空 中 権 を 巡 る 税 務 上 の 取 扱 い 池 田 誠 税 務 大 学 校 研 究 部 教 育 官
254 要 約 1 研 究 の 目 的 ( 問 題 の 所 在 ) 近 年 の 都 市 再 開 発 事 業 等 では ある 建 物 の 敷 地 の 利 用 されていない 容 積 率 ( 以 下 余 剰 容 積 率 という )を 他 の 敷 地 に 移 転 し より 高 層 のビルの 建 築 を 可 能 とすることによって 土 地 の 有 効 高 度 利 用 を 図 るといったケース が 見 受 けられる このような 容 積 率 を 移 転 する 取 引 ( 以 下 容 積 率 移 転 取 引 という )は 土 地 の 上 空 を 一 定 範 囲 で 区 切 り それを 利 用 する 権 利 を 取 引 の 対 象 とするものであることから 空 中 権 取 引 とも 呼 ばれている わが 国 における 容 積 率 移 転 取 引 は 容 積 率 を 規 制 する 都 市 計 画 法 及 び 建 築 基 準 法 上 の 容 積 率 緩 和 制 度 等 の 適 用 に 関 連 して 行 われているが これらの 法 律 が 直 接 容 積 率 の 移 転 について 規 定 しているわけではなく また 空 中 権 と いった 権 利 が 私 法 上 の 権 利 として 明 示 されているわけではない このような 容 積 率 移 転 取 引 によって 生 ずる 所 得 に 係 る 現 行 の 税 務 上 の 取 扱 いは 適 用 を 受 ける 都 市 計 画 法 及 び 建 築 基 準 法 上 の 制 度 や 用 いる 契 約 形 態 に よって 異 なるものと 考 えられるが 容 積 率 移 転 取 引 によって 生 ずる 経 済 的 効 果 は 適 用 を 受 ける 公 法 上 の 制 度 や 契 約 形 態 によって 異 なるものではない したがって 適 用 を 受 ける 公 法 上 の 制 度 等 の 違 いによって 差 異 が 生 じる 現 行 の 取 扱 いが 妥 当 であるのか 疑 問 である 昨 今 土 地 の 有 効 高 度 利 用 を 図 るために 容 積 率 の 移 転 を 可 能 とする 新 た な 公 法 上 の 制 度 も 創 設 されている 中 容 積 率 移 転 取 引 の 対 価 に 係 る 所 得 区 分 を 巡 る 訴 訟 も 提 起 されていることから 容 積 率 移 転 取 引 を 巡 る 税 務 上 の 取 扱 いの 在 り 方 を 研 究 することには 意 義 があると 考 える 2 研 究 の 概 要 (1) 容 積 率 の 移 転 を 可 能 とする 公 法 上 の 諸 制 度 の 概 要 都 市 計 画 法 建 築 基 準 法 において 容 積 率 を 制 限 する 目 的 は 建 築 物 の 密 度 を 規 制 することにより 道 路 公 園 上 下 水 道 等 の 公 共 施 設 の 供 給 処 理 能 力 のバランスを 保 ち 市 街 地 環 境 の 悪 化 を 防 止 することにあるとされ
255 ているが 一 方 では 土 地 の 有 効 高 度 利 用 を 図 る 観 点 から 一 定 の 要 件 の 下 で 容 積 率 を 緩 和 する 制 度 等 が 用 意 されており わが 国 ではこのような 容 積 率 緩 和 制 度 等 の 運 用 に 関 連 して 容 積 率 の 移 転 が 行 われている この 容 積 率 の 移 転 を 可 能 にする 制 度 には 都 市 計 画 法 に 根 拠 を 置 くもの と 建 築 基 準 法 に 根 拠 を 置 くものとがある イ 都 市 計 画 法 に 根 拠 を 置 く 制 度 都 市 計 画 法 に 根 拠 を 置 く 制 度 には 地 区 計 画 によるもの( 容 積 適 正 配 分 型 地 区 計 画 制 度 再 開 発 促 進 区 制 度 等 )と 地 域 地 区 によるもの( 特 例 容 積 率 適 用 地 区 特 定 街 区 等 )とがある 都 市 計 画 に 根 拠 を 置 く 制 度 は 地 区 計 画 や 地 域 地 区 などの 都 市 計 画 にお いて 容 積 率 の 適 正 配 分 がなされるものであり その 容 積 率 の 配 分 によっ て 各 敷 地 等 の 利 用 容 積 率 に 差 異 が 生 じる 際 に 地 権 者 間 で 容 積 率 の 移 転 が 行 われることになる なお 特 例 容 積 率 適 用 地 区 は 都 市 計 画 におい て 各 敷 地 に 適 用 される 容 積 率 が 指 定 されるわけではなく 都 市 計 画 で 指 定 された 特 例 容 積 率 適 用 地 区 内 の 敷 地 権 者 が 建 築 基 準 法 の 規 定 に 従 い 特 定 行 政 庁 に 特 別 の 容 積 率 の 指 定 を 申 請 し 指 定 を 受 けることになる ロ 建 築 基 準 法 に 根 拠 を 置 く 制 度 建 築 基 準 法 に 根 拠 を 置 く 制 度 には 一 団 地 の 総 合 的 設 計 制 度 連 担 建 築 物 設 計 制 度 等 がある 建 築 基 準 法 による 建 築 物 の 形 態 規 制 は 原 則 として 敷 地 を 単 位 とする この 敷 地 とは 建 築 基 準 法 施 行 令 1 条 1 号 において 一 の 建 築 物 又 は 用 途 上 不 可 分 の 関 係 にある 二 以 上 の 建 築 物 のある 一 団 の 土 地 をいう ( 一 敷 地 一 建 築 物 )と 定 義 されている このため 原 則 として ある 敷 地 の 容 積 率 は その 上 に 建 築 される 一 つの 建 築 物 においてのみ 実 現 する こととなり 他 に 移 転 することはできない この 一 敷 地 一 建 築 物 の 原 則 に 対 して 建 築 基 準 法 は 複 数 の 敷 地 を 一 体 のものとして 容 積 率 を 適 用 する 一 団 地 の 総 合 的 設 計 制 度 連 担 建 築 物 設 計 制 度 等 の 特 例 を 認 めている これらの 制 度 では 複 数 地 権 者 の 敷
256 地 が 一 団 地 として 認 定 されることにより 一 団 地 としての 総 容 積 率 が 規 制 値 以 内 であれば その 敷 地 内 に 建 設 される 建 物 の 容 積 率 の 配 分 を 自 由 に 設 定 できる そこで 地 権 者 間 で 容 積 率 の 移 転 が 行 われることになる ハ 容 積 率 の 移 転 に 対 する 公 法 上 の 効 果 都 市 計 画 法 に 根 拠 を 置 く 制 度 は 都 市 計 画 の 決 定 という 手 続 きを 経 る ことから 容 積 率 移 転 についても 計 画 決 定 という 公 法 的 担 保 効 力 がある と 考 えられる すなわち 都 市 計 画 は 制 限 を 通 じて 都 市 全 体 の 土 地 の 利 用 を 総 合 的 一 体 的 観 点 から 適 正 に 配 分 することを 確 保 するための 計 画 であるところ このような 都 市 計 画 において 指 定 される 各 敷 地 等 の 容 積 率 は 都 市 計 画 の 変 更 等 がない 限 り 永 続 的 に 適 用 されると 考 えられる ため 公 法 上 一 定 の 担 保 がされるものと 考 えられる なお 特 例 容 積 率 適 用 地 区 は 都 市 計 画 において 直 接 各 敷 地 等 の 容 積 率 が 指 定 されるも のではないが 特 定 行 政 庁 が 敷 地 権 者 の 申 請 に 基 づいて 特 例 容 積 率 の 限 度 を 指 定 するものであり 指 定 された 特 例 容 積 率 の 限 度 及 びその 敷 地 の 位 置 等 は 法 令 の 規 定 に 基 づき 公 告 及 び 閲 覧 対 象 とされることから 指 定 された 特 例 容 積 率 には 公 法 上 一 定 の 担 保 的 効 力 があると 解 すること ができる 一 方 建 築 基 準 法 に 根 拠 を 置 く 制 度 は 複 数 建 物 について 総 合 的 に 設 計 される 場 合 等 に これらが 一 敷 地 に 区 域 内 にあるものとみなされて 建 築 基 準 法 が 適 用 される 制 度 であり その 結 果 として 私 人 間 で 容 積 率 移 転 が 行 われることとなるものであって これら 建 物 の 間 で 移 転 した 容 積 率 について 担 保 する 制 度 が 存 在 しない このため 移 転 取 引 後 の 容 積 率 は これらの 制 度 の 適 用 を 利 用 して 建 築 された 建 築 物 についてのみ 有 効 であり 建 替 えには 対 応 しないと 解 されている (2) 容 積 率 移 転 の 法 的 性 質 容 積 率 の 規 制 は 敷 地 の 利 用 権 に 関 する 規 制 であるから 余 剰 容 積 率 を 移 転 するということは 余 剰 容 積 率 を 利 用 する 権 利 ( 以 下 余 剰 容 積 率 利 用 権 という )を 移 転 することであるといえるが わが 国 では 余 剰 容 積 率
257 利 用 権 といった 権 利 が 私 法 上 の 権 利 として 明 示 されているわけではない このため 余 剰 容 積 利 用 権 は 私 人 間 の 契 約 による 債 権 と 解 される しかし 債 権 は 権 利 の 保 護 などの 点 で 不 安 定 であるため 実 際 の 取 引 では 私 法 上 認 められている 各 種 権 利 が 応 用 又 は 適 用 されており 様 々な 契 約 形 態 が 用 いられている 上 記 のとおり 実 際 の 取 引 においては 様 々な 契 約 形 態 が 用 いられている が いずれの 契 約 形 態 を 採 ったとしても 容 積 率 を 移 転 する 側 では 一 定 の 容 積 率 以 上 の 建 築 物 を 建 築 することができないという 効 果 が 生 じ 容 積 率 の 移 転 を 受 ける 側 では 基 準 容 積 率 を 超 える 建 築 物 の 建 築 が 可 能 となるとい った 効 果 が 生 じることに 変 わりはないから 容 積 率 移 転 の 法 的 性 質 は 土 地 の 所 有 権 又 は 借 地 権 に 基 づく 使 用 権 の 一 内 容 としての 建 築 権 の 移 転 であ ると 解 すことができる そして わが 国 の 私 法 上 このような 建 築 権 を 土 地 の 所 有 権 又 は 借 地 権 から 切 り 離 し 独 立 した 処 分 可 能 な 財 産 権 と 構 成 す ることは 困 難 であるから 譲 渡 という 法 的 形 態 により 取 引 が 行 われたとし ても その 実 態 は 譲 渡 先 に 利 用 権 を 付 与 するものであり それは 土 地 の 一 部 の 貸 付 けに 準 じたものと 解 すべきと 考 える (3) 容 積 率 を 移 転 した 場 合 の 税 務 上 の 取 扱 いについて イ 現 行 の 取 扱 い 現 行 の 法 令 において 容 積 率 を 移 転 した 場 合 の 課 税 上 の 取 扱 いを 定 め たものとしては 建 物 若 しくは 構 築 物 の 所 有 を 目 的 とする 地 上 権 若 しく は 賃 借 権 ( 以 下 借 地 権 という ) 又 は 特 定 街 区 内 における 建 築 物 の 建 築 のために 設 定 された 地 役 権 で 建 造 物 の 設 置 を 制 限 するものについ て 一 定 の 要 件 を 充 たす 場 合 に 所 得 税 法 では 譲 渡 とみなし( 所 得 税 法 施 行 令 79 条 1 項 ) 法 人 税 法 では 土 地 の 帳 簿 価 額 の 一 部 損 金 算 入 を 認 め る( 法 人 税 法 施 行 令 148 条 1 項 ) 規 定 がある これらの 規 定 の 趣 旨 は 借 地 権 の 設 定 等 により 土 地 の 利 用 が 長 期 間 にわたって 固 定 され いわば 土 地 の 用 益 権 と 底 地 権 とが 分 離 された 状 態 が 生 じたと 認 められる 場 合 にその 用 益 権 部 分 についてキャピタル ゲイン 課 税 の 清 算 をしようとす
258 るものであると 解 されており 地 役 権 の 設 定 の 範 囲 に 特 定 街 区 内 におけ る 建 築 物 の 建 築 のために 設 定 された 地 役 権 が 追 加 され 趣 旨 も 特 定 街 区 の 申 出 に 同 意 を 与 えた 土 地 所 有 者 は 特 定 街 区 に 指 定 された 後 は 建 築 制 限 を 受 けることとなり その 土 地 は 地 価 の 低 下 をきたす 結 果 となること から 実 質 的 には 所 有 権 の 一 部 の 部 分 的 な 譲 渡 があったものと 考 えられ ることにあるとされている なお 上 記 施 行 令 は 所 得 税 と 法 人 税 の 基 本 的 な 課 税 方 法 の 違 いから 規 定 の 仕 方 が 異 なっているが 資 産 の 譲 渡 と みなして 課 税 関 係 を 考 える 点 は 共 通 であると 考 えられる 上 記 施 行 令 による 現 行 の 取 扱 いでは 容 積 率 の 移 転 が 1 借 地 権 を 設 定 する 場 合 及 び 2 特 定 街 区 内 で 地 役 権 を 設 定 する 場 合 には 一 定 の 要 件 を 充 たせば 資 産 の 譲 渡 として 取 り 扱 われることとなるが 上 記 12 に 該 当 しない 場 合 すなわち 特 定 街 区 の 適 用 に 関 連 して 容 積 率 を 移 転 する 場 合 以 外 で 借 地 権 の 設 定 によらないもの 及 び 特 定 街 区 内 であっ ても 借 地 権 又 は 地 役 権 の 設 定 によらないものについては 資 産 の 譲 渡 と して 取 り 扱 われないと 解 される なお 譲 渡 所 得 における 譲 渡 対 象 資 産 は 法 的 権 利 として 確 立 したものといえなくても 行 政 官 庁 の 許 可 等 に より 発 生 した 事 実 上 の 権 利 も 含 まれると 解 されていることから( 所 得 税 基 本 通 達 33-1) 容 積 率 の 移 転 が 余 剰 容 積 率 利 用 権 ( 債 権 )の 譲 渡 と して 行 われた 場 合 には 資 産 の 譲 渡 に 該 当 するのではないかとも 考 えら れるが 前 述 のとおり 都 市 計 画 法 等 が 直 接 容 積 率 の 移 転 を 規 定 するも のではなく かつ 余 剰 容 積 率 利 用 権 を 所 有 権 又 は 借 地 権 から 分 離 独 立 した 処 分 可 能 な 財 産 権 と 解 することはできないから これを 資 産 の 譲 渡 と 解 することはできないと 考 える ロ 容 積 率 を 移 転 した 場 合 の 税 務 上 の 取 扱 いの 在 り 方 の 検 討 上 記 施 行 令 の 規 定 は 一 定 の 要 件 を 充 たすものを 資 産 の 譲 渡 とみなす 特 例 であると 解 されるから その 要 件 を 充 たすか 否 かは 厳 格 に 解 すべき であって むやみに 拡 大 して 解 釈 すべきではないし このように 厳 格 に 解 することによって 取 扱 いに 差 異 が 生 じたとしても それが 違 法 な 取 扱
