アイオワ ニューハンプ サウスカロライナ ネバダ アラバマ アラスカ アーカンソー ジョージア マサチューセッツ ミネソタ オクラホマ テネシー テキサス バーモント バージニア カンサス ケンタッキー ルイジアナ メイン プエルトリコ ハワイ アイダホ ミシガン ミシシッピ ワシントンDC ワイオミング フロリダ イリノイ ミズーリ ノースカロライナ 北 マリアナ オハイオ アリゾナ ユタ ウィスコンシン コロラド ニューヨーク アイオワ ニューハンプ ネバダ サウスカロライナ アラバマ アーカンソー コロラド ジョージア マサチューセッツ ミネソタ オクラホマ ネテシー テキサス バーモント バージニア サモア 海 外 カンサス ルイジアナ ネブラスカ メイン ミシガン ミシシッピ 北 マリアナ フロリダ イリノイ ミズーリ ノースカロライナ オハイオ アリゾナ アイダホ ユタ アラスカ ハワイ ワシントン ウィスコンシン ワイオミング ニューヨーク Apr 22, 216 No.216-18 Economic Monitor 上 席 研 究 員 鈴 木 裕 明 3-3497-3656 suzuki-hi@itochu.co.jp 米 国 大 統 領 選 UPDATE: 異 端 候 補 躍 進 が 示 す 米 国 の 苦 悩 と 変 容 大 統 領 選 挙 戦 において 異 端 候 補 であるトランプ/サンダース 旋 風 が 止 まない その 背 景 には 1 所 得 格 差 拡 大 と 中 間 層 以 下 の 実 質 所 得 減 少 2マイホーム 取 得 の 困 難 化 3 大 学 進 学 の 費 用 高 騰 など 一 般 的 な 米 国 庶 民 が 拠 り 所 と 夢 を 失 い 希 望 を 奪 われつつある 現 状 がある 両 異 端 候 補 は そうした 米 国 民 の 不 満 と 不 安 の 受 け 皿 となり 大 胆 な 政 策 を 提 示 して 人 気 を 集 め ている こうした 政 策 を 実 際 に 進 めるに 当 たっては 議 会 の 承 認 も 必 要 となるため 実 現 性 は 乏 しいが 貿 易 投 資 の 自 由 化 に 関 しては 滞 留 する 可 能 性 もある トランプ/サンダース 旋 風 止 まず 候 補 者 としては 異 端 とみられていたトランプ サンダース 両 候 補 の 健 闘 が 続 いている 4 月 19 日 のニ ューヨーク 州 共 和 党 予 備 選 において トランプ 候 補 は 得 票 率 6.4%で 首 位 となり 95 人 中 89 人 の 代 議 員 を 獲 得 した 累 計 でも 獲 得 代 議 員 数 は 845 人 となり 依 然 として 首 位 を 堅 持 7 月 の 党 大 会 までの 過 半 数 確 保 の 可 能 性 を 残 している 他 方 サンダース 候 補 も 同 日 のニューヨーク 州 民 主 党 予 備 選 において クリントン 候 補 (58.%)には 敗 れたものの 42.%の 票 を 得 て 291 人 中 16 人 の 代 議 員 を 獲 得 した 累 計 でも 予 備 選 挙 結 果 に 対 応 す る 一 般 代 議 員 数 では クリントン 1,446 人 に 対 してサンダース 1,2 人 となっている(ニューヨークタイ ムズ 紙 推 計 日 本 時 間 4 月 22 日 時 点 ) サンダースが そもそも 民 主 党 所 属 ですらない 自 称 民 主 社 会 主 義 者 であることを 考 慮 すれば 大 健 闘 といえるだろう 共 和 党 候 補 者 の 獲 得 代 議 員 数 推 移 ( 累 計 ) 民 主 党 候 補 者 の 獲 得 代 議 員 数 推 移 ( 累 計 ) 9 8 7 6 5 4 3 2 トランプ クルーズ ケーシック スーパーチューズデー (3 月 1 日 ) ミニ スーパー チューズデー (3 月 15 日 ) 15 12 9 6 3 クリントン サンダース スーパーチューズデー (3 月 1 日 ) ミニ スーパー チューズデー (3 月 15 日 ) 1 ( 出 所 )ニューヨークタイムズ 推 計 より 作 成 ( 出 所 )ニューヨークタイムズ 推 計 より 作 成 この 