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1 予 算 の 姿 ( 平 成 25 当 初 予 算 ) 長 野 県 財 政 の 状 況 H 現 在 長 野 県 の 予 算 を 歳 入 面 から 見 ると 自 主 財 源 の 根 幹 である 県 税 が 全 体 の5 分 の1 程 度 しかなく 地 方 交 付 税 や 国 庫 支

平成24年度税制改正要望 公募結果 153. 不動産取得税

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は 固 定 流 動 及 び 繰 延 に 区 分 することとし 減 価 償 却 を 行 うべき 固 定 の 取 得 又 は 改 良 に 充 てるための 補 助 金 等 の 交 付 を 受 けた 場 合 にお いては その 交 付 を 受 けた 金 額 に 相 当 する 額 を 長 期 前 受 金 とし

1. 決 算 の 概 要 法 人 全 体 として 2,459 億 円 の 当 期 総 利 益 を 計 上 し 末 をもって 繰 越 欠 損 金 を 解 消 しています ( : 当 期 総 利 益 2,092 億 円 ) 中 期 計 画 における 収 支 改 善 項 目 に 関 して ( : 繰 越

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(3) 善 通 寺 市 の 状 況 善 通 寺 市 においては 固 定 資 産 税 の 納 期 前 前 納 に 対 する 報 奨 金 について 善 通 寺 市 税 条 例 の 規 定 ( 交 付 率 :0.1% 限 度 額 :2 万 円 )に 基 づき 交 付 を 行 っています 参 考 善 通 寺

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第 3 四 半 期 運 用 状 況 の 概 要 第 3 四 半 期 末 の 運 用 資 産 額 は 2,976 億 円 となりました 第 3 四 半 期 の 修 正 総 合 収 益 率 ( 期 間 率 )は +1.79%となりました なお 実 現 収 益 率 は +0.67%です 第 3 四 半 期

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その 他 事 業 推 進 体 制 平 成 20 年 3 月 26 日 に 石 垣 島 国 営 土 地 改 良 事 業 推 進 協 議 会 を 設 立 し 事 業 を 推 進 ( 構 成 : 石 垣 市 石 垣 市 議 会 石 垣 島 土 地 改 良 区 石 垣 市 農 業 委 員 会 沖 縄 県 農

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経 常 収 支 差 引 額 の 状 況 平 成 22 年 度 平 成 21 年 度 対 前 年 度 比 較 経 常 収 支 差 引 額 4,154 億 円 5,234 億 円 1,080 億 円 改 善 赤 字 組 合 の 赤 字 総 額 4,836 億 円 5,636 億 円 800 億 円 減

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No.7 アメリカ 合 衆 国 小 規 模 事 例 (そ4) 助 金 も 財 源 になっている しかし 小 規 模 事 業 体 では 連 邦 政 府 から 基 金 はもちろん 市 から 補 助 金 もまったくない が 実 状 である すなわち 給 人 口 が25 人 から100 人 規 模 小 規


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(6) 事 務 局 職 場 積 立 NISAの 運 営 に 係 る 以 下 の 事 務 等 を 担 当 する 事 業 主 等 の 組 織 ( 当 該 事 務 を 代 行 する 組 織 を 含 む )をいう イ 利 用 者 からの 諸 届 出 受 付 事 務 ロ 利 用 者 への 諸 連 絡 事 務

1. 前 払 式 支 払 手 段 サーバ 型 の 前 払 式 支 払 手 段 に 関 する 利 用 者 保 護 等 発 行 者 があらかじめ 利 用 者 から 資 金 を 受 け 取 り 財 サービスを 受 ける 際 の 支 払 手 段 として 前 払 式 支 払 手 段 が 発 行 される 場 合

第316回取締役会議案

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注 記 事 項 (1) 四 半 期 財 務 諸 表 の 作 成 に 特 有 の 会 計 処 理 の 適 用 : 無 (2) 会 計 方 針 の 変 更 会 計 上 の 見 積 りの 変 更 修 正 再 表 示 1 会 計 基 準 等 の 改 正 に 伴 う 会 計 方 針 の 変 更 : 無 2 1


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4. その 他 (1) 期 中 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動 ( 連 結 範 囲 の 変 更 を 伴 う 特 定 子 会 社 の 異 動 ) 無 (2) 簡 便 な 会 計 処 理 及 び 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の 作 成 に 特 有 の 会 計 処 理 の 適 用 有

している 5. これに 対 して 親 会 社 の 持 分 変 動 による 差 額 を 資 本 剰 余 金 として 処 理 した 結 果 資 本 剰 余 金 残 高 が 負 の 値 となるような 場 合 の 取 扱 いの 明 確 化 を 求 めるコメントが 複 数 寄 せられた 6. コメントでは 親

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2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

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4. その 他 (1) 期 中 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動 ( 連 結 範 囲 の 変 更 を 伴 う 特 定 子 会 社 の 異 動 ) 無 (2) 簡 便 な 会 計 処 理 及 び 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の 作 成 に 特 有 の 会 計 処 理 の 適 用 有

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平 成 27 年 度 第 3 四 半 期 運 用 状 況 の 概 要 第 3 四 半 期 の 運 用 資 産 額 は 2 兆 4,339 億 円 となりました 第 3 四 半 期 の 修 正 総 合 収 益 率 ( 期 間 率 )は +2.05%となりました 実 現 収 益 率 は +1.19%です

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4. その 他 (1) 期 中 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動 ( 連 結 範 囲 の 変 更 を 伴 う 特 定 子 会 社 の 異 動 ) 無 新 規 社 ( 社 名 ) 除 外 社 ( 社 名 ) (2) 簡 便 な 会 計 処 理 及 び 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の


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Transcription:

金 融 の 発 展 段 階 による 分 類 からの 考 察 調 査 部 研 究 員 大 嶋 秀 雄 目 次 1.はじめに 2. 東 南 アジアの 銀 行 セクター (1) 国 際 的 な 位 置 付 け (2) 金 融 セクターの 発 展 段 階 (3) 二 つのグループの 特 徴 3. 金 融 先 進 国 の 銀 行 セクター(シンガポール マレーシア) (1)シンガポール (2)マレーシア (3) 金 融 先 進 国 のまとめ 4. 金 融 後 発 国 の 銀 行 セクター(インドネシア フィリピン) (1)インドネシア (2)フィリピン (3) 金 融 後 発 国 のまとめ 5. 展 望 (1) 金 融 先 進 国 および 金 融 後 発 国 の 銀 行 セクターの 展 望 (2)ASEAN 域 内 の 連 結 性 の 強 まりに 伴 う 変 化 6.リスク (1) 金 融 先 進 国 におけるリスク (2) 金 融 後 発 国 におけるリスク 7.おわりに 32 J R Iレビュー 2014 Vol.7, No.17

要 約 1. 日 本 企 業 の 東 南 アジアにおける 事 業 規 模 は 日 に 日 に 大 きくなっている 現 地 で 部 品 の 調 達 や 販 売 を 行 う 企 業 も 増 え 現 地 通 貨 による 金 融 ニーズの 拡 大 などから 地 場 銀 行 から 借 り 入 れを 行 う 日 本 の 企 業 も 多 い そのため 日 本 企 業 にとって 東 南 アジアの 金 融 市 場 の 重 要 性 が 増 している 2. 金 融 セクターの 発 展 段 階 からASEAN 各 国 を 金 融 先 進 国 と 金 融 後 発 国 に 分 類 できる 本 稿 では それぞれのグループの 代 表 的 な 国 として 金 融 先 進 国 からシンガポールとマレーシア 金 融 後 発 国 からインドネシアとフィリピンを 取 り 上 げ 分 析 を 行 う 3. 金 融 先 進 国 は 銀 行 総 与 信 や 銀 行 預 金 残 高 の 対 GDP 比 が100%を 超 えるなど 金 融 市 場 が 成 熟 してお り 成 長 余 地 は 相 対 的 に 小 さい 信 用 情 報 DBなどの 金 融 インフラや 資 本 市 場 が 整 備 されており 個 人 向 け 金 融 や 企 業 の 直 接 金 融 による 調 達 が 浸 透 している また 外 国 銀 行 の 参 入 を 促 すことで 金 融 市 場 の 高 度 化 を 図 っている 主 要 銀 行 は 海 外 展 開 に 積 極 的 で 税 前 利 益 の 約 4 割 を 海 外 から 得 ている 加 えて 投 資 銀 行 業 務 やPB 業 務 など 商 業 銀 行 業 務 以 外 を 強 化 する 動 きも 見 られる 4. 金 融 後 発 国 は 国 民 の 半 数 以 上 が 預 金 口 座 を 持 たないなど 金 融 が 浸 透 していない 上 位 の 銀 行 への 集 約 は 進 んでいるものの 一 方 で 多 くの 中 小 規 模 の 銀 行 が 存 在 する 地 場 銀 行 の 競 争 力 が 低 いことか ら 積 極 的 に 海 外 展 開 する 銀 行 はなく 国 内 においても 地 場 銀 行 を 保 護 する 傾 向 が 見 られる 中 小 企 業 や 個 人 の 信 用 力 を 計 量 的 に 把 握 することが 難 しく リテール 金 融 は 発 展 していない 資 本 市 場 が 未 発 達 であることから 大 企 業 も 間 接 金 融 に 依 存 しており 主 要 銀 行 はホールセール 金 融 が 中 心 となっ ている 5. 将 来 の 展 望 としては ASEAN 域 内 の 経 済 統 合 金 融 統 合 が 目 指 されていることから 金 融 後 発 国 では 金 融 包 摂 や 金 融 システムの 多 様 化 が 進 むだろう それにより これまで 難 しかったリテール 金 融 や 直 接 金 融 が 成 長 すると 考 えられる 一 方 金 融 先 進 国 では 外 国 銀 行 への 市 場 開 放 の 進 展 により 金 融 市 場 が 高 度 化 するとともに 主 要 銀 行 の 海 外 展 開 はさらに 進 むだろう また 国 際 銀 行 業 務 の 重 要 性 が 増 すことから 金 融 先 進 国 がすでに 持 つ 域 内 ネットワークの 価 値 が 高 まるとともに 国 内 業 務 中 心 の 金 融 後 発 国 の 銀 行 にも 海 外 展 開 が 求 められるだろう 6. 金 融 先 進 国 の 銀 行 セクターにおけるリスクとしては 次 の 二 つが 考 えられる 一 つ 目 は 展 開 国 の 景 気 変 調 が 母 国 の 銀 行 セクターに 悪 影 響 をもたらすリスクである 金 融 先 進 国 の 主 要 銀 行 は 積 極 的 に 海 外 展 開 を 行 っているものの 展 開 国 はアジア 地 域 が 中 心 で 特 定 国 への 偏 りも 見 られる そのため 主 要 な 展 開 国 において 景 気 変 調 が 起 きた 場 合 銀 行 業 績 全 体 へ 悪 影 響 が 及 ぶことが 予 想 される 加 え て 金 融 先 進 国 の 銀 行 セクターでは 上 位 行 への 集 約 が 進 んでおり 主 要 銀 行 の 母 国 における 市 場 シェ アが 大 きい 主 要 な 展 開 国 の 景 気 低 迷 により 主 要 銀 行 の 業 績 が 悪 化 した 場 合 母 国 でもリスクが 取 れ なくなり 母 国 の 銀 行 セクターに 悪 影 響 をもたらす 可 能 性 がある 二 つ 目 は 広 域 な 金 融 危 機 に 対 す る 政 府 対 応 能 力 の 限 界 である シンガポールやマレーシアは 人 口 が 少 なく 経 済 規 模 は 大 きくない J R Iレビュー 2014 Vol.7, No.17 33

それに 対 し 主 要 銀 行 は 多 国 籍 展 開 を 推 し 進 めている 自 国 経 済 の 規 模 に 対 して 銀 行 の 規 模 が 大 きく なりすぎると 万 一 アジア 通 貨 危 機 のような 広 域 な 金 融 危 機 が 発 生 した 場 合 政 府 の 対 応 能 力 を 超 え てしまい 十 分 に 救 済 できなくなる 懸 念 がある 7. 金 融 後 発 国 の 銀 行 セクターにおけるリスクとしては 次 の 四 つが 考 えられる 一 つ 目 は 未 発 達 な 金 融 システムである 金 融 インフラや 法 制 度 が 未 整 備 であり 金 融 監 督 の 仕 組 みも 十 分 とは 言 えず 金 融 システムの 脆 弱 性 は 否 めない 二 つ 目 は 地 場 銀 行 の 競 争 力 の 劣 後 である 金 融 後 発 国 の 地 場 銀 行 は 多 くの 分 野 でノウハウが 不 足 しており 資 金 調 達 力 も 低 い 競 争 力 を 高 められないまま 外 国 銀 行 の 参 入 を 許 すと 競 争 に 負 けて 現 在 の 市 場 シェアを 失 う 懸 念 がある 三 つ 目 は 市 場 の 過 熱 であ る 金 融 インフラの 整 備 や 外 国 銀 行 の 参 入 などにより 金 融 市 場 が 急 激 に 発 展 した 場 合 消 費 者 の 金 融 リテラシーが 低 いまま 多 様 な 金 融 サービスが 提 供 されることになり 金 融 市 場 が 過 熱 する 懸 念 がある 四 つ 目 は 景 気 低 迷 時 の 外 国 銀 行 の 撤 退 である 外 国 銀 行 に 過 度 に 依 存 すると 景 気 低 迷 時 に 外 国 銀 行 が 撤 退 や 事 業 縮 小 ( 短 期 貸 し 出 しの 回 収 )などを 進 め 金 融 市 場 が 急 激 に 冷 え 込 む 懸 念 がある 34 J R Iレビュー 2014 Vol.7, No.17