259 いとなるものではない しかしながら 容 積 率 を 移 転 した 場 合 に 土 地 の 利 用 が 制 限 されるという 効 果 は すべての 容 積 率 移 転 取 引 に 共 通 するも のであって 適 用 される 公 法 上 の 制 度 や 用 いられる 契 約 形 態 に 影 響 され るものではない そうすると 上 記 施 行 令 の 趣 旨 や 昭 和 44 年 の 改 正 の 趣 旨 に 照 らし 現 行 の 取 扱 いが 合 理 的 であるのか 疑 問 が 生 ずる 一 方 私 法 上 の 権 利 として 明 示 されていない 権 利 が 取 引 の 対 象 となっている 場 合 に 経 済 的 実 質 だけで 課 税 上 の 取 扱 いを 決 してしまうことにも 問 題 があると 考 える 上 記 の 点 を 踏 まえて 容 積 率 を 移 転 した 場 合 の 税 務 上 の 取 扱 いを 検 討 す ると 容 積 率 を 移 転 したことによって その 土 地 の 利 用 が 著 しく 制 限 さ れるという 経 済 的 効 果 に 対 して 一 定 の 法 的 根 拠 があると 考 えられる 場 合 には 資 産 の 譲 渡 とみなす 特 例 の 対 象 とすることが 合 理 的 であり か つ 上 記 施 行 令 の 趣 旨 にも 合 致 するものと 考 える すなわち 都 市 計 画 法 に 根 拠 を 置 く 制 度 の 適 用 に 関 連 して 容 積 率 を 移 転 する 場 合 には 都 市 計 画 法 による 決 定 手 続 きを 経 ることなどによって 公 法 上 の 担 保 効 力 を 有 すると 解 されることから 当 事 者 が 用 いる 契 約 形 態 に 関 係 なく 特 例 の 対 象 とし また 建 築 基 準 法 に 根 拠 を 置 く 制 度 の 適 用 に 関 連 して 容 積 率 を 移 転 する 場 合 であっても それが 借 地 権 や 地 役 権 を 設 定 して 行 われ かつ 登 記 されている 場 合 には 容 積 率 移 転 による 権 利 関 係 が 明 確 に 表 示 されることから 特 例 の 対 象 とすることが 合 理 的 であると 考 える なお 現 行 の 施 行 令 が 設 けている 容 積 率 移 転 の 対 価 として 収 受 する 金 額 又 は 容 積 率 移 転 による 地 価 の 下 落 幅 の 要 件 については 現 行 の 基 準 を 維 持 すべきであると 考 える (4) 容 積 率 の 移 転 を 受 けた 場 合 の 取 扱 いについて 容 積 率 の 移 転 を 受 けた 場 合 の 対 価 について 建 物 の 取 得 価 額 とすべきか 土 地 等 の 取 得 価 額 とすべきか あるいは 繰 延 資 産 と 解 すべきかといった 問 題 があるが 現 行 の 法 令 等 においてこの 点 を 明 確 に 規 定 したものは 見 受 け られない
260 容 積 率 移 転 取 引 は より 高 層 の 建 築 物 を 建 築 するために 行 われるもので あるから その 対 価 は 建 物 の 取 得 価 額 又 はそのような 便 益 を 享 受 するため の 費 用 とみることも 可 能 であると 考 えられるが 容 積 率 の 移 転 を 受 けるこ とによって その 土 地 の 利 用 価 値 が 増 加 するという 効 果 が 生 ずるのである から 容 積 率 移 転 の 対 価 は 土 地 の 取 得 価 額 と 解 すべきであり その 取 扱 い を 明 確 にするためには 法 令 に 明 記 すべきであると 考 える
261 目 次 はじめに 263 第 1 章 容 積 率 の 移 転 を 可 能 とする 公 法 上 の 諸 制 度 266 第 1 節 容 積 率 移 転 の 概 念 266 1 容 積 率 制 限 の 趣 旨 目 的 266 2 容 積 率 移 転 の 意 義 269 第 2 節 容 積 率 の 移 転 を 可 能 とする 公 法 上 の 諸 制 度 269 1 容 積 率 の 移 転 を 可 能 とする 諸 制 度 の 概 要 269 2 各 制 度 を 適 用 して 容 積 率 を 移 転 した 場 合 の 公 法 上 の 効 果 277 第 2 章 容 積 率 移 転 の 法 的 性 質 281 第 1 節 容 積 率 移 転 の 法 的 性 質 と 契 約 形 態 に 関 する 考 察 281 1 容 積 率 移 転 取 引 において 用 いられる 契 約 形 態 等 の 考 察 281 2 容 積 率 移 転 の 法 的 性 質 に 関 する 考 察 284 3 容 積 率 移 転 の 法 的 性 質 についての 判 断 を 示 した 裁 判 例 285 4 小 括 287 第 2 節 容 積 率 移 転 の 具 体 的 事 例 288 1 東 京 駅 周 辺 の 再 開 発 の 事 例 288 2 日 比 谷 シティの 事 例 289 3 札 幌 ANビルの 事 例 290 4 堂 島 大 阪 ビルの 事 例 291 第 3 章 容 積 率 移 転 に 関 する 税 務 上 の 取 扱 い 292 第 1 節 容 積 率 を 移 転 した 場 合 の 現 行 の 税 務 上 の 取 扱 い 292 1 容 積 率 の 移 転 に 係 る 所 得 税 法 及 び 法 人 税 法 上 の 規 定 292 2 容 積 率 を 移 転 した 者 の 税 務 上 の 取 扱 いについて 297 第 2 節 容 積 率 の 移 転 を 受 けた 者 の 税 務 上 の 取 扱 いについて 307 第 3 節 その 他 の 問 題 点 について 309 1 容 積 率 の 移 転 が 無 償 で 行 われた 場 合 の 取 扱 いについて 309
262 2 容 積 率 移 転 の 対 価 として 移 転 された 容 積 率 を 使 用 して 建 築 された 建 築 物 の 区 分 所 有 権 が 授 受 される 場 合 の 取 扱 い 313 第 4 節 容 積 率 を 移 転 した 場 合 の 税 務 上 の 取 扱 いの 在 り 方 について 314 結 びに 代 えて 317
263 はじめに 東 京 駅 周 辺 の 再 開 発 事 業 では 東 京 駅 駅 舎 上 空 の 利 用 されていない 容 積 率 を 周 辺 に 建 築 される 新 丸 ビル 等 に 移 転 し より 高 層 のビルの 建 築 を 可 能 とするこ とによって 土 地 の 有 効 高 度 利 用 が 図 られた なお 容 積 率 を 提 供 したJR 東 日 本 は この 取 引 によって 得 た 対 価 を 東 京 駅 駅 舎 の 改 修 工 事 の 費 用 に 充 てた とされている このように 昨 今 の 都 市 再 開 発 事 業 等 では ある 建 物 の 敷 地 に 生 じている 余 剰 容 積 率 を 相 当 の 対 価 をもって 他 の 敷 地 に 移 転 する 取 引 ( 以 下 このような 取 引 を 容 積 率 移 転 取 引 という )が 行 われている このような 容 積 率 移 転 取 引 は 土 地 の 上 空 を 一 定 範 囲 で 区 切 り それを 利 用 する 権 利 を 取 引 の 対 象 とする ものであることから 一 般 に 空 中 権 取 引 とも 呼 ばれている (1) 容 積 率 が 取 引 の 対 象 とされる 背 景 には 都 市 計 画 法 及 び 建 築 基 準 法 による 建 築 物 の 容 積 率 規 制 が 密 接 に 関 係 している 容 積 率 が 規 制 されていなければ ど れだけ 高 層 のビルを 建 築 しても 良 わけであるが 無 秩 序 に 建 築 物 の 建 築 を 認 め てしまうと 都 市 の 生 活 環 境 の 悪 化 や 災 害 時 への 対 応 ができないといった 弊 害 が 生 じる 可 能 性 があるため 都 市 計 画 法 及 び 建 築 基 準 法 によって 建 築 物 の 容 積 率 等 が 一 定 の 範 囲 内 に 制 限 され これによって 都 市 の 健 全 な 発 展 や 秩 序 の 維 持 が 図 られている そして このように 容 積 率 が 制 限 される 結 果 制 限 の 上 限 まで 使 用 していない 建 築 物 の 敷 地 において 余 剰 容 積 率 が 認 識 され これを 他 の 敷 地 で 使 用 する 際 に 容 積 率 移 転 取 引 が 行 われることとなり また それは 都 市 計 画 法 や 建 築 基 準 法 上 の 容 積 率 緩 和 制 度 等 の 適 用 を 受 けることによって 可 能 となるものである 前 述 の 東 京 駅 周 辺 の 再 開 発 事 業 における 東 京 駅 舎 上 空 の (1) 空 中 権 とは ある 土 地 の 上 空 の 一 定 範 囲 をその 土 地 の 上 で 利 用 する 権 利 ( 狭 義 の 空 中 権 Air Rights)のことをいい 上 記 のような 容 積 率 の 移 転 は 開 発 権 の 移 転 ( Transfer of Development Rights ) 又 は 移 転 可 能 な 開 発 権 ( Transferable Development Rights)と 呼 ばれるべきであって これを 一 律 に 空 中 権 と 呼 ぶのは 適 当 でないとする 意 見 もあるが( 建 設 省 空 中 権 調 査 研 究 会 編 著 空 中 権 -その 理 論 と 運 用 - ぎょうせい(1985)3 頁 参 照 ) わが 国 では これらを 併 せて 空 中 権 と 呼 ぶ 場 合 が 多 い
264 容 積 率 の 移 転 も 平 成 12 年 度 の 都 市 計 画 法 建 築 基 準 法 の 改 正 で 創 設 された 特 例 容 積 率 適 用 区 域 制 度 の 適 用 を 受 けて 行 われたものである 上 記 のとおり 容 積 率 移 転 取 引 は 都 市 計 画 法 及 び 建 築 基 準 法 上 の 諸 制 度 の 適 用 に 関 連 して 行 われているが これらの 法 律 が 直 接 容 積 率 の 移 転 について 規 定 しているわけではない したがって 容 積 率 の 移 転 は 公 法 上 認 められている ものではなく あくまでも 私 人 間 の 行 為 として 行 われているものと 解 される そして わが 国 の 現 行 法 令 において 空 中 権 又 は 余 剰 容 積 率 利 用 権 といった 権 利 が 明 示 の 権 利 として 規 定 されているわけではないことから これらの 権 利 は 私 法 上 は 当 事 者 の 契 約 に 基 づく 債 権 と 解 される もっとも 債 権 の 取 引 では 権 利 関 係 が 不 安 定 であることから 実 際 の 取 引 では 私 法 上 認 められている 物 権 を 応 用 又 は 適 用 して 取 引 を 行 うケースも 見 受 けられるところであり 取 引 に 用 い られる 契 約 形 態 は 様 々である 一 方 容 積 率 移 転 取 引 に 係 る 税 務 上 の 取 扱 いをみると 所 得 税 法 施 行 令 79 条 1 項 及 び 法 人 税 法 施 行 令 138 条 1 項 において 借 地 権 を 設 定 する 場 合 や 都 市 計 画 法 に 基 づく 特 定 街 区 制 度 の 適 用 を 受 けて 地 役 権 を 設 定 して 容 積 率 を 移 転 す る 場 合 で 一 定 の 要 件 を 充 たすものについては 資 産 の 譲 渡 とみなす 旨 が 規 定 さ れているが これに 該 当 しない 場 合 については 特 段 規 定 されていない この ため 容 積 率 の 移 転 が 都 市 計 画 法 及 び 建 築 基 準 法 上 のどの 制 度 の 適 用 に 関 連 し て 行 われるか また 当 事 者 がどのような 契 約 形 態 を 用 いるかによって 税 務 上 の 取 扱 いに 差 異 が 生 じていると 考 えられ 実 際 に 容 積 率 移 転 取 引 によって 得 た 対 価 の 所 得 区 分 を 巡 る 訴 訟 も 提 起 されている 現 行 法 令 の 解 釈 上 このような 取 扱 いの 差 異 が 生 じていたとしても その 取 扱 いに 従 った 処 分 が 直 ちに 違 法 となるものではないが 一 般 に 容 積 率 を 移 転 した 土 地 はその 利 用 価 値 が 減 尐 し 価 額 が 下 落 すると 考 えられるところ その ような 経 済 的 効 果 は 都 市 計 画 法 及 び 建 築 基 準 法 上 のどの 制 度 の 適 用 を 受 けて 行 われるか また 当 事 者 がどのような 契 約 形 態 を 選 択 するかによって 異 なる ものではないから 現 行 法 令 の 解 釈 上 生 じている 取 扱 いの 差 異 が 適 正 公 平 な 課 税 といった 観 点 から 妥 当 なものであるのかといった 疑 問 がある さらには
