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平成24年度税制改正要望 公募結果 153. 不動産取得税

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私立大学等研究設備整備費等補助金(私立大学等

定款  変更



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は 固 定 流 動 及 び 繰 延 に 区 分 することとし 減 価 償 却 を 行 うべき 固 定 の 取 得 又 は 改 良 に 充 てるための 補 助 金 等 の 交 付 を 受 けた 場 合 にお いては その 交 付 を 受 けた 金 額 に 相 当 する 額 を 長 期 前 受 金 とし

平成25年度 独立行政法人日本学生支援機構の役職員の報酬・給与等について

預 金 を 確 保 しつつ 資 金 調 達 手 段 も 確 保 する 収 益 性 を 示 す 指 標 として 営 業 利 益 率 を 採 用 し 営 業 利 益 率 の 目 安 となる 数 値 を 公 表 する 株 主 の 皆 様 への 還 元 については 持 続 的 な 成 長 による 配 当 可

Microsoft PowerPoint - 基金制度

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

ていることから それに 先 行 する 形 で 下 請 業 者 についても 対 策 を 講 じることとしまし た 本 県 としましては それまでの 間 に 未 加 入 の 建 設 業 者 に 加 入 していただきますよう 28 年 4 月 から 実 施 することとしました 問 6 公 共 工 事 の

平成22年度

入 札 参 加 者 は 入 札 の 執 行 完 了 に 至 るまではいつでも 入 札 を 辞 退 することができ これを 理 由 として 以 降 の 指 名 等 において 不 利 益 な 取 扱 いを 受 けることはない 12 入 札 保 証 金 免 除 13 契 約 保 証 金 免 除 14 入

弁護士報酬規定(抜粋)

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 役 名 法 人 の 長 理 事 理 事 ( 非 常 勤 ) 平 成 25 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 16,936 10,654 4,36

続 に 基 づく 一 般 競 争 ( 指 名 競 争 ) 参 加 資 格 の 再 認 定 を 受 けていること ) c) 会 社 更 生 法 に 基 づき 更 生 手 続 開 始 の 申 立 てがなされている 者 又 は 民 事 再 生 法 に 基 づき 再 生 手 続 開 始 の 申 立 てがなさ

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共 通 認 識 1 官 民 較 差 調 整 後 は 退 職 給 付 全 体 でみて 民 間 企 業 の 事 業 主 負 担 と 均 衡 する 水 準 で あれば 最 終 的 な 税 負 担 は 変 わらず 公 務 員 を 優 遇 するものとはならないものであ ること 2 民 間 の 実 態 を 考

質 問 票 ( 様 式 3) 質 問 番 号 62-1 質 問 内 容 鑑 定 評 価 依 頼 先 は 千 葉 県 などは 入 札 制 度 にしているが 神 奈 川 県 は 入 札 なのか?または 随 契 なのか?その 理 由 は? 地 価 調 査 業 務 は 単 にそれぞれの 地 点 の 鑑 定

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1 予 算 の 姿 ( 平 成 25 当 初 予 算 ) 長 野 県 財 政 の 状 況 H 現 在 長 野 県 の 予 算 を 歳 入 面 から 見 ると 自 主 財 源 の 根 幹 である 県 税 が 全 体 の5 分 の1 程 度 しかなく 地 方 交 付 税 や 国 庫 支

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セルフメディケーション推進のための一般用医薬品等に関する所得控除制度の創設(個別要望事項:HP掲載用)

( 別 紙 ) 以 下 法 とあるのは 改 正 法 第 5 条 の 規 定 による 改 正 後 の 健 康 保 険 法 を 指 す ( 施 行 期 日 は 平 成 28 年 4 月 1 日 ) 1. 標 準 報 酬 月 額 の 等 級 区 分 の 追 加 について 問 1 法 改 正 により 追 加

その 他 事 業 推 進 体 制 平 成 20 年 3 月 26 日 に 石 垣 島 国 営 土 地 改 良 事 業 推 進 協 議 会 を 設 立 し 事 業 を 推 進 ( 構 成 : 石 垣 市 石 垣 市 議 会 石 垣 島 土 地 改 良 区 石 垣 市 農 業 委 員 会 沖 縄 県 農


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m07 北見工業大学 様式①

Microsoft Word )40期決算公開用.doc

PowerPoint プレゼンテーション

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●幼児教育振興法案

為 が 行 われるおそれがある 場 合 に 都 道 府 県 公 安 委 員 会 がその 指 定 暴 力 団 等 を 特 定 抗 争 指 定 暴 力 団 等 として 指 定 し その 所 属 する 指 定 暴 力 団 員 が 警 戒 区 域 内 において 暴 力 団 の 事 務 所 を 新 たに 設

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公表表紙

損 益 計 算 書 自. 平 成 26 年 4 月 1 日 至. 平 成 27 年 3 月 31 日 科 目 内 訳 金 額 千 円 千 円 営 業 収 益 6,167,402 委 託 者 報 酬 4,328,295 運 用 受 託 報 酬 1,839,106 営 業 費 用 3,911,389 一

●電力自由化推進法案

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( 別 途 調 査 様 式 1) 減 損 損 失 を 認 識 するに 至 った 経 緯 等 1 列 2 列 3 列 4 列 5 列 6 列 7 列 8 列 9 列 10 列 11 列 12 列 13 列 14 列 15 列 16 列 17 列 18 列 19 列 20 列 21 列 22 列 固 定

- 1 - 総 控 負 傷 疾 病 療 養 産 産 女 性 責 帰 べ 由 試 ~ 8 契 約 契 約 完 了 ほ 契 約 超 締 結 専 門 的 知 識 技 術 験 専 門 的 知 識 高 大 臣 専 門 的 知 識 高 専 門 的 知 識 締 結 契 約 満 歳 締 結 契 約 契 約 係 始

【労働保険事務組合事務処理規約】

Microsoft Word - 通達(参考).doc

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小 売 電 気 の 登 録 数 の 推 移 昨 年 8 月 の 前 登 録 申 請 の 受 付 開 始 以 降 小 売 電 気 の 登 録 申 請 は 着 実 に 増 加 しており これまでに310 件 を 登 録 (6 月 30 日 時 点 ) 本 年 4 月 の 全 面 自 由 化 以 降 申

財政再計算結果_色変更.indd

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検 討 検 討 の 進 め 方 検 討 状 況 簡 易 収 支 の 世 帯 からサンプリング 世 帯 名 作 成 事 務 の 廃 止 4 5 必 要 な 世 帯 数 の 確 保 が 可 能 か 簡 易 収 支 を 実 施 している 民 間 事 業 者 との 連 絡 等 に 伴 う 事 務 の 複 雑

(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 き 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている

公 的 年 金 制 度 について 制 度 の 持 続 可 能 性 を 高 め 将 来 の 世 代 の 給 付 水 準 の 確 保 等 を 図 るため 持 続 可 能 な 社 会 保 障 制 度 の 確 立 を 図 るための 改 革 の 推 進 に 関 する 法 律 に 基 づく 社 会 経 済 情

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災害時の賃貸住宅居住者の居住の安定確保について

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はファクシミリ 装 置 を 用 いて 送 信 し 又 は 訪 問 する 方 法 により 当 該 債 務 を 弁 済 す ることを 要 求 し これに 対 し 債 務 者 等 から 直 接 要 求 しないよう 求 められたにもかか わらず 更 にこれらの 方 法 で 当 該 債 務 を 弁 済 するこ

代 議 員 会 決 議 内 容 についてお 知 らせします さる3 月 4 日 当 基 金 の 代 議 員 会 を 開 催 し 次 の 議 案 が 審 議 され 可 決 承 認 されました 第 1 号 議 案 : 財 政 再 計 算 について ( 概 要 ) 確 定 給 付 企 業 年 金 法 第

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中国会社法の改正が外商投資企業に与える影響(2)


定款

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b) 参 加 表 明 書 の 提 出 時 において 東 北 地 方 整 備 局 ( 港 湾 空 港 関 係 を 除 く) における 平 成 年 度 土 木 関 係 建 設 コンサルタント 業 務 に 係 る 一 般 競 争 ( 指 名 競 争 ) 参 加 資 格 の 認 定 を 受 けて

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Taro-契約条項(全部)

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第 8 条 本 協 議 会 における 研 修 は 以 下 のとおりとする (1) 座 学 研 修 農 業 講 座 や 先 進 農 家 視 察 など 農 業 経 営 基 礎 講 座 やその 他 担 い 手 のための 研 修 会 等 への 参 加 など 年 24 回 程 度 とする (2) 実 務 研

高松市緊急輸送道路沿道建築物耐震改修等事業補助金交付要綱(案)

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第4回税制調査会 総4-1

土 購 入 土 借 用 土 所 有 権 移 転 登 記 確 約 書 農 転 用 許 可 書 ( 写 ) 農 転 用 届 出 受 理 書 ( 写 ) 土 不 動 産 価 格 評 価 書 土 見 積 書 ( 写 ) 又 は 売 買 確 約 書 ( 写 ) 土 売 主 印 鑑 登 録 証 明 書 売 主

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(4) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 国 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている.

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別 紙 第 号 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 議 案 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 を 次 のように 定 める 平 成 26 年 2 月 日 提 出 高 知 県 知 事 尾

第316回取締役会議案

国 家 公 務 員 の 年 金 払 い 退 職 給 付 の 創 設 について 検 討 を 進 めるものとする 平 成 19 年 法 案 をベースに 一 元 化 の 具 体 的 内 容 について 検 討 する 関 係 省 庁 間 で 調 整 の 上 平 成 24 年 通 常 国 会 への 法 案 提

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経 常 収 支 差 引 額 等 の 状 況 平 成 26 年 度 予 算 早 期 集 計 平 成 25 年 度 予 算 対 前 年 度 比 較 経 常 収 支 差 引 額 3,689 億 円 4,597 億 円 908 億 円 減 少 赤 字 組 合 数 1,114 組 合 1,180 組 合 66

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損 益 計 算 書 ( 自 平 成 25 年 4 月 1 日 至 平 成 26 年 3 月 31 日 ) ( 単 位 : 百 万 円 ) 科 目 金 額 営 業 収 益 75,917 取 引 参 加 料 金 39,032 上 場 関 係 収 入 11,772 情 報 関 係 収 入 13,352 そ

平成16年年金制度改正 ~年金の昔・今・未来を考える~

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参 考 改 正 災 害 対 策 基 本 法 1 ( 災 害 時 における 車 両 の 移 動 等 ) 第 七 十 六 条 の 六 道 路 管 理 者 は その 管 理 する 道 路 の 存 する 都 道 府 県 又 はこれに 隣 接 し 若 しくは 近 接 する 都 道 府 県 の 地 域 に 係

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Transcription:

第 四 節 クロアチア 阿 部 笠 井 望 達 彦 2003 年 2 月 25-27 日 に 阿 部 及 び 笠 井 はクロアチアの 首 都 ザグレブにて クロアチ ア 経 済 省 (パヴィチチ 対 外 経 済 関 係 局 上 級 顧 問 ザニノヴィチ 対 外 経 済 関 係 局 次 長 ビシチャン エネルギー 鉱 山 課 上 級 顧 問 リュブンチチ 投 資 課 上 級 参 与 ) 経 済 会 議 所 (スチピチ 次 長 カラマルコヴィチ 外 国 部 長 ) 外 務 省 (ヴォラレヴィチ 書 記 官 ) 世 銀 事 務 所 (アヌシチ 上 級 経 済 専 門 家 ドラベク 分 析 家 ) EU 代 表 部 (リンブラド プロジェクト マネージャー プレシェ 貿 易 経 済 部 SAA 担 当 補 佐 ) 欧 州 ヤザキ 総 業 ザグレブ 事 務 所 (レスマン マネージャー イェラク 上 級 技 師 ) 日 本 大 使 館 ( 保 坂 参 事 官 )に 対 してインタビューするとともに 視 察 等 を 通 じてクロアチア 投 資 環 境 につ いての 調 査 を 行 った 本 節 は 上 記 インタビュー 及 び 収 集 した 資 料 を 既 存 の 資 料 に 入 れ 込 む 形 でまとめた もので 阿 部 が 原 案 を 書 き 笠 井 が 加 筆 した 1. 総 論 クロアチアは 過 去 セルビア 等 との 関 係 から 不 安 定 な 時 期 もあったが その 後 格 段 に 落 ち 着 き 2003 年 2 月 の 時 点 では 政 治 的 にも 社 会 的 にも 他 の 旧 ユーゴ 諸 国 と 比 べて 落 ち ついているという 感 じである 特 に 経 済 面 では 様 々な 分 野 での 自 由 化 も 進 んでいるし EU SAA も 早 期 に 締 結 したし すでに 加 盟 締 結 を 行 っていることに 鑑 みれば FDI 関 連 法 制 度 も 整 備 されているという 感 じである また 労 働 者 のレベルも 高 い むしろ 問 題 なの は 旧 ユーゴ 時 代 も 先 進 地 域 であったクロアチアにおいてすでに 労 働 コストが 相 当 に 高 い ということであろう 旧 ユーゴスラヴィアの 中 でも 最 西 端 のアドリア 海 に 面 しているクロアチアは 旧 ユーゴ の 中 で 経 済 的 に 高 発 達 の 地 であった また 他 のユーゴスラヴィア 諸 国 がかつてオスマン トルコに 支 配 されていた 中 で クロアチアはスロヴェニアとともにハプスブルグ 家 の 支 配 にあったので 今 でも 何 とはなくドイツ 人 的 な 気 質 を 感 じる ( 参 考 )クロアチアは 面 積 5.7 万 km 2 人 口 438 万 (01 年 ) クロアチア 人 78% セル - 61 -

