経 済 物 価 情 勢 の 展 望 (2015 年 10 月 ) 2015 年 10 月 30 日 日 本 銀 行 基 本 的 見 解 1 < 概 要 > 2017 年 度 までの 日 本 経 済 を 展 望 すると 2015 年 度 から 2016 年 度 にかけて 潜 在 成 長 率 を 上 回 る 成 長 を 続 けると 予 想 される 2017 年 度 にかけては 消 費 税 率 引 き 上 げ 前 の 駆 け 込 み 需 要 とその 反 動 の 影 響 を 受 けるとともに 景 気 の 循 環 的 な 動 きを 映 じて 潜 在 成 長 率 を 幾 分 下 回 る 程 度 に 減 速 しつつも プラス 成 長 を 維 持 すると 予 想 される 2 消 費 者 物 価 の 前 年 比 ( 消 費 税 率 引 き 上 げの 直 接 的 な 影 響 を 除 くベース)は 当 面 0% 程 度 で 推 移 するとみられるが 物 価 の 基 調 が 着 実 に 高 まり 原 油 価 格 下 落 の 影 響 が 剥 落 するに 伴 って 物 価 安 定 の 目 標 である2%に 向 けて 上 昇 率 を 高 めていくと 考 えられる 3 2% 程 度 に 達 する 時 期 は 原 油 価 格 の 動 向 によって 左 右 されるが 同 価 格 が 現 状 程 度 の 水 準 から 緩 やかに 上 昇 していくとの 前 提 にたてば 2016 年 度 後 半 頃 になると 予 想 される その 後 次 第 に これを 安 定 的 に 持 続 する 成 長 経 路 へと 移 行 していくとみられる 従 来 の 見 通 しと 比 べると 成 長 率 の 見 通 しは 2015 年 度 について 新 興 国 経 済 の 減 速 を 背 景 とした 輸 出 のもたつきや 天 候 不 順 の 影 響 などによる 個 人 消 費 の 鈍 さから 下 振 れているものの 2016 年 度 と 2017 年 度 については 概 ね 不 変 である 物 価 の 見 通 しは 2015 年 度 と 2016 年 度 については 原 油 価 格 下 落 の 影 響 などから 下 振 れているものの 2017 年 度 については 概 ね 不 変 である 金 融 政 策 運 営 については 量 的 質 的 金 融 緩 和 は 所 期 の 効 果 を 発 揮 し ており 今 後 とも 日 本 銀 行 は 2%の 物 価 安 定 の 目 標 の 実 現 を 目 指 し これを 安 定 的 に 持 続 するために 必 要 な 時 点 まで 量 的 質 的 金 融 緩 和 を 継 続 する その 際 経 済 物 価 情 勢 について 上 下 双 方 向 のリスク 要 因 を 点 検 し 必 要 な 調 整 を 行 う 1 10 月 30 日 開 催 の 政 策 委 員 会 金 融 政 策 決 定 会 合 で 決 定 されたものである 2 消 費 税 率 については 2017 年 4 月 に 10%に 引 き 上 げられることを 前 提 としている 3 各 政 策 委 員 は 見 通 し 作 成 にあたって 原 油 価 格 の 前 提 を 次 の 通 りとした すなわち 原 油 価 格 (ドバイ)は 1バレル 50 ドルを 出 発 点 に 見 通 し 期 間 の 終 盤 にかけて 60 ド ル 台 前 半 に 緩 やかに 上 昇 していくと 想 定 している その 場 合 の 消 費 者 物 価 ( 除 く 生 鮮 食 品 )の 前 年 比 に 対 するエネルギー 価 格 の 寄 与 度 は 2015 年 度 で-0.9%ポイント 程 度 2016 年 度 で-0.2%ポイント 程 度 と 試 算 される また 寄 与 度 は 2016 年 入 り 後 マイナ ス 幅 縮 小 に 転 じ 2016 年 度 後 半 には 概 ねゼロになると 試 算 される 1