1.はじめに 東 南 アジアは 世 界 経 済 の 成 長 センターとして 注 目 されており 地 理 的 に 近 い 日 本 企 業 にとって 東 南 ア ジアの 位 置 付 けは 高 くなる 一 方 である そのなかで 近 年 東 南 アジアの 地 場 銀 行 から 資 金 調 達 を 行 う 日 本 企 業 が 増 えてきている 例 えば 自 動 車 などの 製 造 業 では 現 地 で 部 品 の 調 達 製 造 販 売 までを 行 うビジネス 形 態 が 一 般 化 しており 現 地 通 貨 の 調 達 に 地 場 銀 行 を 利 用 する 企 業 も 多 い このように 日 本 企 業 にとって 東 南 アジアの 金 融 市 場 の 重 要 性 が 増 してきていると 言 える 一 方 東 南 アジアの 金 融 市 場 は 依 然 として 発 展 途 上 である シンガポールやマレーシアなど 金 融 立 国 を 目 指 す 一 部 の 国 では 先 進 国 並 みに 発 展 しているものの 多 くの 国 では 依 然 として 十 分 に 浸 透 してい ない 銀 行 総 与 信 の 対 GDP 比 は 総 じて50%を 下 回 る 水 準 であり 実 体 経 済 対 比 金 融 セクターの 成 長 が 遅 れている 東 南 アジア 経 済 の 発 展 のためにも 金 融 市 場 が 実 体 経 済 とともに 成 長 し 機 能 していく ことが 不 可 欠 である そこで 本 稿 では 東 南 アジアの 金 融 とくにその 中 核 をなす 銀 行 セク ターに 着 目 して 分 析 を 行 う 東 南 アジアの 銀 行 セクターの 全 体 像 をとらえるため 本 稿 では 東 南 アジア 各 国 を 金 融 先 進 国 金 融 後 発 国 の 二 つのグループに 分 類 した これは 国 ごとに 経 済 発 展 の 段 階 や 産 業 構 造 がまちまちであ る 東 南 アジアでは 銀 行 セクターの 特 徴 も 国 ごとに 大 きく 異 なり 各 国 を 個 々に 分 析 しても 全 体 像 が 見 えにくいためである 各 国 を 金 融 セクターの 発 展 段 階 により 二 つのグループに 分 類 し 二 つのグループ を 対 比 させることで 東 南 アジア 地 域 の 銀 行 セクターの 特 徴 を 明 確 化 する 加 えて 二 つのグループの 関 係 性 やASEAN 経 済 統 合 などの 外 部 環 境 の 変 化 を 踏 まえ 東 南 アジアの 銀 行 セクターの 将 来 の 展 望 と リスクについて 考 察 を 行 う なお 分 析 を 行 う 際 には 各 グループから 代 表 的 な2カ 国 を 選 択 して 用 い る( 金 融 先 進 国 :シンガポール マレーシア 金 融 後 発 国 :インドネシア フィリピン) 2. 東 南 アジアの 銀 行 セクター (1) 国 際 的 な 位 置 付 け まず 東 南 アジアの 銀 行 が 世 界 のなかでどのような 位 置 付 けにあるのかを 見 てみよう( 図 表 1) 世 界 主 要 国 と 東 南 アジア 地 域 の 大 手 銀 行 について 規 模 ( )と 収 益 力 (ROA)を 比 較 すると 東 南 アジアの 銀 行 は 収 益 力 は 総 じて 高 いものの 規 模 は 圧 倒 的 に 小 さい 東 南 アジアで 最 大 であるシン ガポール 最 大 手 銀 行 のDBSでも 世 界 の 大 手 銀 行 の10 分 の1 程 度 でしかない シンガポールやマレーシ アの 銀 行 は 韓 国 や 台 湾 の 大 手 銀 行 と 規 模 では 同 水 準 である なお 邦 銀 と 比 較 した 場 合 マレーシア 最 大 手 銀 行 のMaybankが 横 浜 銀 行 とほぼ 同 じ 資 産 規 模 であり シンガポールのDBSはその 約 2 倍 である 次 に 東 南 アジアの 国 同 士 で 比 較 する( 図 表 2) ASEAN 主 要 6カ 国 の 大 手 銀 行 の 資 産 規 模 を 比 べ ると 大 きいほうからシンガポール マレーシア タイ インドネシア フィリピン ベトナムの 順 と なる 大 手 銀 行 の 収 益 力 では インドネシアが 高 いものの そのほかの 国 はおおむね 同 程 度 である 国 有 企 業 宛 融 資 が 中 心 であるベトナムはやや 低 い (2) 金 融 セクターの 発 展 段 階 東 南 アジアは 国 ごとに 多 様 な 特 徴 を 持 つ 地 域 であり 金 融 に 関 しても 国 ごとの 違 いが 大 きく 全 体 像 が J R Iレビュー 2014 Vol.7, No.17 35

つかみにくい そこで 全 体 像 をつかむために 各 国 を 金 融 セクターの 発 展 段 階 から 金 融 先 進 国 と 金 融 後 発 国 の 大 きく 二 つのグループに 分 類 した 金 融 セクターの 発 展 段 階 を 測 る 指 標 としては 経 済 規 模 に 対 する 銀 行 セクターの 大 きさ ( 総 与 信 GDP 比 銀 行 預 金 GDP 比 ) 国 民 の 金 融 アクセス 状 況 ( 銀 行 口 座 保 有 率 ) 金 融 インフラの 整 備 状 況 ( 人 口 当 たりATM 台 数 ) 経 済 規 模 に 対 する 直 接 金 融 市 場 の 大 きさ ( 株 式 時 価 総 額 GDP 比 社 債 残 高 GDP 比 )を 用 いた( 図 表 3) これらの 指 標 によると ブルネイを 除 く9カ 国 では シンガポール マレーシア タイの3カ 国 とそ れ 以 外 の6カ 国 の 間 に 大 きな 隔 たりが 見 られる そこで 以 下 では 前 者 の3カ 国 を 金 融 先 進 国 後 者 の6カ 国 を 金 融 後 発 国 と 定 義 する 金 融 先 進 国 では 総 与 信 GDP 比 や 銀 行 預 金 残 高 GDP 比 がおおむね100%を 超 えており 国 民 の3 分 の 2 以 上 が 銀 行 口 座 を 保 有 している 直 接 金 融 については ややばらつきがあるものの 一 定 の 資 本 市 場 の 形 成 が 進 んでいる 36 J R Iレビュー 2014 Vol.7, No.17

金 融 先 進 国 金 融 後 発 国 ( 図 表 3) 東 南 アジア 各 国 の 金 融 セクターの 発 展 段 階 による 分 類 名 目 GDP 人 口 (10 億 US$) (100 万 人 ) マクロ 指 標 銀 行 の 浸 透 度 金 融 インフラ 直 接 金 融 一 人 当 たり 名 目 GDP (US$) 総 与 信 GDP 比 預 金 GDP 比 口 座 保 有 率 ATM 台 数 ( 台 /10 万 人 ) 時 価 総 額 GDP 比 社 債 残 高 GDP 比 シンガポール 274.7 5.3 51,709 99.5 150.1 98.2 60.2 150.8 31.6 マレーシア 303.5 29.2 10,381 134.5 146.3 66.2 56.4 156.9 42.8 タ イ 366.0 66.8 5,480 168.9 99.7 72.7 77.9 104.7 15.5 フィリピン 250.2 96.7 2,587 50.9 37.8 26.6 17.7 105.6 5.0 インドネシア 878.2 246.9 3,557 42.6 48.2 19.6 16.5 45.2 2.3 ベトナム 141.7 88.8 1,596 115.4 12.2 21.4 20.0 23.2 0.8 ラオス 9.3 6.6 1,399 26.5 28.0 26.8 8.5 - - カンボジア 14.1 14.9 946 33.8 32.0 3.7 6.1 - - ミャンマー - 52.8-24.6 6.5 - - - - その 他 ブルネイ 17.0 0.4 41,127 13.5 60.4-80.5 - - ( 資 料 )World Bank, CEIC, ADBなどより 日 本 総 合 研 究 所 作 成 ( 注 ) 各 データの 年 は 以 下 の 通 り 名 目 GDP 人 口 一 人 当 たり 名 目 GDP 時 価 総 額 GDP 比 社 債 残 高 GDP 比 :2012 年 総 与 信 GDP 比 :2012 年 ただし ラオス2010 年 ミャンマー2004 年 預 金 GDP 比 :2011 年 ただし ラオス2010 年 ミャンマー2004 年 シンガポール マレーシア フィリピン インドネシア2012 年 口 座 保 有 率 :2011 年 ATM 台 数 :2011 年 ただしラオス2010 年 J R Iレビュー 2014 Vol.7, No.17 37

一 方 金 融 後 発 国 では 総 与 信 GDP 比 や 銀 行 預 金 残 高 GDP 比 はおおむね50%を 下 回 っており 国 民 の 半 数 以 上 が 依 然 として 銀 行 口 座 を 保 有 していない 直 接 金 融 は 総 じて 未 発 達 である 本 稿 では 金 融 先 進 国 金 融 後 発 国 から それぞれのグループを 代 表 する2カ 国 を 選 択 し 合 計 4カ 国 について 銀 行 セクターおよびその 主 要 銀 行 ( 上 位 3 4 行 )の 分 析 を 行 った 金 融 先 進 国 からは 金 融 セクターの 発 展 段 階 の 高 さを 基 準 として シンガポールとマレーシアを 選 択 した タイは 一 部 の 指 標 ではマレーシアよりも 高 い 数 値 となっているものの 直 接 金 融 が 未 発 達 であり 主 要 銀 行 の 規 模 もマ レーシアに 劣 っている( 図 表 4)ことから ここでは 除 外 した 一 方 金 融 後 発 国 からは 金 融 セクタ ーが 相 対 的 に 発 展 している 国 のうち 一 定 の 経 済 規 模 市 場 規 模 のあるインドネシアとフィリピンを 対 象 とした なお ベトナムの 総 与 信 GDP 比 が 高 いのは 国 策 で 国 有 企 業 宛 に 積 極 的 に 資 金 を 供 給 して いるためである 順 位 銀 行 名 ( 図 表 4) 東 南 アジア 主 要 20 行 ( ) 所 在 国 (100 万 US$) 順 位 銀 行 名 所 在 国 (100 万 US$) 1 DBS シンガポール 288,544 11 Bank Mandiri インドネシア 65,731 2 OCBC シンガポール 241,883 12 RHB Capital マレーシア 61,824 3 UOB シンガポール 206,702 13 BRI インドネシア 57,015 4 Maybank マレーシア 161,811 14 Hong Leong FG マレーシア 53,409 5 CIMB マレーシア 110,211 15 BCA インドネシア 45,811 6 Public Bank マレーシア 89,797 16 AMMB Holdings マレーシア 41,118 7 Bangkok Bank タ イ 78,965 17 Bank of Ayudhya タ イ 34,995 8 Siam Commercial Bank タ イ 74,103 18 BNI インドネシア 34,468 9 Krung Thai Bank タ イ 73,576 19 Thanachart Capital タ イ 33,427 10 Kasikornbank タ イ 67,820 20 BDO Unibank フィリピン 30,210 ( 資 料 )The Asian Banker (THE ASIAN BANKER 500 2013-2014Edition) (3) 二 つのグループの 特 徴 つぎに 4カ 国 の 銀 行 セクターおよび 主 要 銀 行 の 各 種 指 標 ( 図 表 5)から 二 つのグループの 共 通 の 特 徴 と 異 なる 特 徴 をまとめてみよう 1 共 通 の 特 徴 : 安 定 株 主 大 きな 国 内 シェア 一 定 の 収 益 力 など 4カ 国 に 共 通 する 特 徴 としては まず 多 くの 銀 行 が 政 府 や 政 府 系 ファンド 財 閥 の 影 響 下 にあり 安 定 的 な 株 主 を 確 保 している 点 があげられる 加 えて 上 位 行 への 集 約 が 進 んでいる 点 でも 共 通 してい る 各 国 の 主 要 銀 行 ( 上 位 3 4 行 )はいずれも 合 計 で4 6 割 の 市 場 シェア( ベース)を 確 保 している これは 日 本 における3メガバンク( 注 1)と 同 等 かそれ 以 上 の 水 準 である とくにシンガ ポールとマレーシアでは 上 位 行 への 集 約 が 進 んでおり( 注 2) 主 要 銀 行 の 市 場 シェアが 高 い 収 益 力 に 関 しても 各 国 の 主 要 銀 行 ともROAがおおむね1% 以 上 であり 一 定 水 準 を 確 保 できている 2 異 なる 特 徴 : 金 融 市 場 の 成 長 余 地 個 人 向 け 金 融 銀 行 の 信 用 力 など 異 なる 特 徴 としては まず 金 融 市 場 の 成 長 余 地 があげられる 金 融 先 進 国 では 預 金 や 貸 出 残 高 の 対 GDP 比 がすでに100%を 超 えているなど 市 場 の 成 熟 度 が 高 く 成 長 余 地 が 相 対 的 に 少 ない 一 方 で 金 融 後 発 国 では 国 民 の 金 融 アクセスが 依 然 低 く 預 金 や 貸 出 残 高 の 対 GDP 比 も50% 以 下 の 水 準 であり 市 場 の 成 長 余 地 は 大 きい 加 えて 金 融 後 発 国 には 人 口 が 多 い 国 が 多 い インドネシアは 約 2.5 億 人 38 J R Iレビュー 2014 Vol.7, No.17

( 図 表 5) 対 象 4カ 国 の 銀 行 セクターおよび 主 要 銀 行 の 各 種 指 標 マクロ 指 標 (2012 年 ) 商 業 銀 行 貯 蓄 銀 行 数 ( 銀 行 数 :2013 年 外 銀 シェア 進 出 行 :2012 年 ) 金 融 先 進 国 金 融 後 発 国 シンガ ポール マレー シア インド ネシア フィリ ピン 名 目 人 口 一 人 当 たり GDP (100 万 人 ) 名 目 GDP (10 億 US$) (US$) 地 場 外 資 外 国 銀 行 シェア 5.3 275 51,709 123 行 6 行 117 行 37.5 29.2 304 10,381 27 行 8 行 19 行 22.6 246.9 878 3,557 120 行 96 行 24 行 30.7 96.7 250 2,587 106 行 89 行 17 行 13.7 主 要 進 出 外 国 銀 行 HSBC( 英 ) Standard Charterd( 英 ) CITI( 米 ) UOB(シンガポール) HSBC( 英 ) OCBC(シンガポール) Standard Charterd( 英 ) CIMB(マレーシア) ANZ( 豪 ) Standard Charterd( 英 ) Maybank(マレーシア) CITI( 米 ) HSBC( 英 ) CIMB(マレーシア) Standard Charterd( 英 ) 金 融 先 進 国 金 融 後 発 国 シンガ ポール マレー シア インド ネシア フィリ ピン 上 位 3 行 シェア 62.5 46.1 38.1 40.3 上 位 3 行 株 主 構 成 主 要 銀 行 指 標 (2012 年 ) 金 融 インフラ(2011 年 ) 商 業 銀 行 部 門 (2012 年 ) ROA ROE NIM ( 注 3) 格 付 ATM 台 数 (10 万 人 当 たり) 口 座 保 有 率 貸 出 GDP 比 預 金 GDP 比 預 貸 率 1 政 府 系 ファンド 1.1~1.7 2-3 11.2~17.9 1.7~1.9 AA-~AA 60.2 98.2 125.7 150.1 83.7 財 閥 1-3 政 府 系 1.2~1.9 16.0~24.1 2.4~3.1 BBB~A- 56.4 66.2 116.6 146.3 79.7 ファンド 1-2 政 府 3.5~5.2 22.6~38.7 5.5~8.4 BB~BB+ 16.5 19.6 32.6 37.8 83.6 3 財 閥 1-3 財 閥 1.2~1.9 11.3~17.5 3.4~3.6 BBB- 17.7 26.6 34.4 48.2 71.6 ( 資 料 )World bank CEIC トムソンロイター 各 社 AR 各 国 中 央 銀 行 などより 日 本 総 合 研 究 所 作 成 ( 注 1) 銀 行 数 にはイスラム 銀 行 を 含 まない ( 注 2) 貸 出 GDP 比 はCEICのデータを 用 いて 算 出 したもので 図 表 3の 総 与 信 GDP 比 ( 資 料 :World bank)とは 一 致 しない ( 注 3)NIM:Net interest margin( 純 金 利 マージン) フィリピンも 約 1 億 人 の 人 口 を 抱 えてお り 将 来 的 に 大 きな 市 場 となりうる 国 々 である 次 に 個 人 向 け 金 融 の 割 合 に 差 がある ( 図 表 6) 個 人 向 け 金 融 は 一 般 消 費 者 を 対 象 としていることから 信 頼 できる 個 人 信 用 情 報 DBや 所 得 証 明 の 仕 組 みな どの 金 融 インフラ 法 制 度 の 整 備 が 必 要 ( 図 表 6) 対 象 4カ 国 の 銀 行 セクターにおける 個 人 向 け 金 融 の 割 合 2008 年 2009 年 2010 年 2011 年 2012 年 シンガポール 42.0% 45.5% 46.9% 42.7% 42.1% マレーシア 56.7% 56.2% 54.3% 55.2% 55.5% インドネシア 28.1% 30.4% 30.4% 30.3% - フィリピン - 15.2% 16.0% 15.7% 16.0% ( 資 料 ) 各 国 中 央 銀 行 MASより 日 本 総 合 研 究 所 作 成 ( 注 )シンガポール: 商 業 銀 行 ( 国 内 銀 行 部 門 )の 個 人 向 け 貸 出 比 率 マレーシア : 商 業 銀 行 の 家 計 その 他 向 け 貸 出 比 率 インドネシア: 商 業 銀 行 の 消 費 目 的 貸 出 比 率 フィリピン : 銀 行 セクターの 消 費 者 借 入 比 率 となる 金 融 後 発 国 では 信 頼 できる 情 報 が 少 ないため 与 信 判 断 が 難 しく 結 果 として 個 人 の 借 入 コス トが 高 くなる 傾 向 がある そのため 個 人 向 け 金 融 の 割 合 が 相 対 的 に 低 くなる 銀 行 の 信 用 力 の 差 も 大 きい 金 融 先 進 国 の 主 要 銀 行 がおおむねA 以 上 の 格 付 けを 取 得 している 一 方 で 金 融 後 発 国 の 銀 行 は フィリピンの 主 要 銀 行 がBBB (2013 年 にBBB へ 引 き 上 げ) インドネシ アの 主 要 銀 行 がBB BB+と 低 い 水 準 である 信 用 力 の 差 は 銀 行 の 資 金 調 達 力 に 影 響 する 金 融 先 進 国 では 社 債 市 場 も 整 備 されていることもあり 多 くの 銀 行 が 社 債 発 行 により 資 金 を 調 達 している 金 J R Iレビュー 2014 Vol.7, No.17 39

