第 8 節 港 湾 施 設 の 復 旧 1 港 湾 施 設 の 復 旧 事 例 柏 崎 港 港 湾 災 害 復 旧 事 業 - 港 湾 施 設 の 被 災 状 況 と 復 旧 工 事 - 新 潟 港 湾 事 務 所 庭 山 真 一 山 﨑 慎 矢 栗 原 健 太 ( 平 成 19 年 10 月 1 日 から 平 成 20 年 11 月 30 日 まで 交 代 で 応 援 派 遣 ) 庭 山 山 﨑 栗 原 1 概 要 柏 崎 港 は 震 源 からの 距 離 が 15km と 震 源 から 近 い 位 置 に 存 在 し 舗 装 及 び 背 後 のふ 頭 用 地 の 沈 下 と 舗 装 下 部 の 空 洞 化 岸 壁 の 傾 斜 上 部 コンクリートの 亀 裂 裏 込 材 の 吸 い 出 し 等 の 甚 大 な 被 害 を 受 けた また 臨 港 道 路 ( 橋 台 やト ンネルを 含 む)やマリーナ 公 園 といった 他 の 港 湾 施 設 も 被 害 を 受 けた 震 度 分 布 図 を 図 5-8-1 各 ふ 頭 の 写 真 位 置 を 写 真 5-8-1 に 示 す ボーリング 4 二 級 河 川 鵜 川 みなとまち 海 浜 公 園 柏 崎 マリーナ 1 3 臨 港 八 坂 橋 西 ふ 頭 2 東 ふ 頭 臨 港 道 路 中 浜 ふ 頭 中 央 ふ 頭 番 神 トンネル 図 5-8-1 震 度 分 布 図 ( 気 象 庁 HP より) 写 真 5-8-1 写 真 撮 影 位 置 及 びボーリング 位 置 (Google-earth に 加 筆 ) 2 柏 崎 港 の 概 要 柏 崎 港 は 県 の 中 央 部 に 位 置 する 地 方 港 湾 で コークスやセメント 等 の 供 給 基 地 となっており 中 越 地 方 の 物 流 交 流 拠 点 として 位 置 づけられているととも に 災 害 時 における 震 災 復 興 及 び 支 援 の 拠 点 として 重 要 な 役 割 を 担 っている また 海 洋 レクリエーションの 拠 点 としても 位 置 づけられるとともに 毎 年 7 5-147
月 には ぎおん 柏 崎 まつり 海 の 大 花 火 大 会 がみなとまち 海 浜 公 園 で 開 催 さ れる 等 地 域 の 活 性 化 に 寄 与 している 3 被 災 の 状 況 (1) 係 留 施 設 被 害 の 概 要 柏 崎 港 では 全 ての 施 設 が 被 災 したが 係 留 施 設 護 岸 やふ 頭 用 地 で 特 に 大 き な 被 害 が 発 生 した 被 害 状 況 については 本 体 工 のはらみ 出 しやエプロンの 沈 下 及 びその 下 部 の 空 洞 化 が 全 延 長 にわたって 見 られた 比 較 的 大 きな 被 害 の 箇 所 とその 被 害 状 況 を 以 下 に 示 す 各 被 害 状 況 写 真 は 各 ふ 頭 の 説 明 の 最 後 にまと めて 示 す 1 西 ふ 頭 : 取 付 護 岸 部 で 最 大 1m の 海 側 へのはらみ 出 しが 見 られた 重 力 式 構 造 物 では 10cm 程 度 目 地 が 開 き 上 部 工 に 亀 裂 が 入 った 控 え 式 矢 板 構 造 物 で は タイ 材 が2 本 破 断 し 本 体 工 は 海 側 に6 度 傾 斜 したが 控 え 工 とともに 健 全 であった( 写 真 5-8-2) 2 中 央 ふ 頭 :ブロック 積 み 式 の 本 体 工 岸 壁 が 海 側 に 傾 斜 し ブロックが 上 下 左 右 にずれが 生 じ 目 地 が 開 いた 本 体 工 底 面 部 では 開 いた 目 地 間 から 流 動 化 した 埋 め 立 て 土 砂 が 流 れ 出 していた( 写 真 5-8-3 写 真 5-8-4) 3 東 ふ 頭 :ふ 頭 先 端 の 護 岸 では 