1.わが 国 の 経 済 物 価 の 中 心 的 な 見 通 し (1) 経 済 情 勢 わが 国 の 景 気 は 輸 出 生 産 面 に 新 興 国 経 済 の 減 速 の 影 響 がみられるも のの 緩 やかな 回 復 を 続 けている 海 外 経 済 は 新 興 国 が 減 速 しているが 先 進 国 を 中 心 とした 緩 やかな 成 長 が 続 いている 輸 出 や 鉱 工 業 生 産 は 新 興 国 経 済 の 減 速 の 影 響 などから このところ 横 ばい 圏 内 の 動 きとなってい る 一 方 国 内 需 要 の 面 では 企 業 部 門 において 収 益 が 過 去 最 高 水 準 ま で 増 加 していることなどを 背 景 に 前 向 きな 設 備 投 資 スタンスが 維 持 され ている 家 計 部 門 においては 雇 用 所 得 環 境 の 着 実 な 改 善 を 背 景 に 個 人 消 費 が 底 堅 く 推 移 し 住 宅 投 資 も 持 ち 直 している 先 行 きを 展 望 すると 家 計 企 業 の 両 部 門 において 所 得 から 支 出 への 前 向 きな 循 環 メカニズムが 持 続 するもとで 国 内 需 要 が 増 加 基 調 をたどると ともに 輸 出 も 新 興 国 経 済 が 減 速 した 状 態 から 脱 していくことなどを 背 景 に 緩 やかな 増 加 に 転 じると 考 えられる そうしたもとで わが 国 経 済 は 2015 年 度 から 2016 年 度 にかけて 潜 在 成 長 率 を 上 回 る 成 長 を 続 けると 予 想 される 4 2017 年 度 にかけては 消 費 税 率 引 き 上 げ 前 の 駆 け 込 み 需 要 とその 反 動 などの 影 響 を 受 けるとともに 景 気 の 循 環 的 な 動 きを 映 じて 潜 在 成 長 率 を 幾 分 下 回 る 程 度 に 減 速 しつつも プラス 成 長 を 維 持 すると 予 想 され る こうした 見 通 しの 背 景 にある 前 提 は 以 下 のとおりである 第 1に 日 本 銀 行 が 2%の 物 価 安 定 の 目 標 の 実 現 を 目 指 し これ を 安 定 的 に 持 続 するために 必 要 な 時 点 まで 量 的 質 的 金 融 緩 和 を 継 続 する 中 で 金 融 環 境 は 緩 和 した 状 態 が 続 き 景 気 に 対 し 刺 激 的 に 作 用 して 4 わが 国 の 潜 在 成 長 率 を 一 定 の 手 法 で 推 計 すると このところ 0% 台 前 半 ないし 半 ば 程 度 と 計 算 されるが 見 通 し 期 間 の 終 盤 にかけて 徐 々に 上 昇 していくと 見 込 まれる ただし 潜 在 成 長 率 は 推 計 手 法 や 今 後 蓄 積 されていくデータにも 左 右 される 性 格 のも のであるため 相 当 の 幅 をもってみる 必 要 がある 2
いくと 想 定 している 5 第 2に 海 外 経 済 については 先 進 国 が 堅 調 な 成 長 を 続 けるとともに その 好 影 響 が 波 及 し 新 興 国 も 減 速 した 状 態 から 脱 していくとみられること から 緩 やかに 成 長 率 を 高 めていくと 予 想 している 第 3に 公 共 投 資 は 現 在 の 高 めの 水 準 から 緩 やかな 減 少 傾 向 をたどっ た 後 見 通 し 期 間 の 終 盤 にかけては 下 げ 止 まっていくと 想 定 している 第 4に 政 府 による 規 制 制 度 改 革 などの 成 長 戦 略 の 推 進 や そのもと での 女 性 や 高 齢 者 による 労 働 参 加 の 高 まり 企 業 による 生 産 性 向 上 に 向 け た 取 り 組 みと 内 外 需 要 の 掘 り 起 こしなどが 続 くとともに デフレからの 脱 却 が 着 実 に 進 んでいくにつれて 企 業 や 家 計 の 中 長 期 的 な 成 長 期 待 は 緩 やかに 高 まっていくと 想 定 している 以 上 を 前 提 に 見 通 し 期 間 の 景 気 展 開 をやや 詳 しく 述 べると 2015 年 度 から 2016 年 度 にかけては 輸 出 は 当 面 横 ばい 圏 内 の 動 きを 続 けた 後 新 興 国 経 済 が 減 速 した 状 態 から 脱 していくもとで 既 往 の 為 替 相 場 の 動 きに よる 下 支 えもあって 緩 やかに 増 加 していくと 考 えられる 設 備 投 資 