融 後 発 国 の 銀 行 による 社 債 発 行 も 一 部 で 見 られるものの 資 金 調 達 力 は 相 対 的 に 低 い それぞれのグループの 特 徴 の 詳 細 を 次 章 以 降 で 説 明 する ( 注 1) 日 本 の3メガバンクの 国 内 シェアは ベースで 約 50.0% 貸 出 残 高 ベースで 約 41.2%(2013/3 期 全 銀 協 )である ( 注 2)シンガポールでは 地 場 の 商 業 銀 行 は3グループ6 行 まで 集 約 されており マレーシアも8 行 まで 地 場 の 商 業 銀 行 は 集 約 され ている 3. 金 融 先 進 国 の 銀 行 セクター(シンガポール マレーシア) (1)シンガポール 1 国 内 銀 行 は3グループまで 集 約 シンガポールの 地 場 銀 行 は3グループ6 行 に 集 約 されている( 図 表 7) 1998 年 時 点 では 地 場 銀 行 が12 行 あったものの 1999 年 以 降 統 廃 合 を 進 めて 半 数 の6 行 まで 減 らしている 大 手 銀 行 は 政 府 系 または 金 融 財 閥 である( 図 表 8) 最 大 手 DBSは 政 府 系 ファンドTemasekが3 割 出 資 残 り2グループ は 華 僑 系 の 金 融 財 閥 で 財 閥 企 業 などで2 割 前 後 の 株 式 を 保 有 している 地 場 銀 行 の 下 位 3 行 はOCBC の 子 会 社 が2 行 UOBの 子 会 社 が1 行 である 3グループで 国 内 市 場 シェア( ベース)の 約 6 割 を 占 めている( 前 掲 図 表 5) 2 外 資 規 制 は 緩 く 外 国 銀 行 が 多 く 参 入 ただし 国 内 での 規 制 は 先 進 国 並 み シンガポールは マレーシアからの 独 立 (1965 年 ) 当 初 から 国 際 的 な 金 融 センターの 構 築 に 力 を 入 れ ており 以 前 よりオフショア 市 場 を 中 心 に 多 くの 外 国 銀 行 が 参 入 していた 近 年 では 自 国 の 金 融 市 場 に 対 しても 外 国 銀 行 の 参 入 を 促 進 しようとしている これは 外 国 銀 行 の 参 入 により 自 国 の 金 融 市 場 を 活 性 化 させ 高 度 化 を 図 るものである 1999 年 に 外 国 資 本 の 出 資 上 限 (40%)を 撤 廃 するなど 外 資 規 制 を 緩 和 した 結 果 外 国 銀 行 の 業 態 は オフショアバンク 業 態 中 心 から 国 内 市 場 で 事 業 可 能 なホールセー ル 業 態 中 心 にシフトしている( 図 表 7) 2013 年 には 国 内 銀 行 6 行 に 対 し 外 国 銀 行 が117 行 存 在 し そのうちシンガポールの 国 内 市 場 で 展 開 可 能 なフルバンク 業 態 およびホールセール 業 態 は80 行 ある た だし シンガポール 国 内 での 銀 行 業 務 に 関 しては シンガポール 通 貨 監 督 庁 (MAS)による 規 制 が 厳 しい 最 低 資 本 規 制 や 自 己 資 本 比 率 規 制 国 内 での 出 店 制 限 などが 存 在 する なお 出 店 規 制 に 関 して は 一 部 の 外 国 銀 行 に 対 して 適 格 フルバンク(QFB)を 認 定 し 規 制 を 緩 和 している 現 在 のところ 欧 米 の 銀 行 に 加 え マレーシアやインド 中 国 の 計 10 行 がQFBを 取 得 している( 注 3) ( 図 表 7) 銀 行 業 態 別 概 要 業 態 別 銀 行 数 業 態 別 貸 出 残 高 ( 単 位 :100 万 シンガポールドル) 区 分 銀 行 数 貸 出 残 高 1998 年 2013 年 シェア シェア 地 場 銀 行 12 行 6 行 地 場 銀 行 569,458 62.5% 277,795 56.6% 外 国 銀 行 数 142 行 117 行 DBS 230,480 25.3% 101,485 20.7% フルバンク 22 行 27 行 OCBC 181,385 19.9% 75,215 15.3% ホールセール 13 行 53 行 UOB 157,593 17.3% 101,095 20.6% オフショア 107 行 37 行 外 国 銀 行 341,543 37.5% 212,911 43.4% 合 計 154 行 123 行 合 計 911,001 100.0% 490,707 100.0% ( 資 料 )CEIC MAS 各 社 ARより 日 本 総 合 研 究 所 作 成 ( 注 ) 貸 出 残 高 は2012 年 のもの 地 場 銀 行 の 貸 出 残 高 は 地 場 の3グループの 合 計 外 国 銀 行 の 数 値 は 銀 行 セクター 合 計 から 地 場 銀 行 の 合 計 を 差 し 引 いて 算 出 したもの 40 J R Iレビュー 2014 Vol.7, No.17

3 地 場 銀 行 は 海 外 展 開 に 積 極 的 シンガポールの 銀 行 は 海 外 展 開 に 積 極 的 である( 図 表 8) 国 内 は100 拠 点 に 満 たない 一 方 で 海 外 に は200 500 拠 点 を 展 開 している シンガポールの 銀 行 における 海 外 事 業 シェアは 税 前 利 益 ベースです でに 約 4 割 に 達 している( 図 表 9) DBSは 中 国 事 業 に 注 力 しており 香 港 中 国 での 貸 し 出 しは 全 体 の3 割 を 超 えている 一 方 で DBSの 貸 し 出 しに 占 める 国 内 事 業 の 割 合 は すでに5 割 以 下 である OCBCとUOBでは 外 国 事 業 はマレーシアが 最 もシェアが 大 きく 貸 し 出 しの 約 15%を 占 めている な お これら3 行 のこれまでの 海 外 展 開 は 海 外 の 地 場 銀 行 の 買 収 を 中 心 に 進 められている( 図 表 10) 4 地 場 銀 行 はPB 業 務 などを 強 化 各 行 とも 商 業 銀 行 部 門 以 外 の 事 業 の 強 化 を 図 っている DBSは 注 力 すべきビジネス 領 域 として 中 小 企 業 金 融 と 並 んで 資 産 管 理 業 務 をあげている OCBCは2009 年 にオランダのING 銀 のアジア 事 業 ( 香 港 マニラなどにおけるPB 業 務 )を 買 収 している 5 社 債 発 行 は 銀 行 の 重 要 な 資 金 調 達 手 段 シンガポールの 銀 行 は 格 付 けがAA と 日 本 のメガバンクよりも 高 い それに 加 えて 債 券 市 場 も 発 達 していることから シンガポールの 銀 行 は 社 債 発 行 による 資 金 調 達 を 積 極 的 に 行 っている 2012 年 の 預 金 残 高 と 借 入 残 高 の 合 計 に 対 する 借 入 残 高 の 比 率 は2 割 近 い 水 準 にある トムソンロイターによると 直 近 2 年 に 発 行 された 社 債 は 約 6 割 が 米 国 ドル 建 てであるものの 残 りの 多 くはシンガポールドル 建 てであり 地 場 通 貨 においても 直 接 金 融 が 重 要 な 資 金 調 達 方 法 となっている ( 図 表 8) 主 要 3 銀 行 の 経 営 状 況 銀 行 名 主 要 株 主 出 資 比 率 その 他 拠 点 数 うち 海 外 展 開 国 DBS Group Temasek 29.3% - 278 189 香 港 インドネシア 中 国 台 湾 インドなど OCBC Lee 財 閥 23.9% - 515 460 マレーシア インドネシア 中 国 など UOB Wee 財 閥 16.8% 超 - 542 468 インドネシア タイ マレーシア 中 国 など 主 要 経 営 指 標 銀 行 名 NIM ROA ROE CAR 不 良 債 権 格 付 (10 億 US$) ( 注 4) 比 率 格 付 機 関 DBS Group 288.9 1.7% 1.1% 11.2% 14.0% 1.2% Aa2 Moody s OCBC 242.2 1.8% 1.7% 17.9% 16.6% 0.8% AA- S&P( 長 期 ) UOB 206.8 1.9% 1.2% 12.4% 14.7% 1.5% AA- S&P( 長 期 ) 貸 出 残 高 (10 億 US$) 銀 行 名 海 外 国 内 法 人 個 人 比 率 比 率 比 率 比 率 その 他 DBS Group 196.4 103.2 52.5% 93.2 47.5% - - - - - OCBC 131.2 62.7 47.8% 68.5 52.2% 78.5 59.8% 50.4 38.5% 2.2 UOB 134.8 47.4 35.1% 87.4 64.9% 70.1 52.0% 64.4 47.8% 0.4 銀 行 名 預 金 残 高 預 金 (10 億 US$) 預 貸 率 金 利 (Net) 収 入 (100 万 US$) 非 金 利 非 金 利 割 合 DBS Group 199.8 98.3% 4,367 2,355 35.0% OCBC 135.2 97.0% 3,140 3,310 51.3% UOB 149.0 90.5% 3,317 1,971 37.3% ( 資 料 )トムソンロイター 各 社 ARより 日 本 総 合 研 究 所 作 成 ( 注 1)データの 年 は2012 年 各 社 判 明 分 のみ 記 載 ( 注 2) 拠 点 数 には 出 張 所 を 含 む 場 合 がある( 企 業 ごとに 公 開 基 準 が 異 なる) ( 注 3) 貸 出 残 高 預 金 残 高 には 銀 行 間 のものも 含 む ( 注 4)CAR:Capital Adequacy Ratio( 自 己 資 本 比 率 ) J R Iレビュー 2014 Vol.7, No.17 41

DBS ( 図 表 10) 主 要 3 銀 行 の 海 外 展 開 の 概 要 OCBC 年 展 開 国 概 要 年 展 開 国 概 要 1997 年 インド ネシア Mitsubishi Buana を 三 菱 銀 行 から 買 収 2000 年 にDBS Indonesiaに 名 称 変 更 2004 年 1999 年 香 港 Kwong On Bankを 富 士 銀 行 から 買 収 2006 年 2001 年 香 港 Dao Heng Bank Overseas Trust Bankを 買 収 し Kwong On Bankと 合 わせた3 行 合 併 でDBS(HK) 設 立 2008 年 台 湾 破 たんしたBowa Bankの 事 業 継 承 2009 年 インド ネシア ベト ナム 2006 年 中 国 アジア 広 域 Bank NISPの 株 式 22.5% 取 得 2005 年 に 出 資 比 率 70.6%に 引 き 上 げ 2008 年 にBank OCBC NISPに 名 称 変 更 VP Bankへ10% 出 資 2008 年 に15%に 引 き 上 げ 寧 波 銀 行 へ12.2% 出 資 のちに15.35%まで 引 き 上 げ 2014 年 に20%まで 引 き 上 げる 計 画 ING 銀 行 からING Asia Private Bankを 買 収 ( 香 港 フィリピン シンガポールなどに 展 開 ) UOB 年 展 開 国 概 要 1993 年 マレー シア 現 法 設 立 1997 年 にChong Khiaw bank OUBのマ レーシア 事 業 を 統 合 1999 年 タイ ラダナシン 銀 行 買 収 2005 年 アジア 銀 行 をABNア ムロ 銀 より 取 得 統 合 し UOB(Thai) 設 立 2004 年 インド ネシア 2008 年 中 国 2008 年 ベト ナム Bank Buana Indonesiaへ23% 出 資 99%まで 保 有 比 率 を 引 き 上 げ UOB Indonesiaに 名 称 変 更 恒 豊 銀 行 へ 出 資 2010 年 に 増 資 を 一 部 引 き 受 けし 出 資 比 率 12.6% Southern Bankへ15% 出 資 ( 資 料 ) 山 形 大 学 山 口 [2010] 各 種 報 道 などより 作 成 42 J R Iレビュー 2014 Vol.7, No.17

