乳 腺 炎 (121024) 30 代 女 性 2 日 前 より 倦 怠 感 と 微 熱 を 認 めた その 他 には 特 に 症 状 は 無 い 上 気 道 炎 症 状 や 尿 路 の 症 状 もなし 2 か 月 の 児 に 授 乳 中 症 状 は 微 熱 だけで 原 因 がはっきりしないため 対 症 薬 で 経 過 観 察 し 症 状 が 出 現 したときに 再 来 を 指 示 した のちに 右 乳 房 内 側 に 部 分 的 な 硬 結 と 圧 痛 腫 脹 が 出 現 してきた 数 日 授 乳 をしておらず その 後 に 症 状 が 出 現 してきたというエピソードから 一 連 の 症 状 は 乳 腺 炎 によるものと 判 断 した 乳 腺 炎 について 復 習 基 本 乳 腺 炎 は 授 乳 期 間 のどの 時 期 でも 発 症 するが 産 後 2 3 週 間 目 に 多 くみられ 患 者 の 約 半 数 は 産 後 3 カ 月 までに 発 症 している 全 授 乳 期 間 では 授 乳 婦 の 20~30%が 経 験 する 3) 乳 腺 炎 は 産 後 に 多 く 発 症 し その 頻 度 は 報 告 により 3-33%となっており 授 乳 に 支 障 をきた すだけでなく 発 熱 など 全 身 症 状 を 伴 う 1) 児 の 吸 畷 が 十 分 でない 授 乳 のスキップ 乳 汁 分 泌 過 多 などの 誘 因 により 乳 汁 うっ 滞 や 乳 管 閉 塞 をきたす 腺 房 からの 排 出 を 阻 害 された 母 乳 成 分 は 乳 腺 間 質 に 移 行 して 局 所 的 な 腫 脹 を 引 き 起 こし(うっ 滞 性 乳 腺 炎 ) さらに 細 菌 感 染 を 併 発 すると( 急 性 化 膿 性 乳 腺 炎 ) 高 熱 な ど 全 身 症 状 が 出 現 する 1) 時 間 を 決 めた 授 乳 授 乳 中 の 中 断 不 規 則 な 授 乳 パターン 早 過 ぎる 左 右 乳 房 の 切 り 替 え 授 乳 急 激 な 授 乳 回 数 の 減 少 直 接 授 乳 の 中 止 なども 乳 汁 うっ 滞 の 因 子 となり これら 複 数 の 因 子 を 内 包 する 母 子 分 離 は 乳 汁 うっ 滞 のハイリスク 因 子 である 3) 化 膿 性 乳 腺 炎 の 原 因 菌 としては 黄 色 ブドウ 球 菌 が 最 も 多 く β 溶 血 性 連 鎖 球 菌 が 検 出 され ることもある このいずれかが 検 出 された 場 合 は それ 以 外 の 菌 と 比 較 して 治 癒 まで 1 週 間 以 上 を 要 したり 外 科 的 処 置 を 必 要 とする 膿 瘍 ができるなど 重 症 化 するリスクが 高 いという 報 告 がある 1) Foxman らは 産 褥 期 の 乳 頭 亀 裂 を 有 する 例 で 乳 腺 炎 の 発 症 頻 度 が 高 いことを 報 告 している 2) 母 親 の 食 事 では 一 般 に 塩 分 や 脂 肪 分 の 多 い 食 事 は 乳 腺 炎 発 症 に 関 与 するといわれてい るが 確 定 的 なエビデンスは 得 られていない 3) 症 状 (うっ 滞 性 乳 腺 炎 )
