19590911 研究成果報告書

様 式 C-19 科 学 研 究 費 補 助 金 研 究 成 果 報 告 書 平 成 21 年 6 月 4 日 現 在 研 究 種 目 : 基 盤 研 究 (C) 研 究 期 間 :2007~2008 課 題 番 号 :19590911 研 究 課 題 名 ( 和 文 ) マイコプラズマ 肺 炎 におけるリンパ 球 関 連 宿 主 免 疫 応 答 の 解 析 研 究 課 題 名 ( 英 文 ) Analysis of host-defense mechanism in association to lymphocytes in Mycoplasma pneumoniae pneumonia 研 究 代 表 者 後 藤 元 (GOTO HAJIME) 杏 林 大 学 医 学 部 教 授 研 究 者 番 号 :80134617 研 究 成 果 の 概 要 : これまでの 医 学 臨 床 の 現 場 での 観 察 から マイコプラズマ 肺 炎 は 患 者 の 免 疫 反 応 が 過 剰 に 起 こっているのではないか また マクロライド 系 抗 菌 薬 は 抗 菌 薬 としてで はなく その 過 剰 な 免 疫 反 応 を 抑 制 しているのではないか と 予 想 された そこで マイコプラズマ 肺 炎 マウスモデルを 3 種 類 作 成 し 解 析 した 結 果 重 症 のマイコプラズ マ 肺 炎 では 免 疫 反 応 が 関 与 していること さらに クラリスロマイシンには 免 疫 調 整 作 用 があることが 判 った 交 付 額 ( 金 額 単 位 : 円 ) 直 接 経 費 間 接 経 費 合 計 19 1,400,000 420,000 1,820,000 20 500,000 150,000 650,000 総 計 1,900,000 570,000 2,470,000 研 究 分 野 : 医 歯 薬 学 科 研 費 の 分 科 細 目 : 内 科 系 臨 床 医 学 キーワード: 感 染 症 シグナル 伝 達 微 生 物 内 科 網 羅 的 解 析 1. 研 究 開 始 当 初 の 背 景 マイコプラズマ 肺 炎 は 市 中 肺 炎 の 病 原 微 生 物 の 一 つ 肺 炎 マイコプラズマ Mycoplasma pneumoniae による 呼 吸 器 感 染 症 である 肺 炎 マイコプラズマの 感 染 症 は 一 般 には 自 然 経 過 で 治 癒 するが 一 部 の 患 者 で 重 篤 化 するこ とが 知 られている 近 年 肺 炎 マイコプラズ マが 喘 息 の 原 因 となる 可 能 性 が 指 摘 されて いる さらに 最 近 では ステロイドが 有 効 な 治 療 であることが 報 告 され 始 めている 以 上 より マイコプラズマ 肺 炎 は 一 般 の 細 菌 性 肺 炎 とは 異 なり 肺 炎 マイコプラズマによる 肺 炎 は 実 は 宿 主 免 疫 防 御 Host defense による 免 疫 の 異 常 ではないかと 考 えられる

さて マイコプラズマ 肺 炎 はマクロライドが 抗 菌 薬 の 選 択 肢 に 選 ばれる マクロライド 投 与 により 気 管 支 肺 胞 洗 浄 液 中 のリンパ 球 の CD4/CD8 比 が 変 化 したり 少 量 マクロライド 長 期 投 与 することによりびまん 性 汎 細 気 管 支 炎 diffuse panbronchiitis (DPB)が 改 善 す ることが 知 られており マクロライドにも 抗 菌 薬 以 外 の 作 用 として 免 疫 調 整 作 用 immunomodulatory effect の 存 在 が 想 定 され ている このように 考 えると 我 々が マイ コプラズマ 肺 炎 をマクロライド 系 抗 菌 薬 を 用 いて 治 療 してきた と 信 じてきたことは 実 は マイコプラズマが 惹 起 したホスト デ ィフェンスの 免 疫 異 常 をマクロライド 系 抗 菌 薬 の 免 疫 調 整 作 用 で 整 えた と 考 えられ た さらに マクロライド 耐 性 マイコプラ ズマによる 感 染 症 がマクロライドで 治 療 可 能 であることも 報 告 も 理 解 できる そこで 1マイコプラズマ 肺 炎 は 生 菌 でなくても 菌 体 成 分 のみで 発 症 する 2 上 記 の 炎 症 は マクロライド 系 抗 菌 薬 の 免 疫 調 整 作 用 で 治 療 可 能 である と 仮 説 がたてた 2. 