(2)マレーシア 1 国 内 商 業 銀 行 は8 行 まで 集 約 マレーシアは アジア 通 貨 危 機 で 大 きな 打 撃 を 受 けたものの 韓 国 やインドネシア タイと 異 なり 国 際 通 貨 基 金 (IMF)の 管 理 下 に 入 ることなく 政 府 主 導 で 対 応 した 2001 年 にマレーシア 政 府 は 金 融 改 革 の 中 期 計 画 として 金 融 セクターマスタープラン(Financial Sector Master Plan) を 発 表 し そのなかで 金 融 セクターの 強 化 のために 政 府 主 導 による 地 場 銀 行 の 統 廃 合 を 目 指 した 実 際 は 民 間 からの 反 発 もあり 自 主 的 な 統 廃 合 となったものの 商 業 銀 行 は8 行 に 集 約 された( 図 表 11) 一 方 外 国 銀 行 は19 行 参 入 しており 銀 行 数 では 地 場 銀 行 を 上 回 っている なお 主 要 銀 行 には 政 府 系 ファンドの 出 資 が 多 く 入 っている( 図 表 12) とくに 主 要 2 行 では 政 府 系 ファンドの 出 資 比 率 が4 6 割 であり 政 府 の 影 響 力 が 大 きい CIMBのラジル ラザクCEOは マレーシア 現 首 相 のナジブ ラザク 氏 の 弟 である ( 図 表 11) 銀 行 業 態 別 概 要 業 態 銀 行 数 地 場 外 国 拠 点 数 (10 億 US$) シェア ROA CAR 預 貸 率 商 業 銀 行 27 8 19 2,056 482.7 77.2% 1.6% 15.4% 80.5% イスラム 銀 行 16 10 6 277 122.2 19.5% 77.1% 投 資 銀 行 13 13 0 148 20.4 3.3% 1.8% 30.5% - ( 資 料 )CEIC マレーシア 中 央 銀 行 より 日 本 総 合 研 究 所 作 成 ( 注 )データの 年 は2012 年 ( 図 表 12) 上 位 10 行 ( 順 )の 概 要 順 位 銀 行 名 主 要 株 主 1 Maybank 2 CIMB Group 3 Public Bank 4 RHB Capital 5 Hong Leong Financial Group 政 府 系 ファンド 政 府 系 ファンド 政 府 系 ファンド 政 府 系 ファンド HongLeong 財 閥 国 (100 万 US$) 前 年 比 増 減 順 位 銀 行 名 主 要 株 主 - 161,811 9.3% 6 AMMB Holdings 地 場 +ANZ オースト ラリア - 110,211 12.2% 7-89,797 10.1% 8-61,824 24.1% 9 United Overseas Bank Malaysia HSBC Bank Malaysia OCBC Bank Malaysia - 53,409 9.1% 10 Affin Holdings UOB 国 シンガ ポール (100 万 US$) 前 年 比 増 減 41,118 14.0% 26,301 16.5% HSBC イギリス 25,055 4.3% OCBC 政 府 系 + 東 亜 銀 シンガ ポール 23,828 12.8% 香 港 18,257 4.0% ( 資 料 ) 各 社 AR THE ASIAN BANKERより 日 本 総 合 研 究 所 作 成 ( 注 )データの 年 は2012 年 2 外 資 規 制 は 厳 しいものの 緩 和 の 方 向 マレーシアの 金 融 セクターの 外 資 規 制 は 厳 しい 1989 年 に 銀 行 金 融 機 関 法 が 制 定 された 際 すでに マレーシアに 拠 点 を 持 っていた 外 国 銀 行 にはライセンスが 与 えられたものの その 後 新 規 のライセン ス 付 与 は 停 止 された そのため 外 国 銀 行 は 古 くから 参 入 していた 旧 宗 主 国 のイギリスや 隣 国 のシン ガポールの 銀 行 が 中 心 である( 図 表 13) しかし 近 年 マレーシア 政 府 は 少 しずつ 市 場 開 放 に 動 いている 2001 年 に 策 定 された 金 融 改 革 の 中 期 計 画 である 金 融 セクターマスタープランでは 国 内 銀 行 強 化 競 争 促 進 外 国 銀 行 導 入 が 掲 げられた J R Iレビュー 2014 Vol.7, No.17 43

( 図 表 13) 外 国 銀 行 の 参 入 状 況 ( シェア) 国 別 シェア 主 要 な 外 国 銀 行 銀 行 名 親 会 社 国 (100 万 US$) シェア United Overseas Bank Malaysia UOB シンガポール 26,304 4.4% HSBC Bank Malaysia HSBC イギリス 25,057 4.1% OCBC Bank Malaysia OCBC シンガポール 23,830 3.9% Standard Chartered Bank Malaysia Standard Chartered イギリス 16,893 2.8% Citibank CITI アメリカ 12,573 2.1% Deutsche Bank Malaysia Deutsche Bank ドイツ 3,512 0.6% Bank of Tokyo Mitsubishi UFJ Malaysia MUFG 日 本 3,450 0.6% ( 資 料 ) 各 社 AR THE ASIAN BANKERより 日 本 総 合 研 究 所 作 成 ( 注 1)RHB Capital( 主 要 株 主 :マレーシア 政 府 系 ファンド41% アブダビ 政 府 系 ファンド25%) AMM Holdings( 主 要 株 主 :オーナー31.5% ANZ 23.8%)などは 外 国 資 本 が 入 っているものの 出 資 比 率 は3 分 の1 満 たないため ここでは 外 国 銀 行 とは 扱 わない ( 注 2)データの 年 は2012 年 まず 統 廃 合 などにより 国 内 銀 行 の 体 質 を 強 化 し 次 に 地 場 銀 行 同 士 の 競 争 を 促 進 することで 競 争 力 をつけ その 後 外 国 銀 行 の 追 加 参 入 により 地 場 銀 行 と 競 争 を 促 す というものである 実 際 に 銀 行 の 統 廃 合 は 進 み 2006 年 にはMUFGがCIMBに 出 資 し 業 務 提 携 ( 注 4) 2010 年 にはSMBC みず ほ 銀 など5 行 に 新 しく 銀 行 業 のライセンスが 付 与 された 2011 年 からの 金 融 セクターブループリントでは 金 融 の 高 度 化 直 接 金 融 の 発 展 金 融 包 摂 国 際 金 融 の 強 化 イスラム 金 融 の 国 際 化 などを 戦 略 指 針 としている なお 直 近 15 年 は 外 国 銀 行 の シェアはほ とんど 変 化 しておらず 22% 前 後 で 推 移 している ( 図 表 14) 3 主 要 銀 行 は 海 外 展 開 に 積 極 的 マレーシアの 金 融 市 場 は 銀 行 総 与 信 預 金 残 高 の 対 GDP 比 が100%を 超 え 市 場 としてある 程 度 成 熟 しており 金 融 後 発 国 に 比 べて 成 長 余 地 は 小 さい 加 えて 総 人 口 は 約 2,920 万 人 と 少 なく 自 国 市 場 だけでは 事 業 拡 大 に 限 界 がある そのため 大 手 銀 行 は 外 国 に 活 路 を 見 出 しており 海 外 展 開 に 積 極 的 である 大 手 銀 行 のMaybankやCIMBは すでに 国 外 の 拠 点 数 が 国 内 拠 点 の 倍 以 上 となっている ( 図 表 15) 主 な 展 開 先 はシンガポールとインドネシアである とくにCIMBは 傘 下 にインドネシア 地 場 5 位 のCIMB Niagaがあり 2012 年 のインドネシア 事 業 はグループ 貸 出 残 高 の23% 税 前 利 益 の32%を 占 めるなど ウエートが 大 きい( 図 表 16) Maybankはシンガポール 事 業 が 大 きな 位 置 付 けにあり 2012 年 には 貸 出 残 高 の22% 税 前 利 益 の14%がシンガポール 事 業 である 一 方 第 3 位 のPublicBankは 海 外 展 開 に 積 極 的 ではない 国 内 と 香 港 を 軸 に 展 開 しているものの 海 外 比 率 は 減 少 傾 向 にある 2009 年 時 点 で9.6%あった 外 国 事 業 シェア( 注 5)は2012 年 では6.6%に 低 44 J R Iレビュー 2014 Vol.7, No.17

( 図 表 15) 主 要 3 銀 行 の 経 営 状 況 銀 行 名 主 要 株 主 拠 点 数 出 資 比 率 その 他 うち 海 外 展 開 国 Maybank CIMB Group Public Bank 政 府 系 ファンド 59.0% - 2,333 1,928 シンガポール インドネシア フィリピンなど 政 府 系 ファンド 45.4% MUFG 10% 出 資 1,080 768 インドネシア タイ カンボジアなど 政 府 系 ファンド 19.8% - 406 152 香 港 カンボジアなど 主 要 経 営 指 標 銀 行 名 NIM ROA ROE CAR 不 良 債 権 格 付 (10 億 US$) 比 率 格 付 機 関 Maybank 161.4 2.4% 1.2% 16.0% 16.6% 1.1% A- S&P( 長 期 ) CIMB Group 110.2 3.1% 1.3% 16.0% 16.3% 3.8% BBB- S&P( 長 期 ) Public Bank 89.8 3.1% 1.9% 24.1% 14.1% 0.7% A- S&P( 長 期 ) 貸 出 残 高 (10 億 US$) 銀 行 名 海 外 法 人 個 人 うちマイクロ 比 率 大 企 業 中 小 企 業 ファイナンス その 他 Maybank 103.8 36.5 35.2% 30.1 21.3 8.8 35.4-1.8 CIMB Group 68.0 26.9 39.7% 15.4 12.1 3.3 25.6 - - Public Bank 64.6 4.3 6.6% 7.6 - - 52.5-0.2 預 金 残 高 収 入 (100 万 US$) 銀 行 名 預 金 預 貸 率 金 利 非 金 利 非 金 利 (10 億 US$) (Net) 割 合 Maybank 113.7 91.3% 2,785 4,280 60.6% CIMB Group 79.9 92.6% 2,439 1,986 44.9% Public Bank 73.7 87.5% 1,768 756 30.0% ( 資 料 )トムソンロイター 各 社 ARより 日 本 総 合 研 究 所 作 成 ( 注 1)データの 年 は2012 年 各 社 判 明 分 のみ 記 載 ( 注 2) 拠 点 数 は 出 張 所 を 含 む 場 合 がある( 企 業 ごとに 公 表 基 準 が 異 なる) Maybankは20% 以 上 出 資 する 海 外 関 連 会 社 の 拠 点 数 も 含 む ( 注 3) 貸 出 残 高 預 金 残 高 には 銀 行 間 のものも 含 む J R Iレビュー 2014 Vol.7, No.17 45

下 している 4 個 人 向 け 金 融 が 中 心 主 要 銀 行 は 投 資 銀 行 部 門 を 強 化 の 動 き マレーシアは シンガポール ブルネイに 次 いで 一 人 当 たり 名 目 GDPが 高 く 2011 年 には1 万 ドル を 超 え 8 割 以 上 の 世 帯 が 中 間 所 得 層 ( 注 6)となっている 中 間 所 得 層 の 増 加 により 個 人 向 け 金 融 が 急 激 に 成 長 している 一 方 資 本 市 場 の 整 備 が 進 んだことで 大 企 業 を 中 心 に 直 接 金 融 による 調 達 が 一 般 的 になっており 大 企 業 の 間 接 金 融 による 調 達 比 率 は 低 い その 結 果 銀 行 の 貸 し 出 しは 個 人 向 け が 中 心 である ( 前 掲 図 表 6) 一 方 家 計 債 務 残 高 は 名 目 GDP 対 比 で8 割 (2012 年 )に 達 し 家 計 債 務 のこれ 以 上 の 増 加 を 問 題 視 する 見 方 もある これに 対 してマレーシアの 中 央 銀 行 は クレジットカードの 保 有 規 制 の 強 化 や 住 宅 ロ ーンなどの 借 入 期 間 上 限 の 短 縮 ( 注 7)など 家 計 債 務 の 膨 張 を 抑 える 方 針 を 打 ち 出 している このような 環 境 下 大 手 銀 行 では 投 資 銀 行 部 門 を 強 化 する 動 きがある( 注 8) Maybankは2011 年 に シンガポールの 大 手 投 資 銀 行 Kim Eng Holdingを 買 収 CIMBも2012 年 にRBSのアジア 証 券 部 門 を 買 収 した( 図 表 17) 収 入 に 占 める 非 金 利 収 入 の 割 合 は Maybankで6 割 に 達 しており CIMBでも4 割 を 超 えている ( 図 表 17) 主 要 2 銀 行 の 海 外 展 開 の 概 要 Maybank CIMB 年 展 開 国 概 要 年 展 開 国 概 要 1997 年 2008 年 2008 年 2008 年 2011 年 フィリ ピン インド ネシア Republic Savings Bankへ60% 出 資 2000 年 に99.96%まで 引 き 上 げ Maybank Philippinesに 名 称 変 更 Bank Internasional Indonesia(BII) 買 収 (97.5% 出 資 ) 2002 年 2005 年 インド ネシア シンガ ポール Bank Niaga 買 収 2005 年 にBank Lippoを 買 収 し 2008 年 に 統 合 してCIMB Niaga 設 立 投 資 銀 行 GK Goh Securities 買 収 ベト ナム An Binh Commercial Joint Stock Bankへ15% 出 資 2006 年 タ イ Southern Bank 買 収 2008 年 にBank Thaiを 買 収 し CIMB Thai 設 立 パキス タン MCB Bankへ15% 出 資 2009 年 中 国 Bank of Yingkouへ19.99% 出 資 シンガポールの 大 手 投 資 銀 行 Kim Eng Holding 買 収 シンガ (シンガポールのほか タイ インドネシア フィ ポール リピン ベトナムで 投 資 銀 行 業 務 ) ( 資 料 ) 山 形 大 学 山 口 [2010] 各 種 報 道 などより 作 成 2012 年 2012 年 アジア 広 域 フィリ ピン RBSのアジア 証 券 部 門 の 大 半 を 買 収 Bank of Commerceをサンミゲルから 買 収 5 イスラム 金 融 が 急 速 に 発 展 近 年 マレーシアではイスラム 金 融 が 急 激 に 拡 大 してい る 銀 行 セクターにおけるイスラム 金 融 のシェア( ベース)は 2006 年 に 約 7%であったものが 2013 年 には 約 21%まで 急 拡 大 している( 図 表 18) 国 民 の 約 6 割 がイ スラム 教 徒 であるマレーシアでは イスラム 金 融 自 体 は 古 くから 存 在 しており 最 初 のイスラム 銀 行 の 設 立 は1983 年 最 初 のイスラム 保 険 (タカフル)の 設 立 は1984 年 である 近 年 のイスラム 金 融 の 急 激 な 発 展 は マレーシア 政 府 によ ( 図 表 18)イスラム 金 融 の シェア 推 移 比 率 2006/12 7.2% 2007/12 7.8% 2008/12 13.9% 2009/12 15.8% 2010/12 16.8% 2011/12 18.4% 2012/12 19.5% 2013/12 20.9% ( 資 料 )CEIC る 国 際 的 なイスラム 金 融 センター 構 築 の 動 きによるところ 46 J R Iレビュー 2014 Vol.7, No.17