は 過 去 最 高 水 準 にある 企 業 収 益 や 金 融 緩 和 効 果 が 引 き 続 き 押 し 上 げに 作 用 す る 中 国 内 向 け 投 資 の 積 極 化 などもあって 増 加 を 続 けるとみられる 個 人 消 費 は 雇 用 環 境 の 着 実 な 改 善 が 続 き 賃 金 が 上 昇 していくことや エ ネルギー 価 格 下 落 による 実 質 所 得 の 押 し 上 げ 効 果 が 働 くことなどから 緩 やかに 増 加 すると 予 想 される 6 こうした 内 外 需 要 を 反 映 して 鉱 工 業 生 産 5 各 政 策 委 員 は 既 に 決 定 した 政 策 を 前 提 として また 先 行 きの 政 策 運 営 については 市 場 の 織 り 込 みを 参 考 にして 見 通 しを 作 成 している 具 体 的 には 短 期 金 利 について 市 場 は 見 通 し 期 間 を 通 じて 実 質 的 にゼロ 金 利 が 継 続 することを 織 り 込 んでいる 長 期 金 利 について 市 場 は 見 通 し 期 間 を 通 じて 低 位 で 推 移 すると 予 想 しているが こ れは 展 望 レポートに 比 べて 低 い 市 場 参 加 者 の 物 価 見 通 しを 反 映 している 各 政 策 委 員 は こうした 市 場 の 見 方 を 踏 まえ 物 価 見 通 しの 違 いも 勘 案 して 長 期 金 利 の 先 行 きを 想 定 している 6 2 回 の 消 費 税 率 の 引 き 上 げが 年 度 毎 の 成 長 率 に 及 ぼす 影 響 を 定 量 的 に 試 算 すると 2013 年 度 +%ポイント 程 度 2014 年 度 -1.2%ポイント 程 度 2015 年 度 +0.3%ポ イント 程 度 2016 年 度 +0.3%ポイント 程 度 2017 年 度 -0.8%ポイント 程 度 となる ただし これらは その 時 々の 所 得 環 境 や 物 価 動 向 にも 左 右 されるなど 不 確 実 性 が 大 き 3
も 当 面 横 ばい 圏 内 の 動 きを 続 けた 後 緩 やかに 増 加 していくとみられる 2017 年 度 にかけては 2017 年 4 月 の 消 費 税 率 引 き 上 げ 前 の 駆 け 込 み 需 要 とその 反 動 の 影 響 を 受 けるとともに 設 備 投 資 の 増 加 ペースが 資 本 ストッ クの 蓄 積 に 伴 って 低 下 していくとみられる もっとも 輸 出 が 海 外 経 済 の 成 長 などを 背 景 に 緩 やかな 増 加 を 続 けるとともに 国 内 民 間 需 要 も 緩 和 的 な 金 融 環 境 と 成 長 期 待 の 高 まりなどを 受 けて 底 堅 く 推 移 すると 予 想 さ れる この 間 潜 在 成 長 率 は 見 通 し 期 間 を 通 じて 緩 やかな 上 昇 傾 向 をた どり 中 長 期 的 にみた 成 長 ペースを 押 し 上 げていくと 考 えられる こうし たもとで 2017 年 度 は 潜 在 成 長 率 を 幾 分 下 回 る 程 度 に 減 速 しつつも プ ラス 成 長 を 維 持 すると 見 込 まれる 7 月 の 中 間 評 価 時 点 と 比 べると 2015 年 度 について 新 興 国 経 済 の 減 速 を 背 景 とした 輸 出 のもたつきや 天 候 不 順 の 影 響 などによる 個 人 消 費 の 鈍 さ から 下 振 れているものの 2016 年 度 と 2017 年 度 については 概 ね 不 変 であ る (2) 物 価 情 勢 消 費 者 物 価 の 前 年 比 は エネルギー 価 格 の 下 落 の 影 響 から 生 鮮 食 品 を 除 くベースでは0% 程 度 となっているが エネルギーを 除 くベースでは 1%を 上 回 るなど 物 価 の 基 調 は 着 実 に 改 善 している 物 価 上 昇 率 を 規 定 する 主 たる 要 因 について 点 検 すると 第 1に 労 働 や 設 備 の 稼 働 状 況 を 表 すマクロ 的 な 需 給 バランスは 新 興 国 経 済 の 減 速 を 背 景 とした 輸 出 