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再 生 可 能 エネルギー 等 導 入 推 進 基 金 事 業 計 画 書 ( 各 年 度 計 画 書 ) ( 事 業 計 画 の 概 要 ) 計 画 の 名 称 京 都 府 地 球 温 暖 化 対 策 等 推 進 基 金 計 画 の 期 間 交 付 対 象 京 都 府 府 内 市 町 村 民 間

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平成25年度 独立行政法人日本学生支援機構の役職員の報酬・給与等について

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スライド 1

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18 国立高等専門学校機構

目 改 正 項 目 軽 自 動 車 率 の 引 上 げ 〇 国 及 び 地 方 を 通 じた 自 動 車 関 連 制 の 見 直 しに 伴 い 軽 自 動 車 の 標 準 率 が 次 のとおり 引 き 上 げられます 車 種 区 分 引 上 げ 幅 50cc 以 下 1,000 円 2,000 円

1 総 合 設 計 一 定 規 模 以 上 の 敷 地 面 積 及 び 一 定 割 合 以 上 の 空 地 を 有 する 建 築 計 画 について 特 定 行 政 庁 の 許 可 により 容 積 率 斜 線 制 限 などの 制 限 を 緩 和 する 制 度 である 建 築 敷 地 の 共 同 化 や

第7章

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資料3 家電エコポイント制度の政策効果等について

容 積 率 制 限 の 概 要 1 容 積 率 制 限 の 目 的 地 域 で 行 われる 各 種 の 社 会 経 済 活 動 の 総 量 を 誘 導 することにより 建 築 物 と 道 路 等 の 公 共 施 設 とのバランスを 確 保 することを 目 的 として 行 われており 市 街 地 環

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定例市長記者会見資料

16 日本学生支援機構

●電力自由化推進法案

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目 次 都 市 づくりの 全 体 構 想 偏 1. 都 市 づくりの 理 念 と 目 標 1 1. 都 市 づくりの 理 念 と 将 来 像 1 2. 都 市 づくりの 目 標 とテーマ 2 3. 計 画 期 間 3 4. 将 来 人 口 フレーム 3 2. 将 来 都 市 構 造 4 1. 将 来

就 学 前 教 育 保 育 の 実 施 状 況 ( 平 成 23 年 度 ) 3 歳 以 上 児 の 多 く(4 歳 以 上 児 はほとんど)が 保 育 所 又 は 幼 稚 園 に 入 所 3 歳 未 満 児 (0~2 歳 児 )で 保 育 所 に 入 所 している 割 合 は 約 2 割 就 学

(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 き 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている

公表表紙

平成24年度税制改正要望 公募結果 153. 不動産取得税

小 売 電 気 の 登 録 数 の 推 移 昨 年 8 月 の 前 登 録 申 請 の 受 付 開 始 以 降 小 売 電 気 の 登 録 申 請 は 着 実 に 増 加 しており これまでに310 件 を 登 録 (6 月 30 日 時 点 ) 本 年 4 月 の 全 面 自 由 化 以 降 申

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人事行政の運営状況の報告について

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船橋市地域住宅計画(第1回変更)様式変更

セルフメディケーション推進のための一般用医薬品等に関する所得控除制度の創設(個別要望事項:HP掲載用)

 三郷市市街化調整区域の整備及び保全の方針(案)

貸 借 対 照 表 内 訳 表 212 年 3 月 31 日 現 在 公 益 財 団 法 人 神 奈 川 県 公 園 協 会 科 目 公 益 目 的 事 業 会 計 収 益 事 業 等 会 計 法 人 会 計 内 部 取 引 消 去 合 計 Ⅰ 資 産 の 部 1. 流 動 資 産 現 金 預 金

130117_『高齢社会をむかえた東京23区の将来 人口と建物の関係から見て

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個人住民税徴収対策会議

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m07 北見工業大学 様式①

目 次 第 1 土 地 区 画 整 理 事 業 の 名 称 等 1 1. 土 地 区 画 整 理 事 業 の 名 称 1 2. 施 行 者 の 名 称 1 第 2 施 行 地 区 1 1. 施 行 地 区 の 位 置 1 2. 施 行 地 区 位 置 図 1 3. 施 行 地 区 の 区 域 1 4

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

災害時の賃貸住宅居住者の居住の安定確保について

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学校安全の推進に関する計画の取組事例

別 表 1 土 地 建 物 提 案 型 の 供 給 計 画 に 関 する 評 価 項 目 と 評 価 点 数 表 項 目 区 分 評 価 内 容 と 点 数 一 般 評 価 項 目 立 地 条 件 (1) 交 通 利 便 性 ( 徒 歩 =80m/1 分 ) 25 (2) 生 活 利 便


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1.H26年エイズ発生動向年報ー概要

目 次 第 1. 土 区 画 整 理 事 業 の 名 称 等 1 (1) 土 区 画 整 理 事 業 の 名 称 1 (2) 施 行 者 の 名 称 1 第 2. 施 行 区 1 (1) 施 行 区 の 位 置 1 (2) 施 行 区 位 置 図 1 (3) 施 行 区 の 区 域 1 (4) 施

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全国都市再生モデル調査調書(様式1)

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国立研究開発法人土木研究所の役職員の報酬・給与等について

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社会保険加入促進計画に盛込むべき内容

は し が き

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事 業 概 要 利 用 時 間 休 館 日 使 用 方 法 使 用 料 施 設 を 取 り 巻 く 状 況 や 課 題 < 松 山 駅 前 駐 輪 場 > JR 松 山 駅 を 利 用 する 人 の 自 転 車 原 付 を 収 容 する 施 設 として 設 置 され 有 料 駐 輪 場 の 利 用

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質 問 票 ( 様 式 3) 質 問 番 号 62-1 質 問 内 容 鑑 定 評 価 依 頼 先 は 千 葉 県 などは 入 札 制 度 にしているが 神 奈 川 県 は 入 札 なのか?または 随 契 なのか?その 理 由 は? 地 価 調 査 業 務 は 単 にそれぞれの 地 点 の 鑑 定

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記者発表資料

第 2 節 関 連 計 画 1. 国 の 方 針 計 画 国 が 示 している 一 般 廃 棄 物 の 減 量 化 等 に 関 する 目 標 値 を 以 下 に 示 します (1) 廃 棄 物 の 減 量 その 他 その 適 正 な 処 理 に 関 する 施 策 の 総 合 的 かつ 計 画 的 な

能勢町市街化調整区域における地区計画のガイドライン

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市街化区域と市街化調整区域との区分

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公 的 年 金 制 度 について 制 度 の 持 続 可 能 性 を 高 め 将 来 の 世 代 の 給 付 水 準 の 確 保 等 を 図 るため 持 続 可 能 な 社 会 保 障 制 度 の 確 立 を 図 るための 改 革 の 推 進 に 関 する 法 律 に 基 づく 社 会 経 済 情


                         庁議案件No

1 林 地 台 帳 整 備 マニュアル( 案 )について 林 地 台 帳 整 備 マニュアル( 案 )の 構 成 構 成 記 載 内 容 第 1 章 はじめに 本 マニュアルの 目 的 記 載 内 容 について 説 明 しています 第 2 章 第 3 章 第 4 章 第 5 章 第 6 章 林 地

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経 常 収 支 差 引 額 等 の 状 況 平 成 26 年 度 予 算 早 期 集 計 平 成 25 年 度 予 算 対 前 年 度 比 較 経 常 収 支 差 引 額 3,689 億 円 4,597 億 円 908 億 円 減 少 赤 字 組 合 数 1,114 組 合 1,180 組 合 66

