第 21 回 健 康 セミナー 糖 尿 病 の 歯 科 病 変 水 俣 芦 北 郡 市 歯 科 医 師 会 井 上 真 樹
歯 周 病 って どんな 病 気?
年 齢 別 に 見 た 歯 周 病 罹 患 率 100% 80% 60% 40% 20% 0% 15-24 歳 1.3% 4.2% 25.7% 46.3% 0.0% 0.0% 49.8% 21.2% 42.3% 48.9% 0.0% 7.3% 26.3% 32.3% 27.6% 39.3% 36.9% 54.1% 58.4% 54.7% 37.7% 20.3% 18.1% 10.6% 9.8% 8.6% 5.8% 5.4% 25-34 歳 35-44 歳 45-54 歳 55-64 歳 65-74 歳 75 歳 以 上 対 象 歯 なし 4mm 以 上 のホ ケット フ ローヒ ンク 後 出 血 ) 歯 周 病 若 い 世 代 でも 罹 患 率 は 高 く, 加 齢 に 伴 い 増 える 中 高 年 の50% 以 上 は 歯 周 病 に 罹 っている 65 歳 を 過 ぎると 急 激 に 歯 を 失 う 歯 周 病 は 国 民 病! 厚 生 労 働 省 平 成 17 年 度 歯 科 疾 患 実 態 調 査 より
歯 周 病 は 沈 黙 の 病 気 31 歳 女 性 口 腔 内 写 真 X 線 写 真 一 見 問 題 がないように 見 えるが, 歯 周 病 で 骨 は 溶 けている!
健 康 な 歯 ぐき きれいなピンク 色 引 き 締 まっている 血 や 膿 が 出 ない
歯 周 病 の 歯 ぐき 歯 周 病 の 歯 ぐきの 特 徴 赤 い 色 をしている 腫 れてむくんでいる 血 や 膿 が 出 る 歯 周 病 の 症 状 歯 ぐきから 血 や 膿 が 出 る 歯 ぐきが 腫 れる 歯 がぐらつく
歯 周 組 織 とは 健 康 な 歯 周 組 織 は 一 体 となって 歯 を 支 えている 森 山 貴 史 著 中 高 年 の 歯 の 病 気 がすべてわかる 本 主 婦 と 生 活 社 2003 より
歯 周 ポケット 歯 肉 溝 プラーク 歯 周 ポケット 健 康 な 歯 周 組 織 炎 症 を 起 こした 歯 周 組 織 健 康 な 人 でも, 歯 と 歯 ぐきの 境 目 にはもともと 歯 肉 溝 という 浅 い 溝 がある 歯 肉 溝 の 部 分 は 空 気 が 少 ないので, 嫌 気 性 菌 ( 歯 周 病 菌 )が 繁 殖 しやすい 歯 肉 溝 にくっついた 歯 周 病 菌 が 出 した 有 害 物 質 で 歯 周 組 織 に 炎 症 が 起 きる 炎 症 によって 歯 肉 が 剥 がれて 溝 が 深 くなり, 歯 周 ポケットができる イラスト: 山 田 了 編 著 やさしい 説 明, 上 手 な 治 療 [3] 細 菌 から 体 を 守 るフ ラークコントロール 永 末 書 店 2001 を 一 部 改 変
歯 周 病 の 進 行 と 症 状 ( 歯 肉 炎 ) プラークや 歯 石 が 増 え, 歯 周 ポ ケットができる 歯 肉 に 炎 症 が 起 こり, 赤 くなり 少 し 腫 れて 出 血 するようになる 歯 を 支 えている 骨 はまだ 溶 け 出 し ていない イラスト: 石 井 正 敏 著 やさしい 説 明, 上 手 な 治 療 [1] 歯 周 病 永 末 書 店 1997 より
