本 論 文 では 製 造 から 販 売 までを 垂 直 統 合 的 に 行 う SPA 企 業 を 研 究 対 象 とする 1.1 研 究 目 的 ユニクロ ZARA H&M E LAND はそれぞれ 違 う 方 法 で 競 争 し 成 功 している 本 研 究 の 目 的 はそれらの 企 業 の

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●電力自由化推進法案

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質 問 票 ( 様 式 3) 質 問 番 号 62-1 質 問 内 容 鑑 定 評 価 依 頼 先 は 千 葉 県 などは 入 札 制 度 にしているが 神 奈 川 県 は 入 札 なのか?または 随 契 なのか?その 理 由 は? 地 価 調 査 業 務 は 単 にそれぞれの 地 点 の 鑑 定

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入 札 参 加 者 は 入 札 の 執 行 完 了 に 至 るまではいつでも 入 札 を 辞 退 することができ これを 理 由 として 以 降 の 指 名 等 において 不 利 益 な 取 扱 いを 受 けることはない 12 入 札 保 証 金 免 除 13 契 約 保 証 金 免 除 14 入

公表表紙

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注 記 事 項 (1) 当 四 半 期 連 結 累 計 期 間 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動 : 無 (2) 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の 作 成 に 特 有 の 会 計 処 理 の 適 用 : 有 ( 注 ) 詳 細 は 添 付 資 料 4ページ 2.サマリー 情 報 (

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続 に 基 づく 一 般 競 争 ( 指 名 競 争 ) 参 加 資 格 の 再 認 定 を 受 けていること ) c) 会 社 更 生 法 に 基 づき 更 生 手 続 開 始 の 申 立 てがなされている 者 又 は 民 事 再 生 法 に 基 づき 再 生 手 続 開 始 の 申 立 てがなさ

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2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 法 人 の 長 A 18,248 11,166 4, ,066 6,42

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文化政策情報システムの運用等


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ていることから それに 先 行 する 形 で 下 請 業 者 についても 対 策 を 講 じることとしまし た 本 県 としましては それまでの 間 に 未 加 入 の 建 設 業 者 に 加 入 していただきますよう 28 年 4 月 から 実 施 することとしました 問 6 公 共 工 事 の

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資料 H3ロケットへの移行に関する課題と対応

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報道関係者各位

m07 北見工業大学 様式①

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経 常 収 支 差 引 額 等 の 状 況 平 成 26 年 度 予 算 早 期 集 計 平 成 25 年 度 予 算 対 前 年 度 比 較 経 常 収 支 差 引 額 3,689 億 円 4,597 億 円 908 億 円 減 少 赤 字 組 合 数 1,114 組 合 1,180 組 合 66

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グローバル SPA 企 業 の 革 新 性 について 大 阪 大 学 経 済 学 部 経 済 経 営 学 科 0 3 A 1 1 2 4 0 YOO BOSUL 1.はじめに 近 年 のアパレル 産 業 は 急 速 なグローバル 化 の 進 展 により 消 費 者 ニーズが 複 雑 に 多 様 化 している また 少 子 高 齢 化 が 進 むことにより 市 場 規 模 が 小 さくなっているため 企 業 間 の 競 争 が 激 しくなっている 2000 年 代 前 半 まで 好 調 だったルイ ヴィトンなどのラグ ジュアリーブランドさえも このような 環 境 変 化 に 対 応 できず ビジネスモデルの 劣 化 に よる 陰 りが 見 え 始 めている この 不 況 を 克 服 するためには ビジネスモデルの 再 構 築 によ る 企 業 変 革 が 必 要 なため 持 続 的 な 環 境 変 化 に 対 応 できる 企 業 構 造 を 作 ることが 重 要 であ る 最 近 は 価 格 と 品 質 そして 個 性 という 3 つの 要 素 が 消 費 者 の 購 買 につながる 重 要 な 要 素 になっている 1 ユニクロ ZARA H&M などで 代 表 されるグローバル SPA 企 業 は 企 画 生 産 流 通 のプロセスを 垂 直 的 に 統 合 することで 効 率 の 良 い 生 産 販 売 し 価 格 品 質 個 性 という 3 要 素 を 備 えることができた SPA は Specialty store retailer of Private label Apparel の 頭 文 字 を 組 み 合 わせた 造 語 で 製 造 から 小 売 りまでを 統 合 した 最 も 垂 直 統 合 度 の 高 い 販 売 業 態 のことを 指 す この 用 語 はアメリカのアパレル 企 業 GAP のフィッシャー(Donald Fisher) 会 長 が 1987 年 前 年 度 の 決 算 報 告 書 で 発 表 した 新 たな 事 業 モデル から 由 来 した 2 製 造 業 者 が 中 心 と なって 流 通 部 門 を 統 合 する 形 の 前 方 垂 直 統 合 と 流 通 業 者 が 中 心 となって 製 造 部 門 を 統 合 する 形 の 後 方 垂 直 統 合 があるが 前 者 をメーカ 型 SPA 後 者 をリテイル 型 SPA と もいう ZARA と H&M は 前 方 垂 直 統 合 を ユニクロと E LAND は 後 方 垂 直 統 合 を 成 し 遂 げた SPA をファストファッションと 混 同 する 場 合 があるが ファストファッションとは 価 格 が 安 い 生 産 が 速 い 流 行 を 取 り 入 れたファッショナブルさ を 持 つ 企 業 のこ とである その 流 行 を 取 り 入 れたファッションを 実 現 するために 垂 直 統 合 で 延 期 型 サプラ イチェーンを 持 つ 企 業 が 多 いという 特 徴 を 持 っている ファストファッションを 間 違 って 使 っている 例 としてはユニクロをファストファッションと 呼 ぶことである ユニクロは 自 社 で 製 品 開 発 生 産 小 売 りを 行 い 小 売 店 の 経 営 も 自 社 で 行 っているため SPA の 定 義 に 合 致 するが デザインから 生 産 までの 期 間 が 速 いとは 言 えず 流 行 を 取 り 入 れるより ベーシックなデザインをメインにするためファストファッションではない つまり SPA 企 業 がすべてファストファッション 企 業 とは 言 えない 1 Samsung Economic Research Institute ファストファッションから 学 ぶ 逆 発 想 の 知 恵 2011 年 4 月 6 日 2 The Gap Stores, Inc., ANNUAL REPORT 1986, p.5 133

