阿 武 隈 川 鳴 瀬 川 北 上 川 の 被 害 株 式 会 社 エイト 日 本 技 術 開 発 保 全 耐 震 防 災 事 業 部 東 京 支 社 保 全 耐 震 防 災 部 土 谷 基 大 岩 田 克 司 藤 本 哲 生 1.はじめに 2011 年 3 月 11 日 に 東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 (Mw=9.0)が 発 生 し 宮 城 県 栗 原 市 築 館 で 最 大 震 度 7 が 観 測 されるとともに 東 北 地 方 を 中 心 に 北 海 道 から 九 州 地 方 まで 震 度 6 弱 ~ 震 度 1 が 観 測 され た 1) また 東 北 地 方 の 太 平 洋 沿 岸 部 で 広 範 囲 に わたり 津 波 により 甚 大 な 被 害 が 生 じた 本 稿 は 図 1に 示 すように 東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 により 緊 急 復 旧 を 要 する 被 害 を 生 じた 阿 武 隈 川 鳴 瀬 川 北 上 川 (いずれも 1 級 河 川 )の 河 川 堤 防 を 中 心 に 被 害 調 査 を 実 施 し その 結 果 をまとめ たものである さらに 鳴 瀬 川 の 河 川 堤 防 につい ては 2003 年 宮 城 県 北 部 地 震 においても 甚 大 な 被 害 が 発 生 しているため 地 盤 条 件 や 地 震 動 条 件 等 に 着 目 し 今 回 の 被 害 との 比 較 考 察 を 行 った (1) 調 査 概 要 被 害 調 査 は 目 視 により 行 い 2 班 (A 班 B 班 ) に 別 れて 実 施 した A 班 調 査 期 間 :2011 年 4 月 24 日 ~26 日 (3 日 間 ) 調 査 員 : 岩 田 克 司 佐 々 木 秀 典 土 谷 基 大 毛 利 龍 司 片 根 弘 人 対 象 河 川 : 阿 武 隈 川 ( 下 流 域 ) 鳴 瀬 川 ( 下 流 域 ) B 班 調 査 期 間 :2011 年 4 月 23 日 ~25 日 (3 日 間 ) 調 査 員 : 尾 儀 一 郎 黒 田 修 一 藤 本 哲 生 対 象 河 川 : 北 上 川 ( 下 流 域 ) (2) 河 川 堤 防 被 害 の 概 要 今 回 の 地 震 で 阿 武 隈 川 では 57 箇 所 ( 内 堤 防 の 緊 急 復 旧 箇 所 7 箇 所 ) 3) 鳴 瀬 川 では 156 箇 所 ( 内 堤 防 の 緊 急 復 旧 箇 所 7 箇 所 ) 4) 北 上 川 では 204 箇 所 ( 内 堤 防 の 緊 急 復 旧 箇 所 3 箇 所 ) 4) において 堤 防 に 被 害 が 発 生 している 図 1には 各 河 川 で 緊 急 復 旧 が 実 施 された 箇 所 を 示 している 2. 津 波 被 害 (1) 阿 武 隈 川 河 口 部 図 2に 阿 武 隈 川 河 口 周 辺 部 における 津 波 浸 水 域 5) を 示 す 浸 水 域 は 海 岸 線 より 概 ね 3km 内 陸 ま で 及 んでいる 仙 台 市 名 取 市 岩 沼 市 大 崎 市 阿 武 隈 橋 阿 武 隈 川 図 1 調 査 および 河 川 堤 防 被 害 位 置 越 流 範 囲 0~4k 新 阿 武 隈 橋 浸 水 域 約 3km 亘 理 大 橋 図 2 浸 水 範 囲 ( 阿 武 隈 川 河 口 部 ) 5) 残 存 した 海 水 塩 竃 市 多 賀 城 市 東 松 島 市 鳴 瀬 川 石 巻 市 : 堤 防 緊 急 復 旧 箇 所 法 面 の 流 出 写 真 1 堤 防 法 面 の 流 出 北 上 川 N S 2)3)4) - 40 -
