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(別添様式1)

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臨床研究 症例報告 乳児期の鉄欠乏について 神経発達, 神経症状を中心に ささ佐々 き木 ま万 り里 え恵 たかはしたかお 高橋孝雄 要旨乳児期の鉄欠乏は長期的な中枢神経系の発育 発達に影響を与えることが明らかとなっており, その影響は一部不可逆的である また憤怒けいれん, むずむず脚症候群などの神経疾患との関連も指摘されている これらの疾患 症状は鉄欠乏性貧血の前段階である鉄欠乏症でもみられるため, 鉄欠乏性貧血になってから介入するのでは神経発達の観点からは遅いといえる 乳児期は一生のなかで最も急激な成長を遂げる時期であり, 乳児期後半には鉄の供給が需要に追いつかなくなる 早産児, 低出生体重児, 母乳栄養単独児は特にハイリスクであるが, 残念ながら日本では欧米のような鉄が強化された離乳食はなく, また鉄欠乏性貧血のスクリーニングの機会も設けられていない 2016 年の 新生児に対する鉄剤投与のガイドライン 発行には大きな意義がある 今後, 乳幼児期に鉄欠乏を引き起こさないための予防策に重点を置く必要がある [ 小児科臨床 72:193,2019] 鉄欠乏性貧血, 鉄欠乏症, 神経発達, 乳児 はじめに 乳児期, 特に乳児期後半は急激な身体の成長に伴い鉄欠乏症 (iron deficiency) に陥りやすい 母乳栄養児, 低出生体重児, 周産期に失血がある, 早期から牛乳を摂取している, 鉄分の少ないもしくは強化されていない離乳食を摂取している場合にはそのリスクはさらに高まる 鉄欠乏症は鉄欠乏性貧血 (iron deficiency anemia) を引き起こすだけではなく, 神経発達や知的機能に長期的に影響を及ぼすことが知られている これらの点が見過ごされやすい背景として, 現在の鉄欠乏のスクリーニングや治療が短期的な鉄欠乏性貧血の発見 改善を主眼にしており, 長期的な神経発達への影響に十分配慮しているとはいえないことが挙げられる 鉄欠乏性貧血は鉄欠乏症の 成れの果て であると認識し, 貧血に至る前に, 神経発達への悪影響など気づきにくい病態を未然に防ぐこと, つまり鉄 欠乏症に陥らせないことが重要である 乳児期の鉄欠乏のリスク 小児が鉄欠乏になりうるタイミングは主に つ,1 胎児期 ~ 新生児期,2 生後 ~24カ月,3 思春期である 1) 胎児期 ~ 新生児期の鉄欠乏の主な原因は, 母体の鉄欠乏, 早産, 母体妊娠合併症 ( 妊娠糖尿病, 子宮内発育遅滞, 母体の喫煙, 母体の肥満, 子宮内感染など ) である 母体が鉄欠乏性貧血である場合, 低出生体重児の出生率や母児の周産期死亡率が上昇する 新生児の造血は, 妊娠後期に母体から移行した鉄に依存する 新生児は高いヘモグロビン濃度を有するが, 胎児性ヘモグロビンが分解されるにつれてヘモグロビン濃度は低下し生後 ~ カ月で最低となる 同時に大量の鉄が再生され貯蔵される 母体からの移行鉄および再生された貯蔵鉄により造血に必要な鉄が十 慶應義塾大学医学部小児科 ( 160-8582 東京都新宿区信濃町 35) 小児科臨床 Vol.72 No.2 2019 193 (73)

分にまかなえるのは生後 ~ カ月ころまでである 乳児期は身体的に一生で最も急速な成長を遂げる時期であり, 生後 カ月以降になると鉄の需要が供給を上回る この時期に十分な鉄を摂取しなければ, 当然, 鉄欠乏状態に陥る 思春期は急激な成長, 食事摂取の不足, および女児においては月経による失血により鉄需要が高まる さらに運動量の増加も鉄代謝に影響する 近年発見された鉄代謝を調節するポリペプチドホルモンであるヘプシジンは, 十二指腸に存在するヘプシジンレセプターであるフェロポルチンと結合し腸管からの鉄吸収を抑制する 運動の結果, ヘプシジンが上昇することにより鉄の供給が減少し鉄欠乏に陥りやすい 2) 若年妊娠は鉄欠乏の危険因子となり, 