Aug 8, 2016 中 国 経 済 情 報 2016 年 8 月 号 内 容 1. 伊 藤 忠 拠 点 が 見 た 中 国 経 済 情 勢 (1) 新 常 態 を 先 取 りする 地 域 製 造 業 は 不 振 ながら サービス 業 のすそ 野 は 拡 大 三 次 産 業 主 導 の 成 長 への 移 行 が 進 む (2) 新 たなけん 引 役 として 期 待 される 中 西 部 地 域 製 造 業 や 小 売 り サ ービス 業 が 好 調 二 次 産 業 三 次 産 業 とも 高 い 成 長 (3) 過 剰 生 産 解 消 に 苦 しむ 地 域 重 厚 長 大 型 の 製 造 業 の 不 振 が 続 く 産 業 構 造 の 転 換 に 遅 れ Summary 伊 藤 忠 拠 点 が 見 た 中 国 経 済 の 現 状 ~ 成 長 の 中 心 は から 中 西 部 へ~ では 伊 藤 忠 商 事 の 中 国 各 拠 点 の 協 力 を 得 て 今 年 7 月 上 旬 に 現 地 の 景 況 感 についてのアンケート 調 査 を 実 施 した その 結 果 中 西 部 地 域 の 景 況 感 が 相 対 的 に 良 好 地 域 の 景 況 感 が 悪 い 西 高 東 低 の 状 況 が 続 いていることが 確 認 された 地 域 では 鋼 材 や 石 炭 ガラス セメントなどの 過 剰 生 産 業 種 を 中 心 とした 製 造 業 の 景 気 が 悪 く 一 方 で 教 養 娯 楽 分 野 などサービス 消 費 が 幅 広 く 拡 大 している 名 目 GDP に 占 める 三 次 産 業 のシェアは 既 に 二 次 産 業 を 上 回 っており 新 常 態 と 呼 ばれる 三 次 産 業 主 導 の 安 定 成 長 を 他 の 地 域 に 先 駆 けて 実 現 しつつある 中 西 部 地 域 は 自 動 車 関 連 や 小 売 り サービス 分 野 インフラ 関 連 など 景 気 の 良 い 業 種 が 目 立 つ 中 西 部 の 実 質 GDP 成 長 率 は 他 の 地 域 に 比 べて 高 いが その 背 景 には 西 部 大 開 発 に 始 まる 一 連 の 政 策 的 な 支 援 がある また 中 西 部 の GDP に 占 める 産 業 別 シェアは 依 然 として 二 次 産 業 が 三 次 産 業 を 上 回 っており 補 助 金 や 税 制 優 遇 などもあって 二 次 産 業 が 経 済 の 柱 となっている ただ 三 次 産 業 もシェアを 高 めるなど 堅 調 な 拡 大 を 続 けており 中 西 部 は 一 昔 前 の 上 海 北 京 のように 二 次 産 業 三 次 産 業 がともに 高 い 成 長 を 続 ける 段 階 にある 2. まとめ 成 長 の 中 心 は から 中 西 部 へ 主 席 研 究 員 武 田 淳 (03-3497-3676) takeda-ats @itochu.co.jp 主 任 研 究 員 須 賀 昭 一 (03-3497-3678) suga-s @itochu.co.jp 地 域 は 過 剰 生 産 業 種 を 中 心 とした 重 化 学 工 業 の 不 振 が 目 立 つほ か 石 油 石 炭 業 界 などの 資 源 分 野 も 苦 戦 している 鉱 工 業 生 産 総 額 の 上 位 には 鉄 鋼 やセメント ガラスなどの 過 剰 生 産 業 種 や 石 油 などの 鉱 物 資 源 関 連 産 業 が 並 んでおり 主 力 である 二 次 産 業 の 成 長 率 は 他 の 地 域 を 下 回 っている GDP に 占 める 三 次 産 業 の 割 合 は 上 昇 傾 向 にあるが 未 だ 二 次 産 業 を 下 回 っており 産 業 構 造 の 転 換 が 遅 れていることが 低 成 長 につながっている 以 上 の 状 況 にマクロ 的 な 分 析 を 加 えると は 経 済 の 成 熟 化 に 伴 って 成 長 ペースが 鈍 化 する 成 熟 先 進 地 域 に 分 類 され 成 長 の 原 動 力 は 三 次 産 業 であり は 未 成 熟 のうちに 構 造 的 な 問 題 を 抱 えた 停 滞 後 進 地 域 中 西 部 は 成 長 余 地 が 大 きく 成 長 率 が 相 対 的 に 高 い 発 展 中 後 進 地 域 となろう 中 国 経 済 における の 圧 倒 的 な 存 在 感 は 変 わらないが 成 長 という 意 味 では 中 西 部 に 中 心 が 移 りつつある
