株 価 引 き 下 げ 対 策 事 業 承 継 対 策 Ⅰ 株 価 引 き 下 げによる 相 続 税 対 策 1. 株 価 引 き 下 げの 目 的 2. 株 式 の 評 価 の 仕 組 み 3. 取 引 相 場 のない 株 式 についての 評 価 方 法 4. 株 価 引 き 下 げの3つの 方 法 Ⅱ 株 価 引 き 下 げのポイント 1. 配 当 金 の 引 き 下 げによる 株 価 引 き 下 げ 2. 利 益 金 額 の 引 き 下 げによる 株 価 引 き 下 げ 3. 簿 価 純 資 産 の 引 き 下 げによる 株 価 引 き 下 げ Ⅲ 社 員 持 株 会 の 活 用 による 相 続 税 対 策 1. 社 員 持 株 会 を 活 用 して 自 社 株 財 産 を 削 減 2. 社 員 持 株 会 の 運 営 ポイント 3. 社 員 持 株 会 の 設 立 手 順
Ⅰ 株 価 引 き 下 げによる 相 続 税 対 策 1 株 価 引 き 下 げの 目 的 後 継 者 が 実 質 的 に 経 営 権 を 引 き 継 ぐためには 経 営 者 の 地 位 だけでなく 会 社 を 支 配 する のに 可 能 な 数 量 の 自 社 株 を 取 得 することが 必 要 です しかし 業 績 の 良 い 会 社 は 自 社 株 の 評 価 が 高 くなるため 相 続 税 の 納 税 や 遺 産 分 割 の 問 題 などが 生 じることになります そこで 株 価 を 適 宜 引 き 下 げながら 生 前 にある 程 度 株 式 を 後 継 者 に 移 す 必 要 があります そのためにはまず 相 続 財 産 として 課 税 される 自 社 株 がどのように 評 価 されるのかを 押 さておくことが 必 要 です 2 株 式 の 評 価 の 仕 組 み 中 小 会 社 の 取 引 相 場 のない 株 式 の 株 価 計 算 は 大 きく 分 けて 二 つになります 一 つは 相 続 贈 与 などで 取 得 した 株 主 が 同 族 株 主 の 場 合 です 同 族 会 社 の 株 式 の 評 価 は 会 社 の 業 績 や 資 産 の 内 容 を 株 価 に 反 映 させる 原 則 的 評 価 方 法 の 類 似 業 種 比 準 価 額 方 式 純 資 産 価 額 方 式 そしてこの 二 つの 方 式 の 併 用 方 式 の 3 種 類 になります もう 一 つは 同 族 株 主 以 外 の 少 数 株 主 の 場 合 です これは 配 当 を 受 ける 権 利 のみの 株 主 なので 会 社 の 配 当 金 額 によって 株 価 が 計 算 される 配 当 還 元 価 額 方 式 により 評 価 を 行 います 3 取 引 相 場 のない 株 式 についての 評 価 方 法 取 引 相 場 のない 株 式 については 会 社 の 規 模 によって 評 価 方 法 を 決 定 します 会 社 の 規 模 は 業 種 別 に 大 会 社 中 会 社 の 大 中 会 社 の 中 中 会 社 の 小 小 会 社 に 区 分 され ます 1
総 資 産 価 額 と 従 業 員 数 基 準 と 取 引 金 額 基 準 のいずれか 低 い 基 準 によって 会 社 規 模 を 区 分 します 卸 売 業 ( 小 売 サービス 業 以 外 ) 総 資 産 価 額 と 従 業 員 数 取 引 金 額 大 会 社 10 億 円 以 上 かつ 50 人 超 20 億 円 以 上 中 会 社 ( 大 ) 7 億 円 以 上 かつ 50 人 超 14 億 円 以 上 20 億 円 未 満 ( 中 ) 4 億 円 以 上 かつ 30 人 超 7 億 円 以 上 14 億 円 未 満 ( 小 ) 5,000 万 円 以 上 かつ5 人 超 8,000 万 円 以 上 7 億 円 未 満 小 会 社 5,000 万 円 未 満 または 5 人 以 下 8,000 万 円 未 満 卸 売 業 総 資 産 価 額 と 従 