265 容 積 率 の 移 転 を 受 けた 側 における 税 務 上 の 取 扱 いについても 明 確 な 規 定 は 見 当 たらず 疑 義 が 生 ずる 可 能 性 がある 上 記 のとおり 容 積 率 移 転 取 引 を 巡 る 税 務 上 の 取 扱 いについては 統 一 的 な 取 扱 いがされていないと 解 される 部 分 や 明 確 にされていない 考 えられる 部 分 も あるところ 昨 今 では 土 地 の 有 効 高 度 利 用 を 図 ることを 目 的 として 都 市 計 画 法 建 築 基 準 法 等 の 改 正 により 容 積 率 の 移 転 を 可 能 とする 新 たな 制 度 も 創 設 さ れており 容 積 率 を 移 転 する 取 引 は 今 後 ますます 増 加 していくものと 考 えら れることから 容 積 率 移 転 取 引 を 巡 る 税 務 上 の 取 扱 いについて 研 究 し 明 確 に していくことには 意 義 があると 考 える
266 第 1 章 容 積 率 の 移 転 を 可 能 とする 公 法 上 の 諸 制 度 容 積 率 の 移 転 に 関 する 税 務 上 の 取 扱 いを 考 察 する 前 提 として まず 容 積 率 移 転 の 意 義 を 整 理 しておく 必 要 がある そこで 本 章 では 建 築 基 準 法 都 市 計 画 法 における 容 積 率 規 制 の 趣 旨 及 び 容 積 率 の 移 転 を 可 能 とする 諸 制 度 を 概 観 し それらの 制 度 の 適 用 により 容 積 率 の 移 転 に 対 してどのような 効 果 が 生 じるのかを 考 察 する 第 1 節 容 積 率 移 転 の 概 念 1 容 積 率 制 限 の 趣 旨 目 的 建 築 基 準 法 における 容 積 率 とは 建 築 物 の 延 べ 面 積 の 敷 地 面 積 に 対 する 割 合 をいう( 建 築 基 準 法 52 条 1 項 ) この 延 べ 面 積 とは 建 築 物 の 各 階 の 床 面 積 の 合 計 をいい( 建 築 基 準 法 施 行 令 2 条 1 項 4 号 ) 一 方 敷 地 面 積 とは 敷 地 の 水 平 投 影 面 積 によるとされている( 同 項 3 号 ) すなわち 容 積 率 制 限 と は 一 定 の 敷 地 に 対 して 建 築 することができる 建 築 物 の 床 面 積 の 合 計 の 限 度 であるといえる (2) ところで 民 法 206 条 は 所 有 権 の 内 容 について 所 有 者 は 法 令 の 制 限 内 において 自 由 に 所 有 物 の 使 用 収 益 及 び 処 分 をする 権 利 を 有 する と 規 定 しており さらに 同 法 207 条 では 土 地 の 所 有 権 の 範 囲 について 土 地 の 所 有 権 は 法 令 の 制 限 内 において その 土 地 の 上 下 に 及 ぶ と 定 めている し たがって 土 地 の 所 有 者 は 原 則 として 所 有 する 土 地 の 上 下 ( 地 上 及 び 地 下 ) を 自 由 に 使 用 収 益 処 分 することができ 土 地 の 所 有 者 が 所 有 する 土 地 に (2) 容 積 率 算 定 上 の 延 べ 面 積 には 一 定 限 度 内 において 自 動 車 車 庫 等 の 床 面 積 の 不 算 入 住 宅 の 地 階 の 床 面 積 の 不 算 入 又 は 共 同 住 宅 の 共 用 廊 下 共 用 階 段 部 分 の 床 面 積 の 不 算 入 等 の 措 置 が 講 じられている( 建 築 基 準 法 52 条 2 項 同 4 項 建 築 基 準 法 施 行 令 2 条 1 項 4 号 同 3 項 )
267 建 築 物 を 建 築 する 場 合 には 原 則 としてその 形 態 ( 高 さや 容 積 率 など)を 自 由 に 決 めることができるのであるが そこには 法 令 の 制 限 内 において と いう 条 件 が 付 されていることから 一 定 の 制 限 が 加 えられることとなる 後 述 するとおり 都 市 計 画 法 及 び 建 築 基 準 法 による 容 積 率 制 限 もその 制 限 の 一 つの 形 態 である このような 所 有 権 に 対 する 法 令 の 制 限 は 憲 法 29 条 2 項 が 財 産 権 の 内 容 は 公 共 の 福 祉 に 適 合 するやうに 法 律 でこれを 定 める と 規 定 する 趣 旨 に 基 づくものである すなわち 同 項 は 私 有 財 産 権 も 公 共 の 福 祉 という 観 点 から 制 限 を 受 けるものであることを 明 らかにしているところ 民 法 206 条 及 び 207 条 に 規 定 する 所 有 権 も 財 産 権 の 中 の 主 要 なものとして その 制 限 のも とにおかれているのである (3) そして 土 地 の 所 有 権 を 制 限 する 主 要 な 法 令 が 都 市 計 画 法 及 び 建 築 基 準 法 ということになる 都 市 計 画 法 及 び 建 築 基 準 法 は ともに 公 共 の 福 祉 の 増 進 に 資 することを 目 的 とするものであり 都 市 計 画 法 は 都 市 計 画 に 関 し 必 要 な 事 項 を 定 めるこ とにより 都 市 の 健 全 な 発 展 と 秩 序 ある 整 備 を 図 ることによって また 建 築 基 準 法 は 建 築 物 の 敷 地 構 造 設 備 及 び 用 途 に 関 する 最 低 限 の 基 準 を 定 めて 国 民 の 生 命 健 康 及 び 財 産 の 保 護 を 図 ることによって その 目 的 を 実 現 しようとするものである (4) 都 市 の 生 活 環 境 を 整 備 保 全 しあるいは 都 市 機 能 を 十 分 に 発 揮 させるためには 道 路 公 園 下 水 道 等 の 公 共 施 設 を 計 画 的 に 整 備 していくことと 合 わせて 公 共 および 民 間 の 多 くの 主 体 によって 建 築 される 建 築 物 について 計 画 に 基 づいて 規 制 し または 誘 導 することが 必 要 で (3) 我 妻 榮 有 泉 亨 清 水 誠 田 山 輝 男 我 妻 有 泉 コンメンタール 民 法 - 総 則 物 権 債 権 - 401 頁 ( 日 本 評 論 社 2006) 参 照 (4) 都 市 計 画 法 は 都 市 計 画 の 内 容 及 びその 決 定 手 続 都 市 計 画 制 限 都 市 計 画 事 業 その 他 都 市 計 画 に 関 し 必 要 な 事 項 を 定 めることにより 都 市 の 健 全 な 発 展 と 秩 序 あ る 整 備 を 図 り もって 国 土 の 均 衡 ある 発 展 と 公 共 の 福 祉 の 増 進 に 寄 与 すること を 目 的 とするものであり( 都 市 計 画 法 1 条 ) 建 築 基 準 法 は 建 築 物 の 敷 地 構 造 設 備 及 び 用 途 に 関 する 最 低 限 の 基 準 を 定 めて 国 民 の 生 命 健 康 及 び 財 産 の 保 護 を 図 り もって 公 共 の 福 祉 の 増 進 に 資 すること を 目 的 とするものである( 建 築 基 準 法 1 条 )
268 ある そして 多 くの 主 体 の 集 合 体 としての 都 市 にあって 建 築 物 は 相 互 の 環 境 や 機 能 を 一 定 の 限 度 内 において 損 なわないこと また 集 団 としての 建 築 物 は 都 市 の 一 部 としてその 発 展 や 秩 序 のために 一 定 の 役 割 を 果 たすことが 求 められている このための 建 築 規 制 として 定 められているのが 建 築 基 準 法 第 3 章 の 規 定 であり この 規 定 は 建 築 物 の 集 団 としての 立 場 から 建 築 規 制 を 行 なう 際 の 建 築 基 準 であることから 集 団 規 定 と 呼 ばれている (5) そし てこの 集 団 規 定 は 都 市 計 画 に 基 づいて 実 施 されるものであり 都 市 計 画 を 実 現 するための 有 力 な 手 段 の 一 つとして 位 置 づけられる (6) 上 記 のとおり 都 市 計 画 法 及 び 建 築 基 準 法 は 都 市 計 画 の 実 現 といった 観 点 から 土 地 の 用 途 や 建 築 物 の 形 態 等 を 制 限 しているが 特 に 住 環 境 の 保 全 や 道 路 などの 都 市 インフラストラクチャーに 与 える 負 荷 をコントロールする ために 設 けられているのが 容 積 率 制 限 である すなわち 容 積 率 制 限 は 建 築 物 の 密 度 を 規 制 することにより 道 路 公 園 上 下 水 道 等 の 公 共 施 設 の 供 給 処 理 能 力 のバランスを 保 ち 市 街 地 環 境 の 悪 化 を 防 止 することを 目 的 と するものであり これによって 都 市 機 能 の 健 全 な 発 展 と 秩 序 の 整 備 を 図 って いるのである 容 積 率 制 限 の 基 本 となる 規 定 は 建 築 基 準 法 52 条 1 項 であり 具 体 的 な 容 積 率 の 限 度 は 原 則 として 同 項 に 規 定 されている 複 数 の 限 度 のうちから 用 途 地 域 (7) の 都 市 計 画 において 選 択 して 指 定 される 上 限 ( 指 定 容 積 率 )と 前 面 道 路 の 幅 員 (12m 未 満 の 場 合 に 限 る)に4/10( 住 居 系 以 外 の 用 途 地 域 及 び 用 途 地 域 の 指 定 のない 区 域 内 では6/10)を 乗 じて 算 出 される 容 積 率 の 上 限 ( 道 路 幅 員 制 限 )とのうち 数 値 の 小 さいものが 上 限 ( 基 準 容 積 率 )とされる (5) これに 対 し 第 2 章 の 規 定 は 単 体 としての 建 築 物 が 共 通 して 備 えていなければ ならない 基 準 を 定 めるものであることから 単 体 規 定 と 呼 ばれている (6) 新 建 築 学 大 系 編 集 委 員 会 編 新 建 築 学 大 系 16 都 市 計 画 158 頁 (1981 彰 国 社 ) 参 照 (7) 用 途 地 域 とは 都 市 計 画 法 8 条 1 項 1 号 で 定 める 第 一 種 低 層 住 居 専 用 地 域 第 二 種 低 層 住 居 専 用 地 域 第 一 種 中 高 層 住 居 専 用 地 域 第 二 種 中 高 層 住 居 専 用 地 域 第 一 種 住 居 地 域 第 二 種 住 居 地 域 準 住 居 地 域 近 隣 商 業 地 域 商 業 地 域 準 工 業 地 域 工 業 地 域 又 は 工 業 専 用 地 域 をいう
269 2 容 積 率 移 転 の 意 義 上 記 1で 述 べたとおり 建 築 する 建 築 物 には 容 積 率 の 上 限 が 設 けられてい るが すべての 建 築 物 がその 上 限 まで 一 杯 に 使 って 建 築 されるわけではない 例 えば 敷 地 Aの 基 準 容 積 率 ( 容 積 率 の 上 限 )が 500%であり 実 際 に 建 築 される 建 物 の 容 積 率 が 300%であった 場 合 使 用 されていない 容 積 率 が 200% あると 考 えることができる 一 方 敷 地 Aと 同 じ 面 積 基 準 容 積 率 である 敷 地 Bを 所 有 する 者 が そこに 容 積 率 700%の 建 物 を 建 築 したいと 考 えた 場 合 そのままでは 基 準 容 積 率 を 超 過 するため 希 望 する 建 築 物 を 建 築 することが できない このとき 敷 地 Aの 余 剰 容 積 率 を 敷 地 Bで 利 用 することができれ ば 敷 地 Bの 所 有 者 は 希 望 どおりの 建 築 物 を 建 築 することができ かつ 両 敷 地 の 総 容 積 率 で 考 えた 場 合 には 基 準 容 積 率 の 範 囲 内 に 収 まり 土 地 の 有 効 利 用 が 図 られることとなる 容 積 率 移 転 取 引 は このように ある 敷 地 で 生 じている 余 剰 容 積 率 等 を 他 の 敷 地 で 利 用 しようとする 場 合 に 行 われることと なる しかしながら 前 述 のとおり 建 築 物 の 容 積 率 は 都 市 計 画 法 及 び 建 築 基 準 法 により 一 定 の 制 限 がされているため 単 に 余 剰 容 積 率 を 有 する 敷 地 権 者 と 他 の 敷 地 権 者 との 間 で 容 積 率 移 転 に 関 する 合 意 が 成 立 しただけでは 容 積 率 の 移 転 を 受 けた 敷 地 に 基 準 容 積 率 を 超 える 建 築 物 を 建 築 することはできない そこで 容 積 率 の 移 転 を 受 けた 敷 地 において 基 準 容 積 率 を 超 える 建 築 物 を 建 築 するために 都 市 計 画 法 及 び 建 築 基 準 法 による 容 積 率 規 制 の 緩 和 等 を 受 ける 必 要 がある 次 節 では 容 積 率 の 移 転 を 可 能 とする 容 積 率 緩 和 制 度 等 につい て 概 観 し これらの 制 度 が 容 積 率 の 移 転 にどのよう 効 果 を 有 するものである かを 考 察 することとする 第 2 節 容 積 率 の 移 転 を 可 能 とする 公 法 上 の 諸 制 度 1 容 積 率 の 移 転 を 可 能 とする 諸 制 度 の 概 要 前 節 で 述 べたとおり 都 市 計 画 法 及 び 建 築 基 準 法 において 建 築 物 の 形 態 を