新 市 建 設 計 画 の 変 更 に 係 る 新 旧 対 照 表 ページ 変 更 後 変 更 前 表 紙 安 中 市 松 井 田 町 合 併 協 議 会 安 中 市 松 井 田 町 合 併 協 議 会 平 成 27 年 3 月 変 更 安 中 市 6 2. 計 画 策 定 の 方 針 (3) 計

官報掲載【セット版】

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Microsoft Word - 資料3(用途)

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 (24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 7 級 ( 単 位 : 円 ) 8 級 1 号 給 の 給 料 月 額 135,6 185,8 222,9 261,9 289,2 32,6 366,2 413,

有 料 老 ホーム ( ) ( 主 として 要 介 護 状 態 にある を 入 居 させるも のに 限 る ) 第 29 条 ( 届 出 等 ) 第 二 十 九 条 有 料 老 ホーム( 老 を 入 居 させ 入 浴 排 せつ 若 しくは 食 事 の 介 護 食 事 の 提 供 又 はその 他 の

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人 同 意 第 49 回 宇 和 島 定 例 決 結 果 一 覧 表 番 号 件 名 決 結 果 報 告 第 1 号 専 決 処 分 した 件 報 告 即 日 受 理 専 決 第 1 号 道 おける 故 和 解 即 日 受 理 専 決 第 2 号 車 両 接 触 故 和 解 即 日 受 理 案 第

守 口 市 立 東 小 学 校 大 久 保 小 学 校 の 統 合 実 施 計 画 目 次 第 1 守 口 市 における 学 校 統 合 の 背 景 1 第 2 東 小 学 校 と 大 久 保 小 学 校 の 統 合 について 1 第 3 統 合 校 の 学 校 づくりについて 2 第 4 東 小

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Ⅰ 人 口 の 現 状 分 析 Ⅰ 人 口 の 現 状 分 析 1 人

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(3) 調 査 の 進 め 方 2 月 28 日 2 月 28 日 ~6 月 30 日 平 成 25 年 9 月 サウンディング 型 市 場 調 査 について 公 表 松 戸 市 から 基 本 的 な 土 地 情 報 サウンディングの 実 施 活 用 意 向 アイデアのある 民 間 事 業 者 と

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07_住宅バウチャー(家賃補助)制度の表紙.doc

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別 添 1 女 性 国 家 公 務 員 の 登 用 状 況 資 料 1 指 定 職 に 占 める 女 性 の 割 合 は3.0%( 平 成 27 年 11 月 1 日 現 在 ) ( 前 年 9 月 1 日 現 在 から0.2ポイント 増 ) 本 省 課 室 長 相 当 職 以 上 に 占 める 女

Transcription:

http://www.jri.co.jp 2013 年 4 月 30 日 No.2013-02 スマートシティ 実 現 に 向 けた 取 り 組 みと 今 後 の 課 題 調 査 部 主 任 研 究 員 佐 藤 浩 介 要 点 スマートシティの 実 現 に 向 けた 新 しい 動 きが 世 界 中 で 広 がりつつある 世 界 のスマート シティ 関 連 産 業 の 市 場 規 模 は 2030 年 までに 累 計 で 4,000 兆 円 弱 にのぼるとの 推 計 もあ り わが 国 でも 企 業 における 商 品 化 技 術 開 発 などの 新 しい 取 り 組 みが 行 われている そもそもスマートシティとは ICT を 活 用 して 基 礎 生 活 インフラを 効 率 的 に 運 営 (= スマート 化 )することによって 人 々がより 快 適 に 暮 らすことが 可 能 になる 都 市 と 定 義 でき スマート 化 の 対 象 となるインフラには エネルギー 交 通 システム 上 下 水 道 のハードインフラに 加 えて 医 療 介 護 サービス 教 育 防 災 などのソフトインフラも 本 来 的 には 含 まれる もっとも わが 国 では 東 日 本 大 震 災 以 降 スマートシティがエネ ルギー 制 約 という 環 境 下 でのソリューションとして 脚 光 を 浴 びている 現 状 を 踏 まえ 本 稿 ではハードインフラのスマート 化 を 中 心 に 取 り 組 みの 実 情 と 課 題 について 考 察 する ハードインフラのスマート 化 で 実 用 段 階 にあるのは 太 陽 光 発 電 や 電 気 自 動 車 を 活 用 し た 住 宅 (スマートハウス) 群 などの 一 部 であり 大 半 は 政 府 支 援 を 受 けた 効 果 が 検 証 されていない 機 器 やシステムを 実 地 で 試 行 する 実 証 段 階 の 取 り 組 みである 政 府 支 援 は 多 岐 にわたっており 主 なものとして スマートコミュニティ 構 想 ( 経 済 産 業 省 所 管 ) ICT スマートタウン 構 想 ( 総 務 省 所 管 ) 環 境 未 来 都 市 構 想 ( 内 閣 府 所 管 ) がある このような 複 数 の 支 援 もとに 北 九 州 市 横 浜 市 豊 田 市 などを 中 心 に 全 国 22 ヶ 所 で 実 証 が 取 り 組 まれ 一 定 の 成 果 を 収 めつつある しかしその 一 方 で 1これまでは 技 術 実 証 にすぎないため 実 証 で 確 立 した 機 器 やシステムを 活 用 した 事 業 モデルを 別 途 構 築 することが 必 要 2スマート 化 投 資 を 呼 び 込 むためにはシステムに 付 帯 する 新 しいサー ビスの 開 発 を 合 わせて 行 うことが 不 可 欠 といった 二 つの 課 題 が 浮 かびあがっている 国 内 で 完 成 度 の 高 いスマートシティ モデルを 構 築 できれば わが 国 企 業 が 国 際 競 争 力 を 確 立 できると 考 えられ このようなわが 国 の 成 長 戦 略 を 現 実 のものにするためには 今 後 も 政 府 の 支 援 によって 国 内 でさらなるスマートシティの 実 証 を 進 めていくことが 重 要 である とりわけ 上 述 の 二 つの 課 題 を 解 消 することは 喫 緊 の 課 題 であることから 今 後 は 限 られた 各 省 庁 の 資 源 の 統 合 を 図 り 効 率 的 かつ 集 中 的 にスピード 感 をもってこ れらの 課 題 解 消 に 向 けた 支 援 を 実 行 していくことが 肝 要 であろう 1

本 件 に 関 するご 照 会 は 調 査 部 主 任 研 究 員 佐 藤 浩 介 宛 にお 願 いいたします Tel:03-6833-0910 Mail:sato.kosuke@jri.co.jp 2

