Swing States 日 本 を 含 めたアジア 太 平 洋 地 域 の 外 交 安 全 保 障 政 策 の 論 議 の 中 で より 広 い 地 理 的 概 念 である Indo-Pacific(インド 太 平 洋 ) が 次 第 に 市 民 権 を 得 つつある インド 太 平 洋 はもともと 海 洋 生 物 学 の 分 野 で 使 われていた 用 語 で 地 政 学 外 交 安 全 保 障 論 議 の 分 野 で 使 われ 始 めたのは 10 年 足 らず 前 のことに 過 ぎない 変 化 の 背 景 にあるのは まず 冷 戦 の 終 結 米 国 によるテロとの 戦 いとその 終 結 という 世 界 規 模 の 戦 略 環 境 の 大 きな 変 化 だ それを 受 けて 米 国 をはじめとする 主 要 各 国 の 戦 略 調 整 が 進 んでいる さらに 中 国 の 国 力 と 影 響 力 の 伸 長 インドの 地 政 学 的 プレーヤーとし ての 存 在 の 拡 大 もある こうした 一 連 の 変 化 を 受 けて アジア 太 平 洋 にとどまらず インド 洋 も 含 めたより 大 きな 地 理 的 広 がりの 中 で 各 国 の 共 通 利 益 と 共 通 脅 威 を 議 論 する 必 要 性 が 生 まれている アジアを 北 東 アジア 東 南 アジア 南 アジアに 3 分 割 して 考 え る 従 来 の mental mapping( 思 考 地 図 ) に 再 編 が 迫 られている アジア 太 平 洋 に 付 加 される 形 のインドが 強 い 関 心 を 持 って 議 論 を 重 ねているのに 加 えて インド 洋 太 平 洋 に 挟 まれる 形 で 国 土 を 持 つオーストラリアも この 概 念 を 前 提 にして さまざまな 戦 略 論 議 を 展 開 している インド 太 平 洋 の 戦 略 空 間 としての 妥 当 性 や 有 為 性 に は 異 論 や 制 約 が あ る こ と も 事 実 だ し か し 米 国 の ア ジ ア 回 帰 (Rebalance) 中 国 の 一 帯 一 路 など インド 太 平 洋 を 視 野 に 置 いた 戦 略 や 政 策 の 立 案 展 開 が 地 域 主 要 国 によって 進 められている 中 その 重 要 性 が 増 していることは 明 ら かだ 日 本 にも インド 太 平 洋 を 前 提 とした 思 考 が 今 後 一 層 より 強 く 求 められるこ とになる インド 太 平 洋 という 用 語 がどのように 使 われているか どの 程 度 定 着 しているかを 各 国 政 府 やメディアでの 使 われ 方 外 交 政 策 専 門 家 に 対 するアンケートなどを 通 じて 点 検 する Wikipedia( 英 文 )によると Indo-Pacific が 戦 略 的 / 地 政 学 的 文 脈 で 最 初 に 使 用 されたのは 2007 年 1 月 に 出 版 された シーレーン( 海 上 交 通 路 )の 安 全 保 障 をめぐる インドと 日 本 の 協 力 に 関 する 論 文 だという 1 インドの 研 究 機 関 で 書 かれたもので タイ トルは 邦 訳 すれば シーレーンの 安 全 : 日 印 協 力 の 展 望 だった インド 太 平 洋 には 当 初 から 日 本 への 関 心 が 込 められていたことになる ここで 論 じられた インド 太 平 洋 の 地 理 的 定 義 は 東 アフリカの 沿 岸 地 域 から 西 アジア インド 洋 をまたいで 西 太 平 洋 東 アジアの 沿 岸 地 域 まで という 広 がりだった インドで 出 版 された 別 の 論 文 によると インドがインド 洋 だけでなく 太 平 洋 にも 戦 略 的 な 関 心 を 持 ち 始 めた 理 由 は 南 シナ 海 の 不 安 定 化 だったという 地 域 諸 国 同 士 の 競 争 関 係 と 領 土 紛 争 が 激 化 するにつれて インドは 東 アジアへの 安 全 保 障 上 の 関 与 の 意 義 をより - 131 -
真 剣 に 考 える 必 要 に 迫 られた という 説 明 だ 2 Wikipedia では インドで 出 版 された 論 文 に 次 いで インド 太 平 洋 の 精 神 が 取 り 上 げられた 例 として 挙 げられているのが 2007 年 8 月 に 第 一 次 安 倍 内 閣 当 時 の 安 倍 晋 三 首 相 が インドを 訪 問 した 際 インド 国 会 で 行 った 演 説 だ 二 つの 海 の 交 わり という タイトルで インド 洋 と 太 平 洋 について 今 や 自 由 の 海 繁 栄 の 海 として 一 つのダイナ ミックな 結 合 をもたらしています と 指 摘 した 3 ただ インド 太 平 洋 という 用 語 その ものは 使 っていないため あくまで 精 神 を 示 したものと 説 明 された ここでも 日 本 の 関 与 が 指 摘 注 目 されていることは 留 意 する 意 味 があるだろう 安 倍 氏 はその 後 いったん 政 権 を 離 れ 2012 年 12 月 に 第 二 次 安 倍 内 閣 を 発 足 させて 復 帰 した その 直 後 2013 年 の 1 月 には インドネシアを 訪 問 し 再 びインド 洋 と 太 平 洋 に 関 する 演 説 をすることになった 演 説 そのものは アルジェリアで 発 生 した 邦 人 拘 束 事 件 への 対 応 のため 安 倍 首 相 が 急 きょ 帰 国 を 余 儀 なくされたため 実 際 には 行 われなかっ たが 原 稿 は 日 本 政 府 から 発 表 された それによると 日 米 同 盟 に 言 