分 娩 時 に 胎 盤 が 娩 出 されるとプロゲステロンの 急 激 な 低 下 が 引 き 金 となって 分 娩 後 36~96 時 間 目 より 乳 汁 分 泌 が 本 格 的 となるが 乳 管 の 開 通 が 十 分 でないことが 多 く 乳 房 は 緊 満 し しばしば 疼 痛 を 伴 う 1) 症 状 は 自 発 痛 圧 痛 を 伴 う 乳 房 の 腫 脹 と 乳 汁 うっ 滞 部 の 硬 結 などであり ときに 熱 感 を 感 じる ことがあるが 発 赤 は 認 めないことが 多 く ほとんどが 片 側 性 に 発 症 する また 既 往 の 妊 娠 分 娩 で 乳 腺 炎 の 罹 患 歴 があると 発 症 しやすいとの 報 告 もある 2) 乳 管 の 開 通 と 哺 乳 の 確 立 に 伴 い 乳 房 の 緊 満 に 伴 う 不 快 な 症 状 は 軽 快 することが 多 いが その 後 の 授 乳 において 複 数 ある 乳 腺 の 中 に 乳 汁 排 出 が 不 完 全 な 部 位 があると 乳 汁 栓 や 乳 管 の 物 理 的 圧 迫 によって 乳 管 閉 塞 をきたし 乳 房 に 痛 みを 伴 うしこりや 発 赤 を 生 ずる 1) 全 身 症 状 として 発 熱 をみる 場 合 は 初 期 の 段 階 で 感 染 性 乳 腺 炎 と 鑑 別 することはむずかし い 3) ( 急 性 化 膿 性 乳 腺 炎 ) 乳 頭 から 乳 管 への 逆 行 性 感 染 によって 起 こる 1) うっ 滞 した 乳 汁 は 細 菌 の 繁 殖 環 境 として 好 適 であり 乳 管 上 皮 の 老 廃 物 によって 乳 管 が 閉 塞 されやすい 産 後 2~3 週 頃 に 好 発 する 3) 分 娩 後 10 日 ~2 カ 月 目 までに 多 く 認 められるが 授 乳 期 の 後 半 や 卒 乳 時 にみられることも 少 なくない 通 常 乳 房 の 局 所 的 な 発 赤 腫 脹 硬 結 圧 痛 自 発 痛 とともに 急 性 の 悪 寒 戦 傑 38 度 以 上 の 発 熱 全 身 倦 怠 感 など 感 冒 様 症 状 を 伴 う 1) 症 状 としては 悪 寒 戦 慄 を 伴 う 発 熱 や 全 身 倦 怠 などの 全 身 症 状 のほか 乳 房 の 発 赤 熱 感 腫 脹 硬 結 疼 痛 などの 局 所 症 状 を 呈 する 片 側 性 が 多 く 乳 房 全 体 ではなく 一 部 外 上 側 1/4 であることが 多 い 2) 主 として 産 褥 6 週 までに 発 症 し 膿 性 の 乳 汁 の 細 菌 培 養 からも 菌 体 が 検 出 される 起 炎 菌 は 黄 色 ブドウ 球 菌 が 最 多 で 約 40%を 占 め ほかに 連 鎖 球 菌 や 大 腸 菌 肺 炎 球 菌 真 菌 などが 続 く 2) 治 療 (うっ 滞 性 乳 腺 炎 ) 不 完 全 な 乳 汁 排 出 が 原 因 となっているので 乳 汁 うっ 滞 を 起 こしやすい 部 位 を 同 定 して 排 乳 し 乳 管 の 開 通 を 促 すために 触 診 とマッサージを 行 う 1) 乳 房 の 安 静 冷 却 と 搾 乳 や 乳 房 マッサージによる 乳 汁 の 排 泄 を 促 すのがよい 2) 乳 房 マッサージは 褥 婦 自 身 では 手 技 的 に 困 難 があり しこりのある 部 分 では 痛 みを 伴 うこと