1.はじめに 欧 米 諸 国 や 中 東 諸 国 中 国 ASEAN 諸 国 などの 新 興 国 でも 環 境 配 慮 型 の 次 世 代 都 市 と 言 われる スマートシティの 実 現 に 向 けた 新 しい 動 きが 広 がりつつある 例 えば 中 国 では 天 津 市 や 唐 山 市 な ど 大 都 市 周 辺 で 生 態 城 (エコシティ) 中 東 のアブダビでは 同 様 の マスダール シティ そし て 欧 州 でもオランダで アムステルダム スマートシティ の 建 設 が 進 められている 1 日 経 BP クリーンテック 研 究 所 の 推 計 によれば 世 界 におけるスマートシティに 関 連 す る 産 業 の 市 場 規 模 は 2030 年 までの 累 計 で 4,000 兆 円 弱 にのぼると 見 込 まれ ( 図 表 1) 世 界 のスマートシティの 市 場 規 模 ( 兆 円 ) 4,000 オセアニア 中 南 米 ている( 図 表 1) 2 3,000 わが 国 でもスマートシティを 構 築 す るための 基 礎 インフラをパッケージに して 海 外 に 輸 出 するため 企 業 におけ る 商 品 化 技 術 開 発 などの 新 しい 取 り 2,000 1,000 欧 州 アフリカ その 他 アジア 中 東 中 央 アジア インド 中 国 組 みが 行 われている そこで 本 稿 では これまでのわが 国 におけるスマートシ 0 日 本 2015 年 2020 年 2025 年 2030 年 ティに 関 する 取 り 組 みの 全 体 像 を 俯 瞰 し その 実 情 と 課 題 について 考 察 する 北 米 (カナダ 米 国 ) ( 資 料 ) 日 経 BPクリーンテック 研 究 所 [2011] 世 界 スマートシティ 総 覧 2012 ( 注 ) 数 値 は2011 年 から2030 年 までの 累 計 2.スマートシティの 概 念 整 理 (1)スマートシティの 定 義 スマートシティについては 統 一 的 な 定 義 はなく 環 境 配 慮 型 都 市 と 訳 されるケースもあるもの の 本 来 的 には ICT を 活 用 して 基 礎 インフラと 生 活 インフラの 両 方 を 効 率 的 に 運 営 (=スマート 化 )することによって 人 々がより 快 適 に 暮 らすことが 可 能 になる 都 市 と 定 義 ( 図 表 2) スマートシティに 求 められる 各 種 インフラ エネルギー( 電 力 ガス 熱 ) できよう スマート 化 の 対 象 となるイン ハードインフラ 交 通 システム( 鉄 道 自 動 車 ) 環 境 配 慮 型 都 市 に 求 め フラには 電 力 やガスなどのエネルギー られるイン フラ 上 下 水 道 交 通 システム 上 下 水 道 といった 社 会 インフラ の 基 礎 となるハードインフラがまず 挙 げ られるが それに 加 えて 医 療 や 介 護 サ ソフトインフラ 医 療 介 護 サービス 教 育 サービス ービス 教 育 セキュリティ( 防 災 治 セキュリティサービス 安 ) といった 人 々の 生 活 に 密 着 するソフ ( 資 料 ) 日 本 総 合 研 究 所 作 成 1 中 国 の 中 新 天 津 生 態 城 では 2008 年 から 2020 年 の 間 に 総 額 約 2,000 億 元 ( 円 換 算 約 2 兆 5,280 億 円 1 元 =12.64 円 ( 2012 年 平 均 レート)で 換 算 )を 投 資 して 太 陽 光 風 力 地 熱 の 各 再 生 可 能 エネルギー 発 電 設 備 次 世 代 型 路 面 電 車 システム(LRT; Light Rail Transit)を 建 設 する 予 定 である アブダビの マスダール シティ では 人 口 約 5 万 人 面 積 約 6.5 平 方 キロメー トルのエリアに 2006 年 から 2015 年 の 間 に 総 額 約 220 億 ドル( 円 換 算 約 1 兆 7,554 億 円 1 ドル=79.79 円 (2012 年 平 均 レート)で 換 算 )を 投 資 して 太 陽 光 太 陽 熱 風 力 の 各 再 生 可 能 エネルギー 発 電 設 備 と LRT を 建 設 する 計 画 である オランダ の アムステルダム スマートシティ では 2006 年 から 2016 年 の 間 に 総 額 約 11 億 ユーロ( 円 換 算 約 1,130 億 円 1 ユーロ= 102.60 円 (2012 年 平 均 レート)で 換 算 )を 投 資 して 約 1,200 戸 の 住 宅 にスマートグリッドの 実 証 のためのスマートメーターの 装 備 商 業 ビルのエネルギー 使 用 量 を 抑 制 するスマートビルティングへの 転 換 電 気 自 動 車 の 普 及 を 進 める 計 画 である 2 構 成 要 素 別 にみると 定 置 用 蓄 電 池 製 品 が 約 1,500 兆 円 と 全 体 の 3 分 の 1 強 を 占 め 次 いで 電 力 送 電 設 備 の 約 800 兆 円 電 気 自 動 車 ハイブリッド 自 動 車 の 約 300 兆 円 の 順 となっている 3

トインフラも 含 まれると 考 えられる( 図 表 2) (2)わが 国 ではエネルギー 制 約 のソリューションとして 注 目 わが 国 では 従 来 よりソフトインフラ 向 上 に 対 するニーズが 多 い 平 成 13 年 度 に 内 閣 府 が 行 っ た 国 土 の 将 来 像 に 関 する 世 論 調 査 によれば 身 近 な 生 活 環 境 の 中 で 今 後 特 によくなってほし いと 思 うものは 何 か という 質 問 に 対 し て ソフトインフラである 医 療 福 祉 と 回 答 した 割 合 は 52.4%と 生 活 環 境 施 設 よりも 多 く また 治 安 のよさ (26.3%)を 挙 げた 割 合 も ハードイン フラである 交 通 の 利 便 性 を 挙 げた 割 合 とほぼ 同 じ 水 準 であった この 理 由 は わが 国 ではハードインフラの 整 備 が 一 通 り 行 き 届 き 人 々の 関 心 が 日 々の 生 活 の 向 上 すなわち ソフトインフラの 向 上 に 移 ったことが 影 響 していると 推 測 され る( 図 表 3) ( 図 表 3) 向 上 が 望 まれる 生 活 環 境 0 20 40 60 (%) 医 療 福 祉 生 活 環 境 施 設 ( 道 路 下 水 道 公 園 ) 交 通 の 利 便 性 治 安 のよさ 働 く 場 ( 雇 用 機 会 労 働 環 境 ) 自 然 環 境 教 育 文 化 災 害 からの 安 全 性 地 域 社 会 における 人 間 的 つながり 住 宅 情 報 通 信 環 境 (インターネット) ( 資 料 ) 内 閣 府 国 土 の 将 来 像 に 関 する 世 論 調 査 ( 平 成 13 年 度 ) しかし 東 日 本 大 震 災 によって 状 況 が 一 変 した 原 子 力 発 電 所 の 長 期 稼 働 停 止 によって 電 力 エ ネルギー 制 約 の 問 題 が 大 きくクローズアップされることとなり まずは 新 たなエネルギー 供 給 手 段 として 太 陽 光 風 力 地 熱 バイオマスなどの 多 様 な 再 生 可 能 エネルギーをいかに 大 量 に 導 入 す るかに 関 心 が 高 まっている 昨 年 7 月 に 再 生 可 能 エネルギーの 固 定 価 格 全 量 買 取 制 度 が 導 入 され 太 陽 光 発 電 を 主 体 とした 再 生 可 能 エネルギー 電 力 の 買 い 取 り 量 が 大 幅 に 増 加 している さらに 日 常 活 動 における 省 エネやエネルギー 効 率 の 向 上 も 喫 緊 の 課 題 として 注 目 が 集 まっている 電 力 料 金 値 上 げの 影 響 を 受 けて 震 災 以 降 は 企 業 や 家 計 による 節 電 行 動 が 一 般 化 しており また LED 照 明 などの 省 エネ 機 器 への 買 い 替 えも 増 えている こうした 動 きを 踏 まえて 昨 年 12 月 に 策 定 された グリーン 政 策 大 綱 では 2030 年 までに 再 生 可 能 エネルギーを 2010 年 対 比 で 3 倍 となる 3,000 億 kwh 以 上 導 入 し 同 時 に 1,100 億 kwh 以 上 電 力 使 用 量 を 削 減 するという 数 値 目 標 を 掲 げてい る このように わが 国 ではエネルギー 制 約 という 環 境 下 でのソリューションとしてスマートシテ ィが 脚 光 を 浴 びるようこととなった (3) 本 稿 でのスマートシティの 範 囲 こうしたわが 国 特 有 の 状 況 を 踏 まえて 本 稿 では エネルギー 交 通 システム 上 下 水 道 に 関 連 するハードインフラのスマート 化 を 中 心 に それらの 取 り 組 みの 実 情 と 課 題 について 考 察 する 想 定 されるハードインフラのスマート 化 のイメージは 以 下 のような 事 例 である A)エネルギーインフラのスマート 化 スマートメーターの 設 置 を 含 めた 次 世 代 型 電 力 網 (スマートグリッド) 構 築 再 生 可 能 エネルギ ーの 効 率 的 な 活 用 家 電 製 品 の 自 動 制 御 需 要 者 が 電 力 料 金 に 応 じて 電 力 使 用 量 を 自 発 的 に 抑 制 す る 行 動 (デマンド レスポンス)やネガワット 取 引 3の 実 践 電 気 自 動 車 用 の 充 電 システムの 設 置 3 夏 季 の 日 中 など 電 力 需 給 が 逼 迫 する 時 間 帯 において 消 費 電 力 量 の 抑 制 を 図 るため 電 力 会 社 が 節 電 を 行 う 需 要 者 に 対 して 削 減 4