1. 伊 藤 忠 拠 点 が 見 た 中 国 経 済 情 勢 では 伊 藤 忠 商 事 の 中 国 各 拠 点 の 協 力 を 得 て 今 年 7 月 上 旬 に 現 地 の 景 況 感 についての アンケート 調 査 を 実 施 した その 概 要 は 下 表 の 通 りであるが 前 回 (2015 年 9 月 )の 結 果 と 比 較 すると 中 西 部 地 域 の 景 況 感 が 相 対 的 に 良 好 地 域 の 景 況 感 が 悪 い 西 高 東 低 の 状 況 が 続 いている ただし 前 回 の 調 査 では 極 めて 良 好 だった 中 西 部 の 成 都 が 良 好 に 一 段 階 低 下 し 極 めて 悪 い 状 況 であった 大 連 が 中 立 に 一 段 階 上 昇 したため 極 めて 良 好 極 めて 悪 い とする 地 域 がなくなり ばらつき 度 合 いは 縮 小 した 伊 藤 忠 中 国 拠 点 から 見 た 各 地 域 の 経 済 情 勢 地 域 評 価 (5 段 階 ) 2015 年 9 月 2016 年 7 月 西 部 地 域 : 内 モンゴル 陝 西 寧 夏 甘 粛 重 慶 四 川 貴 州 雲 南 広 西 青 海 チベット 新 疆 東 北 3 省 : 黒 竜 江 吉 林 遼 寧 前 回 との 比 較 黒 竜 江 省 北 京 市 - - - 3 中 立 天 津 市 3 中 立 3 中 立 新 疆 ウイグル 自 治 区 中 部 地 域 : 山 西 河 南 安 徽 湖 南 湖 北 江 西 内 モンゴル 自 治 区 遼 寧 省 吉 林 省 上 海 市 4 やや 悪 い 4 やや 悪 い 山 東 省 青 島 2 やや 良 好 4 やや 悪 い 青 海 省 寧 夏 回 族 自 治 区 山 西 省 北 京 市 天 津 市 河 北 省 山 東 省 浙 江 省 寧 波 3 中 立 4 やや 悪 い 甘 粛 省 陝 西 省 河 南 省 江 蘇 省 広 東 省 広 州 2 やや 良 好 2 やや 良 好 吉 林 省 長 春 4 やや 悪 い 4 やや 悪 い チベット 自 治 区 四 川 省 重 慶 市 湖 北 省 安 徽 省 江 西 省 上 海 市 浙 江 省 黒 竜 江 省 哈 爾 浜 3 中 立 3 中 立 貴 州 省 湖 南 省 福 建 省 遼 寧 省 大 連 5 極 めて 悪 い 3 中 立 雲 南 省 広 西 チワン 族 自 治 区 広 東 省 中 西 部 重 慶 市 - - - 2 やや 良 好 四 川 省 成 都 1 極 めて 良 好 2 やや 良 好 海 南 省 地 域 : 北 京 天 津 河 北 山 東 江 蘇 上 海 浙 江 福 建 広 東 海 南 〇 は 伊 藤 忠 拠 点 所 在 地 また 今 回 のアンケート 結 果 をマクロ 統 計 と 併 せて 見 ると 以 下 で 述 べるように 各 地 域 における 景 気 の 実 態 が より 立 体 的 に 浮 かび 上 がってきた (1) 新 常 態 を 先 取 りする 地 域 製 造 業 は 不 振 ながらサービス 業 のすそ 野 は 拡 大 ( 沿 海 部 )における 景 気 の 現 状 評 価 は 対 象 となった 6 都 市 ( 北 京 天 津 上 海 青 島 寧 波 広 州 )のうち やや 良 好 が 1 ヶ 所 ( 広 州 ) 中 立 が 2 ヶ 所 ( 北 京 天 津 ) やや 悪 いが 3 ヶ 所 ( 上 海 青 島 寧 波 )であり 結 果 はばらついたが 平 均 的 には 中 立 から やや 悪 い 寄 りの 状 況 と 言 える における 景 気 が 悪 い 業 種 分 野 としては 鋼 材 や 石 炭 ガラス セメントなどの 過 剰 生 産 業 種 を 中 心 とした 製 造 業 が 多 く 挙 げられた とりわけ 前 回 から 景 気 判 断 が 悪 化 した 青 島 と 寧 波 は それぞ れ 化 学 や 繊 維 といった 特 定 の 製 造 業 で 業 績 の 悪 化 が 指 摘 されている また 消 費 分 野 においても ぜ 2