ビア 人 12% 等 アドリア 海 に 面 し 地 中 海 性 気 候 の 西 部 海 岸 ( 風 光 明 媚 )と 内 陸 部 ( 大 陸 性 気 候 )の 東 部 に 分 かれる 歴 史 を 見 れば7 世 紀 にスラブ 人 がこの 人 に 定 住 した 後 10 世 紀 にクロアチア 王 国 が 建 国 され 16 世 紀 にハプスブルグ 家 の 支 配 下 に 入 る 1918 年 にセルビア 人 クロアチア 人 スロヴェニア 人 王 国 が 建 国 された 第 2 次 大 戦 初 期 にクロアチア は 独 立 したが 戦 後 ユーゴスラヴィア 共 和 国 の 一 つとなり 1991 年 に 再 度 独 立 し た 2. 政 治 的 安 定 性 と 民 主 主 義 制 度 の 定 着 クロアチアは 1990 年 より 故 トゥジマン 大 統 領 の 超 民 族 主 義 的 政 策 (もともとは 1987 年 以 降 のセルビアのミロシェヴィッチによる 民 族 主 義 に 触 発 されたもの)により 独 立 の 道 を 歩 みはじめ( 独 立 は 1991 年 6 月 ) その 過 程 でセルビアと 紛 争 をおこすこととなった 2000 年 初 頭 議 会 選 挙 が 行 われ それまでの 支 配 政 党 に 代 わり 新 たな 連 立 政 党 が 新 政 府 を 樹 立 した その 結 果 従 来 の 超 民 族 主 義 的 な 政 策 に 代 わり より 穏 健 な 政 策 が 採 られる ようになった そしてクロアチアは 南 東 欧 諸 国 の 復 興 支 援 の 一 つの 有 力 な 手 段 であり ま た EU 加 盟 の 重 要 なステップでもある EU の 安 定 化 連 合 協 定 (SAA) に 関 して 2000 年 の 秋 に 交 渉 を 開 始 し 翌 2001 年 10 月 に 協 定 を 締 結 するに 至 った さらにクロアチアは 早 期 の EU 加 盟 の 希 望 を 表 明 しており 2003 年 2 月 21 日 には EU に 対 して 正 式 な 加 盟 申 請 を 行 った 以 上 のような 最 近 の 展 開 の 背 後 にあるのは クロアチアが 新 政 府 になってから 一 段 と 国 際 社 会 とりわけ EU への 接 近 を 追 及 しだした 点 である 別 言 すると この 国 は 他 の 面 でのコストを 払 ってまでも 政 治 と 経 済 のシステムに 関 して 先 進 工 業 国 並 のシステムを 迅 速 に 導 入 しようとしているのである しかしながらこのような 政 府 の 熱 意 にもかかわら ず 一 般 国 民 は 政 府 を 必 ずしも 強 く 支 持 しているわけではない 実 際 2001 年 5 月 に 全 国 規 模 で 実 施 された 地 方 選 挙 の 投 票 率 は 低 く(45%) それは 国 民 が 政 府 に 失 望 したためとみな されている それゆえ 現 在 のクロアチア 政 府 の 困 難 は EU への 早 期 加 盟 という 政 府 の 基 本 目 標 を 固 持 しているにもかかわらず それが 必 ずしも 国 民 の 強 い 支 持 を 受 けているとは いえない 点 に 存 する これらを 念 頭 に 置 きつつ 現 在 のクロアチアの 政 治 面 での 問 題 点 を 整 理 しておこう ま ず 第 一 に 政 治 分 野 の 主 要 な 改 革 は 人 権 の 尊 重 ( 特 に 少 数 民 族 の 権 利 ) マスメディアの - 62 -

完 全 な 民 主 化 そして 戦 争 難 民 の 本 国 帰 還 プロセスの 迅 速 な 実 施 を 目 指 していることであ る その 他 地 方 自 治 の 強 化 を 目 的 とした 政 府 機 能 の 民 主 化 司 法 改 革 なども 重 要 な 課 題 である これらの 課 題 のうち いくつかは 他 の 移 行 諸 国 に 見 られないクロアチアに 固 有 の ものである その 一 例 として 難 民 の 本 国 送 還 の 問 題 をあげることができる 周 知 のよう に 1990 年 代 においてクロアチアはユーゴスラヴィアとの 関 係 で 戦 争 内 戦 を 経 験 した そ の 結 果 戦 争 遂 行 に 伴 うさまざまな 人 権 問 題 や 難 民 問 題 を 抱 えることになったが これら は 短 期 的 な 解 決 が 著 しく 困 難 な 問 題 である 新 政 府 の 下 で 事 態 は 一 定 の 改 善 を 見 せている しかしながら 政 府 の 努 力 にもかかわら ず 難 民 の 本 国 帰 還 および 領 土 や 敵 性 資 産 の 返 還 は 必 ずしも 十 分 に 進 展 しているわけで はない ただしそれ 以 外 の 分 野 では たとえば 人 権 問 題 選 挙 の 水 準 司 法 の 独 立 言 論 の 自 由 政 府 の NGO 活 動 への 介 入 の 可 能 性 の 減 少 ユーゴスラヴィア 国 際 戦 争 犯 罪 裁 判 所 (ICTY) への 協 力 といった 面 では 一 定 程 度 の あるいはかなりの 進 展 が 認 められる 実 際 EU ならびに 国 際 社 会 の 重 視 する ICTY への 協 力 に 関 しては クロアチアは 国 内 に おける 相 当 の 規 模 の 抵 抗 にもかかわらず 着 々と 協 力 の 実 績 を 積 み 重 ねてきている クロア チア 側 の 主 張 では 残 された 問 題 とされている 戦 犯 の 扱 いについては 問 題 となって いる2 人 のうちの 一 人 は 重 病 であり 他 の 一 人 は 行 方 不 明 とのことである 総 じていえば 現 在 のクロアチアの 政 治 的 リスクはここ2 3 年 かなり 低 下 しつつあり 改 善 傾 向 を 見 せてきているといえるであろう 3.マクロ 経 済 の 動 向 経 済 の 分 野 でも クロアチアは 持 続 可 能 な 成 長 に 向 けた 基 盤 作 りの 課 題 を 負 っている 具 体 的 には クロアチア 政 府 の 政 策 目 標 は 雇 用 の 増 大 と 生 活 水 準 の 向 上 それとともに マクロ 経 済 の 安 定 性 の 強 化 および 構 造 改 革 やその 他 の 改 革 の 推 進 である 政 府 の 財 政 政 策 目 標 は 2000 年 に 対 GDP 比 で 6.5%に 達 した 財 政 赤 字 を 2003 年 に 1.5% にまで 削 減 することである また 金 融 政 策 の 分 野 では 物 価 の 安 定 と 為 替 レートの 安 定 が 重 視 されている 次 に 最 近 のマクロ 経 済 のパフォーマンスを 整 理 してみよう 下 表 を 参 照 されたい こ の 表 は 最 も 基 本 的 な 指 標 のみを 扱 ったもので 以 下 ではマクロ 経 済 の 概 略 だけを 検 討 する - 63 -