先 の 予 備 選 挙 を 見 通 すと サンダースについては 予 備 選 の 結 果 に 拘 束 されない 特 別 代 議 員 の 大 多 数 をクリントンが 押 さえているために 最 終 的 に 民 主 党 候 補 となる 見 込 みはほとんどないが トランプに ついては 共 和 党 候 補 となる 可 能 性 を 十 分 に 残 している トランプが 党 大 会 までに 代 議 員 数 の 過 半 数 を 取 れていなかったとしても 獲 得 数 首 位 で 大 会 に 臨 むことになるのは 間 違 いない 民 主 共 和 双 方 におい て アウトサイダー 候 補 がここまで 旋 風 を 巻 き 起 こすというのは 過 去 にはみられない 現 象 であり ト ランプのメディア 利 用 の 上 手 さ といった 俗 人 的 技 術 的 な 理 由 だけで 説 明 できるものではない 今 回 の 状 況 は まさに 米 国 民 が 抱 える 問 題 を 一 向 に 解 決 できない 既 存 のワシントン 政 治 への 不 信 を 示 すもの 本 資 料 は 情 報 提 供 を 目 的 として 作 成 されたものであり 投 資 勧 誘 を 目 的 としたものではありません 作 成 時 点 で 伊 藤 忠 経 済 研 究 所 が 信 頼 できると 判 断 した 情 報 に 基 づき 作 成 しておりますが その 正 確 性 完 全 性 に 対 する 責 任 は 負 いません 見 通 しは 予 告 なく 変 更 されることがあります 記 載 内 容 は 伊 藤 忠 商 事 ないしはその 関 連 会 社 の 投 資 方 針 と 整 合 的 であるとは 限 りません
と 言 えるであろう 実 際 米 国 民 の 議 会 支 持 率 は 低 迷 しており 世 論 調 査 (Gallup 4 月 )ではわずか 17% となっている 異 端 候 補 躍 進 を 可 能 にした 米 国 民 の 不 満 と 不 安 それでは 現 在 米 国 民 が 抱 える 問 題 とは 何 か それは 将 来 への 閉 塞 感 ややエモーショナルな 言 葉 を 遣 えば 拠 り 所 や 夢 の 喪 失 がいよいよ 明 らかになってきたことではないかと 考 えられる 具 体 的 に 言 うと まず マイホームを 持 つことが 急 速 に 困 難 になってきている 直 近 215 年 1~12 月 期 の 持 ち 家 率 は 63.7%であり これは 過 去 196 年 代 まで 遡 っても 最 低 水 準 となる サブプライムローンによって 24 年 に 69%を 超 えたのはバブルであったとしても 212 年 の 大 統 領 選 時 に 65%まで 下 がった 持 ち 家 率 は その 後 も 低 下 を 続 け 底 打 ちしたのはようやく 215 年 になってからである マイホームは 米 国 人 を 地 域 にし っかりと 繋 ぎ 留 めて 生 活 の 安 定 を 印 象 付 ける 役 割 を 果 持 家 率 の 推 移 (%) 7 69 68 67 66 65 64 63 62 61 6 198 85 9 95 2 5 1 15 ( 出 所 ) 米 国 商 務 省 たしてきた しかし 今 や 若 年 層 を 中 心 として 多 くの 米 国 民 が こうした 拠 り 所 を 持 てなくなって きている 持 家 率 低 下 の 要 因 としては 1 所 得 が 伸 びていないこと 2サブプライムローンの 焦 げ 付 きに 懲 りた 金 融 機 関 が 融 資 態 度 をなかなか 緩 めようとしないこと 3 学 生 ローン 負 担 等 の 問 題 がある 右 図 は 1999 年 を 1 として 実 質 世 帯 所 得 の 推 移 を 見 たものだが 2 世 紀 には 格 差 が 拡 大 はしても 所 得 上 位 でも 下 位 でも 短 期 的 にはアップダウンはありながらも 長 い 目 で 見 れば 所 得 は 皆 増 加 していた ところが 21 世 紀 に 入 ってからはこの 構 図 が 崩 れてくる 1999 年 との 比 較 で 所 得 上 位 5%ではほぼ 横 這 いであるのに 対 して 中 間 値 では 1% 弱 下 位 2%では 