270 制 限 する 最 大 の 理 由 は 乱 開 発 を 防 止 することにより 都 市 機 能 を 維 持 し 良 好 な 都 市 環 境 を 確 保 することにあると 考 えられるが 他 方 土 地 の 有 効 高 度 利 用 を 図 り 都 市 活 動 を 活 性 化 していくことも 重 要 であることから 都 市 計 画 法 及 び 建 築 基 準 法 には 容 積 率 の 緩 和 制 度 等 が 用 意 されており わが 国 では これらの 容 積 率 を 緩 和 する 制 度 等 の 運 用 に 関 連 して 容 積 率 の 移 転 が 行 われている 容 積 率 の 移 転 を 可 能 とする 現 行 制 度 には 特 定 街 区 制 度 再 開 発 促 進 区 制 度 特 例 容 積 率 適 用 地 区 制 度 一 団 地 の 総 合 的 設 計 制 度 連 担 建 築 物 設 計 制 度 等 があるが 以 下 これらの 制 度 について 概 観 する (1) 都 市 計 画 法 に 基 づく 制 度 イ 特 定 街 区 ( 都 市 計 画 法 8 条 1 項 4 号 9 条 19 項 ) (イ) 制 度 の 概 要 特 定 街 区 制 度 は 良 好 な 環 境 と 健 全 な 形 態 を 有 する 建 築 物 の 建 築 と 併 せて 有 効 な 空 地 を 確 保 するものについて 容 積 率 等 の 緩 和 を 行 い 市 街 地 の 整 備 改 善 を 図 るための 制 度 として 昭 和 36 年 に 創 設 された (8) 特 定 街 区 とは 市 街 地 の 整 備 改 善 を 図 るための 街 区 の 整 備 又 は 造 成 が 行 われる 地 区 について その 街 区 内 における 建 築 物 の 延 べ 面 積 の 敷 地 面 積 に 対 する 割 合 並 びに 建 築 物 の 高 さの 最 高 限 度 及 び 壁 面 の 位 置 の 制 限 を 定 める 街 区 とする と 定 義 されており( 都 市 計 画 法 9 条 19 項 ) 都 市 計 画 法 に 基 づく 都 市 計 画 の 決 定 手 続 きを 経 て 指 定 される (9) 特 定 街 区 制 度 では 街 区 を 単 位 として 有 効 な 空 地 を 備 えた 市 街 地 (8) 国 土 交 通 省 ホームページ http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/seido/keisei/kijunho.html 参 照 (9) 国 土 交 通 省 が 策 定 した 第 6 版 都 市 計 画 運 用 指 針 ( 平 成 20 年 12 月 ) では 特 定 街 区 は 街 区 として 形 が 整 い かつ 地 域 の 特 性 に 応 じて オープンスペースと しての 機 能 が 期 待 できる 広 さの 空 地 を 確 保 しつつ 形 態 規 制 を 加 えてもなお 有 効 高 度 利 用 を 図 ることが 可 能 なだけの 建 築 かつ 地 域 の 特 性 に 応 じて オープンスペ ースとしての 機 能 が 期 待 できる 広 さの 空 地 を 確 保 しつつ 形 態 規 制 を 加 えてもなお 有 効 高 度 利 用 を 図 ることが 可 能 なだけの 建 築 敷 地 が 確 保 できるとの 観 点 から あ る 程 度 まとまった 規 模 の 街 区 について 指 定 することが 望 ましい とされている
271 の 整 備 改 善 に 資 する 建 築 物 の 計 画 を 都 市 計 画 に 定 め 建 築 形 態 の 一 般 的 規 制 を 適 用 せずにこれに 置 き 換 えられる (10) 具 体 的 な 指 定 基 準 等 の 要 件 は 各 地 方 自 治 体 によって 異 なり 公 開 空 地 の 設 定 公 共 公 益 的 施 設 等 の 設 置 歴 史 的 建 築 物 の 修 理 などの 対 応 に 応 じて 割 増 容 積 率 も 与 えられる また 複 数 の 街 区 から 成 る 地 区 において これらの 街 区 を 全 体 的 に 計 画 した 方 が 個 別 に 計 画 するよりも 一 体 性 をもった 適 正 な 地 区 の 形 成 が 図 られると 判 断 されるときは 当 該 複 数 の 街 区 を 一 つの 特 定 街 区 として 指 定 することも 可 能 である 特 定 街 区 は 市 町 村 が 都 市 計 画 として 定 めるが( 都 市 計 画 法 15 条 1 項 なお 東 京 23 区 内 で1ha を 超 えるものについては 都 が 定 める( 同 法 87 条 の4 第 1 項 同 法 施 行 令 46 条 1 号 )) プロジェクト 毎 の 対 応 で あり 事 業 者 の 申 請 によって 行 政 庁 が 指 定 するという 受 身 の 制 度 であ る (11) なお 特 定 街 区 に 関 する 都 市 計 画 の 案 については 利 害 関 係 を 有 する 者 (12) の 同 意 を 得 なければならないとされており( 都 市 計 画 法 17 条 3 項 ) 都 市 計 画 の 変 更 をする 場 合 にも 同 様 に 利 害 関 係 を 有 する 者 の 同 意 が 必 要 となる( 同 法 21 条 2 項 ) (ロ) 容 積 利 率 移 転 への 適 用 特 定 街 区 制 度 は 都 市 計 画 決 定 という 形 式 により 街 区 単 位 の 総 合 的 な 建 築 計 画 を 独 自 に 定 め 建 築 基 準 法 上 の 建 ぺい 率 容 積 率 等 の 規 制 の 適 用 を 排 除 することができる 制 度 であることから 街 区 の 設 計 にお いて 高 層 利 用 部 分 と 低 層 利 用 部 分 をつくり 出 すことによって メリハ リのきいた 建 築 計 画 を 実 施 することができる この 結 果 容 積 率 を 譲 (10) 国 土 交 通 省 前 掲 注 8 参 照 (11) 社 団 法 人 日 本 プロジェクト 産 業 協 議 会 空 中 権 容 積 移 転 の 現 状 と 課 題 3 頁 (1985) 参 照 (12) 利 害 関 係 を 有 する 者 とは 当 該 特 定 街 区 内 の 土 地 について 所 有 権 建 物 の 所 有 を 目 的 とする 対 抗 要 件 を 備 えた 地 上 権 若 しくは 賃 借 権 又 は 登 記 した 先 取 特 権 質 権 若 しくは 抵 当 権 を 有 する 者 及 びこれらの 権 利 に 関 する 仮 登 記 これらの 権 利 に 関 する 差 押 えの 登 記 又 はその 土 地 に 関 する 買 戻 しの 特 約 の 登 記 の 登 記 名 義 人 をいう( 都 市 計 画 法 施 行 令 11 条 )
272 渡 して 低 層 利 用 地 域 となる 土 地 の 利 用 者 その 容 積 率 を 活 用 して 高 層 利 用 地 域 となる 土 地 の 利 用 者 が 発 生 し この 権 利 者 間 で 容 積 率 移 転 に 伴 う 権 利 の 設 定 等 が 行 われることとなる また この 容 積 率 移 転 は 特 定 街 区 が 道 路 を 越 えて 設 定 できることから 街 区 を 越 えて 容 積 率 移 転 を 可 能 としており 要 件 を 充 たす 複 数 の 街 区 を 飛 び 越 えての 移 転 も 可 能 である この 制 度 の 特 徴 は この 容 積 率 移 転 が 都 市 計 画 決 定 という 制 度 によ って 位 置 づけられる 点 にあるとされている (13) ロ 再 開 発 等 促 進 区 ( 都 市 計 画 法 12 条 の5 第 3 項 ) (イ) 制 度 の 概 要 再 開 発 等 促 進 区 制 度 は 現 に 土 地 の 利 用 状 況 が 著 しく 変 化 しつつあ る 等 の 条 件 に 該 当 する 土 地 の 区 域 における 地 区 計 画 について 地 区 内 の 公 共 施 設 の 整 備 と 合 わせて 建 築 物 の 用 途 容 積 率 等 の 制 限 を 緩 和 することにより 良 好 なプロジェクトを 誘 導 するための 制 度 であり 平 成 14 年 度 に 再 開 発 地 区 計 画 ( 昭 和 63 年 創 設 ) 及 び 住 宅 地 高 度 利 用 地 区 計 画 ( 平 成 2 年 創 設 )を 統 合 して 創 設 された (14) 再 開 発 等 促 進 区 とは 土 地 の 合 理 的 かつ 健 全 な 高 度 利 用 と 都 市 機 能 の 増 進 を 図 るため 一 体 的 かつ 総 合 的 な 市 街 地 の 再 開 発 又 は 開 発 整 備 を 実 施 すべき 区 域 とされ 都 市 計 画 により 指 定 される( 都 市 計 画 法 12 条 の5 第 3 項 ) 再 開 発 等 促 進 区 を 定 める 地 区 計 画 は まとまった 低 未 利 用 地 等 相 当 程 度 の 土 地 の 区 域 における 土 地 利 用 の 転 換 を 円 滑 に 推 進 するため 都 市 基 盤 整 備 と 建 築 物 等 との 一 体 的 な 整 備 に 関 する 計 画 に 基 づき 事 業 の 熟 度 に 応 じて 市 街 地 のきめ 細 かな 整 備 を 段 階 的 に 進 めることによ り 都 市 の 良 好 な 資 産 の 形 成 に 資 するプロジェクトや 良 好 な 中 高 層 の (13) 日 端 康 雄 編 著 都 市 再 生 を 目 指 して 建 築 空 間 の 容 積 率 移 転 とその 活 用 129 135 頁 ( 清 文 社 2002) 参 照 (14) 国 土 交 通 省 ホームページ 前 掲 注 8 参 照
273 住 宅 市 街 地 の 開 発 整 備 を 誘 導 することにより 都 市 環 境 の 整 備 改 善 及 び 良 好 な 地 域 社 会 の 形 成 に 寄 与 しつつ 土 地 の 高 度 利 用 と 都 市 機 能 の 推 進 を 図 ることを 目 的 としている (15) 再 開 発 等 促 進 区 では 当 該 区 域 の 整 備 開 発 及 び 保 全 に 関 する 方 針 など 地 区 計 画 で 定 める 事 項 のほか 土 地 利 用 に 関 する 基 本 方 針 道 路 公 園 等 の 主 要 な 公 共 施 設 の 配 置 及 び 規 模 を 定 めることとされ また 建 築 物 等 に 対 する 制 限 の 特 例 として 都 市 計 画 で 定 められた 再 開 発 等 促 進 区 を 定 める 地 区 計 画 に 適 合 する 建 築 物 で 用 途 容 積 率 の 制 限 建 築 物 の 高 さの 制 限 等 について 特 定 行 政 庁 が 交 通 上 安 全 上 防 災 上 及 び 衛 生 上 支 障 がないと 認 めて 認 定 又 は 許 可 したものについては 一 般 規 制 を 超 えることができる (16) (ロ) 容 積 利 率 移 転 への 適 用 地 区 計 画 に 定 められた 容 積 率 の 緩 和 を 受 け 街 区 ごとの 利 用 容 積 の 調 整 を 実 施 し それぞれの 敷 地 において 特 定 行 政 庁 が 認 める 建 物 を 建 設 することにより 地 権 者 間 での 容 積 率 移 転 が 実 現 することとなる (17) ハ 容 積 適 正 配 分 型 地 区 計 画 ( 都 市 計 画 法 12 条 の7) (イ) 制 度 の 概 要 容 積 適 正 配 分 型 地 区 計 画 は 用 途 地 域 で 指 定 された 容 積 の 範 囲 内 で 地 区 計 画 区 域 内 において 容 積 を 配 分 し 土 地 の 合 理 的 な 利 用 を 促 進 し つつ 良 好 な 環 境 の 形 成 や 保 護 を 図 るための 制 度 であり 平 成 4 年 度 に 創 設 された (18) (ロ) 容 積 率 移 転 への 適 用 容 積 率 適 性 配 分 型 地 区 計 画 では 区 域 を 単 位 として 容 積 率 を 再 配 分 するが 地 区 全 体 の 容 積 率 は 指 定 容 積 率 を 超 えてはならないとされて (15) 国 土 交 通 省 都 市 計 画 運 用 指 針 前 掲 注 9 139 頁 参 照 (16) 東 京 都 都 市 整 備 局 ホームページ http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/cpproject/intro/description_1.html 参 照 (17) 日 端 前 掲 注 13 131 頁 参 照 (18) 国 土 交 通 省 ホームページ 前 掲 注 8 参 照
274 いる このため 指 定 容 積 率 を 下 回 る 区 域 と 指 定 容 積 率 を 超 える 区 域 とが 生 じることとなり これらの 区 域 間 で 容 積 率 の 移 転 が 行 われるこ ととなる ニ 特 例 容 積 率 適 用 地 区 制 度 ( 都 市 計 画 法 8 条 1 項 2の3 号 9 条 15 項 ) (イ) 制 度 の 概 要 特 例 容 積 率 適 用 地 区 制 度 は 市 街 地 の 防 災 機 能 の 確 保 等 のため 特 例 容 積 率 の 限 度 の 指 定 の 申 請 に 基 づき 要 件 に 該 当 する 場 合 は 特 例 敷 地 のそれぞれに 適 用 される 特 例 容 積 率 の 限 度 を 指 定 する 制 度 であり 平 成 17 年 度 に 特 例 容 積 率 適 用 区 域 制 度 ( 平 成 12 年 創 設 )の 適 用 範 囲 を 拡 大 し (19) 新 たな 制 度 として 創 設 された (20) 特 例 容 積 率 適 用 地 区 は 用 途 地 域 ( 第 一 種 中 高 層 住 居 専 用 地 域 第 二 種 中 高 層 住 居 専 用 地 域 第 一 種 住 居 地 域 第 二 種 住 居 地 域 準 住 居 地 域 近 隣 商 業 地 域 商 業 地 域 準 工 業 地 域 又 は 工 業 地 域 に 限 る ) 内 において 適 正 な 配 置 及 び 規 模 の 公 共 施 設 を 備 え かつ 用 途 地 域 で 指 定 された 容 積 率 の 限 度 からみて 未 利 用 となっている 建 築 物 の 容 積 の 活 用 を 促 進 することにより 土 地 の 有 効 利 用 を 図 ることを 目 的 とする 地 域 地 区 であり (21) 特 例 容 積 率 適 用 地 区 に 指 定 されている 地 域 地 区 内 であれば 既 存 の 市 街 地 における 全 くかけ 離 れた 敷 地 間 での 容 積 率 移 転 が 可 能 である この 制 度 の 特 色 としては 都 市 計 画 では 特 例 容 積 率 指 定 が 適 用 可 能 となる 地 域 地 区 を 定 めるのみで 個 別 敷 地 及 び 街 区 における 具 体 的 な 特 例 容 積 率 の 指 定 は 建 築 基 準 法 57 条 の2に 基 づき 地 権 者 等 の 申 請 を 受 けて 特 定 行 政 庁 が 指 定 する 点 にある (ロ) 容 積 率 移 転 への 適 用 特 例 容 積 率 適 用 地 区 の 区 域 内 においては 建 築 基 準 法 57 条 の2の 規 (19) 特 例 容 積 率 適 用 区 域 制 度 では 適 用 対 象 となる 地 域 が 商 業 地 域 に 限 定 されていた (20) 国 土 交 通 省 ホームページ 前 掲 注 8 参 照 (21) 国 土 交 通 省 都 市 計 画 運 用 指 針 前 掲 注 9 64 頁 参 照