重 力 式 護 岸 部 は 海 側 にはらみ 出 し 水 中 部 で 本 体 工 ブロックのずれによる 目 地 開 きが 確 認 された 矢 板 式 護 岸 部 は 最 大 50cm 程 度 のはらみ 出 しと4 度 の 海 側 傾 斜 があったが タイ 材 は 健 全 であった ( 写 真 5-8-5 写 真 5-8-6) 4 中 浜 ふ 頭 :3 号 岸 壁 取 り 付 け 部 で 重 力 式 護 岸 の 上 部 工 が 本 体 ブロックと 分 裂 し 最 大 1m 海 側 に 突 出 していた 2 号 岸 壁 は 鋼 管 矢 板 式 で 海 側 に 平 均 4 度 程 度 傾 斜 し エプロン 部 が 陥 没 していた 箇 所 もあったが タイ 材 や 控 え 工 は 健 全 であった( 写 真 5-8-7) 5-148
写 真 5-8-2 上 部 工 の 亀 裂 ( 西 ふ 頭 ) 写 真 5-8-3 護 岸 はらみ 出 し( 中 央 ふ 頭 ) 写 真 5-8-4 目 地 からの 吸 出 し( 中 央 ふ 頭 ) 写 真 5-8-5 矢 板 のたわみ( 東 ふ 頭 ) 写 真 5-8-6 水 中 部 目 地 の 開 き( 東 ふ 頭 ) 写 真 5-8-7 上 部 工 の 破 損 ( 中 浜 ふ 頭 ) 5-149
(2) 柏 崎 港 の 港 湾 関 連 施 設 の 主 要 な 被 害 柏 崎 港 の 港 湾 関 連 施 設 の 主 要 な 被 害 をまとめて 下 表 に 示 す 地 区 施 設 主 要 な 被 災 状 況 橋 台 取 付 道 路 段 差 (0.2~0.5m) 臨 港 道 路 幹 線 1 号 トンネル 吸 音 板 の 落 下 トンネル 内 部 の 頂 部 に 亀 裂 柏 崎 港 マリーナ 物 揚 場 (-3m) エプロン 沈 下 0.2m 中 央 ふ 頭 舗 装 破 損 やインターロッキングブロックの 波 状 の 被 災 みなとまち 海 浜 公 園 液 状 化 による 階 段 護 岸 等 の 破 損 海 側 へ 0.8m 変 位 物 揚 場 (-4m) エプロン 沈 下 0.6m 海 側 へ 0.38m 変 位 1 号 物 揚 場 (-4m) エプロン 沈 下 0.3m 海 側 へ 0.45m 変 位 岸 壁 (-5.5m) エプロン 沈 下 0.2m 海 側 へ 0.2m 変 位 3 号 物 揚 場 (-3.5m) エプロン 沈 下 0.2m 2 号 岸 壁 (-10m) エプロン 沈 下 0.2m 取 付 護 岸 の 海 側 へ 1.0m 変 位 エプロン 沈 下 0.35m 海 側 へ 0.26m 変 位 タイ 材 切 断 傾 斜 6 エプロン 沈 下 0.2m 中 浜 ふ 頭 3 号 岸 壁 (-11m) 岸 壁 (-5m -6m) 西 ふ 頭 防 波 堤 護 岸 東 ふ 頭 物 揚 場 (-2m) 1 号 物 揚 場 (-3.5m) 管 理 用 道 路 0.4m 陥 没 海 側 へ 0.4m 変 位 管 理 用 通 路 沈 下 0.2m 海 側 へ 0.4m 変 位 エプロン 沈 下 0.34m 海 側 へ 0.21m 変 位 取 付 斜 路 の 段 差 0.1m (3) 港 湾 構 造 物 の 被 害 分 析 1 重 力 式 構 造 物 柏 崎 港 は 全 範 囲 にわたって 海 底 地 盤 が 砂 質 土 の 強 固 な 地 盤 で 重 力 式 構 造 物 で 捨 て 石 マウンドを 基 礎 とするブロックや 場 所 打 ち 式 の 構 造 形 式 が 大 半 を 占 め ている 重 力 式 構 造 物 の 被 害 は 海 側 へのはらみ 出 しや 目 地 のずれが 主 で 目 地 が 大 きく 開 いたところでは 吸 出 しが 発 生 している これは 重 力 式 構 造 物 の 設 計 条 件 を 超 える 地 震 力 が 来 襲 したために 設 計 条 件 を 超 える 地 震 慣 性 力 や 土 圧 力 などの 外 力 が 発 生 し 自 重 で 安 定 できる 許 容 値 を 超 えてしまったためである と 考 えられる その 結 果 構 造 形 式 が 重 力 式 であるがために 一 度 移 動 してし まった 構 造 物 は 元 の 位 置 に 復 元 する 力 を 持 たず 地 震 後 もそのままの 状 態 で 残 5-150