研 究 の 目 的 上 記 の 仮 説 マイコプラズマ 肺 炎 は 生 菌 で なくても 菌 体 成 分 のみで 発 症 し マクロライ ド 系 抗 菌 薬 の 免 疫 調 整 作 用 で 治 療 可 能 であ る を 証 明 するため 菌 体 成 分 のみによるマ イコプラズマ 肺 炎 モデルをマウスを 用 いて 作 成 し 解 析 することを 目 的 とした 3. 研 究 の 方 法 マイコプラズマ 肺 炎 モデル C S K の 3 種 類 のモデルマウスを 用 いて 気 管 支 肺 胞 洗 浄 液 中 の 炎 症 細 胞 の 数 およびサイトカイン 濃 度 を 検 討 した 方 法 (1)マイコプラズマ 抽 出 液 マイコプラズマ 菌 体 は 培 養 増 殖 させたマ イコプラズマを 超 音 波 破 砕 し 遠 心 して 得 ら れた 上 清 を マイコプラズマ 抽 出 液 として 使 用 した (2)マウス マウスは BALB/c マウス( )を 用 いた マウスは SPF の 状 態 で 飼 育 し 杏 林 大 学 の 規 定 に 従 い 倫 理 的 かつ 動 物 愛 護 の 観 点 から 取 り 扱 われた 1)マウスモデルの 作 成 マウスモデル C 上 記 で 作 成 したマイコ プラズマ 抽 出 液 を 気 管 内 投 与 した マウス K マイコプラズマ 抽 出 液 をマウ ス 腹 腔 内 に 前 投 与 し その 後 さらにマイコプ ラズマ 抽 出 液 を 気 管 投 与 した マウスモデル S マイコプラズマ 抽 出 液 をアジュバントとともに 2 回 マウス 腹 腔 内 に 前 投 与 する その 後 気 管 よりマイコプラズ マ 抽 出 液 を 投 与 した 2)マウスの 解 析 マイコプラズマ 抽 出 液 を 気 管 投 与 を 施 行 した 日 より 第 1,2,4,7 日 に 採 材 解 析 し た また 薬 剤 投 与 を 行 う 場 合 は 気 管 投 与 した 日 から 採 材 まで 毎 日 薬 剤 を 経 口 投 与 す る 薬 剤 は クラリスロマイシンを 投 与 し 検 討 した また 比 較 の 為 デキサメサゾンも 投 与 し 検 討 した 採 材 と 解 析 は 気 管 支 肺 胞 洗 浄 を 行 い 洗 浄 液 中 の 炎 症 細 胞 の 数 的 評 価 を 施 行 し さら にサイトカインの 測 定 を 施 行 した また 肺 の 組 織 学 的 評 価 を 免 疫 染 色 も 含 めて 施 行 し た 3) 気 管 支 肺 胞 洗 浄 液 の 解 析

気 管 支 肺 胞 洗 浄 液 中 の 細 胞 は 総 数 と 細 胞 分 画 を 検 討 し さらにリンパ 球 については 表 面 マーカーをフローサイトメトリを 用 いて 解 析 した 気 管 支 肺 胞 洗 浄 液 中 のサイトカインは 主 と し て Enzyme-linked immunosorbent assay(elisa) 法 にて 測 定 した さらに 網 羅 的 な 測 定 も 行 った 肺 の 組 織 学 的 検 討 は パラフィン 切 片 ( 厚 さ=3μm)を 作 成 し 抗 サイトカイン 抗 体 で 染 色 した 4. 研 究 成 果 (1)マイコプラズマ 肺 炎 マウスモデルの 作 成 1.マウスモデル C 菌 体 成 分 を 単 回 投 与 したところ 大 きな 炎 症 反 応 は 得 られなかった 2.マウスモデル K 大 腸 菌 のリポ 多 糖 類 lipopolysaccharide とはことなり 肺 炎 マイコプラズマには 炎 症 を 惹 起 する 物 質 はあまり 含 まれない 為 マイ コプラズマの 持 続 感 染 と 似 た 病 体 を 作 成 す る 為 マイコプラズマ 抽 出 液 の 3 回 投 与 を 行 ったところ 炎 症 反 応 は 大 きくなり リンパ 球 の 集 簇 も 認 められた 3.マウスモデル S さらに 免 疫 学 的 なメカニズムも 検 討 する ため アジュバントを 併 用 した その 結 果 形 質 細 胞 とリンパ 球 の 浸 潤 を 認 め 重 症 のヒ トマイコプラズマ 肺 炎 の 肺 組 織 と 非 常 に 類 似 した 組 織 所 見 となった 表 1. 