業 員 数 取 引 金 額 大 会 社 20 億 円 以 上 かつ 50 人 超 80 億 円 以 上 中 会 社 ( 大 ) 14 億 円 以 上 かつ 50 人 超 50 億 円 以 上 80 億 円 未 満 ( 中 ) 7 億 円 以 上 かつ 30 人 超 25 億 円 以 上 50 億 円 未 満 ( 小 ) 7,000 万 円 以 上 かつ5 人 超 2 億 円 以 上 25 億 円 未 満 小 会 社 7,000 万 円 未 満 または 5 人 以 下 2 億 円 未 満 小 売 サービス 業 総 資 産 価 額 と 従 業 員 数 取 引 金 額 大 会 社 10 億 円 以 上 かつ 50 人 超 20 億 円 以 上 中 会 社 ( 大 ) 7 億 円 以 上 かつ 50 人 超 12 億 円 以 上 20 億 円 未 満 ( 中 ) 4 億 円 以 上 かつ 30 人 超 6 億 円 以 上 20 億 円 未 満 ( 小 ) 4,000 万 円 以 上 かつ5 人 超 6,000 万 円 以 上 6 億 円 未 満 小 会 社 4,000 万 円 未 満 または 5 人 以 下 6,000 万 円 未 満 注 1 従 業 員 数 が 100 名 以 上 の 場 合 は すべて 大 会 社 に 区 分 される 注 2 総 資 産 価 額 と 従 業 員 数 と 取 引 金 額 で 区 分 が 異 なる 場 合 は いずれか 上 位 の 区 分 によ り 判 定 する 2
中 小 会 社 株 式 の 評 価 方 法 の 概 要 3
4 株 価 引 き 下 げの3つの 方 法 株 価 引 き 下 げるには 以 下 の3つの 方 法 があります 類 似 業 種 株 価 の 引 き 下 げ 純 資 産 株 価 の 引 き 下 げ 会 社 規 模 の 変 更 類 似 業 種 株 価 の 引 き 下 げ 類 似 業 種 株 価 は 自 社 と 類 似 する 公 開 企 業 の 次 の 要 素 により 決 ま ります 業 種 一 株 あたりの 配 当 金 額 一 株 あたりの 利 益 金 額 一 株 あたりの 簿 価 純 資 産 価 額 またこれらの 要 素 のうち 自 社 の 配 当 金 利 益 金 額 簿 価 純 資 産 価 額 は 低 ければ 低 いほど 株 価 の 評 価 は 下 がることとなります したがって 類 似 業 種 株 価 を 引 き 下 げるには 基 本 的 に 次 の 方 針 で 対 策 を 行 います 1 配 当 金 を 引 き 下 げる 配 当 金 を 引 き 下 げる 又 は 配 当 を 行 わないことにより 株 価 を 引 き 下 げます 株 価 評 価 の 対 象 となる 配 当 金 は 経 常 的 な 配 当 に 限 られます そ こでどうしても 配 当 しなければならない 場 合 には 記 念 配 当 特 別 配 当 の 名 目 で 行 うこととなります 2 利 益 金 額 を 引 き 下 げる 類 似 業 種 株 価 の 計 算 において 最 もウェイトが 高 い 要 素 が 利 益 金 額 です したがって 利 益 を 引 き 下 げることが 最 も 有 効 な 方 法 とな ります 3 簿 価 純 資 産 を 引 き 下 げる 簿 価 純 資 産 を 引 き 下 げるために 有 効 な 方 法 は 含 み 損 の 出 ている 4
資 産 の 売 却 や 不 良 債 権 の 貸 倒 の 実 施 です これにより 簿 価 で 評 価 されている 資 産 が 売 却 や 貸 倒 により 減 少 します そして 結 果 とし ては 株 価 の 引 き 下 げに 繋 がります 純 資 産 株 価 の 引 き 下 げ 純 資 産 価 額 方 式 における 株 価 は 相 続 税 評 価 を 行 った 純 資 産 と 発 行 済 み 株 式 数 によって 決 まります 1 相 続 税 評 価 を 行 った 純 資 産 を 減 らす ポイントは 土 地 