東アジア06_8章.indd



Similar documents

●電力自由化推進法案

< F2D AFA CD90AE94F58C7689E62E6A7464>

(4) 武 力 攻 撃 原 子 力 災 害 合 同 対 策 協 議 会 との 連 携 1 市 は 国 の 現 地 対 策 本 部 長 が 運 営 する 武 力 攻 撃 原 子 力 災 害 合 同 対 策 協 議 会 に 職 員 を 派 遣 するなど 同 協 議 会 と 必 要 な 連 携 を 図 る

< F2D AFA CD90AE94F58C7689E62E6A7464>

岡山県警察用航空機の運用等に関する訓令

航空隊及び教育航空隊の編制に関する訓令

<4D F736F F D D3188C091538AC7979D8B4B92F F292B98CF092CA81698A94816A2E646F63>

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

為 が 行 われるおそれがある 場 合 に 都 道 府 県 公 安 委 員 会 がその 指 定 暴 力 団 等 を 特 定 抗 争 指 定 暴 力 団 等 として 指 定 し その 所 属 する 指 定 暴 力 団 員 が 警 戒 区 域 内 において 暴 力 団 の 事 務 所 を 新 たに 設

<4D F736F F D C482C682EA817A89BA90BF8E7793B1834B A4F8D91906C8DDE8A A>

Microsoft PowerPoint - 報告書(概要).ppt

●幼児教育振興法案

私立大学等研究設備整備費等補助金(私立大学等

スライド 1

平成25年度 独立行政法人日本学生支援機構の役職員の報酬・給与等について

Microsoft Word - 佐野市生活排水処理構想(案).doc

< F2D A C5817A C495B6817A>


学校安全の推進に関する計画の取組事例

< F2D C7689E682CC91E58D6A2E6A7464>

セルフメディケーション推進のための一般用医薬品等に関する所得控除制度の創設(個別要望事項:HP掲載用)

〔自 衛 隊〕

<4D F736F F D E598BC68A8897CD82CC8DC490B68B7982D18E598BC68A8893AE82CC8A C98AD682B782E993C195CA915B C98AEE82C382AD936F985E96C68B9690C582CC93C197E1915B927582CC898492B75F8E96914F955D89BF8F915F2E646F6

文化政策情報システムの運用等

高松市緊急輸送道路沿道建築物耐震改修等事業補助金交付要綱(案)

1 総 合 設 計 一 定 規 模 以 上 の 敷 地 面 積 及 び 一 定 割 合 以 上 の 空 地 を 有 する 建 築 計 画 について 特 定 行 政 庁 の 許 可 により 容 積 率 斜 線 制 限 などの 制 限 を 緩 和 する 制 度 である 建 築 敷 地 の 共 同 化 や

<6D313588EF8FE991E58A778D9191E5834B C8EAE DC58F4992F18F6F816A F990B32E786C73>

<4D F736F F D20365F335F8FF08C8F90DD92E FC92F994C5382D32816A>

頸 がん 予 防 措 置 の 実 施 の 推 進 のために 講 ずる 具 体 的 な 施 策 等 について 定 めることにより 子 宮 頸 がんの 確 実 な 予 防 を 図 ることを 目 的 とする ( 定 義 ) 第 二 条 この 法 律 において 子 宮 頸 がん 予 防 措 置 とは 子 宮

< F2D926E88E6895E977089DB81608E528CFB8CA78C788E4082CC8D71>

Microsoft Word - 都市計画法第34条第11号及び第12号

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 役 名 法 人 の 長 理 事 理 事 ( 非 常 勤 ) 平 成 25 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 16,936 10,654 4,36

Ⅶ 東 海 地 震 に 関 して 注 意 情 報 発 表 時 及 び 警 戒 宣 言 発 令 時 の 対 応 大 規 模 地 震 対 策 特 別 措 置 法 第 6 条 の 規 定 に 基 づき 本 県 の 東 海 地 震 に 係 る 地 震 防 災 対 策 強 化 地 域 において 東 海 地 震

その 他 事 業 推 進 体 制 平 成 20 年 3 月 26 日 に 石 垣 島 国 営 土 地 改 良 事 業 推 進 協 議 会 を 設 立 し 事 業 を 推 進 ( 構 成 : 石 垣 市 石 垣 市 議 会 石 垣 島 土 地 改 良 区 石 垣 市 農 業 委 員 会 沖 縄 県 農

自衛官俸給表の1等陸佐、1等海佐及び1等空佐の(一)欄又は(二)欄に定める額の俸給の支給を受ける職員の占める官職を定める訓令

預 金 を 確 保 しつつ 資 金 調 達 手 段 も 確 保 する 収 益 性 を 示 す 指 標 として 営 業 利 益 率 を 採 用 し 営 業 利 益 率 の 目 安 となる 数 値 を 公 表 する 株 主 の 皆 様 への 還 元 については 持 続 的 な 成 長 による 配 当 可

公表表紙

目 次 第 1 章 総 則 第 1 節 計 画 の 目 的... 1 第 1 計 画 の 目 的 1 第 2 計 画 の 策 定 1 第 3 計 画 の 構 成 2 第 4 用 語 の 意 義 2 第 2 節 計 画 の 前 提 条 件... 3 第 1 自 然 条 件 3 第 2 社 会 条 件

18 国立高等専門学校機構

m07 北見工業大学 様式①

学校教育法等の一部を改正する法律の施行に伴う文部科学省関係省令の整備に関する省令等について(通知)

<8BB388F58F5A91EE82A082E895FB8AEE967B95FB906A>


<4D F736F F D F8D828D5A939982CC8EF68BC697BF96B38F9E89BB82CC8A6791E52E646F63>

退職手当とは

Microsoft Word - 目次.doc

定款  変更

< EE597768E968BC688EA97972D372E786477>

した 開 示 決 定 等 に 当 たっては, 法 11 条 を 適 用 して, 平 成 23 年 5 月 13 日 まで 開 示 決 定 等 の 期 限 を 延 長 し, 同 年 4 月 11 日 付 け 防 官 文 第 号 により,1 枚 目 を 一 部 開 示 した そして, 同 年

Microsoft Word 基本計画.doc

は 固 定 流 動 及 び 繰 延 に 区 分 することとし 減 価 償 却 を 行 うべき 固 定 の 取 得 又 は 改 良 に 充 てるための 補 助 金 等 の 交 付 を 受 けた 場 合 にお いては その 交 付 を 受 けた 金 額 に 相 当 する 額 を 長 期 前 受 金 とし

参 考 改 正 災 害 対 策 基 本 法 1 ( 災 害 時 における 車 両 の 移 動 等 ) 第 七 十 六 条 の 六 道 路 管 理 者 は その 管 理 する 道 路 の 存 する 都 道 府 県 又 はこれに 隣 接 し 若 しくは 近 接 する 都 道 府 県 の 地 域 に 係

Microsoft Word  要綱.doc

16 日本学生支援機構

の 購 入 費 又 は 賃 借 料 (2) 専 用 ポール 等 機 器 の 設 置 工 事 費 (3) ケーブル 設 置 工 事 費 (4) 防 犯 カメラの 設 置 を 示 す 看 板 等 の 設 置 費 (5) その 他 設 置 に 必 要 な 経 費 ( 補 助 金 の 額 ) 第 6 条 補

Microsoft Word - 19年度(行情)答申第081号.doc

 三郷市市街化調整区域の整備及び保全の方針(案)

公 的 年 金 制 度 について 制 度 の 持 続 可 能 性 を 高 め 将 来 の 世 代 の 給 付 水 準 の 確 保 等 を 図 るため 持 続 可 能 な 社 会 保 障 制 度 の 確 立 を 図 るための 改 革 の 推 進 に 関 する 法 律 に 基 づく 社 会 経 済 情

Microsoft Word - 【セット】GL和文(エンバーゴ無し)

Microsoft Word 第1章 定款.doc

Microsoft Word - ★HP版平成27年度検査の結果

社会保険加入促進計画に盛込むべき内容

定款

Ⅰ 調 査 の 概 要 1 目 的 義 務 教 育 の 機 会 均 等 その 水 準 の 維 持 向 上 の 観 点 から 的 な 児 童 生 徒 の 学 力 や 学 習 状 況 を 把 握 分 析 し 教 育 施 策 の 成 果 課 題 を 検 証 し その 改 善 を 図 るもに 学 校 におけ

平成16年年金制度改正 ~年金の昔・今・未来を考える~

Microsoft Word - 19年度(行情)答申第076号.doc

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 法 人 の 長 A 18,248 11,166 4, ,066 6,42

honbu-38H06_kunrei31

する ( 評 定 の 時 期 ) 第 条 成 績 評 定 の 時 期 は 第 3 次 評 定 者 にあっては 完 成 検 査 及 び 部 分 引 渡 しに 伴 う 検 査 の 時 とし 第 次 評 定 者 及 び 第 次 評 定 者 にあっては 工 事 の 完 成 の 時 とする ( 成 績 評 定

Microsoft Word 行革PF法案-0概要

<4D F736F F D A94BD837D836C B4B92F62E646F6378>

国立研究開発法人土木研究所の役職員の報酬・給与等について

スライド 1

(Microsoft Word - \212\356\226{\225\373\220j _\217C\220\263\201j.doc)

(2)大学・学部・研究科等の理念・目的が、大学構成員(教職員および学生)に周知され、社会に公表されているか

国 家 公 務 員 の 年 金 払 い 退 職 給 付 の 創 設 について 検 討 を 進 めるものとする 平 成 19 年 法 案 をベースに 一 元 化 の 具 体 的 内 容 について 検 討 する 関 係 省 庁 間 で 調 整 の 上 平 成 24 年 通 常 国 会 への 法 案 提

