IFRS基礎講座 IFRS第5号 売却目的で保有する非流動資産及び非継続事業

Similar documents
無断複写 転用 転記を禁じます 国際財務報告基準 (IFRS) 連結財務諸表シリーズ シリーズ <5>IAS 第 31 号 ジョイント ベンチャーに対する持分 ( 平成 22 年 7 月 31 日現在 ) 1. ジョイント ベンチャーの対する持分 ( 総論 ) 本シリーズでは ジョイント ベンチャー

念.pwd

リリース

IFRS基礎講座 IAS第12号 法人所得税

IFRS基礎講座 IFRS第1号 初度適用

IFRSへの移行に関する開示

スライド 1

2. 基準差調整表 当行は 日本基準に準拠した財務諸表に加えて IFRS 財務諸表を参考情報として開示しております 日本基準と IFRS では重要な会計方針が異なることから 以下のとおり当行の資産 負債及び資本に対する調整表並びに当期利益の調整表を記載しております (1) 資産 負債及び資本に対する

2018 年 8 月 10 日 各 位 上場会社名 エムスリー株式会社 ( コード番号 :2413 東証第一部 ) ( ) 本社所在地 東京都港区赤坂一丁目 11 番 44 号 赤坂インターシティ 代表者 代表取締役 谷村格 問合せ先 取締役 辻高宏

highlight.xls

スライド 1

IFRS基礎講座 IAS第21号 外貨換算

1. 国際財務報告基準に準拠した財務諸表 ( 抜粋 翻訳 ) 国際財務報告基準に準拠した財務諸表の作成方法について当行の国際財務報告基準に準拠した財務諸表 ( 以下 IFRS 財務諸表 という ) は 平成 27 年 3 月末時点で国際会計基準審議会 (IAS B) が公表している基準及び解釈指針に

日本基準でいう 法人税等 に相当するものです 繰延税金負債 将来加算一時差異に関連して将来の期に課される税額をいいます 繰延税金資産 将来減算一時差異 税務上の欠損金の繰越し 税額控除の繰越し に関連して将来の期に 回収されることとなる税額をいいます 一時差異 ある資産または負債の財政状態計算書上の

IFRS基礎講座 IAS第11号/18号 収益

平成30年公認会計士試験

日本基準基礎講座 資本会計

IFRS連結財務諸表記載例2013年版-3

計算書類等

平成 29 年度連結計算書類 計算書類 ( 平成 29 年 4 月 1 日から平成 30 年 3 月 31 日まで ) 連結計算書類 連結財政状態計算書 53 連結損益計算書 54 連結包括利益計算書 ( ご参考 ) 55 連結持分変動計算書 56 計算書類 貸借対照表 57 損益計算書 58 株主

Microsoft Word - IFRSコラム原稿第2回 H doc

平成26年度 第138回 日商簿記検定 1級 会計学 解説

参考 企業会計基準第 25 号 ( 平成 22 年 6 月 ) からの改正点 平成 24 年 6 月 29 日 企業会計基準第 25 号 包括利益の表示に関する会計基準 の設例 企業会計基準第 25 号 包括利益の表示に関する会計基準 ( 平成 22 年 6 月 30 日 ) の設例を次のように改正

085 貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準 新株予約権 少数株主持分を株主資本に計上しない理由重要度 新株予約権を株主資本に計上しない理由 非支配株主持分を株主資本に計上しない理由 Keyword 株主とは異なる新株予約権者 返済義務 新株予約権は 返済義務のある負債ではない したがって

日本基準基礎講座 有形固定資産

平成29年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)

平成 29 年 3 月期決算短信 IFRS ( 連結 ) 平成 29 年 4 月 26 日 上場会社名 日信工業株式会社 上場取引所 東 コード番号 7230 URLhttp:// 代表者 ( 役職名 ) 代表取締役社長 ( 氏名 ) 大河原栄次 問合せ先責

連結貸借対照表 ( 単位 : 百万円 ) 当連結会計年度 ( 平成 29 年 3 月 31 日 ) 資産の部 流動資産 現金及び預金 7,156 受取手形及び売掛金 11,478 商品及び製品 49,208 仕掛品 590 原材料及び貯蔵品 1,329 繰延税金資産 4,270 その他 8,476

連結会計入門 ( 第 6 版 ) 練習問題解答 解説 練習問題 1 解答 解説 (129 頁 ) ( 解説 ) S 社株式の取得に係るP 社の個別上の処理は次のとおりである 第 1 回取得 ( 平成 1 年 3 月 31 日 ) ( 借 )S 社株式 48,000 ( 貸 ) 現預金 48,000