いたく 禁 止 令 の 影 響 などで 需 要 の 低 迷 が 続 く 酒 類 時 計 バッグなど 高 級 な 消 費 財 やレストランなど いわゆる ぜいたく 消 費 分 野 が 低 迷 しているとのコメントが 多 く 見 られた 一 方 景 気 が 良 い 業 種 分 野 としては 教 育 やペット 楽 器 など いわゆる 教 養 娯 楽 分 野 への 支 出 が 旺 盛 で サービス 消 費 が 幅 広 く 拡 大 している 様 子 が 窺 われた 所 得 水 準 の 上 昇 に 伴 って 個 人 消 費 の 高 度 化 が 進 んでいる 模 様 である また 自 動 車 関 連 のほか 粉 ミルクや 玩 具 などの 子 ども 用 品 空 気 清 浄 器 や 浄 水 器 などの 環 境 関 連 商 品 については 消 費 のみならず 製 造 業 も 好 調 という 指 摘 もあった 三 次 産 業 主 導 の 成 長 への 移 行 が 進 む このように 地 域 では 製 造 業 などの 二 次 産 業 が 低 迷 する 一 方 で 個 人 消 費 関 連 を 中 心 とする 三 次 産 業 のすそ 野 が 広 がっている この 様 子 を 名 目 GDP の 産 業 別 シェアで 確 認 すると 三 次 産 業 のシェアは 2010 年 には 二 次 産 業 を 約 5%ポイント 程 度 下 回 る 44.3%で あったが 2013 年 に 逆 転 し 2015 年 には 二 次 産 業 を 約 7%ポイント 上 回 る.8%まで 上 昇 した 後 述 の 通 り 他 の 地 域 では 依 然 として 二 次 産 業 のシェアが 三 次 産 業 を 上 回 っており 地 域 は 三 次 産 業 を 中 心 とす る 経 済 構 造 への 転 換 が 最 も 進 んでいる 地 域 だと 言 える 過 去 を 振 り 返 ると 地 域 は 1979 年 の 改 革 開 放 後 上 海 の 浦 東 新 区 やシンセンを 筆 頭 とする 経 済 特 区 など 中 央 政 府 の 政 策 的 後 押 しと 沿 海 部 の 地 理 的 優 位 性 を 活 かした 輸 出 拠 点 として 中 国 経 済 の 発 展 をけん 引 してきた しかしながら 近 年 は 人 件 費 や 人 民 元 相 場 の 上 昇 によって こうした 輸 出 に 軸 足 を 置 いた 経 済 発 展 モデルは 限 界 にきているため 政 府 は 三 次 産 業 ( 個 人 消 費 ) 主 導 の 経 済 発 展 モ デルへ 転 換 し 持 続 的 な 成 長 を 目 指 す 方 針 に 移 行 しつつある こうした 流 れを 受 けて 習 近 平 政 権 は 2014 年 に 三 次 産 業 主 導 の 安 定 成 長 を 新 常 態 (ニューノーマル) と 命 名 し 中 国 全 体 を 輸 出 投 資 主 導 の 過 度 な 高 成 長 から 緩 やかに 減 速 させ 新 常 態 にソフトランディングさせる 目 標 を 掲 げた 東 部 地 域 はまさに こうした 新 常 態 を 他 の 地 域 に 先 駆 けて 実 現 しつつある 地 域 と 言 うことができよ う (%) 52 48 46 44 42 名 目 GDPの 産 業 別 シェアの 推 移 二 次 産 業 ( ) 三 次 産 業 ( ) ( 注 ) 一 次 産 業 はおおむね5~6%で 横 ばい (2) 新 たなけん 引 役 として 期 待 される 中 西 部 地 域 製 造 業 や 小 売 り サービス 業 が 好 調 中 西 部 ( 成 都 重 慶 ) 地 域 