本 論 文 では 製 造 から 販 売 までを 垂 直 統 合 的 に 行 う SPA 企 業 を 研 究 対 象 とする 1.1 研 究 目 的 ユニクロ ZARA H&M E LAND はそれぞれ 違 う 方 法 で 競 争 し 成 功 している 本 研 究 の 目 的 はそれらの 企 業 の 特 徴 や 他 社 との 違 いを 明 らかにし さらにそれぞれの 革 新 性 について 考 察 することである 先 行 研 究 によると SPA の 革 新 性 とは 販 売 情 報 の 有 効 な 利 用 により 需 要 の 不 確 実 性 への 対 応 延 期 投 機 原 理 の 活 用 生 産 流 通 上 の 効 率 化 を 実 現 する 一 方 ブランドを 製 品 レベルから 小 売 レベルまで 一 貫 して 管 理 することを 可 能 とする 点 である 本 論 文 では グローバル SPA 企 業 の 商 品 と 生 産 物 流 プロセスの 革 新 性 を 分 析 する 2.ユニクロの 革 新 性 について ユニクロは ファーストリテイリング 社 の 代 表 ブランドとして 全 体 売 上 げ 高 の 約 90%を 占 めている 3 Unique, Clothing Warehouse の 略 語 で 独 特 で 多 様 な 衣 類 倉 庫 という 意 味 を 含 んでいる 1884 年 6 月 広 島 に 1 号 店 を 開 店 した 以 来 1991 年 から 商 品 企 画 清 算 流 通 販 売 まで 自 社 一 貫 コントロールする SPA 方 式 を 導 入 した ユニクロのビジネスモデルは 生 産 と 販 売 を 直 結 し 100% 自 社 でコントロールする ことである 中 国 での 低 コスト 生 産 だけでなく 経 営 技 術 デザイン マーチャンダイ ジング マーケティング 店 舗 オペレーションすべてが 直 結 することで より 大 きな 付 加 価 値 を 生 むことができる その 結 果 ユニクロは 高 品 質 なカジュアルを 低 価 格 で 提 供 する ことで 飛 躍 的 な 成 長 を 遂 げた 2013 年 には 1 兆 円 を 超 える 売 上 高 を 記 録 し 日 本 を 代 表 するブランドとして 成 長 した ユニクロは 性 別 と 年 齢 を 問 わないカジュアルでベーシックな 製 品 を 中 心 に 少 品 種 大 量 生 産 を 行 っている 回 転 率 はが 遅 く 新 製 品 の 数 も 比 較 的 に 少 ないため ファストファッ ションとはいえない 少 品 種 の 製 品 を 約 6 か 月 ~1 年 にかけて 販 売 し 定 番 商 品 の 場 合 シ ーズンに 関 係 なく 継 続 的 に 販 売 する 場 合 もある ユニクロは 日 本 での 成 功 を 基 に 2001 年 イギリスをはじめ 海 外 に 進 出 した イギリス では 営 業 不 振 を 理 由 で 1 年 6 か 月 で 21 か 所 の 店 舗 のうち 16 か 所 を 閉 鎖 するなど 苦 労 もしたが それ 以 降 中 国 香 港 韓 国 アメリカ フランス シンガポールなどに 成 功 的 に 進 出 した 現 在 は 日 本 国 内 を 含 め 全 世 界 に 1,547 か 所 の 店 舗 を 展 開 している (2014 年 11 月 ) ユニクロの 特 徴 は 1 中 国 生 産 による 低 価 格 政 策 2 持 続 的 な 素 材 開 発 3 徹 底 的 な 品 質 管 理 を 挙 げることができる このような 要 因 を 生 産 方 式 の 面 から 分 析 したいと 思 う 3 Fast Retailing ANNUAL REPORT 2012, p.8 134