275 定 により 土 地 所 有 者 等 の 申 請 に 基 づき 特 定 行 政 庁 が 複 数 の 敷 地 に ついて これらの 敷 地 に 係 る 容 積 の 限 度 の 和 が 基 準 容 積 率 による 容 積 の 限 度 の 和 を 超 えない 範 囲 内 において それぞれの 敷 地 に 適 用 され る 特 別 の 容 積 率 の 限 度 を 指 定 することにより 敷 地 間 の 容 積 の 移 転 が 可 能 となる 土 地 所 有 者 等 の 申 請 に 基 づく 特 定 行 政 庁 の 指 定 に 委 ねる ことで 土 地 所 有 者 等 の 発 意 と 合 意 を 尊 重 する 形 で 区 域 内 の 容 積 率 の 移 転 を 簡 易 かつ 迅 速 に 行 なう 点 に 特 徴 がある (22) (2) 建 築 基 準 法 に 基 づく 制 度 イ 一 団 地 の 総 合 的 設 計 制 度 ( 建 築 基 準 法 86 条 1 項 ) (イ) 制 度 の 概 要 一 団 地 の 総 合 的 設 計 制 度 は 一 定 の 土 地 の 区 域 内 における 総 合 的 設 計 による 複 数 建 築 物 について 容 積 率 制 限 等 の 規 制 を 同 一 敷 地 内 にあ るものとみなして 一 体 的 に 適 用 する 制 度 であり 昭 和 25 年 に 創 設 され た (23) 建 築 基 準 法 において 建 築 物 の 敷 地 とは 一 の 建 築 物 又 は 用 途 上 不 可 分 の 関 係 にある 二 以 上 の 建 築 物 のある 一 団 の 土 地 をいう と 定 義 され ており( 建 築 基 準 法 施 行 令 1 条 1 号 ) 一 敷 地 一 建 築 物 を 原 則 とす る 一 団 地 の 総 合 的 設 計 制 度 は この 原 則 に 対 して 一 定 の 条 件 を 満 たした 一 団 地 を 一 敷 地 とみなし 一 以 上 の 建 築 物 を 総 合 的 設 計 によっ て 建 築 する 場 合 に 特 定 行 政 庁 が 市 街 地 環 境 の 整 備 改 善 に 支 障 がない と 認 めたときは 建 築 基 準 法 の 一 般 形 態 規 制 の 一 部 ( 隣 地 境 界 からの 距 離 隣 地 斜 線 制 限 日 影 規 制 接 道 規 制 容 積 率 建 ぺい 率 等 )を 緩 和 することができるという 制 度 である (24) (ロ) 容 積 率 移 転 への 適 用 一 団 地 の 総 合 的 設 計 制 度 により 複 数 地 権 者 の 敷 地 を 一 団 地 として (22) 国 土 交 通 省 都 市 計 画 運 用 指 針 前 掲 注 9 64 頁 参 照 (23) 国 土 交 通 省 ホームページ 前 掲 注 8 参 照 (24) 日 端 前 掲 注 13 126 頁 参 照
276 認 定 されることにより 一 団 地 としての 総 容 積 率 が 規 制 値 以 内 であれば 建 築 されるそれぞれの 建 物 の 容 積 率 は 自 由 に 設 定 できることとなり 結 果 として 地 権 者 間 で 容 積 率 移 転 が 発 生 することとなる ロ 連 担 建 築 物 設 計 制 度 ( 建 築 基 準 法 86 条 2 項 ) (イ) 制 度 の 概 要 連 担 建 築 物 設 計 制 度 は 一 定 の 土 地 の 区 域 内 において 既 存 建 築 物 の 存 在 を 前 提 とした 合 理 的 な 設 計 による 複 数 建 築 物 について 容 積 率 制 限 等 の 規 制 を 同 一 敷 地 内 にあるものとみなして 一 体 的 に 適 用 する 制 度 であり 平 成 10 年 度 に 創 設 された (25) この 制 度 は 一 団 地 の 総 合 的 設 計 制 度 の 追 加 項 目 として 新 たにでき た 制 度 であり 一 団 地 の 総 合 的 設 計 制 度 が 一 団 の 土 地 に 新 たに 建 築 す る 場 合 の 規 定 であるのに 対 し 連 担 建 築 物 設 計 制 度 は 既 存 建 物 の 敷 地 も 含 んで 一 団 地 認 定 されるものである (ロ) 容 積 率 移 転 への 適 用 既 存 建 物 との 連 担 敷 地 として 一 団 地 認 定 を 受 けることにより 既 存 建 物 での 未 利 用 容 積 率 を 隣 地 に 建 築 する 建 築 物 に 移 転 することが 可 能 となる ハ 総 合 設 計 制 度 ( 建 築 基 準 法 59 条 の2) (イ) 制 度 の 概 要 総 合 設 計 制 度 は 敷 地 内 に 一 定 割 合 以 上 の 空 地 を 確 保 する 建 築 計 画 について 市 街 地 の 環 境 改 善 に 資 すると 認 められる 場 合 に 容 積 率 等 の 制 限 を 緩 和 する 制 度 であり 昭 和 45 年 に 創 設 された (26) この 制 度 の 目 的 は 建 築 敷 地 の 共 同 化 大 規 模 化 による 土 地 の 有 効 かつ 合 理 的 な 利 用 の 促 進 と 公 開 空 地 等 公 共 的 な 空 地 空 間 の 確 保 によって 市 街 地 環 境 の 改 善 を 図 ることにある (27) (25) 国 土 交 通 省 ホームページ 前 掲 注 8 参 照 (26) 国 土 交 通 省 ホームページ 前 掲 注 8 参 照 (27) 東 京 都 都 市 整 備 局 ホームページ 前 掲 注 16 参 照
277 (ロ) 容 積 率 移 転 への 適 用 この 制 度 は 容 積 率 の 割 増 しを 行 なう 場 合 に 適 用 を 検 討 される 制 度 で 容 積 率 移 転 を 行 なう 制 度 ではない 複 数 地 権 者 の 間 で 共 同 ビルを 建 設 する 際 に 建 築 基 準 法 の 一 敷 地 一 建 物 の 原 則 により 複 数 権 利 者 の 土 地 に1 棟 の 総 合 設 計 制 度 による 割 増 しを 受 けた 建 物 ( 建 築 確 認 上 は1 棟 の 建 物 )を 建 設 する 場 合 に 採 用 される 制 度 である 竣 工 後 この 建 物 の 所 有 を 敷 地 境 界 での 縦 割 りとし 区 分 所 有 建 物 として 登 記 するケース と それぞれ 個 別 の 建 物 として 登 記 を 実 施 する 場 合 がある この 際 敷 地 全 体 としては 建 築 確 認 上 の 容 積 率 を 満 足 しているが それぞれの 敷 地 単 位 でみた 場 合 は 一 方 は 他 方 に 容 積 率 を 移 転 し 容 積 率 にアンバ ランスが 発 生 している 場 合 に 賃 借 権 の 発 生 または 容 積 率 に 移 転 が 発 生 したこととなる (28) 2 各 制 度 を 適 用 して 容 積 率 を 移 転 した 場 合 の 公 法 上 の 効 果 上 記 で 概 観 した 都 市 計 画 法 及 び 建 築 基 準 法 上 の 諸 制 度 は 街 区 や 地 域 地 区 内 で 容 積 率 を 適 正 に 配 分 する あるいは 隣 接 する 複 数 の 敷 地 を 一 体 のものと みなして 容 積 率 規 制 を 適 用 するといった 制 度 であり いずれも 容 積 率 の 移 転 を 直 截 的 に 規 定 するものではない したがって これらの 制 度 が 容 積 率 移 転 に 関 する 何 らかの 法 律 上 の 権 利 を 発 生 させると 解 すことはできないが これ らの 制 度 の 適 用 を 受 けることによって 容 積 率 移 転 が 事 実 上 可 能 となるもので あるから これらの 制 度 が 容 積 率 の 移 転 にどのような 効 果 を 及 ぼしているか を 考 察 することは 課 税 上 の 取 扱 いを 考 える 上 でも 重 要 であると 考 えられる (1) 都 市 計 画 法 に 基 づく 制 度 の 適 用 を 受 けて 容 積 率 を 移 転 する 場 合 の 効 果 都 市 計 画 法 に 基 づく 制 度 の 適 用 を 受 ける 場 合 には 都 市 計 画 において 容 積 率 の 適 正 配 分 又 は 建 築 物 の 形 態 規 制 等 により 容 積 率 の 最 高 限 度 が 定 めら れる このため 容 積 率 の 移 転 が 都 市 計 画 の 決 定 によって 担 保 されるとい (28) 日 端 前 掲 注 13 125 頁 参 照
278 える 例 えば 特 定 街 区 内 の 各 敷 地 間 で 容 積 率 の 移 転 を 行 った 場 合 には 各 敷 地 毎 に 移 転 後 の 容 積 率 を 特 定 街 区 の 都 市 計 画 で 定 めることを 行 えば 都 市 計 画 決 定 の 告 示 という 形 で 公 示 され 取 引 の 安 全 の 確 保 に 資 すること となり しかも 特 定 街 区 の 都 市 計 画 は 当 該 特 定 街 区 の 建 築 物 をその 後 立 替 えるときにも 有 効 に 働 くので 容 積 率 の 二 重 使 用 ということも 防 止 で きる 利 点 があるとされている (29) なお 特 定 街 区 では 都 市 計 画 決 定 の 手 続 きの 中 で 利 害 関 係 人 の 同 意 を 得 る 必 要 があるところ その 計 画 を 変 更 す る 場 合 にも 同 様 に 利 害 関 係 人 の 同 意 が 必 要 となることから 仮 に 容 積 率 を 提 供 した 土 地 建 物 が 第 三 者 に 譲 渡 され 当 該 第 三 者 が 当 該 土 地 建 物 の 増 築 等 をしようとしたとしても 容 積 率 の 移 転 を 受 けた 者 の 同 意 がなければ 増 築 等 に 伴 う 都 市 計 画 の 変 更 ができず その 点 からも 容 積 率 の 移 転 を 受 けた 者 の 権 利 は 都 市 計 画 法 によって 保 全 されているともいえる (30) このように 都 市 計 画 法 に 基 づく 制 度 の 適 用 を 受 けて 容 積 率 を 移 転 する 場 合 には 都 市 計 画 において 容 積 率 の 指 定 等 がされるため 都 市 計 画 に 対 する 公 法 的 担 保 効 力 があると 解 されており (31) 移 転 後 の 容 積 率 は 都 市 計 画 の 変 更 等 がない 限 り 永 続 的 に 適 用 されるものと 考 えられる また 特 定 街 区 再 開 発 等 促 進 区 及 び 容 積 適 正 配 分 型 地 区 計 画 が 地 区 の 様 々な 状 況 に 応 じて 予 め 目 指 すべき 市 街 地 像 を 定 め 事 前 に かつ 詳 細 に 容 積 の 配 分 を 行 なうものであるのに 対 して 特 例 容 積 率 適 用 地 区 は 都 市 計 画 において 対 象 となる 地 域 地 区 が 決 定 されるにとどまり 具 体 的 な 特 例 容 積 率 の 指 定 は 建 築 基 準 法 の 規 定 に 従 って 土 地 所 有 者 等 の 申 請 に 基 づき 特 定 行 政 庁 が 指 定 することになる このように 特 例 容 積 率 適 用 地 区 においては 都 市 計 画 において 具 体 的 な 容 積 率 が 指 定 されるものではな いが 特 定 行 政 庁 によって 特 例 容 積 率 が 指 定 されるものであり かつ 特 定 行 政 庁 は 指 定 した 容 積 率 の 限 度 及 び 特 例 敷 地 の 位 置 等 を 公 告 するととも (29) 建 設 省 空 中 権 調 査 研 究 会 編 著 空 中 権 その 理 論 と 運 用 235 頁 (ぎょうせい 1985) (30) 社 団 法 人 日 本 プロジェクト 産 業 協 議 会 前 掲 注 11 42 頁 参 照 (31) 日 端 前 掲 注 13 130 131 頁 参 照