( 表 )クロアチアのマクロ 経 済 の 動 向 指 標 単 位 1998 1999 2000 2001 2002 推 計 GDP 名 目 ; 百 万 ドル 21,628 19,906 18,427 19,536 23.130 GDP 成 長 率 % 2.5-0.4 3.7 3.8 3.5 一 人 当 たりGDP ドル 4,805 4,371 4,153 4,403 インフレ 率 小 売 物 価 ;% 5.7 4.2 6.2 4.9 2.3 政 府 財 政 収 支 対 GDP 比 ;% -1.0-6.5-7.1-5.8-4.6 経 常 収 支 対 GDP 比 ;% -7.1-7.0-2.3-3.3-3.5 外 国 直 接 投 資 百 万 ドル 835 1,445 1,086 1,325 970 民 営 化 率 対 GDP 比 ;% 55.0 60.0 60.0 60.0 失 業 率 登 録 失 業 率 ;% 17.2 19.1 22.6 23.1 24.0 ( 出 所 )クロアチア 政 府 およびEBRDの 資 料 から 阿 部 が 作 成 (1) GDP と 経 済 成 長 はじめに GDP であるが 実 質 GDP 成 長 率 は 98 年 に 減 速 し 99 年 にはマイナス 成 長 に 陥 ったが その 後 2000 年 に 入 り 3% 後 半 台 の 堅 調 な 成 長 を 遂 げている 2000 年 にお ける 景 気 回 復 の 要 因 としては 家 計 消 費 の 増 大 輸 出 の 拡 大 そして 観 光 セクターの 急 成 長 があげられる しかしながらクロアチア 通 貨 クーナの 減 価 の 影 響 により この 間 の GDP はドル 表 示 では 1998 年 から 2000 年 にかけて 減 少 している だが 2001 年 には クロア チア 通 貨 クーナの 減 価 にもかかわらずドル 表 示 の GDP は 増 大 しており その 結 果 2001 年 段 階 での 一 人 当 たり GDP は 4,403 ドルであり (PPP で 見 れば 8,300 ドルとなってい る) これは 南 東 欧 諸 国 の 中 では 著 しく 高 い 水 準 である これと 関 連 して クロアチアは 通 常 南 東 欧 のカテゴリーでくくられることが 多 いが 最 近 の EBRD のレポートでは クロア チアは 中 東 欧 のカテゴリーで 扱 われている (2) インフレ 93 年 まではハイパーインフレがおきた 物 価 の 動 向 は 1998 年 から 2001 年 までは4% 以 上 のかなり 高 い 水 準 で 推 移 したが 2002 年 以 降 2% 台 で 推 移 しており 物 価 の 鎮 静 化 傾 向 がうかがえる しかしこの 傾 向 が 持 続 的 な 否 かはまだ 判 断 することはできない とい うのは 2003 年 のクロアチア 政 府 のインフレ 率 予 測 は 1.5%であるが いくつかの 国 際 機 関 のインフレ 予 測 の 平 均 は 3.4%となっているからである ただし この 予 測 は 他 の 中 東 欧 諸 国 の 平 均 値 3.8%よりも 若 干 良 好 な 指 標 となっている (3) 国 際 収 支 国 際 収 支 のうちの 経 常 収 支 は 最 近 若 干 の 改 善 傾 向 を 見 せ 始 めている 1998 年 に 126.7 億 - 64 -

クーナであった 経 常 赤 字 ( 対 GDP 比 で-7.1%)が 2 年 後 の 2000 年 には 78.9 億 クーナ の 赤 字 ( 対 GDP 比 で-2.3%) へと 減 少 した ただし 2001 年 には 100.2 億 クーナへの 赤 字 ( 対 GDP 比 で-3.3%)と 若 干 拡 大 している クロアチアの 国 際 収 支 を 特 徴 付 けてい るのは 財 サービス 収 支 の 構 成 である すなわち この 間 基 本 的 には 輸 出 の 停 滞 と 輸 入 の 増 加 によってもたらされた 大 規 模 な 貿 易 収 支 ( 財 収 支 )の 赤 字 (2001 年 では 343.3 億 ク ーナの 赤 字 )をサービス 収 支 の 黒 字 (2001 年 では 243.0 億 クーナの 黒 字 )が 相 当 程 度 カバ ーしていることである その 結 果 財 サービス 収 支 は 2001 年 においては 100.2 億 クーナ の 赤 字 に 収 まっているのである このようなサービス 収 支 の 黒 字 に 大 きく 寄 与 しているの は クロアチアの 観 光 セクターである ここで 特 に 問 題 とすべきは クロアチアの 輸 出 が 停 滞 している 点 である その 理 由 とし て クロアチア 経 済 会 議 所 の 担 当 者 は 11990 年 代 に 企 業 の R&D 投 資 の 欠 如 のために 新 製 品 が 市 場 に 出 なくなったこと( 特 に 製 造 業 においては 造 船 業 が 世 界 ランク5 位 以 内 に 入 るという 伝 統 的 産 業 であったが 現 在 は 20 位 前 半 に 落 ちている) 2クロアチア 企 業 の 競 争 力 が 全 体 として 低 調 なこと(ちなみに 最 近 発 表 された World Economic Forum の ミクロ 経 済 競 争 力 指 標 によれば クロアチアは 2002 年 ランキングに 初 登 場 し 52 位 の 評 価 を 得 ている この 順 位 は 中 東 欧 およびバルト 海 諸 国 の 中 では 最 も 低 いが 南 東 欧 の 2カ 国 (ルーマニアとブルガリア(それぞれ 67 位 と 68 位 ))よりも 高 い 順 位 である( 南 東 欧 ではそれ 以 外 の 国 は 登 場 していない)) そして3 農 産 物 輸 入 の 急 増 による 農 産 物 輸 出 の 余 地 の 激 減 をあげている なおクロアチアでは この 競 争 力 の 問 題 を 検 討 するため ク ロアチアにおける 競 争 力 を 検 討 するためのフォーラム を 立 ち 上 げた 由 である クロアチアの 貿 易 相 手 国 を 見 ると 輸 出 輸 入 とも EU が 半 分 以 上 を 占 めており その 影 響 力 の 強 さを 示 している しかし 国 際 収 支 の 問 題 で 興 味 深 いひとつの 点 は クロアチア 政 府 関 係 者 が 指 摘 するよう に この 国 の 人 々は 貿 易 赤 字 をそれほど 深 刻 とは 考 えていない 点 である この 国 の 人 々は サービスセクターが GDP の 70%を 生 み 出 しており そして 観 光 セクターを 中 心 とするサ ービス 貿 易 が 多 大 な 黒 字 を 生 み 出 している 点 に 大 きな 自 信 を 抱 いているのである またクロアチアの 対 外 債 務 は 1996 年 の 53 億 ドルから 1998 年 の 96 億 ドルへと 急 増 した 後 その 後 増 加 の 趨 勢 は 鈍 化 し 2001 年 末 時 点 では 112 億 ドルとなっている しかしそれ と 同 時 に 外 貨 準 備 も 増 大 しており 1988 年 には 28 億 ドルであったものが 2002 年 末 には 58.9 億 ドルに 達 している - 65 -