のもたつきの 影 響 などを 受 けつつも 労 働 面 を 中 心 として 着 実 に 改 善 傾 向 をたどっている 7 すなわち 失 業 率 が 緩 やかに 低 下 し 3% く 相 当 の 幅 をもってみる 必 要 がある 7 マクロ 的 な 需 給 バランスについては 1 潜 在 GDPを 推 計 のうえ 実 際 のGDPとの 乖 離 を 計 測 するアプローチと 2 生 産 要 素 ( 労 働 と 設 備 )の 稼 働 状 況 を 直 接 計 測 するア プローチがある 展 望 レポートにおけるマクロ 的 な 需 給 バランスの 計 測 は 従 来 から 後 者 のアプローチを 採 用 しているため GDP 成 長 率 の 変 化 と 需 給 バランスの 拡 大 縮 小 の 間 に1 対 1の 対 応 関 係 があるわけではない マクロ 的 な 需 給 バランスの 値 は 計 測 方 法 や 使 用 するデータによって 異 なり 得 るため 相 当 の 幅 をもってみる 必 要 がある 4
台 前 半 で 推 移 するなど 労 働 需 給 は 引 き 締 まり 傾 向 が 続 いている 8 設 備 の 稼 働 率 は 輸 出 のもたつきの 影 響 などがみられるが わが 国 経 済 が 緩 やか な 回 復 を 続 ける 中 上 昇 傾 向 にあると 考 えられる 先 行 きについては マ クロ 的 な 需 給 バランスは 本 年 度 末 にかけてプラス( 需 要 超 過 )に 転 じた 後 2016 年 度 にプラス 幅 が 一 段 と 拡 大 し 需 給 面 からみた 賃 金 と 物 価 の 上 昇 圧 力 は 着 実 に 強 まっていくと 予 想 される その 後 2017 年 度 には マ クロ 的 な 需 給 バランスは プラスの 水 準 で 横 ばい 圏 内 の 動 きになると 見 込 まれる 第 2に 中 長 期 的 な 予 想 物 価 上 昇 率 については やや 長 い 目 でみれば 全 体 として 上 昇 しているとみられる こうした 予 想 物 価 上 昇 率 の 動 きを 受 けて 企 業 の 賃 金 価 格 設 定 スタンスは 特 に 本 年 度 入 り 後 明 確 に 変 化 している 労 使 間 の 賃 金 交 渉 においては 企 業 業 績 や 労 働 需 給 に 加 え 物 価 動 向 を 賃 金 に 反 映 する 動 きが 拡 がっており 本 年 のベースアップを 含 む 賃 上 げは 多 くの 企 業 で 昨 年 を 上 回 る 伸 びとなった また 価 格 改 定 の 動 き についても 拡 がりと 持 続 性 がみられている このように 賃 金 の 上 昇 を 伴 いつつ 物 価 上 昇 率 が 緩 やかに 高 まっていくというメカニズムは 着 実 に 作 用 している もっとも 企 業 収 益 が 過 去 最 高 水 準 にあり 失 業 率 が3% 台 前 半 まで 低 下 していることとの 対 比 でみると 賃 金 の 改 善 の 程 度 はやや 鈍 い 点 には 留 意 する 必 要 がある 先 行 きについては 日 本 銀 行 が 量 的 質 的 金 融 緩 和 を 推 進 し 実 際 の 物 価 上 昇 率 が 高 まっていくもとで 中 長 期 的 な 予 想 物 価 上 昇 率 も 上 昇 傾 向 をたどり 物 価 安 定 の 目 標 である2% 程 度 に 向 けて 次 第 に 収 斂 して 8 労 働 需 給 の 引 き 締 まり 度 合 いを 測 る 際 のひとつの 目 安 として 構 造 失 業 率 がある 労 働 市 場 では 求 人 と 求 職 の 間 にある 程 度 のミスマッチが 常 に 存 在 するため 好 況 時 で あっても 一 定 の 失 業 者 が 存 在 する 構 造 失 業 率 は こうしたミスマッチに 起 因 する 失 業 の 存 在 を 前 提 に 過 剰 労 働 力 が 解 消 した 状 態 に 対 応 する 失 業 率 とされる 構 造 失 業 率 を 一 定 の 手 法 で 推 計 すると 最 近 の 水 準 は3% 台 前 半 となる ただし 構 造 失 業 率 の 推 計 値 は 時 間 の 経 過 などに 伴 って 変 化 する 性 格 のものである 点 には 留 意 が 必 要 である 5