写 真 1 に 河 口 付 近 ( 亘 理 大 橋 の 右 岸 側 上 流 部 )に おける 堤 防 被 災 状 況 を 示 す 本 地 点 では 堤 防 の 法 面 が 流 出 崩 壊 し 周 辺 田 畑 に 海 水 が 残 存 していた これは 河 川 を 遡 上 した 津 波 が 堤 防 を 越 流 したことによるものと 推 測 される ただし 図 2に 示 す 河 口 部 から 4km の 範 囲 より 上 流 側 の 堤 防 では このような 被 災 形 態 は 見 られず 津 波 が 越 流 した 範 囲 は 0~4km の 範 囲 であったと 考 えら れる (2) 鳴 瀬 川 河 口 部 図 3に 鳴 瀬 川 河 口 周 辺 部 の 津 波 浸 水 域 5) を 示 す 津 波 が 河 口 より 4~5km 程 度 遡 上 し 内 陸 につい ても 海 岸 線 から 4~5km 程 度 の 範 囲 まで 浸 水 域 が JR 仙 石 線 写 真 2 写 真 3 鳴 瀬 川 浸 水 域 国 道 45 号 ( 石 巻 街 道 ) 約 2km 及 んでいる 写 真 2 に 国 道 45 号 南 側 の 区 域 の 状 況 を 示 す こ の 区 域 では 写 真 に 示 すように 海 岸 線 から 約 2km 離 れた JR 仙 石 線 高 架 橋 位 置 まで 漁 船 が 流 される 等 一 帯 に 瓦 礫 が 運 ばれており 津 波 による 海 水 が 未 だ 残 存 していた 一 方 写 真 3 に 国 道 45 号 北 側 の 区 域 を 示 す こ の 区 域 では 浸 水 はあったようであるが 道 路 盛 土 の 存 在 により 津 波 による 甚 大 な 被 害 は 免 れてい る 状 況 であった (3) 北 上 川 河 口 部 図 4に 北 上 川 河 口 周 辺 部 の 津 波 浸 水 域 5) を 示 す 津 波 が 河 口 より 12km 程 度 遡 上 している 写 真 4 に 左 岸 -0.8k 地 点 の 状 況 を 示 す 本 地 点 で は 津 波 により 堤 防 が 決 壊 しており 調 査 実 施 時 点 (2011.4.24 時 点 )では 逆 T 式 擁 壁 および 大 型 土 の うにより 仮 復 旧 が 行 われていた ただし 写 真 に 示 すように 仮 復 旧 された 堤 防 が 余 震 により 再 度 被 災 していた 写 真 5 に 左 岸 10k 付 近 の 状 況 を 示 す この 地 点 まで 津 波 が 到 達 しており 川 表 側 ( )の 法 尻 部 に 設 置 されていた 蛇 籠 が 流 出 していた また 瓦 礫 もこの 付 近 まで 達 していた 図 3 津 波 浸 水 範 囲 ( 鳴 瀬 川 河 口 部 ) 5) 漁 船 JR 仙 石 線 国 道 45 号 写 真 4 北 上 川 写 真 5 浸 水 域 海 水 写 真 2 国 道 45 号 南 側 の 区 域 国 道 398 号 図 4 浸 水 範 囲 ( 北 上 川 河 口 部 ) 5) 国 道 45 号 ( 石 巻 街 道 )の 道 路 盛 土 仮 復 旧 ( 逆 T 式 擁 壁 + 土 のう) 余 震 により 被 災 写 真 3 国 道 45 号 北 側 の 区 域 写 真 4 仮 復 旧 された 堤 防 の 被 害 - 41 -
河 川 流 下 方 向 大 型 土 嚢 堤 体 沈 下 蛇 籠 流 出 50cm 写 真 5 堤 防 法 尻 部 ( )の 被 災 状 況 3. 地 震 被 害 (1) 阿 武 隈 川 下 流 域 写 真 6~ 写 真 8 に 阿 武 隈 川 右 岸 22.0k 付 近 にお ける 被 害 状 況 を 示 す 本 地 点 は 震 災 直 後 に 緊 急 復 旧 箇 所 として 指 定 6) されており 調 査 実 施 時 点 (2011.4.26 時 点 )では 鋼 矢 板 二 重 締 切 りによる 仮 堤 設 置 によって 応 急 復 旧 が 実 施 されていたため ( 写 真 6) 詳 細 な 被 害 状 況 は 現 地 では 確 認 できなか った 写 真 7 は 震 災 直 後 の 状 況 6) であるが 堤 体 にすべり 破 壊 が 生 じたというよりは 全 体 的 に 堤 体 が 潰 れた( 沈 下 流 動 した)ような 破 壊 形 態 であ 鋼 矢 板 写 真 6 鋼 矢 板 二 重 締 切 りによる 仮 堤 写 真 8 樋 門 周 辺 の 護 岸 被 害 る この 破 壊 形 態 から 本 被 害 は 堤 体 直 下 の 基 礎 地 盤 の 液 状 化 が 原 因 である 可 能 性 が 高 いと 考 えら れる また 本 地 点 から 200m 程 度 上 流 側 に 樋 門 (1970 年 竣 工 基 礎 は 建 設 年 代 から 