及 した 部 分 で 2つ の 大 洋 を 穏 やかなる 結 合 として 世 の 人 すべてに 幸 いをもたらす 場 と 成 すために い まこそ 日 米 同 盟 にいっそうの 力 と 役 割 を 与 えなくてはならない これからは 日 米 同 盟 に 安 全 と 繁 栄 をともに 担 保 する 2つの 海 にまたがるネットワークとしての 広 がりを 与 えなくてはなりません などと 指 摘 した 4 同 年 2 月 には 政 権 に 復 帰 して 以 来 早 期 実 現 を 模 索 してきた 米 国 訪 問 にこぎつけた ワシントン 市 内 のシンクタンクで 行 った 日 本 は 戻 ってきました というタイトルの 政 策 演 説 は 日 米 両 国 で 注 目 を 集 めた その 中 で 安 倍 首 相 は 今 やアジア 太 平 洋 地 域 インド 太 平 洋 地 域 は ますますもって 豊 かになりつ つあります と 初 めて 公 式 発 言 として インド 太 平 洋 に 言 及 した 5 2014 年 5 月 シンガポールで 開 かれたシャングリラ ダイアローグ(アジア 安 全 保 障 会 議 )で 行 った 基 調 講 演 でも 二 つの 意 味 の 交 わり に 触 れた 6 岸 田 文 雄 外 相 は より 明 確 に インド 太 平 洋 という 用 語 を 使 った 2015 年 1 月 にイ ンドを 訪 問 した 際 インド 太 平 洋 時 代 のための 特 別 なパートナーシップ と 題 する 講 演 を 行 い インド 太 平 洋 に 繰 り 返 し 言 及 した その 中 で 岸 田 外 相 は インド 太 平 洋 地 域 が 世 界 の 繁 栄 の 中 心 となる 時 代 が 到 来 しつつある とも 語 り 意 義 を 強 調 した 7 このように インド 太 平 洋 という 用 語 は 安 倍 政 権 の 閣 僚 の 発 言 を 見 る 限 り インド インドネシアといった いわゆる Swing States との 関 係 を 中 心 に 使 われるようになっ ていることが 分 かる しかし 日 本 国 内 での 国 会 論 議 やメディア 報 道 では まだまだ その 使 用 は 限 定 的 だ 国 会 会 議 録 検 索 システムを 使 って 過 去 の 衆 議 院 参 議 院 の 本 会 議 委 員 会 すべての 審 議 を 通 じて インド 太 平 洋 という 用 語 が 使 われた 例 を 検 索 したところ 2 月 1 日 現 在 でヒットしたのは 3 件 だけだった しかも いずれも 海 洋 生 物 や 漁 業 に 関 する 文 脈 で 使 われており 外 交 安 全 保 障 の 文 脈 での 使 用 の 例 はなかった 朝 日 新 聞 の 記 事 データベースで インド 太 平 洋 あるいは インド 太 平 洋 が 使 われ た 例 を 調 べると データベースに 収 容 されている 過 去 のすべての 記 事 で 計 9 件 しかなかっ た それも 多 くは 国 会 審 議 同 様 海 洋 生 物 に 関 する 記 事 であって 外 交 安 全 保 障 政 策 に 関 する 記 事 は 首 相 動 静 も 含 めて 3 件 だけだった そのうち 最 近 の 例 は 2014 年 11 月 主 要 20 カ 国 地 域 (G20) 首 脳 会 議 の 開 かれたオーストラリア ブリスベンで 行 われ - 132 -
た 安 倍 首 相 とモディ インド 首 相 との 日 印 首 脳 会 談 に 関 するものだった 安 倍 首 相 が 日 印 関 係 にインド 太 平 洋 地 域 の 安 定 と 発 展 に 貢 献 する 視 点 を 付 与 し 広 がりと 深 みを 持 たせ たい と 発 言 したとある 8 日 本 国 内 では まだ 広 く 国 民 一 般 に 浸 透 しているとまでは 言 えないことが 分 かる ちなみに オーストラリアの 地 元 紙 The Australian のウェブサイトで Indo-Pacific を キーワードにして 記 事 検 索 すると 860 件 がヒットする インドの 英 語 紙 The Times of India では 2,670 件 インドネシアの The Jakarta Post では 8,930 件 に 上 る 上 記 Wikipedia の 記 事 によると 政 府 の 公 式 文 書 で 最 初 に インド 太 平 洋 を 使 ったのは オーストラリア 政 府 で 2013 年 に 出 された 国 防 白 書 だったという 第 2 章 戦 略 的 展 望 の 冒 頭 に インド 太 平 洋 という 項 目 を 立 て 新 しいインド 太 平 洋 戦 略 弧 が 姿 を 現 しつ つある と 指 摘 したほか 自 国 の 戦 略 的 政 策 アプローチ を 説 明 した 第 3 章 では オー ストラリアは 自 国 に 隣 接 する 周 辺 地 域 を 超 えて インド 太 平 洋 の 安 定 に 恒 久 的 な 戦 略 利 益 を 持 っている と 規 定 している 国 防 軍 の 主 要 4 任 務 の 中 にも 第 3 項 目 として イ ンド 太 平 洋 の 軍 事 的 緊 急 事 態 に 対 処 する が 含 まれている 白 書 全 体 で 計 58 回 インド 太 平 洋 を 使 っている 9 オーストラリア 政 府 が 安 全 保 障 政 策 の 対 象 とする 地 理 的 枠 組 みとして アジア 太 平 洋 に 代 わって インド 太 平 洋 を 採 用 したことが 明 らかだ オーストラリアでは それ 以 前 から インド 太 平 洋 を 正 面 から 取 り 上 げた 政 策 議 論 が 民 間 