 死 亡 保 険 は 被 保 険 者 の 死 亡 時 にのみ 保 険 給 付 がなされ 保 険 期 間 の 終 期 に 被 保 険 者 が 生 存 していた 場 合 には 何 らのキャッシュフローも 得 られないから いわゆる 掛 け 捨 ての 保 険 料 であるとの 指 摘 も 語 感 の 問 題 としては 間 違 っていない また 死 亡 保 険 の 機 能 を 保 険 事 故 ( 被 保 険 者 の 死 亡 )の 発 生 の 際 の 保 険 給 付 すなわち 保 障 機 能 にあると 整 理 した 場 合 には 現 行 の 取 扱 いの 考 え 方 に 誤 りはない しかしながら 満 期 保 険 金 のない 死 亡 保 険 といえども 保 険 期 間 が1 年 を 超 えるも のは 保 険 料 の 中 から 保 険 料 積 立 金 へ 繰 り 入 れられ 運 用 利 息 とともに 積 み 立 てられ る そして この 保 険 料 積 立 金 は 保 険 期 間 の 中 途 で 解 約 した 場 合 には 解 約 返 戻 金 とし て 保 険 契 約 者 へそれまで 積 み 立 てられた 運 用 利 息 とともに 払 い 出 されることとなって おり 払 戻 しの 金 額 はほとんどの 場 合 には 既 払 保 険 料 の 額 を 下 回 るから 純 粋 な 金 融 と はいい 難 い 面 があるものの 一 律 に 貯 蓄 性 がないと 断 ずるのは 早 計 であろう 現 に 前 節 でみたように 死 亡 保 険 について その 設 計 いかんで 相 当 多 額 の 解 約 返 戻 金 が 生 ずる 保 険 設 計 が 可 能 である (2)また 生 死 混 合 保 険 については 前 述 したように 40 歳 から 60 歳 までの 死 亡 率 を みても 必 ずしも 被 保 険 者 の 生 存 死 亡 の 確 率 は 拮 抗 しておらず ほとんどの 契 約 にあ っては 満 期 保 険 金 の 支 払 がなされて 保 険 契 約 が 終 了 するという 実 態 にあることが 指 摘 できよう したがって 保 険 契 約 の 一 方 の 当 事 者 である 保 険 契 約 者 並 びに 当 該 契 約 の 関 係 者 である 被 保 険 者 及 び 保 険 金 受 取 人 の 主 たる 契 約 の 目 的 は 満 期 保 険 金 の 受 取 り 28 森 ほか 前 掲 注 (26)843 頁 17

という 貯 蓄 の 払 戻 しにも 類 似 したところにあり これに 万 一 の 場 合 の 保 障 が 付 加 され たものとみるのが 実 態 にかなうであろう そうすると 被 保 険 者 の 死 亡 と 生 存 を 同 列 に 扱 う 考 え 方 には 違 和 感 を 覚 えざるを 得 ない これに 加 えて 筆 者 の 試 算 によれば これらの 年 齢 の 者 を 被 保 険 者 とする 養 老 保 険 の 保 険 料 中 に 占 める 満 期 保 険 金 に 充 てるための 保 険 料 の 比 率 は 70%から 80%であり 現 行 取 扱 いの2 分 の1の 比 率 は 実 務 上 の 簡 便 性 の 要 請 を 考 慮 したとしても 過 大 に 過 ぎ 法 人 税 基 本 通 達 の 考 え 方 を 前 提 としても 本 来 資 産 計 上 されるべき 金 額 が 損 金 に 算 入 されている( 損 金 算 入 額 が 過 大 となっている )といえよう (3)さらに 現 行 の 取 扱 いを 前 提 とすると 保 険 契 約 がオフバランスとなる 点 も 問 題 点 として 指 摘 できる 現 行 取 扱 いによれば 定 期 保 険 の 保 険 料 の 全 額 が 養 老 保 険 の 保 険 料 の2 分 の1( 逆 パターンであれば 全 額 )が 法 人 の 資 産 として 認 識 されない し かしながら 保 険 契 約 は 保 険 料 積 立 金 が 積 み 立 てられ 保 険 契 約 者 の 解 約 権 の 行 使 に よる 解 約 返 戻 金 の 原 資 になるなどの 機 能 を 発 揮 することからすれば オフバランスと なることに 問 題 なしとしない また この 点 に 関 連 して 現 行 の 取 扱 いは 保 険 金 受 取 人 が 誰 であるかにより 区 分 しているが 上 記 の 解 約 返 戻 金 の 取 得 の 基 因 となる 解 約 権 は 保 険 契 約 者 のみが 有 する 権 利 であり 保 険 金 受 取 人 のみに 着 目 する 取 扱 いが 合 理 的 かどうか 保 険 法 の 見 地 か らも 疑 義 が 生 ずる( 生 死 混 合 保 険 においても 同 様 の 指 摘 ができる ) (4)これまでの 課 税 問 題 をみると 結 局 のところ 現 行 の 課 税 実 務 の 取 扱 いが 保 険 契 約 を 死 亡 保 険 か 生 死 混 合 保 険 かという 給 付 される 保 険 金 で 区 分 していること 及 び 保 険 契 約 の 受 益 者 を 保 険 金 受 取 人 のみにみているところに 今 後 の 検 討 課 題 があると 考 え るのである 生 命 保 険 契 約 は 保 障 と 貯 蓄 の 二 面 性 があるものではあるが 保 険 契 約 が 本 来 持 つ 貯 蓄 的 要 素 に 着 目 した 検 討 を 要 するのではなかろうか 第 1 節 でみた 養 老 保 険 の 逆 パターンに 係 る 最 高 裁 判 決 が 現 行 取 扱 いゆえに 保 険 契 約 を 介 した 資 金 移 転 の 具 となり 得 ることを 示 し この 問 題 についての 本 質 的 な 解 決 を 求 めているともいえ よう 18