や 有 価 証 券 の 含 み 益 となります これらの 資 産 の 相 続 税 評 価 を 下 げることにより 株 価 引 き 下 げにつながります 2 株 式 数 を 増 やす 純 資 産 株 価 については 相 続 税 評 価 を 行 った 純 資 産 を 発 行 済 株 式 数 で 割 って 計 算 します したがって 株 式 数 が 増 加 すると 株 価 は 下 がります ただし 株 式 数 を 増 やすための 第 三 者 割 当 増 資 を 行 う 場 合 には 発 行 価 額 により みなし 配 当 等 が 発 生 ずる 可 能 性 があるので 注 意 が 必 要 です 会 社 規 模 の 変 更 株 価 は 会 社 規 模 に 応 じて 類 似 業 種 比 準 株 価 と 純 資 産 株 価 方 式 そして2つの 併 用 方 式 により 計 算 されます 会 社 規 模 が 大 会 社 に 近 づくほどに 類 似 業 比 準 株 価 の 割 合 が 大 きくなります 純 資 産 株 価 が 類 似 業 種 株 価 を 上 回 っている 場 合 には 会 社 規 模 を 大 きくして 類 似 業 種 株 価 のウェイトを 大 きくすることにより 株 価 を 低 くすることが 出 来 ます 5
Ⅱ 株 価 引 き 下 げのポイント 1 配 当 金 の 引 き 下 げによる 株 価 引 き 下 げ 1 株 当 たりの 年 配 当 金 額 の 計 算 類 似 業 種 株 価 は 自 社 と 類 似 する 公 開 企 業 の 次 の 要 素 により 決 ま ります この 配 当 金 額 には 非 経 常 的 配 当 ( 特 別 配 当 記 念 配 当 など)は 含 めません ただし 中 間 配 当 は 含 みます 配 当 金 額 の 引 き 下 げ オーナー 会 社 の 資 本 金 は 比 較 的 少 額 な 場 合 が 多 いため 配 当 金 額 を 考 慮 して 支 払 うと 配 当 率 が 高 率 になっているケースが 多 く 見 受 け られます その 結 果 株 価 が 高 額 になっています オーナーは 大 株 主 なので 株 主 総 会 決 議 による 配 当 率 を 引 き 下 げる のは 容 易 です 2 年 間 だけ 無 配 にすることによって 比 準 要 素 はゼ ロになります 取 引 先 等 の 外 部 株 主 がいる 場 合 などでは 会 社 創 立 周 年 記 念 といった 特 別 配 当 を 実 施 することが 考 えられます この 場 合 は 非 経 常 的 な 配 当 になるため 計 算 式 上 の 配 当 金 額 が 除 かれて 計 算 す ることになります 6
2 利 益 金 額 の 引 き 下 げによる 株 価 引 き 下 げ 生 命 保 険 の 活 用 利 益 の 繰 延 べ 方 法 として 保 険 料 の 損 金 算 入 が 可 能 な 生 命 保 険 が 有 効 です 商 品 の 選 択 肢 も 多 く 金 額 の 設 定 も 容 易 です そして 企 業 の 要 望 に 合 致 した 活 用 が 図 られ 結 果 的 に 株 価 引 き 下 げの 効 果 が 生 じます リスクは 保 険 会 社 の 破 綻 以 外 無 いため 安 全 で 確 実 性 が 高 いといえます 利 益 繰 延 べ 商 品 として 主 なものに 次 の 四 つがあり ます 1 役 員 従 業 員 の 保 障 と 退 職 金 積 立 目 的 の 定 期 保 険 ( 全 額 損 金 ま たは 1/2 損 金 ) 2 役 員 の 保 障 と 退 職 金 積 立 目 的 の 逓 増 定 期 保 険 (1/2 損 金 ) 3 従 業 員 の 福 利 厚 生 目 的 の 養 老 保 険 (1/2 損 金 ) 4 従 業 員 の 福 利 厚 生 目 的 のがん 保 険 ( 全 額 損 金 ) 会 社 が 高 業 績 でキャッシュ フローに 余 裕 がある 場 合 は 複 