が 大 きい 2001 年 の 金 融 セクターマスタープランにおいて イスラム 銀 行 タカフルの 改 革 プランを 示 し イスラム 金 融 に 関 する 法 制 度 や 市 場 の 整 備 を 進 めるとともに イスラム 金 融 に 限 って 外 国 銀 行 の 参 入 規 制 の 緩 和 も 行 った 銀 行 セクターの 外 資 規 制 が 厳 しいなか イスラム 金 融 に 関 しては 2003 年 に イスラム 銀 行 の 自 由 化 という 指 針 が 出 され 翌 2004 年 に3 行 の 外 国 銀 行 にイスラム 銀 行 のライセン スが 付 与 された さらに2006 年 にはマレーシア 国 際 イスラム 金 融 センター(Malaysia International Islamic Financial Centre)が 設 立 され 外 国 のイスラム 銀 行 を 誘 致 する 体 制 が 構 築 された 2011 年 から の 金 融 改 革 の 中 期 計 画 である 金 融 セクターブループリントにおいても 柱 の 一 つとしてイスラム 金 融 の 国 際 化 がうたわれている 2012 年 時 点 で16 行 あるイスラム 銀 行 のうち 6 行 が 外 国 銀 行 である 地 場 銀 行 においても イスラム 金 融 をアジア 展 開 で 競 合 するシンガポールなどの 銀 行 との 差 別 化 を 図 る 武 器 にしようとしている 最 初 のイスラム 銀 行 の 設 立 から 約 30 年 経 っており マレーシアではすでに 多 くの 商 品 が 開 発 されている とくに 隣 国 のインドネシアは 世 界 最 大 のイスラム 教 国 であり 現 時 点 で は 金 融 市 場 自 体 が 未 成 熟 でイスラム 金 融 市 場 としても 小 さいものの 将 来 的 には 大 きなイスラム 金 融 市 場 に 成 長 するものと 予 想 される (3) 金 融 先 進 国 のまとめ 金 融 先 進 国 は 相 対 的 に 金 融 市 場 が 成 熟 している 利 益 構 造 において 非 金 利 収 益 が 大 きな 割 合 を 占 め ていることも 業 務 の 幅 の 広 さを 示 している 個 人 の 所 得 水 準 も 高 く 個 人 信 用 情 報 DBや 所 得 証 明 の 仕 組 みなども 整 備 されていることから 銀 行 貸 し 出 しに 占 める 個 人 向 け 金 融 の 割 合 は 大 きい 一 方 で 企 業 金 融 については 資 本 市 場 が 整 備 されており 大 企 業 にとって 直 接 金 融 が 一 般 的 な 調 達 手 段 となっ ている 金 融 先 進 国 の 銀 行 にみられ 金 融 後 発 国 の 銀 行 にみられない 特 徴 として 主 要 銀 行 の 海 外 展 開 があげ られる シンガポールやマレーシアの 主 要 銀 行 は 貸 し 出 しの4 5 割 が 海 外 であり 税 前 利 益 の4 割 前 後 を 海 外 事 業 から 得 ている 展 開 エリアはアジアが 中 心 であり シンガポールの 銀 行 は 中 国 やマレー シア インドネシアなど マレーシアの 銀 行 はシンガポールやインドネシア タイなどに 展 開 している ( 注 9) これらの 銀 行 は 複 数 の 国 で 個 人 向 け 金 融 を 含 むフルバンク 業 務 を 行 っている ただし 欧 米 の 金 融 機 関 が 古 くからこれらの 地 域 に 展 開 しているのに 対 し 東 南 アジアの 金 融 先 進 国 の 銀 行 は M&A などにより 近 年 急 速 に 展 開 エリアを 広 げたものである 加 えて マレーシアの 銀 行 では 投 資 銀 行 部 門 を シンガポールの 銀 行 ではプライベートバンキング 部 門 など 商 業 銀 行 業 務 以 外 を 強 化 する 動 きも 見 られる 金 融 セクターの 外 資 規 制 は 総 じて 厳 しいものの 市 場 開 放 が 徐 々に 進 んでいる シンガポールでは 1999 年 頃 より マレーシアでは2010 年 頃 より 外 国 銀 行 への 市 場 開 放 により 自 国 金 融 市 場 の 高 度 化 を 図 っている これは 地 場 銀 行 の 統 廃 合 が 進 み 地 場 銀 行 が 自 国 市 場 において 日 欧 米 などの 外 国 銀 行 と 競 合 できるだけの 競 争 力 を 得 たという 判 断 からだと 考 えられる ( 注 3)QFBは 1999 年 にANZ CITI HSBC スタンダードチャータード 銀 行 の4 行 2001 年 にMaybank BNPパリバの2 行 2008 年 にインドステイト 銀 行 2010 年 にICIC 銀 行 2012 年 に 中 国 銀 行 中 国 商 工 銀 行 の2 行 が 取 得 QFBは 支 店 を 最 大 10 店 舗 ATMなどを 含 め 計 25 拠 点 まで 設 置 できる J R Iレビュー 2014 Vol.7, No.17 47

( 注 4)2011 年 に 追 加 出 資 を 行 い 現 在 の 出 資 比 率 10% ( 注 5) 海 外 事 業 のほとんどが 香 港 事 業 である ( 注 6) 可 処 分 所 得 が5 千 ドル 以 上 の 世 帯 マレーシアは 2011 年 時 点 で 全 世 帯 の 約 84%が 中 間 所 得 層 以 上 である(World Consumer Income and Expenditure(Euromonitor International)) ( 注 7)2013 年 7 月 に 住 宅 ローンの 最 大 借 入 期 間 を45 年 から35 年 に それ 以 外 のローンについても25 年 から10 年 に 短 縮 した ( 注 8) 投 資 銀 行 部 門 強 化 の 動 きが 大 きい 一 方 シンガポールの 銀 行 に 見 られるPB 部 門 強 化 のような 動 きは 強 くはない ( 注 9)ただし 貸 し 出 しには 一 部 オフショアでのものも 含 まれており 貸 し 出 しが 多 い 地 域 に 拠 点 が 多 いとは 限 らない 4. 金 融 後 発 国 の 銀 行 セクター(インドネシア フィリピン) (1)インドネシア 1 銀 行 セクターは 五 つの 業 態 からなる インドネシアの 銀 行 セクターは 大 きく 分 けて 五 つの 業 態 からなる( 図 表 19) 国 営 銀 行 民 間 商 業 銀 行 ( 外 為 商 業 銀 行 非 外 為 商 業 銀 行 ) 地 方 開 発 銀 行 ( 州 営 銀 行 ) 外 国 銀 行 外 国 合 弁 銀 行 庶 民 信 用 銀 行 (BPR) である その 中 心 は 国 営 銀 行 と 民 間 商 業 銀 行 であり これらの2 業 態 で 銀 行 部 門 の の7 割 以 上 を 占 めている なお 国 営 銀 行 には 過 半 数 の 政 府 出 資 が 入 っているものの ほとんどが 株 式 市 場 に 上 場 しており 業 務 内 容 は 民 間 商 業 銀 行 と 大 きく 異 ならない ( 図 表 19) 銀 行 業 態 別 概 要 業 態 個 人 向 け 銀 行 数 (10 億 ROA CAR 預 貸 率 概 要 拠 点 数 貸 出 比 率 US$) シェア 国 営 銀 行 業 務 内 容 は 民 間 銀 行 と 同 様 4 5,363 163.6 33.9% 3.7% 16.1% 79.8% 30.0% 地 方 開 発 銀 行 州 営 小 口 金 融 6 1,712 39.1 8.1% 3.2% 18.0% 78.6% 68.5% 民 間 商 業 銀 行 外 為 業 務 の 可 否 で2 種 類 存 在 66 9,094 196.1 40.6% - - - 28.5% 外 為 商 業 銀 行 総 じて 規 模 が 大 きい 36 7,647 181.7 37.6% 2.6% 15.3% 81.6% 26.9% 非 外 為 商 業 銀 行 総 じて 規 模 が 小 さい 30 1,447 14.4 3.0% 3.3% 20.8% 82.7% 49.3% 合 弁 外 国 銀 行 認 可 対 象 は 海 外 の 大 手 銀 行 24 456 55.4 11.5% 3.2% 25.9% 113.2% 11.6% 庶 民 信 用 銀 行 農 村 中 心 に 存 在 小 口 金 融 1,653 4,425 7.2 1.5% 3.8% - 78.6% - シャリア 銀 行 イスラム 金 融 は 依 然 として 浸 透 11 1,734 15.7 3.3% 1.7% 14.1% - - 商 業 銀 行 シャリア 部 門 しておらず 預 金 や 貸 出 など 基 24 493 5.1 1.1% - - - - シャリア 庶 民 信 用 銀 行 本 的 な 金 融 サービスが 中 心 158 401 0.5 0.1% - - - - ( 資 料 )CEIC トムソンロイター インドネシア 中 央 銀 行 より 日 本 総 合 研 究 所 作 成 ( 注 )データの 年 は2012 年 2 主 要 銀 行 は 国 営 銀 行 と 外 国 資 本 の 入 った 銀 行 インドネシアの 主 要 銀 行 は 大 半 が 国 営 銀 行 と 外 国 資 本 の 銀 行 ( 注 10)である 2012 年 の の 上 位 10 行 のうち 4 行 が 国 営 銀 行 5 行 が 外 国 資 本 の 銀 行 である( 図 表 20) この 国 営 銀 行 と 外 国 資 本 の 銀 行 を 中 心 とした 構 造 は 1997 年 のアジア 通 貨 危 機 によってもたらされたものである インドネシアは アジア 通 貨 危 機 において 韓 国 タイと 並 んで 大 きな 打 撃 を 受 け 多 くの 銀 行 が 経 営 破 たんに 陥 った インドネシア 政 府 は 国 債 を 発 行 して 大 量 の 公 的 資 金 を 注 入 し 破 たんに 陥 った 銀 行 を 一 時 国 有 化 することで 救 済 した 一 時 国 有 化 した 銀 行 を 民 営 化 する 際 に 資 金 の 出 し 手 となったの が 外 国 資 本 であった さらには 外 国 資 本 の 支 援 を 受 け 入 れる 際 に 外 資 規 制 を 大 幅 に 緩 めたことで 通 貨 危 機 を 生 き 残 った 銀 行 の 一 部 も 外 国 資 本 に 買 収 されている 現 在 外 国 資 本 の 銀 行 の 市 場 シェア( 総 資 産 ベース)は 約 3 割 に 達 している( 図 表 21) 48 J R Iレビュー 2014 Vol.7, No.17

順 位 銀 行 名 主 要 株 主 国 ( 図 表 20) 上 位 10 行 ( 順 )の 概 要 (100 万 US$) 前 年 比 増 減 1 Bank Mandiri 国 - 65,731 15.2% 6 2 Bank Rakyat Indonesia 順 位 銀 行 名 主 要 株 主 Bank Danamon Indonesia 国 - 57,015 17.3% 7 Panin Bank ANZ 3 Bank Central Asia 財 閥 - 45,811 16.0% 8 Bank Permata 4 Bank Negara Indonesia 5 CIMB Niaga CIMB 国 - 34,468 11.5% 9 マレー シア 20,415 18.4% 10 ( 資 料 ) 各 社 AR THE ASIAN BANKERより 日 本 総 合 研 究 所 作 成 ( 注 )データの 年 は2012 年 Bank Internasional Indonesia Bank Tabungan Negara 国 (100 万 US$) 前 年 比 増 減 Temasek シンガ ポール 16,111 9.5% オースト ラリア 15,387 19.3% Standard Chartered イギリス 13,630 30.1% Maybank マレー シア 11,972 22.0% 国 - 11,556 25.4% ( 図 表 21) 外 国 資 本 の 参 入 状 況 ( シェア) 国 別 シェア 主 要 な 外 国 銀 行 銀 行 名 親 会 社 国 (100 万 US$) シェア CIMB Niaga CIMB マレーシア 20,415 4.6% Bank Danamon Indonesia Temasek シンガポール 16,111 3.6% Panin Bank ANZ オーストラリア 15,387 3.5% Bank Permata Standard Chartered イギリス 13,630 3.1% Bank Internasional Indonesia Maybank マレーシア 11,972 2.7% Bank OCBC NISP OCBC シンガポール 8,184 1.9% HSBC bank Indonesia HSBC イギリス 6,701 1.5% Citibank Indonesia CITI アメリカ 6,434 1.5% Bank of Tokyo Mitsubishi Indonesia MUFG 日 本 6,426 1.5% Bank UOB Indonesia UOB シンガポール 6,140 1.4% ( 資 料 )CEIC THE ASIAN BANKER 各 社 ARより 日 本 総 合 研 究 所 作 成 ( 注 1) 本 稿 では 外 国 資 本 が3 分 の1 以 上 入 っているものを 外 国 銀 行 として 扱 う ( 注 2)データの 年 は2012 年 3 出 資 規 制 は 強 化 前 述 の 通 り アジア 通 貨 危 機 以 降 インドネシアの 外 資 規 制 はかなり 緩 和 された しかし 通 貨 危 機 から 立 ち 直 った 現 在 のインドネシアでは 銀 行 セクターの 外 資 開 放 の 度 合 いが 大 きすぎるとの 懸 念 もあ り インドネシア 政 府 は 2012 年 に 出 資 上 限 を99%から40%に 引 き 下 げた これにより シンガポール のDBSは 計 画 していたDanamon 銀 行 (シンガポールの 投 資 ファンドTemasek 傘 下 )の 買 収 を 断 念 す ることとなった( 注 11) 一 方 で いったん 外 国 資 本 の 傘 下 となった 銀 行 を 地 場 企 業 が 買 い 戻 す 動 きも 一 部 で 見 られる 旧 サリ ム 財 閥 傘 下 の 大 手 銀 行 BCAは アジア 通 貨 危 機 の 際 に 米 投 資 ファンドFarallon Capitalの 傘 下 に 入 った ものの 2010 年 にインドネシア 地 場 のGjarumグループ( 注 12)が 買 い 戻 した 上 位 の 銀 行 ではBCAが 唯 一 の 地 場 民 間 資 本 の 銀 行 である 4 金 融 インフラが 未 整 備 で 中 小 企 業 や 個 人 の 借 入 コストが 大 きい インドネシアでは 信 頼 できる 信 用 情 報 DBや 所 得 証 明 の 仕 組 み 会 計 制 度 などが 未 発 達 で 中 小 企 業 J R Iレビュー 2014 Vol.7, No.17 49

