平 成 27 年 10 月 11 日 多 職 種 協 働 による 在 宅 チーム 医 療 のための 地 域 リーダー 研 修 会 在 宅 医 療 における 褥 瘡 対 策 筑 波 メディカルセンター 病 院 在 宅 診 療 科 鈴 木 將 玄
在 宅 医 療 の 現 場 では 1.なるべく 簡 単 に 2.なるべく 安 く 3.なるべく 患 者 さんの 負 担 なく 4. 使 えるものは 何 でも 使 う!
本 日 お 話 しすること 1. 傷 が 治 るということ 2. 褥 瘡 について 3. 褥 瘡 の 予 防 について 4. 現 場 でして 欲 しいこと
傷 が 治 るということ
皮 膚 欠 損 創 の 治 り 方 表 皮 表 皮 細 胞 の 移 動 分 裂 真 皮 毛 孔 肉 芽 浅 い 皮 膚 欠 損 創 深 い 皮 膚 欠 損 創
創 傷 治 療 の3 原 則 その1 消 毒 しない その2 水 で 洗 う その3 傷 を 乾 かさないように 被 覆 する
消 毒 薬 の 効 果 1. 消 毒 薬 はなぜ 細 菌 を 殺 せるのか? 細 菌 の 細 胞 を 破 壊 するからです じゃあ 人 の 細 胞 に 消 毒 薬 を 使 ったら? 人 の 細 胞 と 細 菌 はどちらが 強 いでしょう? 2. 消 毒 薬 の 効 果 持 続 時 間 は? 皮 膚 や 粘 膜 に 使 った 場 合 通 常 3 時 間 でもとの 細 菌 数 に 戻 ると 言 われています じゃあ 残 りの21 時 間 は?
創 傷 治 療 の3 原 則 その1 消 毒 しない その2 水 で 洗 う その3 傷 を 乾 かさないように 被 覆 する
傷 にバイキンがついた 傷 に 細 菌 がいる= 感 染? 皮 膚 や 腸 にはごく 普 通 に 細 菌 がいます 傷 に 細 菌 がいても 悪 さをしなければ 別 に 問 題 ありません
創 が 感 染 している (=Infection) 創 面 に 細 菌 がいる (=Colonization) Infection 患 者 に 有 害 な 状 態 Colonization 患 者 に 無 害 な 状 態
じゃあ 感 染 って 何? 感 染 とは 傷 に 細 菌 がいて を 起 こしている 状 態 のこと
炎 症 の4つのサイン
赤 く 腫 れて 熱 を 持 って 痛 い これは 感 染 している 傷 です!
この 褥 瘡 は 感 染 している? 感 染 していない 感 染 している
この 違 いを 見 極 められる ようになってください とにかく 創 の 観 察 を!
正 しく 治 療 している 傷 フィルムの 下 に 膿 が 貯 まっているように 見 えま すが フィルムを 取 ってみると 赤 くも 腫 れても 熱 を 持 っても いません もちろん 痛 みもあ りません
感 染 するのはどんなとき? 感 染 するのは 組 織 1gに10 万 個 の 細 菌 がいる 場 合 または 組 織 に 異 物 が 混 じっていて 組 織 1gに200 個 の 細 菌 がいる 場 合 細 菌 と 異 物 どちらが 問 題 だと 思 いますか?
常 在 菌 + 感 染 源 * = 創 感 染 * 異 物 壊 死 組 織 血 腫 など 良 い 子 + 悪 い 連 中 と 付 き 合 う = グ レ た 問 題 なのは?
これが デブリードマン です! 常 在 菌 + 壊 死 組 織 = 創 感 染 感 染 創 ー 壊 死 組 織 = 常 在 菌 感 染 源 がないので 感 染 は 起 こせない!