熱 エネルギーの 効 率 的 な 活 用 B) 交 通 システムのスマート 化 低 燃 費 低 炭 素 型 のエコドライブの 実 現 交 通 渋 滞 予 測 を 通 じて 円 滑 な 移 動 を 可 能 にする 交 通 シ ステムの 開 発 運 用 充 電 状 況 や 位 置 情 報 を 監 視 した 電 気 自 動 車 の 乗 り 捨 て 型 のカーシェアリング サービスの 構 築 C) 上 下 水 道 のスマート 化 各 地 に 設 置 したセンサーネットワークを 活 用 した 漏 水 の 集 中 管 理 エネルギーを 効 率 的 に 利 用 し た 造 水 排 水 から 再 生 した 水 の 再 利 用 3.スマートシティ 実 現 に 向 けたこれまでの 取 り 組 み わが 国 におけるハードインフラのスマート 化 の 動 きは 大 別 すると 実 用 段 階 にある 取 り 組 みと 実 証 段 階 にある 取 り 組 みの 二 つに 分 けられる 実 用 段 階 にある 取 り 組 みは 太 陽 光 発 電 システムや 蓄 電 池 など すでに 商 品 化 されている 機 器 やシステムを 組 み 合 わせることで 主 にエネルギーイン フラのスマート 化 を 可 能 な 範 囲 で 実 現 しているものである 他 方 実 証 段 階 にある 取 り 組 みは ま だ 効 果 が 検 証 されていない 機 器 やシステムを 実 地 で 試 行 している 取 り 組 みである (1) 実 用 段 階 の 取 り 組 み: 神 奈 川 県 藤 沢 市 の 事 例 現 在 実 用 段 階 にある 取 り 組 みとして 神 奈 川 県 藤 沢 市 のパナソニックによる Fujisawa サステ ィナブル スマートタウン プロジェクトがある( 図 表 4) このプロジェクトは パナソニックの 工 場 跡 地 約 19 ヘクタールに 総 事 業 費 600 億 円 を 投 じて 2018 年 まで 約 3,000 人 の 住 人 が 居 住 する 約 1,000 戸 規 模 の 住 宅 群 のほか 商 業 施 設 病 院 公 共 施 設 を 有 する 街 区 を 建 設 するものである 事 業 主 体 はパナソニックのほか スマート 化 の 事 業 策 定 を 行 うアクセンチュア まちのランドスケープの 策 定 を 行 う 日 本 設 計 スマートハウスを 建 設 する パナホームと 三 井 不 動 産 グループ 地 域 内 のネットワークの 構 築 を 行 う NTT 東 日 本 などの 多 様 な 業 種 の 民 間 企 業 から 構 成 され るコンソーシアムである セキュリティや ( 図 表 4) Fujisawaサスティナブル スマートタウン の 概 要 事 業 概 要 約 19haの 敷 地 に 住 宅 約 1,000 戸 商 業 施 設 公 共 施 設 を 配 置 総 事 業 費 600 億 円 ヘルスケアなどについてもスマート 化 を 進 全 戸 太 陽 光 発 電 燃 料 電 池 蓄 電 池 等 の 省 エネ 機 器 HEMSを 備 えた スマートハウス める 計 画 だが やはり 中 心 はハードインフ ラのスマート 化 で 1 太 陽 光 パネル 燃 料 公 園 や 共 有 駐 車 場 沿 道 など 公 共 空 間 に 太 陽 光 パネルを 設 置 ソーラー 駐 輪 場 の 導 入 による 電 動 自 転 車 シェアサービス 新 サービスの 提 供 (エネルギー 保 守 サービス センサーとカメラによ る 街 区 全 体 を 監 視 するセキュリティサービス ヘルスケアサービス) 電 池 蓄 電 池 などの 省 エネ 創 エネ 機 器 な 参 加 企 業 役 割 どによる HEMS( 巻 末 コラム 参 照 )を 標 準 パナソニック インテグレータ 太 陽 電 池 スマート 家 電 等 提 供 アクセンチュア スマート 化 事 業 の 構 想 策 定 装 備 したスマートハウスを 建 設 する 2 公 オリックス 日 本 設 計 モビリティシェアリング 事 業 新 エネルギー 機 器 導 入 計 画 とランドスケープ 策 定 園 などの 公 共 施 設 などでも 太 陽 光 発 電 など 三 井 住 友 信 託 銀 行 東 京 ガス 住 宅 ローン 商 品 企 画 リース ファイナンス 提 供 家 庭 用 燃 料 電 池 提 供 の 再 生 可 能 エネルギーを 利 用 する さらに パナホーム スマートハウス 分 譲 事 業 は 3 地 域 住 民 による 電 気 自 動 車 のシェア リングを 推 進 するため 各 所 に 充 電 スタンド を 設 置 した 共 用 駐 車 スペースを 設 置 する ( 資 料 )パナソニックのプレスリリース 資 料 をもとに 日 本 総 合 研 究 所 作 成 三 井 不 動 産 グループ NTT 東 日 本 スマートハウス 分 譲 事 業 通 信 プラットフォーム 提 供 全 戸 ネットワーク 化 三 井 物 産 電 通 ヘルスケアサービス 開 発 エネルギー ヘルスケアサービス 開 発 電 気 量 に 応 じた 手 数 料 を 支 払 う 制 度 のこと 関 西 電 力 では 昨 年 7 月 から 大 口 需 要 者 に 限 定 して このネガワット 取 引 を 開 始 してい る 5