で 広 く 行 われてきた 2011 年 3 月 ギラード 首 相 ( 当 時 )が 初 めて 訪 米 したのにともなって 地 元 紙 に 掲 載 された 外 交 専 門 家 による 評 論 の 中 では インド 洋 は オーストラリアにとってよりな じみの 深 いアジア 太 平 洋 地 域 と 結 合 して 世 界 の 安 全 に 極 めて 重 要 なゾーンを 形 成 しつつ ある ( 首 脳 会 談 で 協 議 されるべき)もう 一 つの 重 要 課 題 は インド 太 平 洋 の 海 洋 アジ アで 生 じている 戦 略 変 化 の 深 い 流 れにどう 対 応 するかだ などと 論 じられた 10 2012 年 11 月 に 出 版 された 論 文 では オーストラリアはインド 太 平 洋 時 代 に 入 りつつ ある として 以 下 の 3 要 素 を 上 げて 説 明 している (1) 地 理 的 に 定 義 された 利 益 およ びインドを 含 めたアジアとの 経 済 的 社 会 的 な 深 い 相 互 関 与 (2) アジア 回 帰 に 関 連 する 米 国 との 同 盟 関 係 の 重 要 性 (3)もっとも 重 要 な 要 素 として アジアの 主 要 国 にとっ て 東 南 アジアの 諸 海 峡 や 半 島 を 超 えて 自 国 の 近 隣 諸 国 を 考 えるよう 迫 る 根 本 的 な 経 済 的 戦 略 的 な 要 件 が 生 まれていること 11 地 球 儀 を 見 れば 明 らかだが 南 半 球 にあるオーストラリアは 北 と 東 を 太 平 洋 西 はイ ンド 洋 に 面 している 両 大 洋 に 挟 まれた 形 だ 北 半 球 の 東 アジア 諸 国 からインド 洋 に 到 達 するには インドシナ 半 島 を 越 えなければならないのと 比 べて オーストラリアにとって インド 洋 と 太 平 洋 を 直 接 結 びつけて 考 えることがいかに 自 然 で 容 易 かは その 地 理 的 位 置 を 考 えれば 理 解 しやすい これは もう 一 つの Swing State であるインドネシアについ てもあてはまることだ インドネシアのマルティ 外 相 は インド 太 平 洋 の 地 政 学 的 価 値 をたびたび 強 調 して いる 2013 年 5 月 にワシントンのシンクタンクで 行 った 演 説 がよく 知 られているが そ の 中 でマルティ 氏 は インド 太 平 洋 は 地 政 学 用 語 の 中 で ますます 広 く 使 われるよ うになってきている と 述 べた 12 公 式 文 書 ではないが ヒラリー クリントン 米 国 務 長 官 ( 当 時 )は 2010 年 10 月 28 日 - 133 -
にハワイで 行 ったスピーチの 中 で 以 下 のように インド 太 平 洋 という 用 語 を 使 ってい る 13 And we are expanding our work with the Indian navy in the Pacific, because we understand how important the Indo-Pacific basin is to global trade and commerce. 演 説 全 体 を 通 じて 使 われたのは この 1 回 だけだったが 中 国 の 外 交 政 策 研 究 者 の 中 に は 中 国 の 学 者 たちが この 用 語 を 知 ったのは クリントン 国 務 長 官 が 2010 年 10 月 28 日 にホノルルで 行 った 講 演 を 通 じてだった という 指 摘 もある 14 クリントン 氏 は ちょうどその 1 年 後 2011 年 10 月 に 出 版 した いわゆる アジア 回 帰 に 関 する 論 文 の 中 でも インド 太 平 洋 を 使 い 認 知 度 関 心 を 引 き 上 げるのに 一 役 かっ た 論 文 の 主 な 論 点 は もちろん イラク アフガニスタンでの 10 年 にわたるテロとの 戦 いを 終 えつつあった 米 国 が アジアに Pivot ( 向 きを 変 える)するという 政 策 転 換 だっ た しかし その 中 で われわれはオーストラリアとの 同 盟 関 係 を 太 平 洋 のパートナー シップから インド 太 平 洋 の 同 盟 に 拡 大 しつつある とも 述 べていた 15 世 界 規 模 で 注 目 と 関 心 を 集 める 米 国 のクリントン 国 務 長 官 が この 用 語 を 使 ったことで 認 知 度 が 一 気 に 上 がったことは 間 違 いない もともと 米 国 にとって 太 平 洋 とインド 洋 を 一 体 のものとしてとらえる 考 え 方 は 目 新 し いものではない 米 軍 が 全 世 界 を 6 地 域 に 分 割 して 設 置 している いわゆる 地 理 的 司 令 部 のひとつ 太 平 洋 軍 の 担 当 地 域 とほぼ 重 なるからだ 南 北 アメリカの 西 海 岸 から インドとパキスタン 国 境 までのすべての 陸 地 と 海 洋 だ 米 軍 内 では 太 平 洋 軍 の 担 当 地 域 を 説 明 する 場 合 には Asia Pacific を 使 うが 隷 下 の 米 太 平 洋 艦 隊 の 担 当 地 域 は Indo- Asia-Pacific(インドアジア 太 平 洋 ) と 説 明 されている 16 ただ この 地 域 分 担 はもともと 何 らかの 戦 略 的 軍 事 的 な 必 然 性 があって 設 定 された というより 全 世 界 を 6 つの 司 令 部 の 担 当 地 域 に 分 けるため 便 宜 的 に 線 引 きされたとい う 色 彩 の 方 が 強 かった