の 拠 点 が 見 た 景 気 の 現 状 評 価 は どちらも やや 良 好 であった 詳 細 を 見 ると 重 慶 では 製 造 業 の 柱 の 一 つであるノー トパソコンの 生 産 が 伸 び 悩 んでいるとの 指 摘 があった ものの 総 じて 景 気 が 良 い 業 種 分 野 についてのコメ ントが 目 立 った 例 を 挙 げると 自 動 車 産 業 について 自 動 車 販 売 台 数 上 位 10 都 市 (2015 年 1~10 月 ) ( 万 台 ) 都 市 名 省 販 売 台 数 都 市 名 省 販 売 台 数 成 都 四 川.0 鄭 州 河 南 23.9 深 セン 広 東 35.4 蘇 州 江 蘇 23.5 北 京 直 轄 32.8 西 安 陝 西 21.4 重 慶 直 轄 31.5 上 海 直 轄 20.5 南 京 江 蘇 24.1 武 漢 湖 北 19.9 ( 注 ) 網 掛 けは 新 規 ナンバープレート 数 を 制 限 している 都 市 3
は 関 連 産 業 が 集 積 している 重 慶 において 内 需 向 けの 生 産 販 売 が 好 調 であり 成 都 でも 販 売 状 況 は 良 好 成 都 の 自 動 車 販 売 台 数 は 渋 滞 緩 和 のため 購 入 規 制 を 実 施 している の 大 都 市 を 抑 えて 第 1 位 (2015 年 1~10 月 ) 重 慶 も 4 位 となるなど 中 西 部 地 域 の 大 都 市 は 中 国 における 自 動 車 産 業 拡 大 の 一 翼 を 担 っている 様 子 がうかがえた 自 動 車 以 外 でも ネット 消 費 を 含 む 小 売 サービス 消 費 は 旺 盛 であり また 世 界 遺 産 が 多 い 四 川 省 で は 成 都 への 年 間 訪 問 客 数 が 2009 年 の 5 千 万 人 程 度 から 2015 年 には 2 億 人 近 くまで 約 4 倍 に 拡 大 観 光 業 が 好 調 のようである さらに 沿 海 部 に 比 べてインフラ 整 備 が 遅 れている 中 西 部 地 域 においては 空 港 の 整 備 拡 張 高 速 鉄 道 網 の 整 備 が 急 速 に 進 むなどインフラ 需 要 も 旺 盛 という 指 摘 もあった ( 百 万 人 ) 年 間 訪 問 客 数 ( 国 内 ) 300 北 京 2 上 海 成 都 200 1 100 0 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014 二 次 産 業 三 次 産 業 とも 高 い 成 長 比 較 的 良 好 な 経 済 情 勢 にある 中 西 部 の 実 質 GDP 成 長 率 ( 前 年 同 期 比 )の 推 移 を 見 ると 2009 年 頃 から や を 上 回 っており 2015 年 は ベースの 成 長 率 が 前 年 同 期 比 +6.9% が 7.9% が+5.1%にとどまる 中 で 中 部 +8.2% 西 部 +8.6%と 相 対 的 に 高 成 長 を 維 持 した かつて 中 西 部 は 内 陸 で 海 に 面 しておらず 山 地 や 砂 漠 が 多 くを 占 める 自 然 条 件 もあり 交 通 社 会 イ ンフラの 整 備 が 遅 れ 経 済 発 展 も 立 ち 遅 れていた し ( 前 年 比 %) 15.5 14.5 13.5 12.5 11.5 10.5 9.5 8.5 7.5 6.5 5.5 4.5 実 質 GDP 成 長 率 の 推 移 中 部 西 部 2000200120022003200420052006200720082009201020112012201320142015 2. 