279 に 国 土 交 通 省 令 で 定 める 事 項 を 表 示 した 図 書 をその 事 務 所 に 備 えて 一 般 の 縦 覧 に 供 さなければならない( 建 築 基 準 法 57 条 の2 第 4 項 )ことから 公 法 上 一 定 の 担 保 的 効 力 があると 考 えることができる (2) 建 築 基 準 法 に 基 づく 制 度 の 適 用 を 受 けて 容 積 率 を 移 転 する 場 合 の 効 果 建 築 基 準 法 に 基 づく 制 度 は 一 敷 地 一 建 築 物 を 応 用 するものであって 外 観 上 は 複 数 の 建 築 物 を 用 途 上 不 可 分 な 建 築 物 として 建 築 することによっ て 本 来 は 複 数 の 敷 地 であるものを 一 の 敷 地 として 全 体 で 容 積 率 規 制 を 適 用 するものであり 容 積 率 移 転 は あくまでもその 一 の 敷 地 として 取 り 扱 われる 各 敷 地 の 所 有 者 等 の 間 における 私 人 間 の 行 為 として 行 われるもので ある このように 建 築 基 準 法 に 基 づく 制 度 の 適 用 を 受 ける 場 合 は 各 敷 地 等 の 容 積 率 が 都 市 計 画 や 特 定 行 政 庁 によって 指 定 されるわけではないか ら 各 敷 地 等 において 使 用 される 容 積 率 に 対 して 公 法 上 何 等 かの 担 保 的 効 力 があるということはできない また 総 合 的 な 建 築 計 画 によって 建 築 される 建 築 物 に 対 して 適 用 される 制 度 であることから 一 団 の 敷 地 等 に 建 築 された 建 築 物 は 運 命 共 同 体 としての 性 格 を 有 し 移 転 した 容 積 率 は 当 該 建 築 物 についてのみ 有 効 であり 個 別 の 建 替 えへの 対 応 は 難 しく このこ とから 容 積 率 の 担 保 についても 当 該 建 築 物 の 存 続 する 限 りとなり 永 久 的 なものではないと 解 されている (32) なお 一 団 地 の 総 合 的 設 計 制 度 及 び 連 担 建 築 物 設 計 制 度 の 申 請 に 対 して 特 定 行 政 庁 が 認 定 又 は 許 可 をしたときは 遅 滞 なく 当 該 認 定 又 は 許 可 に 係 る 対 象 区 域 内 の 建 築 物 の 位 置 及 び 構 造 に 関 する 計 画 に 対 して 対 象 区 域 その 他 国 土 交 通 省 令 で 定 める 事 項 を 公 告 するとともに 対 象 区 域 建 築 物 の 位 置 その 他 国 土 交 通 省 令 で 定 める 事 項 を 表 示 した 図 書 をその 事 務 所 に 備 えて 一 般 の 縦 覧 に 供 さなければならず( 建 築 基 準 法 86 条 8 項 ) また その 認 定 又 は 許 可 の 効 力 は 広 告 によって 生 ずるものではあるが( 同 条 9 項 ) それらの 手 続 きも 取 引 後 の 容 積 率 を 担 保 しているとまではいえない (32) 日 端 前 掲 注 13 125 126 頁 参 照
280 (3) 小 括 上 記 で 考 察 したように 都 市 計 画 法 に 基 づく 制 度 と 建 築 基 準 法 に 基 づく 制 度 の 大 きな 違 いは 都 市 計 画 法 に 基 づく 制 度 では 移 転 取 引 後 の 容 積 率 が 都 市 計 画 又 は 特 定 行 政 庁 によって 指 定 されるのに 対 し 建 築 基 準 法 に 基 づく 制 度 では 複 数 の 敷 地 を 一 体 とみなして 容 積 率 制 限 の 適 用 を 受 けるが 各 敷 地 間 における 容 積 率 の 配 分 は 敷 地 権 者 間 の 取 り 決 めにより 決 定 される にすぎない 点 にあると 考 えられる すなわち 都 市 計 画 法 に 基 づく 制 度 の 適 用 を 受 ける 場 合 には 移 転 後 の 容 積 率 が 公 的 に 指 定 されることから 公 法 上 一 定 の 担 保 的 効 力 があると 考 えられるのに 対 して 建 築 基 準 法 に 基 づ く 制 度 の 適 用 を 受 ける 場 合 には あくまでも 私 人 間 で 容 積 率 の 配 分 を 決 定 するにすぎないため 公 法 上 の 担 保 があるとはいえない 点 に 違 いがあると 考 えられる
281 第 2 章 容 積 率 移 転 の 法 的 性 質 第 1 節 容 積 率 移 転 の 法 的 性 質 と 契 約 形 態 に 関 する 考 察 第 1 章 で 考 察 したとおり わが 国 では 都 市 計 画 法 及 び 建 築 基 準 法 上 の 諸 制 度 の 適 用 に 関 連 して 容 積 率 の 移 転 が 行 われているが これらの 法 律 が 容 積 率 移 転 取 引 について 直 接 規 定 しているわけではなく 容 積 率 の 移 転 は あくまで 私 人 間 の 行 為 として 行 われているものと 解 される このような 私 人 間 の 行 為 として 行 われている 容 積 率 移 転 取 引 について 税 務 上 の 取 扱 いを 検 討 する 上 では それがどのような 法 的 性 質 を 有 するかを 確 認 し ておく 必 要 があると 考 える したがって 本 節 では 容 積 率 移 転 取 引 でどのよ うな 契 約 形 態 が 用 いられているか また その 法 的 性 質 についてどのような 議 論 がなされているかを 考 察 することとする 1 容 積 率 移 転 取 引 において 用 いられる 契 約 形 態 等 の 考 察 容 積 率 を 移 転 するといっても ある 土 地 の 上 空 の 空 間 そのものを 他 の 土 地 の 上 空 に 移 転 することはできないから 容 積 率 移 転 取 引 において 取 引 の 対 象 とされるものは 容 積 率 を 利 用 する 権 利 ( 余 剰 容 積 率 利 用 権 )であるといえる したがって 容 積 率 移 転 の 法 的 性 質 を 考 える 上 では 余 剰 容 積 率 利 用 権 をど のように 解 するかが 問 題 となるところ 民 法 175 条 は 物 権 は この 法 律 そ の 他 の 法 律 に 定 めるもののほか 創 設 することはできない と 規 定 しており ( 物 権 法 定 主 義 ) 民 法 その 他 の 法 律 によって 明 示 されている 権 利 以 外 は 当 事 者 が 合 意 したとしても 物 権 とすることはできないから (33) わが 国 の 私 法 上 明 示 の 権 利 として 規 定 されているわけではない 余 剰 容 積 率 利 用 権 を 物 権 と 解 することはできず よって 第 一 義 的 には 余 剰 容 積 率 利 用 権 は 当 事 者 間 の 契 約 に 基 づく 債 権 と 解 される (34) もっとも 実 際 の 容 積 率 移 転 取 引 においては (33) 内 田 貴 民 法 Ⅰ 総 則 物 権 総 論 第 4 版 ( 東 京 大 学 出 版 会 2008)351 頁 参 照 (34) この 点 について 野 村 好 弘 小 賀 野 晶 一 移 転 される 未 利 用 容 積 の 権 利 の 性 格
282 私 法 上 認 められている 区 分 地 上 権 や 地 役 権 などが 適 用 又 は 運 用 されており 様 々な 契 約 形 態 が 用 いられていることから それを 踏 まえて 容 積 率 移 転 の 法 的 性 質 を 考 える 必 要 がある 容 積 率 移 転 を 用 いられる 契 約 形 態 によって 大 別 すると 1 債 権 の 譲 渡 等 とする 場 合 2 区 分 地 上 権 を 設 定 する 場 合 3 地 役 権 を 設 定 する 場 合 に 区 分 することができる そこで ここでは 容 積 率 移 転 取 引 で 用 いられている 契 約 形 態 の 区 分 ごとにその 特 徴 を 観 察 し また 容 積 率 を 移 転 するために 地 上 権 や 地 役 権 などの 物 権 を 設 定 することに 対 して 私 法 上 どのような 議 論 がなされているかを 踏 まえて 容 積 率 移 転 の 法 的 性 質 を 考 察 することとする (1) 債 権 の 譲 渡 等 とする 場 合 債 権 とは 特 定 人 ( 債 権 者 )が 特 定 の 義 務 者 ( 債 務 者 )に 対 して 一 定 の 給 付 を 請 求 し 債 務 者 の 給 付 を 受 領 し 保 持 すること( 給 付 のもつ 利 益 ない し 価 値 を 自 己 に 帰 属 させること)が 法 認 されている 地 位 ( 権 利 )をいい 物 権 が 物 を 直 接 に 支 配 する 権 利 で すべての 人 に 対 して 主 張 しうる 権 利 で あるのに 対 し 債 権 は 特 定 の 人 に 対 してある 行 為 を 要 求 する 権 利 で 原 則 として 第 三 者 に 権 利 を 主 張 できない (35) 債 権 は 契 約 自 由 の 原 則 により 公 序 良 俗 に 反 するものでなく また 強 行 法 規 に 抵 触 するものでなければ どのような 内 容 の 権 利 を 設 定 してもよい よって 余 剰 容 積 率 利 用 権 の 売 買 賃 貸 を 内 容 とする 債 権 契 約 は 有 効 であるが 上 記 のとおり 当 事 者 の みを 拘 束 するもので 登 記 によって 第 三 者 に 公 示 する 方 法 がないため 余 剰 容 積 率 を 提 供 している 土 地 が 善 意 の 第 三 者 に 譲 渡 された 場 合 には 新 し い 土 地 所 有 者 に 対 抗 できないという 弱 点 がある (36) このため 登 記 可 能 な 法 律 時 報 64 巻 3 号 25 頁 (1992)では 空 中 権 は 新 しい 概 念 であり その 内 容 が 定 着 していないので 物 権 法 定 主 義 が 厳 格 に 貫 かれ 法 律 に 基 づかない 物 権 は 認 めら れず したがって 上 記 の 各 物 件 に 相 当 しない 権 利 は 債 権 としてしか 認 められな いであろう としている また 日 端 前 掲 注 13 16 頁 も 容 積 率 移 転 の 際 の 未 利 用 容 積 率 利 用 権 は 都 市 計 画 法 建 築 基 準 法 上 一 切 ないため 未 利 用 容 積 率 利 用 権 の 法 的 性 質 は 当 事 者 間 でのみ 有 効 とする 債 権 契 約 であ(る) としている (35) 金 子 宏 ほか 編 法 律 学 小 辞 典 第 4 版 補 訂 版 435 1073 頁 ( 有 斐 閣 2008 年 ) (36) この 権 利 を 余 剰 容 積 率 の 賃 貸 借 として 設 定 した 場 合 貸 主 の 土 地 について 賃 借
283 区 分 地 上 権 や 地 役 権 など 私 法 上 認 められている 権 利 ( 物 権 )を 適 用 又 は 運 用 して 容 積 率 移 転 取 引 を 行 うことによって 権 利 の 安 定 化 を 図 るとい ったことが 行 われているのである (2) 区 分 地 上 権 を 設 定 する 場 合 区 分 地 上 権 とは 地 下 又 は 空 間 に 上 下 の 範 囲 を 定 め 工 作 物 を 所 有 するた めに 設 定 される 地 上 権 である( 民 法 269 条 の2) 余 剰 容 積 率 移 転 取 引 にお いてこの 区 分 地 上 権 を 設 定 する 場 合 には 例 えば 地 上 m 以 上 の 上 空 区 間 を 限 って 余 剰 容 積 率 の 移 転 を 受 ける 者 が 余 剰 容 積 率 を 提 供 する 土 地 について 区 分 地 上 権 を 設 定 することとなる 容 積 率 移 転 取 引 において 区 分 地 上 権 の 設 定 という 形 態 を 用 いることにつ いては 区 分 地 上 権 の 設 定 は 工 作 物 所 有 の 目 的 のものに 限 るので 容 積 利 用 権 の 確 保 のためには 過 大 な 手 段 であると 考 えられる さりとて これ をもって 違 法 とまでは 言 えないというのが 大 方 の 考 え 方 である とされ ている (37) このことからすると 尐 なくとも 私 法 上 は その 土 地 の 余 剰 容 積 率 を 他 の 土 地 上 で 利 用 して 建 物 等 を 所 有 するために 区 分 地 上 権 を 設 定 す ることに 対 して その 土 地 の 上 で 工 作 物 を 所 有 するために 設 定 するもので はないという 点 で 全 く 問 題 がないわけではないが 一 応 工 作 物 を 所 有 す るため に 含 まれると 解 しているものと 考 えられる (3) 地 役 権 を 設 定 する 場 合 地 役 権 とは 自 分 の 土 地 の 便 益 のために 他 人 の 土 地 を 利 用 する 権 利 であ る( 民 法 280 条 ) 地 役 権 が 設 定 された 他 人 の 土 地 を 承 役 地 地 役 権 の 便 益 を 受 ける 自 分 の 土 地 を 要 役 地 という 典 型 的 な 地 役 権 としては 用 水 地 役 権 通 行 地 役 権 などがあり また 眺 望 を 維 持 するための 地 役 権 や 日 照 地 権 の 登 記 をすることはできるが 余 剰 容 積 率 の 使 用 又 は その 土 地 の 上 部 空 間 を 限 っての 賃 借 権 を 登 記 することはできないとされている( 鵜 野 和 夫 改 定 増 補 都 市 開 発 と 建 築 基 準 法 433 頁 ( 清 文 社 2002) 参 照 ) (37) 高 田 壽 史 容 積 移 転 の 制 度 と 事 例 - 日 米 のケース スタディ-3 不 動 産 鑑 定 24 巻 2 号 (1987)29 頁
284 役 権 さらに 電 力 会 社 が 電 線 を 通 すための 地 役 権 などもある (38) 容 積 率 移 転 取 引 において 地 役 権 を 設 定 する 場 合 には 容 積 率 を 提 供 する 土 地 ( 他 人 の 土 地 )を 承 役 地 容 積 率 の 移 転 を 受 ける 土 地 ( 自 分 の 土 地 ) を 要 役 地 として 地 役 権 を 設 定 することとなる 容 積 率 移 転 取 引 において 地 役 権 を 設 定 することについては 余 剰 容 積 率 に 係 る 権 利 は 移 転 を 受 けた 土 地 の 便 益 というより 移 転 を 受 けた 建 物 の 便 益 に 供 するものではないかという 考 え 方 であり この 考 え 方 によれば この 権 利 を 地 役 権 として 構 成 することに 若 干 の 無 理 があるのではないかと いう 問 題 もでてきます 建 物 の 便 益 に 供 するものであるとした 場 合 に 現 行 の 法 制 上 では 建 物 益 権 という 制 度 がないので 物 権 として 構 成 できない ということになりますが 従 来 から 地 役 権 が 利 用 されてきたものの 現 状 を 見 ますと ある 程 度 便 宜 的 にその 範 囲 を 拡 げて 適 用 されてきていますし 移 転 を 受 けた 余 剰 容 積 率 の 権 利 の 設 定 について 現 行 の 法 制 の 中 では 地 役 権 の 設 定 によることが 現 実 の 解 決 法 としては もっとも 適 していると 思 われます (39) とされており 私 法 上 全 く 問 題 がないというわけではない が 一 応 有 効 なものとして 取 り 扱 われている 2 容 積 率 移 転 の 法 的 性 質 に 関 する 考 察 上 記 1で 考 察 したとおり 容 積 率 移 転 取 引 で 用 いられる 契 約 形 態 は 債 権 の 譲 渡 等 とする 場 合 区 分 地 上 権 を 設 定 する 場 合 地 役 権 を 設 定 する 場 合 に 大 別 され いずれの 方 法 も 一 応 私 法 上 有 効 であると 解 されている そうす ると 用 いられる 契 約 形 態 によって 容 積 率 移 転 の 性 質 は 異 なると 考 えられな くもないが 区 分 地 上 権 や 地 役 権 が 用 いられる 理 由 は 移 転 する 容 積 率 につ いて 第 三 者 への 対 抗 要 件 を 具 備 することによって 法 的 安 定 を 図 ることにあ り これらの 契 約 形 態 が 容 積 率 移 転 取 引 の 本 質 までを 変 えるものではないか ら 当 事 者 がどのような 権 利 を 設 定 し どのような 契 約 形 態 を 用 いるかによ (38) 内 田 貴 民 法 Ⅱ 債 権 各 論 第 2 版 168 頁 ( 東 京 大 学 出 版 会 2007) 参 照 (39) 鵜 野 和 夫 改 定 増 補 都 市 開 発 と 建 築 基 準 法 434 頁 ( 清 文 社 2002)