能勢町市街化調整区域における地区計画のガイドライン

有 料 老 ホーム ( ) ( 主 として 要 介 護 状 態 にある を 入 居 させるも のに 限 る ) 第 29 条 ( 届 出 等 ) 第 二 十 九 条 有 料 老 ホーム( 老 を 入 居 させ 入 浴 排 せつ 若 しくは 食 事 の 介 護 食 事 の 提 供 又 はその 他 の

< F2D819A8B638E968E9197BF82528E968BC68C7689E68F C>

新 行 財 政 改 革 推 進 大 綱 実 施 計 画 個 票 取 組 施 策 国 や 研 究 機 関 への 派 遣 研 修 による 資 質 向 上 の 推 進 鳥 インフルエンザ 等 新 たな 感 染 症 等 に 対 する 検 査 技 術 の 習 得 など 職 員 の 専 門

<4D F736F F D2091E F18CB48D C481698E7B90DD8F9590AC89DB816A2E646F63>

近畿中部防衛局広報誌

0439 研究開発推進事業(防衛省所管計上)250614

ていることから それに 先 行 する 形 で 下 請 業 者 についても 対 策 を 講 じることとしまし た 本 県 としましては それまでの 間 に 未 加 入 の 建 設 業 者 に 加 入 していただきますよう 28 年 4 月 から 実 施 することとしました 問 6 公 共 工 事 の

検 討 検 討 の 進 め 方 検 討 状 況 簡 易 収 支 の 世 帯 からサンプリング 世 帯 名 作 成 事 務 の 廃 止 4 5 必 要 な 世 帯 数 の 確 保 が 可 能 か 簡 易 収 支 を 実 施 している 民 間 事 業 者 との 連 絡 等 に 伴 う 事 務 の 複 雑

財政再計算結果_色変更.indd

<4D F736F F D B8E968BC695E58F CA A2E646F63>

緊急消防援助隊の計画的な増強・充実

った 場 合 など 監 事 の 任 務 懈 怠 の 場 合 は その 程 度 に 応 じて 業 績 勘 案 率 を 減 算 する (8) 役 員 の 法 人 に 対 する 特 段 の 貢 献 が 認 められる 場 合 は その 程 度 に 応 じて 業 績 勘 案 率 を 加 算 することができる

<6E32355F8D918DDB8BA697CD8BE28D C8EAE312E786C73>

災害時の賃貸住宅居住者の居住の安定確保について

(Microsoft Word - \221\346\202P\202U\201@\214i\212\317.doc)

別 紙 第 号 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 議 案 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 を 次 のように 定 める 平 成 26 年 2 月 日 提 出 高 知 県 知 事 尾

PowerPoint プレゼンテーション

送 信 局 を 電 気 通 信 事 業 者 に 貸 し 付 けるとともに 電 気 通 信 事 業 者 とあらかじめ 契 約 等 を 締 結 する 必 要 があること なお 既 に 電 気 通 信 事 業 者 において 送 信 局 を 整 備 している 地 域 においては 当 該 設 備 の 整 備

<819A955D89BF92B28F BC690ED97AA8EBA81418FA48BC682CC8A8890AB89BB816A32322E786C7378>

東京事務所BCP【実施要領】溶け込み版

航空隊等の内部組織に関する達

<4D F736F F D F93878CA797708F4390B3816A819A95CA8B4C976C8EAE91E682538B4C8DDA97E12E646F6378>

Transcription:

第 8 章 日 本 より 充 実 した 国 際 協 力 を 目 指 して

日 本 の 防 衛 政 策 の 基 本 的 な 方 向 性 は 防 衛 計 画 の 大 綱 ( 以 下 大 綱 ) によって 定 められている 2004 年 に 新 たな 大 綱 ( 以 下 新 大 綱 )が 策 定 されたが それは 76 年 策 定 の 最 初 の 大 綱 冷 戦 終 結 後 の 国 際 情 勢 を 踏 まえて 95 年 に 策 定 された 2 つ 目 の 大 綱 を 経 た 3 つ 目 の 大 綱 である 21 世 紀 において 安 全 保 障 問 題 のグローバル 化 が 進 んでおり 着 上 陸 侵 攻 など の 本 格 的 な 侵 略 事 態 に 備 えるだけでは さまざまな 事 態 に 対 応 すること ができないことが 新 大 綱 の 基 本 認 識 にある 最 優 先 の 目 標 が 日 本 の 防 衛 であることには 変 わりはない ただし 冷 戦 期 に 想 定 されていたような 数 個 師 団 による 着 上 陸 侵 攻 のような 本 格 的 侵 略 が 近 い 将 来 に 日 本 に 対 してなされるとは 考 えにくい むしろ 現 在 の 安 全 保 障 環 境 においては 弾 道 ミサイル 攻 撃 離 島 侵 攻 など いわ ゆる 新 たな 脅 威 多 様 な 事 態 に 備 える 必 要 性 がより 高 いと 考 えられ る そのため 新 大 綱 では 財 政 事 情 などを 考 慮 しつつ 兵 力 構 成 や 資 源 配 分 のプライオリティーの 変 更 をともなう 見 直 しがなされたのである 新 大 綱 のもう 一 つの 重 要 な 特 徴 は 同 盟 国 との 協 力 や 国 際 社 会 との 協 力 をより 積 極 的 に 進 め グローバルな 安 全 保 障 問 題 への 主 体 的 な 関 与 を 強 めていくことを 目 指 している 点 である グローバル 化 が 進 んだ 現 在 の 世 界 においては 国 土 防 衛 のみに 特 化 した 自 衛 隊 では 日 本 の 安 全 を 守 れ るとは 限 らない 国 際 的 な 協 力 を 拡 大 深 化 させつつ 地 域 的 な あるい はグローバルな 安 全 保 障 上 の 問 題 に 対 応 していかなければならないので ある この 流 れは 95 年 大 綱 で 始 まったものであるが 新 大 綱 はそれ をさらに 進 めようとしている 218

第 8 章 日 本 より 充 実 した 国 際 協 力 を 目 指 して (1)95 年 大 綱 当 時 からの 変 化 冷 戦 の 終 結 によって 国 際 安 全 保 障 の 枠 組 みは 構 造 的 に 変 化 した こ の 構 造 的 変 化 に 対 しては すでに 95 年 大 綱 で 対 応 が 図 られている し かし ここ 10 年 の 間 で 日 本 内 外 の 情 勢 は 大 きく 変 化 しており あら ためて 大 綱 を 見 直 す 必 要 が 生 じていた 90 年 代 前 半 は 冷 戦 が 終 結 した 直 後 で 新 たな 国 際 秩 序 への 過 渡 期 であった 地 域 安 全 保 障 における 日 本 の 役 割 も 米 国 のアジア 太 平 洋 地 域 へのコミットメントの 形 態 や 程 度 も 確 定 はしていなかった また 地 域 において 安 全 保 障 問 題 を 協 議 する 枠 組 みもなかった その 一 方 で 朝 鮮 半 島 危 機 や 台 湾 海 峡 危 機 といった 地 域 の 不 安 定 感 を 醸 成 するような 出 来 事 が 起 こっていた つまり 不 透 明 不 確 実 な 国 際 環 境 の 中 で 新 たな 地 域 安 全 保 障 の 姿 が 模 索 されていた 過 渡 期 において 95 年 大 綱 は 策 定 されたのである 95 年 大 綱 策 定 後 10 年 を 経 た 現 在 安 全 保 障 環 境 はかなり 変 化 してい る まず 朝 鮮 半 島 情 勢 に 関 しては 北 朝 鮮 の 核 疑 惑 が 地 域 の 安 全 保 障 上 の 懸 念 材 料 であることに 変 化 はない しかし 10 年 前 は 単 に 核 兵 器 の 開 発 を 行 っている ことへの 疑 惑 だったものが 現 在 では 核 兵 器 を 既 に 保 有 している ことへの 疑 惑 に 変 わってきている また 中 国 も 10 年 間 で 経 済 成 長 を 背 景 に 海 空 軍 の 近 代 化 を 積 極 的 に 進 めており 軍 の 近 代 化 の 目 標 が 中 国 の 防 衛 に 必 要 な 範 囲 を 超 えるものではないのか 慎 重 に 判 断 されるべきであり このような 近 代 化 の 動 向 については 今 後 とも 注 目 していく 必 要 ( 平 成 17 年 度 版 防 衛 白 書 )が 生 じている その 上 非 国 家 主 体 による 国 際 テロのような 伝 統 的 な 抑 止 概 念 では 対 応 しきれ ない 脅 威 も 台 頭 してきているのである このように 不 透 明 不 確 実 とされた 95 年 大 綱 当 時 の 安 全 保 障 環 境 と 比 較 して 現 在 の 安 全 保 障 環 境 は 改 善 されているどころか むしろ 不 安 定 性 への 懸 念 が 増 していると 219