歯 周 病 の 進 行 と 症 状 ( 軽 度 中 等 度 歯 周 炎 ) 歯 肉 の 炎 症 はさらにひどくなる 歯 周 ポケットも 深 くなる 歯 を 支 えている 骨 ( 歯 槽 骨 )が 溶 け 出 す イラスト: 石 井 正 敏 著 やさしい 説 明, 上 手 な 治 療 [1] 歯 周 病 永 末 書 店 1997 より
歯 周 病 の 進 行 と 症 状 ( 重 度 歯 周 炎 ) 歯 肉 の 炎 症 はさらにひどくなり, 血 や 膿 が 常 に 出 て, 頻 繁 に 歯 ぐき が 腫 れるようになる 歯 周 ポケットはもっと 深 くなり, 歯 槽 骨 もさらに 溶 ける 歯 のぐらつきがひどくなり, 最 後 には 歯 が 自 然 に 抜 けてしまう イラスト: 石 井 正 敏 著 やさしい 説 明, 上 手 な 治 療 [1] 歯 周 病 永 末 書 店 1997 より
歯 周 ポケットの 測 定 歯 周 ポケットの 深 さを 測 る ポケットプローブ という 棒 状 の 器 具 を 歯 周 ポケットの 中 にそっと 挿 入 して,ポケットの 深 さを 測 る < 測 定 結 果 > 3mm 以 内? 正 常 もしくは 歯 肉 炎 4 5mm? 初 期? 中 等 度 歯 周 炎 6? 9mm? 中 等 度? 重 度 歯 周 炎 10mm 以 上? 重 度 歯 周 炎 ポケットプローブ 歯 周 ポケット 測 定 森 山 貴 史 著 中 高 年 の 歯 の 病 気 がすべてわかる 本 主 婦 と 生 活 社 2003 より
動 揺 の 測 定 歯 のぐらつきの 程 度 を 測 る ピンセットで 歯 を 動 かしてぐらつきの 程 度 を 測 る < 測 定 結 果 > 動 揺 度 0 正 常,ほとんど 動 かない 動 揺 度 1 初 期 の 歯 周 病, 歯 が 前 後 の1 方 向 に 動 く 動 揺 度 2 進 行 した 歯 周 病, 歯 が 前 後 左 右 の2 方 向 に 動 く 動 揺 度 3 重 度 の 歯 周 病, 歯 が 前 後 左 右 動 揺 度 の 測 定 上 下 の3 方 向 に 動 く 森 山 貴 史 著 中 高 年 の 歯 の 病 気 がすべてわかる 本 主 婦 と 生 活 社 2003 より
X 線 写 真 歯 槽 骨 の 溶 けた 程 度 を 観 察 する 歯 槽 骨 の 溶 けた 程 度 ( 骨 吸 収 量 )を 歯 根 の 長 さと 比 較 して 表 現 する < 判 定 結 果 > 骨 吸 収 なし 1/3 以 内 骨 吸 収 なし 正 常 歯 根 の1/3 以 内 初 期 歯 周 炎 歯 根 の1/3 2/3 中 等 度 歯 周 炎 歯 根 の2/3 以 上 重 度 歯 周 炎 1/3 2/3 2/3 以 上 森 山 貴 史 著 中 高 年 の 歯 の 病 気 がすべてわかる 本 主 婦 と 生 活 社 2003 より
歯 周 病 が 全 身 に 及 ぼす 影 響 動 脈 硬 化 歯 周 病 歯 周 病 は こんな 病 気 に 関 わっている 呼 吸 器 疾 患 早 期 低 体 重 児 出 産 心 臓 病 糖 尿 病 動 脈 硬 化 などの 血 管 系 の 病 気 心 臓 の 病 気 肺 炎 などの 呼 吸 器 疾 患 早 期 低 体 重 児 出 産 糖 尿 病 など 山 田 了 編 著 やさしい 説 明, 上 手 な 治 療 [3] 細 菌 から 体 を 守 るフ ラークコントロール 永 末 書 店 2001 を 一 部 改 変