285 って 容 積 率 移 転 の 性 質 を 別 異 に 解 すべきではなく その 取 引 によって 当 事 者 にどのような 効 果 が 生 じるかによってその 性 質 を 判 断 すべきである そこで 容 積 率 移 転 取 引 によって 取 引 当 事 者 にどのような 効 果 が 生 ずるか を 考 察 すると 移 転 する 側 においては 一 定 の 容 積 率 以 上 の 建 築 物 を 建 築 す ることができなくなる( 容 積 率 の 全 部 を 移 転 する 場 合 には 一 切 容 積 率 を 利 用 することができなくなる)ことから 土 地 の 利 用 が 一 定 範 囲 で 制 限 される という 効 果 が 生 じ 他 方 移 転 を 受 ける 側 では 基 準 容 積 率 を 超 える 建 築 物 の 建 築 が 可 能 となることから 土 地 の 利 用 が 拡 大 するといった 効 果 が 生 ずる ことになる すなわち 取 引 当 事 者 に 生 ずる 効 果 は 一 方 の 土 地 における 建 築 制 限 という 土 地 の 利 用 制 限 が 他 方 の 土 地 における 建 築 緩 和 という 土 地 の 利 用 拡 大 をもたらす 関 係 にあり このような 効 果 を 私 法 上 の 権 利 に 照 らして 考 えた 場 合 には 土 地 の 所 有 権 又 は 借 地 権 に 基 づく 使 用 権 の 一 内 容 としての 建 築 権 の 移 転 であるということができる (40) そして わが 国 の 私 法 上 この ような 建 築 権 を 土 地 の 所 有 権 又 は 賃 借 権 から 切 り 離 して 独 立 した 処 分 可 能 な 財 産 権 として 構 成 することは 困 難 であり (41) また 容 積 率 を 移 転 した 土 地 の 所 有 者 は 容 積 率 移 転 取 引 によって 所 有 権 者 たる 地 位 を 失 うものではない ことからすれば 容 積 率 移 転 取 引 において 売 買 ( 譲 渡 )という 法 的 形 態 が 採 られていたとしても その 実 態 は 譲 渡 先 に 余 剰 容 積 率 を 利 用 する 権 利 を 付 与 するものであり それは 土 地 の 一 部 の 貸 付 けに 準 じたものと 解 すべきである と 考 える 3 容 積 率 移 転 の 法 的 性 質 についての 判 断 を 示 した 裁 判 例 容 積 率 移 転 の 法 的 性 質 について 判 断 を 示 した 裁 判 例 としては 静 岡 地 裁 平 (40) このように 土 地 の 所 有 権 又 は 賃 借 権 の 一 内 容 としての 建 築 権 と 考 える 意 見 につい ては 高 田 壽 史 容 積 移 転 の 法 的 性 格 と 契 約 不 動 産 研 究 28 巻 4 号 (1986 年 )3 頁 参 照 また 社 団 法 人 日 本 プロジェクト 産 業 協 会 も 余 剰 ないしは 割 増 容 積 の 移 転 は 建 築 物 を 建 築 することができるという 権 利 の 移 転 と 考 えることができる ( 前 掲 注 11 17 頁 )としている (41) 同 様 の 判 断 を 示 した 裁 判 例 として 東 京 高 裁 平 成 21 年 5 月 20 日 判 決 ( 判 例 集 未 登 載 )があり その 判 示 内 容 は 後 述 のとおりである
286 成 11 年 3 月 26 日 判 決 ( 判 例 集 未 登 載 ) 及 び 判 決 東 京 高 裁 平 成 21 年 5 月 20 日 判 決 ( 原 審 東 京 地 裁 平 成 20 年 11 月 28 日 判 決 いずれも 判 例 集 未 登 載 ) があり そこで 示 された 判 断 は 以 下 のとおりである (1) 静 岡 地 裁 平 成 11 年 3 月 26 日 判 決 静 岡 地 裁 平 成 11 年 3 月 26 日 判 決 の 事 例 は 浜 松 市 と 民 間 企 業 が 共 同 の 複 合 施 設 を 建 設 するに 当 たって 市 有 地 に 建 設 される 建 築 物 の 容 積 率 を 低 く 抑 えることにより 生 じた 余 剰 容 積 率 を 企 業 が 隣 地 に 建 設 する 建 築 物 に 移 転 したが 浜 松 市 が この 余 剰 容 積 率 利 用 権 ( 空 中 権 )に 関 する 契 約 を 締 結 せず 対 価 も 受 け 取 っていなかったため 市 民 グループが 市 長 に 対 し 空 中 権 の 使 用 対 価 を 企 業 側 に 請 求 するよう 求 めて 訴 訟 を 提 起 したものであ る この 静 岡 地 裁 判 決 では 空 中 権 の 使 用 は 民 法 上 の 物 権 として 規 定 され ておらず 地 方 自 治 法 上 の 公 有 財 産 にはあたらない 仮 に 財 産 と 認 めたと しても 法 的 には 極 めて 未 熟 で 運 用 は 市 の 幅 広 い 裁 量 にゆだねられてお り 市 が 使 用 料 を 徴 収 しないことは 裁 量 権 の 範 囲 内 である との 判 断 が 示 された (42) (2) 東 京 高 裁 平 成 21 年 5 月 20 日 判 決 東 京 高 裁 平 成 21 年 5 月 20 日 判 決 の 事 例 は 納 税 者 Xらが 建 築 基 準 法 68 条 2 項 に 基 づく 連 担 建 築 物 設 計 制 度 の 適 用 に 関 連 して 所 有 地 に 生 じて いる 余 剰 容 積 率 をA 社 が 隣 地 に 建 築 する 建 築 物 のために 譲 渡 して 得 た 所 得 が 譲 渡 所 得 に 該 当 するか 不 動 産 所 得 に 該 当 するかが 争 われた 事 例 である 本 件 では Xらの 所 有 地 ( 甲 敷 地 )を 承 役 地 A 社 が 所 有 する 隣 地 ( 乙 敷 地 )を 要 役 地 として Xらが 所 有 する 土 地 に 一 定 容 積 率 以 上 の 建 物 を 建 築 しない 旨 の 地 役 権 が 設 定 されていた 本 判 決 は 連 担 建 築 物 設 計 制 度 等 に 関 連 し Xらが 都 市 計 画 法 及 び 建 築 基 準 法 が 土 地 の 所 有 権 から 独 立 し た 余 剰 容 積 利 用 権 という 物 件 的 性 質 を 有 する 財 産 上 の 権 利 を 創 設 したもの である 旨 を 主 張 したのに 対 し 連 担 建 築 物 設 計 制 度 は 土 地 の 範 囲 にいて (42) 日 端 前 掲 注 13 16 頁 参 照
287 地 上 及 び 地 下 に 及 ぶべき 土 地 利 用 権 に 課 された 地 上 利 用 権 の 制 限 ( 容 積 率 ) について 一 団 の 土 地 を 一 の 敷 地 とみなすことによって 甲 敷 地 の 利 用 権 者 の 同 意 があるときは 甲 敷 地 の 容 積 利 用 権 の 限 度 で 乙 敷 地 の 容 積 率 制 限 を 緩 和 するものであって 甲 敷 地 が 利 用 できなくなり 乙 敷 地 が 利 用 できることとなる 容 積 率 は 建 築 物 の 空 間 として 許 容 された 甲 敷 地 の 土 地 利 用 権 の 一 部 をなすものである とした 上 で このような 特 例 は 建 築 基 準 法 上 の 敷 地 利 用 権 に 関 する 規 制 であるから 敷 地 利 用 権 が 借 地 権 である 場 合 にも 適 用 され また 建 物 敷 地 の 容 積 率 制 限 が 強 化 された 場 合 には 乙 敷 地 上 に 同 規 模 の 建 物 の 改 築 はできないこととなり( 余 剰 容 積 は 減 尐 する ) 逆 に 容 積 率 制 限 が 緩 和 され 乙 敷 地 の 容 積 率 で 同 地 上 建 物 が 適 法 となる 場 合 には 連 担 建 築 物 設 計 制 度 の 利 用 としてされた 甲 敷 地 の 利 用 権 者 の 同 意 は 経 済 的 意 味 を 失 うことになるのであって このような 法 的 事 象 を もって 直 ちに 甲 敷 地 の 移 転 に 準 ずるものということはできず 当 該 余 剰 容 積 が 甲 敷 地 の 利 用 権 から 独 立 分 離 して 乙 敷 地 に 移 転 することが 定 められ たものではない( 略 ) このように Xらの 主 張 する 余 剰 容 積 利 用 権 な るものは 土 地 所 有 権 から 淵 源 する 敷 地 利 用 権 能 ( 経 済 的 利 益 )であって 敷 地 利 用 権 と 離 れて 独 立 に 処 分 可 能 な 財 産 権 ということは 困 難 である と の 判 断 を 示 した (43) 4 小 括 上 記 のとおり 容 積 率 の 移 転 とは 余 剰 容 積 率 利 用 権 の 移 転 であると 考 え られるところ 余 剰 容 積 率 利 用 権 といった 権 利 は わが 国 の 私 法 上 明 示 され た 権 利 ではないから 物 権 法 定 主 義 によりこれを 物 権 と 解 することはできな い したがって 余 剰 容 積 率 利 用 権 は 私 人 間 の 契 約 に 基 づく 債 権 であると 解 されるが 債 権 として 取 引 を 行 った 場 合 には 権 利 の 保 護 などの 点 で 不 十 分 で あるため 実 際 の 取 引 では 現 行 の 私 法 上 認 められている 権 利 を 応 用 又 は 適 用 (43) Xらは 本 判 決 に 対 し 上 告 及 び 上 告 受 理 申 立 てを 行 なっている
288 し 区 分 地 上 権 や 地 役 権 を 設 定 するケースが 見 られる このように 容 積 率 移 転 取 引 は 債 権 として 取 引 が 行 われるもののほか 区 分 地 上 権 や 地 役 権 を 設 定 して 取 引 を 行 う 場 合 が 認 められるが 設 定 する 権 利 の 違 いによって 容 積 率 移 転 の 本 質 が 変 わるものではないから 容 積 率 移 転 の 法 的 性 質 を 判 断 する 上 では 設 定 される 権 利 ではなく 容 積 率 移 転 取 引 によって 当 事 者 に 生 ずる 効 果 によって 判 断 すべきである そして 容 積 率 移 転 取 引 によって 当 事 者 に 生 ずる 効 果 を 私 法 上 の 権 利 関 係 に 照 らして 考 えた 場 合 には 土 地 の 所 有 権 又 は 借 地 権 に 基 づく 使 用 権 の 一 内 容 としての 建 築 権 の 移 転 であると 解 すことが でき また 私 法 上 このような 建 築 権 を 土 地 の 所 有 権 又 は 借 地 権 とは 独 立 した 処 分 可 能 な 財 産 権 と 構 成 することは 困 難 であるから 容 積 率 移 転 取 引 に おいて 当 事 者 が 譲 渡 という 法 的 形 態 を 採 ったとしても その 実 態 は 譲 渡 先 に 利 用 権 を 付 与 するものに 他 ならず それは 土 地 の 一 部 の 貸 付 けに 準 じたも と 解 すべきである 第 2 節 容 積 率 移 転 の 具 体 的 事 例 第 1 節 において 容 積 率 移 転 の 法 的 性 質 を 考 察 したが 本 節 では 実 際 の 容 積 率 移 転 取 引 で 用 いられている 具 体 的 な 契 約 形 態 について 概 観 する 1 東 京 駅 周 辺 の 再 開 発 の 事 例 東 京 駅 周 辺 の 大 手 町 丸 の 内 有 楽 町 地 区 の 再 開 発 では 東 京 駅 駅 舎 上 空 の 余 剰 容 積 率 を 周 辺 に 建 築 する 新 丸 ビル 等 に 移 転 して より 高 層 のビルを 建 築 することにより 土 地 の 有 効 高 度 利 用 が 図 られた この 事 例 は 特 例 容 積 率 適 用 地 区 制 度 を 適 用 して 容 積 率 の 移 転 が 行 われた 事 例 であり 東 京 都 が 特 例 容 積 率 適 用 地 区 として 指 定 した 際 の 指 定 理 由 は 当 該 地 区 が 東 京 の 新 しい 都 市 づくりビジョン において センター コア 再 生 ゾーン の 中 核 拠 点 である 都 心 に 位 置 し 世 界 をリードする 魅 力 とにぎわいのある 国 際 都 市 東 京 の 創 造 を 目 標 として 国 際 ビジネスセンター 機 能 の 強 化 や 歴 史 と 文 化 を