さえ 言 える 一 方 で 90 年 代 後 半 には いわゆる ナイ イニシアティブ によっ て 米 国 が 今 後 ともアジア 太 平 洋 地 域 の 安 全 保 障 にコミットすることが 明 らかにされ 並 行 して 日 米 同 盟 の 再 確 認 や 新 たな 日 米 防 衛 協 力 の 指 針 が 策 定 されるなど 地 域 レベルで 不 安 定 要 因 に 対 応 するための 枠 組 みの 整 備 が 進 んだ 国 際 的 に 見 ても 国 連 をはじめとして 同 盟 に 基 づ く 協 力 脅 威 認 識 を 共 有 する 国 々からなるいわゆる 有 志 連 合 的 な 協 力 あるいは 朝 鮮 半 島 の 核 問 題 に 関 する 六 者 会 合 のような 地 域 内 での 協 力 など 脅 威 に 対 しては 国 際 的 な 協 力 枠 組 みを 活 用 して 対 処 する 傾 向 が ここ 10 年 間 で 強 まりつつある また 国 内 的 にも 幾 つかの 国 連 平 和 維 持 活 動 (PKO)への 参 加 を 経 て 自 衛 隊 の 国 際 平 和 協 力 活 動 への 国 民 の 支 持 が 定 着 してきた このように 国 際 安 全 保 障 環 境 の 安 定 化 に 向 け た 国 際 社 会 の 取 り 組 みもまた 10 年 前 に 比 べると 格 段 に 強 化 されている このようなプラス マイナス 両 面 の 環 境 の 変 化 を 受 けて 新 大 綱 の 策 定 が 進 められたのである (2) 新 大 綱 の 目 指 すもの 多 機 能 弾 力 的 実 効 性 と 3 つのアプローチ 新 大 綱 の 背 景 にある 考 え 方 の 要 点 は 次 のとおりである( 詳 細 は 平 成 17 年 度 版 防 衛 白 書 を 参 照 ) 大 きな 特 徴 は 脅 威 認 識 の 変 化 すなわち 着 上 陸 侵 攻 などの 本 格 的 な 侵 略 事 態 の 脅 威 が 減 じた 一 方 で 弾 道 ミサ イル 攻 撃 島 嶼 部 への 侵 略 などの 新 たな 脅 威 多 様 な 事 態 への 対 応 を 重 視 する 必 要 があると 認 識 していることである つまり 高 烈 度 の 脅 威 に 対 して 備 える 必 要 性 は 低 下 したとしても 対 応 しなければならない 脅 威 の 幅 はむしろ 広 がっていると 考 えられている こうした 状 況 に 備 え る 防 衛 力 概 念 として 新 大 綱 では 多 機 能 弾 力 的 実 効 性 をキーワー ドとする 防 衛 力 構 想 が 提 示 された 特 に 新 たな 脅 威 多 様 な 事 態 の 中 には 非 国 家 主 体 によるテロなど 伝 統 的 な 抑 止 によって 未 然 に 防 止 す ることが 難 しい 事 態 もあることから 抑 止 のための 体 制 整 備 だけでなく 事 態 が 生 起 したあと 高 度 な 即 応 性 によって 迅 速 に 対 応 するための 体 制 220

第 8 章 日 本 より 充 実 した 国 際 協 力 を 目 指 して 整 備 も 必 要 となる もう 一 つの 特 徴 は 日 本 自 身 の 努 力 だけではなく 同 盟 国 との 協 力 国 際 社 会 との 協 力 の 3 つのアプローチを 組 み 合 わせて 我 が 国 に 直 接 脅 威 が 及 ぶことを 防 止 し 脅 威 が 及 んだ 場 合 にはこれを 排 除 するとともに その 被 害 を 最 小 化 すること と 国 際 的 な 安 全 保 障 環 境 を 改 善 し 我 が 国 に 脅 威 が 及 ばないようにすること を 達 成 しようとすることである 21 世 紀 の 世 界 では 安 全 保 障 問 題 においてもグローバル 化 が 進 みつつ あり 日 本 自 身 の 努 力 だけでは 国 際 テロなどの 新 たな 脅 威 には 対 応 で きなくなってきている 国 際 的 な 協 力 を 拡 大 深 化 させつつ 地 域 的 な あるいはグローバルな 安 全 保 障 上 の 問 題 に 対 応 していかなければならな い そのため 新 大 綱 は 同 盟 国 や 国 際 社 会 との 協 力 をより 積 極 的 に 進 め グローバルな 安 全 保 障 問 題 への 主 体 的 な 関 与 を 強 めていくことを 目 指 している (3)2005 年 の 自 衛 隊 の 国 際 協 力 2004 年 12 月 26 日 のスマトラ 沖 大 地 震 津 波 災 害 は インド 洋 沿 岸 諸 国 に 大 規 模 な 被 害 をもたらした 2005 年 は 津 波 災 害 に 対 する 各 国 の 救 援 活 動 とともに 幕 を 開 けたといえる 日 本 はまず インド 洋 での 対 テ ロ 作 戦 に 対 する 補 給 任 務 を 終 え 帰 国 途 上 にあった 艦 艇 3 隻 による 捜 索 救 助 活 動 を 直 ちに 実 施 し 57 遺 体 を 収 容 してタイに 引 き 渡 すとともに 日 本 の 国 際 緊 急 援 助 隊 員 12 人 と 機 材 をカオラックからピピ 島 へと 空 輸 した 続 いて1 月 4 日 には 先 遣 隊 をタイおよびインドネシアに 派 遣 し 陸 上 自 衛 隊 派 遣 の 準 備 を 行 った 6 日 には 航 空 自 衛 隊 の 輸 送 機 C-130H を 派 遣 し 10 日 から 援 助 物 資 などの 空 輸 を 開 始 し 物 資 ( 食 料 医 薬 品 など) 約 240t 人 員 413 人 車 両 1 両 を 輸 送 した そして 先 遣 隊 の 調 査 を 基 に 1 月 12 日 に 陸 上 自 衛 隊 のヘリコプター 部 隊 と 医 療 防 疫 部 隊 を 搭 載 した 輸 送 艦 くにさき が 出 港 し 24 日 にスマトラ 島 沖 に 到 着 26 日 から 支 援 活 動 を 行 った 陸 上 自 衛 隊 は 輸 送 ヘリコプター CH-47JA 多 用 途 ヘリコプター UH-60JA を 用 いて 物 資 ( 食 料 医 薬 品 テントな 221

インドネシア バンダアチェにおいて 陸 上 自 衛 隊 車 両 を 輸 送 する 海 上 自 衛 隊 エアクッション 艇 (2005 年 1 月 27 日 ) ( 写 真 提 供 共 同 通 信 社 ) ど) 約 160t 人 員 1,570 人 を 輸 送 し 海 上 自 衛 隊 は くにさ き ホバークラフト 哨 戒 ヘリコプター SH-60J を 用 い て 物 資 ( 食 料 飲 料 水 など) 1.3t 人 員 128 人 重 機 (ダンプ パワーショベルなど)34 両 を 輸 送 し た そ れ に 加 え 14 日 には 陸 上 自 衛 隊 派 遣 部 隊 の 一 部 が 応 急 医 療 チームとして 空 路 派 遣 され 19 日 から 28 日 の 間 応 急 医 療 を 実 施 した 彼 らは 約 6,000 人 に 対 する 診 療 を 行 い 約 2,300 人 に 対 してワクチンを 接 種 した 29 日 からは 防 疫 活 動 が 始 められ バンダアチェ 市 内 の 約 13 万 m 2 に 対 する 防 疫 が 行 われた 2005 年 には もう 一 つの 大 規 模 な 国 際 的 災 害 救 援 活 動 が 行 われた 10 月 8 日 のパキスタンを 中 心 にインド 北 部 にわたる 広 い 範 囲 で 被 害 をも たらした 大 地 震 ( 以 下 パキスタン 等 大 地 震 )である 地 震 の 翌 日 の9 日 には パキスタンのムシャラフ 大 統 領 から 輸 送 ヘリコプターを 要 望 する 旨 の 声 明 が 出 された 現 地 においては 遠 隔 地 への 道 路 が 寸 断 されて 通 行 が 難 しくなっており そのため テント 毛 布 保 存 食 医 薬 品 など の 物 資 に 加 え 救 援 関 係 者 を 輸 送 するため ヘリコプターのニーズが 非 常 に 大 きかったのである 日 本 としてもそれに 応 じて UH-1 多 用 途 ヘ リコプター 3 機 を 派 遣 し 救 援 物 資 の 空 輸 支 援 を 行 うことを 決 定 した 12 日 に 先 遣 隊 が 出 発 し 13 日 にはヘリコプターを 分 解 して 搭 載 した C-130H が 2 機 14 日 にも C-130H が 2 機 と 人 員 物 資 を 搭 載 した 政 府 専 用 機 の B-747 が 2 機 派 遣 された このうち B-747 は 当 日 中 に 目 的 地 に 到 着 し C-130H は 那 覇 バンコク カルカッタ デリーなどでの 給 油 お よび 宿 泊 のための 着 陸 を 経 て 15 日 と 16 日 に 現 地 に 到 着 している 到 着 後 直 ちにヘリコプターの 組 み 立 てを 完 了 し 16 日 には 試 験 飛 行 を 行 い 17 日 から 物 資 の 空 輸 を 開 始 した また ヘリコプターの 需 要 が 高 かっ 222

第 8 章 日 本 より 充 実 した 国 際 協 力 を 目 指 して たことから 政 府 は 追 加 派 遣 を 決 定 した 新 たに 派 遣 されたのも 3 機 の UH-1 で 21 日 と 22 日 に C-130H が 2 機 ずつ 出 発 し それぞれ 23 日 と24 日 に 到 着 し 25 日 か ら 活 動 を 始 めた なお 日 本 のヘリコプターが 行 った のは 主 として 首 都 イス ラマバードとそこから 北 北 パキスタン 等 大 地 震 において 負 傷 した 被 災 者 を 輸 送 する 陸 上 自 衛 隊 UH-1 多 用 途 ヘリコプター ( 写 真 提 供 共 同 通 信 社 ) 西 に 約 100km 離 れたバダグラムの 間 の 輸 送 支 援 である 11 月 14 日 に 活 動 終 了 に 関 する 命 令 が 発 出 され 最 終 的 に12 月 1 日 に 派 遣 部 隊 は 帰 国 し たが その 間 合 計 で 物 資 約 40t 人 員 720 人 が 輸 送 された こうした 災 害 救 援 活 動 に 加 え インド 洋 とイラクでの 活 動 も 続 けら れた インド 洋 における 活 動 は テロ 対 策 特 措 法 に 基 づいて 2001 年 11 月 から 行 われているが これは 元 来 2 年 の 期 限 を 定 めた 時 限 立 法 であ り 2001 年 10 月 に 成 立 した 後 2003 年 の 10 月 に 期 限 が 2 年 間 延 長 され ている 従 って 2005 年 の 11 月 1 日 に 活 動 の 期 限 が 設 定 されていたが アフガニスタンにおけるテロとの 闘 いはいまだ 続 いている 特 に 補 給 艦 を 持 っている 国 が 割 合 少 ない うえ 諸 外 国 の 艦 艇 がインド 洋 上 にお いてテロとの 闘 いの 一 環 として 行 っているこの 海 上 阻 止 活 動 というもの が テロリストや 武 器 など 関 連 物 資 の 海 上 移 動 を 阻 止 するということに よりまして テロの 脅 威 が 世 界 各 国 に 拡 大 することを 抑 止 している ( 当 時 の 大 野 功 統 防 衛 庁 長 官 の 発 言 )ことなどから 再 延 長 が 必 要 である と 判 断 された そして 1 年 間 の 活 動 延 長 を 可 能 とするテロ 対 策 特 措 法 改 正 法 案 が 国 会 に 提 出 され 10 月 26 日 に 成 立 した テロ 対 策 特 措 法 に 基 づく 活 動 の 主 な 内 容 は 海 上 自 衛 隊 によるインド 洋 上 の 米 国 など 11 カ 国 の 艦 艇 に 対 する 給 油 と 航 空 自 衛 隊 による 米 軍 の 物 資 などの 輸 送 である インド 洋 には 同 時 に 2 隻 から 3 隻 を 1 組 223