といった 取 り 組 みである これにより 街 区 全 体 で 使 用 するエネルギーの 30% 以 上 を 再 生 エネルギ ーで 賄 うことができ CO2 排 出 量 ベースでエネルギー 使 用 量 を 1990 年 比 70% 削 減 することを 目 指 している 今 年 3 月 にマネジメント 会 社 が 設 立 され 街 区 の 運 営 主 体 が 確 立 し 今 秋 から 住 宅 着 工 が 開 始 来 春 には 入 居 者 が 移 転 し 新 しい 街 区 がオープンする 予 定 である また Fujisawa サスティナブル スマートタウンのような 地 域 一 体 型 開 発 ではないが 昨 年 よ りパナホームが 大 阪 府 堺 市 と 兵 庫 県 芦 屋 市 で また 積 水 ハウスが 宮 城 県 富 谷 町 でスマートハウス 住 宅 群 の 分 譲 を 開 始 している 昨 年 は スマートハウス 元 年 とも 呼 ばれ 商 品 化 された 省 エネ 創 エネ 機 器 やエネルギー 管 理 システムを 実 装 した 住 宅 の 建 設 が 始 まっていることから 今 後 このよ うなスマートハウス 住 宅 群 からなるスマートシティの 建 設 はさらに 加 速 することが 見 込 まれる 4 (2) 実 証 段 階 の 取 り 組 み 研 究 開 発 された 機 器 やシステムの 効 果 検 証 を 実 地 で 行 う 実 証 段 階 の 取 り 組 みは ほとんどが 政 府 の 支 援 を 受 けている 5 その 政 府 の 支 援 も 多 岐 にわたっており 主 なものとして 電 気 自 動 車 (EV) やプラグインハイブリッド 車 (PHV)の 早 期 需 要 創 出 を 推 進 す ( 図 表 5) 政 府 の 主 なスマートシティ 構 想 一 覧 ることを 主 眼 とした EV PHV 構 想 名 所 管 官 庁 目 的 背 景 開 始 年 度 タウン 構 想 エネルギー 全 般 のス 蓄 電 池 の 性 能 向 インフラ 整 備 普 及 啓 発 などの 上 コストダウン EV PHV 経 済 全 方 位 的 な 取 り 組 みにより 電 気 マート 化 を 主 眼 とした スマート のための 研 究 開 発 タウン 産 業 省 自 動 車 プラグインハイブリッ 推 進 や 量 産 効 果 の ド 車 の 本 格 普 及 を 目 指 す コミュニティ 構 想 スマート 化 の 創 出 2009 エネルギー 全 体 の 効 率 的 な 利 用 アメリカを 中 心 に 手 段 である ICT の 活 用 を 主 眼 と スマート のために 電 気 のみならず 熱 や 次 世 代 電 力 網 (ス 経 済 コミュニ 運 輸 部 門 も 含 めた 総 合 的 な 管 理 マートグリッド) 2009 し た ICT スマートタウン 構 想 産 業 省 ティ を 行 うためのシステムの 構 築 を の 実 用 化 国 際 標 スマート 化 を 通 じた 経 済 活 性 化 を 目 指 す 準 化 の 加 速 主 眼 する 環 境 未 来 都 市 構 想 さ らには 農 林 漁 業 地 域 での 再 生 可 能 エネルギーの 生 産 利 用 を 主 眼 特 定 都 市 を 環 境 未 来 都 市 として 北 海 道 洞 爺 湖 サ 選 定 し 環 境 や 超 高 齢 化 対 応 し ミットにおける 環 境 未 来 た 成 功 事 例 を 創 出 さらに 国 福 田 ビジョン 内 閣 府 都 市 内 外 に 普 及 展 開 することで 需 にもとづく 環 境 要 拡 大 と 雇 用 創 出 の 実 現 を 目 指 モデル 都 市 構 想 す を 発 展 2011 ICTシステムを 活 用 し 街 の 防 とした スマートビレッジ 構 想 災 減 災 機 能 の 向 上 地 域 の 抱 東 日 本 震 災 からの がある 6 ICTスマート える 課 題 の 解 決 経 済 の 活 性 復 興 及 び 日 本 再 生 ( 図 表 5) 以 上 のうち 総 務 省 タウン 化 雇 用 の 創 出 等 の 期 待 される に 向 けた ICT 総 合 2012 効 果 に 対 するシステムの 実 用 化 戦 略 の 実 行 スマートコミュニティ 構 想 を 目 指 す ICT スマートタウン 構 想 環 農 山 漁 村 においてスマートグ 我 が 国 の 食 と 農 リッド 等 の 新 たな 技 術 の 導 入 に スマート 農 林 林 漁 業 の 再 生 のた 境 未 来 都 市 構 想 の3つについて より 再 生 可 能 エネルギーを 地 ビレッジ 水 産 省 めの 基 本 方 針 行 域 単 位 で 統 合 的 に 管 理 するシス 動 計 画 の 実 行 の 詳 細 を 検 討 する テムを 構 築 する - ( 資 料 ) 経 済 産 業 省 総 務 省 内 閣 府 農 林 水 産 省 の 資 料 より 日 本 総 合 研 究 所 が 作 成 4 ヤマダ 電 機 は 子 会 社 である 住 宅 メーカー エス バイ エルとともに 2015 年 までに 群 馬 県 板 倉 町 に 約 500 戸 のスマートハウ ス 住 宅 群 スマニティタウン 板 倉 東 洋 大 前 の 分 譲 を 計 画 している 5 規 模 は 小 さいが 政 府 の 支 援 以 外 にも 地 方 自 治 体 が 独 自 に 支 援 することで スマートシティに 関 する 実 証 事 業 を 取 り 組 んでいる 事 例 もある 例 えば 大 阪 府 は 大 阪 市 と 連 携 して スマートコミュニティ 実 証 実 験 に 取 り 組 んでおり 夢 洲 咲 洲 地 区 にて 太 陽 光 発 電 を 活 用 した 電 気 自 動 車 カーシェアリング 災 害 時 を 想 定 した 電 気 自 動 車 から 施 設 への 電 力 供 給 を 行 う 実 証 を 行 っている さらに 民 間 企 業 が 独 自 に 研 究 している 事 例 もあり 三 菱 電 機 は 自 社 研 究 所 でスマートグリッドに 関 連 する 電 力 の 需 給 制 御 シス テム 次 世 代 配 電 制 御 システム 自 動 検 針 システムなどの 実 証 を 行 っている 6 各 省 庁 はこれら 以 外 にも 産 学 向 けに 多 くのスマートシティに 関 連 した 支 援 も 行 っている 具 体 的 な 施 策 としては 環 境 省 地 域 の 再 生 可 能 エネルギー 等 を 活 用 した 自 立 分 散 型 地 域 づくりモデル 事 業 国 土 交 通 省 まち 住 まい 交 通 の 創 蓄 省 エネルギー 化 モデル 構 築 支 援 事 業 文 部 科 学 省 大 学 発 グリーンイノベーション 創 出 事 業 緑 の 知 の 拠 点 事 業 経 済 産 業 省 次 世 代 エネ ルギー 技 術 実 証 事 業 スマートコミュニティ 構 想 普 及 支 援 事 業 などが 挙 げられる 6