1% 強 賃 金 が 減 少 している つまり 格 差 拡 大 と 中 間 層 以 下 の 実 質 所 得 下 落 が 同 時 に 発 生 しているのである この 傾 向 は リーマ ンショック 以 降 顕 著 になる 実 質 世 帯 所 得 の 推 移 (1999 年 =1) 11 中 間 値 1 上 位 5% 下 位 2% 9 8 7 6 198 85 9 95 2 5 1 ( 出 所 ) 米 国 商 務 省 米 国 は 先 進 諸 国 の 中 ではもともと 所 得 格 差 が 大 きく しかも 格 差 は 拡 大 してきていたが そうした 中 で も 近 年 Occupy Wall Street 運 動 のように 格 差 問 題 が 特 に 大 きくクローズアップされるようにな ってきている 格 差 拡 大 だけではなく 中 間 層 以 下 の 実 質 所 得 が 減 少 しているという 事 実 こそが その 大 きな 要 因 ではないかと 考 えられる この 問 題 は そのまま 都 市 間 での 所 得 格 差 にも 当 てはまる ニューヨークのように 所 得 が 高 い 市 民 を 多 く 擁 する 都 市 では 所 得 水 準 の 回 復 が 総 じて 早 く その 一 方 で 荒 廃 して 低 所 得 者 が 多 い 地 方 都 市 では 所 得 水 準 は 停 滞 することになる 所 得 格 差 問 題 は 都 市 ( 地 域 ) 格 差 問 題 でもある 2
このように 所 得 が 伸 びずに 今 はマイホームが 買 えないとしても 将 来 に 期 待 が 持 てれば 希 望 はある しかし 米 国 では この 点 も 危 うくなってきている 日 本 以 上 に 学 歴 社 会 の 面 がある 米 国 において 一 代 で 成 り 上 がり アメリカン ドリーム を 実 現 する 突 破 口 となるはずの 大 学 進 学 が 困 難 かつ 割 の 合 わな いものになってきているのである 大 学 の 学 費 の 上 昇 具 合 を 消 費 者 物 価 指 数 ( 大 学 費 用 ) の 推 移 でみると 過 去 1 年 で 1.6 倍 に 上 昇 しており 私 立 大 では 学 費 に 3 万 ドル 寮 費 に 1 万 ドルを 用 意 する 必 要 がある これに 対 して 214 年 の 世 帯 所 得 ( 中 間 値 ) は 54, ドル 程 度 であり この 収 入 では 高 騰 した 学 費 を 賄 えるはずもない したがって 多 くの 学 生 は 学 生 ロ ーンに 頼 ることになり その 結 果 学 生 ローン 残 高 は 1 年 で 2.7 倍 214 年 の 卒 業 生 の 7 割 が 学 生 ローンを 抱 え その 平 均 残 高 は 29, ドルに 達 する さらには これだけの 負 担 を 背 負 い 大 学 を 卒 業 しても 近 年 雇 用 学 生 ローン 残 高 (1 億 ドル) 大 学 学 費 (26/3=1) 推 移 14 175 26 27 28 29 21 211 212 213 214 215 ( 出 所 )FRB 米 国 労 働 省 が 増 加 する 主 な 職 種 は 比 較 的 低 賃 金 の 外 食 小 売 派 遣 などとなっている これでは 就 職 しても 学 生 ロ ーンの 返 済 はままならず まして さらに 借 金 を 重 ねてマイホームを 購 入 することなど 到 底 不 可 能 とい うことになる リーマンショック 後 米 国 経 済 はマクロでみれば 概 ね 2% 台 の 経 済 成 長 が 続 き 失 業 率 も 212 年 の 約 8% が 足 下 では 5% 程 度 にまで 低 下 した しかし その 一 方 で 学 生 ローン 負 担 に 喘 ぎ マイホームの 夢 も 遠 のきという 不 満 と 不 安 で 一 杯 になった 自 らの 状 況 を 振 り 返 れば 現 状 の 延 長 線 上 にある 政 権 が 出 来 たとし ても 自 分 の 状 況 が 改 善 されることなどないと 考 えるようになったとしても 不 思 議 ではない そこに サンダースが 現 れ 公 立 大 学 の 学 費 無 償 化 という 大 胆 な 公 