として 補 給 艦 と 護 衛 艦 を 派 遣 しており これまで 派 遣 された 艦 艇 は 12 月 31 日 現 在 で 延 べ49 隻 に 達 する なお その 中 で 補 給 艦 とわだ は 5 回 はまな は5 回 派 遣 されている 海 上 自 衛 隊 が 協 力 支 援 活 動 を 行 っているのは インド 洋 において テ ロ 組 織 が テロリスト 武 器 あるいは 資 金 源 となる 麻 薬 などを 海 路 を 使 って 移 動 させるのを 監 視 し 阻 止 する 海 上 阻 止 活 動 である この 中 で 洋 上 給 油 は 地 味 な 作 業 であるが 非 常 に 重 要 な 役 割 を 果 たしている 洋 上 を 監 視 する 上 で 必 要 なことは できるだけ 多 くの 眼 すなわち 艦 艇 や 航 空 機 を できるだけ 広 い 面 積 に 展 開 させることである しかし 燃 料 が 少 なくなった 艦 艇 は 帰 港 しなければならず 帰 港 している 間 代 わりの 艦 艇 を 展 開 させなければならない 洋 上 給 油 ができれば それら の 艦 艇 はより 長 く 洋 上 で 行 動 できることになる つまり 日 本 が 洋 上 給 油 を 行 うことにより 全 体 の 艦 艇 の 絶 対 数 が 同 じだったとしても 海 上 阻 止 活 動 のために 常 時 展 開 している 艦 艇 の 相 対 的 な 割 合 を 増 すことがで きるのである こうしたことから 日 本 の 活 動 は テロとの 闘 いにおい ても 大 きな 意 味 を 持 っている イラクにおいても イラク 人 道 復 興 支 援 特 措 法 に 基 づく 国 際 平 和 協 力 活 動 が 続 けられている イラク 人 道 復 興 支 援 特 措 法 は 2003 年 8 月 に 施 行 されたもので 同 年 12 月 に 閣 議 決 定 された 基 本 計 画 に 規 定 され たとおり 600 人 を 上 限 とする 陸 上 自 衛 隊 と 8 機 以 内 の 航 空 機 を 運 用 する 航 空 自 衛 隊 輸 送 艦 など 2 隻 と 護 衛 艦 2 隻 を 上 限 とする 海 上 自 衛 隊 の 活 動 によって 構 成 されている なお 同 法 の 期 限 は 4 年 と 定 められて いるので 2007 年 まで 有 効 であるが 基 本 計 画 の 期 限 は 2005 年 12 月 14 日 であった しかし イラクに 民 主 的 で 安 定 した 政 権 ができるよう 可 能 な 限 りの 支 援 を 行 うことにより 国 際 社 会 の 一 員 としての 責 任 を 果 た すべき であり イラクをテロの 温 床 とせず 平 和 で 民 主 的 な 国 として 復 興 させることは 国 際 社 会 の 安 定 に 極 めて 大 きな 意 味 があり 我 が 国 の 国 益 にかなう ( 基 本 計 画 変 更 の 際 の 小 泉 純 一 郎 首 相 の 談 話 )こと から 12 月 8 日 に 1 年 間 派 遣 を 延 長 するための 基 本 計 画 の 変 更 が 閣 議 224

第 8 章 日 本 より 充 実 した 国 際 協 力 を 目 指 して 決 定 された このうち 陸 上 自 衛 隊 は 約 3 カ 月 で 交 代 する 復 興 支 援 群 と 約 6 カ 月 で 交 代 する 復 興 業 務 支 援 隊 を 派 遣 し 医 療 活 動 給 水 活 動 学 校 や 浄 水 場 などの 公 共 施 設 の 復 旧 整 備 活 動 輸 送 活 動 を 行 ってい る 航 空 自 衛 隊 は C-130H 輸 送 機 3 機 を 空 輸 隊 として 派 遣 し 陸 上 自 衛 隊 派 遣 部 隊 の 補 給 物 資 や 人 道 関 連 物 資 人 員 などを 輸 送 している 自 衛 隊 が 人 道 復 興 支 援 活 動 を 行 うのは 初 めてであるが 政 府 開 発 援 助 (ODA)とも 車 の 両 輪 として 連 携 することで 大 きな 成 果 を 挙 げてお り イラク 政 府 やアメリカ 政 府 をはじめとする 国 際 社 会 からも 高 く 評 価 されている また これらに 加 え PKO への 協 力 として ゴラン 高 原 の 国 連 兵 力 引 き 離 し 監 視 隊 への 派 遣 も 継 続 して 行 われた (1) 3 つのアプローチ における 国 際 社 会 との 協 力 95 年 大 綱 でも 国 際 平 和 協 力 業 務 や 安 全 保 障 対 話 防 衛 交 流 を 通 じ た より 安 定 した 安 全 保 障 環 境 の 構 築 が 防 衛 力 の 役 割 の 一 つとして 位 置 付 けられていた 従 って 国 際 社 会 との 協 力 を 通 じた 安 全 保 障 という 考 え 方 は 新 大 綱 でまったく 新 たに 出 現 したものではない しかし 95 年 大 綱 では 日 本 の 安 全 保 障 政 策 の 中 で 国 際 社 会 との 協 力 がどのよう に 位 置 付 けられているのか 明 確 には 定 義 されていなかった それに 対 し 新 大 綱 では 目 的 はあくまで 日 本 に 脅 威 が 及 ぶのを 防 ぐことであること を 明 確 に 定 義 した 上 で 基 本 方 針 として 国 際 社 会 との 協 力 を 我 が 国 自 身 の 努 力 同 盟 国 との 協 力 と 統 合 的 に 組 み 合 わせていくことを 掲 げている このように 新 大 綱 は 95 年 大 綱 と 比 べ 日 本 の 安 全 保 障 との 関 連 性 をより 意 識 した 上 で 積 極 的 に 国 際 社 会 との 協 力 を 位 置 付 け ているのである 新 大 綱 が 掲 げる 達 成 すべき 2 つの 目 標 のうち 我 が 国 に 直 接 脅 威 が 及 225

ぶことを 防 止 し 脅 威 が 及 んだ 場 合 にはこれを 排 除 するとともに その 被 害 を 最 小 化 すること は より 直 接 的 物 理 的 な 対 抗 手 段 を 必 要 とす る 一 方 国 際 的 な 安 全 保 障 環 境 を 改 善 し 我 が 国 に 脅 威 が 及 ばないよ うにすること については 日 本 に 対 して 現 存 する 直 接 的 かつ 明 瞭 な 脅 威 に 対 処 することよりも 潜 在 的 な あるいは 長 期 的 に 見 て 脅 威 となり 得 る 要 素 の 顕 在 化 を さまざまな 手 段 を 用 いて 未 然 に 防 止 していくこと が 重 視 される 例 えば 国 際 平 和 協 力 活 動 や 安 保 対 話 防 衛 交 流 によっ て 安 全 保 障 環 境 の 安 定 化 を 進 め 地 域 的 およびグローバルな 安 全 保 障 環 境 の 不 安 定 化 によってもたらされる 脅 威 を 未 然 に 防 止 することや 地 域 レベルやグローバルレベルの 国 際 協 力 への 参 加 を 通 じての 国 際 テロの ような 国 際 社 会 への 挑 戦 あるいは 海 賊 や 災 害 のようなトランスナショ ナルな 脅 威 に 対 応 することなどが ここでは 必 要 となる 多 機 能 弾 力 的 実 効 性 をキーワードとする 新 たな 防 衛 力 概 念 の 一 つの 大 きな 目 標 は こうした 国 際 社 会 との 協 力 を 進 めていくことであ るが それは 決 して 万 能 ではない 日 本 の 安 全 保 障 上 の 重 要 性 に 応 じた めりはりの 利 いた 資 源 配 分 が 不 可 欠 である そこで 国 際 社 会 との 協 力 を 進 めていく 上 で プライオリティーを 設 定 することが 重 要 になる こ の 点 について 平 成 17 年 度 版 防 衛 白 書 では 日 本 の 国 際 社 会 との 協 力 は 他 者 のために 行 うニュアンスの 強 い 国 際 貢 献 としてではなく 日 本 の 安 全 保 障 との 関 連 性 を 重 視 して 行 われる 国 際 協 力 であることを 明 確 にした つまり 国 際 社 会 との 協 力 のための 各 種 の 活 動 は あくまで 日 本 の 安 全 保 障 上 の 必 要 性 を 基 準 として プライオリティーが 設 定 され るのである ただグローバル 化 が 進 む 現 在 の 世 界 においては 日 本 から 遠 く 離 れた 地 域 での 出 来 事 が 予 想 外 の 影 響 をもたらすことがある 例 えば 9 11 テロ 事 件 の 前 後 では アフガニスタンが 日 本 の 安 全 保 障 に 持 つ 影 響 に 対 する 認 識 は 大 きく 変 化 した このことが 端 的 に 示 すように 現 在 の 安 全 保 障 環 境 においては 時 々 刻 々と 変 化 する 情 勢 に 対 応 して 日 本 の 安 全 保 障 との 関 連 性 を 不 断 に 検 討 した 上 で 国 際 社 会 との 協 力 を 進 めていか 226