数 の 生 命 保 険 に 加 入 して 損 金 計 上 しながら 内 部 留 保 の 蓄 積 を 図 ります そして 業 績 が 悪 化 したとき もしくは 退 職 金 などの 多 額 な 支 出 が 必 要 な 際 解 約 返 戻 金 が 戻 るという 利 点 があります 適 正 な 範 囲 で 役 員 報 酬 を 増 額 会 社 の 法 人 税 の 所 得 金 額 の 計 算 上 費 用 として 認 められる 役 員 報 酬 を 多 く 支 給 すれば それだけ 会 社 の 利 益 金 額 は 下 がります しか し 役 員 報 酬 のうち 不 相 当 に 高 額 な 部 分 の 金 額 は 損 金 算 入 を 認 めら れないため 適 正 な 金 額 を 判 断 しなければなりません 過 大 な 役 員 報 酬 の 額 とは 実 質 基 準 と 形 式 基 準 によって 算 出 された 金 額 であり いずれにも 該 当 する 場 合 は 多 いほうの 金 額 になります 1 実 質 基 準 とは 会 社 が 役 員 に 支 給 した 報 酬 のうち 次 のような 項 目 を 勘 案 し 役 員 の 職 務 の 対 価 としての 相 当 額 を 超 える 金 額 をいいます 7
勘 案 項 目 役 員 の 職 務 内 容 ( 会 長 社 長 専 務 平 取 締 役 監 査 役 等 ) 法 人 の 収 益 状 況 法 人 の 使 用 人 に 対 する 給 料 の 支 給 状 況 法 人 と 同 種 同 規 模 の 事 業 を 営 む 法 人 の 役 員 報 酬 の 支 給 状 況 2 形 式 基 準 とは 会 社 が 役 員 に 支 給 した 報 酬 の 額 が 定 款 または 株 主 総 会 の 定 めて いる 支 給 限 度 額 を 超 える 金 額 をいいます 実 務 上 でほとんど 株 主 総 会 決 議 で 支 給 限 度 額 を 取 締 役 と 監 査 役 を 区 分 して その 総 額 で 定 め ています その 総 額 を 超 える 場 合 は 過 大 役 員 報 酬 となります ま た 使 用 人 兼 務 役 員 の 使 用 人 給 料 を 含 めないと 定 める 場 合 にも 株 主 総 会 の 決 議 が 必 要 です 取 締 役 及 び 監 査 役 と 会 社 の 間 は 会 社 法 上 は 委 任 関 係 にあります 役 員 報 酬 の 支 給 限 度 額 の 定 めがなければ 商 法 上 は 無 報 酬 が 原 則 で す よって 理 論 的 には 特 約 もなく 役 員 報 酬 を 支 払 うことは 会 社 法 違 反 となります 役 員 報 酬 の 支 給 限 度 額 は 必 ず 定 める 必 要 がありま す オーナー 経 営 者 に 生 前 退 職 金 を 支 給 経 営 者 が ほとんど 経 営 にタッチしない 名 誉 会 長 や 相 談 役 等 の 役 職 に 就 いた 場 合 は 生 前 退 職 金 の 支 給 を 受 けることができます 税 法 では 合 理 的 な 理 由 があって 退 職 金 の 打 切 支 給 を 行 う 場 合 は 損 金 処 理 を 認 めています オーナーの 退 職 金 は 通 常 多 額 な 支 給 額 となります それに 伴 っ て 当 該 期 の 利 益 は 大 幅 に 減 額 され 株 価 も 大 きく 低 下 することにな ります つまり オーナーの 退 職 金 支 給 の 年 度 に 合 わせて 株 価 対 策 を 行 うことが 必 要 です 8