いくとみられる こうしたもとで 企 業 の 賃 金 価 格 設 定 スタンスは 積 極 化 していくと 考 えられる 第 3に 輸 入 物 価 についてみると これまでの 為 替 相 場 の 動 きが 輸 入 物 価 を 通 じた 消 費 者 物 価 の 押 し 上 げ 要 因 として 作 用 していく 一 方 原 油 価 格 をはじめとする 国 際 商 品 市 況 の 下 落 は 当 面 物 価 の 下 押 し 圧 力 となる 以 上 を 踏 まえ 消 費 者 物 価 ( 除 く 生 鮮 食 品 以 下 同 じ)の 前 年 比 の 先 行 きを 展 望 すると 当 面 0% 程 度 で 推 移 するとみられるが 物 価 の 基 調 が 着 実 に 高 まり 原 油 価 格 下 落 の 影 響 が 剥 落 するに 伴 って 物 価 安 定 の 目 標 である2%に 向 けて 上 昇 率 を 高 めていくと 考 えられる 2% 程 度 に 達 する 時 期 は 原 油 価 格 の 動 向 によって 左 右 されるが 同 価 格 が 現 状 程 度 の 水 準 から 緩 やかに 上 昇 していくとの 前 提 にたてば 2016 年 度 後 半 頃 になると 予 想 される その 後 は 平 均 的 にみて 2% 程 度 で 推 移 すると 見 込 まれる 9 7 月 の 中 間 評 価 時 点 と 比 較 すると 2015 年 度 と 2016 年 度 については 原 油 価 格 下 落 の 影 響 などから 下 振 れているものの 2017 年 度 については 概 ね 不 変 である 2. 上 振 れ 要 因 下 振 れ 要 因 (1) 経 済 情 勢 上 記 の 中 心 的 な 経 済 の 見 通 しに 対 する 上 振 れ 下 振 れ 要 因 としては 第 1に 海 外 経 済 の 動 向 に 関 する 不 確 実 性 がある 先 行 きの 海 外 経 済 を 巡 る リスク 要 因 としては 中 国 をはじめとする 新 興 国 経 済 の 減 速 の 影 響 米 国 経 済 の 動 向 やそのもとでの 金 融 政 策 運 営 が 国 際 金 融 資 本 市 場 に 及 ぼす 影 響 欧 州 における 債 務 問 題 の 展 開 や 景 気 物 価 のモメンタム 資 源 価 格 下 落 の 影 響 地 政 学 的 リスクなどが 挙 げられる 第 2は 2017 年 4 月 に 予 定 される 消 費 税 率 引 き 上 げの 影 響 である 駆 け 9 2017 年 4 月 に 予 定 される 消 費 税 率 引 き 上 げが 物 価 に 及 ぼす 影 響 について 税 率 の 引 き 上 げ 分 が 現 行 の 課 税 品 目 すべてにフル 転 嫁 されると 仮 定 して 機 械 的 に 試 算 すると 2017 年 度 の 消 費 者 物 価 の 前 年 比 は 1.3%ポイント 押 し 上 げられる 6
込 み 需 要 とその 反 動 の 影 響 や 実 質 所 得 減 少 の 影 響 は 消 費 者 マインドや 雇 用 所 得 環 境 物 価 の 動 向 によって 変 化 し 得 る 第 3に 企 業 や 家 計 の 中 長 期 的 な 成 長 期 待 は 規 制 制 度 改 革 の 今 後 の 展 開 や 企 業 部 門 におけるイノベーション 家 計 部 門 を 取 り 巻 く 雇 用 所 得 環 境 などによって 上 下 双 方 向 に 変 化 する 可 能 性 がある 第 4に 財 政 の 中 長 期 的 な 持 続 可 能 性 に 対 する 信 認 が 低 下 するような 場 合 には 人 々の 将 来 不 安 の 強 まりや 経 済 実 態 から 乖 離 した 長 期 金 利 の 上 昇 などを 通 じて 経 済 の 下 振 れにつながる 惧 れがある 一 方 財 政 再 建 の 道 筋 に 対 する 信 認 が 高 まり 人 々の 将 来 不 安 が 軽 減 されれば 経 済 が 上 振 れ る 可 能 性 もある (2) 物 価 情 勢 上 述 のような 経 済 の 上 振 れ 下 振 れ 要 因 が 顕 在 