第 8 章 日 本 より 充 実 した 国 際 協 力 を 目 指 して なければならない そのときに 必 要 となるのは 政 治 レベルの 機 敏 な 意 思 決 定 とそれを 支 える 法 制 度 高 度 な 即 応 性 を 持 つ 防 衛 態 勢 さらに 実 際 の 活 動 を 円 滑 に 進 めるための 平 常 時 からの 国 際 的 な 安 全 保 障 協 力 な のである (2) 国 際 平 和 協 力 活 動 国 際 平 和 協 力 活 動 とは 国 際 的 な 安 全 保 障 環 境 を 改 善 するために 国 際 社 会 が 協 力 して 行 う 活 動 であり 日 本 が 今 後 これに 主 体 的 積 極 的 に 取 り 組 んでいくと 新 大 綱 では 述 べられている 具 体 的 には 平 和 維 持 活 動 などを 通 じて 不 安 定 な 地 域 の 安 全 保 障 環 境 の 安 定 化 を 進 め 脅 威 の 顕 在 化 を 未 然 に 防 止 することや 国 際 的 な 協 力 枠 組 みへの 参 加 を 通 じて テロや 海 賊 災 害 といった 国 際 社 会 共 通 の 脅 威 に 対 応 していくことであ る 日 本 の 場 合 こうした 活 動 は 憲 法 の 規 定 の 範 囲 内 で 武 力 の 行 使 に 至 らない 形 で 行 われる そのため 武 力 行 使 をともなう 活 動 を 要 するよ うな 国 際 協 力 に 関 しては 日 本 は 武 力 の 行 使 を 行 わず かつ 武 力 の 行 使 と 一 体 となる と 法 的 に 評 価 されうる 活 動 を 行 わないとの 基 本 的 な 原 則 の 下 で 国 際 協 力 の 枠 組 みの 中 で 補 助 的 補 完 的 な 役 割 を 果 たすこと によって 目 的 達 成 に 協 力 することになる また これまでのところ 日 本 の 国 際 平 和 協 力 活 動 は 国 際 平 和 協 力 法 を 通 じた PKO や 国 際 緊 急 援 助 隊 法 による 人 道 的 な 国 際 救 援 活 動 への 参 加 を 除 けば テロ 対 策 特 措 法 イラク 人 道 復 興 支 援 特 措 法 に 見 られる ように その 都 度 特 別 措 置 法 を 制 定 する 形 でなされてきた この 点 か ら これらを 包 括 し 国 際 社 会 との 協 力 を 通 じた 安 全 保 障 政 策 を 体 系 化 するための 国 際 平 和 協 力 に 関 する 一 般 法 ( 恒 久 法 とも 呼 ばれる)を 制 定 する 必 要 性 をめぐる 議 論 がなされている 国 際 平 和 協 力 活 動 の 大 きな 特 徴 は その 活 動 の 種 類 が 非 常 に 多 岐 にわ たることである 国 際 平 和 協 力 法 では PKO 人 道 的 な 国 際 救 援 活 動 国 際 的 な 選 挙 監 視 活 動 が テロ 対 策 特 措 法 では 協 力 支 援 活 動 捜 索 救 助 活 動 被 災 民 救 援 活 動 が イラク 人 道 復 興 支 援 特 措 法 では 人 道 復 興 227

支 援 活 動 安 全 確 保 支 援 活 動 が 主 要 な 活 動 として 規 定 されている その 上 国 際 緊 急 援 助 隊 法 に 基 づいて 行 われる 災 害 救 難 などの 国 際 緊 急 援 助 活 動 も 国 際 平 和 協 力 活 動 の 重 要 な 一 部 を 成 している このように PKO や 洋 上 における 給 油 活 動 など 後 方 支 援 的 な 活 動 や 戦 災 からの 復 興 支 援 あるいは 大 災 害 時 における 救 難 活 動 など 国 際 平 和 協 力 活 動 の 枠 内 で 実 に 多 様 な 活 動 がなされており 自 衛 隊 はまさに 多 機 能 的 に 運 用 されているのである また イラク 派 遣 を 機 に 国 際 平 和 協 力 活 動 と ODA との 組 み 合 わせ も 非 常 に 強 く 意 識 されるようになった それを 反 映 して 新 大 綱 では 国 際 的 な 安 全 保 障 環 境 を 改 善 し 我 が 国 の 安 全 と 繁 栄 の 確 保 に 資 するため 政 府 開 発 援 助 (ODA)の 戦 略 的 な 活 用 を 含 め 外 交 活 動 を 積 極 的 に 推 進 す る と 述 べられている 実 際 イラクでは 派 遣 された 自 衛 隊 の 活 動 と ODAとを 車 の 両 輪 として 復 興 支 援 が 行 われているのである 外 務 省 で ODA を 担 当 する 職 員 は 自 衛 隊 派 遣 部 隊 の 施 設 内 でともに 生 活 して おり 自 衛 隊 員 と 外 務 省 職 員 は 協 力 して ODA のニーズの 掘 り 起 こしに 当 たっている 当 初 ODA は 草 の 根 無 償 資 金 援 助 による 物 資 供 与 が 主 体 だったが 緊 急 無 償 援 助 が 加 わることによって 規 模 が 拡 大 し 陸 上 自 衛 隊 の 活 動 との 連 携 も 強 化 されていった そして 復 興 の 本 格 化 にとも ない インフラ 整 備 や 雇 用 促 進 につながる 大 規 模 ODAの 必 要 性 が 高 まっ てきたのである 陸 上 自 衛 隊 が 補 修 を 行 った 小 学 校 の 竣 工 式 で 地 元 住 民 と 手 を 取 り 合 う 隊 員 ( 写 真 提 供 共 同 通 信 社 ) 車 の 両 輪 の 具 体 的 な 例 としては 給 水 活 動 が 挙 げられ る だ ろ う 派 遣 当 初 派 遣 先 のサマーワ 地 区 における 給 水 活 動 は 自 衛 隊 によって 行 わ れ 1 日 あたり 250t の 水 が 供 給 されていたが 2005 年 2 月 に ODA で 給 水 施 設 が 建 設 さ れ 1 日 3,000t もの 安 全 で 清 228

第 8 章 日 本 より 充 実 した 国 際 協 力 を 目 指 して 潔 な 水 を 供 給 できるようになった また ODA による 医 療 器 材 の 供 与 に 際 しての 自 衛 隊 医 官 による 技 術 指 導 や 道 路 を 復 旧 する 際 自 衛 隊 が 整 地 を 行 ったうえで 費 用 のかかるアスファルト 舗 装 を ODA で 行 うと いうようなことも 実 施 されている しかし 復 興 支 援 において 鍵 となる 雇 用 の 拡 大 を 通 じた 社 会 の 安 定 化 を 進 めていくためには 自 衛 隊 の 活 動 だけでは 不 十 分 である というの も 自 衛 隊 はもともと 人 を 雇 うことなく 自 己 完 結 的 に 活 動 することを 前 提 としている 組 織 であるため 人 を 雇 うための 予 算 も ニーズも 少 な いためである イラクに 派 遣 された 自 衛 隊 は サマーワの 雇 用 安 定 に 貢 献 するために 1 日 当 たり 約 700 人 から 1,000 人 ほどの 雇 用 を 行 って いるものの 安 定 的 かつ 持 続 的 な 雇 用 を 提 供 するのは 難 しい そこで ODA の 役 割 が 大 きくなる イラク 向 け ODA のために 日 本 がすでに 拠 出 を 表 明 した 援 助 額 は 約 50 億 ドル(うち 無 償 資 金 協 力 が 約 15 億 ドル 円 借 款 が 約 35 億 ドル)に 達 し うまく 活 用 することによって 雇 用 の 拡 大 と 社 会 の 安 定 に 大 きく 寄 与 することが 期 待 できる このように 自 衛 隊 と ODAとをまさに 車 の 両 輪 のように 組 み 合 わせて 復 興 支 援 を 行 うこと で 高 い 効 果 が 期 待 できるのである その 意 味 で 今 回 のイラク 派 遣 に おける ODA と 自 衛 隊 の 連 携 は 日 本 が 国 際 社 会 の 安 定 に 取 り 組 む 上 で の 今 後 の 方 向 性 を 示 したものであるといえよう 今 後 両 者 の 相 乗 効 果 を より 有 効 に 発 揮 できるようにするための 検 討 が 進 められることが 期 待 さ れる また 防 衛 庁 自 衛 隊 は 人 道 的 な 貢 献 や 国 際 的 な 安 全 保 障 環 境 の 改 善 の 観 点 から 国 際 緊 急 援 助 活 動 を 行 っている 国 際 緊 急 援 助 活 動 とは 海 外 特 に 開 発 途 上 にある 地 域 において 大 規 模 な 自 然 災 害 が 発 生 した 場 合 被 災 国 政 府 などの 要 請 に 応 じて 救 助 活 動 医 療 活 動 を 行 うもので ある 根 拠 となる 国 際 緊 急 援 助 隊 法 は 87 年 に 成 立 したが 92 年 の 改 正 により 自 衛 隊 が 国 際 緊 急 援 助 活 動 を 行 ったり そのための 人 員 資 材 の 輸 送 を 行 えるようになった 国 際 緊 急 援 助 隊 の 任 務 規 模 活 動 期 間 などについては 被 災 国 政 府 229