しかし それが 近 年 になって 中 国 とインドの 台 頭 という 変 化 を 受 けて 政 治 安 全 保 障 経 済 両 面 で 新 たな 統 一 的 な 意 味 を 持 ち 始 めている といえる 書 籍 ( 英 文 )の 出 版 状 況 を Amazon.com で 調 べた Indo-Pacific でキーワード 検 索 す ると 2,617 件 のヒットがある(3 月 12 日 現 在 ) このうち 今 年 (2015 年 )に 入 ってから 出 版 されたものは 44 件 あるが 外 交 安 全 保 障 に 関 するものは そのうち 10 件 にとどま る あとは 海 洋 生 物 気 候 変 動 などに 関 したものだ インド 太 平 洋 は 近 年 中 国 とインドの 国 力 や 影 響 力 の 増 大 と 並 行 する 形 で その 使 用 が 広 まっているとみられる ただし 実 際 に 使 われている 範 囲 は 外 交 安 全 保 障 政 策 に 関 連 する 分 野 に 限 られており 一 般 国 民 の 人 口 に 膾 炙 (かいしゃ)している とまで 言 える 段 階 には 達 していない 2014 年 米 国 のシンクタンクによって インド 太 平 洋 地 域 の 外 交 専 門 家 に さまざま な 外 交 課 題 について 意 見 を 尋 ねる 国 際 アンケートが 行 われ インド 太 平 洋 の 用 語 とし ての 有 意 性 妥 当 性 についても 調 査 された 17 その 結 果 は 次 の 表 1 の 通 りだ - 134 -
2014 年 米 国 のシンクタンクによって インド 太 平 洋 地 域 の 外 交 専 門 家 に さまざま な 外 交 課 題 について 第 9 章 インド 意 見 太 を 平 洋 尋 の ねる 地 域 国 安 際 全 保 アンケートが 障 と Swing States: 行 われ インド 各 国 政 治 指 導 者 識 者 太 の 平 見 洋 解 と の 用 語 としての 用 語 として 有 意 性 の 有 意 性 妥 当 性 についても 調 査 された 17 その 結 果 は 以 下 の 表 の 通 りだ ( 表 1) ( 表 1) 質 問 は インド 太 平 洋 という 概 念 は 東 アジア 地 域 の 国 際 関 係 の 変 遷 を 論 ずるうえ で どのような 質 問 は インド 有 効 性 太 平 妥 洋 当 という 性 があるか だった 概 念 は 東 アジア 地 域 の 国 際 関 係 の 変 遷 を 論 ずるうえ で どのような 有 効 性 妥 当 性 があるか だった 17 まず Michael 全 Green, 体 的 にみて Nicholas 非 常 Szechenyi, に 意 味 がある と Power and 多 Order 少 意 味 in がある を Asia (Wasington, 合 わせた D.C.: 意 味 が Center ある の for 合 Strategic 計 は 各 国 & 平 International 均 で 65%と 出 Studies, た 評 価 July の 仕 2014) 方 はいろいろあると 米 国 のシンクタンク 思 うが 戦 少 略 なく 国 際 問 とも 題 研 外 究 交 所 政 (CSIS)が 2014 策 の 専 門 家 の 間 では 地 域 年 を 3~4 通 じてこの 月 に 用 日 語 本 がすでにかなり 米 国 中 国 オーストラリア 定 着 していること インド インドネシア シンガポール タイ ミャンマーの10カ がうかがえる 国 に 加 えて 台 湾 で 実 施 した 各 国 地 域 で 外 交 問 題 に 詳 しい 専 門 家 を 選 び 調 査 した 結 果 の 概 要 をまとめた 報 国 別 にみると インドが 91%でトップだった これは 用 語 が インド 太 平 洋 である 告 書 は 以 下 のサイトに 掲 載 されている http://csis.org/files/publication/140605_green_powerandorder_web.pdf ことを 考 えれば 当 然 ともいえる 同 国 内 では この 概 念 を 前 提 とした 政 策 議 論 が 政 府 内 ただし この 外 を 通 じて 幅 論 広 文 く に 展 掲 開 載 されている している インド 太 平 洋 に 関 する 調 査 結 果 は 報 告 書 には 含 まれ ていない 日 本 は 81%で インドに 朝 日 新 聞 社 がこのプロジェクトの 次 ぐ 2 位 だった すでに 後 援 をつとめ 本 稿 でみた インド 筆 者 は 計 画 段 階 太 からかかわっ 平 洋 の 日 本 たため この 非 公 開 データを 入 手 することができた 国 内 での 限 定 的 な 使 用 そこからうかがえる 比 較 的 低 い 浸 透 度 を 考 えれば この 結 果 はや や 意 外 ともいえる 高 さだ ただし このアンケートは 6 外 交 安 全 保 障 政 策 に 精 通 した 研 究 者 など いわば 外 交 政 策 エリート を 対 象 としたものなので 矛 盾 はしない 政 策 エ リートの 間 ではすでにかなりのレベルまで 認 知 が 進 んでいるが 一 般 への 広 がりはまだ あまり 見 られないということだ 政 策 エリートの 間 での 認 知 度 の 高 さからは この 用 語 の 日 本 の 外 交 安 全 保 障 論 議 での 有 意 性 の 高 さが 示 されているといえよう 調 査 対 象 の 11 カ 国 地 域 には 本 プロジェクトが 着 目 するいわゆる Swing States は 基 本 的 にすべて 含 まれている 具 体 的 には インド インドネシア オーストラリア そ して 地 域 組 織 としての 東 南 アジア 諸 国 連 合 (ASEAN)のメンバー 諸 国 だ ASEAN メンバー 国 のうちでは インドネシア ミャンマー シンガポール タイの 計 4 カ 国 が 調 査 対 象 に なっている 10 カ 国 全 体 を 包 括 してないものの その 内 訳 をみると インドネシア シ - 135 -