化 した 場 合 物 価 にも 相 応 の 影 響 が 及 ぶとみられる それ 以 外 に 物 価 の 上 振 れ 下 振 れをもたらす 要 因 としては 第 1に 企 業 や 家 計 の 中 長 期 的 な 予 想 物 価 上 昇 率 の 動 向 が 挙 げられる 中 心 的 な 見 通 しでは 賃 金 の 上 昇 を 伴 いながら 実 際 の 物 価 上 昇 率 が 高 まっていく 中 で 人 々の 予 想 物 価 上 昇 率 も 一 段 と 上 昇 し 物 価 安 定 の 目 標 である2% 程 度 に 向 けて 次 第 に 収 斂 していく 姿 を 想 定 してい るが その 上 昇 ペースには 実 際 の 物 価 の 動 きやそれが 予 想 物 価 に 及 ぼす 影 響 の 度 合 いなどを 巡 って 不 確 実 性 がある この 点 では エネルギー 価 格 下 落 の 影 響 から 現 実 の 消 費 者 物 価 の 前 年 比 が 当 面 0% 程 度 で 推 移 すること が 予 想 物 価 上 昇 率 の 上 昇 ペースに 影 響 するリスクがある また 賃 金 と 物 価 の 関 係 を 考 えると 来 年 度 に 向 けた 労 使 交 渉 において 既 往 の 基 調 的 な 物 価 上 昇 や 先 行 きの 物 価 見 通 しがどのように 織 り 込 まれていくかが 重 要 である 第 2に マクロ 的 な 需 給 バランス とくに 労 働 需 給 の 動 向 がある 中 心 的 な 見 通 しでは 労 働 供 給 面 で 近 年 の 高 齢 者 や 女 性 による 労 働 参 加 の 高 7
まりや 最 近 みられているパート 労 働 の 正 規 雇 用 化 が 今 後 もある 程 度 続 く ことを 前 提 としているが この 点 を 巡 っては 不 確 実 性 があり その 動 向 に よっては 賃 金 物 価 に 影 響 する 可 能 性 がある 第 3に 物 価 上 昇 率 のマクロ 的 な 需 給 バランスに 対 する 感 応 度 が 挙 げら れる すなわち 先 行 きの 海 外 経 済 の 不 透 明 感 などから 企 業 の 賃 上 げに 対 するスタンスが 慎 重 化 する 場 合 や そうしたもとで 消 費 者 の 物 価 上 昇 に 対 する 抵 抗 感 が 強 まる 場 合 には 物 価 の 上 昇 ペースが 下 振 れるリスクがある また 公 共 料 金 や 一 部 のサービス 価 格 家 賃 などの 価 格 硬 直 性 が 想 定 以 上 に 強 い 場 合 には 消 費 者 物 価 指 数 の 上 昇 率 の 高 まりを 抑 制 する 要 因 となる 可 能 性 がある 第 4に 原 油 価 格 といった 国 際 商 品 市 況 や 為 替 相 場 の 変 動 などに 伴 う 輸 入 物 価 の 動 向 や その 国 内 価 格 への 波 及 の 状 況 によっても 上 振 れ 下 振 れ 双 方 の 可 能 性 がある 3. 金 融 政 策 運 営 以 上 の 経 済 物 価 情 勢 について 物 価 安 定 の 目 標 のもとで 2つの 柱 による 点 検 を 行 い 先 行 きの 金 融 政 策 運 営 の 考 え 方 を 整 理 する 10 まず 第 1の 柱 すなわち 中 心 的 な 見 通 しについて 点 検 すると わが 国 経 済 は 2016 年 度 後 半 頃 に2% 程 度 の 物 価 上 昇 率 を 実 現 し その 後 次 第 に これを 安 定 的 に 持 続 する 成 長 経 路 へと 移 行 していく 可 能 性 が 高 いと 判 断 さ れる 次 に 第 2の 柱 すなわち 金 融 政 策 運 営 の 観 点 から 重 視 すべきリスクに ついて 点 検 すると 中 心 的 な 経 済 の 見 通 しについては 海 外 経 済 の 動 向 を 中 心 に 下 振 れリスクが 大 きい 物 価 の 中 心 的 な 見 通 しについては 中 長 期 的 な 予 想 物 価 上 昇 率 の 動 向 などを 巡 って 不 確 実 性 は 大 きく 下 振 れリスク が 大 きい より 長 期 的 な 視 点 から 金 融 面 の 不 均 衡 について 点 検 すると 現 10 物 価 安 定 の 目 標 のもとでの2つの 柱 による 点 検 については 日 本 銀 行 金 融 政 策 運 営 の 枠 組 みのもとでの 物 価 安 定 の 目 標 について (2013 年 1 月 22 日 ) 参 照 8