などの 要 請 を 尊 重 した 上 で 決 定 される ただし 被 災 国 内 で 治 安 の 悪 化 などの 危 険 があり 派 遣 された 人 員 の 防 護 のために 武 器 の 使 用 が 必 要 であると 判 断 される 場 合 には 国 際 緊 急 援 助 隊 は 派 遣 されない 派 遣 さ れる 地 域 としては 基 本 的 にはアジアおよびオセアニアの 開 発 途 上 地 域 が 念 頭 に 置 かれているが 98 年 のホンジュラスのハリケーン 災 害 99 年 のトルコ 北 西 部 地 震 あるいは 2005 年 のロシア 潜 水 艇 救 難 など 事 態 に 応 じて 必 要 が 生 じた 場 合 にはそれ 以 外 の 地 域 にも 派 遣 されている 各 自 衛 隊 は この 国 際 緊 急 援 助 活 動 のための 待 機 態 勢 をとっている 陸 上 自 衛 隊 は 医 官 13 人 UH-1 多 用 途 ヘリコプター 2 機 CH-47 輸 送 ヘリコプター 3 機 浄 水 セット 2 セットを 海 上 自 衛 隊 は 輸 送 艦 2 隻 ( おおすみ 型 の 場 合 は 1 隻 ) 補 給 艦 1 隻 航 空 自 衛 隊 は C-130H 輸 送 機 6 機 をめどとした 規 模 である 2005 年 には スマトラ 沖 大 地 震 津 波 救 難 ロシア 潜 水 艇 救 難 パ キスタン 等 大 地 震 救 難 活 動 が 国 際 緊 急 援 助 活 動 として 行 われた (3) 安 全 保 障 対 話 防 衛 交 流 国 際 社 会 との 協 力 のもう 一 つの 柱 が 安 保 対 話 防 衛 交 流 である こ れはいわゆる 信 頼 醸 成 および 国 際 社 会 における 協 力 の 基 盤 づくりを 目 的 として 進 められる 各 国 の 軍 事 力 や 国 防 政 策 の 透 明 性 を 高 め 防 衛 当 局 者 間 の 対 話 交 流 各 種 共 同 訓 練 などを 通 じて 相 互 の 信 頼 関 係 を 深 めて いくことで 無 用 な 軍 備 増 強 や 不 測 の 事 態 の 発 生 とその 拡 大 を 抑 えるこ とが 大 きな 目 標 である また 近 年 では 脅 威 としての 深 刻 さを 増 して いる 国 際 テロや 海 賊 あるいは 災 害 などのトランスナショナルな 脅 威 に 対 応 していくための 国 際 的 な 安 全 保 障 協 力 の 枠 組 みの 構 築 を 促 進 する 役 割 も 果 たしている 95 年 大 綱 で より 安 定 した 安 全 保 障 環 境 の 構 築 が 防 衛 力 の 役 割 の 一 つと 位 置 付 けられたことを 受 けて 日 本 はこれまでも 積 極 的 に 安 保 対 話 防 衛 交 流 に 取 り 組 んできた 相 手 国 との 関 係 に 応 じてきめ 細 かな 対 応 が でき また 多 国 間 の 安 全 保 障 対 話 の 基 礎 ともなりえる2 国 間 防 衛 交 流 や 230

第 8 章 日 本 より 充 実 した 国 際 協 力 を 目 指 して 複 数 国 間 にまたがる 問 題 について 関 係 国 が 自 ら 積 極 的 に 取 り 組 むこと で 地 域 の 平 和 と 安 定 に 効 果 的 に 貢 献 できることが 見 込 まれる 多 国 間 安 全 保 障 対 話 が 防 衛 首 脳 クラスの 交 流 や 部 隊 間 交 流 を 始 め さまざまな レベルで 進 められている こうした 対 話 や 交 流 を 進 めていくことで 共 通 の 認 識 を 深 めたり あ るいはお 互 いの 相 違 を 知 ることは 安 全 保 障 のさまざまな 局 面 におい て 他 国 の 行 動 の 予 測 可 能 性 を 高 め 不 必 要 に 状 況 が 悪 化 するのを 防 い だり 事 態 の 改 善 に 向 けて 各 国 の 協 力 を 容 易 にする 効 果 がある 例 えば 日 本 の 場 合 であれば 97 年 に 新 たな 日 米 防 衛 協 力 の 指 針 を 策 定 した 時 や 2004 年 に 新 大 綱 を 策 定 した 時 などに 他 国 が 無 用 な 懸 念 を 日 本 に 対 し て 抱 かないようにするため こうした 場 を 通 じて 政 策 意 図 を 明 確 に 説 明 している また 安 保 対 話 防 衛 交 流 が 果 たしているのはこうした 信 頼 醸 成 的 な 機 能 だけではない 近 年 では 安 保 対 話 防 衛 交 流 を 通 じ テロや 海 賊 あるいは 災 害 などのトランスナショナルな 脅 威 に 対 する 具 体 的 な 国 際 協 力 を 進 める 基 盤 づくりとしての 機 能 も 果 たすようになってきて いる 特 にアジア 太 平 洋 地 域 においては マラッカ 海 峡 の 海 賊 問 題 や 2004 年 12 月 のスマトラ 沖 大 地 震 津 波 災 害 をきっかけに こうした 問 題 に 対 する 域 内 での 協 力 を 進 めようとする 気 運 が 高 まりつつある 例 え ば 2005 年 6 月 に 防 衛 庁 が 主 催 して 開 催 された 多 国 間 防 衛 交 流 の 東 京 ディ フェンス フォーラムにおいても 主 要 な 議 題 は 災 害 救 援 における 軍 の 役 割 と 今 後 の 地 域 協 力 であった こうした 政 策 サイドにおける 安 全 保 障 協 力 のための 基 盤 づくりに 加 え 部 隊 間 の 交 流 も 並 行 的 に 進 められつつある 日 本 も 韓 国 ロシアと の 間 で 捜 索 救 難 訓 練 を 行 っており 東 ティモールやイラクではオース トラリアの 派 遣 部 隊 との 交 流 も 行 われている また 米 国 は 2001 年 に チーム チャレンジ 多 国 間 演 習 を 行 い タイを 中 心 とする 東 南 アジ ア 諸 国 との 間 で コブラ ゴールド 演 習 の 指 揮 所 演 習 部 分 を 多 国 間 演 習 として 毎 年 行 っている( 多 国 間 演 習 として 行 われるようになったのは 231

2000 年 以 降 ) なお 日 本 も 2005 年 からこの コブラ ゴールド 演 習 の 多 国 間 演 習 部 分 に 正 式 に 参 加 している このように 部 隊 レベルで 共 同 訓 練 を 行 っておくことは 何 らかの 事 態 が 生 じて 国 際 協 力 をする 必 要 が 生 じた 場 合 の 部 隊 レベルでの 協 力 と 調 整 を 容 易 にする 例 えば 99 年 の 東 ティモールや2002 年 のソロモン 諸 島 に 対 する 平 和 維 持 活 動 は 多 国 籍 軍 の 共 同 作 戦 によって 行 われた また 2004 年 12 月 のス マトラ 沖 大 地 震 津 波 災 害 に 対 する 救 援 活 動 や 2005 年 10 月 のパキスタ ン 等 大 地 震 に 対 する 救 援 活 動 などで 示 されているように 大 規 模 災 害 に 対 する 国 際 的 な 救 援 活 動 は いくつもの 軍 や 民 間 援 助 団 体 が 協 力 しなが ら 行 われている 将 来 的 に 国 際 テロや 海 賊 のようなトランスナショナ ルな 脅 威 への 国 際 的 な 協 力 活 動 が 進 められていく 可 能 性 もある アジア 太 平 洋 地 域 においても 多 国 籍 の 軍 同 士 や 警 察 などの 軍 以 外 の 政 府 機 関 あるいは 援 助 活 動 を 行 う 非 国 家 組 織 (NGO)が 協 力 し 合 って 事 態 の 対 処 に 当 たる 状 況 が 増 えていくものと 考 えられる こうしたときの 活 動 を 円 滑 に 行 うためにも 平 時 から 防 衛 交 流 を 進 め 各 国 軍 の 間 の 相 互 運 用 性 を 高 めておくことが 望 ましい このように 安 保 対 話 防 衛 交 流 には 国 際 平 和 協 力 活 動 を 進 めるための 基 盤 としての 重 要 性 がある (1) 法 制 度 本 来 任 務 化 と 一 般 法 このように 国 際 社 会 との 協 力 を 進 めていくことは 日 本 の 安 全 保 障 上 ますます 重 要 になってきている 災 害 は 言 うに 及 ばず 国 際 テロのよう なトランスナショナルな 脅 威 に 対 しては 必 ずしも 伝 統 的 な 抑 止 が 機 能 するとは 限 らない 一 般 論 としていえば 脅 威 は 未 然 に 防 止 することが 最 善 であることは 多 言 を 要 さないが こうした 脅 威 に 対 しては 事 後 的 な 対 応 を 強 いられる 局 面 が 増 えていくと 予 想 される そこで 重 要 になるの は 国 際 社 会 による 脅 威 の 拡 大 の 防 止 や 脅 威 の 除 去 に 向 けた 取 り 組 みを 232