第 2 章 生 命 保 険 契 約 の 機 能 第 1 節 生 命 保 険 契 約 の 意 義 とその 機 能 1 生 命 保 険 契 約 の 意 義 と 契 約 の 当 事 者 (1) 保 険 契 約 とは 保 険 法 において 保 険 契 約 共 済 契 約 その 他 いかなる 名 称 であるか を 問 わず 当 事 者 の 一 方 が 一 定 の 事 由 が 生 じたことを 条 件 として 財 産 上 の 給 付 を 行 う ことを 約 し 相 手 方 がこれに 対 して 当 該 一 定 の 事 由 の 発 生 の 可 能 性 に 応 じたものとし て 保 険 料 ( 共 済 掛 金 を 含 む )を 支 払 うことを 約 する 契 約 をいう ( 同 法 2 一 )と 規 定 され そして 生 命 保 険 契 約 は 保 険 契 約 のうち 保 険 者 が 人 の 生 存 又 は 死 亡 に 関 し 一 定 の 保 険 給 付 を 行 うことを 約 するもの( 傷 害 疾 病 定 額 保 険 契 約 に 該 当 するものを 除 く )をいう ( 同 法 2 八 )と 規 定 される 上 記 の 生 命 保 険 契 約 の 定 義 から 生 命 保 険 の 基 本 的 な 形 態 は 人 すなわち 被 保 険 者 の 死 亡 を 保 険 事 故 として 保 険 給 付 すなわち 保 険 金 の 支 払 がなされる 死 亡 保 険 被 保 険 者 の 保 険 期 間 満 了 の 日 における 生 存 を 保 険 事 故 として 保 険 金 の 支 払 がなされる 生 存 保 険 及 び 両 者 を 組 み 合 わせた 生 死 混 合 保 険 に 分 類 できる (2) 生 命 保 険 契 約 の 関 係 者 として 保 険 者 保 険 契 約 者 被 保 険 者 及 び 保 険 金 受 取 人 が 挙 げられる これらの 者 のうち 契 約 の 当 事 者 は 保 険 者 と 保 険 契 約 者 である 保 険 者 とは 生 命 保 険 契 約 の 一 方 の 当 事 者 であり 保 険 給 付 を 行 う 義 務 を 負 う 者 を いい( 保 険 法 2 二 ) 一 般 的 には 生 命 保 険 会 社 がこれに 当 たる また 保 険 契 約 者 とは 生 命 保 険 契 約 のもう 一 方 の 当 事 者 として 保 険 料 を 支 払 う 義 務 を 負 う 者 をいう( 同 法 2 三 ) 保 険 契 約 者 は いつでも 生 命 保 険 契 約 を 解 除 することができるという 解 約 権 を 有 し ( 保 険 法 54) 29 また 約 款 上 解 約 権 を 行 使 した 場 合 において 解 約 返 戻 金 がある 場 合 には これを 保 険 者 に 請 求 することができることとされている( 解 約 返 戻 金 請 求 権 ) 29 生 命 保 険 の 契 約 の 解 除 は 将 来 に 向 かってのみ 効 力 を 生 ずることとされている( 保 険 法 591) このため 保 険 法 上 は 解 除 とされているが 一 般 に 解 約 権 とされている 19

さらに 保 険 契 約 者 は 保 険 事 故 が 発 生 するまでは 保 険 金 受 取 人 を 変 更 することが できる 保 険 金 受 取 人 の 変 更 権 を 有 している( 保 険 法 431) 30 31 2 生 命 保 険 契 約 と 生 命 保 険 数 理 (1) 生 命 保 険 の 保 険 料 は 保 険 金 の 支 出 に 充 てられる 純 保 険 料 と 保 険 会 社 の 事 務 費 に 充 てられる 付 加 保 険 料 に 大 別 され 両 者 を 合 計 したものを 営 業 保 険 料 という 生 命 保 険 契 約 は 一 の 保 険 集 団 から 収 受 した 純 保 険 料 は 全 額 がその 保 険 集 団 にお ける 保 険 金 支 出 に 充 てられるという 収 支 相 等 の 原 則 を 基 礎 としている (2) 保 険 料 は 予 定 死 亡 率 予 定 利 率 及 び 予 定 事 業 費 率 (これらを 基 礎 率 という )を 用 いて 生 命 保 険 数 理 に 基 づき 計 算 される 基 礎 率 のうち 純 保 険 料 の 算 出 に 用 いられる ものは 予 定 死 亡 率 と 予 定 利 率 である 死 亡 保 険 を 例 にとると 人 は 年 齢 の 経 過 に 伴 って 死 亡 率 が 上 昇 するため 保 険 期 間 1 年 の 死 亡 保 険 ( 以 下 純 粋 死 亡 保 険 という )の 純 保 険 料 ( 以 下 自 然 保 険 料 と いう )は 被 保 険 者 の 年 齢 が 上 昇 するほどその 額 も 高 額 となる 他 方 保 険 期 間 が1 年 を 超 える 生 命 保 険 契 約 にあっては 一 般 に 保 険 期 間 中 の 保 険 料 を 一 定 とする 平 準 保 険 料 が 採 られる 平 準 保 険 料 として 保 険 会 社 に 収 受 された 保 険 料 は 付 加 保 険 料 の 額 を 除 いた 上 で 定 期 保 険 などの 死 亡 保 険 であれば その 年 度 の 死 亡 保 険 金 の 支 出 に 充 てられる 保 険 料 ( 危 険 保 険 料 )を 除 いた 将 来 の 死 亡 保 険 金 の 支 出 に 充 てられる 金 額 が 養 老 保 険 など の 生 死 混 合 保 険 であればその 金 額 に 将 来 の 生 存 保 険 金 ( 満 期 保 険 金 )に 充 てられる 金 32 額 が 責 任 準 備 金 である 保 険 料 積 立 金 に 積 み 立 てられ 予 定 利 率 で 運 用 される 30 保 険 法 においてこの 規 定 は 任 