ってしまったと 考 えられる 重 力 式 構 造 物 の 被 災 イメージを 図 5-8-2 に 示 す 柏 崎 港 における 岸 壁 等 は 設 計 震 度 として 主 に 0.10 を 用 いて 設 計 しているが 中 越 沖 地 震 発 生 時 では 付 近 の 震 度 計 の 値 を 震 度 に 換 算 すると 最 大 で2~3 倍 程 度 の 地 震 力 が 作 用 したと 想 定 される 2 矢 板 式 構 造 物 西 ふ 頭 岸 壁 (-5m -6m)や 東 ふ 頭 岸 壁 (-7.5m) 先 端 護 岸 の 一 部 や 中 浜 ふ 頭 は 控 え 式 の 矢 板 構 造 であり 西 ふ 頭 の 一 部 を 除 けばほとんどが4 度 程 度 海 側 に たわんだ 状 態 であるが,タイ 材 は 健 全 で 大 きく 被 災 してはいない これは 矢 板 式 構 造 の 設 計 手 法 によるものが 大 きい 矢 板 式 構 造 の 設 計 では 使 用 する 鋼 材 の 規 格 は 許 容 応 力 度 法 で 算 出 した 許 容 応 力 値 に 基 づいて 決 定 するのに 対 し 実 際 の 鋼 材 の 破 壊 は 降 伏 点 強 度 破 断 強 度 に 達 した 場 合 に 起 こるものであるた め 許 容 応 力 度 法 にて 決 定 された 規 格 は 若 干 の 余 裕 を 残 していることとなる つまり 強 度 的 な 余 裕 と 復 元 性 のある 構 造 形 式 により 重 力 式 構 造 に 比 べる と 被 害 の 程 度 が 小 さかったと 言 える 矢 板 式 構 造 物 の 被 災 イメージを 図 5-8-3 に 示 す 西 ふ 頭 の 破 断 した2 本 のタイ 材 については このたわみと 復 元 の 過 程 で 強 度 的 な 余 裕 を 超 える 応 力 を 受 け 破 断 してしまったと 考 えられる( 写 真 5-8-8) 西 ふ 頭 では 2 本 破 断 図 5-8-2 重 力 式 構 造 物 の 被 災 イメージ 図 5-8-3 矢 板 式 構 造 物 の 被 災 イメージ 3 液 状 化 による 噴 砂 柏 崎 港 内 の 埋 め 立 て 土 砂 は 砂 質 土 砂 が 主 体 であり 地 震 による 震 動 で 液 状 化 し て 噴 砂 した 箇 所 が 認 められたが 液 状 化 した 砂 が 陸 上 に 噴 出 した 量 は 比 較 的 少 量 で あった( 写 真 5-8-9) これは 構 造 物 からの 吸 出 しによって 堤 外 に 流 出 した 土 砂 があったことや 地 震 時 の 沈 下 現 象 によって 埋 め 立 て 地 盤 天 端 とエプロン 舗 装 下 部 の 間 に 空 洞 化 が 発 生 したこと 等 が 考 えられる 5-151