ンガポールといったいわば 海 洋 ASEAN 諸 国 が 各 国 平 均 を 超 える 関 心 の 高 さを 示 して いる 一 方 で ミャンマー タイといった 大 陸 ASEAN 諸 国 は 平 均 以 下 の 水 準 という 二 極 分 化 の 傾 向 がのぞく インド 太 平 洋 は 狭 い 意 味 では 海 洋 に 根 差 した 概 念 なので これは 当 然 ともいえる ただ 具 体 的 な 政 策 展 開 を 考 えると 大 陸 ASEAN も 当 然 含 まれる 今 後 はこうした 国 々の 間 でも 政 策 の 展 開 ぶりによっては 関 心 の 高 まることが 予 想 される 2013 年 の 国 防 白 書 で 他 国 に 先 駆 けてこの 用 語 を 使 った いわば インド 太 平 洋 先 進 国 のオーストラリアで 各 国 平 均 を 下 回 る 61%にとどまったのはやや 意 外 だ このアン ケートは 回 答 の 理 由 までは 尋 ねていないので なぜこういう 結 果 になったのかは 分 からな い 米 国 が 59%とさらに 低 いのも 目 を 引 く オバマ 政 権 の アジア 回 帰 政 策 で アジ ア 重 視 の 姿 勢 が 改 めて 強 調 されているとはいえ 米 国 外 交 全 体 の 中 で アジア の 占 め る 重 みは 決 して 圧 倒 的 ではないということを 示 しているのかもしれない アジアから 見 える ワシントン とは 違 った ワシントンの 実 態 がのぞいているといえよう さらに 目 を 引 くのは 中 国 での 関 心 の 低 さだ 37%で 11 カ 国 地 域 の 中 で 最 低 となって いる 中 国 は 最 近 中 国 と 欧 州 中 東 を 陸 と 海 の シルクロード で 結 び それに 沿 って 2 つの 新 たな 経 済 圏 を 構 築 しようという 一 帯 一 路 構 想 を 外 交 の 重 点 として 打 ち 出 し 国 を 挙 げて 推 進 している このうち 21 世 紀 の 海 洋 シルクロード は 対 象 とする 地 域 が まさに インド 太 平 洋 と 重 なるが その インド 太 平 洋 は 使 わないということだろう 中 国 の 政 策 専 門 家 研 究 者 の 間 でも 評 価 と 対 応 は 定 まっていない その(インド 太 平 洋 の) 概 念 は 中 国 で 多 くの 戦 略 専 門 家 や 戦 略 計 画 の 専 門 家 に 知 的 刺 激 を 与 え 中 国 の 大 戦 略 をインド 太 平 洋 という 広 い 地 域 を 横 断 する 形 で 見 始 めるようになってきた 18 という 指 摘 がある 一 方 で 中 国 の 戦 略 用 語 の 中 に その 言 葉 はない 中 国 は インド 洋 と 太 平 洋 を 隣 り 合 ってはいるものの それぞれの 特 徴 や 役 割 を 持 った 別 の 地 域 とみている と 明 言 して 統 一 性 を 否 定 する 向 きもある 19 中 国 全 体 としては 新 たな 概 念 の 登 場 を 前 にまだ 混 乱 している 様 子 がうかがえる 中 国 政 府 と 共 産 党 の 指 導 部 が 一 帯 一 路 構 想 を 唱 えたのは 2013 年 秋 にさかのぼる 習 近 平 国 家 主 席 が 同 年 9 月 に 訪 問 先 のカザフスタンで シルクロード 経 済 帯 翌 10 月 にインドネシアで 21 世 紀 の 海 洋 シルクロード を 相 次 いで 発 表 した 2014 年 11 月 に 開 かれた 党 中 央 外 事 工 作 会 議 以 降 具 体 化 が 本 格 化 している 中 国 の 英 語 紙 China Daily のサイトで 検 索 してみると Indo-Pacific でのヒットは 687 件 あるものの One Belt and One Road ( 一 帯 一 路 の 英 語 表 記 )の 3,890 件 には 遠 く 及 ばない 実 際 に 記 事 を 点 検 すると 海 洋 シルクロード については 中 国 か 太 平 洋 イ ンド 洋 に 及 ぶ という 説 明 はあるものの なぜか インド 太 平 洋 という 用 語 は 使 われて いない 一 帯 一 路 は 米 国 の アジア 回 帰 が 中 東 からアジア インド 太 平 洋 へと いう 東 に 向 かった 動 きであるのに 対 し 中 国 から 欧 州 に 向 かう 西 進 の 構 想 だ 具 体 化 の 手 段 の 一 つとして アジアインフラ 投 資 銀 行 (AIIB)を 独 自 に 立 ち 上 げるなど 構 想 と 実 施 の 両 面 で 米 国 をはじめとした 西 側 とは 一 線 を 画 した 独 自 性 が 際 立 つ 中 国 の 米 国 に 対 する 対 抗 意 識 ものぞく 用 語 についても もともと 米 国 から 初 めて 聞 いたという インド 太 平 洋 は 自 ら 進 んで 使 う 姿 勢 は 見 られない 中 国 を 封 じ 込 める 考 えに 基 づく ものだとの 指 摘 も 広 く 聞 かれる ただ 今 後 どう 変 化 していくかは まだ 明 確 には 見 通 せ - 136 -