生 前 退 職 金 の 支 給 条 件 1 常 勤 役 員 が 非 常 勤 役 員 になる 場 合 ただし 非 常 勤 であっても 代 表 権 を 有 する 者 及 び 代 表 権 を 有 しな いが 実 質 的 にその 法 人 の 経 営 上 主 要 な 地 位 を 占 めていると 認 め られる 者 は 除 かれます 2 取 締 役 が 監 査 役 になる 場 合 ただし 監 査 役 でありながら 実 質 的 にその 法 人 の 経 営 上 主 要 な 地 位 を 占 めていると 認 められる 者 は 除 かれます 3 分 掌 変 更 等 の 後 に 報 酬 が 激 変 した 場 合 激 変 とはおおむね 50% 以 上 の 減 少 をいいます 常 勤 役 員 が 非 常 勤 役 員 になり 役 員 報 酬 が1/2 以 下 に なった 場 合 は 原 則 的 に 認 めるということです しかし 問 題 は 実 質 的 に 経 営 権 を 有 しているか いないか ということになります 同 族 会 社 の 場 合 は 簡 単 に 役 員 の 肩 書 変 更 や 分 掌 変 更 ができると 思 われ るので 客 観 的 に 証 明 することは 困 難 です しかし 生 前 退 職 金 の 支 給 によって 株 価 が 下 落 したのを 機 会 に 株 式 のほとんどを 後 継 者 等 へ 贈 与 または 譲 渡 によって 移 転 してしまい ます また 大 株 主 でなくなった 場 合 は 仮 に 取 締 役 に 残 っていても 非 常 勤 でかつ 報 酬 が 激 変 していれば 実 質 的 に 経 営 権 を 有 している と 判 断 することは 困 難 です 高 収 益 部 門 を 別 会 社 化 ( 事 業 譲 渡 会 社 分 割 ) 高 業 績 を 上 げている 優 良 な 会 社 は 必 ず 高 収 益 部 門 の 事 業 を 持 っ ています オーナーが 健 康 な 間 に 後 継 者 を 決 めたならば 思 い 切 っ て 高 収 益 部 門 を 別 会 社 にして 後 継 者 に 経 営 の 実 際 を 任 せてみます 本 体 会 社 の 自 社 株 式 の 株 価 は 下 がるので 自 社 株 対 策 が 必 要 となり ます 9
3 簿 価 純 資 産 の 引 き 下 げによる 株 価 引 き 下 げ すべての 不 良 債 権 の 処 分 1 株 当 たりの 年 利 益 金 額 は 法 人 税 の 課 税 所 得 金 額 をもとに 計 算 されます そこで 法 人 税 の 課 税 所 得 を 低 く 抑 える 方 法 の 一 つとして 税 務 上 認 められる 債 権 等 の 貸 倒 損 失 を 積 極 的 に 活 用 します 値 下 がりして いる 不 動 産 の 売 却 会 社 が 所 有 する 不 動 産 等 で 購 入 した 価 額 ( 簿 価 )より 時 価 が 値 下 りして 含 み 損 が 生 じている 場 合 を 仮 定 します その 場 合 は 不 動 産 等 を 売 却 して 譲 渡 損 失 を 計 上 し 利 益 を 小 さくします ただし 売 却 先 が 同 族 会 社 や 関 連 会 社 の 場 合 は 売 却 価 額 が 税 務 上 問 題 になら ないように 注 意 する 必 要 があります 借 入 金 で 賃 貸 不 動 産 物 件 を 購 入 純 資 産 価 額 方 式 の 評 価 方 法 による 株 価 が 高 くなっているのは 相 続 税 評 価 額 による 純 資 産 ( 資 産 マイナス 負 債 )が 多 額 になっている 場 合 です すなわち 過 去 の 内 部 蓄 積 ( 剰 余 金 等 )が 大 きくなって いるか 土 地 等 や 有 価 証 券 の 含 み 益 が 大 きくなっているケースです したがって 株 価 引 き 下 げの 方 法 として 含 み 益 のある 資 産 を 除 外 す ることと 負 債 を 増 加 させて 純 資 産 を 減 らすことになります オペレーティング リースで 健 全 な 赤 字 作 り オペレーティング リース 取 引 とは とくに 航 空 機 船 舶 プラ ント 設 備 等 の 大 口 取 引 に 用 いられるリース ファイナンスです リ ース 期 間 が 法 定 耐 用 年 数 の 120% 以 内 とし 税 務 上 の 条 