2.1 ユニクロの 生 産 方 式 2.1.1 デザイン ベーシックでカジュアルなデザインを 中 心 に 性 別 や 年 齢 に 関 係 なく 誰 でも 着 やすい 製 品 を 生 産 する アイテムな 数 は 通 常 のカジュアルショップに 比 べ 3 分 の1から 5 文 の 1 の 水 準 と 極 端 に 絞 り 込 まれている また 1 つのデザインに 色 や 柄 のバリエーションを 多 くすることで 生 産 プロセスを 単 純 化 している デザインのプロセスとしては まず シーズンの 1 年 前 に 商 品 コンセプトを 決 定 する その 後 デザインサンプル 作 成 素 材 決 定 各 色 サンプル 選 定 の 順 で 行 われる 2.1.2 生 産 ユニクロは 1990 年 中 国 に 生 産 基 地 を 作 ることで 企 画 から 生 産 まで 直 接 管 理 する 垂 直 統 合 システム つまり SPA システムを 確 立 した ただし ユニクロの 垂 直 統 合 は 自 社 工 場 を 持 たず 協 力 工 場 と 提 携 している 形 である コスト 削 減 のため 中 国 の 工 場 を 積 極 的 に 利 用 している 中 国 の 約 70 個 の 協 力 工 場 と 取 引 し 生 産 量 の 約 90%をアウトソーシン グしている 残 り 10%の 工 場 ははベトナムのホーチミンとバングラデシュのダッカにあ る これらの 工 場 とは 長 期 間 の 取 引 を 基 に 信 頼 関 係 を 構 築 し 積 極 的 な 技 術 支 援 と 徹 底 し た 品 質 管 理 を 行 い それぞれ 100 万 の 単 位 で 大 量 生 産 される 製 品 に 対 しても 高 い 品 質 を 維 持 している 技 術 支 援 は 日 本 の 繊 維 業 界 で 30 年 以 上 の 経 験 を 持 つ 技 術 者 集 団 である 匠 チーム が 担 当 する 匠 チーム は 紡 績 紡 織 染 色 縫 製 出 荷 まで 工 程 管 理 全 般 にわたる 技 術 を 協 力 工 場 に 伝 えている さらに 上 海 深 圳 (しんせん) ホーチミンなど 主 要 生 産 拠 点 の 生 産 管 理 事 務 所 には 約 170 人 にユニクロ 生 産 管 理 担 当 者 が 配 属 され 毎 週 工 場 を 訪 問 し 品 質 をチェックする 素 材 開 発 への 注 力 もユニクロの 大 きな 特 徴 である 低 価 格 と 高 品 質 の 両 立 のためには 良 い 素 材 の 安 定 的 な 供 給 が 重 要 である ユニクロは R&D チーム 商 品 企 画 チーム 素 材 企 画 チーム 生 産 工 場 が 連 携 し 素 材 を 開 発 する 新 素 材 の 開 発 は 製 造 業 者 との 戦 略 的 提 携 により 行 われ 東 レ 株 式 会 社 との 戦 略 的 パートナシップがその 例 である この 提 携 から 開 発 された 発 熱 保 温 素 材 ヒートテック は 機 能 性 の 優 れたヒット 作 である また フリース 素 材 もユニクロの 素 材 開 発 の 代 表 的 な 例 である 生 産 プロセスは シーズンの 6 か 月 前 から 数 量 決 定 生 産 開 始 染 色 編 み 縫 製 加 工 仕 上 げ 品 質 検 査 各 国 へ 出 荷 の 順 で 行 われる ユニクロは ZARA や H&M などの 競 争 他 社 とは 違 い ベーシックな 製 品 を 少 品 種 大 量 生 産 する 少 品 種 大 量 生 産 戦 略 は 中 国 生 産 とともに 低 価 格 戦 略 を 可 能 にする 重 要 な 基 盤 となる 規 模 の 経 済 と 安 い 人 件 費 がコスト 削 減 の 中 心 軸 となっている 135

このように ユニクロは 中 国 生 産 により 低 価 格 を 実 現 し 持 続 的 な 素 材 開 発 と 徹 底 した 品 質 管 理 により 高 品 質 を 維 持 することができたのである 図 1 ユニクロのビジネスモデル 3.ZARA の 革 新 性 について ZARA は 世 界 的 なファッション 企 業 Inditex 社 の 総 売 上 高 の 74%を 占 める 基 幹 ブランド で ファストファッションを 代 表 している 店 舗 は 一 部 フランチャイズ 制 を 導 入 してい るが ほとんどが 日 本 を 含 め 自 主 運 営 の 直 営 展 開 を 基 本 方 針 としている 1975 年 にスペ インで 1 号 店 を 開 店 した 以 来 現 在 88 か 国 で 2,000 か 所 以 上 の 店 舗 を 展 開 している こ のような ZARA の 成 功 から 現 在 Inditex 社 は ZARA 以 外 にも Pull&Bear Massimo Dutti Bershka Stradivarius Oysho Uterque という 7 つのブランドを 持 っている Inditex 社 の 雇 用 者 数 は 32,000 人 を 超 え そのうちデザイナーの 数 は 200 人 以 上 である ZARA の 当 初 のコンセプトは 流 行 に 合 う 服 を 安 い 価 格 で 売 る ことであった 社 会 人 の 女 性 向 けの 洗 練 されたデザインの 服 を 安 い 価 格 で 購 買 できるようにするのがも 目 標 で あった 当 時 のファッション 業 界 では 製 品 開 発 から 流 通 まで 約 1 年 から 2 年 までかかる のが 一 般 的 であった ZARA はこの 問 題 を 解 決 するため デザインから 流 通 までにかかる 136