母体の鉄欠乏を介して, 子どもの乳児期鉄欠乏の原因となる 乳児の鉄欠乏のリスクは妊娠中, さらには妊娠前に遡る 成長過程で鉄欠乏に陥りやすい時期とその原因を念頭に置いて, 必要十分な鉄分が摂取されていることを確認する必要がある 乳児期の栄養と鉄欠乏 すでに述べたように, 正期産児であれば生後 カ月までは鉄欠乏は起こりにくいが, それ以降は鉄欠乏のリスクが高まる 生後 ~12カ月の乳児の鉄摂取量について, 日本人の食事摂取基準 (2015 年版 ) によれば, 推定平均必要量は3.5 mg/ 日, 推奨量は5.0 mg/ 日である 3) 現在日本で市販されている人工乳に含まれる鉄分はおおよそ7.8 mg/l( 各製品ホームページ参照 ) であるのに対して母乳中の鉄分は0.43 mg/l である 基準哺乳量を0.78 L/ 日とすると一般乳では鉄 mg/ 日, 母乳では0.34 mg/ 日と母乳栄養で圧倒的に鉄の供給が少ない 3) 人工乳中の鉄の bioavailability は10 % 程度であるのに対して, 母乳中の鉄の bioavailability は50 % 前後と高いことを考慮しても, 母乳栄養単独では鉄の摂取不足が起こる可能性が高い 乳児期後半に離乳食が進まない場合には, 特に母乳栄養児では鉄欠乏症に至る可能性が大である 米国では母乳栄養児の鉄欠乏を懸念し, 鉄を強化された離乳食が市販されているが, 日本の市販の離乳食で鉄が強化されたものは今のところ存在しない 厚生労働省の授乳 母乳支援ガイド ( 平成 19 年 ) によると生後 カ月では34.7 % が母乳栄養単独である 4) つまり日本の乳児の少なくとも 割弱が鉄欠乏のハイリスクグループであるといえる 母乳の重要性については十分に知られていることではあるが, 特に乳児期後半で離乳食が進まない場合には, 過度に母乳栄養単独にこだわりすぎないことも必要である 乳幼児の神経発達と鉄 鉄はヘモグロビンやチトクロムなどのヘム蛋白に含まれ, 酸素運搬やエネルギー産生に関わり, 全身組織の発育, 機能発達に必須である 体内の鉄の ~ 割はヘモグロビンの形で赤血球内に存在し, 残りが血清鉄や貯蔵鉄として存在する 乳児期早期には, 摂取した鉄は赤血球の産生に優先的に利用され, 脳を含むそのほかの臓器への供給は後回しにされる 5) そのため, 鉄欠乏症から鉄欠乏性貧血に至る前に, すでに脳に存在する鉄は減少している 鉄欠乏性貧血からの回復過程でも同様の現象がみられ, 鉄欠乏状態にある脳への鉄供給が行われるのは, ヘモグロビン濃度が十分に回復してからである 6) さらに, 脳血液関門における鉄輸送は髄 Ḝ 化が活発に行われる乳児期において最も効率がよく 7), 鉄補充がその時期を逸して遅れれば, 神経発達の観点から鉄補充の貴重なタイミングを逃しかねない 実際, 青年期以降の鉄欠乏による神経症状は治療により可逆性であるが 8), 乳児期の鉄欠乏状態は, 十分に治療されてもなお長期的に執行機能や認知機能に悪影響を及ぼすことが知られている 9) 故に, 鉄欠乏の治療にはʠ 臨界期 ʡが存在する 鉄欠乏の神経発達への影響は, 形態への影響, 生化学的な影響, エネルギー代謝への影響に分けられる 10) 鉄は正常な神経発達や一部の脳細胞の分化に必須である 鉄欠乏によって, シナプス結合が減少し, 海馬や線条体の構造変化が起こることが動物実験で明らかになった 11)12) 鉄欠乏はさらにオリゴデンドロサイトにも影響し, 髄 Ḝ 化の障害を来す 13) 鉄は, 運動発達, 睡眠サイクルの確立, 学習や記憶において重要なモノアミン ( ドーパミンやノルエピネフリンなど ) の合成 代謝に関わっている 脳はすべての臓器のなかで最も酸素需要が高いが, 鉄欠乏はエネルギー代謝にも悪影響を及ぼすことが明らかとなっている 14) 鉄欠乏は短期的にも長期的にも神経発達に影響を及ぼす 鉄欠乏性貧血の有無にかかわらず, 乳児期の鉄欠乏症は, 臆病な性格で新しいものへの関心が低いなど社会発達面の問題の原因となったり, その後の言語理解 発語の遅れなどに悪影響を及ぼす可能性がある 15) また生後 ~24カ月の鉄欠乏は知能低下, 処理速度の低下, 注意 運動 認知 行動面の機能低下, 睡眠覚醒リズムの乱れに関連しているという 鉄欠乏性貧血にまで至った場合は, 十分な鉄剤の補充を行ってもこれら脳機能の障害の一部は改善しないことも明らかになってきている たとえば, 運動機能が鉄補充による早期治療で改善する一方, 行動障害は 194 (74) 小児科臨床 Vol.72 No.2 2019