約 をする また トランプは 海 外 に 駐 留 している 米 軍 の 経 費 をもっと 同 盟 国 に 出 させる あるいは 撤 収 して 国 の 資 金 は 不 振 に 陥 った 地 方 都 市 に 回 すと 主 張 する こうした 異 端 候 補 の 大 胆 な 施 策 は 多 くの 米 国 民 には 魅 力 的 に 映 る もちろん 事 態 はそんなに 簡 単 ではない 学 費 無 償 化 などサンダースの 約 束 する 大 盤 振 る 舞 いには そ の 財 源 として 大 増 税 が 必 要 となり 経 済 を 下 押 しすることになる より 一 般 的 に 言 えば 格 差 縮 小 のため には 所 得 再 分 配 の 調 整 を 進 めつつ 経 済 成 長 への 悪 影 響 を 防 ぎ むしろ 成 長 を 加 速 して 全 体 のパイを 増 や していくことが 必 要 となるが 実 現 するのは 極 めて 難 しい また トランプの 言 うように 米 軍 が 世 界 から 撤 収 した 場 合 には 安 全 保 障 に 関 する 直 接 的 なマイナス 以 外 にも 自 由 経 済 と 民 主 主 義 法 治 主 義 さら には 海 上 輸 送 上 の 安 全 確 保 といった 世 界 経 済 の 暗 黙 のインフラを 危 うくするリスクを 冒 すことになる しかし 米 国 民 一 人 一 人 にとっては そうした 自 分 からは 遠 い 世 界 の 出 来 事 よりも 身 近 な 明 日 を 良 くしてくれる 候 補 の 方 がありがたい こうしてみると 両 異 端 候 補 の 躍 進 は 自 然 な 流 れである とすら 思 えてくる しかも 技 術 進 歩 などが 進 むと 高 度 な 知 識 や 技 術 を 持 つ 一 部 の 人 材 への 需 要 が 高 まるために そうした 人 材 の 賃 金 が 中 間 層 以 下 と 比 べて 上 昇 所 得 格 差 はますます 拡 大 する 可 能 性 が 高 い また 相 対 的 に 成 長 率 の 高 い 新 興 国 経 済 が 伸 びていけば 世 界 全 体 に 占 める 米 国 の 経 済 政 治 面 でのプレゼンスは 低 下 が 不 可 12 1 8 6 4 2 学 生 ローン 15 学 費 ( 右 軸 ) 125 1 75 5 25 3
避 となり 海 外 に 米 軍 を 駐 留 させる 費 用 など 出 したくないという 論 調 が 強 まることが 考 えられる こうし た 不 可 逆 的 な 変 化 は 政 権 がよほど 上 手 く 対 応 しない 限 りは 今 後 も 米 国 民 の 不 満 と 不 安 を 蓄 積 させ 米 国 を 内 向 きにする 要 因 であり 続 ける トランプの 政 策 は 実 現 可 能 性 が 鍵 クリントンはオバマ 現 政 権 の 延 長 それでは もしトランプが 大 統 領 になった 場 合 新 政 権 ではどのような 政 策 が 予 想 されるのか 既 存 の やり 方 を 否 定 して 打 ち 出 す 大 胆 な 諸 政 策 は いずれも その 実 現 可 能 性 が 鍵 となる 米 国 では 当 然 ながら 重 要 な 施 策 を 進 めるためには 予 算 措 置 立 法 措 置 が 必 要 となるため トランプ 新 大 統 領 は 議 会 の 承 認 を 得 なくてはならない 大 統 領 選 挙 と 同 時 に 連 邦 上 院 ( 改 選 は3 分 の1) 下 院 ( 全 議 席 改 選 ) 選 挙 が 実 施 されるが 上 院 では 多 数 派 が 共 和 党 から 民 主 党 に 逆 転 する 可 能 性 があるものの 下 院 は 引 き 続 き 共 和 党 が 多 数 を 占 めることがほぼ 確 実 とみられる つまり 新 大 統 領 は 重 要 施 策 推 進 にあたっては 必 ず 共 和 党 を 納 得 させる 必 要 がある トランプの 経 済 政 策 は 富 裕 層 にも 貧 困 層 にも 企 業 にも 万 遍 なく 優 しい 大 減 税 が 中 心 である 富 裕 層 の 最 高 税 率 は 現 行 の 39.6%から 25.