1. のれんを資産として認識し その後の期間にわたり償却するという要求事項を設けるべきであることに同意するか 同意する場合 次のどの理由で償却を支持するのか (a) 取得日時点で存在しているのれんは 時の経過に応じて消費され 自己創設のれんに置き換わる したがって のれんは 企業を取得するコストの一

平成25年度 第134回 日商簿記検定 1級 商業簿記 解説

2017年度(平成29年度)連結決算概要

財剎諸表 (1).xlsx

IFRS基礎講座 IAS第37号 引当金、偶発負債及び偶発資産

リコーグループサステナビリティレポート p

日本基準基礎講座 収益

計算書類等

コニカミノルタ ( 株 ) (4902) 2019 年 3 月期決算短 4. 連結財務諸表及び主な注記 (1) 連結財政状態計算書 資産 流動資産 前連結会計年度 (2018 年 3 月 31 日 ) ( 単位 : 百万円 ) 当連結会計年度 (2019 年 3 月 31 日 ) 現金及び現金同等物

企業結合ステップ2に関連するJICPA実務指針等の改正について⑦・連結税効果実務指針(その2)

第4期電子公告(東京)

第28期貸借対照表

第 298 回企業会計基準委員会 資料番号 日付 審議事項 (2)-4 DT 年 10 月 23 日 プロジェクト 項目 税効果会計 今後の検討の進め方 本資料の目的 1. 本資料は 繰延税金資産の回収可能性に関わるグループ 2 の検討状況を踏まえ 今 後の検討の進め方につ

説明会資料 IFRSの導入について

Microsoft Word IFRSコラム原稿第6回_Final _1_.doc

科目 期別 損益計算書 平成 29 年 3 月期自平成 28 年 4 月 1 日至平成 29 年 3 月 31 日 平成 30 年 3 月期自平成 29 年 4 月 1 日至平成 30 年 3 月 31 日 ( 単位 : 百万円 ) 営業収益 35,918 39,599 収入保証料 35,765 3

包括利益の表示に関する会計基準第 1 回 : 包括利益の定義 目的 ( 更新 ) 新日本有限責任監査法人公認会計士七海健太郎 1. はじめに企業会計基準第 25 号 包括利益の表示に関する会計基準 ( 以下 会計基準 ) が平成 22 年 6 月 30 日に

Microsoft Word 【公表】HP_T-BS・PL-H30年度

Report

(訂正・数値データ修正)「平成29年5月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」の一部訂正について

審議_3_-3 損益の段階別表示0602.doc

Microsoft Word - 決箊喬å‚−表紎_18年度(第26æœ�ï¼›

第6期決算公告

(2) サマリー情報 1 ページ 1. 平成 29 年 3 月期の連結業績 ( 平成 28 年 4 月 1 日 ~ 平成 29 年 3 月 31 日 ) (2) 連結財政状態 訂正前 総資産 純資産 自己資本比率 1 株当たり純資産 百万円 百万円 % 円銭 29 年 3 月期 2,699 1,23

平成28年度 第143回 日商簿記検定 1級 会計学 解説

Microsoft Word - Q&A 第22回 2892号2008年11月08日.doc

営業活動によるキャッシュ フロー の区分には 税引前当期純利益 減価償却費などの非資金損益項目 有価証券売却損益などの投資活動や財務活動の区分に含まれる損益項目 営業活動に係る資産 負債の増減 利息および配当金の受取額等が表示されます この中で 小計欄 ( 1) の上と下で性質が異なる取引が表示され

Microsoft Word - 訂正短信提出2303.docx

監査手続の実施状況に関する表示この決算短信は 金融商品取引法に基づく監査手続きの対象外ですが この決算短信の開示時点において 金融商品取引法に基づく連結財務諸表の監査手続きは終了しております 業績予想の適切な利用に関する説明 その他特記事項 ( 国際会計基準 (IFRS) の適用 ) 当社は 平成

野村アセットマネジメント株式会社 2019年3月期 個別財務諸表の概要 (PDF)

野村アセットマネジメント株式会社 平成30年3月期 個別財務諸表の概要 (PDF)

(訂正・数値データ訂正)「平成25年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」の一部訂正について

連結の補足 連結の 3 年目のタイムテーブル B/S 項目 5つ 68,000 20%=13,600 のれん 8,960 土地 10,000 繰延税金負債( 固定 ) 0 利益剰余金期首残高 1+2, ,120 P/L 項目 3 つ 少数株主損益 4 1,000 のれん償却額 5 1,1