成人期まで持続する場合があるという 9)16) 鉄欠乏性貧血に陥る前に, 鉄欠乏症を予防することが肝要である 神経疾患と鉄代謝 鉄欠乏といくつかの神経疾患の関連が具体的に示唆されている 憤怒けいれん(breath-holding spells;bhs) 大泣きをした後に呼気状態のまま呼吸が停止し, 顔色不良, 意識消失, 全身の脱力もしくはけいれんを起こす病態である 多くは生後 カ月 ~, 歳ころにみられ, てんかんや知的障害などを残さず, 年齢とともに消失していく予後良好な疾患である 原因として自律神経の調節障害が推定されるが病態生理については明らかでない点も多い 鉄がモノアミン代謝や中枢神経系の酵素, 神経伝達物質の機能に関わっているためと想定されており, 鉄剤が有効との報告もある 17) コクランレビューは, 鉄補充は憤怒けいれんの頻度および重症度の軽減に有用と報告している 鉄欠乏性貧血を有する症例では特に有益であり, ヘモグロビン濃度が正常の場合でも有用な可能性があると述べている 18) 鉄剤治療 ( ~ mg/kg/ 日 ) を行った場合, 数日以内に効果がみられることが多い ひきつけ発作が消失するだけではなく, 性格が朗らかになり, すぐに泣き止むなど情緒面の改善を認めたとする報告もある 治療期間については症状をみながら16 週間継続し, その後漸減しながら カ月から 年を目安に中止する 17) むずむず脚症候群(Restless leg syndrome;rls) 下肢を中心とした四肢に不快な異常感覚が生じ, これにより入眠困難などの睡眠の問題を伴う 乳児期よりみられ, 女性に多い 家族発症があり遺伝子変異も特定されているが, 妊娠中, 透析中にもみられることから鉄欠乏も危険因子と考えられている ドパミン作動薬により改善することから, 鉄欠乏によるドパミン神経系の機能異常が想定されている 小児においては, 注意欠陥多動症 (ADHD) との関連も注目されている 19) ADHD においてもドパミン神経系の機能異常が推定されていることから, 両者に共通した病態が想定される RLS において, 血清フェリチン値と重症度が負の相関を示すことが知られている 薬物治療の第一選択はドパミン作動薬であるが, 血清フェリチン値が50 ng/ml 以下であれば鉄剤の効果が期待できる 投与量に関して一定の見解はないが, ~ mg/kg/ 日を カ月間投与しフェリチン値を再検することが勧められている 20) 熱性けいれん 複数の研究が熱性けいれんと鉄欠乏の関連を調べて いる 21)22) 単純型熱性けいれん群では正常群と比し て, 鉄欠乏症 ( 血清フェリチン低値 ) の割合が 倍高 いことが示された 一方, 鉄欠乏性貧血の頻度に関し ては両群で有意差は認めなかった また再発率などに 関する記述はみられない 熱性けいれんでは, 必要に 応じて鉄剤の補充を行うことが望ましい 鉄欠乏性貧血の診断および治療 WHO によれば, 生後 カ月から 歳までの乳幼児 の貧血の定義はヘモグロビン濃度 11 g/dl 未満, ヘ マトクリット値 33 % 未満である 鉄欠乏初期では, ヘモグロビン濃度, ヘマトクリット値, 血清鉄のいず れも正常だが, 肝臓およびマクロファージの貯蔵鉄の みが減少している 鉄欠乏が進行するとまず平均赤血 球容積 (Mean corpuscular volume;mv) が低下 し, 次いでヘマトクリット値とヘモグロビン濃度が低 下する この時期には貯蔵鉄のみならず血清鉄も低下 する MV 70 fl 未満, フェリチン 10~12 