杭 基 礎 構 造 であると 推 定 される)がある( 写 真 8) ここでも 地 盤 の 液 状 化 に 伴 うものと 見 られるが 堤 体 が 沈 下 し( 門 柱 基 部 で 約 50cm 沈 下 ) 護 岸 ブロックが 損 傷 していた 樋 門 については 目 視 可 能 な 範 囲 で 門 柱 操 作 台 を 調 査 したが 特 に 変 状 はなかった ただし 本 地 点 でも 堤 体 直 下 の 基 礎 地 盤 が 液 状 化 している 可 能 性 が 高 いため 函 体 の 目 地 開 きや 函 体 底 版 下 の 空 洞 化 ( 杭 基 礎 構 造 の 場 合 )が 発 生 し ている 可 能 性 があり 今 後 詳 細 な 調 査 が 必 要 で ある (2) 鳴 瀬 川 下 流 域 写 真 9~ 写 真 11 に 鳴 瀬 川 左 岸 11.1k における 被 害 状 況 を 示 す 堤 防 天 端 において 40cm 程 度 の 段 差 ( 滑 落 跡 ) の 法 面 では 堤 体 縦 断 方 向 に 開 口 亀 裂 ( 開 口 幅 約 20cm)が 複 数 箇 所 に 確 認 された 堤 体 法 尻 部 では 堤 体 が 孕 み 出 し 柵 が 道 路 方 向 に 押 し 出 されていた 本 地 点 では 法 面 に 噴 砂 跡 が 確 認 できたため 40cm 程 度 滑 落 写 真 7 震 災 直 後 の 被 災 状 況 6) 写 真 9 堤 防 天 端 の 被 害 - 42 -
地 盤 (もしくは 堤 体 )が 液 状 化 し 側 方 流 動 を 生 じた あるいは 地 震 動 により 基 礎 地 盤 (もしくは 堤 体 ) の 剛 性 が 低 下 し 沈 下 を 生 じたものと 推 察 される 流 動 流 動 写 真 10 堤 防 法 面 の 被 害 に 流 動 流 動 に 法 尻 部 の 孕 み 出 し 写 真 11 堤 防 法 尻 の 被 害 堤 体 直 下 地 盤 が 液 状 化 したものと 考 えられる こ れにより 液 状 化 した 地 盤 が 地 盤 高 の 低 い へ 側 方 流 動 し このような 被 害 に 至 ったものと 推 察 される (3) 北 上 川 下 流 域 写 真 12 に 北 上 川 26.5k 付 近 の 状 況 を 示 す 調 査 前 日 (2011.4.23)の 大 雨 ( 近 傍 の 米 山 雨 量 観 測 所 の 24 時 間 雨 量 :28mm) 1) で 河 川 水 位 が 上 昇 し 一 部 の 高 水 敷 で 冠 水 している 箇 所 があった 本 地 点 の 周 辺 の 堤 防 で 確 認 された 変 状 は 堤 防 天 端 に 縦 断 方 向 の 軽 微 な 亀 裂 がある 程 度 であり 噴 砂 跡 は 確 認 できなかったが 地 震 動 により 基 礎 河 川 流 下 方 向 高 水 敷 の 冠 水 写 真 12 高 水 敷 の 冠 水 状 況 4.2003 年 宮 城 県 北 部 地 震 との 被 災 状 況 の 比 較 2003 年 7 月 26 日 に 宮 城 県 北 部 地 震 (Mj=6.2)が 発 生 し 宮 城 県 の 矢 本 町 矢 本 宮 城 南 郷 町 木 間 塚 鳴 瀬 町 小 野 において 最 大 震 度 6 強 が 観 測 された 1) 本 地 震 では 今 回 の 地 震 (2011 年 東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 )と 同 様 に 鳴 瀬 川 河 川 堤 防 に 甚 大 な 被 害 ( 被 災 箇 所 70 箇 所 7) 内 緊 急 復 旧 箇 所 13 箇 所 8) )が 発 生 している これらの 堤 防 被 害 の 要 因 は 今 回 の 地 震 と 同 様 に 基 礎 地 盤 もしくは 堤 体 の 液 状 化 によるものと 指 摘 9) されている 本 章 では 上 記 2 地 震 によって 甚 大 な 被 害 が 生 じた 鳴 瀬 川 河 川 堤 防 を 対 象 に 地 盤 条 件 および 地 震 動 条 件 に 着 目 し 各 地 震 動 での 被 害 状 況 を 比 較 することで 被 災 要 因 に 対 する 考 察 を 行 った (1) 微 地 形 分 類 