統 計 の 作 成 元 が 異 なるため 値 は 各 地 方 の 平 均 値 と 一 致 しない かしながら 2000 年 に 打 ち 出 された 西 部 大 開 発 や 最 近 では 一 帯 一 路 政 策 中 部 地 域 におい ては 2006 年 の 中 部 崛 起 計 画 などの 政 策 支 援 によって 道 路 鉄 道 網 の 整 備 が 急 速 に 進 み これ を 弾 みとして 上 記 の 通 り 他 の 地 域 を 上 回 る 高 い 成 長 を 続 けている また 中 西 部 地 域 の GDP に 占 める 産 業 別 のシェア を 見 ると 二 次 産 業 が 低 下 し 三 次 産 業 が 上 昇 してい る 傾 向 は と 同 様 であるが 依 然 として 二 次 産 業 のシェア(46.6% 2015 年 )が 三 次 産 業 (42.0%) を 上 回 っており 現 在 の 状 況 は 概 ね の 2010 年 頃 と 同 じ 割 合 となっている つまり 中 西 部 におい て 二 次 産 業 は 引 き 続 き 経 済 の 大 きな 柱 であり 自 動 車 や IT 産 業 の 一 大 集 積 地 となりつつある 現 状 が 示 すように 補 助 金 や 税 制 などの 政 策 的 支 援 交 通 (%) 55 45 35 30 インフラ 整 備 コストを 含 めた 人 的 資 源 確 保 の 優 位 性 地 場 需 要 への 期 待 などを 背 景 に 成 長 を 続 けている 4 名 目 GDPの 産 業 別 シェアの 推 移 二 次 産 業 ( 中 西 部 ) 三 次 産 業 ( 中 西 部 ) 2. 一 次 産 業 は11~13% 台 で 推 移
一 方 三 次 産 業 についても 卸 売 小 売 業 のほか 成 都 を 中 心 とした 四 川 省 では 観 光 業 が 好 調 であり 金 融 や 物 流 拠 点 としても 期 待 されるなど 二 次 産 業 を 上 回 る 成 長 によって GDP に 占 めるシェアを 高 めている このように 中 西 部 は 一 昔 前 の 上 海 北 京 のように 二 次 産 業 三 次 産 業 がともに 高 い 成 長 を 続 ける 段 階 にあり 今 や 経 済 成 長 という 意 味 では に 代 わる 存 在 となる 地 域 であろう (3) 過 剰 生 産 解 消 に 苦 しむ 地 域 重 厚 長 大 型 の 製 造 業 の 不 振 が 続 く 地 域 の 景 気 の 現 状 評 価 については 3 都 市 のうち 中 立 が 2 ヶ 所 ( 哈 爾 濱 大 連 ) やや 悪 い が 1 ヶ 所 ( 長 春 )であり 良 好 がない 分 全 体 として やや 悪 い 状 況 にあると 言 える なかでも 過 剰 生 産 業 種 を 中 心 とした 重 化 学 工 業 の 不 振 が 目 立 っている また 粗 鋼 生 産 量 国 内 第 4 位 (2015 年 ) の 鞍 山 鉄 鋼 の 大 規 模 な 人 員 削 減 方 針 のほか 石 油 石 炭 業 界 などの 資 源 分 野 の 苦 戦 が 各 拠 点 で 指 摘 されている 一 方 で においても スポーツジムやダイエット などの 健 康 カラオケなどの 娯 楽 子 ども 用 品 インテ リアなどの 生 活 関 連 消 費 観 光 業 が 好 調 であり 三 次 産 業 もすそ 野 が 広 がりつつある 側 面 が 見 られた また 自 動 車 販 売 も 回 復 基 調 との 指 摘 もあった 鉱 工 業 生 産 総 額 のシェア(2014 年 ) その 他 51% 自 動 車 12% 石 油 11% 鉄 鋼 9% 食 品 加 工 10% 非 金 属 (セ メント ガ ラス 等 ) 7% ( 備 考 ) 遼 寧 統 計 年 鑑 (2014 年 ) 吉 林 統 計 年 鑑 (2014 年 ) 黒 竜 江 統 計 年 鑑 (2014 年 )より 作 成 産 業 構 造 の 転 換 に 遅 れ は 伝 統 的 に 重 化 学 工 業 が 盛 んな 地 域 であり 鉱 工 業 生 産 総 額 の 上 位 には 鉄 鋼 やセメント ガラス などの 過 剰 生 産 業 種 や 石 油 などの 鉱 物 資 源 関 連 産 業 が 並 ぶ 政 府 は 過 剰 生 産 業 種 に 対 して 生 産 抑 制 を 強 い ており これらの 業 種 