異 物 にはどんなものが? 1. 外 から 入 った 異 物 ( 木 片 砂 木 の 葉 さび etc ) 2.ガーゼや 糸 ( 特 に 絹 糸 ) 3. 死 んだ 組 織 や 血 液 ( 血 腫 )
創 感 染 の 予 防 古 い 考 え 方 細 菌 がいる から 感 染 する 細 菌 を 除 去 すればいい 今 の 考 え 方 異 物 壊 死 組 織 がなければ 感 染 しない 異 物 壊 死 組 織 を 除 去 すればいい
感 染 創 の 治 療 抗 菌 薬 の 全 身 投 与 が 原 則 です! ンタシン 軟 膏 等 の 外 用 では 治 りません
創 傷 治 療 の3 原 則 その1 消 毒 しない その2 水 で 洗 う その3 傷 を 乾 かさないように 被 覆 する
傷 はなぜジクジクする? 生 体 が 損 傷 を 受 ける 創 傷 治 癒 促 進 物 質 (= 細 胞 成 長 因 子 ) を 創 面 に 分 泌 して 傷 を 治 そうとする 創 面 が ジクジク してくるのは 細 胞 成 長 因 子 が 分 泌 されているため
上 皮 化 は 細 胞 培 養 と 同 じ 肉 芽 真 皮 表 面 で 細 胞 培 養 と 同 じ 現 象 が 起 きている 5 日 後 培 養 液 がないと 細 胞 は 死 滅 する 培 養 には 培 養 液 が 必 要
傷 は 治 ったら 乾 燥 する のであって 乾 燥 させると 治 りません
傷 を 乾 燥 させないためには 覆 う ワセリン& 被 覆 材
ワセリン 乾 いていない 創 面 に 使 う 必 要 はありません 皮 膚 の 保 護 目 的 などはもちろん 別
もう 一 つ 大 事 なのは 浸 出 液 を 適 度 にコントロールすること 少 なすぎると: 傷 が 乾 燥 する サイトカインが 足 りない 多 すぎると: 皮 膚 がかぶれる ふやける( 浸 軟 ) 肉 が 上 がり 過 ぎて 上 皮 化 しにくくなる
傷 を 早 く 治 すには 1. 消 毒 しない 2. 良 く 洗 って 異 物 を 残 さない 3. 乾 燥 させない 4. 浸 出 液 を 適 度 にコントロール
創 傷 被 覆 材 って? (ガーゼの 代 わりに) 傷 を 覆 うものです 1. 傷 にくっつきにくい 2. 傷 を 乾 かさない 3. 浸 出 液 を 適 度 に 吸 ってくれる という 特 徴 が 理 想 的
ポリウレタンフィルム 空 気 ( 水 蒸 気 )は 通 すが 水 は 通 さない ポリウレタンフォーム 浸 出 液 を 適 度 に 吸 収 する この 他 にもいろいろなものが 創 傷 被 覆 材 として 発 売 されています
創 傷 被 覆 材 あれこれ オプサイト バイオクルーシブ ハイドロサイト デュオアクティブ エスアイエイド ソーブサン アクアセル メロリン モイスキンパッド/シートなどなど
褥 瘡 だって 傷 です 同 じように 考 えましょう
そもそも 褥 瘡 とは 一 定 の 場 所 に 一 定 以 上 の 圧 が 一 定 時 間 以 上 加 わることにより 発 生 する 皮 膚 皮 下 組 織 の 損 傷 全 てのことをいう ( 米 国 褥 瘡 諮 問 委 員 会 NPUAP:National Pressure Ulcer Advisory Panel の 定 義 ) 要 するに 圧 がかかってできた 傷 ということです
てことは 創 部 の 処 置 方 法 も 大 事 ですが 褥 瘡 の 一 番 の 敵 は 圧 力 です 圧 力 (= 体 圧 ) のコントロールが 一 番 重 要 になります
一 言 で 圧 力 と 言 っても 体 にかかるあらゆる 力 が 褥 瘡 の 原 因 と なる 座 位 やBed upによるずり 応 力 Deep Tissue Injury チューブ 類 など 医 療 器 機 による 圧 迫 急 性 期 病 院 ではこれが 多 い
見 えない 力 も Deep Tissue Injury 表 皮 だけ 見 ると 大 したことないが 内 部 は
褥 瘡 を 予 防 する
褥 瘡 予 防 のポイント 1. 皮 膚 の 観 察 2.リスクアセスメント 3. 圧 迫 ずれ 力 の 排 除 ( 除 圧 ) 4.スキンケア 5. 栄 養 管 理 6.リハビリテーション 在 宅 褥 瘡 予 防 治 療 ガイドブック( 第 3 版 ) 2015 日 本 褥 瘡 学 会 編 より 引 用
在 宅 褥 瘡 予 防 治 療 ガイドブック( 第 3 版 ) 2015 日 本 褥 瘡 学 会 編 より 引 用
皮 膚 の 観 察 これが 基 本 中 の 基 本 そもそも 褥 瘡 なのかどうか? 圧 迫 して 発 赤 が 消 退 するかどうか 見 るべき 場 所 は? 好 発 部 位 を 知 る 感 染 しているか 否 か? 炎 症 の4 徴 ( 発 赤 腫 脹 発 熱 疼 痛 ) 循 環 障 害 による 皮 膚 障 害 との 鑑 別 けっこう 難 しい
褥 瘡 の 好 発 部 位 座 位 在 宅 褥 瘡 予 防 治 療 ガイドブック( 第 3 版 ) 2015 日 本 褥 瘡 学 会 編 より 引 用