ない インド 太 平 洋 を 枠 組 みとした 戦 略 論 議 では いくつかの 三 角 形 が 語 られている ま ず 米 AEI 研 究 所 の 研 究 員 マイケル オースリンが 唱 える 二 つの 同 心 の 三 角 形 だ インド 太 平 洋 での 安 全 保 障 戦 略 の 一 環 として 米 国 は 懸 念 の 共 有 が 進 みつつある 米 国 にとってのパートナー 国 と 戦 略 的 に 重 要 な 国 家 とを 明 確 に 連 携 させる 新 たな 政 治 戦 略 を 追 求 すべきだ としたうえで 具 体 的 な 連 携 の 例 として 2 つの 同 心 の 三 角 形 の 構 築 を 挙 げる 外 側 の 三 角 形 は 日 本 韓 国 インド オーストラリアで 構 成 し 内 側 は インドネシア マレーシア シンガポール ベトナム 各 国 で 作 るという 外 側 は イン ド 太 平 洋 の 安 全 保 障 協 力 と 米 国 の 地 域 政 策 にとっての 錨 の 役 割 を 果 たし 内 側 の 三 角 形 は 南 シナ 海 での 南 半 分 で 内 側 の 共 通 利 益 に 焦 点 を 絞 り 沿 岸 地 域 の 安 全 の 強 化 にユニー クな 枠 割 を 果 たす との 説 明 だ 20 事 実 上 中 国 のインド 太 平 洋 と 南 シナ 海 でのプレゼン スや 行 動 それを 通 じた 影 響 力 の 拡 大 に 対 応 対 抗 するための 措 置 だと 言 える もう 一 つ 戦 略 的 三 角 形 論 は インドの 外 交 安 全 保 障 の 専 門 家 C. ラジャ モハンが 指 摘 するもので 米 中 印 3 カ 国 の 間 で 生 まれ 始 めた 3 者 力 学 だ モハンはその 背 景 を 次 のように 説 明 する 中 国 とインドは おりしも 米 国 の 力 が 地 域 で 相 対 的 に 減 退 する 時 期 に 新 興 海 洋 パワー として 台 頭 している このため 米 国 に 地 球 規 模 の 軍 事 態 勢 の 再 調 整 を 求 める 圧 力 をより 大 きなものにしている この 三 角 形 の 中 でのインドの 立 場 については これまでインドが 米 中 の 協 力 関 係 の 信 頼 に 警 戒 感 を 抱 き 米 国 のアジア 戦 略 の 受 け 身 で 動 く 駒 にはならないよう 努 めてきたが 中 国 の 潜 在 力 の 拡 大 を 目 の 当 たりにして インドと 米 国 の 戦 略 的 不 快 感 は 着 実 に 拡 大 している と 指 摘 3 者 力 学 が 米 印 対 中 という 二 極 分 化 の 構 図 に 向 けて 動 いているとの 見 方 を 示 している 21 これまで 本 稿 で 検 討 してきた インド 太 平 洋 の 戦 略 空 間 を 示 す 用 語 としての 有 意 性 妥 当 性 を 共 有 する 利 益 と 共 有 する 脅 威 の 両 面 から 考 察 する そもそも 一 つの 地 理 的 な 広 がり 地 域 が 単 にそこに 存 在 しているということを 超 え て 何 らかの 戦 略 的 有 意 性 を 持 った 一 つの 戦 略 空 間 として 成 立 するためには 利 益 ま たは 脅 威 あるいはまたその 両 方 について 空 間 を 通 じた 共 有 性 が 必 要 となる インド 太 平 洋 に 潜 在 的 顕 在 的 に 存 在 する 主 な 脅 威 について 関 係 各 国 への 影 響 を 考 察 し た 結 果 が 次 の 表 2 だ 主 要 国 Swing States を 通 じて 地 域 横 断 的 に 共 有 される 脅 威 は 海 賊 などによるシーレー ン 航 行 に 対 するものぐらいだ ただし マラッカ 海 峡 での 海 賊 脅 威 はすでに 概 ね 制 圧 され ており 今 は 東 アフリカ 沿 岸 アデン 湾 周 辺 での 海 賊 脅 威 に 限 られる 東 シナ 海 南 シナ 海 で 顕 在 化 している 地 域 諸 国 と 中 国 との 間 の 領 土 紛 争 も インド 洋 に は 存 在 しない 北 朝 鮮 の 核 と 弾 道 ミサイルの 脅 威 も 実 際 問 題 として それが 及 ぶのは アジア 太 平 洋 に 限 られる - 137 -
( 表 2) ( 図 1) これまで 本 稿 で 検 討 してきた インド 太 平 洋 の 戦 略 空 間 を 示 す 用 語 としての 有 意 性 妥 当 性 を 共 有 する 利 益 と 共 有 する 脅 威 の 両 面 から 考 察 する そもそも 一 つの 地 理 的 な 広 がり 地 域 が 単 にそこに 存 在 しているということを 超 - 138 - えて 何 らかの 戦 略 的 有 意 性 を 持 った 一 つの 戦 略 空 間 として 成 立 するためには 利 益 または 脅 威 あるいはまたその 両 方 について 空 間 を 通 じた 共 有 性 が 必 要 となる インド 太 平 洋 に 潜 在 的 顕 在 的 に 存 在 する 主 な 脅 威 について 関 係 各 国 への 影 響 を 考 察 し