リードタイムを 短 くする 新 たなビジネスモデルを 考 案 し ZARA ならではの 強 みを 発 揮 し ている ZARA の 特 徴 は 122 か 所 の 自 社 工 場 2 延 期 型 サプライチェーン 3 企 画 から 流 通 まで の 速 いスピード を 挙 げることができる このような 要 因 を 生 産 方 式 と 物 流 システムの 面 で 分 析 したいと 思 う 3.1 ZARA の 生 産 方 式 3.1.1 デザイン 各 国 にあるZARA(88ヵ 国 約 2,000 店 )の 店 舗 から, 携 帯 情 報 端 末 や 電 話 により, 顧 客 のニーズや 要 望 が 本 社 の 製 品 開 発 担 当 者 に 直 接 伝 えられる 製 品 開 発 担 当 者 2 人 とデザ イナー2 人 が1つのチームとなり,コレクション 作 品 を 参 考 にしながらデザインを 考 案 する 製 品 開 発 担 当 者 は 常 に 顧 客 ニーズを 集 めているため デザイナーにそのような 情 報 を 伝 え デザインに 反 映 することができ 生 産 速 度 を 速 めることもできる デザインが 終 わったら デザイナーは 生 産 ラインに 具 体 的 な 情 報 を 送 る また 流 行 の 変 化 に 対 応 しやすくするた め 生 地 の 半 数 を 染 色 しないまま 調 達 し できるだけシーズンが 近 づいてから 染 色 を 行 う 3.1.2 生 産 ZARAは 全 体 の 約 40%の 製 品 を スペイン 国 内 にある22か 所 (18か 所 は 本 社 ラコルー ニャ 近 郊 )の 自 社 工 場 で 生 産 している 4 しかし 縫 製 工 程 については ほとんどを 協 力 工 場 に 発 注 している 残 りの60%の 製 品 は 世 界 中 の 約 400 社 ある 外 部 サプライヤーに 生 産 委 託 している そのうち70%は ヨーロッパと 北 アフリカに 集 中 し 残 りはアジアにあ る 最 新 の 流 行 を 反 映 したファッション 性 の 高 い 製 品 はスペインの 自 社 工 場 で 生 産 し ベ ーシックな 定 番 製 品 はアジアの 工 場 にアウトソーシングする ZARAは 生 産 過 程 に 流 行 を 迅 速 に 反 映 するため 延 期 型 サプライチェーンを 持 つ 延 期 型 サプライチェーンは 顧 客 ニーズに 適 合 した 製 品 を 生 産 するため 最 終 製 品 としての 特 徴 を 不 可 する 時 期 をできる 限 り 遅 らせる 需 要 がある 程 度 確 定 してから 生 産 するため 需 要 の 変 動 による 影 響 を 最 小 化 し 在 庫 管 理 も 効 率 よくすることができる 衣 服 の 場 合 消 費 者 は 流 行 によって 左 右 されやすく 流 行 の 色 に 対 し 敏 感 に 反 応 する 染 色 はアパレル 製 造 工 程 の 中 で 上 流 に 位 置 するため 通 常 の 製 造 であれば 織 り 上 がった 布 を 染 色 を 行 い 裁 断 裁 縫 というプロセスを 通 る しかし ZARAは 色 に 対 する 消 費 者 ニーズに 対 応 しやすくす るため 布 の 織 り 上 がり 裁 断 裁 縫 染 色 という 生 産 方 式 を 取 っている さらに シー ズンが 始 まる 前 には15%だけを 事 前 に 生 産 し シーズン 中 に85% 生 産 することで 需 要 変 動 の 影 響 を 最 小 化 している その 結 果 豊 富 なカラーバリエーションやデザインを 提 供 す ることができるようになった 4 Angelica Jonsson (2007) Extreme Business-Models in the Clothing Industry p.36 137

ZARAは 自 社 工 場 を 持 つことで 製 品 開 発 にかかるリードタイムを 短 くし ZARAな らではの 生 産 方 式 を 確 立 することが 可 能 になったのである これは ほとんどすべての 製 品 をアウトソーシングする 競 争 他 社 との 大 きな 違 いである このような 生 産 方 式 から 企 画 から 配 送 まで 平 均 3~4 週 間 という 業 界 最 短 期 間 を 実 現 することができた スペイン 国 内 生 産 製 品 の 約 85%が 製 品 企 画 後 約 1ヵ 月 以 内 に 生 産 され 店 舗 に 届 けられ る これに 追 加 発 注 分 の 製 品 が 発 注 から2 週 間 後 に 届 き 常 に 売 り 場 や 製 品 の 鮮 度 を 高 く 維 持 することができる このように 年 間 約 1 万 3,000 以 上 という 多 品 種 を 生 産 しなが ら 総 売 上 に 占 める 値 下 げ 品 の 比 率 は15 20% にとどまり 値 下 げ 幅 も 定 価 の15% 引 き 程 度 と 値 下 げに 頼 らず 製 品 を 売 り 切 っているのである 図 2 ZARAの 製 品 開 発 プロセス 3.2 物 流 システム 生 産 された 製 品 はハンガー 掛 けの 状 態 で, 値 札 がつけられ, 巨 大 な 物 流 センターで 仕 分 けされる この 物 流 センターから 店 舗 に 週 2 回 出 荷 される 契 約 している 輸 送 会 社 は ラ コルーニャでZARAのロゴが 入 ったトラックに 製 品 を 積 み 込 み ヨーロッパ 各 国 の 店 舗 へ と24~36 時 間 以 内 に 直 送 する すべての 輸 送 車 は 公 共 バスのように 細 かく 管 理 された 時 刻 表 のようなタイムテーブルで 運 行 され ロスのないように 細 心 の 注 意 を 払 われている 米 国 や 日 本 の 店 舗 へはエアー 便 で48 72 時 間 以 内 に 届 けられる このように 発 注 から 納 品 までの 短 いリードタイムこそが 適 正 材 工 高 を 維 持 するために 重 要 な 事 柄 である 138