第 8 章 日 本 より 充 実 した 国 際 協 力 を 目 指 して 日 本 自 身 の 平 和 と 安 全 にかかわる 問 題 として 捉 え 日 本 として 主 体 的 積 極 的 に 対 応 できるような 法 制 度 を 構 築 するとともに 政 策 決 定 に 機 敏 に 対 応 できるような 自 衛 隊 の 態 勢 を 構 築 することである 法 制 度 に 関 しては 自 衛 隊 法 に 基 づく 国 際 平 和 協 力 活 動 の 本 来 任 務 化 と 国 際 平 和 協 力 一 般 法 をめぐる 議 論 が 行 われている 国 際 平 和 協 力 法 いわゆるPKO 法 が92 年 に 制 定 された 当 時 同 法 に 基 づく 自 衛 隊 の 活 動 は 長 年 にわたって 蓄 積 してきた 技 能 経 験 組 織 的 な 機 能 を 活 用 して 行 う ものであることから 自 衛 隊 の 任 務 の 遂 行 に 支 障 を 生 じない 程 度 で 行 う ものとされ 付 随 的 な 任 務 として 位 置 付 けられた その 結 果 として 同 法 に 基 づく 活 動 は 自 衛 隊 の 行 動 として 自 衛 隊 が 本 来 的 に 果 たす 任 務 を 規 定 している 自 衛 隊 法 第 6 章 の 各 条 文 に 基 づいて 行 われるものではなく 第 8 章 雑 則 の 規 定 に 基 づいて 行 われるものとされた 本 来 任 務 化 とは こうした 位 置 付 けを 改 め 国 際 平 和 協 力 活 動 について 防 衛 出 動 災 害 出 動 と 同 様 に 自 衛 隊 の 本 来 任 務 として 規 定 し 直 すことである これはプライオリティーの 問 題 といえる 防 衛 力 整 備 の 基 本 的 枠 組 み となる 大 綱 は 国 際 社 会 との 協 力 を 基 本 方 針 の 一 つの 柱 として 位 置 付 け その 中 で 国 際 平 和 協 力 活 動 は 大 きな 役 割 を 果 たすこととしている 今 後 こうした 大 綱 の 考 え 方 に 沿 って 自 衛 隊 の 態 勢 を 整 備 していくに 当 たっ ては 国 際 平 和 協 力 法 制 定 当 時 のような いわば 余 力 を 活 用 するという 考 えに 基 づく 自 衛 隊 法 上 の 位 置 付 けも 見 直 すことが 重 要 である 国 際 平 和 協 力 活 動 を 自 衛 隊 法 における 本 来 任 務 として 明 確 に 位 置 付 けることに なれば 大 綱 で 示 された 防 衛 態 勢 の 変 化 に 法 律 的 な 裏 付 けを 付 与 するこ とになる これは 日 本 がより 積 極 的 に 国 際 協 力 に 取 り 組 むことを 国 際 社 会 に 対 して 明 確 なメッセージとして 伝 えることにもなり 国 際 平 和 協 力 活 動 を 行 う 自 衛 隊 員 が 一 層 の 自 覚 と 誇 りを 持 って 職 務 遂 行 に 当 たる ことにもつながる こうしたことから 本 来 任 務 化 は 早 期 に 検 討 される べき 課 題 であろう 次 に 国 際 平 和 協 力 に 関 する 一 般 法 である 先 に 述 べたように 自 衛 隊 のインド 洋 における 活 動 も イラクにおける 活 動 も いずれも 特 別 措 置 233

法 に 基 づいている これまでのようにその 都 度 特 別 措 置 を 蓄 積 して いく 形 をとるのか より 一 般 的 な 制 度 を 構 築 していくかは 今 後 国 際 平 和 協 力 活 動 を 重 視 していく 上 で 避 けられない 議 論 である 一 般 法 を 制 定 した 場 合 の 最 大 のメリットは 一 般 法 によって 国 際 平 和 協 力 に 関 する 理 念 や 原 則 が 明 らかにされ 日 本 の 国 際 平 和 協 力 活 動 へ の 取 り 組 み 方 をはっきりと 示 すことができることである そうすれば 防 衛 庁 自 衛 隊 として 日 本 が 行 うべき 国 際 平 和 協 力 活 動 に 備 えて 全 体 的 な 枠 組 みの 構 築 部 隊 の 準 備 や 訓 練 人 材 の 発 掘 や 育 成 資 機 材 の 購 入 などを 計 画 的 に 行 うことができるようになる こうしたことは 効 果 的 な 国 際 平 和 協 力 活 動 の 実 施 と 国 内 の 資 源 の 有 効 活 用 につながるの である また その 都 度 特 別 措 置 法 を 制 定 する 必 要 がなくなることから より 機 動 的 に 国 際 平 和 協 力 活 動 が 行 えるようになる 特 に 国 際 平 和 協 力 活 動 には 高 いレベルの 即 応 性 が 要 求 されるなかで 法 制 度 が 迅 速 な 対 応 のボトルネックになるのは 望 ましくはない こうしたことから 一 般 法 を 制 定 する 必 要 性 は 高 いと 言 えよう その 一 方 で 先 に 述 べたように 国 際 平 和 協 力 活 動 は 非 常 に 広 範 囲 の 活 動 を 含 んでいる 日 本 の 安 全 保 障 関 係 法 制 は 禁 止 事 項 だけを 列 挙 す る ネガティブリスト 方 式 ではなく 可 能 事 項 を 列 挙 する ポジティ ブリスト 方 式 をとっているため 国 際 平 和 協 力 一 般 法 も 想 定 される 活 動 すべてを 列 挙 しなければならない もし 記 述 に 含 まれなかった 活 動 の 必 要 が 将 来 生 じた 場 合 には 一 般 法 を 改 正 するか 新 たな 特 別 措 置 法 が 必 要 になってしまうことも 考 えられる 他 にも 派 遣 決 定 や 基 本 計 画 への 国 会 の 関 与 の 形 態 国 連 決 議 との 関 係 あるいは 任 務 の 範 囲 とそれにともなう 武 器 使 用 権 限 など いくつも 検 討 しなければならない 論 点 がある 今 後 日 本 が 効 果 的 に 国 際 平 和 協 力 活 動 を 行 っていくために 何 が 必 要 か 民 主 的 コントロールの 観 点 から 国 内 的 な 正 当 性 を 高 めるために 何 が 必 要 か そして 国 際 的 な 正 当 性 を 担 保 するために 何 が 必 要 か といった 論 点 について 議 論 を 深 めていくこ とが 期 待 される 234

第 8 章 日 本 より 充 実 した 国 際 協 力 を 目 指 して (2) 高 度 な 即 応 性 を 持 つ 防 衛 態 勢 の 構 築 新 大 綱 に 基 づいて 国 際 平 和 協 力 活 動 をより 重 視 した 高 い 即 応 性 を 持 つ 防 衛 態 勢 の 構 築 が 進 められている 海 上 自 衛 隊 では 護 衛 隊 の 再 編 成 が 行 われ これまで 8 隻 からなる 4 個 単 位 を 基 本 としてきた 護 衛 隊 群 の 体 制 を より 柔 軟 な 編 成 が 行 えるよう 4 隻 からなる 8 個 単 位 へと 改 め られる 航 空 自 衛 隊 でも 空 中 給 油 輸 送 部 隊 の 新 設 など 国 際 平 和 協 力 活 動 に 主 体 的 積 極 的 に 取 り 組 むための 体 制 を 整 備 しようとしている この 中 でも 即 応 性 の 観 点 から 見 て 最 も 大 きな 組 織 改 編 を 行 おうとし ているのが 陸 上 自 衛 隊 である その 中 心 にあるのが ゲリラや 特 殊 部 隊 に よる 攻 撃 などが 発 生 した 場 合 に 事 態 の 拡 大 防 止 などを 図 るために 中 央 即 応 集 団 が 新 編 されることである 中 央 即 応 集 団 は ヘリコプター 団 空 挺 団 のような 機 動 運 用 部 隊 や 特 殊 作 戦 群 特 殊 武 器 防 護 隊 のような これまで 長 官 直 轄 とされてきた 各 種 専 門 部 隊 に 加 え 緊 急 即 応 連 隊 や 国 際 活 動 教 育 隊 のような 新 設 組 織 を 一 元 的 に 管 理 する 司 令 部 として 編 成 される 国 内 で 何 らかの 事 態 が 発 生 した 場 合 には 中 央 即 応 集 団 はフォースプロバイダーとしての 役 割 を 果 たし 必 要 に 応 じて 隷 下 の 部 隊 を 各 方 面 隊 の 指 揮 下 に 提 供 する 一 方 国 際 平 和 協 力 活 動 に 関 しては 中 央 即 応 集 団 司 令 部 は 先 遣 隊 の 一 部 の 要 員 を 提 供 する とともに 派 遣 部 隊 本 隊 への 指 揮 を 行 う なお 派 遣 部 隊 本 隊 は 全 国 各 地 の 部 隊 からの 派 遣 となる また 国 際 平 和 協 力 活 動 の 関 連 で 重 要 なのは 中 央 即 応 集 団 の 下 に 国 際 活 動 教 育 隊 が 新 編 されることである 国 際 活 動 教 育 隊 は 各 地 の 師 団 や 旅 団 などの 国 際 平 和 協 力 活 動 を 行 う 基 幹 要 員 に 対 して 平 素 から 教 育 訓 練 を 行 うとともに 各 部 隊 で 行 う 訓 練 を 支 援 する また 自 衛 隊 の 国 際 平 和 協 力 活 動 に 関 する 教 訓 などを 研 究 蓄 積 して 上 記 の 教 育 訓 練 に フィードバックする これによって 派 遣 に 際 して 行 う 訓 練 に 要 する 時 間 を 短 縮 し 国 際 平 和 協 力 活 動 に 関 する 即 応 性 を 向 上 させることが 見 込 めるのである 235