が 多 いため 効 果 的 に 行 うことが 難 しい 当 初 は 助 産 師 の 援 助 を 受 けるよう 指 導 することが 望 ましい 1) 症 状 が 落 ち 着 いていれば 温 かいシャワーや 入 浴 中 のマッサージは 乳 汁 栓 の 除 去 に 効 果 が ある 1) 乳 汁 分 泌 が 盛 んな 場 合 哺 乳 量 を 上 回 って 乳 腺 に 乳 汁 が 残 りやすい 搾 乳 しやすい 部 位 の 乳 腺 を 褥 婦 自 身 で 排 出 したのちに 授 乳 し 児 の 吸 啜 力 で 乳 腺 の 通 過 性 を 改 善 する 方 法 は 自 宅 でも 行 うことが 出 来 る 1) 痛 みなどの 症 状 が 強 い 場 合 は 腫 脹 部 位 を 間 接 的 に 冷 却 するとともに 早 めに 受 診 して 診 察 を 受 けることが 望 ましい 1) Thomsen らは 非 感 染 性 乳 腺 炎 では 無 治 療 だと 症 状 が 平 均 で 5 日 間 持 続 し 約 半 数 が 感 染 性 乳 腺 炎 に 移 行 し 最 終 的 に 11%が 乳 腺 膿 瘍 を 形 成 する 一 方 で 積 極 的 に 搾 乳 を 行 うと 症 状 の 持 続 期 間 や 感 染 性 乳 腺 への 移 行 例 が 有 意 に 減 少 すると 報 告 しており 搾 乳 して 乳 腺 の うっ 滞 を 可 能 な 限 り 解 消 することが 重 要 だと 考 えられる 2) 母 親 のストレスと 疲 労 は 乳 腺 炎 のリスク 因 子 のひとつであるといわれており 日 頃 の 体 調 管 理 にも 注 意 が 必 要 である 1) 抗 生 物 質 や 消 炎 鎮 痛 剤 については 必 須 ではないが 痛 みや 緊 満 感 が 強 い 場 合 には 消 炎 酵 素 剤 を 投 与 することも 考 慮 する 2) ( 急 性 化 膿 性 乳 腺 炎 ) 発 熱 など 感 染 徴 候 が 明 らかな 場 合 は 抗 生 物 質 消 炎 鎮 痛 薬 消 炎 酵 素 薬 の 投 与 を 行 い 全 身 の 安 静 を 保 つ 1) ペニシリン 系 セフェム 系 抗 生 物 質 を 7~10 日 間 投 与 する 解 熱 鎮 痛 薬 として 安 全 であるとさ れているのはアセトアミノフェン(カロナール など) イブプロフェン(ブルフェン など ジクロ フェナクナトリウム(ボルタレン など)である 1) 化 膿 性 乳 腺 炎 の 治 療 は 搾 乳 による 乳 汁 の 排 泄 と 冷 罨 法 消 炎 鎮 痛 剤 の 投 与 などに 加 え 抗 生 物 質 を 経 口 投 与 する 薬 剤 の 選 択 にあたっては グラム 陽 性 球 菌 である 黄 色 ブドウ 球 菌 を カバーするために 広 域 ペニシリン 系 抗 生 物 質 や βラクタマーゼ 阻 害 剤 の 合 剤 第 1 第 2 世 代 セフェム 系 抗 生 物 質 などの 使 用 を 考 慮 する 2) 投 薬 後 仮 に 症 状 が 速 やかに 消 失 しても 10~14 日 間 は 継 続 すべきとされている 2) 患 側 乳 房 からの 授 乳 は 感 受 性 のある 抗 生 物 質 投 与 により 感 染 がコントロールされていれば 禁 忌 ではない 1) 授 乳 については 継 続 した 方 が 続 発 する 乳 腺 膿 瘍 の 発 症 頻 度 が 低 かったとする 報 告 が 多 く 患 側 であっても 乳 汁 が 膿 性 でなければ 継 続 しても 差 し 支 えないと 考 えられる 2) 難 治 性 や 反 復 性 の 乳 腺 炎 などで 乳 汁 分 泌 抑 制 が 必 要 な 場 合 はカベルゴリン(カバサール )