歯 周 病 菌 が 血 液 中 に 入 る プラーク 歯 周 病 で 炎 症 を 起 こした 歯 肉 には 多 数 の 細 菌 が 接 している 菌 の 成 分 歯 周 病 菌 が 炎 症 を 起 こした 歯 肉 の 中 に 入 り 込 む 歯 周 病 原 菌 歯 肉 中 へ 細 菌 や 細 菌 の 成 分 が 血 液 中 に 流 れ 込 み, 血 管 を 通 って 全 身 に 運 ばれ, 何 らかの 病 気 を 引 き 起 こす 血 液 中 へ 山 田 了 編 著 やさしい 説 明, 上 手 な 治 療 [3] 細 菌 から 体 を 守 るフ ラークコントロール 永 末 書 店 2001を 一 部 改 変 り
歯 周 病 が 糖 尿 病 に 影 響 する 最 近, 歯 周 病 が 糖 尿 病 に 影 響 を 及 ぼす 可 能 性 が 示 唆 されている. TNFα 血 液 中 に 流 れ 込 んだ 歯 周 病 原 菌 はTNFαを 誘 導 する. 細 胞 このTNFαは,インシュリンの 働 きを 阻 害 するといわれている. 阻 害 糖 の 取 り 込 み 促 進 インシュリン 以 上 から, 歯 周 病 がインシュリ ンの 働 きを 阻 害 して, 糖 尿 病 を 悪 化 させる 可 能 性 があると 考 え られている. 糖 膵 臓 山 田 了 編 著 やさしい 説 明, 上 手 な 治 療 [3] 細 菌 から 体 を 守 るフ ラークコントロール 永 末 書 店 2001 より
歯 周 病 と 糖 尿 病
歯 周 病 と 糖 尿 病 の 類 似 点 慢 性 歯 周 炎 2 型 糖 尿 病 初 期 症 状 ほとんど 無 兆 候 ほとんど 無 兆 候 年 齢 35 歳 以 上 に 多 い 40 歳 以 上 に 多 い 生 活 習 慣 病 と しての 側 面 あり あり 自 己 管 理 プラークコントロール 食 餌 療 法 運 動
Periodontal Medicine 歯 周 病 と 全 身 疾 患 全 身 状 態 との 相 互 関 係 を 表 す 言 葉 全 身 疾 患 は 歯 周 病 のリスク ファクターとなる 歯 周 病 も 全 身 疾 患 や 全 身 状 態 に 影 響 を 及 ぼす 可 能 性 がある 歯 周 病 と 全 身 疾 患 との 関 係 を 口 腔 と 全 身 の 両 方 向 から 見 て いく 必 要 がある 歯 周 病 と 糖 尿 との 関 係 も 双 方 向 から 捉 える 必 要 がある ライオン 歯 科 研 究 所 編 歯 周 病 と 全 身 の 健 康 を 考 える 医 歯 薬 出 版 2004 より
歯 周 病 は 糖 尿 病 の 第 6 番 目 の 合 併 症 合 併 症 障 害 の 内 容 典 型 的 な 予 後 不 良 例 糖 尿 病 網 膜 症 網 膜 に 出 血 や 剥 離 などの 障 害 が 生 じる 失 明 糖 尿 病 腎 症 腎 臓 の 糸 球 体 に 障 害 が 生 じる 腎 不 全 糖 尿 病 神 経 障 害 細 血 管 障 害 大 血 管 障 害 神 経 に 障 害 が 生 じる. 典 型 的 な 初 期 症 状 は 両 足 の 裏 の 痺 れ. 重 症 のものは 痛 みを 感 じなくなり, 細 菌 感 染 に 気 づかず, 下 肢 の 切 断 も 主 に 下 肢 への 血 行 が 障 害 される. 歩 行 障 害 や 下 肢 切 断 も 心 臓 の 冠 動 脈 や 脳 血 管 が 障 害 を 受 ける 下 肢 切 断 歩 行 障 害 下 肢 切 断 狭 心 症 心 筋 梗 塞 脳 卒 中 歯 周 病 歯 周 病 の 重 症 化 に 関 係 する 歯 の 喪 失