が 多 い では 2013 年 から 二 次 産 業 の 成 長 率 が 他 の 地 域 を 下 回 っている 2015 年 には 前 年 比 で+2.7%まで 低 下 し GDP 成 長 率 を 大 き く 押 し 下 げる 要 因 となった における 設 備 の 過 剰 度 合 いは 投 資 比 率 ( 固 定 資 産 投 資 / 名 目 GDP)を 見 れば 一 目 瞭 然 である 投 資 比 率 は リーマン ショック 以 降 平 均 で 概 ね 45% 程 度 で 推 移 しており これ 自 体 も 日 本 のピークである 37%(1973 年 度 )を 大 きく 上 回 っているが で は 60% 台 にも 達 しており もはや 異 常 とも 言 える 水 準 である 1 今 後 も 相 当 の 長 期 に 渡 り 過 剰 設 備 削 減 のた 1 なお 周 知 の 通 り 中 国 の GDP 統 計 は 各 地 域 の GDP 統 計 の 数 値 を 集 計 しても ベースの 数 値 と 大 きく 乖 離 しており 5 18 16 14 12 10 ( 前 年 比 %) 8 6 4 2 西 部 各 地 域 の 二 次 産 業 成 長 率 中 部 2. 統 計 の 作 成 元 が 異 なるため 値 は 各 地 方 の 平 均 値 と 一 致 しない 65 60 55 45 35 30 25 ( 名 目 GDP 比 %) 投 資 比 率 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
め 固 定 資 産 投 資 が 抑 制 され 景 気 を 下 押 しすることが 予 想 される また 産 業 構 造 から 見 ると 名 目 GDP に 占 める 三 次 産 業 のシェアは 上 昇 傾 向 にあるが 2015 年 時 点 でも 二 次 産 業 の 45.2%に 対 して 三 次 産 業 は 43.4%と 下 回 って おり 未 だ 二 次 産 業 が 主 力 の 経 済 である 産 業 構 造 の 転 換 は 遅 れ 気 味 ということになろう その 原 因 は 他 の 地 域 に 比 べて 三 次 産 業 の 成 長 率 が 低 い ためである 特 に 2014 年 以 降 の 三 次 産 業 の 成 長 率 は 8% 前 後 に 低 下 他 の 地 域 が 9~10%へ 伸 びを 高 めていることと 対 照 的 である 背 景 には 所 得 環 境 の 悪 化 があり その 根 底 には 主 力 である 二 次 産 業 の 業 績 が 急 速 に 悪 化 したことがあるとみられ 経 済 の 牽 引 役 を 二 次 産 業 から 三 次 産 業 へスムーズにバトンタッチでき なったことが の 低 成 長 につながっていると 考 えられる 2. まとめ (%) 55 45 35 30 13 12 11 10 9 8 7 名 目 GDPの 産 業 別 シェアの 推 移 二 次 産 業 ( ) 三 次 産 業 ( ) 2. 一 次 産 業 は10~11% 台 で 推 移 ( 前 年 比 %) 各 地 域 の 三 次 産 業 成 長 率 西 部 中 部 2. 統 計 の 作 成 元 が 異 なるため 値 は 各 地 方 の 平 均 値 と 一 致 しない 成 長 の 中 心 は から 中 西 部 へ 以 上 のような 現 地 における 景 況 感 定 性 情 報 にマクロ 統 計 による 分 析 を 加 えると 各 地 域 の 経 済 情 勢 は 以 下 のように 整 理 できよう 一 人 当 た り G D P 前 年 比 3 ヵ 年 平 均 ( % ) 16.0 14.0 12.0 10.0 8.0 6.0 4.0 2.0 広 西 安 徽 四 川 山 西 貴 州 チベット 雲 南 甘 粛 江 西 河 南 黒 竜 江 一 人 当 たりGDP(2015 年 )の 水 準 と 伸 び 率 の 比 較 発 展 中 後 進 地 域 中 西 部 平 均 湖 南 湖 北 海 南 新 疆 青 海 河 北 寧 夏 重 慶 陝 西 