<4D F736F F D2095BD90AC E31328C8E8AFA8C888E5A925A904D C8E86816A2E646F63>

『学校法人会計の目的と企業会計との違い』

第 21 期貸借対照表 平成 29 年 6 月 15 日 東京都千代田区一番町 29 番地 2 さわかみ投信株式会社 代表取締役社長澤上龍 流動資産 現金及び預金 直販顧客分別金信託 未収委託者報酬 前払費用 繰延税金資産 その他 固定資産 ( 有形固定資産 ) 建物 器具備品 リース資産 ( 無形

監査手続の実施状況に関する表示 この決算短信は 金融商品取引法に基づく監査手続の対象外であります なお この決算短信の開示時点において 金融商品取引法に基づく連結財務諸表の監 査手続は終了しております 業績予想の適切な利用に関する説明 その他特記事項 (IFRS の任意適用について ) 当社は 平成

前連結会計年度 ( 平成 29 年 12 月 31 日 ) 当第 2 四半期連結会計期間 ( 平成 30 年 6 月 30 日 ) 負債の部流動負債支払手形及び買掛金 8,279 8,716 電子記録債務 9,221 8,128 短期借入金 未払金 24,446 19,443 リース


<4D F736F F D E718CF68D90817A91E632308AFA8C888E5A8F9197DE2E646F63>


添付資料の目次 1. 連結財務諸表 2 (1) 連結貸借対照表 2 (2) 連結損益計算書及び連結包括利益計算書 4 (3) 連結財務諸表に関する注記事項 6 ( セグメント情報等 ) 6 2. 個別財務諸表 7 (1) 個別貸借対照表 7 (2) 個別損益計算書

平成22年5月17日

カプコン (9697) 平成 25 年 3 月期 決算短信 ( セグメント情報等 ) ( セグメント情報 ) 1. 報告セグメントの概要 (1) 報告セグメントの決定方法 当社の報告セグメントは 当社の構成単位のうち分離された財務情報が入手可能であり 取締役会が経営資源の配分の決定および業績を評価す

貸借対照表 (2019 年 3 月 31 日現在 ) ( 単位 : 千円 ) 科目 金額 科目 金額 ( 資産の部 ) ( 負債の部 ) 流動資産 3,784,729 流動負債 244,841 現金及び預金 3,621,845 リース債務 94,106 前払費用 156,652 未払金 18,745

第4期 決算報告書

添付資料の目次 1. 連結財務諸表 2 (1) 連結貸借対照表 2 (2) 連結損益計算書及び連結包括利益計算書 4 (3) 連結財務諸表に関する注記事項 6 ( セグメント情報等 ) 6 2. 個別財務諸表 7 (1) 個別貸借対照表 7 (2) 個別損益計算書

適用時期 5. 本実務対応報告は 公表日以後最初に終了する事業年度のみに適用する ただし 平成 28 年 4 月 1 日以後最初に終了する事業年度が本実務対応報告の公表日前に終了している場合には 当該事業年度に本実務対応報告を適用することができる 議決 6. 本実務対応報告は 第 338 回企業会計

ずほ証券連結財務諸業績と財務の状況 みずほ証券連結財務諸表み表繰延税金資産 15,653 14,554 当社は 平成 28 年度及び平成 29 年度の連結貸借対照表 連結損益計算書及び連結株主資本等変動計算書について会社法第 444 条第 4 項の規 定に基づき 新日本有限責任監査法人の監査証明を受

2019 年 3 月期第 2 四半期決算短信 IFRS ( 連結 ) 2018 年 10 月 31 日 上場会社名 アイシン精機株式会社 上場取引所東名 コード番号 7259 URL 代表者 ( 役職名 ) 取締役社長 ( 氏名 ) 伊勢清貴 問合せ先

決算説明補 資料 2018 年 3 期第 3 四半期 (IFRS) 株式会社リクルートホールディングス 本資料に含まれる数値 指標は 当社グループの経営成績及び財政状態に関して 適切な理解を促進することを 的として開 しており 全ての数値 指標が監査法 による監査 はレビューの対象ではない点にご留意

営 業 報 告 書

念.pwd

1FG短信表紙.XLS

IASB、最終版のIFRS第9号「金融商品」を公表

(1) 連結貸借対照表 ( 添付資料 16 ページ ) (3) 連結株主資本等変動計算書 ( 添付資料 28 ページ ) 6. 個別財務諸表 (1) 貸借対照表 ( 添付資料 31 ページ ) (3) 株主資本等変動計算書 以上 2