意 規 定 とされているが 実 務 上 は 約 款 において 保 険 契 約 者 に 保 険 金 受 取 人 の 変 更 権 が 留 保 されているのが 通 例 である なお 死 亡 保 険 契 約 の 保 険 金 受 取 人 の 変 更 は 被 保 険 者 の 同 意 がなければ その 効 力 を 生 じ ないこととされている( 保 険 法 45) 31 保 険 料 の 仕 組 みと 生 命 保 険 会 計 については 拙 稿 保 険 商 品 を 巡 る 課 税 上 の 諸 問 題 税 務 大 学 校 論 叢 66 号 134-144 頁 ( 平 22) 参 照 32 生 命 保 険 会 社 が 積 み 立 てる 責 任 準 備 金 は 保 険 業 法 において 定 められている まず 狭 義 の 責 任 準 備 金 として 保 険 料 積 立 金 と 未 経 過 保 険 料 がある 前 者 は 保 険 契 約 の 保 険 契 約 に 基 づ く 将 来 の 債 務 の 履 行 に 備 えるため 保 険 数 理 に 基 づき 計 算 した 金 額 を 責 任 準 備 金 として 積 み 立 てるものであり( 業 規 691 一 ) 後 者 は 未 経 過 期 間 ( 保 険 契 約 に 定 めた 保 険 期 間 のうち 保 険 会 社 の 決 算 期 において まだ 経 過 していない 期 間 をいう )に 対 応 する 責 任 に 相 当 する 額 と して 計 算 した 金 額 を 責 任 準 備 金 として 積 み 立 てるものである( 業 規 691 二 ) このため 本 稿 の 目 的 としている 保 険 契 約 の 金 融 的 機 能 の 観 点 からの 議 論 に 当 たっては 保 険 料 積 立 金 を 対 象 として 検 討 を 進 める なお 責 任 準 備 金 には 狭 義 の 責 任 準 備 金 のほか 危 険 準 備 金 ( 保 険 契 約 に 基 づく 将 来 の 債 20

(3) 保 険 料 積 立 金 の 金 額 は 生 存 保 険 金 ( 満 期 保 険 金 )と 生 存 保 険 料 との 関 係 にあって は 保 険 期 間 の 経 過 とともに 逓 増 していき 保 険 期 間 満 了 時 の 直 前 には 満 期 保 険 金 と 同 額 となる 他 方 死 亡 保 険 金 と 死 亡 保 険 料 との 関 係 にあっては 保 険 期 間 の 前 半 に おいては 平 準 保 険 料 の 額 が 自 然 保 険 料 の 額 を 上 回 るため 保 険 料 積 立 金 の 額 は 逓 増 し ていき 保 険 期 間 の 後 半 においては 平 準 保 険 料 の 額 が 自 然 保 険 料 の 額 を 下 回 ること となるため 保 険 料 積 立 金 の 額 は 逓 減 していき 保 険 期 間 の 終 了 時 には 零 となる 3 生 命 保 険 契 約 の 保 障 的 要 素 と 貯 蓄 的 要 素 保 険 期 間 が1 年 を 超 える 生 命 保 険 契 約 は 保 険 料 積 立 金 が 積 み 立 てられることなどか ら リスクの 移 転 取 引 としての 性 格 とともに 保 険 特 有 の 貯 蓄 要 素 が 包 含 された 取 引 とし ての 性 格 があるとされる 例 えば 養 老 保 険 や 終 身 保 険 はリスクの 移 転 取 引 と 結 合 した 貯 蓄 ないし 投 資 取 引 としての 性 格 を 持 つというのが 実 態 であるとされ また 保 険 料 積 立 金 の 運 用 による 利 益 は 積 み 立 てられ 保 険 期 間 後 半 の 保 険 金 支 出 に 充 てられるほか 予 定 利 率 を 上 回 る 利 益 は 契 約 者 配 当 として 保 険 契 約 者 に 分 配 される 構 造 を 有 している から この 面 では 投 資 信 託 に 近 似 した 状 態 にもあるとされる 33 また 生 命 保 険 契 約 は 保 険 事 故 発 生 時 の 保 険 給 付 というキャッシュフロー 以 外 にも 保 険 期 間 中 保 険 契 約 者 はいつでも 解 約 権 を 行 使 して 解 約 返 戻 金 を 取 得 することができ いわばいつでも 現 金 化 できる 預 金 を 持 っているのと 近 似 する 状 態 にある したがって 保 険 契 約 者 にとっては 保 険 事 故 発 生 による 保 険 給 付 の 時 点 だけでなく 生 命 保 険 契 約 の 締 結 により 保 険 期 間 中 一 種 の 金 融 手 段 を 有 しているといえる 第 2 節 保 障 と 貯 蓄 の 二 面 性 1 生 命 保 険 契 約 が 果 たす 機 能 (1) 生 命 保 険 契 約 の 意 義 については 既 に 第 1 章 第 1 節 において 触 れたところであるが 保 険 法 の 定 義 規 定 ( 保 険 法 2 一 八 )からすると 保 険 であるという 要 素 は 通 説 に 務 を 確 実 に 履 行 するため 将 来 発 生 が 見 込 まれる 危 険 に 備 えて 計 算 した 金 額 を 責 任 準 備 金 とし て 積 み 立 てるもの( 業 規 691 四 )) 及 び 追 加 責 任 準 備 金 ( 狭 義 の 責 任 準 備 金 及 び 危 険 準 備 金 で は 将 来 の 債 務 の 履 行 に 支 障 をきたすおそれがあると 認 められる 場 合 に 保 険 料 及 び 責 任 準 備 金 算 出 方 法 書 を 変 更 することにより 追 加 して 保 険 料 積 立 金 及 び 払 戻 積 立 金 を 積 み 立 てるもの ( 業 規 695))が 規 定 されている 33 山 下 前 掲 注 (6)28 頁 21