週 2 回 の 頻 度 で 空 輸 すれば 物 流 コストは 一 般 的 なアパレル 企 業 よりはるかに 高 くなる しかし ZARAは 迅 速 にファッション 性 の 高 い 製 品 を 店 頭 に 並 べるために 必 要 なコスト とみなして 負 担 しているのである 一 方 広 告 費 はほとんど 負 担 せず, 売 上 高 広 告 費 比 率 は0.3%で 極 めて 低 いため 輸 送 料 に 費 用 を 使 うことができる 店 舗 の 在 庫 管 理 は 毎 週 2 回 の 発 注 と 納 品 が 基 本 的 な 作 業 となっている 同 じ 商 品 が2 週 間 以 上 店 舗 に 留 まらないようにシーズン 前 の 店 頭 在 庫 は 極 力 抑 えられている そして シ ーズンインしてから 売 れ 筋 を 見 極 めながら 迅 速 に 商 品 を 次 々と 店 頭 へ 豆 乳 していく こ れは シーズン 前 にあらかじめ 生 産 量 を 予 測 し 決 めるアパレル 業 界 の 慣 習 とは 全 く 逆 の 発 想 である 業 界 平 均 では シーズン 前 の 店 頭 在 庫 は シーズン 予 算 の45~60%に 相 当 す る 商 品 在 庫 を 持 つことが 多 いが ZARAは 15~30%だけの 在 庫 を 持 つ そして シーズ ンインと 同 時 に 次 々と 新 製 品 が 投 入 され 常 にリピート 顧 客 を 店 内 に 呼 び 込 むこととなる このようなすべてのプロセスが 最 短 2 週 間 で 長 くても3か 月 程 度 で 終 わる 点 がZARA の 強 みである 図 3 ZARAの 商 品 化 サイクルと 業 界 標 準 の 比 較 4.H&M の 革 新 性 について H&M はスウェーデンのアパレルメーカーエイチ アンド エム ヘネス アンド モー リッツが 展 開 するファッションブランドである H&M グループには H&M 以 外 にも COS, Monki, Weekday, Cheap Monday and & Other Stories というブランドがある 1947 年 にスウェーデンで 女 性 服 販 売 店 として 1 号 店 を 開 店 し 現 在 55 か 国 に 約 3,300 の 139

店 舗 を 展 開 しており 従 業 員 数 は 87,000 人 を 超 える H&M グループの 2013 年 の 総 売 上 は 1 兆 9300 億 円 に 至 る H&M は 流 行 に 敏 感 な 若 い 女 性 をターゲットにし ファッション 性 のある 衣 料 品 を 低 価 格 で 販 売 する 点 から ファストファッションの 一 翼 を 担 う 企 業 となっている 年 間 50 万 点 以 上 の 新 作 を 投 入 し 再 生 産 はしないという 方 針 で 流 行 を 敏 感 に 反 映 している H&M の 特 徴 は 1ファッション 性 の 高 さ 2 海 外 生 産 による 低 価 格 3 膨 大 な 新 製 品 の 数 4 製 品 の 回 転 が 速 い 点 を 挙 げることができる このような 要 因 を H&M の 生 産 方 式 の 面 から 分 析 したいと 思 う 4.1 H&M の 生 産 方 式 4.1.1デザイン H&M のデザイン 部 署 は 約 100 人 のパターンデザイナーと 約 160 人 のデザイナー 約 100 人 のバイヤー 多 数 の 予 算 管 理 者 で 構 成 されている デザイナーは 予 算 管 理 者 と 話 し 合 い 予 算 に 合 わせながらデザインを 決 める この 際 デザイナーは ベーシックさ 最 新 の 流 行 ハイファッションの3 要 素 の 間 で 最 も 良 いバランスを 取 るためにパターンデザイ ナー バイヤーとも 相 談 しながら 次 のコレクションを 作 る バイヤーは 協 力 工 場 への 発 注 を 担 当 する このようにデザインされた 製 品 は アジアとヨーロッパを 中 心 にする 外 部 の 工 場 にアウトソーシングして 生 産 される このように H&M は 社 内 に 200 人 を 超 すデザイナーを 置 くことで ファッション 性 の ある 製 品 を 制 作 するのに 力 を 入 れているが 一 方 有 名 ブランドとのコラボレーションも 活 発 に 行 っている 有 名 ブランドとのコラボレーションは ファストファッション 業 界 で は H&M が 初 めて 実 施 したことである ベルサーチ ジバンシー イザベルマラン ステ ラーマッカートニーなどの 有 名 ブランドのデザインを H&M の 価 格 で 販 売 するという 点 は 革 新 的 な 発 想 であった ハイファッションのデザインを H&M に 適 用 させることで ファ ッション 性 を 高 めることができたのである 4.1.2 生 産 H&M の 低 価 格 は 1 中 間 流 通 を 最 小 限 にし 2コストの 安 い 地 域 の 工 場 にアウトソーシ ング することから 実 現 できる H&M は 時 価 工 場 を 持 たず 約 900 か 所 の 製 造 工 場 から アウトソーシングしている 工 場 の 約 60%はアジアに 約 40%はヨーロッパにある こ のようなアウトソーシング 網 は 21 か 所 の 生 産 管 理 事 務 所 (production office ヨーロッ パ 10 か 所 アジア 11 か 所 アフリカ 1 か 所 )を 設 置 して 管 理 している 生 産 管 理 事 務 所 は 社 内 のバイヤーが 協 力 工 場 に 適 切 に 注 文 し 製 品 が 適 切 な 価 格 と 品 質 で 生 産 される ように 管 理 する 生 産 プロセスでリードタイムを 短 くするために 生 産 管 理 事 務 所 は 製 品 のサンプルをチェ ックし 費 用 効 率 と 輸 入 割 当 量 運 送 にかかる 時 間 などを 考 慮 する リスクを 最 小 限 にす 140