μg/dl 未満が鉄欠乏の基準とされる 鉄欠乏性貧血と診断したら, 鉄剤の経口投与を行 う 治療に反応してヘモグロビン濃度が上昇すること を確認することも診断上重要である 鉄剤として ~ mg/kg を 日 回に分けて食間に投与する 鉄欠 乏性貧血の場合, 通常 ~ 日で網状赤血球の増加が みられ, 引き続いてヘモグロビン濃度が上昇する 鉄 剤 12 週間投与によるヘモグロビン濃度 g/dl 以上 の上昇を有意な効果とする 鉄剤投与の副作用は少な く, 腹痛, 便秘, 軟便などである 特にカルシウムな どを多く含有する乳製品とともに摂取すると吸収率が 低下するため, 空腹時に摂取する 米国小児科学会は, 歳の時点で鉄欠乏性貧血のス クリーニングとしてヘモグロビン濃度の測定および鉄 欠乏のリスクファクター評価 ( 早産児, 低出生体重 児, 鉛への曝露, 生後 カ月を超えての母乳単独栄 養, 早期の牛乳投与, 鉄分補充のされていない離乳 食 ) を行うことを推奨している 23) しかしこれでも 鉄欠乏状態の早期発見に有効とは言い難く, さらに, ヘモグロビン濃度を測定しただけで介入がなされない という事態も予想される 一方, わが国ではこのよう なスクリーニングの機会すら決められていないのが実 情である 乳児期早期の鉄欠乏状態による神経障害を予防するために 鉄は神経発達に必須であり, 鉄欠乏状態が長く続く と, 治療後も発達への長期的影響が懸念されている 9) またヘモグロビン濃度が低下する前の鉄欠乏症の血液 小児科臨床 Vol.72 No.2 2019 195 (75)

表新生児に対する鉄剤投与のガイドライン 2017 推奨一覧 ( 文献 24 より一部改変 ) Q どのような新生児に対して, 経口鉄剤投与を行うべきか? 推奨 1-1 早産児に対しては, 栄養法にかかわらず, 新生児期に経口鉄剤投与を行うことが望ましい. 推奨 1-2 正期産児に対しては, 栄養法にかかわらず, 新生児期に経口鉄剤投与を行う必要性は低い. Q 新生児に対して, 経口鉄剤投与はどのように投与すべきか? 推奨 2 新生児に対しては, 経腸栄養が100 ml/kg/ 日を超えた時点で, 経口鉄剤を標準的な用量 ( ~ mg/kg/ 日, 最大 mg/kg/ 日 ) での投与が提案される. 補足 2-1 早産児に対しては, 栄養法にかかわらず, 離乳食が確立するまで経口鉄剤投与を行うことが提案される. 補足 2-2 正期産児に対しては, 栄養法にかかわらず, 鉄欠乏の症状があれば, 離乳食が確立するまで経口鉄剤投与を行うことが提案される. Q 輸血歴のある新生児に対して, 経口鉄剤投与を行うべきか? 推奨 3 輸血歴のある新生児に対しては, 経口鉄剤投与を行ってもよい. Q 輸血歴のある新生児に対して, 経口鉄剤はどのように投与すべきか? 推奨 4 輸血歴のある新生児に対しては, 総輸血量および鉄貯蔵量を評価しながら, 経口鉄剤投与を行うことが奨められる. Q エリスロポエチン製剤投与中の新生児に対して, 経口鉄剤投与を行うべきか? 推奨 5 エリスロポエチン製剤投与中で, 未熟児貧血のリスクのある新生児に対しては, 経口鉄剤投与を行うことが奨められる. Q エリスロポエチン製剤投与中の新生児に対して, 経口鉄剤はどのように投与すべきか? 推奨 6 エリスロポエチン製剤投与中の新生児に対しては, 鉄貯蔵量を評価しながら経口鉄剤を投与する必要がある. 特にエリスロポエチン製剤投与後期には鉄欠乏に注意する. Q 新生児に対して, 経口鉄剤投与中のモニタリングはどのようにすべきか? 推奨 7 科学的根拠をもとに推奨できるモニタリング法はない. なし Q 新生児に対する経口鉄剤投与の副作用は何か? 