おいては 次 の5 点 が 挙 げられている 34 すなわち 1 一 方 当 事 者 の 金 銭 の 拠 出 ( 保 険 料 ) 2 他 方 当 事 者 の 偶 然 の 事 実 の 発 生 による 経 済 的 損 失 を 補 填 する 給 付 ( 保 険 給 付 ) 31と2が 対 立 関 係 に 立 つとした 上 で 4 収 支 相 等 原 則 及 び5 給 付 反 対 給 付 均 等 原 則 からなるとしている このことから 生 命 保 険 契 約 の 機 能 として まず 保 険 者 による 保 険 契 約 を 通 じた 保 障 的 要 素 を 挙 げることができ( 保 障 的 要 素 を 除 外 して 生 命 保 険 契 約 は 成 り 立 たない 35 ) 生 命 保 険 契 約 の 保 険 事 故 である 人 の 生 死 という 点 からみれば 被 保 険 者 の 生 死 というリスクの 移 転 という 取 引 の 性 格 36 を 有 するといえる (2) 他 方 生 命 保 険 契 約 は 一 般 に 長 期 の 保 険 契 約 であり また 生 命 保 険 数 理 に 基 づいて 保 険 料 積 立 金 が 積 み 立 てられるという 特 性 をも 有 することから 保 障 的 要 素 と 並 んで 貯 蓄 的 要 素 を 契 約 の 機 能 として 挙 げることができる 37 まず 第 一 に 保 険 金 給 付 の 持 つ 貯 蓄 的 要 素 を 指 摘 できよう 例 えば 養 老 保 険 では 被 保 険 者 が 保 険 期 間 満 了 の 時 に 生 存 しているときには 満 期 保 険 金 が 支 払 われる 満 期 時 においては その 養 老 保 険 契 約 の 契 約 者 が 支 払 った 保 険 料 より 積 み 立 てられた 保 険 料 積 立 金 は 支 払 われた 保 険 金 とほぼ 同 額 であり その 経 済 的 実 質 としては 貯 蓄 の 払 戻 しという 意 味 をみることができる 38 加 えて 当 該 保 険 料 積 立 金 は 保 険 期 間 中 の 運 用 利 息 が 付 されており 拠 出 元 本 とその 果 実 の 払 戻 しという 側 面 も 有 するのである 第 二 に 保 険 料 積 立 金 の 存 在 が 挙 げられる 生 命 保 険 契 約 では 後 述 するように 保 険 期 間 1 年 の 定 期 保 険 ( 純 粋 死 亡 保 険 )を 除 き 生 命 保 険 数 理 に 基 づき 将 来 の 保 険 金 支 払 のために 保 険 料 の 中 から 保 険 料 積 立 金 への 積 立 が 行 われ 予 定 利 率 により 運 用 される そして 保 険 料 積 立 金 は 解 約 返 戻 金 として 保 険 契 約 者 に 支 払 われる 場 合 が ある すなわち 保 険 契 約 者 はいつでも 任 意 に 解 約 権 を 行 使 することが 可 能 であり 解 約 した 場 合 には 解 約 返 戻 金 の 支 払 を 受 けることができる この 解 約 返 戻 金 は 保 険 料 の 中 から 責 任 準 備 金 ( 保 険 料 積 立 金 )へ 積 み 立 てられた 金 額 とその 果 実 たる 運 用 利 息 の 合 計 額 であるから 満 期 保 険 金 と 同 様 拠 出 元 本 とその 果 実 の 払 戻 しという 側 面 34 例 えば 山 下 前 掲 注 (6)6 頁 35 國 崎 前 掲 注 (23)33 頁 36 山 下 前 掲 注 (6)28 頁 37 保 険 期 間 1 年 の 定 期 保 険 ( 純 粋 死 亡 保 険 )は 保 険 料 積 立 金 が 積 み 立 てられず 保 険 料 は 全 額 がその 年 度 の 保 険 金 に 充 てられる このことから 純 粋 死 亡 保 険 には 消 費 的 性 格 ないしは 非 投 資 資 金 的 性 格 があるとされる( 國 崎 前 掲 注 (23)163-165 頁 ) 38 山 下 前 掲 注 (6)28 頁 22

を 有 する (3)したがって 生 命 保 険 契 約 とは 保 障 的 要 素 であるリスクの 移 転 に 加 えて 貯 蓄 な いし 投 資 の 側 面 を 一 体 化 した 独 特 の 取 引 を 包 含 するものであり 複 合 的 な 目 的 をもつ 取 引 である 39 といえる 2 保 険 料 積 立 金 の 意 義 (1) 保 険 料 と 保 険 料 積 立 金 イ 生 命 保 険 の 保 険 料 は 保 険 金 の 支 出 に 当 てられる 純 保 険 料 と 保 険 会 社 の 事 務 費 に 充 てられる 付 加 保 険 料 に 大 別 でき 両 者 を 合 計 したものを 営 業 保 険 料 といい 保 険 契 約 者 が 支 払 う 保 険 料 の 額 となっている さらに 純 保 険 料 は 死 亡 保 険 金 の 支 出 に 充 てる 部 分 の 金 額 ( 以 下 便 宜 上 死 亡 保 険 料 と 呼 ぶ )と 生 存 保 険 金 ( 満 期 保 険 金 )の 支 出 に 充 てられる 部 分 の 金 額 ( 以 下 便 宜 上 生 存 保 険 料 と 呼 ぶ )に 区 分 され 前 者 のうち 直 近 1 年 間 の 保 険 金 支 出 に 当 てられる 部 分 の 金 額 を 除 いた 金 額 と 後 者 の 金 額 の 合 計 額 が 保 険 料 積 立 金 として 積 み 立 てられることとなる 以 上 を 図 示 すれば 次 のとおりとなる ( 当 該 年 度 の 死 亡 保 険 金 ) 営 業 保 険 料 純 保 険 料 死 亡 保 険 料 死 亡 保 険 金 ( 将 来 の 死 亡 保 険 金 ) 生 存 保 険 料 保 険 料 積 立 金 生 存 保 険 金 付 加 保 険 料 事 務 費 ロ 保 険 料 と 保 険 料 積 立 金 との 関 係 を 死 亡 保 険 料 について 自 然 保 険 料 ( 上 図 の 死 亡 保 険 料 のうち 当 該 年 度 の 死 亡 保 険 金 に 充 てられる 部 分 の 金 額 と 同 額 となる )と 平 準 保 険 料 との 関 係 からみると 保 険 期 間 の 前 半 においては 自 然 保 険 料 を 超 えて 保 険 料 を 収 受 し その 超 える 部 分 の 金 額 は 保 険 料 積 立 金 に 積 み 立 てられ 予 定 利 率 39 山 下 前 掲 注 (6)29 頁 23