るため 1 年 中 持 続 的 に 生 産 を 注 文 する このようにアウトソーシングを 利 用 して H&M はリードタイムを 約 15~20% 短 くすることが 可 能 になった 生 産 プロセスは まずインドや 中 国 からコットンなどの 原 材 料 がインドネシア バング ラデシュ タイなどの 工 場 に 送 られる それらの 工 場 で 生 産 された 完 成 品 はドイツのハン ブルクにある 中 央 倉 庫 に 送 られ その 後 世 界 中 の 各 店 舗 に 配 送 される 流 行 に 対 応 しながら 生 産 するために 生 産 軸 を 2 つに 分 けるのが H&M の 特 徴 である ストックホルムの 本 部 で 決 められたプロダクトデザインは リードタイムの 長 い 製 品 とリ ードタイムの 短 い 製 品 の 2 軸 に 分 ける リードタイムの 長 い 製 品 はアジアの 工 場 で 生 産 し リードタイムの 短 い 製 品 はヨーロッパの 工 場 で 生 産 することにより 効 率 を 上 げることが できる ベーシックな 製 品 は リードタイムが 長 くても 流 行 から 遅 れることはないが フ ァッション 性 の 高 い 製 品 であるほどリードタイムが 長 いと 流 行 から 遅 れる 可 能 性 がある そのため ファッション 性 があってリードタイムが 短 い 製 品 はヨーロッパの 工 場 で 主 に 生 産 している このように 生 産 される 新 作 は 毎 年 50 万 点 (リニューアルや 応 用 を 含 む)を 超 える 新 作 の 数 と 製 品 の 多 様 性 を 確 保 することにより 最 新 流 行 を 反 映 することができる ZARA は 年 間 約 1 万 点 ユニクロは 年 間 約 1000 点 の 新 作 を 投 入 している 点 に 比 べると 圧 倒 的 に 多 い 数 である また H&M は 一 度 生 産 したものは 再 生 産 しないため 回 転 率 がとても 高 い 1 週 間 前 に 店 舗 に 陳 列 されていた 製 品 が 1 週 間 後 にはない 場 合 もある このように 製 品 の 回 転 率 を 速 くし 多 くの 新 作 を 出 すことで H&M は 流 行 に 敏 感 な 消 費 者 ニーズを 満 たすことができたのである H&M の 場 合 企 画 から 陳 列 まで 早 くて 3 週 間 通 常 は 2~3 か 月 の 時 間 がかかる H&M の 輸 送 はほとんどが 船 弁 であり ZARA に 比 べるとリードタイムも 遅 い この 点 を 補 完 するため 先 行 きして 1 年 先 まで 商 品 んおデザイン 化 を 進 め 売 れ 行 きによって 後 から 調 整 する 方 式 を 取 っている また POS データを 積 極 的 に 活 用 し 新 規 の 割 込 企 画 生 産 と 既 生 産 分 の 出 荷 調 整 を 許 容 することで 長 いリードタイムを 補 完 している 図 4 H&M の 製 品 生 産 プロセス 141

5.E LAND の 革 新 性 について E LAND グループは 韓 国 の 企 業 で アパレル 事 業 をメインに 事 業 を 展 開 している 2012 年 E LAND グループ 全 体 の 売 上 は 1 兆 円 を 超 え アパレル 事 業 での 売 上 は 約 4,100 億 円 そのうち 約 2100 億 円 が 中 国 からの 売 上 であった 中 国 に 40 個 以 上 のブラン ドを 展 開 し 店 舗 数 は 6,500 を 超 える 代 表 的 な M&A 企 業 で 多 角 化 戦 略 を 取 っている アパレル 以 外 にも フード リビング レジャー リテイル テーマシティという 幅 広 い 分 野 でビジネスを 展 開 している その 中 でも 最 も 規 模 の 大 きい 事 業 はアパレルである 中 低 価 格 のカジュアル 系 のブラ ンドが 多 く 若 い 年 齢 層 をメインターゲットにしている 韓 国 国 内 でアパレル 市 場 規 模 1 位 を 占 め 54 個 のブランドを 持 っている E LAND が 直 接 設 立 したブランドもあるが 多 数 のブランドは M&A により 買 収 されたのである E LAND グループの 特 徴 は 圧 倒 的 に 大 きい 一 つのブランドがあるのではなく 中 小 規 模 のブランドが 数 多 く 活 躍 している という 点 である 海 外 事 業 としては 中 国 には 輸 出 を 中 心 に アメリカやヨーロッパから は 輸 入 を 中 心 に 行 っている E LAND は 韓 国 で 最 も 早 く SPA システムを 構 築 した 企 業 である 2009 年 SPAO をユニクロに 対 抗 するブランドとして 設 立 した 以 来 MIXXO WHOAU Roem など 既 存 の 自 社 ブランドを 多 数 SPA に 転 換 した SPAO は 中 国 からも 注 目 を 浴 びている ブランドで ユニクロをベンチマークした 上 にさらに 安 い 価 格 でベーシックな 製 品 を 販 売 している SPAO は 2013 年 に 中 国 進 出 を 始 めたため 現 在 北 京 上 海 武 漢 (うはん) に 3 店 舗 だけ 展 開 しているが 2015 年 に 10 店 舗 を 増 やし 台 湾 や 香 港 にも 3 店 舗 を 開 店 する 予 定 である SPAO を 代 表 とする E LAND グループの SPA システムは 競 争 他 社 と は 違 う 特 徴 を 持 ち さらに 安 いコストで 生 産 することができる E LAND グループの 特 徴 としては 1 多 ブランド サブブランド 戦 略 2 原 材 料 現 地 加 工 の 生 産 方 式 3 膨 大 の 流 通 網 を 挙 げることができる このような 要 因 を 分 析 したいと 思 う 5.1 多 ブランド サブブランド 戦 略 1988 年 から 1993 年 は E LAND グループの 成 長 期 であった この 時 期 から E LAND は 本 格 的 に 多 ブランド サブブランドを 展 開 する 戦 略 を 取 り 少 ない 費 用 で 新 規 ブランドの 認 知 度 を 上 げることを 可 能 にした E LAND グループが 登 場 した 当 時 に 韓 国 のアパレル 市 場 には 競 争 企 業 がほとんどなかったため 一 つのブランドでは 消 費 者 ニー ズをすべて 満 たすのは 難 しいと 判 断 した そのため 市 場 セグメントを 細 分 化 し 多 数 の ブランドを 展 開 した 5 5 国 際 法 律 新 聞 E LAND の 中 国 進 出 事 例 2014 年 6 月 27 日 142