や 個 人 の 信 用 力 を 把 握 することが 困 難 である 中 小 企 業 や 個 人 向 けの 金 融 では 多 くの 場 合 銀 行 口 座 の 出 入 りや 所 有 する 資 産 に 加 え 借 入 人 やその 周 囲 へのヒアリングなどにより 得 た 定 性 的 な 情 報 が 与 信 審 査 の 材 料 となっている そのため 与 信 リスクが 高 いうえに 情 報 収 集 にコストがかかってしまい 金 利 マージンが 大 きくなる また 信 用 力 の 把 握 が 難 しいことから 担 保 や 複 数 の 保 証 などが 必 要 とな るケースも 多 くなる このように 借 入 人 の 負 担 が 大 きいことから 中 小 企 業 や 個 人 の 借 り 入 れは 低 い 水 準 にある その 結 果 主 要 銀 行 の 多 くは ホールセール 中 心 となっている( 注 13 図 表 22) ( 図 表 22) 主 要 4 銀 行 の 経 営 状 況 銀 行 名 主 要 株 主 出 資 比 率 その 他 拠 点 数 うち 海 外 展 開 国 Bank Mandiri 政 府 59.6% - 1,810 7 中 国 香 港 シンガポール 英 国 など BRI 政 府 56.3% - 1,879 3 ケイマン ( 出 張 所 ) 香 港 米 国 BCA ハルトノー 家 47.6% - 1,011 1 ( 出 張 所 )シンガポール BNI 政 府 59.4% - 1,585 5 米 国 日 本 香 港 英 国 シンガポール 主 要 経 営 指 標 銀 行 名 NIM ROA ROE CAR 不 良 債 権 格 付 (10 億 US$) 比 率 格 付 機 関 Bank Mandiri 65.7 5.5% 3.5% 22.6% 15.3% 1.9% BB+ S&P( 長 期 ) BRI 57.0 8.4% 5.2% 38.7% 17.0% 1.8% BB+ S&P( 長 期 ) BCA 45.8 5.6% 3.6% 30.4% 14.2% 0.4% Ba1 Moody's BNI 34.5 5.9% 2.9% 20.0% 16.7% 2.8% BB S&P( 長 期 ) 貸 出 残 高 (10 億 US$) 銀 行 名 海 外 法 人 個 人 うちマイクロ 比 率 大 企 業 中 小 企 業 ファイナンス その 他 Bank Mandiri 41.4 - - 28.7 13.4 15.2 7.1 2.0 5.6 BRI 37.2 - - 19.2 9.4 9.8 18.0 11.4 - BCA 27.3 - - 19.9 9.1 10.9 7.4 - - BNI 21.4 - - 15.9 7.7 8.2 4.7-0.9 銀 行 名 預 金 残 高 預 金 (10 億 US$) 預 貸 率 金 利 (Net) 収 入 (100 万 US$) 非 金 利 非 金 利 割 合 Bank Mandiri 41.2 100.7% 2,857 1,853 39.3% BRI 46.5 80.0% 3,786 869 18.7% BCA 39.4 69.1% 2,204 662 23.1% BNI 27.4 78.0% 1,604 876 35.3% ( 資 料 )トムソンロイター 各 社 ARより 日 本 総 合 研 究 所 作 成 ( 注 1)データの 年 は2012 年 各 社 判 明 分 のみ 記 載 ( 注 2) 拠 点 数 には 出 張 所 を 含 む 場 合 がある( 企 業 ごとに 公 開 基 準 が 異 なる) ( 注 3) 貸 出 残 高 預 金 残 高 には 銀 行 間 のものも 含 む 5 主 要 銀 行 でも 海 外 拠 点 はわずか 小 規 模 銀 行 が 多 数 存 在 最 大 手 のMandiri 銀 行 でも 海 外 拠 点 が7カ 所 (2012 年 )のみであり 地 場 銀 行 の 海 外 展 開 はほとんど 進 んでいない( 図 表 22) 2004 年 にインドネシア 銀 行 ( 中 央 銀 行 )が 作 成 した 中 期 的 な 金 融 改 革 の 指 針 であるAPI(Aristektur Perbanken Indonesia)では 最 低 資 本 規 制 の 導 入 などにより 銀 行 の 統 廃 合 を 進 めようとしたものの 予 定 通 りには 進 まず 現 在 でも120 行 の 商 業 銀 行 が 存 在 する 上 位 3 行 で 総 資 産 シェアの4 割 近 くを 占 めている 一 方 中 小 の 銀 行 が 依 然 として 多 く 残 っている なお 多 くの 商 業 銀 行 はジャカルタなど 都 市 部 に 集 中 しており 地 方 では 州 営 の 地 方 開 発 銀 行 や 零 細 の 庶 民 信 用 銀 行 などが 中 心 で 銀 行 の 認 知 度 は 低 い 50 J R Iレビュー 2014 Vol.7, No.17

6 イスラム 金 融 のシェアは 小 さい イスラム 金 融 の シェアは5% 未 満 である( 図 表 19) インドネシアは 多 民 族 国 家 でありイスラ ム 教 は 国 教 ではないものの 国 民 の4 分 の3がイスラム 教 徒 であり イスラム 金 融 が 浸 透 する 素 地 はあ ると 言 える ただし 国 民 の 金 融 リテラシーが 低 く イスラム 金 融 の 認 知 度 も 低 いことから 今 のとこ ろイスラム 金 融 は 広 まっていない 今 後 金 融 セクターの 発 展 に 伴 い イスラム 金 融 の 市 場 も 成 長 して いくと 考 えられる 7 その 他 ( 銀 行 の 格 付 金 融 監 督 当 局 の 統 合 など) 主 要 銀 行 でも 信 用 格 付 はBB BB+と 投 資 不 適 格 の 水 準 であり 資 金 調 達 力 は 低 い 制 度 面 の 大 きな 動 きとして 金 融 監 督 の 一 元 化 が 進 められており 2013 年 末 より 銀 行 の 監 督 の 管 轄 が 資 本 市 場 と 同 様 に 金 融 サービス 庁 (OJK)に 統 合 された (2)フィリピン 1 銀 行 セクターは 四 つの 業 態 からなる フィリピンの 銀 行 セクターは ユニバーサルバンク 一 般 商 業 銀 行 貯 蓄 銀 行 庶 民 信 用 銀 行 協 同 組 合 銀 行 の 四 つに 分 けられる( 図 表 23) ユニバーサルバンクは 通 常 の 商 業 銀 行 業 務 に 加 えて 投 資 銀 行 業 務 なども 行 うことができ 個 々の 銀 行 の 規 模 も 大 きく 収 益 力 も 総 じて 高 い 20 行 のユ ニバーサルバンクで 銀 行 セクターの の 約 8 割 を 占 めている ユニバーサルバンク 業 態 であるこ とから 主 要 銀 行 の 収 入 に 占 める 非 金 利 収 入 の 割 合 は インドネシアに 比 べると 総 じて 高 い 上 位 3 行 で シェアが4 割 に 達 するなど 上 位 の 銀 行 への 集 約 が 進 んでいる 一 方 で 小 規 模 な 銀 行 も 多 く 存 在 する 商 業 銀 行 業 態 で36 行 貯 蓄 銀 行 業 態 で70 行 と 合 計 で106 行 ある アジア 通 貨 危 機 以 降 数 十 行 減 少 したものの 2008 年 末 以 降 では9 行 しか 減 っておらず 足 元 で 統 廃 合 は 進 んでいない ( 図 表 23) 銀 行 業 態 別 概 要 業 態 銀 行 数 概 要 拠 点 数 (10 億 US$) シェア ROA CAR 預 貸 率 商 業 銀 行 36 5,234 177.66 89.6% 2.0% 14.4% 71.4% ユニバーサルバンク 一 般 の 商 業 銀 行 業 務 に 加 え 20 4,698 157.69 79.5% 2.1% 14.0% 69.9% 国 営 銀 行 証 券 の 引 き 受 けなどの 投 資 銀 3 464 - - - - - 民 間 銀 行 行 業 務 非 金 融 事 業 への 投 資 11 4,217 - - - - - 外 銀 支 店 が 認 められている 6 17 - - - - - 一 般 商 業 銀 行 16 536 19.97 10.1% 1.5% 17.6% 84.3% 民 間 銀 行 一 般 の 商 業 銀 行 業 務 を 行 う 6 443 - - - - - 外 銀 現 法 投 資 銀 行 業 務 は 行 えない 2 80 - - - - - 外 銀 支 店 8 13 - - - - - 貯 蓄 銀 行 小 口 金 融 中 心 70 1,662 15.97 8.1% 1.8% 13.9% 85.8% 庶 民 信 用 銀 行 協 同 組 合 農 業 開 発 支 援 職 業 組 合 など 577 2,647 4.70 2.4% 1.5% 17.8% 98.8% ( 資 料 )CEIC フィリピン 中 央 銀 行 より 日 本 総 合 研 究 所 作 成 ( 注 )データの 年 は2013 年 2 銀 行 の 位 置 付 けは 相 対 的 に 低 い 1980 年 代 までは 二 つの 国 営 銀 行 ( 注 14)が 大 きな 市 場 シェアを 持 っていたものの マルコス 政 権 下 で ともに 破 たんした 現 在 は 大 手 銀 行 の 多 くは 財 閥 などの 企 業 グループの 傘 下 にある( 図 表 24) その J R Iレビュー 2014 Vol.7, No.17 51

ため フィリピン 経 済 における 銀 行 の 位 置 付 けは 政 府 系 銀 行 が 多 いインドネシアやマレーシアに 比 べ ると 相 対 的 に 低 い たとえば 株 式 市 場 の 時 価 総 額 の 上 位 企 業 (2013 年 12 月 末 時 点 )を 見 ると インド ネシア マレーシア シンガポールでは 上 位 10 社 内 に 主 要 銀 行 3 行 が 含 まれているものの フィリピン ではBPIの1 行 のみである フィリピンでは 株 式 時 価 総 額 の 上 位 は 財 閥 などの 企 業 グループの 中 核 企 業 が 名 前 を 連 ねている ( 図 表 24) 上 位 10 行 (2012 年 順 )の 概 要 順 位 銀 行 名 主 要 株 主 (100 万 US$) 前 年 比 増 減 順 位 銀 行 名 主 要 株 主 (100 万 US$) 前 年 比 増 減 1 BDO Unibank シー 財 閥 30,210 13.4% 6 PNB ルシオタン 財 閥 8,036 6.1% 2 Metrobank テイ 財 閥 25,262 8.6% 7 3 BPI アヤラ 財 閥 23,914 16.9% 8 4 Land Bank 政 府 16,637-9 Development Bank of the Philippines China Banking Corporation Union Bank of the Philippines 政 府 8,029 - シー 財 閥 7,857 23.4% Aboitizグループ 6,791 2.6% 5 RCBC ユーチェンコ 財 閥 8,839 5.5% 10 Security Bank - 6,294 20.5% ( 資 料 )THE ASIAN BANKER 各 社 ARより 日 本 総 合 研 究 所 作 成 ( 注 )データの 年 は2012 年 3 外 国 銀 行 のシェアは 低 いものの 近 年 マレーシアの 銀 行 が 参 入 アジア 通 貨 危 機 の 影 響 が 周 辺 国 に 比 べると 小 さかったこともあり インドネシアのような 外 国 資 本 に よる 地 場 銀 行 の 買 収 は 少 なかった そのため 外 国 資 本 の 銀 行 の シェアは 約 14%と 相 対 的 に 低 い ( 図 表 25) 外 国 銀 行 自 体 が 少 ないわけではなく ユニバーサルバンクおよび 一 般 商 業 銀 行 業 態 の36 行 の うち17 行 は 外 国 銀 行 である ただし 新 規 の 参 入 はほとんどなく 直 近 5 年 間 (2008 2013 年 )で 外 国 銀 行 の 数 は 増 えていない 加 えて 外 国 銀 行 の 資 産 規 模 は 総 じて 小 さい これは 外 国 銀 行 に 対 する 厳 しい 出 店 規 制 などが 存 在 するためである 規 模 の 大 きな 銀 行 はほとんどが 地 場 銀 行 であり 外 国 銀 行 で ( 図 表 25) 外 国 資 本 の 参 入 状 況 ( 商 業 銀 行 のみ シェア) 国 別 シェア 主 要 な 外 国 銀 行 銀 行 名 親 会 社 国 (100 万 US$) シェア CITIBANK CITI アメリカ 5,965 3.3% HSBC HSBC イギリス 4,133 2.3% Bank of Commerce CIMB マレーシア 2,524 1.4% Standard Chartered Bank Standard Chartered イギリス 1,758 1.0% Deutsche bank Deutsche bank ドイツ 1,530 0.9% Maybank Philippines Maybank マレーシア 1,516 0.8% JP Morgan Chase bank JP Morgan アメリカ 1,391 0.8% Anz banking group ANZ オーストラリア 1,254 0.7% Bank of Tokyo Mitsubishi UFJ MUFG 日 本 1,168 0.6% ( 資 料 )フィリピン 中 銀 THE ASIAN BANKER 各 社 AR 各 社 HPより 日 本 総 合 研 究 所 作 成 ( 注 )データの 年 は2012 年 52 J R Iレビュー 2014 Vol.7, No.17

最 も 大 きいCITIBankでも 規 模 で11 位 (2013 年 )である ただし 近 年 マレーシアの 銀 行 の 参 入 が 進 んでいる マレーシアのMaybankは1997 年 にRepublic Savings Bankに60% 出 資 し 2000 年 に99.96%まで 出 資 比 率 を 引 き 上 げ 現 在 はMaybank Philippines ( 注 15)として 営 業 している また 2012 年 には 同 じマレーシアのCIMBがBank of Commerce( 注 16)をサンミゲルから 買 収 している これらの 銀 行 は 地 場 銀 行 では 下 位 の 銀 行 であるものの フィリピ ン 国 内 で 多 店 舗 展 開 しており 国 内 でのネットワークという 点 では 他 の 外 国 銀 行 よりも 優 れている 4 地 場 銀 行 の 海 外 支 店 は 少 なく 主 に 送 金 拠 点 フィリピンは 地 場 産 業 の 育 成 が 遅 れており 海 外 展 開 する 地 場 企 業 は 少 ない 一 方 で 海 外 への 出 稼 ぎ 労 働 者 (OFWs)は1,000 万 人 以 上 とも 言 われており OFWsからの 海 外 送 金 は 名 目 GDPの 約 1 割 ( 注 17)である そのため 地 場 の 大 手 銀 行 は 送 金 拠 点 として 先 進 国 や 中 東 などに 拠 点 網 を 持 っている( 図 表 26) フィリピンには OFWsからの 送 金 資 金 を 返 済 原 資 としたローン 商 品 などもあり 金 融 機 関 の 重 要 なビジネスチャンスとなっている ( 図 表 26) 主 要 3 銀 行 の 経 営 状 況 銀 行 名 主 要 株 主 出 資 比 率 その 他 拠 点 数 うち 海 外 展 開 国 BDO Unibank シー 財 閥 過 半 数 - 810 15 米 国 欧 州 中 央 アジア 東 南 アジア Metrobank テイ 財 閥 26.2% 超 - 862 34 北 米 中 東 欧 州 日 本 韓 国 など BPI アヤラ 財 閥 過 半 数 - 825 5 欧 州 香 港 主 要 経 営 指 標 銀 行 名 NIM ROA ROE CAR 不 良 債 権 格 付 (10 億 US$) 比 率 格 付 機 関 BDO Unibank 30.2 3.4% 1.2% 11.3% 19.2% 1.6% Baa3 Moody's Metrobank 25.2 3.4% 1.5% 13.4% 16.3% 1.8% Baa3 Moody's BPI 23.9 3.6% 1.9% 17.5% 14.2% 1.5% Baa3 Moody's 貸 出 残 高 (10 億 US$) 銀 行 名 海 外 法 人 個 人 うちマイクロ 比 率 大 企 業 中 小 企 業 ファイナンス その 他 BDO Unibank 18.4 - - - - - - - - Metrobank 12.9 - - 9.3 - - 3.6 - - BPI 14.0 - - 10.9 - - 3.1 - - 銀 行 名 預 金 残 高 預 金 (10 億 US$) 預 貸 率 金 利 (Net) 収 入 (100 万 US$) 非 金 利 非 金 利 割 合 BDO Unibank 22.7 81.2% 892 585 39.6% Metrobank 18.0 71.5% 752 502 40.0% BPI 19.5 71.4% 669 456 40.5% ( 資 料 )トムソンロイター 各 社 ARより 日 本 総 合 研 究 所 作 成 ( 注 1)データの 年 は2012 年 各 社 判 明 分 のみ 記 載 ( 注 2) 拠 点 数 には 出 張 所 を 含 む 場 合 がある( 企 業 ごとに 公 開 基 準 が 異 なる) ( 注 3) 貸 出 残 高 預 金 残 高 には 銀 行 間 のものも 含 む 5 預 貸 率 が 相 対 的 に 低 い リテール 金 融 ( 注 18)や 直 接 金 融 は 未 発 達 フィリピンの 銀 行 は 周 辺 国 に 比 べて 預 貸 率 が 低 い これは GDPの 約 7 割 を 消 費 が 占 めるなど 製 造 業 が 発 達 していないこと 財 閥 傘 下 企 業 の 多 くが 企 業 グループ 内 の 資 金 移 動 により 資 金 調 達 を 行 って いること 給 与 所 得 者 が 社 会 保 障 基 金 公 務 員 保 険 基 金 などから 比 較 的 容 易 に 借 り 入 れができること J R Iレビュー 2014 Vol.7, No.17 53