により 運 用 される そして 保 険 期 間 の 後 半 においては 被 保 険 者 の 加 齢 による 死 亡 率 の 上 昇 に 伴 っ て 自 然 保 険 料 の 額 が 平 準 保 険 料 の 額 を 上 回 ることとなるが その 平 準 保 険 料 を 上 回 る 部 分 の 金 額 は 保 険 料 積 立 金 から 取 り 崩 されて 保 険 料 (= 保 険 金 支 出 )に 充 てら れることとなる 40 保 険 料 積 立 金 は 将 来 の 保 険 金 の 支 出 ( 収 支 相 等 原 則 の 下 では すなわち 将 来 の 保 険 料 の 負 担 )に 充 てられるほかに 保 険 契 約 者 にとっては 解 約 権 を 行 使 した 場 合 の 解 約 返 戻 金 の 財 源 となり 払 済 保 険 延 長 保 険 に 変 更 した 場 合 の 一 時 払 い 保 険 料 に 充 当 される 財 源 となる また 契 約 者 貸 付 として 解 約 返 戻 金 の 範 囲 内 で 資 金 の 融 通 を 受 けることができる( 以 下 に 詳 述 する ) (2) 契 約 者 価 額 上 述 のとおり 生 命 保 険 契 約 においては 保 険 料 計 算 と 保 険 料 積 立 金 の 計 算 は 一 体 となっており このため 平 成 7 年 の 保 険 業 法 改 正 までは その 計 算 基 礎 となる 基 礎 率 も 同 一 のものが 用 いられる しかしながら 平 成 7 年 の 保 険 業 法 改 正 により 長 期 の 保 険 契 約 で 内 閣 府 令 で 定 める 一 定 のものについて 標 準 責 任 準 備 金 制 度 が 導 入 され 保 険 会 社 が 設 定 する 保 険 料 水 準 にかかわらず 監 督 当 局 が 保 険 会 社 の 健 全 性 の 維 持 保 険 契 約 者 の 保 護 の 観 点 から 定 める 積 立 方 法 計 算 基 礎 率 により 計 算 した 標 準 責 任 準 備 金 を 積 み 立 てることとされた 他 方 保 険 契 約 者 にとっての 保 険 料 積 立 金 すなわち 保 険 料 中 の 解 約 払 戻 金 等 の 財 源 となる 部 分 の 金 額 は 保 険 業 法 上 契 約 者 価 額 ( 払 戻 金 の 額 その 他 の 被 保 険 者 の ために 積 み 立 てるべき 額 を 基 礎 として 計 算 した 金 額 ( 保 険 業 法 施 行 規 則 10 三 ))と 規 定 されている 41 このように 現 在 の 保 険 業 法 の 下 では 責 任 準 備 金 中 の 保 険 料 積 立 金 の 計 算 基 礎 は 40 中 里 教 授 は 生 命 保 険 料 控 除 に 関 する 検 討 の 中 で 上 記 のような 保 険 料 の 区 分 に 応 じて 1 付 加 保 険 料 は 消 費 ないし 費 用 であり 2 純 保 険 料 のうち 保 険 事 故 が 発 生 した 場 合 に 保 険 事 故 に あわなかった 者 から 保 険 事 故 にあった 者 に 対 するへ 移 転 する 部 分 ( 上 図 の 死 亡 保 険 料 のうち 当 該 年 度 の 死 亡 保 険 金 に 充 てられる 部 分 )は 移 転 であるが 3 純 保 険 料 のうち 将 来 の 保 険 金 支 払 のために 積 み 立 てられる 部 分 ( 上 図 の 保 険 料 積 立 金 に 積 み 立 てられる 部 分 )は 貯 蓄 に 該 当 する とする( 中 里 実 所 得 控 除 制 度 の 経 済 学 的 意 義 日 税 研 論 集 52 号 所 得 控 除 の 研 究 118-120 頁 ( 税 務 研 究 センター 平 15)) 41 保 険 法 においても 同 様 に 受 領 した 保 険 料 のうち 当 該 生 命 保 険 契 約 に 係 る 保 険 給 付 に 充 て るべきものとして 保 険 料 又 は 額 を 定 めるための 予 定 死 亡 率 予 定 利 率 その 他 の 計 算 の 基 礎 を 用 いて 算 出 される 金 額 に 相 当 する 部 分 をいう ( 保 険 法 63)と 規 定 されている 24