A)スマートコミュニティ 構 想 ( 経 済 産 業 省 ) 経 済 産 業 省 新 エネルギー 産 業 技 術 総 合 開 発 機 構 (NEDO)によれば スマートコミュニティ とは 再 生 可 能 エネルギーを 大 量 導 入 するため IT や 蓄 電 技 術 を 活 用 し 需 給 両 面 でエネルギーを 効 率 的 に 管 理 することで エネルギーのほか 交 通 システムやライフスタイルが 刷 新 された 社 会 と 構 想 されている この 構 想 は 米 国 の グリーン ニューディール 政 策 のもとで 進 められたス マートグリッド 開 発 と 類 似 しているが エネルギーに 限 定 せず より 幅 広 い 交 通 インフラなども 含 めたハードインフラのスマート 化 を 含 むことに 特 徴 がある このスマートコミュニティ 構 想 で 中 心 となるのが 次 世 代 エネルギー 社 会 システム 実 証 事 業 と スマートコミュニティ 導 入 促 進 事 業 である 次 世 代 エネルギー 社 会 システム 実 証 事 業 は 2009 年 に 開 始 されたもので 再 生 可 能 エネル ギーを 既 存 エネルギーシステムに 取 り 込 み エネルギー 使 用 を 効 率 的 に 管 理 するシステム(EMS; Energy Management System)の 構 築 を 試 みた 取 り 組 みである 先 行 開 発 された 家 電 の 自 動 制 御 再 生 可 能 エネルギーや 蓄 電 池 としてのエコ 自 動 車 から 系 統 電 力 網 への 電 力 放 電 可 変 的 な 電 力 課 金 制 度 による 需 要 者 の 電 力 使 用 の 抑 制 (デマンド レスポンス) エネルギー 効 率 に 配 慮 した 交 通 シス テムの 利 用 などの 実 証 を 行 う 計 画 である この 計 画 を 実 行 するために 2010 年 に 神 奈 川 県 横 浜 市 愛 知 県 豊 田 市 京 都 府 域 におけるけいはんな 学 研 都 市 福 岡 県 北 九 州 市 の 4 都 市 を 実 証 地 域 として 選 定 し それぞれの 住 民 構 成 やエネルギー 供 給 構 造 の 特 性 に 応 じたさまざまな 実 証 を 行 っている 一 方 スマートコミュニティ 導 入 促 進 事 業 は 東 日 本 大 震 災 の 復 興 支 援 の 一 環 として 構 想 され たもので 次 世 代 エネルギー 社 会 システム 実 証 事 業 で 得 られた 成 果 を 被 災 地 域 の 復 興 に 役 立 てることを 目 標 としている 地 域 対 象 として 2012 年 に 8 都 市 ( 岩 手 県 宮 古 市 釜 石 市 北 上 市 宮 城 県 気 仙 沼 市 石 巻 市 大 衡 村 山 元 町 福 島 県 会 津 若 松 市 (さらに 南 相 馬 市 いわき 市 も 追 加 予 定 ))が 選 定 された 現 時 点 では 各 都 市 ともにスマートコミュニティを 構 築 するためのマスタープ ランの 策 定 を 終 了 した 段 階 であり 今 後 復 興 集 中 期 間 である 2016 年 度 末 までには 実 証 を 通 じて 開 発 されたエネルギー 機 器 やシステムが 各 都 市 に 導 入 される 予 定 である B)ICT スマートタウン 構 想 ( 総 務 省 ) ICT スマートタウンとは 総 務 省 が 東 日 本 大 震 災 からの 復 興 と 日 本 経 済 の 再 生 を 目 的 に 策 定 した ICT 総 合 戦 略 のもとで ワイヤレスネットワークやクラウド 等 の 災 害 に 強 い 技 術 とビッグデ ータの 活 用 やセンサーネットワークの 最 先 端 技 術 を 組 み 合 わせた ICT が 実 装 された 都 市 として 構 想 されたものである この 構 想 は 一 義 的 には ICT の 活 用 を 主 眼 に 置 いたものであるが それが 実 現 した 社 会 像 には エネルギー 観 光 交 通 といったハードインフラのスマート 化 に 加 えて 医 療 福 祉 介 護 育 児 防 災 減 災 などのソフトインフラのスマート 化 も 含 んでおり 本 来 的 なスマー トシティが 目 指 す 社 会 像 に 近 い 具 体 的 には 2012 年 11 月 に ICT 街 づくり 推 進 事 業 として 千 葉 県 柏 市 愛 知 県 豊 田 市 東 京 都 三 鷹 市 長 野 県 塩 尻 市 静 岡 県 袋 井 市 の 5 都 市 を 先 行 的 な 実 証 プロジェクトを 行 うモデル 都 市 として 選 定 し 2020 年 頃 に 向 けて 国 内 外 にモデルを 展 開 していくこ とを 計 画 している もっとも 先 行 モデル 都 市 が 策 定 した 計 画 をみると 実 証 の 多 くは 防 災 減 災 に ICT を 活 用 する 取 り 組 みが 多 く ハードインフラのスマート 化 は 少 ない 例 えば 豊 田 市 ではカーナビゲーション などの 高 度 道 路 情 報 システム(ITS:Intelligent Transport Systems)を 活 用 した 緊 急 医 療 輸 送 体 7

制 の 構 築 塩 尻 市 では 各 種 センサーから 収 集 した 市 内 循 環 バス 情 報 の 管 理 といった 既 存 の 交 通 シス テムのスマート 化 に 取 り 組 んでいる C) 環 境 未 来 都 市 構 想 ( 内 閣 府 ) 環 境 未 来 都 市 とは 2008 年 の 北 海 道 洞 爺 湖 サミットにおける 福 田 ビジョンに 基 づいて 決 められた 環 境 モデル 都 市 構 想 を 発 展 させて 構 想 されたものである 地 球 温 暖 化 資 源 エネルギー 制 約 超 高 齢 化 対 応 といった 諸 課 題 に 対 応 するため 技 術 社 会 経 済 システム サービス ビジネスモデ ル まちづくりにおいて 革 新 のある 都 市 と 想 定 されている 2011 年 に 北 海 道 下 川 町 千 葉 県 柏 市 神 奈 川 県 横 浜 市 富 山 県 富 山 市 福 岡 県 北 九 州 市 の 5 都 市 および 東 日 本 大 震 災 の 被 災 地 から 岩 手 県 気 仙 広 域 ( 大 船 渡 市 陸 前 高 田 市 住 田 町 )など 合 計 11 都 市 地 域 が 選 定 されている 選 定 された 各 都 市 の 計 画 をみると 下 川 町 では 森 林 資 源 を 活 用 したバイオマスエネルギーの 活 用 柏 市 ではエリア 全 体 でエネルギーを 効 率 的 に 管 理 するシステム(AEMS;Area Energy Management System)の 整 備 富 山 では 次 世 代 型 路 面 電 車 システム(LRT;Light Rail Transit)ネットワーク の 形 成 岩 手 県 気 仙 広 域 では 蓄 電 池 を 付 帯 したメガソーラー 発 電 所 の 建 設 など エネルギー 交 通 に 関 連 した 多 様 なハードインフラのスマート 化 の 実 証 に 取 り 組 む 予 定 である 環 境 未 来 都 市 構 想 は コンパクトシティ 構 想 や 総 合 特 区 制 度 と 同 じく 内 閣 官 房 地 域 活 性 化 統 合 事 務 局 が 所 管 しており 取 り 組 みが 実 証 段 階 に 止 まらないよう アドバイザーの 助 言 を 通 じて 実 用 段 階 まで 引 き 上 げ 取 り 組 む 地 域 の 経 済 活 性 化 に 繋 げることを 最 終 的 な 目 的 としている (3) 実 証 段 階 の 取 り 組 みとその 成 果 このような 政 府 支 援 を 受 けた 都 市 地 域 は 全 国 で 22 ヶ 所 にのぼる( 図 表 6) こ れ らの 中 でも 福 岡 県 北 九 州 市 愛 知 県 豊 田 市 神 奈 川 県 横 浜 市 などでは 不 動 産 電 機 IT などの 多 くの 業 種 の 民 間 企 業 を 地 域 に 呼 び 込 み 様 々な 実 証 が 進 められている 以 下 では これらの 地 域 におけるこれまで の 特 徴 的 な 実 証 とその 成 果 について 触 れた い ( 図 表 6)スマートシティ 実 証 モデルの 選 定 都 市 スマート ICTスマート コミュニティ タウン 環 境 未 来 都 市 北 海 道 下 川 町 岩 手 県 北 上 市 宮 古 市 釜 石 市 気 仙 広 域 ( 注 ) 宮 城 県 気 仙 沼 市 石 巻 市 東 松 島 市 大 衝 村 岩 沼 市 山 元 町 福 島 県 新 地 町 南 相 馬 市 会 津 若 松 市 千 葉 県 柏 市 神 奈 川 県 横 浜 市 東 京 都 三 鷹 市 愛 知 県 豊 田 市 静 岡 県 袋 井 市 長 野 県 塩 尻 市 A) 福 岡 県 北 九 州 市 ~わが 国 初 の 節 電 を 促 す 可 変 的 な 電 力 料 金 制 度 の 実 証 富 山 県 富 山 市 北 九 州 市 の 特 徴 的 な 取 り 組 みは 2012 年 に 京 都 府 けいはんな 学 研 都 市 わが 国 で 初 めて 行 った 電 力 需 給 が 逼 迫 す る 時 間 帯 に 需 要 者 に 節 電 を 促 す 可 変 的 な 電 福 岡 県 北 九 州 市 ( 資 料 ) 経 済 産 業 省 内 閣 府 総 務 省 の 資 料 に 基 づき 日 本 総 合 研 究 所 作 成 ( 注 ) 気 仙 広 域 ; 岩 手 県 大 船 渡 市 陸 前 高 田 市 住 田 町 力 料 金 (ダイナミック プライシング)の 実 証 である 夏 季 の 電 力 消 費 が 増 える 6 月 から 9 月 の 13 時 から 17 時 の 時 間 帯 に 八 幡 東 区 東 田 地 区 の 180 世 帯 に 対 して ベースとなる 電 力 料 金 を 15 円 / kwh と 設 定 し 翌 日 の 電 力 需 要 や 再 生 可 能 エネルギーの 発 電 量 の 予 測 を 元 にピーク 料 金 を 50 円 / kwh から 最 大 150 円 /kwh までに 引 き 上 げた この 実 証 を 通 じて 約 18%から 22%の 消 費 電 力 都 市 名 8