(3) 装 備 多 機 能 弾 力 的 実 効 性 防 衛 力 を 目 指 して 法 制 度 や 態 勢 の 整 備 に 加 え 実 効 的 な 国 際 平 和 協 力 活 動 を 行 う 上 で 重 要 になるのは 装 備 である 例 えば 2004 年 12 月 以 降 に 展 開 されたス マトラ 沖 大 地 震 津 波 災 害 救 難 活 動 でも 2005 年 10 月 のパキスタン 等 大 地 震 救 援 でも ヘリコプターが 大 きな 役 割 を 果 たした そして こう した 緊 急 事 態 に 際 して 即 応 的 にヘリコプターを 海 外 展 開 させることがで きる 国 は 多 くはない スマトラ 沖 大 地 震 津 波 災 害 救 難 活 動 で 大 活 躍 し た CH-47 は 世 界 最 大 級 の 輸 送 ヘリコプターであるが 日 本 はその J 型 および JA 型 を 約 60 機 保 有 している これは 400 機 以 上 保 有 している 米 国 に 次 ぐ 数 字 であり イギリス イタリアなどの NATO 諸 国 よりも 多 い 輸 送 手 段 の 関 係 もあり パキスタン 等 大 地 震 救 難 活 動 の 際 には 日 本 は CH-47 は 派 遣 せず UH-1 多 用 途 ヘリコプターの 派 遣 となったが それでも パキスタンでヘリコプターによる 支 援 を 展 開 できたのは 米 国 NATO 諸 国 の 一 部 ロシア 日 本 だけであった また スマトラ 沖 大 地 震 津 波 災 害 救 難 活 動 においては 輸 送 艦 お おすみ が 派 遣 された おおすみ は 大 きな 搭 載 量 を 持 つCH-47の 輸 送 が 可 能 であり それらを 海 上 から 離 発 着 させることができる また ホバークラフトを 運 用 して 物 資 を 陸 地 に 送 ることもできたため 沿 岸 部 パキスタンに 向 かう 航 空 自 衛 隊 C-130H 輸 送 機 に 積 み 込 まれ る 陸 上 自 衛 隊 UH-1 多 用 途 ヘリコプター ( 写 真 提 供 共 同 通 信 社 ) の 救 難 活 動 を 行 う 上 で 非 常 に 大 きな 役 割 を 果 たし たのである アジア 太 平 洋 諸 国 の 多 くは 海 岸 線 が 長 いため このような 海 上 を 策 源 地 として 救 援 活 動 を 行 うことのできる 装 備 は 今 後 もさまざま な 場 で 有 効 に 使 われるこ とになろう 236

第 8 章 日 本 より 充 実 した 国 際 協 力 を 目 指 して ヘリコプターにしても おおすみ のような 大 型 の 輸 送 艦 にしても こうし た 高 度 な 装 備 を 取 得 し 運 用 することのできる 国 は 先 進 諸 国 に 限 られている こうした 装 備 を 活 用 した 国 際 協 力 は 日 本 の 特 長 を 生 かした 活 動 であり 今 後 の 方 向 性 として 重 視 していくべきものと 思 われる ただ 大 きな 問 題 は 輸 送 手 段 である 自 衛 隊 の 人 員 や 装 備 を 空 輸 する 場 合 航 空 自 衛 隊 の C-130H か 政 府 専 用 機 の B-747 を 用 いるか あるい はウクライナの 民 間 会 社 から An-124 をチャーターしている ところが C-130H はもともと 戦 域 内 輸 送 機 であり パキスタンに 派 遣 される 際 に 3 ないし 4 カ 所 に 着 陸 して 給 油 しなければならなかったことからもわかる ように 航 続 距 離 や 積 載 量 が 限 られている B-747 は 航 続 距 離 の 点 で は 問 題 ないが もともと 旅 客 機 として 作 られた 機 体 であるため 軍 用 輸 送 機 に 積 めるような 大 型 の 装 備 を 積 むことはできない An-124 の 場 合 にはチャーターによる 使 用 となるため 日 本 が 使 いたいときに 使 えると は 限 らない 今 後 日 本 が 国 際 平 和 協 力 活 動 を 含 む 国 際 社 会 との 協 力 をより 積 極 的 に 進 めていく 上 で より 高 速 で 航 続 距 離 の 長 い 新 型 輸 送 機 の 導 入 が 待 たれる 2004 年 12 月 に 策 定 された 中 期 防 衛 力 整 備 計 画 ( 平 成 17 年 度 ~ 平 成 21 年 度 ) では 国 際 社 会 との 協 力 に 有 効 活 用 し 得 る 装 備 の 調 達 も 計 画 さ れている 主 なものは CH-47J/JAを15 機 ( 陸 上 自 衛 隊 11 機 航 空 自 衛 隊 4 機 ) KC-767 空 中 給 油 輸 送 機 1 機 新 型 輸 送 機 8 機 である ただ これらは 新 たな 脅 威 多 様 な 事 態 の 中 で 特 に 島 嶼 部 に 対 する 侵 略 に 対 応 して 調 達 される さまざまな 不 安 定 要 因 の 残 存 するアジア 太 平 洋 地 域 の 安 全 保 障 環 境 を 考 慮 すれば 基 本 的 な 兵 力 構 成 を 日 本 の 防 衛 を 目 的 としたものから 国 際 協 力 を 目 的 としたものに 大 きくシフトしてしまう のはリスクが 高 すぎる その 意 味 で こうした 装 備 が 新 たな 脅 威 多 様 な 事 態 への 対 応 として 調 達 されるのは 自 然 なことであろう しかし ながら 国 際 社 会 との 協 力 を 通 じた 安 全 保 障 の 重 要 度 も 増 している 多 機 能 弾 力 的 実 効 性 をキーワードとする 防 衛 力 概 念 の 中 で こ うした 装 備 は 国 際 平 和 協 力 活 動 などにも 活 用 されていくのである この 237

ように ここに 挙 げた 装 備 は 多 機 能 弾 力 的 実 効 性 を 実 践 するも のといえる 今 後 も さまざまな 装 備 が 多 機 能 弾 力 的 実 効 性 を 追 求 しながら 整 備 されていくことになろう このように 国 際 平 和 協 力 活 動 をより 充 実 させていくためにさまざま な 努 力 がなされているが そもそも 国 際 社 会 を 通 じての 協 力 にどのよう なプライオリティーを 与 え どのような 国 際 平 和 協 力 活 動 を 行 うかにつ いては 日 本 の 安 全 保 障 上 の 観 点 からの 戦 略 的 な 判 断 が 必 要 とされる 国 際 社 会 との 協 力 といっても それは 他 者 のために 行 う 国 際 貢 献 で はない あくまで 日 本 の 安 全 保 障 に 寄 与 するとの 判 断 に 基 づく 協 力 なのである 確 かに 安 全 保 障 のグローバル 化 が 進 み 想 像 もしなかっ た 地 域 や 集 団 が 日 本 の 安 全 保 障 に 大 きな 影 響 を 及 ぼす 可 能 性 は 増 大 し ている しかし 現 存 する 明 瞭 な 脅 威 や 日 本 周 辺 である 程 度 の 蓋 然 性 を 持 って 予 測 し 得 る 不 安 定 要 因 に 対 処 する 方 が 日 本 の 安 全 保 障 上 のプ ライオリティーは 高 い この 点 が 冷 戦 が 終 結 し 直 接 的 な 脅 威 をほとんど 考 える 必 要 がなく なったヨーロッパ 諸 国 と 日 本 との 環 境 の 違 いである ヨーロッパ 諸 国 は 国 土 防 衛 から 域 外 活 動 へと 資 源 配 分 を 大 きくシフトすることが 可 能 となった 一 方 北 東 アジアにおいては 朝 鮮 半 島 をはじめとして 安 全 保 障 上 の 不 安 定 要 因 が 残 存 しており ヨーロッパ 諸 国 のように 国 土 防 衛 に 充 てる 資 源 を 大 きく 削 減 することが 可 能 な 状 況 にはない 直 接 的 な 脅 威 を 懸 念 しなければならない 地 域 安 全 保 障 環 境 にある 限 り 国 土 防 衛 は 常 に 一 義 的 な 重 要 性 を 持 つ 一 方 国 際 平 和 協 力 活 動 など 国 際 社 会 の 安 定 化 のための 国 際 協 力 に 関 していえば それを 行 わなかっ たからといって 直 ちに 国 が 侵 略 されることにはつながらない その 意 味 で 政 策 判 断 上 のプライオリティーの 観 点 からいえば 国 際 協 力 が 国 土 238

第 8 章 日 本 より 充 実 した 国 際 協 力 を 目 指 して 防 衛 よりも 重 視 されることは 基 本 的 にあり 得 ない 一 方 安 全 保 障 のグ ローバル 化 が 進 む 現 在 の 世 界 において 国 際 協 力 を 進 めて 国 際 社 会 の 安 定 化 を 進 めていくことが 日 本 のよって 立 つ 安 全 保 障 環 境 全 般 を 改 善 す ることにつながっていくのもまた 事 実 である その 観 点 から 新 大 綱 で は 日 本 の 国 益 との 関 連 性 を 重 視 した 上 で 国 際 協 力 により 積 極 的 に 取 り 組 んでいくことを 明 確 にしたのである この 際 に 重 要 なことは 国 益 との 関 連 性 を 判 断 する 基 準 を 提 示 することであろう 例 えば 米 国 の 国 家 安 全 保 障 戦 略 のような 文 書 を 策 定 し あらかじめ 原 則 を 定 式 化 して おくことも 考 えられる あるいは あらかじめ 原 則 を 定 式 化 しておくの ではなく その 都 度 状 況 に 応 じて 国 益 との 関 連 性 を 判 断 することも 考 えられよう これは それ 自 体 議 論 を 深 めるべき 問 題 であろう いずれ にしても 今 後 国 際 協 力 を 進 めていく 上 で 特 に 国 益 との 関 連 性 に 関 し て 説 明 責 任 が 一 層 重 要 になるといえるだろう 239

東 アジア 戦 略 概 観 2006 平 成 18 年 3 月 10 日 発 行 編 集 発 行 防 衛 庁 防 衛 研 究 所 c 2006 by the National Institute for Defense Studies, Japan 153-8648 東 京 都 目 黒 区 中 目 黒 2-2-1 (03)5721-7005( 目 黒 基 地 代 表 ) http://www.nids.go.jp 印 刷 アイワ 印 刷 株 式 会 社 ISBN4-939034-30-5 Printed in Japan