の 使 用 を 考 慮 する 1) 治 療 が 遅 れると 膿 瘍 を 形 成 する 可 能 性 があり 治 療 が 不 完 全 な 場 合 には 反 復 性 乳 腺 炎 とな り 症 状 が 再 燃 しやすくなるので 注 意 が 必 要 である 1) 母 乳 育 児 の 一 般 的 なことはある 程 度 知 っておいた 方 がいい www.geocities.jp/tono_osan_net/motheroppai-text.pdf 参 考 文 献 5 は 一 般 向 けの 内 容 だが 実 践 的 な 内 容 が 含 まれており 勉 強 になる 以 下 は 抜 粋 乳 房 痛 乳 房 の 痛 みは 非 常 につらいので つぎのような 予 防 に 十 分 気 をつけることがたいせつ です まず 第 1 に 乳 管 (にゅうかん)が 閉 塞 (へいそく)しないように 授 乳 前 に 少 し 母 乳 をしぼるか ひまをみつけては 乳 房 のマッサージをしてください 第 2 は 1 回 ごとの 授 乳 を 長 くしないことです 片 方 の 乳 房 で 15 分 くらいまでにしておきましょ う 長 くしゃぶらせていると 乳 くびがふやけて 傷 つきやすくなります 第 3 は 授 乳 の 姿 勢 をいろいろと 変 えて 赤 ちゃんの 口 に 含 ませる 乳 くびの 角 度 を 変 えること です また 乳 くびだけでなく 乳 輪 (にゅうりん)まで 深 く 含 ませるようにしてください 第 4 は 乳 房 を 清 潔 に 保 ち 乳 くびを 乾 燥 した 状 態 にしておきましょう そのためには いつも 胸 に 清 潔 でやわらかいタオルやブレストパッドをずれないようにあて 乳 くびがこすれずに 乾 燥 した 状 態 を 保 てるようにします 授 乳 後 には 乳 くびを 軽 くふき そのまま 空 気 にさらしたり 日 光 にあてたりするのがよいでしょう 乳 房 がしこって 痛 くなるとすぐ 乳 腺 炎 (にゅうせんえん)( 急 性 うっ 滞 性 乳 腺 炎 )と 考 えがちで すが 発 熱 や 乳 房 の 発 赤 (ほっせき)( 皮 膚 が 赤 くなる) わきの 下 のリンパ 節 が 腫 (は)れて 痛 いということがなければ ただお 乳 がたまっただけのうつ 乳 (にゅう)です このうつ 乳 に 対 しては 痛 みを 多 少 がまんしても 赤 ちゃんに 吸 ってもらうか 手 でしぼり とに かく 乳 を 出 すことがたいせつです また 乳 房 マッサージや 授 乳 と 授 乳 の 間 に 湿 布 (しっぷ)を するのも 効 果 的 です
助 産 師 さんや 婦 人 科 の 先 生 とも 協 力 してケアに 参 加 で 来 たらいいと 思 う 参 考 文 献 1. 大 鷹 美 子. 乳 腺 炎 への 対 応 発 症 機 序 と 対 処 法. 産 科 と 婦 人 科 76(1): 81-85, 2009. 2. 吉 田 昭 三, 小 林 浩. 授 乳 期 の 乳 腺 疾 患 の 診 断 と 治 療. 産 婦 人 科 治 療 99(4): 332-336, 2009. 3. 杉 本 充 弘, 木 戸 道 子, 石 井 康 夫. 乳 腺 炎. 産 科 と 婦 人 科 75(11): 1562-1567, 2008. 4. 母 乳 育 児 パンフレット.お 産 ネット 東 濃 http://www.geocities.jp/tono_osan_net/ 5. 小 学 館 家 庭 医 学 館 編 集 委 員 会. 産 褥 期 の 注 意 すべき 症 状 と 対 策. 家 庭 医 学 館 http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/homemed/10854/m0u/%e3%81%95/