保 険 料 の 計 算 基 礎 とは 概 念 上 切 断 されることが 明 確 にされ 実 態 上 も 責 任 準 備 金 中 の 保 険 料 積 立 金 に 対 して 各 保 険 解 約 者 が 持 分 的 な 権 利 を 有 するとはいえないこととなっ た そして 保 険 契 約 者 が 保 険 料 積 立 金 に 対 して 有 する 権 利 は 保 険 会 社 が 監 督 当 局... との 関 係 において 積 み 立 てる 責 任 準 備 金 中 の 保 険 料 積 立 金 とは 切 り 離 されて 保 険 契... 約 に 基 づいて 約 定 される 独 自 の 権 利 として 構 成 されるものであることが 法 令 上 明 確 に されている 42 第 3 節 生 命 保 険 契 約 が 有 する 貯 蓄 的 価 値 1 生 命 保 険 の 設 計 の 自 在 性 と 貯 蓄 的 要 素 の 高 まり (1)これまで 述 べきたように 生 命 保 険 は 集 団 における 大 数 の 法 則 を 前 提 に 予 定 死 亡 率 予 定 利 率 及 び 予 定 事 業 費 率 の 基 礎 率 により 生 命 保 険 数 理 に 基 づいて 設 計 される そして 保 険 料 と 保 険 金 との 収 支 相 等 により その 給 付 の 目 的 とされる 保 険 金 額 にお 応 じた 保 険 料 の 額 が 算 出 される したがって 生 命 保 険 契 約 は 人 の 生 存 又 は 死 亡 に 関 し 一 定 の 保 険 給 付 を 行 う ( 保 険 法 2 八 )という 保 障 的 要 素 を 有 する 限 りにおいて 上 記 の 計 算 基 礎 等 の 生 命 保 険 数 理 に 従 って 設 計 する 自 在 性 は 比 較 的 大 きいといえる 例 えば 保 険 期 間 の 長 短 生 死 混 合 保 険 の 場 合 の 死 亡 保 険 金 と 満 期 保 険 金 のそれぞれの 大 きさ 保 険 金 額 の 保 険 期 間 中 の 増 減 などは そのニーズに 応 じて 設 計 が 可 能 である (2)そのため 個 々の 生 命 保 険 商 品 を 開 発 するに 当 たって 保 障 的 要 素 を 付 与 しつつ 貯 蓄 的 要 素 を 高 めることも 可 能 である 例 えば 養 老 保 険 においては 基 本 的 な 商 品 は 満 期 保 険 金 と 死 亡 保 険 金 が 同 額 であるが これを 満 期 保 険 金 が 死 亡 保 険 金 の 数 倍 の 金 額 とすれば( 死 亡 保 険 金 と 択 一 的 な 給 付 とはなるが) 貯 蓄 要 素 が 極 めて 高 い 商 品 設 計 となろう また 解 約 返 戻 金 による 貯 蓄 的 要 素 を 強 めるためには 前 章 第 2 節 で 触 れた 商 品 のように 保 険 期 間 を 極 めて 長 期 にしたり 保 険 期 間 後 半 の 保 険 金 額 を 逓 増 させることにより 保 険 期 間 後 半 の 自 然 保 険 料 が 高 額 となるよう 設 計 することによっ て 保 険 期 間 前 半 に 積 み 立 てる 保 険 料 積 立 金 を 多 額 にすることにより 可 能 となる したがって 生 命 保 険 契 約 は その 設 計 いかんにより 保 険 契 約 者 にとって 貯 蓄 的 42 山 下 前 掲 注 (6)653 頁 25

要 素 を 高 めることが 十 分 に 可 能 なものといえる 2 保 険 契 約 者 の 権 利 と 契 約 の 財 産 的 価 値 の 利 用 (1) 保 険 契 約 者 の 権 利 義 務 保 険 契 約 者 とは 生 命 保 険 契 約 の 当 事 者 のうち 保 険 料 を 支 払 う 義 務 を 負 う 者 をい う( 保 険 法 2 三 ) 保 険 契 約 者 の 法 律 上 又 は 約 款 上 の 権 利 義 務 は 次 のとおりである イ 保 険 料 支 払 義 務 保 険 契 約 者 は 保 険 契 約 の 一 方 の 当 事 者 として 保 険 者 が 保 険 事 故 発 生 の 際 に 保 険 金 支 払 義 務 を 負 うのに 対 して その 報 酬 たる 保 険 料 の 支 払 義 務 を 負 う この 保 険 料 支 払 義 務 は 自 己 のためにする 生 命 保 険 契 約 ( 保 険 契 約 者 = 保 険 金 受 取 人 )のみ に 限 らず 第 三 者 のためにする 生 命 保 険 契 約 ( 保 険 契 約 者 以 外 が 保 険 金 受 取 人 )で あっても 保 険 契 約 者 に 負 わされる 義 務 である なお 保 険 契 約 者 はこのほかに 被 保 険 者 とともに 保 険 者 への 告 知 義 務 や 保 険 金 受 取 人 とともに 被 保 険 者 の 死 亡 の 通 知 義 務 を 負 う( 保 険 法 37 50) ロ 解 約 権 及 び 解 約 返 戻 金 請 求 権 保 険 契 約 者 は いつでも 生 命 保 険 契 約 を 解 除 することができることとされている ( 保 険 法 54) 43 また 約 款 上 保 険 契 約 者 が 解 約 権 を 行 使 した 場 合 において 解 約 返 戻 金 がある 場 合 にはこれを 保 険 者 に 請 求 することができる ハ 積 立 金 払 戻 請 求 権 保 険 法 では 次 に 掲 げる 事 由 により 生 命 保 険 契 約 が 終 了 した 場 合 には 当 該 終 了 の 時 における 保 険 料 積 立 金 を 保 険 者 が 保 険 契 約 者 に 対 し 払 い 戻 さなければなら ない 44 と 規 定 している( 保 険 法 63) 1 保 険 受 取 人 による 被 保 険 者 の 故 殺 等 の 法 定 免 責 事 由 に 該 当 する 場 合 ( 同 51 一 三 四 ) 2 保 険 者 の 責 任 開 始 前 における 保 険 契 約 者 の 任 意 解 除 又 は 被 保 険 者 による 解 除 請 求 による 保 険 契 約 の 解 除 ( 同 54 582) 3 生 命 保 険 契 約 の 締 結 後 に 危 険 増 加 が 生 じた 場 合 において 保 険 者 が 当 該 生 命 保 43 なお 生 命 保 険 契 約 の 解 除 は 将 来 に 向 ってのみ 効 力 を 生 ずることとされている( 保 険 法 59 1) 44 ただし 保 険 者 が 保 険 給 付 を 行 う 責 任 を 負 うときは この 限 りでない( 保 険 法 63 ただし 書 ) 26