各 マイコプラズマ 肺 炎 モデルの 比 較 モデル 名 称 C K S 投 与 回 数 単 回 3 回 3 回 アジュバント なし なし あり 好 中 球 & マ クロファージ - + ++ リンパ 球 - + ++ 形 質 細 胞 - - + さらに モデル S のリンパ 球 について 検 討 を 行 ったところ CD4/8 比 が 著 明 に 低 下 し CD8 優 位 であることがわかった( 図 1) 図 1.モデル S のリンパ 球 の 解 析 興 味 深 いことに 本 マウスにマクロライド 系 抗 菌 薬 であるクラリスロマイシンを 投 与 するとリンパ 球 の 数 の 減 少 のみならず 以 下 の 通 り CD4/8 比 が 増 加 した( 図 2) 以 上 3 種 類 のマウスモデルを 比 較 すると 表 1の 通 りとなる 図 2.マウス S にクラリスロマイシン 投 与 し 多 彩 のリンパ 球 の 解 析

このようにクラリスロマイシン 投 与 によ り CD4/8 比 が 改 善 した このことから クラ リスロマイシンが 免 疫 調 整 作 用 を 有 するこ とが 判 った 以 上 の 研 究 より 以 下 の 結 果 が 得 られた (1) 肺 炎 マイコプサズマの 菌 体 成 分 により 肺 炎 モデルを 作 成 することが 出 来 た 投 与 法 によりモデル C モデル S モデル K と 名 付 けた その 概 要 は 下 表 の 通 りである (2)その 肺 炎 モデルには リンパ 球 が 関 与 していることが 示 された (3)リンパ 球 は CD4 優 位 であるが クラリ スロマイシン 投 与 により CD4/CD8 比 を 変 化 さ せることが 可 能 である そして マイコプラズマ 肺 炎 の 菌 体 成 分 が 惹 起 した 過 剰 な 宿 主 免 疫 反 応 をマク ロライド 系 抗 菌 薬 の 免 疫 調 整 作 用 で 抑 制 しているという 臨 床 現 場 から 得 られ た 仮 説 がマウスモデルのレベルでは 正 しいことが 証 明 された 5. 主 な 発 表 論 文 等 ( 研 究 代 表 者 研 究 分 担 者 及 び 連 携 研 究 者 に は 下 線 ) 雑 誌 論 文 ( 計 5 件 ) 平 成 20 1. Sekine H, Taguchi H, Watanabe H, Kawai S, Fujioka Y, Goto H, Kobayashi H and Kamiya S Immunological analysis and pathological examination of gnotobiotic mice monoassociated with Mycoplasma pneumoniae J Med Microbiol 2009; 58: 697-705 査 読 有 2. 皿 谷 健 倉 井 大 輔 平 尾 晋 加 藤 愛 香 和 田 裕 雄 石 井 晴 之 飯 原 久 仁 子 藤 岡 保 範 蔵 田 訓 田 口 晴 彦 神 谷 茂 岡 輝 明 明 石 敏 中 垣 和 英 中 田 光 後 藤 元 マイコプラズマ 肺 炎 マウスモデルに 対 する Clarithromycin の 免 疫 調 節 作 用 の 検 討 Jpn J Antibios 2008; 61 (Supple A): 9-13. 査 読 有 3. 倉 井 大 輔 皿 谷 健 和 田 裕 雄 平 尾 晋 明 石 敏 神 谷 茂 後 藤 元 マイコプラズマ 肺 炎 マウスモデルにおける IL-17 の 関 与 の 検 討 日 本 感 染 症 学 雑 誌 2008; 82:739-740 査 読 有 4. 皿 谷 健 後 藤 元 マイコプラズマ 肺 炎 日 本 臨 床 2008; 別 冊 呼 吸 器 症 候 群 I:249-252 査 読 無 平 成 19 5. 倉 井 大 輔 和 田 裕 雄 皿 谷 健 石 井 晴 之 田 口 晴 彦 神 谷 茂 明 石 敏 後 藤 元 細 菌 感 染 の 病 原 因 子 マイコプラズマ 可 溶 性 抗 原 を 用 いた 肺 炎 モデルの 検 討 感 染 症 学 雑 誌 2007; 81: 492-493 査 読 有 学 会 発 表 ( 計 6 件 ) 平 成 20 1. 倉 井 大 輔 皿 谷 健 和 田 裕 雄 平 尾 晋 明 石 敏 神 谷 茂 後 藤 元 マイコプラズマ 肺 炎 マウスモデルにおける IL-17 の 関 与 の 検 討 第 83 回 日 本 感 染 症 学 会 総 会 ( 東 京 平 成 21 年 4 月 24 日 ) 2. Hirao S, Saraya T, Kurai D, Wada H, Ishii H, Kurata S, Taguchi H, Kamiya S, Akashi T, Nakagaki K, Nakata K and Goto H Comparison of immune-modulating effects