(訂正・数値データ訂正)「平成30年4月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」の一部訂正について

年度 決算報告書 I F R S ( 自 2014 年 4 月 1 日 ) 至 2015 年 3 月 31 日 本田技研工業株式会社

独立行政法人会計基準改定(案)

注記事項 (1) 期中における重要な子会社の異動 ( 連結範囲の変更を伴う特定子会社の異動 ) : 無 新規 - 社 ( 社名 ) 除外 - 社 ( 社名 ) (2) 会計方針の変更 会計上の見積りの変更 1 IFRSにより要求される会計方針の変更 : 無 2 1 以外の会計方針の変更 : 無 3

念.pwd

実務対応報告第 18 号連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い 平成 18 年 5 月 17 日改正平成 22 年 2 月 19 日改正平成 27 年 3 月 26 日改正平成 29 年 3 月 29 日最終改正平成 30 年 9 月 14 日企業会計基準委員会 目的 本


国家公務員共済組合連合会 民間企業仮定貸借対照表 旧令長期経理 平成 26 年 3 月 31 日現在 ( 単位 : 円 ) 科目 金額 ( 資産の部 ) Ⅰ 流動資産 現金 預金 311,585,825 未収金 8,790,209 貸倒引当金 7,091,757 1,698,452 流動資産合計 3

Microsoft Word - 不動産ファンドに関する国際財務報告基準 第6回.doc

第 16 回ビジネス会計検定試験より抜粋 ( 平成 27 年 3 月 8 日施行 ) 次の< 資料 1>から< 資料 5>により 問 1 から 問 11 の設問に答えなさい 分析にあたって 連結貸借対照表数値 従業員数 発行済株式数および株価は期末の数値を用いることとし 純資産を自己資本とみなす は

交換価値は 価格が成立する時点 ( 売却時点 or 購入時点 ) および市場の競争状況 ( 流動性 ) によって細分化できる イ. 売却市場における価値 ( 出口価値 ) と購入市場における価値 ( 入口価値 ) 交換価値は 出口価値と入口価値に分けることができる 出口価値は売却市場における価値 入

2017年度(平成29年度)第3四半期連結決算概要

2018年12月期.xls

平成31年3月期 第2四半期決算短信〔日本基準〕(非連結)

平成28年度 第144回 日商簿記検定 1級 会計学 解説

Transcription:

IFRS 基礎講座 IFRS 第 5 号 売却目的で保有する非流動資産及び非継続事業 のモジュールを始めます

パート 1 では 売却目的で保有する非流動資産への分類及び測定と 非継続事業への分類について解説します パート 2 では 売却目的で保有する非流動資産及び非継続事業に係る表示及び開示について解説します

IFRS 第 5 号は 売却目的で保有する非流動資産及び非継続事業に関する特別な取扱いを定めています なお 非流動資産を所有者に分配することを確約している場合 例えば 株式会社が株主に分配することを確約している場合も 売却目的で保有する非流動資産と同様の取扱いとなります 売却目的で保有する非流動資産とは 通常なら流動資産の定義を満たさない資産であるが 現在は企業が売却目的で保有しているものをいい 例えば 売却目的で保有する工場や建物が挙げられます 非流動資産の帳簿価額が 継続的な使用ではなく 主として売却取引により回収される場合 当該非流動資産を売却目的保有に分類したうえで一定の測定 表示及び開示が要求されます 非継続事業とは すでに処分されたか または売却目的に分類される企業の構成単位で 独立の主要な事業分野や計画等に該当するものをいいます 包括利益計算書においては 一定の表示または注記による開示が要求されます これらを財務諸表上で 通常の非流動資産や継続事業による損益と区分して表示または注記による開示をすることで 投資家のために有用な情報を提供することが可能となります

企業が所有する非流動資産または処分グループの帳簿価額が 継続的な使用ではなく 主として売却目的により回収される場合 当該非流動資産を売却目的保有に分類します ここで 処分グループとは 単一の取引として処分される資産グループおよびそれらの資産に直接関連し 当該取引で移転される負債をいいます 例えば 子会社の売却をする場合に 当該子会社の資産及び負債を売却目的保有の処分グループとして取り扱います 売却目的で保有する非流動資産へ分類するためには その資産または処分グループが 直ちに売却可能 な状態にあり かつ 売却の可能性が非常に高く なければなりません