%に 引 き 下 げられ 減 税 によって 所 得 税 を 支 払 う 必 要 のない 家 計 の 割 合 は 5%に 達 し 法 人 税 は 35%から 15%に 下 がり 相 続 税 は 廃 止 される 減 税 規 模 は 1 年 で 1 兆 ド ルとの 試 算 もあり 仮 に 歳 出 削 減 や 景 気 拡 大 等 による 税 収 の 自 然 増 などがなければ 財 政 赤 字 はリーマン ショック 時 と 匹 敵 する GDP 比 8~9% 程 度 にまで 拡 大 する 恐 れがある これに 対 して 歳 出 面 では 教 育 省 などいくつかの 政 府 機 関 の 廃 止 など 削 減 策 も 唱 えるが 他 方 におい て 荒 廃 した 地 方 都 市 へのインフラ 整 備 雇 用 創 出 に 注 力 するとしている また 医 療 に 関 しても オバ マケア 方 式 は 否 定 するものの 全 国 民 が 必 要 な 医 療 に 手 が 届 くようにすると 述 べる 国 家 がこれだけ 経 済 に 関 与 する 大 きな 政 府 系 の 政 策 は 共 和 党 よりはむしろ 民 主 党 に 近 く その 結 果 大 幅 な 赤 字 予 算 と なれば 共 和 党 が 多 数 を 占 める 議 会 は 到 底 通 らない このままでは トランプの 政 策 が 実 現 する 可 能 性 は ない 外 交 政 策 も 同 様 である トランプは 大 統 領 になれば 米 軍 を 駐 留 させている 同 盟 国 に 対 して 経 費 負 担 増 額 を 強 く 求 めると 述 べているが 米 軍 撤 収 を 辞 さないというラジカルな 内 向 き 主 義 に 対 しては 共 和 党 の 中 道 からネオコン 保 守 まで 多 くの 識 者 キーパーソンが 強 い 反 対 意 見 を 表 明 している そうした 中 で トランプの 基 地 再 編 案 が 連 邦 議 会 を 通 ることは 不 可 能 であろう また メキシコとの 国 境 にメキシコ 政 府 の 負 担 で 壁 を 作 るなどといった 主 張 も 現 実 的 ではない トランプが 自 身 の 政 策 をごり 押 ししようとすれば 議 会 とは 深 刻 な 対 立 に 陥 る トランプの 政 策 が 大 胆 かつ 非 現 実 的 である 分 議 会 との 対 立 は オバマ 政 権 時 をはるかに 上 回 るものとなろう そうなれば ト ランプはメディアを 利 用 して 議 会 を 悪 者 にしようとするだろうが それで 議 会 を 通 せるだろうか トラン プ 色 は 残 しながらも 落 としどころは 常 識 の 通 用 する 範 囲 内 になるとみるのが 妥 当 であろう その 範 囲 で 財 政 は 拡 張 的 外 交 は 内 向 きを 強 めることが 予 想 される これに 対 して 民 主 党 候 補 についてはサンダースとなる 見 込 みが 小 さいため クリントンが 大 統 領 になっ た 場 合 を 考 えてみると 原 則 として オバマ 政 権 の 政 策 の 継 承 となる 経 済 政 策 では 選 挙 公 約 として バフェット ルール( 富 裕 層 に 最 低 実 効 税 率 を 設 定 ) 導 入 など 富 裕 層 に 対 する 増 税 法 人 に 対 しては 4
国 際 的 な 租 税 回 避 の 阻 止 歳 出 については インフラ 投 資 や 科 学 技 術 投 資 を 拡 大 し オバマケアも 強 化 拡 大 するとしている これらの 政 策 の 多 くは オバマも 実 施 したいと 考 えてはいたものの 共 和 党 議 会 の 反 対 があって 実 現 し なかったものである したがって クリントン 政 権 になったとしても 議 会 が 共 和 党 であれば 引 き 続 き 議 会 の 反 対 を 受 け 実 現 に 苦 労 することは 容 易 に 予 想 される ただし 議 会 との 交 渉 に 関 しては オバマ よりもクリントンの 方 が 熱 心 かつ 巧 みではないかと 指 摘 する 声 は 多 い また 議 会 側 も 下 院 のポール ラ イアン 議 長 は 前 任 のベイナー 議 長 よりも 共 和 党 内 の 取 り 纏 めをスムーズにこなしていることから