件 をクリア した 賃 貸 借 取 引 等 をいいます( 実 務 上 はリース 会 社 が 組 成 して 金 融 商 品 として 販 売 されています) 投 資 家 ( 事 業 会 社 等 の 出 資 者 )は 物 件 の 運 用 事 業 を 行 う 営 業 者 (リース 会 社 の 100% 子 会 社 )と 匿 名 組 合 契 約 を 結 び 物 件 の 購 入 価 額 の 30~40%を 出 資 します オペレーティング リースの 特 色 は リース 収 入 は 毎 年 定 額 です しかしリース 資 産 は 定 率 法 により 償 却 し かつリース 期 間 が 耐 用 年 数 を 上 回 っているので リース 期 間 の 前 半 は 必 ず 投 資 損 益 は 赤 字 と なります そして 結 果 としては 投 資 家 に 損 失 が 分 配 されることにな 10
ります このようにオペレーティング リースは 将 来 の 赤 字 が 予 想 でき るので 利 益 を 圧 縮 することが 可 能 です 含 み 益 の 高 い 土 地 を 子 会 社 化 市 内 の 中 心 地 に 工 場 の 敷 地 を 所 有 している 会 社 や 都 市 部 に 店 舗 の 敷 地 を 所 有 している 老 舗 会 社 などでは 会 社 の 規 模 に 比 べて 土 地 の 比 重 が 大 きく かつ 多 額 な 土 地 の 含 み 益 を 保 有 している 場 合 があり ます 純 資 産 価 額 方 式 による 株 式 の 評 価 額 を 下 げるためには 土 地 の 含 み 益 を 反 映 させないようにしなければなりません それにより 土 地 を 分 離 して 株 式 に 転 換 することが 必 要 です すなわち 本 体 会 社 の 土 地 を 分 離 して 子 会 社 を 設 立 し 不 動 産 を 直 接 保 有 するのではなく 子 会 社 を 通 して 間 接 に 所 有 します この 子 会 社 株 式 の 評 価 が 純 資 産 価 額 より 低 い 類 似 業 種 比 準 価 額 が 適 用 でき るようにすれば 本 体 会 社 の 純 資 産 価 額 が 下 がり 本 体 会 社 株 式 の 評 価 を 下 げることができます ただし 土 地 のみの 分 離 は 税 法 上 の 適 格 会 社 分 割 や 適 格 現 物 出 資 適 格 事 後 設 立 の 事 業 譲 渡 に 該 当 しないと 認 定 されることがあります そのため 建 物 機 械 備 品 等 を 含 めた 子 会 社 設 立 とします なお 人 員 については 出 向 でもかまいません 11
Ⅲ 社 員 持 株 会 の 活 用 による 相 続 税 対 策 1 社 員 持 株 会 を 活 用 して 自 社 株 財 産 を 削 減 社 員 持 株 会 への 放 出 対 策 の 考 え 方 オーナー 会 社 の 株 式 財 産 を 減 らすための 方 法 として 株 価 を 引 き 下 げる 方 法 のほかに オーナーが 所 有 している 株 式 を 減 らす 方 法 が あります その 方 法 の 一 つに 社 員 持 株 会 の 活 用 があります オーナー 会 社 における 事 業 承 継 の 重 要 な 要 素 の 一 つとして 経 営 支 配 権 の 問 題 があります オーナー 一 族 での 会 社 支 配 の 功 罪 はあります だがしかし 同 族 会 社 での 株 式 分 散 による 多 数 株 主 の 存 在 の 方 が もともと 経 営 基 盤 の 弱 い 非 公 開 会 社 の 中 小 会 社 においては 大 きな 問 題 だといえます したがってオーナー 一 族 で 最 低 保 有 株 式 数 50% 以 上 できれば 株 主 総 会 の 特 別 決 議 に 必 要 な 持 株 数 の3 分 の2(66.67%) 以 上 が 望 ま しいことになります 自 社 株 財 産 を 減 らす 