の 削 減 効 果 があるという 成 果 が 得 られた ダイナミック プライシングが 節 電 行 動 を 促 すことは 先 行 する 海 外 での 実 証 ですでに 認 められていたが 統 計 的 にも 有 意 であることが 示 されたのはこの 北 九 州 での 実 証 が 世 界 で 初 めての 事 例 である 7 B) 神 奈 川 県 横 浜 市 ~ 広 域 での 大 規 模 エネルギーマネジメントの 実 証 横 浜 市 の 特 徴 的 な 取 り 組 みは コントロール 対 象 地 域 を 市 内 の 広 域 とした 大 規 模 にエネルギーを 効 率 的 に 管 理 するシステム(CEMS;Community Energy Management System)の 実 証 である そこでは 2,000 台 の EV 4,000 世 帯 の HEMS 商 業 ビルにおいてエネルギーを 効 率 的 に 管 理 す るシステム(BEMS;Building Energy Management System) あるいは 集 合 住 宅 であるマンショ ンにおいてエネルギーを 効 率 的 に 管 理 するシステム(MEMS;Mansion Energy Management System)といった 個 々の 管 理 システムをすべて 統 合 して 地 域 全 体 でのエネルギー 利 用 の 最 適 化 を 試 行 した この 実 証 を 通 じて 広 域 で EV 住 宅 商 業 ビル マンションなどさまざまな 機 器 やシ ステム 間 での 連 携 は 可 能 であり エネルギーの 需 給 バランスを 有 効 に 維 持 することができたという 成 果 が 収 められている C) 愛 知 県 豊 田 市 ~ 事 故 や 渋 滞 の 少 ない 次 世 代 型 モビリティの 実 証 豊 田 市 の 特 徴 的 な 取 り 組 みは 新 交 通 システム(TDMS;Traffic Data Management System) の 実 験 である このシステムは ITS を 活 用 して 車 両 を 通 じて 交 通 の 流 れを 調 整 するとともに 独 自 の 交 通 渋 滞 予 測 に 基 づいて 最 適 な 移 動 手 段 を 誘 導 することで 交 通 の 量 を 調 整 し 交 通 システム 全 体 を 円 滑 にすることを 目 指 したものである 最 適 な 移 動 手 段 を 誘 導 の 具 体 的 な 方 法 として 2012 年 度 から 公 共 交 通 機 関 の 運 行 状 況 や 道 路 状 況 に 応 じて 電 車 バス 自 家 用 車 タクシーなど 複 数 の 交 通 手 段 を 組 み 合 わせた 最 適 なルートをナビゲートする マルチモーダルルート 案 内 の 実 証 が 始 まっている 4. 今 後 のさらなるスマートシティ 構 築 に 向 けた 課 題 このように 実 証 を 通 じて 着 実 に 一 定 の 成 果 が 収 められてきているが その 一 方 で スマートシテ ィを 現 実 的 なものにしていくうえでの 課 題 も 浮 かびあがってきている (1) 実 証 で 確 立 した 機 器 やシステムの 事 業 化 まず 一 点 目 の 課 題 は 現 在 の 実 証 はあくまで 機 器 やシステムの 効 果 を 実 地 で 確 認 する 技 術 実 証 にすぎないため この 実 証 の 事 業 化 を 別 途 考 える 必 要 がある 点 である 例 えば CEMS の 実 証 では 地 域 全 体 でエネルギーを 効 率 的 に 管 理 するシステムが 実 地 で 可 能 であるかに 焦 点 をあてて 試 行 して いるため その 管 理 にあたる 地 域 エネルギーコントロールセンターの 運 営 に 関 わる 費 用 を 政 府 の 補 助 金 で 賄 っている 参 加 する 家 庭 や 企 業 から 省 エネの 対 価 を 地 域 エネルギーコントロールセンター に 支 払 うなど CEMS が 事 業 として 成 り 立 つにはどのような 仕 組 みにすればよいかという 観 点 から の 試 行 は この 実 証 の 中 では 行 われていない そのため 実 証 終 了 とともに 政 府 からの 補 助 金 が 途 絶 えてしまうと 地 域 エネルギーコントロールセンターの 運 営 ができなくなり CEMS の 運 営 その ものが 継 続 できない 可 能 性 もでてきている このように 実 証 が 確 立 した 機 器 やシステムについて は 今 後 どのように 事 業 として 活 用 していくかといった 事 業 モデルを 立 案 するとともにその 検 証 7 依 田 他 [2012]. 北 九 州 市 における 変 動 型 CPP 社 会 実 証 2012 年 度 夏 期 評 価 結 果 参 照 9