図 5に 微 地 形 分 類 図 (250m メッシュ) 10) を 示 す 図 中 には 宮 城 県 北 部 ならびに 東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 において 甚 大 な 被 害 が 生 じた 堤 防 の 被 災 箇 所 ( 緊 急 復 旧 箇 所 )を 併 記 している 河 口 から 概 ね 10k の 地 点 で 山 地 から 平 野 ( 後 背 湿 地 )へと 地 形 が 大 きく 変 化 し 鳴 瀬 川 周 辺 では 自 然 堤 防 が 分 布 している そして 両 地 震 動 での 堤 防 被 害 は 一 般 に 液 状 化 し 易 いとされるこの 自 然 堤 防 部 に 集 中 している 山 地 系 火 山 地 系 岩 石 台 地 砂 礫 質 台 地 ローム 台 地 谷 底 平 野 扇 状 地 自 然 堤 防 後 背 湿 地 旧 河 道 海 岸 平 野. 三 角 州 砂 州 砂 礫 州 砂 丘 砂 州 - 砂 丘 間 低 地 干 拓 地 埋 土 地 磯 岩 礁 河 原 河 道 湖 沼 不 明 30k 20k 10k 後 背 湿 地 自 然 堤 防 山 地 系 谷 底 平 野 海 岸 平 野 三 角 州 砂 州 砂 礫 洲 鳴 瀬 川 河 口 :2003 年 宮 城 県 北 部 地 における 震 緊 急 復 旧 箇 所 :2011 年 東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 における 緊 急 復 旧 箇 所 図 5 微 地 形 分 類 (250m メッシュ) 10) (2) 地 表 面 最 大 加 速 度 図 6に 両 地 震 動 における 本 震 の 地 表 面 最 大 加 速 度 分 布 図 (5HzPGA:5Hz 以 上 の 周 波 数 領 域 をカッ トした 地 表 面 波 形 の 最 大 加 速 度 ) 11) を 示 す 本 図 に ついても 両 地 震 動 における 被 災 箇 所 を 併 記 してい る 宮 城 県 北 部 地 震 では 河 口 部 より 20k 付 近 で 最 大 800 cm/s 2 ( 図 6(a))となり 被 災 の 集 中 する 5k - 43 -
0 10 20 30 50 100 150 200 300 400 500 600 800 1000 1200 1500 [cm/s 2 ] 30k 20k 10k 12k~15k 鳴 瀬 川 河 口 ~15k では 300~600 cm/s 2 ( 図 -4.2(b))で 分 布 して いる 0 10 20 30 50 100 150 200 300 400 500 600 800 1000 1200 1500 [cm/s 2 ] :2003 年 宮 城 県 北 部 地 における 震 緊 急 復 旧 箇 所 :2011 年 東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 における 緊 急 復 旧 箇 所 (a)2003 年 宮 城 県 北 部 地 震 30k 20k 10k 12k~15k 図 6 地 表 面 最 大 加 速 度 の 比 較 鳴 瀬 川 河 口 :2003 年 宮 城 県 北 部 地 における 震 緊 急 復 旧 箇 所 :2011 年 東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 における 緊 急 復 旧 箇 所 (b)2011 年 東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 一 方 東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 では 河 口 部 から 30k 超 まで 800cm/s 2 で 一 様 に 分 布 しており 最 大 加 速 度 としては 本 地 震 の 方 が 宮 城 県 北 部 地 震 に 比 べ 1.3~2.7 倍 程 度 大 きい ただし 被 災 箇 所 としては 東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 の 方 が 少 なくなっている (3) 堤 防 の 耐 震 対 