289 生 かした 都 市 空 間 形 成 などの 都 市 づくりを 進 めていくべき 地 区 と 位 置 づけら れていることなどから 当 該 地 区 を 特 定 容 積 率 適 用 地 区 に 指 定 し 歴 史 的 建 造 物 の 保 存 復 元 文 化 的 環 境 の 維 持 向 上 などを 図 るとともに 地 区 全 体 として 土 地 の 高 度 利 用 を 促 進 し 質 の 高 い 業 務 機 能 への 更 新 商 業 や 文 化 機 能 の 集 積 などを 図 り 都 市 再 生 を 推 進 するためとされている (44) この 再 開 発 事 業 に 際 し 三 菱 地 所 とJR 東 日 本 は 東 京 駅 駅 舎 上 空 の 余 剰 容 積 率 の 一 部 を 新 丸 ビルの 建 設 敷 地 に 移 転 する 旨 の 契 約 を 締 結 するとともに 東 京 駅 駅 舎 の 敷 地 (JR 東 日 本 所 有 地 )を 承 役 地 新 丸 ビルの 敷 地 ( 三 菱 地 所 所 有 )を 要 役 地 とする 地 役 権 を 設 定 して 登 記 を 行 なっている JR 所 有 地 に 設 定 された 地 役 権 の 登 記 ( 乙 区 )の 権 利 者 その 他 の 事 項 欄 に 記 載 され た 地 役 権 設 定 の 目 的 には 承 役 地 を 要 役 地 に 建 築 する 建 物 に 対 する 建 築 基 準 法 で 定 める 容 積 率 の 算 定 上 特 例 敷 地 として 使 用 し 将 来 にわたり 用 益 地 の 特 例 容 積 率 の 確 保 のため 承 役 地 において 承 役 地 の 面 積 の 基 準 容 積 率 を 乗 じた 面 積 から 要 役 地 に 容 積 移 転 した( 面 積 )を 減 じた 面 積 を 超 える 建 物 の 建 築 をしてはならない と 記 載 されている なお 東 京 駅 駅 舎 上 空 の 余 剰 容 積 率 は 新 丸 ビルの 他 東 京 駅 の 周 辺 に 建 築 された 東 京 ビル 等 の 敷 地 にも 移 転 されており さらに 東 京 中 央 郵 便 局 の 庁 舎 建 て 替 えのためにも 移 転 されている 2 日 比 谷 シティの 事 例 この 事 例 は 千 代 田 区 内 幸 二 丁 目 特 定 街 区 における 日 比 谷 国 際 ビル 富 国 生 命 本 社 ビル 日 本 プレスセンタービルと 街 路 を 隔 てて 隣 接 する 港 区 西 新 橋 一 丁 目 特 定 街 区 の 日 比 谷 セントラルビルについて 日 比 谷 公 園 と 一 体 感 をも った 緑 道 地 域 冷 暖 房 施 設 広 域 変 電 所 等 の 都 市 計 画 施 設 を 含 んだ 特 定 街 区 として 指 定 を 受 けることによって それぞれの 街 区 で 容 積 率 の 割 増 しを 受 け (44) 大 手 町 丸 の 内 有 楽 町 地 区 特 例 容 積 率 適 用 地 区 及 び 指 定 基 準 制 定 平 成 14 年 5 月 29 日 14 都 市 建 市 第 2 号 改 正 平 成 16 年 8 月 18 日 16 都 市 建 市 第 200 号 改 正 平 成 17 年 6 月 1 日 17 都 市 建 市 第 75 号 改 正 平 成 18 年 3 月 16 日 17 都 市 建 市 第 412 号
290 た 上 で 日 本 プレスセンターで 生 ずる 余 剰 容 積 率 を 他 のビルに 移 転 ( 譲 渡 ) したものである この 事 例 では 余 剰 容 積 を 利 用 する 権 利 ( 債 権 )の 売 買 として 取 引 が 行 わ れており 同 権 利 の 所 有 期 間 は 契 約 締 結 の 日 から 100 年 間 とされている ま た 同 権 利 は 登 記 されておらず 特 約 により 日 本 プレスセンターの 増 改 築 制 限 及 び 同 建 物 敷 地 を 第 三 者 等 へ 譲 渡 した 場 合 の 権 利 制 限 の 義 務 の 承 継 等 について 定 めている さらに 同 権 利 については 日 本 プレスセンター 及 び その 敷 地 の 地 権 者 である 日 本 新 聞 協 会 への 通 知 を 条 件 として 第 三 者 へ 譲 渡 す ることも 可 能 とされている (45) 3 札 幌 ANビルの 事 例 この 事 例 は 朝 日 新 聞 ( 甲 )と 日 本 生 命 ( 乙 )との 共 同 ビル( 区 分 所 有 の 建 物 ) 及 び 甲 単 独 所 有 の 建 物 を 建 設 するに 当 たって 総 合 設 計 制 度 の 適 用 容 積 率 の 割 増 しを 受 け 甲 単 独 所 有 の 建 物 に 生 じた 余 剰 容 積 率 を 甲 乙 の 共 同 ビルに 移 転 した 事 例 である この 事 例 では 甲 が 所 有 する 土 地 に 上 記 2 棟 の 建 物 を 建 築 するに 当 たって 一 団 地 の 認 定 を 受 けることによって 甲 単 独 所 有 の 建 物 に 生 じた 余 剰 容 積 率 を 甲 乙 の 共 同 ビルに 移 転 した また 共 同 ビルの 敷 地 に 対 する 乙 の 権 原 のため に 建 物 の 区 分 所 有 割 合 に 対 応 した 地 上 権 を 設 定 し 乙 はその 対 価 を 甲 に 支 払 うとともに 地 代 を 支 払 っている これにより 共 同 ビルの 敷 地 に 対 する 権 原 は 甲 は 所 有 権 乙 は 地 上 権 となった また 甲 乙 相 互 に 貸 借 権 を 設 定 して 甲 は 乙 の 地 上 権 を 賃 貸 し 乙 は 甲 の 所 有 権 を 賃 貸 する なお 本 件 の 場 合 乙 の 余 剰 容 積 率 利 用 権 のために 甲 の 単 独 所 有 建 物 の 敷 地 に 地 役 権 又 は 区 分 地 上 権 は 設 定 されていない (46) (45) 日 端 前 掲 注 13 171 頁 参 照 (46) 高 田 寿 史 容 積 移 転 の 制 度 と 事 例 - 日 米 のケース スタディ-2 不 動 産 研 究 24 巻 1 号 27 頁 参 照
291 4 堂 島 大 阪 ビルの 事 例 この 事 例 は 総 合 設 計 制 度 の 適 用 を 受 けて クラブ 関 西 ( 甲 )が 大 阪 建 物 ( 乙 )に 容 積 率 を 譲 渡 し 乙 が 堂 島 大 阪 ビルを 建 設 した 事 例 である 大 阪 建 物 は 所 有 地 にホテルの 建 築 を 計 画 したが 自 分 の 敷 地 に 建 築 可 能 な 延 床 面 積 では 建 物 賃 借 人 の 希 望 する 建 物 が 建 築 できないことから 隣 地 のクラブ 関 西 の 建 築 計 画 にあわせて 一 敷 地 として 共 同 建 築 を 申 請 し 余 剰 容 積 率 を 譲 り 受 けた 甲 と 乙 の 建 物 は 概 観 上 はまったく 別 棟 であるが 1 地 価 茎 方 式 で 連 結 さ れ 双 方 の 地 下 駐 車 場 は 連 続 していて 乙 側 で 一 体 的 に 使 用 しており また 2 暖 冷 房 設 備 は 乙 側 に 設 置 され 甲 側 にも 供 給 している 乙 側 としては 自 己 の 所 有 地 のみでは 十 分 な 容 積 率 を 確 保 できないため 甲 から 余 剰 容 積 率 を 購 入 し その 利 用 権 の 保 全 措 置 として 乙 は 甲 所 有 地 に 鉄 筋 コンクリート 造 建 造 物 所 有 を 目 的 とする 区 分 地 上 権 ( 大 阪 湾 最 低 海 面 の 上 20mから 50mの 間 に 存 続 期 間 65 年 )を 取 得 し 仮 登 記 をした (47) (47) 高 田 寿 史 容 積 移 転 の 制 度 と 事 例 - 日 米 のケース スタディ-3 不 動 産 研 究 24 巻 2 号 31 頁 参 照
292 第 3 章 容 積 率 移 転 に 関 する 税 務 上 の 取 扱 い 第 1 節 容 積 率 を 移 転 した 場 合 の 現 行 の 税 務 上 の 取 扱 い 1 容 積 率 の 移 転 に 係 る 所 得 税 法 及 び 法 人 税 法 上 の 規 定 現 行 の 所 得 税 法 及 び 法 人 税 法 において 容 積 率 移 転 に 関 する 取 扱 いについ てどのような 規 定 が 設 けられているかを 確 認 する (1) 所 得 税 法 上 の 規 定 現 行 の 所 得 税 法 において 容 積 率 を 移 転 した 場 合 の 取 扱 いを 規 定 したも のとしては 所 得 税 法 施 行 令 ( 以 下 所 法 令 という )79 条 1 項 が 認 め られる 同 項 は 所 得 税 法 ( 以 下 所 法 という )33 条 1 項 ( 譲 渡 所 得 ) かっこ 書 きで 資 産 の 譲 渡 として 取 り 扱 われる 建 物 又 は 構 築 物 の 所 有 を 目 的 とする 地 上 権 又 は 賃 借 権 の 設 定 その 他 契 約 により 他 人 に 土 地 を 長 期 間 使 用 させる 行 為 の 具 体 的 範 囲 を 規 定 するものである 所 法 令 79 条 1 項 の 具 体 的 内 容 を 見 る 前 に 所 得 税 法 における 不 動 産 所 得 と 譲 渡 所 得 との 関 係 について 整 理 しておく 所 法 26 条 1 項 は 不 動 産 所 得 とは 不 動 産 不 動 産 の 上 に 存 する 権 利 船 舶 又 は 航 空 機 の 貸 付 け( 地 上 権 又 は 永 小 作 権 の 設 定 その 他 他 人 に 不 動 産 等 を 使 用 させることを 含 む ) による 所 得 ( 事 業 所 得 又 は 譲 渡 所 得 に 該 当 するものを 除 く )をいう と 規 定 しており 一 方 所 法 33 条 1 項 は 譲 渡 所 得 とは 資 産 の 譲 渡 ( 建 物 又 は 構 築 物 の 所 有 を 目 的 とする 地 上 権 又 は 賃 借 権 の 設 定 その 他 契 約 によ り 他 人 に 土 地 を 長 期 間 使 用 させる 行 為 で 政 令 で 定 めるものを 含 む )による 所 得 をいう と 規 定 している すなわち 不 動 産 所 得 とは 不 動 産 等 の 貸 付 けによる 所 得 を 基 本 概 念 とし 不 動 産 等 の 貸 付 け には 賃 貸 のみな らず 地 上 権 又 は 永 小 作 権 の 設 定 その 他 他 人 に 不 動 産 等 を 使 用 させる 行 為 が 含 まれるが これに 該 当 する 場 合 であっても 建 物 又 は 構 築 物 の 所 有 を 目 的 とする 地 上 権 又 は 賃 借 権 の 設 定 その 他 契 約 により 他 人 に 土 地 を 長 期 間 使 用 させる 行 為 で 所 法 令 79 条 1 項 に 該 当 する 行 為 によって 生 ずる 所 得 につ
293 いては 譲 渡 所 得 として 取 り 扱 われ 不 動 産 所 得 から 除 外 されることにな る 所 法 令 79 条 1 項 は 他 人 に 土 地 等 を 長 期 間 使 用 させる 行 為 のうち 資 産 の 譲 渡 とみなす 行 為 の 範 囲 を 建 物 若 しくは 構 築 物 の 所 有 を 目 的 とする 地 上 権 若 しくは 賃 借 権 ( 以 下 借 地 権 という ) 又 は 次 に 述 べる 地 役 権 の 設 定 ( 借 地 権 に 係 る 土 地 の 転 貸 その 他 他 人 に 当 該 土 地 を 使 用 させる 行 為 を 含 む )のうち その 対 価 として 支 払 を 受 ける 金 額 が 土 地 又 は 借 地 権 の 価 額 の 2 分 の 1( 地 価 又 は 空 間 について 上 下 の 範 囲 を 定 めた 借 地 権 若 しくは 地 役 権 の 設 定 である 場 合 等 (48) は 4 分 の1)に 相 当 する 金 額 を 超 えるものに 限 定 している 資 産 の 譲 渡 とみなされる 借 地 権 等 の 範 囲 がこのように 限 定 され ているのは これらの 行 為 を 資 産 の 譲 渡 とみなすこととしている 趣 旨 が 借 地 権 の 設 定 等 により 土 地 の 利 用 が 長 期 間 にわたって 固 定 され いわば 土 地 の 用 益 権 と 底 地 権 とが 分 離 された 状 態 が 生 じたと 認 められる 場 合 にその 用 益 権 部 分 についてキャピタル ゲイン 課 税 の 清 算 をしようとすることに あるところから 借 地 権 の 設 定 等 を 資 産 の 譲 渡 に 含 める 場 合 の 第 一 の 要 件 として 借 地 権 の 設 定 等 により 建 物 又 は 構 築 物 が 設 置 され 又 はその 設 置 が 制 限 される 場 合 に 限 定 しているものと 考 えられる (49) また 借 地 権 等 の 設 定 にあたって 支 払 を 受 ける 権 利 金 等 の 額 がその 土 地 の 価 額 の2 分 の1( 又 は4 分 の1)を 超 える 場 合 は 借 地 権 の 譲 渡 性 の 有 無 に 関 わりなく 一 律 に 譲 渡 所 得 として 取 り 扱 われるものと 解 されるが これは このような 権 利 金 が 性 質 上 すべて 譲 渡 所 得 に 含 まれるという 理 由 によるものではなく 権 利 金 が 地 価 の2 分 の1を 超 えるような 多 額 にのぼ る 場 合 に それを 不 動 産 所 得 として 扱 うと 高 い 税 率 が 適 用 され 権 利 金 の 授 受 を 行 わず 地 代 を 高 額 とする 場 合 に 比 較 して 税 負 担 が 重 くなるため (48) ここでいう 借 地 権 若 しくは 地 役 権 の 設 定 とは 地 価 又 は 空 間 について 上 下 の 範 囲 を 定 めた 借 地 権 若 しくは 地 役 権 の 設 定 である 場 合 又 は 導 流 堤 等 若 しくは 河 川 法 第 6 条 1 項 3 号 ( 河 川 区 域 )に 規 定 する 遊 水 地 その 他 財 務 省 令 で 定 めるこれに 類 するも のの 設 置 を 目 的 とした 地 役 権 の 設 定 である 場 合 をいう( 所 法 令 79 条 1 項 1 号 ) (49) 武 田 昌 輔 監 修 DHCコンメンタール 所 得 税 法 2535 頁 ( 第 一 法 規 出 版 ) 参 照