時 点 では 資 産 市 場 や 金 融 機 関 行 動 において 過 度 な 期 待 の 強 気 化 を 示 す 動 きは 観 察 されない 11 もっとも 政 府 債 務 残 高 が 累 増 する 中 で 金 融 機 関 の 国 債 保 有 残 高 は 全 体 として 減 少 傾 向 が 続 いているが なお 高 水 準 であ る 点 には 留 意 する 必 要 がある 金 融 政 策 運 営 については 量 的 質 的 金 融 緩 和 は 所 期 の 効 果 を 発 揮 しており 今 後 とも 日 本 銀 行 は 2%の 物 価 安 定 の 目 標 の 実 現 を 目 指 し これを 安 定 的 に 持 続 するために 必 要 な 時 点 まで 量 的 質 的 金 融 緩 和 を 継 続 する その 際 経 済 物 価 情 勢 について 上 下 双 方 向 のリスク 要 因 を 点 検 し 必 要 な 調 整 を 行 う 以 上 11 詳 しくは 金 融 システムレポート ( 日 本 銀 行 2015 年 10 月 )を 参 照 9
( 参 考 ) 2015~2017 年 度 の 政 策 委 員 の 大 勢 見 通 し 対 前 年 度 比 % なお < > 内 は 政 策 委 員 見 通 しの 中 央 値 実 質 GDP 消 費 者 物 価 指 数 ( 除 く 生 鮮 食 品 ) 消 費 税 率 引 き 上 げの 影 響 を 除 くケース 2015 年 度 +0.8~+1.4 <+1.2> ~+0.4 <+0.1> 7 月 時 点 の 見 通 し +~+1.9 <+1.7> +0.3~+ <+0.7> 2016 年 度 +1.2~+1.6 <+1.4> +0.8~+ <+1.4> 7 月 時 点 の 見 通 し +~+1.7 <+> +1.2~+2.1 <+1.9> 2017 年 度 +0.1~+ <+0.3> +~+3.4 <+3.1> +1.2~+2.1 <+1.8> 7 月 時 点 の 見 通 し +0.1~+ <+0.2> +2.7~+3.4 <+3.1> +1.4~+2.1 <+1.8> ( 注 1) 大 勢 見 通 し は 各 政 策 委 員 が 最 も 蓋 然 性 の 高 いと 考 える 見 通 しの 数 値 について 最 大 値 と 最 小 値 を1 個 ずつ 除 いて 幅 で 示 したものであり その 幅 は 予 測 誤 差 など を 踏 まえた 見 通 しの 上 限 下 限 を 意 味 しない ( 注 2) 各 政 策 委 員 は 既 に 決 定 した 政 策 を 前 提 として また 先 行 きの 政 策 運 営 については 市 場 の 織 り 込 みを 参 考 にして 上 記 の 見 通 しを 作 成 している ( 注 3) 原 油 価 格 (ドバイ)については 1バレル 50 ドルを 出 発 点 に 見 通 し 期 間 の 終 盤 にかけて 60 ドル 台 前 半 に 緩 やかに 上 昇 していくと 想 定 している その 場 合 の 消 費 者 物 価 ( 除 く 生 鮮 食 品 )の 前 年 比 に 対 するエネルギー 価 格 の 寄 与 度 は 2015 年 度 で- 0.9%ポイント 程 度 2016 年 度 で-0.2%ポイント 程 度 と 試 算 される また 寄 与 度 は 2016 年 入 り 後 マイナス 幅 縮 小 に 転 じ 2016 年 度 後 半 には 概 ねゼロになると 試 算 され る ( 注 4) 今 回 の 見 通 しでは 消 費 税 率 について 2017 年 4 月 に 10%に 引 き 上 げられること を 前 提 としているが 各 政 策 委 員 は 消 費 税 率 引 き 上 げの 直 接 的 な 影 響 を 除 いた 消 費 者 物 価 の 見 通 し 計 数 を 作 成 している 消 費 税 率 引 き 上 げの 直 接 的 な 影 響 を 含 む 2017 年 度 の 消 費 者 物 価 の 見 通 しは 税 率 引 き 上 げが 現 行 の 課 税 品 目 すべてにフル 転 嫁 され ることを 前 提 に 物 価 の 押 し 上 げ 寄 与 を 機 械 的 に 計 算 したうえで(+1.3%ポイント) これを 政 策 委 員 の 見 通 し 計 数 に 足 し 上 げたものである 10