社 員 持 株 会 への 売 却 価 額 社 員 持 株 会 の 社 員 株 主 への 売 却 価 額 は 同 族 株 主 以 外 ですから 例 外 的 な 評 価 方 式 である 配 当 還 元 価 額 の1 株 当 たり 500 円 以 上 で あれば 贈 与 税 の 課 税 はありません また1 株 当 たりの 売 却 価 額 が 500 円 以 下 であっても 社 員 1 人 当 たりの 贈 与 額 が 非 課 税 範 囲 の 110 万 円 以 内 であれば 贈 与 税 は 課 税 されないことになります 12
社 員 持 株 会 の 目 的 とメリット 1 社 員 の 財 産 形 成 への 一 助 利 益 配 当 の 支 払 いによる 預 貯 金 の 収 入 利 子 よりも 効 果 が 大 きく かつ 利 益 配 当 を 優 先 することによって 安 定 した 収 入 を 得 ることがで きます 2 株 式 の 社 外 流 出 の 防 止 すでに 社 員 に 株 式 を 所 有 させている 同 族 会 社 においては 社 員 の 相 続 や 贈 与 によって 株 式 が 会 社 とはまったく 関 係 のない 株 主 に 所 有 されていくことを 防 止 できます また 社 員 の 死 亡 や 退 職 の 場 合 には 持 株 の 買 取 請 求 に 対 処 する 方 法 として 有 効 になります これは 社 員 持 株 会 規 約 において 株 式 の 買 取 り 先 と 株 式 の 売 買 価 額 を 決 めておくことによって 可 能 になります 3オーナーの 相 続 税 対 策 オーナーの 持 株 を 社 員 持 株 会 へ 放 出 することによって 株 式 財 産 である 相 続 財 産 が 減 少 します また 増 資 による 放 出 であっても 株 式 の 評 価 額 が 下 がることによって 相 続 財 産 が 減 少 し 相 続 税 が 減 少 することになります 2 社 員 持 株 会 の 運 営 ポイント 社 員 持 株 会 の 設 立 と 配 当 金 の 意 義 持 株 会 は 民 法 ( 第 667 条 ) 上 の 組 合 として 設 立 します この 民 法 上 の 組 合 は 法 人 格 はなく 単 なる 個 人 の 集 合 体 であるために 株 式 の 名 義 登 録 は 持 株 会 としてはできません 形 式 的 には 持 株 会 の 理 事 長 名 義 とし 株 券 の 管 理 を 理 事 長 に 信 託 する 方 法 にします したがって 株 式 は 持 株 会 が 所 有 し 社 員 株 主 は 持 株 会 の 持 分 を 所 有 する 関 係 になります このように 株 券 を 一 元 的 に 集 中 管 理 することによって 株 式 の 社 外 流 出 を 防 止 することがで きます さらに 民 法 上 の 組 合 は 税 務 上 の 人 格 のない 社 団 に 該 当 しないと しています( 法 基 通 1-1-1) そして 配 当 金 については 実 質 所 得 者 課 税 の 原 則 に 基 づいて 実 質 的 な 所 得 は 組 合 員 に 帰 属 する ものと 解 されています したがって 配 当 金 は 理 事 長 に 一 括 して 支 払 われますが 実 質 の 受 益 者 は 会 員 の 個 々になっているので 配 当 金 はすべて 各 個 人 の 配 当 所 得 として 取 り 扱 います 13