ピマインディアンにおける 研 究 メキシコ 国 境 に 近 いアリゾナ 州 フェニックスのヒーラ 河 沿 いの 荒 地 に 住 んでいる 彼 らは 遺 伝 的 に 肥 満 で 2 型 糖 尿 病 の 罹 患 率 が40%である Shlossman らはピマインディアンの 調 査 を 行 った (1990 年 ) 2 型 糖 尿 病 患 者 では 非 糖 尿 病 患 者 より 歯 周 病 が 重 症 であると 報 告 Emrich らは 歯 肉 が 下 がっていることを 指 標 にすると2.8 倍 歯 槽 骨 吸 収 を 指 標 にすると3.4 倍 の 重 度 な 歯 周 炎 になっていると 報 告 (1991 年 )
糖 尿 病 が 歯 周 病 に 及 ぼす 影 響 のメカニズム コラーゲン 合 成 阻 害 歯 根 膜 線 維 芽 細 胞 の 機 能 異 常 微 小 循 環 障 害 AGE の 炎 症 性 組 織 破 壊 アディポサイトカインの 炎 症 への 関 与 ライオン 歯 科 研 究 所 編 歯 周 病 と 全 身 の 健 康 を 考 える 医 歯 薬 出 版 2004 を 一 部 改 変
歯 周 病 も 糖 尿 病 に 影 響 を 及 ぼす
歯 周 治 療 が 糖 尿 病 に 及 ぼす 影 響 のメカニズム TNF-α 増 加 歯 周 組 織 の 炎 症 TNF-α 減 少 歯 周 組 織 に 炎 症 がない インスリン 抵 抗 性 増 加 インスリン 抵 抗 性 改 善 歯 周 治 療 ライオン 歯 科 研 究 所 編 歯 周 病 と 全 身 の 健 康 を 考 える 医 歯 薬 出 版 2004 を 一 部 改 変
歯 周 病 を 改 善 させると 糖 尿 病 の 状 態 が よくなる? 重 度 の 歯 周 炎 を 発 症 した2 型 糖 尿 病 患 者 に 効 果 的 な 歯 周 治 療 を 行 った 結 果 HbA1c 値 が 0.5-1.0% 改 善 すると 言 われている HbA1c 値 が 1% 低 下 すると 微 小 血 管 障 害 の 発 症 を 約 37% 末 梢 血 管 障 害 による 四 肢 の 切 断 や 死 亡 を 43% 心 筋 梗 塞 を 14% 脳 卒 中 を 12% これらを 総 合 すると 糖 尿 病 に 関 連 した 全 死 亡 を 21% 低 下 させるとしており 1% 低 下 の 意 義 歯 周 治 療 の 意 義 は 大 きいと 思 われます
歯 周 治 療 が 糖 尿 病 に 及 ぼす 影 響 (まとめ) 糖 尿 病 に 罹 っていて 進 行 した 歯 周 病 もある 人 が 歯 周 病 の 治 療 をしないで 放 置 すると, 血 糖 のコントロールが 悪 化 する. 糖 尿 病 に 罹 っていて 歯 周 病 もある 人 に 歯 周 病 の 治 療 をすると, 歯 周 病 が 治 っていくと 共 に 血 糖 のコントロールも 改 善 する.
ご 静 聴 ありがとうございました 資 料 提 供 : 東 京 歯 科 大 学 歯 周 病 学 講 座 山 田 了 水 道 橋 病 院 森 山 貴 史 財 団 法 人 8020 推 進 財 団 http://www.8020zaidan.or.jp/