などが 理 由 としてあげられる リテール 金 融 ( 中 小 企 業 および 個 人 向 け 金 融 )は 未 発 達 である フィリピンには 包 括 的 な 信 用 情 報 DBがない( 図 表 27)など 中 小 企 業 や 個 人 の 信 用 力 を 証 明 するものが 少 なく インドネシア 同 様 に 借 入 コストが 高 い そのため 個 人 向 け 融 資 は 貸 出 の16% 程 度 ( 前 掲 図 表 6)にとどまり 大 手 銀 行 でも 個 人 向 け 融 資 は 総 貸 出 の2 3 割 にすぎない 国 民 の 銀 行 認 知 度 信 頼 度 も 低 い 低 所 得 者 の 資 金 需 要 を 支 えているのは 主 に 質 屋 である( 注 19) ただし 富 裕 層 向 けのクレジットカードなどは 少 ないながら 順 調 に 拡 大 している ( 図 表 27)ASEAN 各 国 の 信 用 情 報 カバー 率 ( 公 的 民 間 の 信 用 情 報 DB) 信 用 情 報 カバー 率 公 的 民 間 シンガポール - 60.3 マレーシア 52.9 77.2 タイ - 49.2 フィリピン - 9.3 インドネシア 41.2 - ベトナム 39.1 - ラオス 2.4 - カンボジア - 21.1 ミャンマー - - ブルネイ 55.7 - ( 資 料 )World bank ( 注 ) 成 人 人 口 対 比 の 公 的 民 間 の 信 用 情 報 DBの 登 録 件 数 データの 年 は2013 年 直 接 金 融 も 浸 透 していない 社 債 残 高 は 名 目 GDP 比 で 約 5%と 少 ない これは 社 債 発 行 コストが 高 く 手 続 きも 煩 雑 であることから 一 部 の 大 企 業 しか 活 用 できていないことが 要 因 である (3) 金 融 後 発 国 のまとめ 金 融 後 発 国 において 主 要 銀 行 の 業 務 内 容 は 基 本 的 にホールセール 金 融 が 中 心 である 個 人 向 け 金 融 は 十 分 に 浸 透 していない これは 個 人 の 信 用 力 を 測 る 仕 組 みが 不 十 分 で 借 入 コストが 高 くなって いるためである 一 方 法 人 向 け 金 融 では 直 接 金 融 市 場 が 未 発 達 であることから 大 企 業 も 銀 行 から の 借 り 入 れを 行 う その 結 果 主 要 銀 行 はホールセール 金 融 が 中 心 となっている いいかえれば 個 人 向 け 金 融 などのリテール 金 融 の 成 長 余 地 が 大 きいということである 次 に 事 業 エリアに 目 を 向 けると 金 融 後 発 国 の 銀 行 は 国 内 事 業 中 心 である 積 極 的 に 国 際 展 開 がで きるような 競 争 力 のある 銀 行 は 存 在 しない これは 金 融 市 場 が 十 分 に 発 達 していないことに 加 え 地 場 銀 行 の 統 廃 合 が 十 分 に 進 んでいないことも 要 因 の 一 つと 考 えられる 規 制 面 では 自 国 の 銀 行 セクターの 保 護 のため 厳 しい 外 資 規 制 が 存 在 する または 規 制 を 強 化 する 方 向 にある フィリピンでは 直 近 5 年 間 で 外 国 銀 行 の 増 加 がなく 外 国 銀 行 の 参 入 としては 下 位 の 地 場 銀 行 1 行 がマレーシアの 銀 行 に 買 収 されたのみである インドネシアではアジア 通 貨 危 機 以 降 外 資 規 制 を 大 幅 に 緩 和 していたものの 近 年 出 資 上 限 を 引 き 下 げるなど 規 制 を 強 化 する 方 向 にある ( 注 10) 本 稿 では 外 国 資 本 が3 分 の1 以 上 入 っている 銀 行 を 外 国 資 本 の 銀 行 とする ( 注 11) 政 府 の 認 可 が 下 りれば40% 超 の 出 資 も 可 能 であるものの 本 件 については 認 可 が 下 りず DBSは 買 収 を 断 念 した ( 注 12)タバコ 製 造 を 中 心 とする 地 場 のコングロマリット ( 注 13) 国 営 銀 行 BRIは マイクロファイナンスが 事 業 の 中 心 となっている これは 国 策 で 農 業 開 発 のためのマイクロファイナン スを 行 っていたためである ただし BRIのマイクロファイナンスは 通 常 は 有 担 保 で 金 額 も 比 較 的 高 額 であることから バングラディッシュのグラミン 銀 行 のような 無 担 保 少 額 のマイクロファイナンスとは 異 なる ( 注 14)Philippine National Bank(PNB) Development bank of the Philippines(DBP)の2 行 が 銀 行 部 門 の5 割 以 上 を 保 有 していたものの 1985 年 に 破 たんした 現 在 PNBは 民 営 化 され 財 閥 の 傘 下 に 入 っている ( 注 15) 地 場 20 位 の 銀 行 で 2013 年 6 月 時 点 の は 約 650 億 ペソ( 約 1,497 億 円 ) マニラに30 店 舗 その 他 の 主 要 都 市 などに49 店 舗 の 計 79 店 舗 を 展 開 ( 同 社 HP) 54 J R Iレビュー 2014 Vol.7, No.17

( 注 16) 地 場 16 位 の 銀 行 で 2013 年 6 月 時 点 の は 約 1,083 億 ペソ( 約 2,492 億 円 ) 各 地 に122 店 舗 を 展 開 ( 同 社 HP) ( 注 17)2012 年 は 約 214 億 ドル 銀 行 での 送 金 分 であり 直 接 持 ち 込 まれたものは 含 まない フィリピンのGDPの 約 7 割 が 消 費 であ るのも OFWsからの 送 金 資 金 による 部 分 が 大 きい ( 注 18) 本 稿 では 個 人 向 け 金 融 と 中 小 企 業 向 け 金 融 を 合 わせてリテール 金 融 とする ( 注 19) 質 屋 はフィリピン 中 央 銀 行 に 届 け 出 が 必 要 であり フォーマル 金 融 の 一 つである 担 保 としては 携 帯 電 話 や 宝 石 などが 使 わ れている 5. 展 望 (1) 金 融 先 進 国 および 金 融 後 発 国 の 銀 行 セクターの 展 望 1 金 融 先 進 国 における 金 融 の 高 度 化 海 外 展 開 金 融 先 進 国 の 金 融 市 場 では 外 国 銀 行 への 市 場 開 放 が 本 格 化 し 欧 米 日 などの 先 進 国 の 銀 行 との 競 争 が 激 化 する それに 対 して 地 場 銀 行 は 世 界 の 大 手 銀 行 の 一 部 事 業 買 収 ( 注 20)や 業 務 提 携 などにより 事 業 の 高 度 化 を 図 っていくと 考 えられる 金 融 先 進 国 の 銀 行 は 海 外 展 開 に 積 極 的 であり 直 近 3 年 間 でも 海 外 事 業 比 率 を 大 きく 伸 ばして いる( 図 表 28) 自 国 よりも 周 辺 国 の 金 融 市 場 の 成 長 余 地 が 大 きいため 主 要 銀 行 は 今 後 も 海 外 展 開 を 進 める 可 能 性 が 高 い ただし 世 界 の 大 手 銀 行 に 比 べると 規 模 が 圧 倒 的 に 小 さいことから( 前 掲 図 表 1) 展 開 地 域 は 地 理 的 に 近 く 親 和 性 の 高 いアジアの 新 興 国 が 中 心 となるだろう しか し これらの 地 域 においても 欧 米 の 銀 行 は 古 くか ( 図 表 28)シンガポールおよびマレーシアの 海 外 事 業 シェアの 変 化 海 外 事 業 比 率 2009 年 2012 年 ( 貸 出 残 高 ベース) 増 減 DBS 43.7% 52.5% 8.8% シンガポール OCBC 41.2% 47.8% 6.6% UOB 33.8% 35.1% 1.3% Maybank 32.8% 36.7% 3.9% マレーシア CIMB 30.8% 39.7% 8.8% Publicbank 9.6% 6.6% 3.0% ( 資 料 ) 各 社 AR ら 事 業 展 開 している 欧 米 の 銀 行 は 国 際 的 なネ ットワークに 加 え 各 国 での 長 い 業 歴 から 独 自 の 事 業 ノウハウを 備 えている 経 験 の 蓄 積 の 少 ないシン ガポールやマレーシアの 銀 行 は 買 収 した 地 場 銀 行 の 持 つ 知 見 を 最 大 限 活 かすとともに 自 国 企 業 が 絡 んだ 案 件 やイスラム 金 融 など 自 行 の 強 みを 生 かした 戦 略 を 取 ることになるだろう また 展 開 国 内 で の 拠 点 網 では 欧 米 の 銀 行 に 勝 っているケースも 多 く その 場 合 は 拠 点 の 数 が 重 要 となるリテール 金 融 で 優 位 に 立 つことができるだろう マレーシアに 関 しては イスラム 金 融 を 絡 めた 展 開 も 考 えられる 隣 国 のインドネシアに 加 え 中 東 などへの 進 出 も 可 能 だろう マレーシアの 銀 行 はすでに 幅 広 いイスラム 金 融 商 品 を 開 発 しており イス ラム 金 融 市 場 においては ノウハウの 少 ない 先 進 国 の 銀 行 に 対 してアドバンテージがある 世 界 最 大 の イスラム 教 国 である 隣 国 インドネシアではこれまでイスラム 金 融 市 場 が 未 発 達 であったことから イス ラム 金 融 は 強 力 な 武 器 にはなっていなかったものの 今 後 インドネシアのイスラム 金 融 市 場 の 発 展 に より マレーシアの 銀 行 のプレゼンスが 上 がることも 考 えられる 2 金 融 後 発 国 におけるリテール 金 融 の 発 達 金 融 後 発 国 における 金 融 包 摂 や 金 融 システムの 多 様 化 は 早 急 に 進 展 することが 見 込 まれる 今 後 中 小 企 業 や 個 人 の 信 用 力 を 正 確 に 把 握 できる 仕 組 みが 構 築 された 場 合 信 用 調 査 にかかるコストの 削 減 や 適 正 な 金 利 水 準 による 貸 し 出 しが 可 能 となり 貸 出 金 利 マージンは 低 下 する 借 入 コストの 低 下 に 加 え J R Iレビュー 2014 Vol.7, No.17 55

経 済 発 展 による 所 得 向 上 により これまで 発 達 していなかったリテール 金 融 が 拡 大 していくと 考 えられ る 貸 出 金 利 マージンの 低 下 により 欧 米 などの 先 進 国 の 銀 行 に 比 べ 高 い 水 準 にあるROAは 低 下 する 可 能 性 があるものの 資 産 規 模 は 拡 大 することになる 金 融 機 関 の 調 達 面 でも 現 状 では 金 融 資 産 を 持 つ 余 裕 のない 低 所 得 者 層 が 所 得 上 昇 により 金 融 資 産 を 持 つようになり 預 金 の 増 加 が 予 想 される 加 えて 資 本 市 場 の 整 備 も 進 められており 金 融 後 発 国 においても 企 業 の 資 金 調 達 方 法 として 直 接 金 融 が 浸 透 していくと 考 えられる したがって 現 在 は 多 くの 銀 行 がホールセール 中 心 のビジネスモデルであるものの 今 後 はリテール 金 融 の 比 率 が 高 まっていくと 考 えられる (2)ASEAN 域 内 の 連 結 性 の 強 まりに 伴 う 変 化 1 国 際 銀 行 業 務 の 増 加 2015 年 を 目 途 にASEAN 経 済 共 同 体 (AEC)の 創 設 が 進 められている 域 内 の 関 税 に 関 しては 2010 年 のASEAN 自 由 貿 易 協 定 (AFTA)により 原 加 盟 国 5カ 国 (インドネシア マレーシア シンガポー ル フィリピン タイ)とブルネイにおいてほぼ 全 品 目 の 関 税 が 撤 廃 され 残 りのASEAN 加 盟 国 につ いても2015 年 までの 域 内 関 税 撤 廃 を 目 指 している 銀 行 セクターの 統 合 に 関 しては Asean Banking Integration Framework(ABIF)などで 議 論 が 進 められている このような 動 きのなかで 域 内 でのヒトやモノ カネの 動 きの 活 発 化 が 予 想 される 域 内 の 経 済 交 流 が 活 発 になった 場 合 それらに 付 随 するさまざまな 国 際 的 な 銀 行 業 務 も 増 加 する 海 外 送 金 や 国 際 融 資 だけでなく 海 外 進 出 サポートやビジネスマッチングなど 多 様 なニーズが 発 生 すると 考 えられる 2 金 融 先 進 国 の 銀 行 による 金 融 後 発 国 への 進 出 拡 大 国 際 銀 行 業 務 のニーズの 高 まりにより 金 融 先 進 国 の 主 要 銀 行 が 持 つアジア 域 内 の 金 融 ネットワーク はより 価 値 の 高 いものとなるだろう そのため 金 融 先 進 国 の 銀 行 の 金 融 後 発 国 への 展 開 はさらに 増 加 すると 考 えられる 加 えて 今 後 金 融 後 発 国 において 金 融 インフラの 整 備 が 進 み 市 場 環 境 が 金 融 先 進 国 に 近 づいてきた 場 合 金 融 先 進 国 の 銀 行 にとってはビジネスを 行 いやすい 環 境 が 整 うことになる 現 在 金 融 後 発 国 では 財 務 データや 所 得 証 明 などのデータベースによる 与 信 審 査 が 難 しいことから 信 用 調 査 に 相 当 な 人 員 を 投 入 していることが 多 い そのため 地 場 銀 行 に 地 の 利 があり 一 種 の 参 入 障 壁 にもなっていた 金 融 インフラの 整 備 により 外 国 銀 行 への 参 入 障 壁 が 下 がり 金 融 統 合 により 域 内 の 外 資 規 制 が 緩 和 されることになった 場 合 金 融 先 進 国 から 金 融 後 発 国 へのアプローチはさらに 増 える だろう ただし 金 融 後 発 国 の 金 融 システムには 課 題 が 多 く その 整 備 には 相 当 の 時 間 を 要 することが 見 込 ま れる 金 融 統 合 についても 国 ごとの 金 融 の 発 展 度 合 いに 格 差 が 大 きいことから 外 資 規 制 などの 規 制 面 では 各 国 に 一 定 の 裁 量 が 認 められる 見 通 しであり どの 程 度 統 合 が 進 むかは 容 易 に 判 断 できない 3 金 融 後 発 国 の 銀 行 も 海 外 展 開 を 開 始 国 際 銀 行 業 務 のニーズが 増 加 することで 現 在 はほとんど 海 外 展 開 をしていない 金 融 後 発 国 の 銀 行 も 域 内 各 国 への 拠 点 設 置 を 迫 られるだろう ただし 金 融 先 進 国 の 銀 行 が 現 地 の 地 場 銀 行 を 買 収 すること で 海 外 展 開 を 進 めてきたのに 対 し 金 融 後 発 国 から 金 融 先 進 国 への 展 開 では 同 じスキームは 難 しい 金 56 J R Iレビュー 2014 Vol.7, No.17