政 策 委 員 の 見 通 し 分 布 チャート (1) 実 質 GDP ( 前 年 比 %) ( 前 年 比 %) 4.5 4.0 3.5 実 績 値 - - - - - - -3.5-4.0 2006 年 度 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 4.5 4.0 3.5 - - - - - - -3.5-4.0 (2) 消 費 者 物 価 指 数 ( 除 く 生 鮮 食 品 ) ( 前 年 比 %) ( 前 年 比 %) 実 績 値 - - - - - - - 2006 年 度 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 ( 注 1) 上 記 の 見 通 し 分 布 は 各 政 策 委 員 の 示 した 確 率 分 布 の 集 計 値 (リスク バランス チャ ( 注 1)ート)について 1 上 位 10%と 下 位 10%を 控 除 したうえで 2 下 記 の 分 類 に 従 って 色 分 ( 注 1)けしたもの なお リスク バランス チャートの 作 成 手 順 については 2008 年 4 月 の ( 注 1) 経 済 物 価 情 勢 の 展 望 BOXを 参 照 上 位 40%~ 下 位 40% 上 位 30%~40% 下 位 30%~40% 上 位 20%~30% 下 位 20%~30% 上 位 10%~20% 下 位 10%~20% ( 注 2) 棒 グラフ 内 の は 政 策 委 員 の 見 通 しの 中 央 値 を 表 す また 縦 線 は 政 策 委 員 の 大 勢 見 通 ( 注 2)しを 表 す ( 注 3) 消 費 者 物 価 指 数 ( 除 く 生 鮮 食 品 )は 消 費 税 率 引 き 上 げの 直 接 的 な 影 響 を 除 いたベース - 11
政 策 委 員 の 経 済 物 価 見 通 しとリスク 評 価 (1) 実 質 GDP 4.0 ( 前 年 比 %) ( 前 年 比 %) 3.5-4.0 3.5 - - - 2009 2010 年 度 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 (2) 消 費 者 物 価 指 数 ( 除 く 生 鮮 食 品 ) ( 前 年 比 %) ( 前 年 比 %) 3.5 3.5 - - - 2009 2010 年 度 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 ( 注 1) 金 融 政 策 決 定 会 合 の 運 営 の 見 直 しについて (2015 年 6 月 19 日 )において 来 年 1 月 以 降 政 策 委 員 の 見 通 し 分 布 チャート にかえて 政 策 委 員 全 員 の 経 済 物 価 見 通 し 及 びリスク 評 価 を 公 表 する 方 針 を 明 らかにしていたが 後 者 について 時 系 列 での 比 較 が 可 能 となるよう 今 回 か ら 先 行 的 に 公 表 することとした ( 注 2) 実 線 は 実 績 値 点 線 は 政 策 委 員 見 通 しの 中 央 値 を 示 す ( 注 3) は 各 政 策 委 員 が 最 も 蓋 然 性 が 高 いと 考 える 見 通 しの 数 値 を 示 すとともに その 形 状 で 各 政 策 委 員 が 考 えるリスクバランスを 示 している は リスクは 概 ね 上 下 にバランスしている は 上 振 れリスクが 大 きい は 下 振 れリスクが 大 きい と 各 政 策 委 員 が 考 えていることを 示 している ( 注 4) 消 費 者 物 価 指 数 ( 除 く 生 鮮 食 品 )は 消 費 税 率 引 き 上 げの 直 接 的 な 影 響 を 除 いたベース - 12