を 行 う 工 程 が 改 めて 必 要 になる (2) 付 帯 的 な 新 しいサービスの 開 発 二 つ 目 の 課 題 は スマート 化 投 資 を 呼 び 込 むためには 付 帯 的 な 新 しいサービスを 合 せて 開 発 す ることも 不 可 欠 である 点 である 例 えば 住 宅 をスマートハウスにするには 通 常 の 住 宅 に 比 べて 300 万 円 から 700 万 円 の 追 加 投 資 が 必 要 になるが その 回 収 原 資 は 長 期 にわたった 太 陽 光 発 電 の 売 電 報 酬 や 省 エネ 行 動 を 通 じて 節 約 されるエネルギーコストとなるため 投 資 に 消 極 的 になる 個 人 の 数 は 少 なくないと 予 想 されている そのため セキュリティやヘルスケアといった 個 人 の 日 常 の 生 活 に 役 立 つ 新 しいサービスをシステムに 付 帯 することによって 導 入 を 促 進 する 方 法 が 検 討 されてい る 事 実 横 浜 市 の 取 り 組 みでは 参 画 したマンション 管 理 会 社 によって エネルギー 管 理 システ ムを 活 用 してマンション 住 民 を 見 守 るという 安 全 安 心 提 供 サービス の 実 証 が 試 行 されている このような 付 帯 的 なサービスの 開 発 は とりもなおさずソフトインフラのスマート 化 である 本 稿 ではエネルギー 制 約 に 注 目 が 集 まっている 状 況 を 踏 まえてハードインフラのスマート 化 に 焦 点 をあ ててきたが 実 際 のところハードインフラのスマート 化 だけを 進 めるのは 現 実 的 ではなく ソフト インフラのスマート 化 も 合 わせて 開 発 するのが 不 可 欠 であることが 明 らかになってきたと 言 える 5.おわりに 世 界 的 な 人 口 増 大 や 経 済 成 長 を 通 じて 発 生 するエネルギー 制 約 人 口 の 高 齢 化 経 済 格 差 の 拡 大 などの 問 題 は 最 終 的 には 都 市 問 題 に 帰 着 する そこで わが 国 の 企 業 が 国 内 の 事 業 を 通 じて 完 成 度 の 高 いスマートシティ モデルを 完 成 させることができれば インフラをパッケージとして 海 外 展 開 していくために 必 要 な 国 際 競 争 力 を 確 立 できると 考 えられる このようなわが 国 の 成 長 戦 略 を 現 実 のものにするために 今 後 も 政 府 の 支 援 によって 国 内 でさらなるスマートシティの 実 証 を 進 めていくことは 重 要 である とりわけ 実 証 で 確 立 した 機 器 やシステムの 事 業 化 と 付 帯 的 な 新 しい サービスの 開 発 という 課 題 を 解 消 することは 喫 緊 の 課 題 である 厳 しい 財 政 制 約 のもとで 各 省 庁 が これまでスマートシティ 構 想 に 充 当 した 予 算 額 は 累 計 でもわずか 240 億 円 に 過 ぎないが 8 今 後 は 各 省 庁 の 資 源 の 統 合 を 図 り 効 率 的 かつ 集 中 的 にスピード 感 をもって これらの 課 題 解 消 に 向 けた 支 援 を 実 行 していくことが 肝 要 であろう (2013.4.25) 8 2012 年 度 までの 累 計 内 訳 は スマートコミュニティ 構 想 が 218 億 円 ( 次 世 代 エネルギー 社 会 システム 実 証 事 業 が 210 億 円 スマートコミュニティ 導 入 促 進 事 業 が 8 億 円 ) 環 境 未 来 都 市 構 想 が 22 億 円 10

コラム:HEMS とは HEMS とは Home Energy Management System の 略 であり 家 単 位 で 電 気 やガスなどのエ ネルギーを 効 率 的 に 管 理 するシステム のことである( 図 表 7) このシステムで 電 気 エネルギーについて 実 現 されることは 二 段 階 に 分 かれる 第 一 段 階 は エネ ルギー 量 の 可 視 化 である スマートメーターを 通 じて 個 々の 家 電 機 器 の 消 費 電 力 量 太 陽 光 発 電 や 燃 料 電 池 を 通 じた 発 電 量 充 電 器 やエコ 自 動 車 内 のバッテリーに 蓄 えられた 充 電 量 が 計 測 され 家 庭 内 の 専 用 モニターやテレビ 画 面 あるいは ホームゲートウェイを 通 じて 外 部 スマートフォンか らリアルタイムで 状 況 把 握 が 可 能 となる 第 二 段 階 は このリアルタイムでの 計 測 を 基 にした 電 力 の 最 適 自 動 制 御 である 例 えば 電 力 需 給 が 逼 迫 する 時 間 帯 時 には エアコンや 冷 蔵 庫 といった 消 費 電 力 の 大 きい 家 電 製 品 の 使 用 を 自 動 的 に 抑 制 したり バッテリーに 充 電 した 電 気 を 優 先 的 に 消 費 して 系 統 電 力 ネットワークからの 電 力 消 費 を 控 えるコントロールが 可 能 になる また 家 に 設 置 された 太 陽 光 発 電 によって 大 量 に 発 電 され た 場 合 には 発 電 した 電 気 を 系 統 電 力 へ 送 電 するのではなく 家 に 設 置 した 充 電 器 への 充 電 に 自 動 的 に 切 り 替 え 系 統 電 力 への 過 大 な 電 ( 図 表 7)HEMSを 配 した 住 宅 (スマートハウス)のイメージ 気 の 流 入 を 回 避 することでシステムの 安 定 化 を 図 る 機 能 も 想 定 されている 現 在 実 用 化 されている HEMS は 第 一 段 階 のエネルギー 量 の 可 視 化 であ る 2011 年 12 月 に HEMS で 使 用 さ れる 統 一 的 な 通 信 規 格 ECHONET Lite(エコーネットライト)が 定 めら れたことから 現 在 この 規 格 に 基 づき 自 動 制 御 が 可 能 な 家 電 製 品 (スマート 家 電 )が 各 種 開 発 されている そのた め 電 力 の 最 適 自 動 制 御 という 第 二 段 階 の HEMS も 近 い 将 来 に 実 現 される ( 資 料 )エコーネットコンソーシアム 見 込 みである 参 考 文 献 依 田 高 典 田 中 誠 伊 藤 公 一 朗 [2012]. 北 九 州 市 における 変 動 型 CPP 社 会 実 証 2012 年 度 夏 期 評 価 結 果 次 世 代 エネルギー 社 会 システムにおけるデマンド レスポンス 経 済 効 果 調 査 事 業 次 世 代 エネルギー 社 会 システム 協 議 会 [2011]. 次 世 代 エネルギー 社 会 システムの 構 築 に 向 けて - 実 証 から 見 えてきたもの- 食 と 農 林 漁 業 の 再 生 推 進 本 部 [2011]. 我 が 国 の 食 と 農 林 漁 業 の 再 生 のための 基 本 方 針 行 動 計 画 総 務 省 [2012]. ICT を 活 用 した 街 づくりとグローバル 展 開 に 関 する 懇 談 会 報 告 書 ~ ICT スマート タウン の 実 現 に 向 けて~ 日 経 BP クリーンテック 研 究 所 [2011]. 世 界 スマートシティ 総 覧 2012 エコーネットコンソーシアムホームページ http://www.echonet.gr.jp/) 環 境 省 ホームページ http://www.env.go.jp/ 11

環 境 未 来 都 市 構 想 ホームページ(http://futurecity.rro.go.jp/) 経 済 産 業 省 ホームページ(http://www.meti.go.jp/) ジャパン スマートシティ ポータルホームページ(http://jscp.nepc.or.jp/) 新 エネルギー 導 入 促 進 協 議 会 ホームページ(http://www.nepc.or.jp/) 総 務 省 ホームページ(http://www.soumu.go.jp/) 内 閣 府 ホームページ(http://www.cao.go.jp/) 農 林 水 産 省 ホームページ(http://www.maff.go.jp/) パナソニックホームページ(http://panasonic.co.jp/) 12