険 契 約 を 解 除 する 場 合 ( 同 561) 4 保 険 者 が 破 産 した 場 合 における 生 命 保 険 契 約 の 解 除 又 は 失 効 があった 場 合 ( 同 96) ニ 保 険 金 受 取 人 の 変 更 権 保 険 契 約 者 は 保 険 事 故 が 発 生 するまでは 保 険 金 受 取 人 を 変 更 することができ ることとされている( 保 険 法 431) この 規 定 は 任 意 規 定 とされているが 実 務 上 は 約 款 において 保 険 契 約 者 の 保 険 金 受 取 人 の 変 更 権 が 留 保 されているのが 通 例 で ある したがって 保 険 契 約 者 は その 保 険 契 約 の 保 険 金 受 取 人 についていつでも 変 更 することができる ただし 死 亡 保 険 契 約 の 保 険 金 受 取 人 の 変 更 は 被 保 険 者 の 同 意 がなければ その 効 力 を 生 じないこととされている( 保 険 法 45) ホ 利 益 配 当 ( 契 約 者 配 当 ) 請 求 権 保 険 契 約 者 は 保 険 会 社 が 相 互 会 社 の 場 合 には 剰 余 金 の 配 当 を 保 険 会 社 が 株 式 会 社 の 場 合 には 利 益 の 配 当 を 受 けることができる 保 険 料 が 死 亡 率 等 の 基 礎 率 を 前 提 にした 概 算 払 の 性 格 を 有 するものであるため 現 実 に 確 定 された 実 績 値 との 差 額 の 精 算 が 契 約 者 配 当 であるといえる へ 契 約 者 貸 付 ( 約 款 貸 付 ) 保 険 契 約 者 は 解 約 返 戻 金 の 範 囲 内 で 保 険 者 から 現 金 の 貸 付 けを 受 けることがで き これを 契 約 者 貸 付 ( 約 款 貸 付 )という 保 険 契 約 者 は 保 険 期 間 中 はいつでもそ の 元 利 金 の 一 部 又 は 全 部 を 返 済 することができるが 元 利 金 の 額 が 解 約 返 戻 金 の 額 を 超 えた 場 合 には 所 定 の 期 日 以 内 に 返 済 しないと 保 険 契 約 は 失 効 することとなっ ている また 保 険 料 払 込 みの 期 日 までに 保 険 料 が 支 払 われない 場 合 保 険 契 約 者 があら かじめ 反 対 の 申 出 をしない 限 り 必 要 な 金 額 が 解 約 返 戻 金 の 範 囲 内 で 自 動 的 に 貸 し 付 けられ 保 険 料 に 充 当 される これを 保 険 料 振 替 貸 付 という ト 払 済 保 険 延 長 保 険 への 変 更 保 険 期 間 の 途 中 で 保 険 料 の 払 込 みを 中 止 して 保 険 契 約 の 内 容 を 変 更 することが できる 保 険 期 間 は 不 変 のまま 保 険 金 額 を 減 額 する 払 済 保 険 への 変 更 や 保 険 金 額 は 変 更 せずに 保 険 期 間 を 短 縮 する 延 長 保 険 への 変 更 が 可 能 であり いずれの 場 合 も 解 約 返 戻 金 の 額 を 一 時 払 いの 保 険 料 に 充 当 したものとして 計 算 される (2) 保 険 契 約 者 の 権 利 と 保 険 金 受 取 人 の 法 的 地 位 27

上 記 の 保 険 契 約 者 の 権 利 のうち 解 約 権 及 び 保 険 金 受 取 人 の 変 更 権 は 保 険 契 約 者 の 一 方 的 意 思 表 示 によってなされる 単 独 行 為 であり 保 険 者 の 同 意 を 要 せずに 保 険 契 約 者 の 一 方 的 意 思 表 示 によりその 効 力 を 生 じる 形 成 権 であると 解 されている 45 46 他 方 保 険 金 受 取 人 は 第 三 者 のためにする 生 命 保 険 契 約 において 当 然 にその 生 命 保 険 契 約 の 利 益 を 享 受 する 旨 規 定 されている( 保 険 法 42) すなわち 保 険 契 約 者 から 保 険 金 受 取 人 に 指 定 されると 同 時 に 何 らの 意 思 表 示 を 要 せず 当 然 に 保 険 金 請 求 権 を 取 得 するのである しかしながら この 場 合 の 権 利 は 保 険 事 故 が 発 生 して 初 めて 具 体 的 な 金 銭 債 権 を 取 得 するものであり 保 険 事 故 が 不 発 生 に 確 定 すれば 何 らの 利 益 も 享 受 できないのであ るから 一 種 の 条 件 付 権 利 を 有 するにすぎない このような 保 険 事 故 発 生 前 の 保 険 金 受 取 人 の 法 的 地 位 は 一 定 の 状 態 において 即 ち 一 定 の 要 件 が 備 わるならば さらに 当 事 者 の 権 利 取 得 のための 法 律 的 行 為 を 要 することなくして 直 ちに 権 利 を 取 得 しう べき 状 態 において これを 保 護 するために 与 えられた 現 在 の 権 利 47 である 期 特 権 で あると 解 されている そして 保 険 金 受 取 人 自 身 が 保 険 契 約 者 である 場 合 はともかく そうでない 場 合 は 通 常 は 保 険 契 約 者 が 解 約 権 や 保 険 金 受 取 人 の 変 更 権 を 留 保 して いることから 48 保 険 金 受 取 人 の 保 険 金 請 求 権 は 保 険 事 故 不 発 生 の 場 合 のみならず 保 険 契 約 者 のこれら 権 利 の 行 使 によっては 保 険 金 請 求 権 を 失 うこととなり その 権 利 は 極 