インド 太 平 洋 については 中 国 からは 自 国 封 じ 込 めの 考 えに 基 づく 概 念 との 批 判 的 指 摘 がよく 聞 かれるが そうした 対 中 脅 威 認 識 が 地 域 諸 国 を 通 じて どこまで 共 有 さ れているかは 微 妙 なところだ 公 式 見 解 をみれば 表 立 って 脅 威 という 国 はないが 実 相 は 当 然 かなり 複 雑 だ いずれにしろ 地 域 諸 国 共 通 の 脅 威 とは 言 い 切 れないだろう 一 方 利 益 は この 脅 威 と 裏 返 しの 関 係 になるが 明 確 に 関 係 各 国 に 共 有 され るものは 航 行 の 自 由 だ 経 済 的 戦 略 的 な 両 面 の 意 味 を 持 つ しかし それ 以 外 の 共 通 利 益 は 見 当 たらない その 結 果 インド 太 平 洋 の 用 語 としての 妥 当 性 を 分 析 してみると 図 1 のようになる 利 益 の 共 有 という 面 での 妥 当 性 は 高 いと 言 えるが 脅 威 の 共 有 については 関 係 国 の 足 並 みは 必 ずしもそろっていない とりわけ 日 米 中 など 主 要 国 と インド オース トラリア ASEAN など いわゆる Swing States との 間 では 拡 散 の 方 が 目 立 つ インド 太 平 洋 を 中 国 包 囲 網 の 概 念 としないためには 中 国 も 含 めた 関 係 各 国 の 間 で 共 有 される 脅 威 が 明 確 になる 必 要 がある それとともに あるいはそれ 以 上 に 共 通 の 利 益 の 定 義 も 重 要 だ 共 通 の 脅 威 共 通 の 利 益 があいまいになると 自 然 と 中 国 包 囲 網 という 見 方 が 浮 上 する 構 図 になっている そこがこの 新 たな 戦 略 概 念 の 最 大 の 課 題 ともいえる 2007 年 8 月 インドを 訪 問 した 第 一 次 安 倍 内 閣 当 時 の 安 倍 晋 三 首 相 が インド 国 会 で 行 っ た 二 つの 海 の 交 わり というテーマの 演 説 は インド 太 平 洋 という 地 政 学 的 戦 略 的 概 念 の 外 交 舞 台 での 使 用 に 事 実 上 の 先 鞭 をつけたものとして 地 域 各 国 の 注 目 を 集 めた ところが それ 以 来 8 年 近 くが 経 過 したが 具 体 化 政 策 化 はほとんど 進 んでいない 本 稿 でみたように 日 本 の 国 会 での 議 論 は 全 く 行 われていないし メディアでの 議 論 も 無 い に 等 しい 最 近 欧 州 中 東 から 東 アジアにかけたユーラシア 地 域 で 起 きている 戦 略 的 な 動 きは 米 国 オバマ 政 権 の アジア 回 帰 (Rebalance) に 基 づく 東 進 と 中 国 習 近 平 政 権 の 一 帯 一 路 政 策 に 基 づく 西 進 の 動 きとの 絡 み 合 い ぶつかり 合 いと 言 える そ れは 外 交 安 全 保 障 面 だけにとどまらず 経 済 通 商 政 策 にも 及 んでいる 具 体 例 を 挙 げ れば 米 国 の アジア 回 帰 の 経 済 的 側 面 である 環 太 平 洋 経 済 連 携 協 定 (TPP)の 締 結 であり 中 国 の 一 帯 一 路 の 主 要 部 分 であるアジアインフラ 投 資 銀 行 (AIIB)の 設 立 だ いずれの 実 現 化 をめぐっても 米 中 両 国 を 中 心 に 地 域 各 国 を 巻 き 込 んだ 対 立 競 争 の 大 きな 構 図 が 浮 かび 上 がっている 日 本 はそれぞれについて 政 策 判 断 を 求 められているが 個 々の 政 策 に 限 ったものでは 十 分 とはいえない 欧 州 からアジア 太 平 洋 にかけてのユーラシア 地 域 全 体 を 通 じた 地 政 学 的 戦 略 的 な 動 きを 見 極 め 自 国 の 利 益 を 判 断 することが 求 められているからだ そのた めには まず 日 本 独 自 の インド 太 平 洋 戦 略 ともいうべき アジア 太 平 洋 とインド 洋 を 見 渡 した 広 範 囲 の 外 交 安 全 保 障 戦 略 が 必 要 となる これまでは いわゆる 沿 岸 警 備 能 力 の 向 上 の 施 策 として フィリピン ベトナム インドなど インド 太 平 洋 地 域 諸 国 に 警 備 艦 艇 の 供 与 救 難 航 空 機 の 売 り 渡 しなどが 進 められてきた 例 はあるものの 地 域 横 断 的 な 政 策 枠 組 みが 策 定 されているわけではない まずは 安 倍 首 相 が 打 ち 出 した 二 - 139 -
つの 海 の 交 わり を 地 域 ごと 各 国 ごとの 縦 割 りではなく インド 太 平 洋 全 体 を 通 じた 形 で 包 括 的 地 域 横 断 的 に 政 策 化 することが その 第 一 歩 となるだろう インド 太 平 洋 が 統 一 的 な 戦 略 空 間 として 有 意 性 妥 当 性 を 拡 大 していくことは 中 国 とインドの 国 力 が 今 後 さらに 伸 長 する 可 能 性 を 踏 まえれば 想 像 に 難 くない ただ Trans-Indo-Pacific の 共 通 脅 威 や 共 通 利 益 は まだ 限 定 的 であることも 事 実 だ 戦 略 空 間 としての インド 太 平 洋 は 太 平 洋 や アジア 太 平 洋 にとって 代 わるというより 当 面 は 重 なり 合 う 形 で 共 存 していくと 考 えられる 1 http://en.wikipedia.org/wiki/indo-pacific 2 Abhijit Singh, Maritime Security Partner in the Indo-Pacific, Asian Strategic Review 2015 India as a security Provider, p.146 3 http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/enzetsu/19/eabe_0822.html 4 