融 先 進 国 ではすでに 銀 行 の 集 約 がかなり 進 んでおり シンガポールは3グループ マレーシアも8 行 し か 地 場 商 業 銀 行 は 残 っていないからである 統 廃 合 の 結 果 銀 行 の 規 模 も 金 融 後 発 国 の 銀 行 よりも 大 き くなっていることから 買 収 は 難 しいと 言 える ただし 金 融 先 進 国 に 進 出 している 外 国 銀 行 の 撤 退 に 絡 んで その 事 業 を 買 い 取 って 進 出 する 可 能 性 は 残 されている 一 方 金 融 後 発 国 から 金 融 後 発 国 への 進 出 に 関 しては これまで 金 融 先 進 国 が 行 ってきたような M&Aによる 展 開 が 可 能 である 金 融 後 発 国 には 貯 蓄 銀 行 など 業 務 が 一 部 制 約 される 業 態 もあるもの の 100 行 以 上 の 地 場 銀 行 が 残 っており 買 収 対 象 となるものも 存 在 するだろう ( 注 20) 前 述 の 通 り 2009 年 にOCBC(シンガポール)が 蘭 ING 銀 行 のアジアPB 部 門 を 2012 年 にCIMB(マレーシア)が 英 RBSの アジア 証 券 部 門 を 買 収 している 6.リスク 東 南 アジア 諸 国 は 金 融 システムや 経 済 の 脆 弱 性 政 治 の 不 安 定 性 さらには 貧 困 や 貧 富 の 差 など 社 会 的 な 問 題 によるものまで さまざまなリスクを 内 包 している 本 章 では とくに 銀 行 セクターについ て 金 融 先 進 国 金 融 後 発 国 が 抱 えるリスクを 検 証 したい (1) 金 融 先 進 国 におけるリスク 1 展 開 先 での 景 気 変 調 マレーシアやシンガポールは 自 国 の 金 融 市 場 規 模 が 小 さく 自 国 よりも 周 辺 国 の 金 融 市 場 の 成 長 余 地 ( 図 表 29)マレーシアの 主 要 銀 行 の 地 域 別 事 業 ポートフォリオ( 貸 出 残 高 ベース) 地 域 別 貸 出 残 高 Maybank CIMB 10 億 RM 比 率 10 億 RM 比 率 アジア 地 域 315 99.0% 204 97.8% 自 国 206 64.8% 126 60.3% アジア 109 34.2% 78 37.5% 欧 米 2 0.7% 1 0.4% 英 米 2 0.7% 1 0.4% 不 明 (その 他 ) 1 0.2% 4 1.7% 合 計 319 100.0% 208 100.0% ( 資 料 ) 各 社 ARより 日 本 総 合 研 究 所 作 成 2012 年 ( 参 考 : 欧 米 の 銀 行 (HSBC)および 邦 銀 (SMFG MUFG)の 地 域 別 事 業 ポートフォリオ( ベース)) 地 域 別 HSBC SMFG MUFG 地 域 別 10 億 US$ 比 率 兆 円 比 率 兆 円 比 率 欧 米 1,879 69.8% 日 本 119.27 80.2% 152.00 65.9% 欧 州 1,389 51.6% 欧 米 ( 含 む 南 米 等 ) 22.29 15.0% 53.95 23.4% 北 米 490 18.2% 米 州 13.98 9.4% 30.73 13.3% アジア 途 上 国 1,054 39.2% 欧 州 中 近 東 8.31 5.6% 23.22 10.1% 香 港 518 19.3% アジア 9.98 6.7% 15.94 6.9% アジア 太 平 洋 342 12.7% アジア オセアニア 9.98 6.7% 15.94 6.9% 中 東 北 アフリカ 63 2.3% その 他 内 部 調 整 2.84 1.9% 8.67 3.8% 南 米 131 4.9% 合 計 148.70 100.0% 230.56 100.0% 内 部 調 整 241 9.0% 合 計 2,693 100.0% ( 資 料 ) 各 社 ARより 日 本 総 合 研 究 所 作 成 2012 年 度 (2012/12または2013/3) J R Iレビュー 2014 Vol.7, No.17 57

が 大 きい そのため 主 要 銀 行 は 今 後 も 海 外 展 開 を 継 続 する 可 能 性 が 高 い 一 方 で 展 開 国 はアジア 地 域 が 中 心 であり( 図 表 29) 特 定 国 への 偏 りも 見 られる( 注 21) そのため 主 要 な 展 開 国 において 景 気 変 調 が 起 きた 場 合 銀 行 業 績 全 体 へ 悪 影 響 が 及 ぶことが 予 想 される 加 えて 金 融 先 進 国 の 銀 行 セクターでは 上 位 行 への 集 約 が 進 んでおり 主 要 銀 行 の 母 国 における 市 場 シェアが 大 きい( 図 表 30) 主 要 な 展 開 国 の 景 気 低 迷 により 主 要 銀 行 の 業 績 が 悪 化 した 場 合 母 国 でも リスクが 取 れなくなり 母 国 の 銀 行 セクターに 悪 影 響 をもたらす 可 能 性 がある ( 図 表 30)シンガポールおよびマレーシアの 主 要 銀 行 の 自 国 市 場 でのシェア シンガポール 貸 出 残 高 (2012 年 ) マレーシア 貸 出 残 高 (2012 年 ) 貸 出 シェア 10 億 S$ シェア 貸 出 シェア 10 億 RM シェア 地 場 銀 行 278 56.6% 主 要 3 銀 行 508 45.0% DBS 101 20.7% Maybank 198 17.5% OCBC 75 15.3% CIMB 125 11.1% UOB 101 20.6% Publicbank 185 16.4% 外 国 銀 行 213 43.4% その 他 地 場 銀 行 385 34.1% 合 計 491 100.0% 外 国 銀 行 236 20.9% 合 計 1,129 100.0% ( 資 料 ) 各 社 AR CEIC MASより 日 本 総 合 研 究 所 作 成 2 広 域 な 金 融 危 機 に 対 する 政 府 対 応 能 力 の 限 界 シンガポールやマレーシアは 人 口 が 少 なく 経 済 規 模 は 大 きくない そのため このまま 主 要 銀 行 が 海 外 事 業 を 拡 大 すると 広 域 な 金 融 危 機 が 起 こった 場 合 に 政 府 の 対 応 能 力 の 限 界 を 超 えてしまい 銀 行 の 救 済 が 十 分 にできなくなる 可 能 性 がある( 注 22) 前 述 の 通 り これらの 国 の 主 要 銀 行 の 地 域 別 事 業 ポートフォリオはアジア 新 興 国 に 偏 っており アジア 地 域 や 新 興 国 を 中 心 とした 景 気 変 調 にも 弱 い 金 融 立 国 が 進 められ 銀 行 セクターが 拡 大 している 国 では 広 域 な 金 融 危 機 時 に 政 府 が 地 場 銀 行 を 救 済 可 能 であるか 否 かについても 注 視 する 必 要 がある (2) 金 融 後 発 国 におけるリスク 1 発 展 途 上 の 金 融 システムの 脆 弱 性 金 融 後 発 国 の 銀 行 セクターの 抱 えるリスクとしてまずあげられるのが 金 融 システムの 脆 弱 性 である 会 計 制 度 情 報 開 示 基 準 などが 十 分 ではなく 金 融 機 関 の 健 全 性 に 不 透 明 な 部 分 があることは 否 めない 金 融 規 制 監 督 の 仕 組 みにも 課 題 が 多 く 金 融 危 機 などへの 対 応 能 力 は 不 明 確 である( 注 23) また 信 用 情 報 や 会 計 監 査 などの 仕 組 みが 未 発 達 であり 銀 行 は 債 務 者 の 信 用 力 を 正 確 に 把 握 することが 難 しく 信 用 リスク 管 理 に 限 界 がある 2 地 場 銀 行 の 競 争 力 の 劣 後 金 融 後 発 国 の 地 場 銀 行 は 金 融 商 品 やシステムインフラ 国 際 業 務 などさまざまなノウハウが 不 足 し ている 資 金 調 達 力 についても 金 融 先 進 国 の 銀 行 に 比 べて 格 付 けの 低 い 金 融 後 発 国 の 銀 行 は 劣 後 して いる 今 後 金 融 市 場 の 発 展 や 域 内 経 済 の 統 合 などにより 金 融 後 発 国 の 金 融 市 場 においても 競 争 激 化 が 予 想 される 金 融 後 発 国 の 銀 行 が 競 争 力 を 十 分 に 高 められなかった 場 合 外 国 銀 行 との 競 争 に 負 け 58 J R Iレビュー 2014 Vol.7, No.17

現 在 持 っている 自 国 での 高 い 市 場 シェアを 失 う 懸 念 がある 3 金 融 の 急 速 な 発 展 による 金 融 市 場 の 過 熱 現 在 金 融 後 発 国 では 金 融 包 摂 や 金 融 インフラの 整 備 が 進 められており これまで 金 融 に 触 れたこと のなかった 人 々に 金 融 サービスが 提 供 されるようになってきている このような 金 融 が 発 展 する 段 階 で は 金 融 システムや 法 規 制 の 整 備 に 加 え 金 融 教 育 も 重 要 である 借 り 手 の 金 融 知 識 が 不 足 している 状 態 で 金 融 が 急 速 に 発 展 した 場 合 リスクに 関 する 理 解 が 不 十 分 なまま 過 剰 な 借 り 入 れや 高 リスク 商 品 の 購 入 が 進 み 金 融 市 場 が 過 熱 する 懸 念 がある 4 外 国 銀 行 の 撤 退 破 たん 成 長 余 地 の 大 きい 新 興 市 場 は 外 国 銀 行 にとっても 魅 力 的 であり 多 くの 外 国 銀 行 が 参 入 機 会 を 狙 って いる すでにインドネシアでは 外 国 銀 行 が の 約 3 割 を 占 めており フィリピンにおいても 外 国 銀 行 の 参 入 が 進 んでいる このまま 外 国 銀 行 の 参 入 が 進 み 過 度 に 外 国 銀 行 に 依 存 した 銀 行 セクターにな った 場 合 景 気 低 迷 時 に 外 国 銀 行 の 撤 退 や 急 速 な 事 業 縮 小 ( 短 期 貸 し 出 しの 回 収 など) 最 悪 の 場 合 は 破 たんに 陥 る 懸 念 がある( 注 24) これは 外 国 銀 行 の 母 国 の 景 気 低 迷 時 にも 同 様 の 事 態 が 起 こりうる ( 注 25) 銀 行 セクターの 安 定 のためには 地 場 銀 行 中 心 の 銀 行 セクターを 維 持 することが 有 効 と 考 えら れる そのためには 単 純 に 外 国 銀 行 の 参 入 を 規 制 するだけでなく 地 場 銀 行 の 育 成 強 化 が 求 められ る( 注 26) また 外 国 銀 行 の 参 入 を 認 める 場 合 にも 現 地 法 人 化 や 自 己 資 本 比 率 規 制 などを 強 化 する 必 要 があるだろう ( 注 21) 例 えば マレーシアのCIMBグループは 貸 し 出 しの2 割 以 上 がインドネシア 事 業 であり シンガポールのOCBCやDBSは 貸 し 出 しの1 割 以 上 が 中 国 事 業 ( 除 く 香 港 )である ( 注 22)リーマンショックでは スイスなどが 銀 行 セクターの 救 済 に 成 功 した 一 方 で アイスランドなどは 救 済 に 失 敗 した ( 注 23)フィリピンは ユニバーサルバンク 業 態 が 中 心 であるものの 金 融 監 督 機 関 は 分 かれており 一 つの 金 融 機 関 を 複 数 機 関 が 監 督 する 形 となっている インドネシアは 銀 行 の 監 督 当 局 が 中 央 銀 行 から 金 融 庁 (OJK)に 移 行 され 銀 行 やノンバンクの 金 融 監 督 が 一 元 化 されたばかりであり 金 融 監 督 機 能 を 十 分 に 発 揮 できるかは 不 明 確 である ( 注 24)2008 年 のスペイン 住 宅 バブル 崩 壊 の 一 因 として ドイツ 銀 行 などによる 資 金 引 き 揚 げがあげられている ( 注 25)2010 年 以 降 の 欧 州 の 債 務 危 機 に 伴 い 欧 州 の 銀 行 のアジア 事 業 の 縮 小 選 別 や 撤 退 が 見 られる ( 注 26) 地 場 銀 行 の 育 成 強 化 を 行 わなかった 場 合 金 融 危 機 などで 地 場 銀 行 が 破 たんに 追 い 込 まれ 最 終 的 には 外 国 資 本 の 支 援 を 受 け 入 れざるを 得 なくなる 可 能 性 がある 7.おわりに 本 稿 では 東 南 アジアの 銀 行 セクターの 全 体 像 をとらえるため 多 様 性 の 大 きな 東 南 アジア 各 国 をあ えて 金 融 先 進 国 と 金 融 後 発 国 の 大 きく 二 つに 分 類 し それぞれを 対 比 することで 分 析 を 行 った それにより 東 南 アジアの 銀 行 セクターの 大 きな 構 造 と 方 向 性 抱 えているリスクをとらえることがで きた 今 回 は 金 融 にかかわるリスクに 着 目 したが 東 南 アジアは 多 くの 課 題 を 抱 えている 足 元 で は インドネシアの 大 統 領 選 挙 やタイの 政 治 的 な 混 乱 など 政 治 リスクも 大 きい 政 治 的 な 不 安 定 は 各 国 の 金 融 規 制 外 資 規 制 などはもちろん AEC 設 立 のような 国 際 連 携 にも 大 きく 影 響 する また 個 別 国 の 分 析 では 二 つのグループを 代 表 する4カ 国 のみ 分 析 を 行 ったが 今 回 対 象 に 含 めなかった タイやベトナムなども 日 本 の 企 業 にとって 重 要 なマーケットである これらについては 今 後 の 研 究 J R Iレビュー 2014 Vol.7, No.17 59