吉 林 平 均 停 滞 後 進 地 域 中 所 得 発 展 中 先 進 地 域 山 東 遼 寧 平 均 投 資 比 率 については 各 地 域 とも ベースの 数 値 よりも 高 い 点 には 留 意 が 必 要 である それでも 60% 超 という 水 準 は 極 め て 高 いということに 変 わりはない 6 福 建 広 東 浙 江 内 モンゴル 0.0 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000 16,000 18,000 一 人 当 たりGDP(ドル) 高 所 得 江 蘇 平 均 7.7% 北 京 上 海 天 津 成 熟 先 進 地 域 2. 中 西 部 の 値 は 加 重 平 均 値 3. 縦 軸 は 各 省 の2013 年 ~15 年 の 前 年 比 の 平 均 値 4. 世 界 銀 行 による 中 所 得 国 の 基 準 は 一 人 当 たりGNI 1,026~12,475ドル(2015 年 )
まず 地 域 は 一 人 当 たり GDP が 11,000 ドルを 超 え 概 ね 高 所 得 の 領 域 に 入 りつつある そのため 経 済 の 成 熟 化 に 伴 って 成 長 ペースが 鈍 化 する 成 熟 先 進 地 域 に 分 類 することができる 個 別 に 見 ると 一 人 当 たり GDP が 16,000~18,000 ドルに 達 する 上 海 市 や 北 京 市 天 津 市 といった 直 轄 市 が 最 先 端 の 成 熟 先 進 地 域 となり 12,000~14,000 ドル 辺 りの 江 蘇 省 浙 江 省 など 他 の の 省 が 後 を 追 う 形 となっている そして 成 長 率 は 江 蘇 省 を 除 いて 平 均 を 下 回 っており その 成 長 の 原 動 力 は 三 次 産 業 である は 一 人 当 たり GDP が 平 均 で 8,000 ドル 強 の 上 位 中 所 得 に 位 置 しているが 構 造 的 問 題 を 抱 え 成 長 が 頭 打 ちしており いわば 停 滞 後 進 地 域 の 領 域 に 落 ち 込 んでいる こうした 姿 は いわゆる 中 所 得 国 の 罠 に 陥 っているという 見 方 もできよう 省 別 に 見 ても 遼 寧 省 吉 林 省 黒 竜 江 省 のいずれも 中 所 得 にもかかわらず 成 長 率 が 低 い 停 滞 後 進 地 域 に 分 類 されている その 一 方 で 中 西 部 は 一 人 当 たり GDP が 平 均 で 6,000 ドル 強 と 低 いが その 分 成 長 余 地 は 大 き く 成 長 率 が 相 対 的 に 高 い 発 展 中 後 進 地 域 に 分 類 される 若 い 経 済 であるが 故 二 次 産 業 に おいても 成 長 余 地 が 多 く 残 されており 適 切 な 産 業 政 策 の 下 十 分 な 資 源 配 分 がなされれば 三 次 産 業 ともども 高 い 成 長 を 持 続 することが 可 能 であろう こうした 各 地 の 経 済 情 勢 を 併 せて 見 ると 規 模 の 大 きさだけでなく 先 進 的 という 意 味 でも 中 国 経 済 における 沿 海 部 地 域 の 圧 倒 的 な 存 在 感 は 変 わらないものの 経 済 成 長 という 観 点 では から 中 西 部 に 中 心 が 徐 々に 移 りつつあると 言 えるだろう 本 資 料 は 情 報 提 供 を 目 的 として 作 成 されたものであり 投 資 勧 誘 を 目 的 としたものではありません 作 成 時 点 で 伊 藤 忠 経 済 研 究 所 が 信 頼 できると 判 断 した 情 報 に 基 づき 作 成 しておりますが その 正 確 性 完 全 性 に 対 する 責 任 は 負 い ません 見 通 しは 予 告 なく 変 更 されることがあります 記 載 内 容 は 伊 藤 忠 商 事 ないしはその 関 連 会 社 の 投 資 方 針 と 整 合 的 であるとは 限 りません 7