http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2013/20130118speech.html 5 http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2013/0223speech.html 6 http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2014/0530kichokoen.html 7 http://www.mofa.go.jp/mofaj/s_sa/sw/in/page22_001770.html# 8 朝 日 新 聞 2014 年 11 月 15 日 ( 朝 刊 ) 9 Defense White Paper 2013 (Canberra, Department of Defense, Australia, 2013) http://www. defence.gov.au/whitepaper/2013/docs/wp_2013_web.pdf 10 Rory Medcalf, Andrew Shearer, PM faces challenge of deeper alliance, The Australian, March 7, 2011, p.9. 11 Rory Medcalf, Pivoting the map: Australia s Indo-Pacific System, Centre of Gravity series paper#1, (ANU Strategic and Defence Studies Centre, 2012) p.3. 12 Marty Natalegawa, Remarks; An Indonesian perspective on the Indo-Pacific, May 16, 2013, CSIS, Washington, D.C. 13 Hillary Clinton, Remarks; America s engagement in the Asia-Pacific, October 28, 2010, Honolulu, Hawaii http://m.state.gov/md150141.htm 14 Liu Zongyi, Conflict or Cooperation: Geopolitics and Geo-economics in the Indo-Pacific, (June 2014). 米 Stimson Center で 行 った 発 表 のスライド http://www.stimson.org/images/uploads/ chinaperspective.pdf 15 Hillary Clinton, America s Pacific Century, Foreign Policy, (October 11, 2011) http:// foreignpolicy.com/2011/10/11/americas-pacific-century/ 16 http://www.cpf.navy.mil/about/#aor 17 Michael Green, Nicholas Szechenyi, Power and Order in Asia (Washington, D.C.: Center for Strategic&International Studies, July 2014) 米 国 のシンクタンク 戦 略 国 際 問 題 研 究 所 (CSIS)が 2014 年 3 ~ 4 月 に 日 本 米 国 中 国 オーストラリア インド インド ネシア シンガポール タイ ミャンマーの 10 カ 国 に 加 えて 台 湾 で 実 施 した 各 国 地 域 で 外 交 問 題 に 詳 しい 専 門 家 を 選 び 調 査 した 結 果 の 概 要 をまとめた 報 告 書 は 以 下 のサイトに 掲 載 されている http://csis.org/files/publication/140605_green_powerandorder_ WEB.pdf ただし この 論 文 に 掲 載 している インド 太 平 洋 に 関 する 調 査 結 果 は 報 告 書 には 含 まれていない 朝 日 新 聞 社 がこのプロジェクトの 後 援 をつとめ 筆 者 は 計 画 段 階 からかかわったため この 非 公 開 データを 入 手 することができた 18 Zhao Minghao, The Emerging Strategic Triangle in Indo-Pacific Asia, The Diplomat, June 04, - 140 -
2013. http://thediplomat.com/2013/06/the-emerging-strategic-triangle-in-indo-pacific-asia/ 19 Mohan Malik, Maritime Security in the Indo-Pacific (London, Rowman & Littlefield, 2014), p.97. 20 Michael Auslin, Security in the Indo-Pacific Commons (Washington, D.C.: AEI Press, December 15, 2010) http://www.aei.org/publication/security-in-the-indo-pacific-commons/ 21 C.Raja Mohan, Samudra Manthan (Washington, D.C.: Carnegie Endowment for International Peace, 2012), p.10. - 141 -