非流動資産または処分グループが 次の 2 要件を満たした場合に 売却目的で保有する非流動資産に分類されます まず 直ちに売却可能である必要があります これは 通常または慣例的な条件のみに従って 現状のままで直ちに売却可能である状態をいいます 次に 売却可能性が非常に高い必要があります 具体的には 適切な地位の経営者が 当該資産または処分グループの売却計画の実行を確約している 買手を選定し 売却を完了させるための活発な計画が既に開始されている 合理的な価額で積極的に売り込まれている そして 売却目的保有に分類した日から 1 年以内に 売却が完了する予定であり 計画の大幅な変更や撤回の可能性が低い の 4 つが挙げられ これらをすべて満たす必要があります

売却目的保有に分類された非流動資産または処分グループは 分類変更の直前において それまで適用されていた IFRS に従って 帳簿価額を測定します そのうえで 帳簿価額と売却コスト控除後の公正価値を比較し いずれか低い方で測定します 公正価値の方が低い場合は 帳簿価額との差額を減損損失として認識します 固定資産等の減価償却を行う償却性資産であれば 減価償却を中止します また 関連会社およびジョイント ベンチャーに対する投資は 持分法の適用を中止します

事後的な計画変更により 過去に売却目的保有に分類された非流動資産が その要件を満たさなくなった場合 売却保有目的への分類を中止しなければなりません 当該非流動資産については 非流動資産が売却目的保有に分類されなかったと仮定して 減価償却等を継続して行った結果として算定される金額と 売却を行わないという意思決定を行った時点の回収可能価額のいずれか低い金額で測定を行います 例えば 図のように 売却目的保有に分類されなかったと仮定して 減価償却等を継続して行った結果として算定される金額より 売却を行わないという意思決定を行った時点の回収可能価額が低ければ 意思決定時点の回収可能価額が財政状態計算書における当該非流動資産の計上額となります また その金額と 売却目的保有の非流動資産の要件を満たさなくなる直前の帳簿価額との差額は 損益として認識します

売却目的保有に分類された非流動資産または処分グループに含まれる資産及び負債については 前述のような IFRS 第 5 号の測定規定が適用されない項目があります それらの項目としては 次のとおりです 繰延税金資産 従業員給付により生じる資産 金融商品 公正価値モデルが適用される投資不動産 売却コスト控除後の公正価値で測定される生物資産及び農産物 保険契約上の権利 これらの項目については 売却目的保有に分類された後も 引き続き それぞれに関連する IFRS に従って帳簿価額を測定します なお これらの項目の表示および開示については IFRS 第 5 号を適用します

次に 非継続事業について解説します 企業が所有する非流動資産または処分グループが すでに処分されたか または売却目的保有に分類される企業の構成単位で 独立の主要な事業分野や計画等に該当する場合に 非継続事業に分類します ここで 企業の構成単位とは 企業の他の部分から営業上及び財務報告目的上 明確に区別できる事業およびキャッシュ フローをいいます また 独立の主要な事業分野や計画等とは 独立の主要な事業分野または営業地域 独立の主要な事業分野または営業地域を処分する統一された計画の一部 転売のみのために取得した子会社 のいずれかを満たすものをいいます また 非継続事業に特有の認識 測定規定はなく 他の IFRS の一般的な規程に従い 引き続き 認識及び測定を行います

次に 表示及び開示について説明します 売却目的で保有する非流動資産または処分グループに含まれる資産及び負債は 財政状態計算書において 他の資産または負債から区分して 主要な項目ごとに区分表示 または他の項目から区分表示したうえで 主要な項目を注記として開示します 処分グループに含まれる資産と負債を相殺して 純額表示することは認められません また 例えば 売却目的から通常の使用に 保有目的が変更された場合でも 過年度の比較情報を修正再表示することは禁止されています

非継続事業は 包括利益計算書上 事業活動に係る当期純利益と 事業を構成する資産または処分グループを売却コスト控除後の公正価値で測定 または処分したことにより 認識した税引き後の利得 損失に分けて集計し 合計額を表示します なお 親会社の所有者に帰属する 継続事業及び非継続事業から生じた利益を包括利益計算書に表示または注記により開示する必要があります 非継続事業から生じるキャッシュ フローは 営業活動 投資活動 財務活動に区分し キャッシュフロー計算書本体または注記により開示する必要があります これら包括利益計算書及びキャッシュ フロー計算書における表示は 継続事業から生じる金額と区分して表示します また 売却目的保有の非流動資産または処分グループと異なり 報告期間の末日における分類に合わせて 過年度の比較情報を修正再表示することが要求されています これで IFRS 基礎講座 IFRS 第 5 号 売却目的で保有する非流動資産及び非継続事業 のモジュールの解説を終わります