among clarithromycin, dexamethasone, and levofloxacin on the murine model of Mycoplasma pneumoniae pneumonia. (Abstract presented in ERS 2008 in Berlin, Germany, 14 Oct 2008) 3. 平 尾 晋 和 田 裕 雄 皿 谷 健 三 倉 真 一 郎 倉 井 大 輔 石 井 晴 之 中 垣 和 英 明 石 敏 後 藤 元 マイコプラズマ 菌 体 抽 出 物 による 炎 症 反 応 に 対 するクラリスロマイシンの 効 果 に ついて 第 83 回 日 本 感 染 症 学 会 ( 東 京 2009 年 4 月 23 日 ) 平 成 19 4. 倉 井 大 輔 和 田 裕 雄 皿 谷 健 石 井 晴 之 田 口 晴 彦 神 谷 茂 明 石 敏 後 藤 元 細 菌 感 染 の 病 原 因 子 マイコプラズマ 可 溶 性 抗 原 を 用 いた 肺 炎 モデルの 検 討 第 82 回 日 本 感 染 症 学 会 総 会 ( 松 江 市 2007 年 4 月 17 日 ) 5. Kurai D, Saraya H, Wada H, Ishii H, Goto H, Iihara K, Fujioka Y, Taguchi S, Kmiya S, Oka T, Nakagaki K, Nakata K and Akashi T Involvement of lymphocytes in Mycoplasma pneumoniae pneumonia is associated with elevation in KC, IL-6 and TNF-alpha levels in bronchoalveolar lavage fluid. Eur Respir J 2007; 30: 722s (Presented in ERS 2007 in Stockholm, Sweden, 19 September 2007) 2007; 176: A876 (Presented in ATS 2007 in San Francisco, 22 May 2007) 図 書 ( 計 0 件 ) 産 業 財 産 権 出 願 状 況 ( 計 0 件 ) 取 得 状 況 ( 計 0 件 ) その 他 特 記 事 項 なし 6. 研 究 組 織 (1) 研 究 代 表 者 後 藤 元 (Goto Hajime) 杏 林 大 学 医 学 部 教 授 研 究 者 番 号 : (2) 研 究 分 担 者 ( 平 成 19 ) 和 田 裕 雄 (WADA HIROO) 杏 林 大 学 医 学 部 助 教 研 究 者 番 号 :50407053 飯 原 久 仁 子 (IIHARA KUNIKO) 杏 林 大 学 医 学 部 准 教 授 研 究 者 番 号 :40306676 中 垣 和 英 (NAKAGAKI KAZUHIDE) 日 本 獣 医 生 命 科 学 大 学 獣 医 学 部 准 教 授 研 究 者 番 号 :00247082 (3) 連 携 研 究 者 ( 平 成 20 ) 和 田 裕 雄 (WADA HIROO) 杏 林 大 学 医 学 部 助 教 研 究 者 番 号 :50407053 6. Saraya T, Wada H, Kurai D, Ishii H, Aoshima M, Horie S, Oka T, Iihara K, Fujioka Y, Kurata S, Taguchi H, Kamiya S, Nakata K, Nakagaki K, Akashi T and Goto H Involvement of lymophcytes in the murine model of Mycoplasma pneumoniae pneumonia Am J Respir Crit Care Med