写 真 5-8-8 タイ 材 の 破 断 状 況 ( 西 ふ 頭 ) 写 真 5-8-9 噴 砂 状 況 ( 東 ふ 頭 ) 4 復 旧 工 事 の 概 要 今 回 の 被 災 に 対 する 復 旧 は 機 能 回 復 を 目 的 とした 原 形 復 旧 とし 以 下 の 復 旧 計 画 とした 1 重 力 式 本 体 工 の 傾 斜 安 定 性 を 損 ねる 場 合 は 本 体 工 拡 幅 による 安 定 性 確 保 2 法 線 のはらみ 出 し 上 部 コンクリートの 打 替 えによる 法 線 の 調 整 3タイ 材 の 破 断 タイ 材 の 付 替 による 安 定 性 確 保 4 背 後 埋 立 部 の 沈 下 補 足 材 による 高 さの 調 整 5 舗 装 下 部 の 空 洞 補 足 材 による 空 隙 部 補 填 腹 付 けコンクリートによる 本 体 工 拡 幅 の 復 旧 断 面 図 と 上 部 コンクリート 打 替 えによる 法 線 調 整 による 復 旧 断 面 図 を 図 5-8-4 及 び 図 5-8-5 に 示 す 図 5-8-4 腹 付 けコンクリートによる 拡 幅 及 び 背 後 の 補 足 材 補 充 及 び 転 圧 図 5-8-5 上 部 工 打 ち 替 えによる 法 線 調 整 及 び 背 後 の 補 足 材 補 充 及 び 転 圧 5-152
5 おわりに 中 越 沖 地 震 により 柏 崎 市 周 辺 はライフラインを 始 め 全 ての 公 共 土 木 施 設 が 甚 大 な 被 害 を 受 け 柏 崎 港 が 海 上 自 衛 隊 や 海 上 保 安 庁 による 緊 急 物 資 の 代 替 輸 送 の 機 能 を 担 った 緊 急 物 資 や 水 は 被 害 の 少 なかった 東 ふ 頭 や 中 浜 ふ 頭 の 岸 壁 で 陸 揚 げしての 輸 送 となった しかし ふ 頭 に 接 続 する 臨 港 道 路 では 橋 梁 取 付 部 に 段 差 が 発 生 し トンネル 部 には 亀 裂 が 発 生 したため 物 資 輸 送 のための 交 通 確 保 が 急 務 となり 被 災 直 後 から 応 急 工 事 を 行 った( 橋 梁 取 付 部 の 段 差 に ついては 当 日 に 応 急 復 旧 完 了 ) その 後 公 共 災 は 災 害 査 定 から2ヶ 月 後 の 11 月 下 旬 にふ 頭 や 施 設 ごとにまとめて 発 注 を 行 い 22 箇 所 の 契 約 が 完 了 した そ して 公 共 災 の 契 約 以 後 にふ 頭 用 地 の 復 旧 工 事 を 起 債 事 業 公 園 等 の 復 旧 工 事 を 県 単 災 として 順 次 発 注 を 進 めた 工 事 の 施 工 においては 応 急 工 事 では 支 援 の 自 衛 隊 等 と 輸 送 ルートの 調 整 を 行 いながら 工 事 を 進 めた 本 工 事 ではふ 頭 利 用 者 に 対 して 資 材 ( 石 材 コーク ス スクラップ 等 )の 移 設 協 力 依 頼 や 移 設 先 のヤード 確 保 漁 協 が 使 用 してい る 物 揚 場 の 使 用 時 期 との 調 整 のため 復 旧 工 事 の 工 程 説 明 を 何 度 となく 行 うと ともに 地 元 自 治 会 には 説 明 会 を 開 催 し 工 事 への 協 力 依 頼 を 行 った その 結 果 被 災 直 後 の 地 域 住 民 に 対 して 緊 急 物 資 の 輸 送 が 円 滑 に 行 われるとともに 港 湾 区 域 内 48 箇 所 の 災 害 復 旧 工 事 は 冬 季 風 浪 前 の 2008 年 12 月 に 現 場 を 完 了 す ることができた これは 工 事 施 工 業 者 の 献 身 的 な 姿 勢 港 湾 利 用 者 や 漁 協 等 の 関 係 機 関 の 方 々のご 協 力 地 域 住 民 の 方 々のご 理 解 によるものが 大 きいと 考 えている また 行 政 係 の 方 々には 工 事 に 関 する 他 機 関 調 整 や 説 明 会 で 尽 力 し ていただいた 港 湾 施 設 の 災 害 復 旧 工 事 では 上 記 の 方 々を 始 め 多 くの 方 々から 助 言 や 協 力 をいただいた 最 後 に この 場 を 借 りて 感 謝 とお 礼 を 申 し 上 げます 5-153