めて 不 安 定 なものであり かつ 脆 弱 なものである 49 (3) 生 命 保 険 契 約 の 財 産 的 価 値 の 利 用 45 最 判 昭 和 62 年 10 月 29 日 ( 民 集 41 巻 7 号 1527 頁 ) ほかに 形 成 権 であることを 明 言 したも のとして 東 京 地 判 昭 和 45 年 3 月 12 日 ( 判 例 時 報 601 号 91 頁 その 控 訴 審 東 京 高 判 昭 和 47 年 7 月 28 日 ( 下 民 23 巻 5~8 号 403 頁 )) 46 大 森 忠 夫 保 険 金 受 取 人 の 指 定 変 更 撤 回 の 法 的 性 質 大 森 忠 夫 = 三 宅 一 夫 生 命 保 険 契 約 法 の 諸 問 題 77 頁 ( 有 斐 閣 昭 33) 中 村 敏 夫 保 険 金 受 取 人 の 指 定 変 更 権 の 行 使 保 険 学 雑 誌 475 号 31 頁 ( 昭 51)ほか 47 於 保 不 二 雄 将 来 の 権 利 の 処 分 財 産 管 理 権 論 序 説 321 頁 ( 有 心 堂 昭 29) 48 前 述 のとおり 保 険 法 上 は 保 険 契 約 者 による 解 除 ( 保 険 法 54) 保 険 金 受 取 人 の 変 更 ( 同 431)は 任 意 規 定 であり これらの 権 利 を 保 険 契 約 者 が 留 保 していない 場 合 もあり 得 るのであ るが 現 行 の 実 務 上 は 約 款 において 留 保 しているのが 通 例 である 49 この 点 につき 大 森 忠 夫 博 士 は 次 のように 述 べている 保 険 金 受 取 人 に 指 定 された 者 の 権 利 は 解 約 又 は 指 定 の 撤 回 が 行 われないままで 保 険 事 故 が 発 生 することによってはじめて 具 体 的 な 一 定 の 保 険 金 額 の 請 求 権 として 確 定 するのであって それまでは 受 取 人 の 地 位 は 右 に 述 べ たように 種 々の 意 味 ( 筆 者 注 : 保 険 契 約 者 による 解 約 権 の 行 使 や 保 険 金 受 取 人 指 定 の 変 更 撤 回 等 による 保 険 金 受 取 人 たる 地 位 の 消 滅 )において 内 容 の 実 現 の 不 確 実 な 権 利 であるといわね ばならない ( 大 森 忠 夫 保 険 金 受 取 人 の 指 定 変 更 撤 回 の 法 的 性 質 大 森 忠 夫 = 三 宅 一 夫 生 命 保 険 契 約 法 の 諸 問 題 21 頁 ( 有 斐 閣 昭 33)) 28

生 命 保 険 契 約 の 財 産 的 価 値 の 利 用 としては 保 険 料 積 立 金 の 利 用 や 担 保 としての 利 用 が 挙 げられるが 以 下 では 本 稿 の 目 的 としている 保 険 料 積 立 金 の 財 産 的 価 値 の 利 用 について 整 理 しておきたい 既 に 述 べてきたように 保 険 料 積 立 金 とは 保 険 法 において 受 領 した 保 険 料 の 総 額 の うち 当 該 生 命 保 険 契 約 に 係 る 保 険 給 付 に 充 てるべきものとして 保 険 料 又 は 保 険 給 付 の 額 を 定 めるための 予 定 死 亡 率 予 定 利 率 その 他 の 計 算 の 基 礎 を 用 いて 算 出 される 全 額 に 相 当 する 部 分 をいう ( 保 険 法 63)と 規 定 され また 監 督 法 である 保 険 業 法 においても 契 約 者 価 額 すなわち 払 戻 金 の 額 その 他 の 被 保 険 者 のために 積 立 てる べき 額 を 基 礎 として 計 算 した 金 額 ( 同 法 施 行 規 則 10 三 )と 規 定 される この 保 険 料 積 立 金 は 保 険 事 故 が 発 生 すれば 約 定 に 従 い 保 険 金 受 取 人 が 保 険 金 請 求 権 を 取 得 し 保 険 金 として 給 付 を 受 けることとなるが その 場 合 であっても 保 険 契 約 者 が 保 険 期 間 中 に 契 約 者 貸 付 を 受 け 保 険 事 故 までの 間 に 返 済 していなかったときには 保 険 金 は 当 該 契 約 者 貸 付 の 額 が 減 額 されて 給 付 されるから 本 来 保 険 金 受 取 人 が 給 付 を 受 けるべき 保 険 金 額 の 一 部 が 保 険 契 約 者 により 利 用 される また 保 険 事 故 発 生 前 に 保 険 契 約 者 の 解 約 権 の 行 使 ( 前 述 のとおり 解 約 権 は 形 成 権 と 解 されている )に よ り 保 険 契 約 が 終 了 した 場 合 には 保 険 料 積 立 金 は 解 約 返 戻 金 として 保 険 契 約 者 に 給 付 される いずれの 場 合 も 保 険 事 故 の 発 生 による 保 険 給 付 以 外 の 場 合 においても 保 険 契 約 者 による 生 命 保 険 契 約 の 財 産 的 価 値 の 利 用 が 可 能 となっている そして このような 財 産 的 価 値 の 利 用 は 保 険 契 約 の 当 事 者 である 保 険 契 約 者 のみ がその 権 利 として 享 受 できるものである したがって 生 命 保 険 契 約 においては 保 険 事 故 が 発 生 した 場 合 に 保 険 給 付 を 受 ける 保 険 金 受 取 人 に 保 険 契 約 者 以 外 の 者 が 指 定 されていたとしても 保 険 契 約 者 は 保 険 事 故 が 発 生 する 以 前 において 当 該 生 命 保 険 契 約 の 財 産 的 価 値 を 利 用 することができるのである 29