オバマ 時 代 ほどには 決 められない 議 会 にはならないのではないか と 期 待 される クリントン 大 統 領 でも 貿 易 投 資 自 由 化 は 滞 留 の 可 能 性 そうした 中 で トランプ クリントン さらには 議 会 の 民 主 党 共 和 党 が 比 較 的 合 意 しやすい 分 野 が 通 商 政 策 であろう その 合 意 内 容 とは 残 念 ながら 反 自 由 貿 易 主 義 である 最 も 激 しい 政 策 を 唱 えるのはトランプであり NAFTA を 災 厄 (disaster) と 表 現 し TPP も 極 めて 激 しく 批 判 為 替 操 作 を 通 じて 米 国 経 済 を 壊 し 雇 用 を 奪 う 中 国 や 日 本 に 責 任 を 取 らせる 法 案 を 通 すべきであるとして WTO 規 定 などお 構 いなしに 中 国 に 45%の 報 復 関 税 を 課 するとも 発 言 している 国 務 長 官 時 代 には TPP を 推 進 していたクリントンも 今 回 の 選 挙 戦 では TPP の 為 替 操 作 防 止 に 関 す る 内 容 が 不 足 であり また 原 産 地 規 則 も 甘 すぎるとして TPP は 水 準 には 達 しないものと 反 対 また NAFTA は 再 交 渉 が 必 要 であり その 他 既 存 の FTA を 再 検 証 するとしている さらには 日 本 や 中 国 は 為 替 操 作 国 であり 米 国 の 雇 用 を 奪 うと 非 難 し 報 復 関 税 等 の 対 抗 措 置 を 主 張 する 保 護 貿 易 を 主 張 するト ランプやサンダースの 人 気 に 流 されるように クリントンもまた 保 護 主 義 に 傾 いている 議 会 についても 民 主 党 では 保 護 主 義 を 唱 える 左 派 議 員 が 増 えて 来 ており TPA 法 案 においても 大 半 の 民 主 党 議 員 が 反 対 して TPP 交 渉 の 足 を 引 っ 張 った また 共 和 党 でも 主 流 派 は 自 由 貿 易 推 進 派 では あるが 右 派 の 一 部 には 保 護 主 義 に 共 鳴 する 議 員 を 抱 える 大 統 領 が 保 護 主 義 に 走 った 時 議 会 がそれ を 押 し 止 める 役 割 を 果 たせるかどうかは かなり 危 うい ただし 大 統 領 選 挙 戦 時 の 発 言 が そのまま 就 任 後 の 実 際 の 政 策 に 直 結 するわけではない 28 年 の 大 統 領 選 挙 予 備 選 においては オバマとクリントンが 激 しく 争 ったが その 際 にも 両 候 補 は 自 分 がいか に 海 外 の 不 公 正 な 貿 易 に 対 して 厳 しく 対 処 するかを 競 い ともに NAFTA 見 直 しを 訴 えた だが 就 任 後 のオバマが NAFTA を 改 悪 することはなく 逆 に 任 期 後 半 においては 自 らの 大 統 領 としてのレガシー とするべく TPP 交 渉 に 注 力 した 賢 明 な 各 候 補 者 は 選 挙 戦 での 発 言 と 就 任 後 の 実 際 の 政 策 を 使 い 分 けてきたのである その 意 味 において 少 なくともクリントンが 現 在 発 言 しているほどに 保 護 主 義 色 を 強 めるとは 思 えな い その 一 方 で 国 務 長 官 時 代 ほどに 自 由 貿 易 派 に 戻 るとも 限 らない 上 述 してきたような 鬱 憤 を 抱 え た 米 国 民 は 為 替 操 作 を 行 い 不 公 正 な 貿 易 によって 米 国 民 から 仕 事 を 奪 う 中 国 や 日 本 という 捌 け 口 を 得 て 反 自 由 貿 易 主 義 に 靡 いており 新 大 統 領 としても そうした 国 民 の 意 思 を 無 視 することは 出 来 ない こうして 考 えてみると トランプ 大 統 領 の 場 合 はもちろん クリントン 大 統 領 の 場 合 で も 米 国 の 貿 易 投 資 自 由 化 の 流 れは ある 程 度 は 滞 留 を 余 儀 なくされることも 想 定 されよう 5