E LAND は 初 期 ブランド England の 成 功 以 降 E LAND Brenttano Underwood Hunt というシリーズ 型 ブランドを 多 数 発 表 した これらのブランド は 1 つの 共 通 のコンセプトを 持 ちながら セグメントを 細 分 化 し シリーズブランド という 印 象 を 顧 客 に 与 えた その 結 果 自 社 ブランド 間 の 競 争 を 通 じてグループ 全 体 が 成 長 するという 効 果 があり さらに 他 社 の 市 場 参 入 を 効 果 的 に 遮 断 する 壁 を 作 ることもでき た 多 ブランド 戦 略 とともに サブブランド 戦 略 も 取 っている 少 ない 費 用 で 新 規 ブランド の 認 知 度 を 簡 単 に 高 め 同 時 にたくさんのブランドを 運 営 できる 基 盤 を 作 ったのである リトルブレン(ブレンタノのサブブランド) イーランドジュニア(イーランドの サブブランド) ベビーハント(ハントのサブブランド) がその 例 である このよ うな 戦 略 から E LAND グループは 多 様 な 消 費 者 ニーズを 満 たしながら 信 頼 を 得 ること ができたのである 5.2 生 産 現 在 E LAND の 54 個 のブランドのうち 10 個 のブランドが SPA を 導 入 している 代 表 的 な SPA ブランドである SPAO は ユニクロと 同 一 水 準 の 素 材 と 品 質 を 維 持 し なながら 価 格 はユニクロの 8 割 程 度 に 設 定 している ユニクロがカシミア ヒートテック など 差 別 化 したシーズン 別 注 力 アイテムを 持 っていることから SPAO も E LAND 内 のファッション 研 究 所 で 素 材 開 発 を 行 い ワームヒート(Warm heat) ココナッツ 加 工 シャーツ ウォッシャブルニット ウルムチ 産 カシミアなど 高 品 質 のアイテムを 多 数 開 発 した 高 品 質 な 製 品 をユニクロよりさらに 安 く 生 産 できる 秘 訣 は 原 材 料 の 現 地 加 工 である E LAND グループは 自 社 工 場 を 持 たずすべてをアジアの 協 力 工 場 にアウトソーシング する ユニクロの 場 合 コットンやウールなどの 原 材 料 を 購 入 し それらを 中 国 の 工 場 に 送 って 生 産 する この 過 程 で 輸 送 のコストが 発 生 するのである しかし E LAND の 場 合 には 約 7 割 の 製 品 が 原 材 料 の 産 地 にある 工 場 ですぐ 生 産 されるため 原 材 料 の 輸 送 に かかるコストを 削 減 することができる 原 材 料 別 に 特 化 した 工 場 にそれぞれアウトソーシ ングするため 加 工 技 術 や 品 質 の 面 でも 優 れている 具 体 的 には コットンの 場 合 インドとバングラデシュ 産 を 使 う この 際 コットンを 使 う 製 品 はインドとバングラデシュの 工 場 で 生 産 される また 中 国 のウルムチ 地 域 のカシ ミアを 使 った 製 品 は 中 国 の 工 場 でカシミア 製 品 を 生 産 される 化 学 繊 維 は 韓 国 産 を 使 い 韓 国 の 工 場 で 生 産 される ただし ウールの 場 合 にはオーストラリア 産 を 使 うが オース トラリアの 工 場 ではなく 中 国 工 場 で 生 産 する 2009 年 にはインドのムードラ 社 とベト ナムのタンコム 社 を 買 収 した 2 社 とも 繊 維 輸 出 専 門 会 社 で 紡 織 から 最 終 財 の 生 産 まで 垂 直 的 システムを 保 有 している この 2 社 だけでなく E LAND の 協 力 工 場 のほとんど 143