(4) 外 国 直 接 投 資 外 国 直 接 投 資 (FDI)については 国 際 収 支 表 のネット インフローでみると 1998 年 以 降 は 1999 年 に 14.5 億 ドル 2001 年 に 13.3 億 ドルに 達 したものの 2002 年 には 推 定 で 10 億 ドルを 割 り 込 んでいる クロアチアの 累 積 の 外 国 直 接 投 資 のネット インフローは 絶 対 額 では 他 の 中 東 欧 諸 国 に 劣 るが それを 一 人 当 たりに 換 算 すると 1,315 ドルであり 中 東 欧 の 平 均 値 (1,401 ドル)と 比 べてそれほど 見 劣 りするわけではない さらに 2000 年 と 2001 年 に 関 しては 一 人 当 たりの 直 接 投 資 のインフローは 中 東 欧 の 平 均 値 を 上 回 るよ うになってきている このように 2000 年 以 降 のクロアチアの 直 接 投 資 の 実 績 は 必 ずしも 見 劣 りのするもので はないが この 国 が 自 国 の 投 資 環 境 の 良 さを 自 認 している 点 を 考 慮 すれば 2000 年 以 前 の 投 資 実 績 はこの 国 にとっては 決 して 満 足 のいくものではない その 理 由 としてクロアチア 経 済 省 の 担 当 者 は 11991 年 ~95 年 の 間 の 市 場 経 済 への 移 行 の 初 期 において 旧 ユーゴスラ ヴィア 内 での 戦 争 が 勃 発 したこと 2それゆえ FDI の 本 格 的 な 開 始 は 1995 年 以 降 と 他 の 中 欧 諸 国 と 比 べて 出 遅 れたこと を 指 摘 する またクロアチアにおける FDI の 特 徴 として は 1その 主 要 な 部 分 はクロアチアにおける 民 営 化 と 関 連 した 投 資 が 多 かったこと( 全 体 の 80%) 2これまでのところ グリーンフィールド インベストメント がほとんど 見 られず それは 2001 年 以 降 ようやく 始 まったに 過 ぎないこと が 指 摘 される これまでグ リーンフィールド 投 資 が 低 調 であった 理 由 として ザグレブ 駐 在 の EU の 担 当 者 は 土 地 および 資 産 の 所 有 権 が 複 雑 かつ 不 鮮 明 であり 土 地 や 資 産 の 所 有 ないしは 使 用 の 方 法 とコ ストとが 不 明 瞭 な 点 を 指 摘 している 社 会 主 義 時 代 の 土 地 の 登 録 簿 が 一 部 しか 残 存 してお らず そのため 土 地 改 革 に 際 して 以 前 の 持 ち 主 に 返 還 する 時 に 問 題 が 発 生 している 由 であ る その 関 連 で 外 国 人 によるクロアチアでの 土 地 所 有 が 認 められるかについて 2002 年 11 月 に 当 日 本 国 際 問 題 研 究 所 にて 開 催 されたセミナーの 席 上 クロアチア 代 表 は 他 国 で クロアチア 人 が 土 地 所 有 を 認 められているのであれば 当 該 国 人 はクロアチアにて 土 地 所 有 できる 旨 述 べていたが そのような 土 地 所 有 制 度 以 前 の 登 録 面 で 問 題 が 発 生 してい る 様 子 がうかがえる また 1995 年 までの 戦 争 インフラストラクチャーの 貧 困 さ そし て 法 による 統 治 の 欠 如 ( 不 足 )をその 理 由 としてあげている 世 界 銀 行 のザグレブ 駐 在 の 担 当 者 は それらに 加 えて クロアチアにおける 賃 金 水 準 の 高 さも 指 摘 する これらの 点 特 に 土 地 所 有 関 係 の 不 透 明 さは クロアチアにおける 投 資 環 境 の 中 でもも っともネガティブな 要 素 のひとつであり 今 後 の 迅 速 な 解 決 が 望 まれている - 66 -

また 2001 年 以 降 グリーンフィールド 投 資 が 始 まった 理 由 としては 2000 年 7 月 に 投 資 促 進 法 が 実 施 されるようになったことがそのひとつとしてあげられる またクロアチア 政 府 関 係 者 の 話 としては 2003 年 前 半 にも 投 資 促 進 新 法 が 可 決 される 見 込 みであり その 暁 には 一 層 のグリーンフィールド 投 資 の 加 速 化 が 期 待 できるとしている (5) 民 営 化 民 営 化 の 進 展 は 外 国 投 資 家 にとってひとつの 大 きな 機 会 であり また 外 国 投 資 を 引 き 付 けるための 契 機 でもある しかしながらクロアチアにおける 民 営 化 はこの 数 年 に 関 して はほとんど 進 展 していないと 判 断 しうる 実 際 に 対 GDP 比 で 見 た 民 営 化 率 は 1998 年 に 55%であったのが 1999 年 から 2001 年 までは 60%と 変 化 を 見 せていない ちなみに 1993 年 の 民 営 化 率 は GDP 比 で 30%であった このように 民 営 化 のテンポがゆっくりとしてい るのは 旧 ユーゴ 諸 国 の 社 会 有 との 独 特 のあいまいな 所 有 形 態 があったことと 同 国 における 民 営 化 は 主 に 民 営 化 企 業 の 従 業 員 への 売 却 という 形 で 行 われたことがあると 思 わ れる それでも 民 営 化 は 徐 々に 進 展 する 民 営 化 の 方 策 として 外 部 への 売 却 もはじまり 銀 行 の 民 営 化 は 大 きく 進 み 同 国 の 銀 行 資 本 の9 割 が 外 国 資 本 である 現 在 は 大 規 模 な 公 益 企 業 の 民 営 化 の 準 備 が 始 まっている その 手 始 めとして 電 力 会 社 (HEP)と 石 油 ガス 会 社 (INA)の 民 営 化 が 始 まる 予 定 である 2002 年 末 までに 上 記 の2 社 にパイプライン 会 社 (JANAF)を 加 えた3 社 の 民 営 化 に 関 する 法 律 が 採 択 される 予 定 であった この 他 に 2003 年 には2つの 主 要 な 国 有 銀 行 大 手 の 保 険 会 社 の 民 営 化 が 始 まり さらにクロアチ ア テレコムの 追 加 的 16%の 株 式 が 売 却 される 予 定 となっている 意 外 であったのは 同 国 の GDP のかなりの 部 分 を 占 める 観 光 業 特 にホテル 等 の 民 営 化 が 進 んでいないことである これは 旧 ユーゴスラヴィア 経 済 で 特 徴 的 であった 資 産 の 社 会 有 がクロアチア 建 国 後 の 民 営 化 の 過 程 でいったん 所 有 権 が 国 有 化 ( 具 体 的 には 民 営 化 基 金 へ 所 有 移 転 )されたものの ホテル 等 については 元 々 所 有 の 形 態 が 複 雑 であっ たために 民 営 化 しにくかったという 事 情 がある 由 である いずれにせよ 近 い 将 来 クロア チア 政 府 はこれらの 民 営 化 に 積 極 的 に 取 り 組 む 由 である (6) 雇 用 最 後 に 雇 用 動 向 を 見 てみよう 雇 用 については ここ 数 年 活 動 労 働 人 口 の 増 大 があげ られる 1999 年 に 168.6 万 人 であった 活 動 労 働 人 口 は 2001 年 には 172.9 万 人 に 増 大 した しかしながら 総 雇 用 者 数 は 1999 年 には 136.4 万 人 であったのが 翌 年 には 134.1 万 人 に 減 - 67 -

