地 盤 工 学 会 平 成 28 年 熊 本 地 震 地 盤 災 害 調 査 団 液 状 化 班 報 告 ( 平 成 28 年 6 月 21 日 ) 平 成 28 年 熊 本 地 震 液 状 化 被 害 平 成 28 年 熊 本 地 震 による 熊 本 平 野 で 生 じた 液 状 化 とその 被 害 について(その2)( 速 報 ) 村 上 哲 ( 福 岡 大 学 ) 石 蔵 良 平 ( 九 州 大 学 ) ご 批 判 ご 指 摘 ご 意 見 あれば 村 上 (sato4murakami@fukuoka-u.ac.jp)までお 願 いします
調 査 日 と 調 査 エリア 平 成 28 年 4 月 22 日 嘉 島 町 犬 渕 上 島 鯰 熊 本 市 南 区 近 見 刈 草 熊 本 市 東 区 秋 津 平 成 28 年 4 月 24 日 阿 蘇 市 平 成 28 年 4 月 29 日 熊 本 市 南 区 近 見 刈 草 南 高 江 平 成 28 年 4 月 30 日 阿 蘇 市 平 成 28 年 5 月 1 日 熊 本 市 南 区 南 高 江 八 幡 川 尻 平 成 28 年 5 月 7 日 熊 本 市 南 区 土 河 原 砂 原 孫 代 熊 本 市 西 区 城 山 薬 師 城 山 半 田 中 島 沖 新 町 小 島 新 町 平 成 28 年 5 月 20 日 熊 本 市 西 区 松 尾 高 橋 町 上 代 花 園 上 熊 本 池 亀 町 熊 本 市 中 央 区 横 手 島 崎 熊 本 市 北 区 釜 尾 町 平 成 28 年 5 月 28 日 甲 佐 町 他 平 成 28 年 6 月 15 日 熊 本 市 南 区 学 科 鯨 油 弐 拾 町 御 船 町 平 成 28 年 6 月 17 日 熊 本 市 中 央 区 壺 川 熊 本 市 東 区 沼 山 津 益 城 町 広 崎 熊 本 市 南 区 富 合 町 杉 島 川 尻 6 丁 目 熊 本 市 南 区 富 合 町 小 岩 瀬 宇 土 市 直 築 切 所 赤 字 が 本 報 告 地 区
調 査 の 方 法 国 土 地 理 院 やGoogleが 提 供 している 被 災 後 の 空 中 写 真 から 噴 砂 の 痕 跡 や 地 表 面 の 変 化 を 判 読 現 地 調 査 により 確 認 し 被 害 状 況 を 調 査 その 他 先 行 調 査 情 報 を 参 考 国 土 地 理 院 提 供
調 査 報 告 地 区 壺 川 地 区 沼 山 津 地 区 富 合 川 尻 地 区 緑 川 河 口 地 区 富 合 莎 崎 地 区 富 合 小 岩 瀬 地 区 ( 地 理 院 タイル ( 標 準 地 図 )を 加 工 して 作 成 ) 現 地 調 査 による 噴 砂 建 物 傾 斜 沈 下 建 物 周 りの 沈 下 空 中 写 真 判 読 による 噴 砂 液 状 化 によるものかどうか 不 明 な 箇 所 も 含 みます
壺 川 地 区 ( 熊 本 市 中 央 区 壺 川 ) 調 査 日 :2016 年 6 月 15 日 2 1 空 中 写 真 (2016/4/16 撮 影 国 土 地 理 院 提 供 ) 旧 版 地 形 図 ( 大 正 15 年 測 量 ) 1 2 旧 版 地 形 図 には 国 土 地 理 院 発 行 の2 万 5 千 分 の1 地 形 図 ( 熊 本 8-1-1)を 使 用 しました 治 水 地 形 分 類 図 ( 国 土 地 理 院 提 供 ) 現 地 調 査 時 には 噴 砂 は 確 認 でき なかったものの 一 部 の 地 区 で 液 状 化 による 被 害 と 思 われる 建 物 周 りの 沈 下 が 確 認 された 1 は 旧 版 地 形 図 では 水 田 に 位 置 するが 治 水 地 形 分 類 図 では 旧 河 道 に 位 置 する
沼 山 津 地 区 ( 熊 本 市 東 区 沼 山 津 益 城 町 広 崎 ) 調 査 日 :2016 年 6 月 17 日 1 4 3 2 1 2 地 盤 変 状 による 宅 地 や 構 造 物 の 被 害 が 顕 著 な 地 区 である 大 きな 被 害 は 本 震 で 生 じたとのことである 噴 砂 は 確 認 できなかったが 被 害 の 状 況 も 液 状 化 によるものと 共 通 点 が 多 く 3 のように 貯 水 槽 の 浮 き 上 がりも 生 じて いる(Google Street Viewで 確 認 済 み) 被 害 の 多 くは 水 路 の 護 岸 の 倒 壊 や 腹 みだしにより 生 じているものが 多 い ( 地 理 院 タイル ( 標 準 地 図 )を 加 工 して 作 成 ) 3 4