社 員 の 取 得 資 金 従 業 員 は 自 社 株 取 得 のため 取 得 資 金 の 準 備 を 行 います 同 族 会 社 における 従 業 員 の 株 式 の 取 得 は 臨 時 的 にオーナー 等 の 大 株 主 か らの 特 別 な 譲 受 け または 第 三 者 割 当 増 資 の 引 受 けなどの 特 別 なケ ースがほとんどです 社 員 はその 後 オーナー 等 より 買 い 取 ることに なります しかしながら 社 員 の 資 金 負 担 が 過 重 になる 場 合 があるため 会 社 が 株 式 購 入 資 金 の 援 助 を 行 います 資 金 援 助 の 方 法 としては 下 記 のようなものがあります 1 会 社 が 従 業 員 個 々に 融 資 する 2 会 社 が 持 株 会 に 融 資 し 持 株 会 が 会 員 に 貸 し 付 ける 3 購 入 資 金 の 一 部 を 特 別 に 臨 時 賞 与 として 支 給 する 各 従 業 員 は 自 己 の 計 算 において 従 業 員 ごとの 債 務 を 確 定 し 株 主 としての 権 利 義 務 を 明 確 に 書 類 で 管 理 します 会 社 で 資 金 を 貸 し 付 ける 場 合 の 利 率 は 会 社 が 通 常 他 から 借 入 れ を 行 う 場 合 の 平 均 利 率 を 勘 案 して 決 定 します 無 利 息 や 低 利 率 での 貸 付 けの 場 合 または 通 常 の 利 率 と 利 息 との 差 額 が 5,000 円 を 超 える 場 合 その 差 額 は 給 与 所 得 として 課 税 さ れることになります そして 奨 励 金 として 会 員 に 補 助 する 場 合 は 株 主 への 利 益 供 与 禁 止 規 定 に 留 意 が 必 要 です 3 社 員 持 株 会 の 設 立 手 順 社 員 持 ち 株 会 設 立 の 手 順 は 以 下 のように 行 います 設 立 準 備 1 設 立 準 備 から 会 員 の 募 集 までの 事 務 処 理 を 行 う 事 務 局 を 総 務 部 などに 設 置 2 発 起 人 の 選 任 発 起 人 は 持 株 会 の 設 立 後 の 役 員 ( 理 事 長 理 事 監 事 )が 通 常 のケースとなります 3 持 株 会 の 基 本 的 事 項 と 持 株 会 規 約 案 の 作 成 加 入 資 格 ( 子 会 社 の 社 員 も 含 めるかどうか)や 名 称 などの 持 14
株 会 規 約 の 内 容 の 検 討 です 4 労 働 組 合 等 があれば 事 前 の 協 議 を 行 い 了 解 を 得 る 5 大 株 主 との 事 前 折 衝 を 行 う 6 取 締 役 会 の 承 認 決 議 を 受 ける 7 設 立 後 の 事 務 処 理 担 当 者 の 決 定 8 各 種 締 結 書 類 の 作 成 イ) 奨 励 金 を 付 与 された 会 社 との 締 結 書 類 ロ) 給 料 からの 天 引 きなどを 扱 った 労 働 組 合 との 協 定 書 1 設 立 発 起 人 会 の 開 催 設 立 手 順 社 員 持 株 会 設 立 発 起 人 会 議 事 録 を 作 成 し 持 株 会 規 約 の 承 認 役 員 の 選 任 を 記 録 します 2 第 一 回 理 事 会 を 開 催 し 理 事 長 選 任 と 株 式 購 入 価 額 の 決 定 理 事 会 議 事 録 を 作 成 します 3 準 備 段 階 で 作 成 された 各 種 の 締 結 書 類 の 調 印 4 持 株 会 の 預 金 口 座 を 銀 行 に 開 設 預 金 は 普 通 預 金 口 座 にします 持 株 会 設 立 においての 届 出 は 特 に 必 要 ありません 募 集 手 続 持 株 会 の 設 立 の 手 続 きが 終 了 したら 会 員 募 集 を 行 います その 後 社 員 持 株 会 名 簿 を 作 成 して 各 個 人 の 株 式 持 分 を 明 確 にし 保 管 することになります 中 小 会 社 の 持 株 会 の 会 員 募 集 は すでに 株 式 を 取 得 している 社 員 が 応 ずることになるのが 前 提 です したがって 株 式 を 取 得 する 以 前 に 内 諾 していただく 必 要 があります 実 務 では 持 株 会 入 会 申 込 書 を 作 成 し 申 込 株 式 数 と 株 式 金 額 を 記 載 します 15