は 紡 績 から 生 産 までできる 垂 直 的 システムを 揃 えている これは 海 外 の 工 場 を 管 理 しや すくするためである このように 生 産 された 製 品 は 一 度 全 部 韓 国 のプサンの 中 央 倉 庫 に 輸 送 される その 後 各 店 舗 に 送 られる また E LAND は 韓 国 の 国 内 で SPA 学 校 を 設 立 し 販 売 専 門 家 の 育 成 に 力 を 入 れている SPA 学 校 は 韓 国 の 労 働 省 と 連 携 し 採 用 教 育 人 事 管 理 を 目 的 にファッシ ョンビジネスの 知 識 やトレンド 分 析 などの 教 育 を 行 う 同 時 に 店 舗 の 演 出 や 外 国 語 などの 実 務 教 育 も 実 施 し 修 了 後 には ショップマスター として 現 場 に 配 属 される 5.3 流 通 システム E LAND グループは 韓 国 の 国 内 だけでも 3,000 個 を 超 える 流 通 網 を 持 っている フラ ンチャイズシステムによる 標 準 管 理 により 運 営 され 資 本 が 不 足 している 状 態 で 事 業 を 始 めた E LAND は フランチャイズシステムの 導 入 により 膨 大 な 流 通 網 を 構 築 すること ができた 全 国 の E LAND の 店 舗 はすべて 同 一 なインテリアとディスプレイで 統 一 し たイメージを 作 り 他 のブランドとの 差 別 化 に 成 功 した 中 国 では 2012 年 中 国 最 大 の 流 通 企 業 万 達 (Wanda) と 業 務 協 力 協 定 (MOU)を 締 結 した Wanda グループは 中 国 の 大 都 市 を 中 心 に 49 か 所 のショッピングモール 26 か 所 のホテル 730 か 所 の 映 画 館 40 か 所 の 百 貨 店 を 運 営 している 現 在 Wanda の 百 貨 店 に E LAND のブランド 20 種 が 入 店 しており 店 舗 数 は 300 を 超 える Wanda は 2015 年 まで 110 個 の 百 貨 店 のオープンを 目 標 としている E LAND はアパレルだけで なくレストラン 韓 国 レジャー 事 業 も 展 開 しているため Wanda との 業 務 協 力 協 定 は お 互 いシナジーを 生 み 出 すことが 期 待 できる 6. 結 論 ユニクロ ZARA H&M E LAND はそれぞれの 生 産 方 式 と 流 通 網 をを 確 立 してい るが 革 新 性 において 共 通 点 がある SPA に 取 り 組 むことで 生 産 流 通 の 効 率 化 と 需 要 不 確 実 性 への 柔 軟 な 対 応 を 可 能 にしたという 点 である この 点 には 情 報 の 共 有 化 が 前 提 となり 需 要 と 流 行 を 予 測 してから 生 産 した 従 来 のアパレル 企 業 に 比 べると 革 新 的 であ る この 4 社 は 販 売 情 報 に 基 づく SPA 6 を 実 現 しながらそれぞれのブランドを 構 築 した ユ ニクロは 品 質 ZARA は 物 流 スピード H&M は 回 転 率 SPAO は 価 格 という 強 みは 各 企 業 がそれぞれ SPA を 成 功 的 に 導 入 したからこそ 持 つことができたと 思 う 今 後 の 研 究 課 題 としては SPA とブランドの 関 係 性 について 考 えることができる ユ ニクロの 場 合 SPA によって 品 質 品 揃 え 宣 伝 などの 質 を 同 時 に 向 上 させることで 安 かろう 悪 かろう というブランドイメージから 脱 皮 し 低 価 格 高 品 質 さらに 6 苗 苗 (2014) SPA の 理 論 的 研 究 に 関 する 一 考 察 p.14 144

ファッション 性 のあるベーシック 商 品 というブランドイメージを 認 知 させることにせ いこうした このケースを 見 ると SPA がブランドイメージを 拡 張 確 立 または 修 正 する ことができるのではないかと 考 えられる ブランドの 確 立 が SPA の 展 開 を 促 す 点 をふま え,ブランドと SPA との 相 互 作 用 を 明 らかにすることが 今 後 の 研 究 に 求 められる 参 考 文 献 川 嶋 幸 太 郎 (2009) ファストファッション 戦 争 産 経 新 聞 出 版 p.16-30 川 嶋 幸 太 郎 (2008) なぜユニクロだけが 売 れるのか ぱる 出 版 p.22-25 Samsung Economic Research Institute (2011) ファストファッションから 学 ぶ 逆 発 想 の 知 恵 Vol.798 Angelica Jonsson (2007) Extreme Business-Models in the Clothing Industry p.36 Ding Huiru(2011) The Importance of Strategic Management p.4-7, 30-50 陶 山 計 介 梅 本 春 夫 (2000) 日 本 型 ブランド 優 位 戦 略 ダイヤモンド 社 p.41 NICE 信 用 評 価 (2014) E LAND グループ 評 価 報 告 書 p.4 大 谷 毅 (2012) ファストファッションの 製 造 工 程 と 東 南 アジア 縫 製 工 場 -カンボジア バ ングラデシュ インドネシアでのヒアリングを 基 に 繊 維 トレンド No.92 Kim Joo Hyun (2009) グローバル SPA ブランドの 韓 国 市 場 進 出 p.271 苗 苗 (2014) SPA の 理 論 的 研 究 に 関 する 一 考 察 p.14 145