沼 山 津 地 区 ( 熊 本 市 東 区 沼 山 津 益 城 町 広 崎 ) 調 査 日 :2016 年 6 月 17 日 空 中 写 真 (2016/4/16 撮 影 国 土 地 理 院 提 供 ) 治 水 地 形 分 類 図 ( 国 土 地 理 院 提 供 ) 旧 版 地 形 図 ( 大 正 15 年 測 量 ) 現 地 調 査 による 被 害 地 点 や 空 中 写 真 による 噴 砂 判 読 地 点 は 旧 版 地 形 図 および 治 水 地 形 分 類 図 と 重 ね 合 わせると その 多 くが 旧 河 道 部 に 位 置 することが 分 かる また 旧 版 地 形 図 で は この 地 区 は 湿 田 であったことが 分 かる 彎 曲 した 旧 河 道 がある 湿 田 を 埋 め 立 て 造 成 した 宅 地 であると 思 われる 当 該 地 区 は 湧 水 も 豊 富 であるが 地 下 30mに 挿 入 した 管 より 自 噴 してい るとのことなので 直 接 的 には 湧 水 が 液 状 化 に 与 えた 影 響 は 小 さいものと 思 われるが 帯 水 層 構 造 も 含 め 地 盤 調 査 が 必 要 である 旧 版 地 形 図 には 国 土 地 理 院 発 行 の2 万 5 千 分 の1 地 形 図 ( 木 山 4-3-1)を 使 用 しました
富 合 川 尻 地 区 ( 熊 本 市 南 区 富 合 町 杉 島 川 尻 6 丁 目 ) 1 2 調 査 日 :2016 年 6 月 17 日 1 2 3 6 4 5 3 4 ( 地 理 院 タイル ( 標 準 地 図 )を 加 工 して 作 成 ) 富 合 町 杉 島 と 川 尻 の 境 界 に 位 置 する 水 路 ( 洪 水 調 整 池?)の 両 岸 において 噴 砂 が 確 認 された 護 岸 の 変 位 による 側 方 流 動 やすべ り 破 壊 それに 起 因 したインフラ や 建 物 の 被 害 が 生 じている 5 6
富 合 川 尻 地 区 ( 熊 本 市 南 区 富 合 町 杉 島 川 尻 6 丁 目 ) 調 査 日 :2016 年 6 月 17 日 空 中 写 真 (2016/4/16 撮 影 国 土 地 理 院 提 供 ) 旧 版 地 形 図 ( 大 正 15 年 測 量 ) 治 水 地 形 分 類 図 ( 国 土 地 理 院 提 供 ) 旧 版 地 形 図 および 治 水 地 形 分 類 図 と 重 ね 合 わせると 現 地 調 査 による 被 害 地 点 や 空 中 写 真 による 噴 砂 判 読 地 点 は 一 部 は 自 然 堤 防 に 存 在 するものの 大 部 分 は 旧 河 道 部 で ある このことから 旧 河 道 部 を 埋 め 立 てた 地 盤 で 被 害 が 生 じたと 思 われる 前 ページで 示 した 噴 砂 の 色 が 灰 色 だけでなく 黄 土 色 もあり 埋 め 立 て 土 も 単 一 でない 可 能 性 があ る 詳 細 な 地 盤 調 査 が 必 要 であると 思 われる 旧 版 地 形 図 には 国 土 地 理 院 発 行 の2 万 5 千 分 の1 地 形 図 ( 宇 土 8-2-1)を 使 用 しました
富 合 小 岩 瀬 地 区 ( 熊 本 市 南 区 富 合 町 小 岩 瀬 ) 調 査 日 :2016 年 6 月 17 日 1 1 3 4 2 2 ( 地 理 院 タイル ( 標 準 地 図 )を 加 工 して 作 成 ) 空 中 写 真 による 噴 砂 は 広 範 囲 で 生 じている 地 域 である 現 地 にて も 噴 砂 が 確 認 されるものの 広 範 囲 であるにも 関 わらず 液 状 化 に よる 大 きな 被 害 は 確 認 されなかっ た 3 4