策 の 効 果 について 図 6に 示 すように 地 表 面 最 大 加 速 度 としては 東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 の 方 が 宮 城 県 北 部 地 震 より も 大 きくなっているが 被 害 箇 所 数 としては 東 北 11) 写 真 13 鳴 瀬 川 右 岸 13.1k 地 点 の 状 況 地 方 太 平 洋 沖 地 震 の 方 が 少 ない 特 に 宮 城 県 北 部 地 震 において 被 災 が 集 中 した 12k~15k 区 間 で は 被 災 箇 所 が 大 幅 に 減 少 している 写 真 13 は 今 回 の 調 査 で 撮 影 した 右 岸 13.1k 地 点 ( 宮 城 県 北 部 地 震 における 緊 急 復 旧 箇 所 )の 状 況 を 示 す このように 12k~15k 区 間 では 今 回 の 地 震 では 大 きな 被 害 が 生 じていなかった 宮 城 県 北 部 地 震 では 緊 急 復 旧 箇 所 13 箇 所 の 中 でも 特 に 被 災 程 度 の 大 きかった 12k~15k 区 間 の 被 災 箇 所 ( 左 岸 12.2k~12.5k 左 岸 12.7k~13.5k 右 岸 13.0k~13.5k 右 岸 14.7k~15.0k の 計 4 箇 所 ) については 本 復 旧 時 に 全 面 的 に 旧 堤 防 を 撤 去 し た 後 再 築 堤 している さらに 図 7に 示 すよう に これらの 復 旧 箇 所 は 旧 堤 防 撤 去 に 伴 い 堤 防 直 下 の 基 礎 地 盤 浅 層 部 の 地 盤 改 良 ( 固 結 )を 実 施 12) している つまり 12k~15k 区 間 の 堤 防 につい ては 堤 体 および 基 礎 地 盤 が 強 化 復 旧 されている ため この 対 策 効 果 により 今 回 の 地 震 被 害 を 低 減 できたものと 考 えられる 一 方 30k 地 点 では 宮 城 県 北 部 地 震 よりも 大 きな 地 震 力 が 堤 防 に 作 用 しており 12k~15k 区 間 のように 堤 防 が 強 化 されていないため 今 回 の 地 震 により 新 たに 被 災 が 発 生 したものと 考 えられる なお 東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 では 河 口 部 で 被 害 が 生 じているが これは 津 波 により 特 殊 堤 が 流 出 した 箇 所 であり 地 震 動 によるものではない 旧 堤 防 は 撤 去 し 新 設 する 河 川 側 仮 設 堤 防 地 盤 改 良 図 7 本 復 旧 横 断 図 ( 鳴 瀬 川 左 岸 右 岸 12.96k~13.194k) 12) - 44 -
5.まとめおよび 今 後 の 課 題 (1) まとめ 本 稿 では 阿 武 隈 川 鳴 瀬 川 および 北 上 川 におけ る 河 川 堤 防 の 被 害 調 査 結 果 をまとめるとともに 鳴 瀬 川 については 2003 年 宮 城 県 北 部 地 震 による 被 災 との 比 較 を 行 い 堤 防 の 耐 震 対 策 工 の 効 果 に ついて 考 察 した 以 下 にこれらの 結 果 をまとめる [1] 各 河 川 の 河 口 部 では 津 波 により 甚 大 な 被 害 が 生 じていた ただし 一 部 区 域 で 海 岸 線 に 平 行 して 通 る 道 路 盛 土 が 津 波 を 遮 断 抑 制 し 壊 滅 的 な 被 害 を 免 れている 様 子 が 見 られた [2] 各 河 川 の 下 流 域 で 発 生 した 堤 防 被 害 の 主 要 因 は 堤 体 もしくは 基 礎 地 盤 の 液 状 化 である 可 能 性 が 高 い これは 従 来 言 われてきた 河 川 堤 防 の 被 害 要 因 に 関 する 見 識 と 一 致 する [3] 今 回 の 地 震 における 河 川 堤 防 の 被 害 は 2003 年 宮 城 県 北 部 地 震 での 被 害 と 比 較 し 被 災 箇 所 ( 緊 急 復 旧 箇 所 ) 自 体 は 減 っている これは 宮 城 県 北 部 地 震 によって 被 災 