推奨 8 経口鉄剤投与中は消化器症状に注意する. D なし なし 学的基準は確立しておらず, そもそも貧血に至るまで積極的に検査されないことも多い 重要なことは鉄欠乏性貧血への進行を予防するために, そもそも乳児を鉄欠乏症にしないことである そのためには新生児期, さらには胎児期から鉄欠乏の予防が重要である 米国小児科学会では, 母乳栄養単独の場合, 生後 カ月の時点で鉄欠乏状態に陥っている可能性を考慮し, 生後 カ月からルーチンに mg/kg/ 日の鉄をシロップで補充することを推奨している 母乳と一般乳の混合栄養でも, 哺乳量の半分以上が母乳である場合は同様である 投与期間は鉄分が含まれた離乳食が十分量摂取できるまでとしている 早産児については, mg/kg/ 日の鉄を生後 カ月から12カ月まで補充することが推奨されている 23) 鉄欠乏による神経発達障害を未然に防ぐためには生後 カ月からの鉄剤投与で十分とする根拠は今のところない 出生時の鉄欠乏は乳児期早期の鉄欠乏のリスクであることから, 出生時さらには胎児期に十分な鉄が供給されることが重要である 妊娠中の母体への鉄剤投与, 臍帯クランプの遅延やミルキング法の検討, 推奨時期より早期からの鉄剤補充などについて現在研究が重ねられている 1) 2016 年に日本新生児成育医学会学術集会において 新生児に対する鉄剤投与のガイドライン が発表された ( 表 ) 24) 2003 年に発行された 早産児に対する鉄剤投与のガイドライン ではあくまで 鉄剤投与によって早産児が NIU を退院するまでに正期産児の鉄貯蔵状態に近づくこと が目標とされていたが, 新ガイドラインでは 早産児 低出生体重児の重症貧血予防と神経発達と成長の向上を目的 とされている さらに早産児のみでなく正期産児も含めるように 新生児に対する と変更された このガイドラインでは胎児期鉄欠乏の予防には言及されていないが, これまで正期産児に対する鉄補充のガイドラインすらなかったわが国において重要な意味を持つといえる おわりに 鉄欠乏は世界的にも最も頻度の高い微量元素欠乏であり, 日本でも乳児における鉄欠乏症の割合は高いと予想される 乳児期の鉄欠乏症は長期的な中枢神経系の発育 発達に影響を与えることが明らかとなっており, その影響は一部不可逆的である 鉄欠乏性貧血に至ってから診断 治療するのではなく, 前段階である鉄欠乏症を来さないために, 新生児, 小児および妊婦の診療に携わるすべての医療者がそのリスクを理解し, 予防に努める必要がある 196 (76) 小児科臨床 Vol.72 No.2 2019

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Those who were born preterm, with low birth weight, or exclusively breastfed are at high risk of iron deficiency. urrently in Japan, no iron-enhanced complementary foods are available and universal screening for anemia is not routinely performed;both have been the norm in the United States. A major advancement was made in 2016 when the iron administration guidelines in newborns was published by the Japan Society for Neonatal Health and Development. All health care providers involved with pediatric care should be aware of possible iron deficiency; proactive intervention for iron deficiency should be considered during infancy. Key Words:iron deficiency anemia, iron deficiency, neurodevelopment, infancy 小児科臨床 Vol.72 No.2 2019 197 (77)