富 合 小 岩 瀬 地 区 ( 熊 本 市 南 区 富 合 町 小 岩 瀬 ) 調 査 日 :2016 年 6 月 17 日 空 中 写 真 (2016/4/16 撮 影 国 土 地 理 院 提 供 ) 治 水 地 形 分 類 図 ( 国 土 地 理 院 提 供 ) 旧 版 地 形 図 ( 大 正 15 年 測 量 ) 旧 版 地 形 図 および 治 水 地 形 分 類 図 と 重 ね 合 わせると 現 地 調 査 による 被 害 地 点 や 空 中 写 真 による 噴 砂 判 読 地 点 は 氾 濫 平 野 旧 河 道 自 然 堤 防 様 々である 被 害 地 点 の 多 く は 旧 河 道 部 とその 近 傍 に 集 中 している 特 徴 がある なお 旧 版 地 形 図 からは 旧 河 道 部 と は 判 断 できないが 多 くは 水 田 だったことが 分 かる 当 該 地 域 は 軟 弱 地 盤 でもあり 建 物 構 築 においては 何 らかの 地 盤 対 策 を 行 って いる 可 能 性 があり それが 液 状 化 に 対 しても 効 果 があった 可 能 性 がある 旧 版 地 形 図 には 国 土 地 理 院 発 行 の2 万 5 千 分 の1 地 形 図 ( 宇 土 8-2-1)を 使 用 しました
富 合 莎 崎 地 区 ( 熊 本 市 南 区 富 合 町 莎 崎 ) 調 査 日 :2016 年 6 月 17 日 1 1 2 2 ( 地 理 院 タイル ( 標 準 地 図 )を 加 工 して 作 成 ) 空 中 写 真 による 噴 砂 は 広 範 囲 で 生 じている 地 域 である 現 地 にても 噴 砂 が 確 認 されるも のの 液 状 化 による 大 きな 被 害 は 確 認 されなかった
富 合 莎 崎 地 区 ( 熊 本 市 南 区 富 合 町 莎 崎 ) 調 査 日 :2016 年 6 月 17 日 空 中 写 真 (2016/4/16 撮 影 国 土 地 理 院 提 供 ) 治 水 地 形 分 類 図 ( 国 土 地 理 院 提 供 ) 旧 版 地 形 図 ( 大 正 15 年 測 量 ) 旧 版 地 形 図 および 治 水 地 形 分 類 図 と 重 ね 合 わせると 現 地 調 査 による 被 害 地 点 や 空 中 写 真 による 噴 砂 判 読 地 点 は 氾 濫 平 野 旧 河 道 自 然 堤 防 様 々である 現 地 における 確 認 地 点 は 水 路 跡 のようでもあるが この 縮 尺 の 地 図 でははっきりとは 確 認 できない 当 該 地 域 は 軟 弱 地 盤 でもあり 建 物 構 築 にお いては 何 らかの 地 盤 対 策 を 行 っている 可 能 性 があり それが 液 状 化 に 対 しても 効 果 が あった 可 能 性 も 考 えられる 旧 版 地 形 図 には 国 土 地 理 院 発 行 の2 万 5 千 分 の1 地 形 図 ( 宇 土 8-2-1)を 使 用 しました
緑 川 河 口 地 区 ( 熊 本 市 南 区 学 科 宇 土 市 直 築 切 所 ) 1 2 2 1 3 調 査 日 :2016 年 6 月 15,17 日 4 3 4 ( 地 理 院 タイル ( 標 準 地 図 )を 加 工 して 作 成 ) 緑 川 河 口 部 においては 顕 著 な 液 状 化 被 害 は 確 認 されなかったももの 熊 本 市 南 区 学 科 1と 宇 土 市 直 築 4では 噴 砂 が 確 認 された 地 域 の 住 民 の 話 では 本 震 で 液 状 化 したとの ことである 空 中 写 真 では 多 数 の 液 状 化 の 痕 跡 が 確 認 できたが 現 在 は 耕 作 されその 跡 は 残 っていないものの 噴 砂 跡 が 判 読 できたエリアでは 沈 下 が 生 じていた(2) また 水 門 付 近 の 護 岸 も 亀 裂 が 生 じたり 護 岸 の 裏 込 め 土 が 圧 縮 沈 下 していることが 確 認 され た(3)