少 し 2001 年 には 若 干 増 えて 134.8 万 人 になったものの 依 然 として 1999 年 の 水 準 には 達 していない その 結 果 失 業 者 は 1999 年 以 降 2001 年 まで 5.8 万 人 増 大 した そして 登 録 失 業 率 は 1998 年 の 17.2%から 毎 年 徐 々に 増 えて 2002 年 には 24.0%と 推 定 されてい る しかしながら 世 界 銀 行 の 担 当 者 が 語 るところによると 2002 年 において 最 近 では 初 めて 雇 用 者 数 が 増 加 し 失 業 率 が 減 少 したという この 点 の 確 認 が 待 たれるところである ただし クロアチアの 失 業 率 については 若 干 の 注 意 が 必 要 である というのは 登 録 失 業 率 はクロアチアの 公 式 統 計 で 使 われるものであるが これは ILO の 定 義 とは 異 なる ILO の 定 義 による 失 業 率 では クロアチアのそれは 2001 年 で 約 15%といわれている この 意 味 で 公 式 失 業 率 統 計 は 実 態 をいくぶん 過 大 評 価 していると 思 われるが いずれにせよ 失 業 問 題 がクロアチアにおいて 重 大 な 社 会 経 済 問 題 であることはまちがいない このような 深 刻 な 失 業 問 題 を 受 けて クロアチアでは フレキシブルな 労 働 市 場 政 策 を 追 求 する 動 きが 始 まっている 政 府 は 世 界 銀 行 の 勧 告 を 受 けて 2003 年 3 月 に 新 労 働 法 を 採 択 する 予 定 である それによって 各 種 の 労 働 市 場 関 係 の 法 規 制 の 柔 軟 化 が 達 成 さ れ 雇 用 者 数 が 増 加 することが 期 待 されている マクロ 経 済 問 題 および 経 済 改 革 の 分 野 での 最 近 の 一 つの 重 大 な 出 来 事 は 2001 年 3 月 の IMF のスタンバイ 取 り 決 めの 承 認 である クロアチアは 必 ずしも IMF の 資 金 を 必 要 とし ているわけではないが この 取 り 決 めのもつ 国 際 社 会 に 対 するメッセージが 重 要 な 役 割 を 持 つのである 4. 対 外 経 済 関 係 外 国 投 資 の 環 境 の 観 点 から 一 国 の 対 外 経 済 関 係 のあり 方 は 非 常 に 重 要 な 意 味 を 持 つ その 国 が 小 国 で 自 国 のマーケットが 小 さいときには 特 にそうである すなわち その 国 が 多 国 間 および 二 国 間 の 関 係 で 他 のマーケットに 深 く 関 連 していればいるほど その 国 の 投 資 先 としての 魅 力 は 高 まることになる 最 初 に 多 国 間 関 係 から 見 てみよう (1) 多 国 間 経 済 関 係 多 国 間 経 済 関 係 ではじめに 考 慮 すべきは WTO のメンバーシップである クロアチア は 早 くも 2000 年 11 月 30 日 から WTO のメンバーとなっている クロアチアはもちろんい くつかの 重 大 な 懸 案 を 抱 えているが そのうちのひとつとして 農 産 物 の 輸 出 補 助 金 削 減 の 問 題 が 挙 げられている また 国 家 補 助 金 法 の 欠 如 もこの 国 の 欠 陥 として WTO から 指 摘 さ れている クロアチアの 国 家 予 算 から 明 示 的 に 判 明 する 国 家 補 助 金 の 額 は 対 GDP 比 で - 68 -