リスクアセスメント 褥 瘡 発 生 の 要 因 は 個 体 要 因 と 環 境 ケア 要 因 で 分 け さらに 外 力 湿 潤 栄 養 自 立 の 観 点 から 考 える 個 体 要 因 : 外 力 ( 病 的 骨 突 出 関 節 拘 縮 ) 湿 潤 ( 多 汗 尿 便 失 禁 ) 栄 養 ( 低 栄 養 状 態 浮 腫 ) 自 立 ( 日 常 生 活 自 立 度 基 本 的 動 作 能 力 ( 自 力 体 位 変 換 座 位 姿 勢 の 保 持 除 圧 等 )の 可 否 ) 環 境 ケア 要 因 : 外 力 ( 体 位 体 圧 分 散 用 具 ) 湿 潤 (スキンケア) 栄 養 ( 栄 養 補 給 ) 自 立 (リハビリ テーション 介 護 力 )
リスクアセスメント 在 宅 ではさらに 介 護 者 の 疲 労 介 護 力 不 足 介 護 者 の 無 関 心 などが 二 次 的 危 険 因 子 となる リスクアセスメントツールがいろいろある 観 察 視 点 の 統 一 経 時 的 評 価 早 期 介 入 誰 が いつ 評 価 するか? ブレーデンスケール OHスケール 在 宅 版 K 式 ス ケールなど
圧 迫 ずれ 力 の 排 除 体 位 変 換 : 自 力 で 体 位 変 換 不 可 ならば 体 圧 分 散 マットレスを 使 用 し 定 期 的 に 体 位 変 換 を 行 う 頭 側 拳 上 :30 度 まで 体 圧 分 散 マットレス:リスクあれば 使 用 円 座 は 皮 膚 の 保 護 : 適 切 なドレッシング 材 や 外 用 剤 を 使 用 する 姿 勢 保 持 : 特 に 車 椅 子 乗 車 の 場 合 に 注 意 圧 力 分 散 : 除 圧 動 作 不 可 の 場 合 適 切 なクッショ ンを 使 用
スキンケア 浮 腫 を 伴 う 皮 膚 の 清 潔 保 持 は 優 しくおこなう 皮 膚 乾 燥 予 防 のため 保 湿 外 用 薬 を 用 いる 皮 膚 外 傷 予 防 :ベッド 周 囲 の 環 境 を 整 える( 巻 き 込 みや 下 敷 きの 防 止 ベッド 柵 にカバーをつける 寝 具 のしわを 伸 ばすなど) 皮 膚 の 露 出 を 最 小 限 にする 医 療 用 テープの 使 用 は 最 小 限 にする ( 療 養 者 介 護 者 ともに) 爪 を 切 る
スキンケア シーツやマットは 吸 水 性 熱 放 散 性 が 高 いものを 使 用 する 発 汗 時 には 速 やかに 皮 膚 の 清 潔 を 図 り 衣 服 を 交 換 する 皮 膚 洗 浄 後 排 泄 物 が 付 着 する 範 囲 に 皮 膚 保 護 のためのクリームなどを 用 いる 排 泄 物 の 水 分 吸 収 が 良 いパッド またはパッドへの 吸 収 を 促 進 するポリエステル 繊 維 綿 を 用 いる
栄 養 管 理 定 期 的 に 適 切 な 栄 養 アセスメントを 行 う 評 価 ツールいろいろある 必 要 栄 養 素 栄 養 量 を 算 出 する 適 切 な 経 路 で 栄 養 を 投 与 する なるべく 生 理 的 に 経 口 > 経 腸 > 経 静 脈 食 事 摂 取 量 50% 以 下 Alb 3.5 g/dl 以 下 で 褥 瘡 発 生 リ スク 低 栄 養 状 態 の 改 善 が 必 要 微 量 元 素 ビタミンなどの 補 充 も 検 討 意 図 的 でない 体 重 減 少 を 認 めた 場 合 原 因 検 索 が 必 要 摂 食 嚥 下 機 能 の 評 価 やリハビリ 口 腔 ケアも 重 要
リハビリテーション 関 節 拘 縮 予 防 のために なるべく 他 動 運 動 を 行 う 体 圧 分 散 マットレスに 加 えて 接 触 面 積 を 増 やし 体 圧 の 分 散 と 姿 勢 の 安 定 を 図 るために 個 々の 状 態 に 応 じて 適 切 にピローを 用 いる 体 の 部 位 同 士 が 接 触 しないように クッション 等 を 用 いる
現 場 に 戻 って
現 場 でして 欲 しいこと 1. 除 圧 /ポジショニング 2. 観 察 :デブリしなくてよいか? 3. 観 察 : 感 染 していないか? 4. 観 察 : 治 り 具 合 はどうか 5. 処 置 方 法 の 工 夫 6. 介 護 者 への 指 導
非 医 療 用 材 料 も 有 用 利 点 : 傷 や 皮 膚 にくっつかない 傷 を 乾 燥 させない 傷 の 観 察 が 簡 単 安 価 で 手 に 入 りやすい とにかく 薄 い 欠 点 : 浸 出 液 を 吸 収 しない 蒸 れやすい 浸 出 液 が 多 い と 臭 うことも
こんなのも ラップにはない 利 点 : 浸 出 液 を 適 度 に 外 に 逃 がして くれる 欠 点?: オムツなど 併 用 する 必 要 がある
オプサイトガーゼ ガーゼにオプサイトを 貼 ったもの 小 さな 褥 瘡 ならこれで 十 分
オプサイトおむつ おむつ 内 面 の 仙 骨 部 に 当 たる 位 置 にオプサイトを 貼 ったもの
2005 年 7 月 26 日 朝 日 新 聞
参 考 図 書
まとめ 1. 皮 膚 をよく 観 察 しましょう 2. 何 はともあれ 除 圧 が 大 事 3. 原 則 を 理 解 した 上 で 実 情 に 合 わせて 知 恵 を 絞 って 考 えましょう 4.なるべく 医 師 を 巻 き 込 んでください
ご 清 聴 ありがとう ございました