緑 川 河 口 地 区 ( 熊 本 市 南 区 学 科 宇 土 市 直 築 切 所 ) 調 査 日 :2016 年 6 月 15,17 日 ( 地 理 院 タイル ( 標 準 地 図 )を 加 工 して 作 成 ) ( 地 理 院 タイル (オルソ 画 像 )を 加 工 して 作 成 ) ( 地 理 院 タイル ( 土 地 条 件 図 )を 加 工 して 作 成 ) この 地 域 の 大 部 分 が 干 拓 地 である 空 中 写 真 による 液 状 化 噴 砂 の 判 読 エリアは 広 範 囲 に 及 んでいるものの 宅 地 の 被 害 はあまり 見 られない これは 地 盤 がもともと 軟 弱 な 地 盤 であり 建 物 構 築 においては 何 らかの 地 盤 対 策 を 行 っている 可 能 性 がある この 対 策 が 液 状 化 に 対 しても 効 果 があった 可 能 性 も 考 えられる しかしながら 広 範 囲 にて 沈 下 が 生 じていることが 考 えられるため 対 象 地 域 の 地 盤 高 の 変 化 も 今 後 監 視 する 必 要 がある
まとめ 現 地 調 査 のまとめ 旧 河 道 部 における 液 状 化 が 多 く とりわけ 沼 山 津 地 区 富 合 川 尻 地 区 では 地 盤 変 状 を 伴 った 被 害 が 顕 著 であった 沼 山 津 地 区 では 液 状 化 による 噴 砂 は 確 認 できなかったものの 液 状 化 により 生 じる 被 害 と 同 様 な 傾 向 を 示 している しかし 湿 田 の 埋 め 立 て 地 盤 であるため 軟 弱 な 粘 性 土 層 の 影 響 も 考 える 必 要 があると 思 われる 沼 山 津 地 区 富 合 川 尻 地 区 で 被 害 が 大 きい 場 所 は 水 路 などとの 境 界 部 分 であり 壁 体 構 造 物 の 損 壊 や 変 位 による 裏 込 め 地 盤 の 変 状 を 伴 っているところに 特 徴 がある 干 拓 地 の 緑 川 河 口 地 区 では 広 範 囲 で 噴 砂 が 空 中 写 真 から 判 読 されたにも 関 わらず 住 宅 等 の 被 害 は 比 較 的 小 さいようである( 建 物 の 傾 斜 や 内 部 の 状 況 は 不 明 であるので あくまで 外 観 での 判 断 ) これは 元 来 地 盤 が 悪 いといわれる 場 所 でもあり 内 陸 地 と 異 なり 建 物 建 設 時 に 何 らかの 地 盤 対 策 を 講 じた 結 果 それが 液 状 化 被 害 を 低 減 させたためである 可 能 性 もある 東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 により 液 状 化 被 害 を 生 じた 茨 城 県 ひたちなか 市 田 中 後 地 区 では 軟 弱 地 盤 対 策 として 杭 や 柱 状 改 良 などを 行 った 宅 地 では 液 状 化 被 害 を 免 れたことがある 液 状 化 層 が 比 較 的 浅 い 場 合 には 有 効 な 方 法 であったと 思 われる 住 宅 や 道 路 など 液 状 化 による 被 害 が 認 められない 地 域 であったとしても 地 震 動 による 地 盤 の 沈 下 が 生 じ ている 可 能 性 がある 目 に 見 えない 潜 在 的 な 被 害 も 隠 れている 可 能 性 があり 地 表 面 の 沈 下 観 測 の 実 施 が 望 まれる 今 回 の 調 査 報 告 地 域 は 本 震 での 被 害 が 大 半 であった また 前 震 で 小 さな 被 害 が 本 震 で 拡 大 したという ケースもあった 地 震 動 が 複 数 回 短 期 間 で 作 用 したことによる 影 響 を 検 討 する 必 要 があると 思 われる 今 後 の 対 策 に 向 けて 地 盤 変 状 が 原 因 である 被 災 地 域 においては 詳 細 な 地 盤 調 査 の 上 で 地 域 の 地 盤 特 性 を 明 らかにし 有 効 な 対 策 を 検 討 する 必 要 がある 地 表 面 の 沈 下 が 広 域 で 生 じている 可 能 性 もあるため その 状 況 を 把 握 するための 地 盤 沈 下 の 観 測 が 必 要 と 思 われる 砂 質 土 層 は 地 震 直 後 にその 変 状 は 終 了 するが 粘 性 土 は 時 間 経 過 を 伴 って 生 じる したがって 定 期 的 な 観 測 により 沈 下 傾 向 をつかみ これから 生 じる 沈 下 を 予 測 しておくことも 重 要 である