2%であるが 政 府 関 係 者 は 実 態 はそれよりももっと 多 いと 指 摘 する 次 にクロアチアの EU 加 盟 問 題 があげられる クロアチアは 当 初 から EU の 早 期 加 盟 に 非 常 に 熱 心 であったが EU 加 盟 の 第 1 段 階 とみなされる ロード マップ の 段 階 を 終 え 現 在 はその 第 2 段 階 たる 安 定 化 連 合 協 定 (SAA) の 最 終 段 階 を 迎 えている す なわち クロアチアは EU との SAA を 2000 年 10 月 に 調 印 し その 後 同 年 12 月 に 批 准 し たが EU 側 の 批 准 は 遅 れ( 個 々の 加 盟 国 の 批 准 が 必 要 ) 現 時 点 ではイギリスやオランダ などの 数 カ 国 が 批 准 を 留 保 している 由 である しかしながら SAA の 本 格 協 定 の 実 施 に 先 立 ち 暫 定 協 定 (EU との 貿 易 における 関 税 をゼロにするとの 内 容 )がはやばやと 実 施 さ れており その 意 味 でクロアチアの EU への 加 盟 準 備 は 着 々と 前 進 しつつあるといえよう だがこの 困 難 は 非 常 に 大 きなものであり 特 に SAA に 基 づきクロアチアは 国 内 法 令 を EU のそれに 準 ずるものにすることが 必 要 であるが これは 著 しく 膨 大 な 作 業 を 必 要 とする な お 先 述 の 通 り クロアチアは 2003 年 2 月 21 日 に EU への 正 式 加 盟 を 申 請 している そして 必 要 な 一 切 の 作 業 を 2006 年 末 までに 終 了 し 2007 年 における 第 2 次 の 加 盟 を 目 指 している EFTA との 間 の 自 由 貿 易 協 定 は 2001 年 6 月 に 調 印 され 2002 年 の8 月 1 日 のアイスラ ンドとの 協 定 実 施 を 最 後 として 全 4カ 国 との 協 定 が 実 施 済 みである 多 国 間 協 定 の 最 後 に CEFTA( 中 欧 自 由 貿 易 地 域 )への 加 盟 を 取 り 上 げよう CEFTA の 主 要 国 は 中 東 欧 諸 国 とりわけ 2004 年 の 第 一 陣 の EU 加 盟 を 目 指 す 中 欧 諸 国 であるが 南 東 欧 諸 国 の 中 ではルーマニアとブルガリアがこれまでのメンバーであった クロアチア は CEFTA に 関 しても 2003 年 3 月 1 日 に 正 式 加 盟 を 果 たした これでクロアチアは 南 東 欧 であるとともに 中 東 欧 としての 地 歩 をも 固 めたことになる (2) 二 国 間 経 済 関 係 EU および 国 際 社 会 が 南 東 欧 諸 国 に 期 待 するのは 多 国 間 協 定 もさることながら 隣 国 との 二 国 間 の 自 由 貿 易 協 定 (FTA) 締 結 である それによって 経 済 交 流 が 盛 んになるのみ ならず 当 該 地 域 の 政 治 的 安 定 度 も 増 すことになるからである 南 東 欧 の 自 由 貿 易 協 定 で ネットワークされた 地 域 は 南 東 欧 自 由 貿 易 地 域 と 呼 ばれている 近 隣 国 との 二 国 間 の FTA については これまで ボスニア ヘルツェゴヴィナ ブルガ リア ハンガリー マケドニア ポーランド ルーマニア スロバキア スロベニアの8 カ 国 との 間 で 締 結 を 終 了 している そして 現 在 交 渉 中 なのが アルバニア チェコ リト アニア トルコ ユーゴスラヴィアの5カ 国 であるが このうちチェコは クロアチアが CEFTA に 加 盟 したことにより いわば 自 動 的 に FTA を 締 結 したのと 同 じことになった - 69 -

この 他 にクロアチアは 対 隣 国 との 貿 易 や 投 資 といった 経 済 交 流 の 活 性 化 に 向 けて い くつかの 手 段 を 講 じてきている その 例 として クロアチアの 経 済 会 議 所 がこれまでボス ニア ヘルツェゴヴィナに3 箇 所 (サラエヴォ モスタル バニャルカ) モンテネグロに 1 箇 所 (コトル) セルビアに1 箇 所 (ベオグラード) 支 店 を 開 設 していることが 挙 げられ る その 目 的 は クロアチア 企 業 や 現 地 の 企 業 に 現 地 の 投 資 情 報 を 提 供 し クロアチアの 対 外 および 対 内 FDI を 増 大 させることである またクロアチアの 貿 易 相 手 国 を 見 ると 輸 出 輸 入 とも EU が 半 分 以 上 を 占 めているこ とはすでに 見 たが 旧 ユーゴスラヴィア 分 裂 以 前 と 比 べると 旧 ユーゴスラヴィア 構 成 国 との 貿 易 額 が 絶 対 額 でも 低 くなっていることが 指 摘 される その 理 由 とし クロアチア 経 済 会 議 所 の 担 当 者 は 1 旧 ユーゴスラヴィア 時 代 に 支 配 的 な 位 置 を 占 めていた 貿 易 会 社 や 製 造 企 業 がその 後 の 内 戦 で 倒 産 したか 分 裂 解 散 したことによって 従 来 存 在 していた 貿 易 関 係 ( 交 易 関 係 )が 断 絶 したこと 2ここ 10 年 間 以 上 R&D 投 資 の 欠 如 のため 魅 力 的 な 新 製 品 を 市 場 に 出 せなかったこと を 挙 げている このようにクロアチアの 対 外 経 済 関 係 の 展 開 を 見 てみると クロアチアはこの 間 特 に 2001 年 以 降 いくつかの 困 難 にもかかわらず 精 力 的 に 対 外 経 済 関 係 を 築 いてきたことがわかる 5. 外 国 投 資 の 法 的 制 度 的 環 境 投 資 環 境 の 一 環 としての 外 国 投 資 促 進 パッケージ を 整 理 しておこう このパッケー ジは 投 資 を 促 進 するための 関 連 法 令 や 各 種 制 度 から 構 成 される (1) 法 的 枠 組 み まずクロアチアにおける 外 国 投 資 は 会 社 法 の 規 定 を 受 ける それによると 外 国 投 資 家 は 国 同 士 の 互 恵 性 が 確 保 される 限 り 企 業 内 で 国 内 投 資 家 と 同 等 の 権 利 義 務 そして 法 的 地 位 を 有 することになる クロアチア 憲 法 によれば 資 本 投 資 によって 得 られた 権 利 は 法 律 などにより 権 利 が 取 りあげられることを 禁 止 している 外 国 法 人 に 認 められている 投 資 の 形 態 には 以 下 のものがある 1 2 3 4 5 契 約 に 基 づく 資 本 投 資 企 業 への 資 本 投 資 銀 行 ならびに 保 険 会 社 への 資 本 投 資 商 人 および 職 人 としての 起 業 クロアチアにおける 天 然 資 源 の 採 掘 権 の 獲 得 - 70 -