した 箇 所 において 堤 防 が 強 化 復 旧 ( 堤 防 再 構 築 地 盤 改 良 )されて いたことが 要 因 であると 考 えられる [4] 堤 体 材 料 や 施 工 管 理 状 況 が 不 明 な 旧 堤 防 を 撤 去 し 新 たに 築 堤 することや 基 礎 地 盤 を 地 盤 改 良 することは 堤 防 の 耐 震 対 策 として 一 定 の 効 果 があることが 確 認 された 120cm( 牡 鹿 ) (2) 今 後 の 課 題 [1] 堤 防 再 構 築 や 地 盤 改 良 による 堤 防 の 強 化 復 旧 は 耐 震 対 策 として 一 定 の 効 果 が 認 められたこ とから 今 回 被 災 していない 堤 防 区 間 に 対 して も 耐 震 対 策 を 積 極 的 に 実 施 する 必 要 がある [2] 余 震 活 動 が 活 発 化 しており 今 後 M7 クラスの 余 震 が 発 生 する 可 能 性 が 高 い このような 地 震 が 出 水 期 と 重 なった 場 合 には 更 に 被 害 が 拡 大 する 可 能 性 がある このため ハード 面 での 対 策 を 進 めるとともに 周 辺 住 民 に 避 難 意 識 を 高 めるようなソフト 面 での 対 応 が 望 まれる [3] 今 回 の 地 震 により 広 範 囲 にわたり 地 盤 沈 下 が 発 生 している( 図 8) 4) ことに 十 分 留 意 し 堤 防 整 備 にあたっては 余 裕 高 の 再 照 査 が 必 要 である 参 考 文 献 1) 気 象 庁 ホームページ:http://www.jma.go.jp/jma/index.html 2)Google マップ:http://maps.google.co.jp/ 3) 国 土 交 通 省 東 北 地 方 整 備 局 仙 台 河 川 国 道 事 務 所 : 平 成 23 年 (2011 年 ) 東 日 本 大 震 災 被 災 状 況 速 報 ( 河 川 海 岸 編 ) 第 12 報 4) 国 土 交 通 省 東 北 地 方 整 備 局 北 上 川 下 流 河 川 事 務 所 : 地 震 被 害 情 報 ( 第 102 報 ),H23.5.27 5) 国 土 地 理 院 ホームページ: http://www.gsi.go.jp/ 6) 国 土 交 通 省 東 北 地 方 整 備 局 河 川 部 : 東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 における 河 川 関 係 の 被 害 及 び 復 旧 状 況 ( 第 2 報 ) ~ 16 箇 所 で 緊 急 復 旧 を 実 施 中 ~,H23.3.27 7) 国 土 交 通 省 東 北 地 方 整 備 局 : 宮 城 県 北 部 を 震 源 とする 地 震 による 東 北 管 内 情 報 について( 第 27 報 ),H15.7.29 8) 国 土 交 通 省 東 北 地 方 整 備 局 北 上 川 河 川 事 務 所 : 北 上 川 河 川 事 務 所 地 震 情 報,H15.8.12 9) 中 山 修, 鈴 木 善 友 : 宮 城 県 北 部 地 震 における 堤 防 の 被 災 メカニズム,( 財 ) 国 土 技 術 研 究 センター JICE REPORT vol.7,2005.3 10) 地 震 ハザードステーション J-SHIS: http://www.j-shis.bosai.go.jp/ 11)( 株 )エイト 日 本 技 術 開 発 :2011 年 東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 被 害 調 査 報 告 地 震 と 地 震 動,2011.6 12) 国 土 交 通 省 豊 北 地 方 整 備 局 北 上 川 河 川 事 務 所 ホームページ: 平 成 15 年 7 月 26 日 宮 城 県 北 部 を 震 源 とする 地 震 鳴 瀬 川 北 上 川 被 害 状 況 (http://www.thr.mlit.go.jp/karyuu/_update/whatsnew /h15/2003_7_26_jishin_sokuhou/index.htm) 図 8 地 盤 沈 下 調 査 結 果 5) - 45 -