6 7 BOT(Build-Operate-Transfer) 取 引 への 参 加 BOOT(Build-Own-Operate-Transfer) 取 引 への 参 加 (2) インセンティブ 既 に 指 摘 しておいた 2000 年 7 月 の 投 資 促 進 法 は 国 内 外 の 法 人 や 個 人 の 投 資 のインセン ティブを 規 定 する その 目 的 はクロアチアの 経 済 発 展 と 成 長 とを 促 進 することである 投 資 促 進 とは インセンティブ 手 段 税 優 遇 措 置 関 税 優 遇 措 置 を 含 む このうちインセン ティブ 手 段 は3つのグループに 分 割 される 第 一 のグループは 建 設 権 のリースや 提 供 クロアチア 政 府 や 地 方 政 府 の 所 有 する 不 動 産 やインフラ 設 備 の 売 却 や 使 用 を 商 業 レートや 優 遇 レートで 認 めることを 含 む 第 二 のグループは 新 規 雇 用 の 創 出 に 対 し 付 与 される 援 助 である 投 資 額 の 規 模 と 雇 用 の 創 造 の 規 模 に 応 じて 新 規 雇 用 創 出 に 要 する 費 用 として 付 与 される 額 が 増 加 する 仕 組 みとなっている ちなみにこの 規 定 は 日 本 企 業 のザグレブ 事 務 所 にも 適 用 されたとのことである 第 三 のグループは 職 業 訓 練 に 対 し 付 与 される 援 助 である 投 資 家 がその 従 業 員 の 職 業 訓 練 に 投 資 を 行 う 場 合 当 該 コストの 最 大 50%までを 援 助 するものである 税 優 遇 措 置 に 関 しては 各 種 のインセンティブが 提 案 されている たとえば 国 内 の 特 別 保 護 地 域 に 本 拠 をおく 法 人 の 場 合 特 定 の 条 件 下 では 定 率 の 法 人 利 潤 税 を 受 けることがで きる 最 後 の 関 税 優 遇 措 置 に 関 しては 投 資 の 一 部 としての 機 材 の 輸 入 の 場 合 特 定 財 のケー スでは 免 税 措 置 が 受 けられる (3) 所 有 権 国 内 外 の 個 人 がクロアチア 国 内 で 会 社 を 設 立 しようとすれば その 会 社 は 国 内 法 人 とな る 外 国 人 も 不 動 産 に 対 し 抵 当 権 を 設 定 しうる 国 同 士 の 互 恵 性 が 確 保 されれば 外 国 法 人 や 外 国 人 もクロアチアの 不 動 産 を 自 由 に 入 手 しうる 不 動 産 の 所 有 権 は 所 有 権 法 による 規 制 を 受 け また 外 務 省 の 承 認 を 必 要 とする 以 上 の 規 定 は 理 論 上 標 準 的 なものであるが クロアチアの 国 内 外 の 関 係 者 が 等 しく 強 調 する 点 は そして 本 稿 でもすでに 指 摘 しておいた 点 は クロアチアにおいては(あるい は 旧 ユーゴスラヴィアのどこでも) 所 有 権 が 非 常 にあいまいであり 特 に 不 動 産 において それが 著 しいことである したがって 実 際 上 の 観 点 からこの 問 題 の 迅 速 な 解 決 を 目 指 さ ない 限 り クロアチアにおける 投 資 環 境 のひとつの 重 大 な 部 分 はいつまでたっても 改 善 さ れないであろう - 71 -

(4) 利 潤 と 資 本 の 本 国 送 金 外 国 為 替 制 度 外 国 為 替 取 引 金 取 引 法 が 外 国 への 利 潤 の 移 転 問 題 を 規 制 する この 法 律 によれば 利 潤 の 移 転 は 無 制 限 であり クロアチアにおける 全 ての 法 的 義 務 が 満 たされ ている 限 り 実 施 される (5) 外 貨 規 制 外 国 との 外 貨 取 引 は 前 出 の 外 国 為 替 制 度 外 国 為 替 取 引 金 取 引 法 により 規 制 される それによれば 外 貨 は 自 由 に 入 手 しうるものとされ また 外 貨 の 取 引 は 外 貨 市 場 を 通 して 実 施 されるべきであるとされる 6.その 他 の 投 資 環 境 (1) 譲 許 に 関 する 法 的 枠 組 み 1992 年 の 譲 許 法 は クロアチアの 自 然 資 源 およびその 他 の 資 源 を 特 典 をもって 使 用 する 権 利 およびクロアチアにとって 重 要 な 活 動 に 携 わる 権 利 の 獲 得 方 法 そしてこれらの 活 動 の 遂 行 に 必 要 な 設 備 の 建 設 と 運 営 を 規 制 する それによると 特 典 は 以 下 に 対 して 付 与 され る 1 2 3 4 クロアチア 共 和 国 の 自 然 資 源 の 使 用 クロアチア 共 和 国 にとって 重 要 な 他 の 資 源 の 使 用 クロアチア 共 和 国 にとって 重 要 な 活 動 に 携 わる 権 利 上 記 活 動 の 実 施 に 必 要 とされる 設 備 やプラントの 建 設 と 運 営 (2) 紛 争 処 理 メカニズム 2001 年 10 月 までは クロアチアの 国 家 調 停 法 令 は2つの 法 律 から 構 成 されていたが 2001 年 10 月 に クロアチア 国 会 は 新 しい 調 停 に 関 する 法 律 を 採 択 した クロアチアはまた 国 際 商 事 調 停 の 分 野 で 以 下 の 条 約 を 批 准 している 1 The Geneva Convention on Execution of Foreign Arbitral Awards (1927) 2 The New York Convention on Recognition and Enforcement of Foreign Arbitral Award (1958) 3 The European Convention on International Commercial Arbitration (1961) クロアチアにおける 主 要 な 調 停 機 関 はザグレブにあるクロアチア 経 済 会 議 所 の 常 設 仲 裁 裁 判 所 である - 72 -

(3) 労 働 市 場 と 労 働 規 制 労 働 市 場 と 労 働 規 制 のあり 方 も 一 国 の 投 資 環 境 として 重 要 である まず 労 働 市 場 であるが クロアチアの 労 働 力 は 一 般 に 教 育 訓 練 水 準 が 高 いと 考 えるこ とができよう この 国 の 研 究 教 育 の 中 心 であるザグレブ 大 学 は 中 東 欧 において 歴 史 的 に 高 い 評 価 を 受 けてきた しかしながら 近 年 の 雇 用 状 況 の 悪 化 が 労 働 供 給 に 対 し 一 定 の 無 視 できない 影 響 を 及 ぼしつつある まず 失 業 者 の 教 育 訓 練 水 準 別 構 成 について 公 式 統 計 の 平 均 値 で 見 ると 2001 年 の 登 録 失 業 率 は 2001 年 で 23%であるが 最 も 高 いのが 熟 練 高 度 熟 練 工 の 34.3% ついで 高 等 学 校 卒 の 24.3%である そして 最 も 低 いのが 短 大 卒 の 3.2% 大 卒 の 3.9%となっている ここでは 熟 練 工 と 低 学 歴 者 の 失 業 率 の 高 さが 顕 著 である 高 学 歴 者 はおおむね 失 業 率 は 低 くなっているが それは 高 学 歴 者 だ から 雇 用 機 会 が 多 い という 面 もあるかもしれないが 学 部 別 の 求 人 動 向 を 考 慮 して 予 め 雇 用 機 会 の 少 ない 学 部 へは 進 学 しない という 労 働 供 給 の 事 前 調 整 行 動 の 結 果 としての 側 面 も 存 在 する その 一 例 として ザグレブ 大 学 の 機 械 工 学 部 の 事 例 が 挙 げられる 1990 年 以 前 には 毎 年 300 人 前 後 あった 学 生 数 が 現 在 毎 年 40 人 前 後 に 激 減 している その 理 由 は クロアチアにおける 工 学 系 の 厳 しい 雇 用 状 況 を 考 慮 して 学 生 が 予 めこれらの 学 部 に 入 学 しないという 選 択 をしていることである それとは 逆 に 法 学 部 や 経 済 学 部 への 入 学 希 望 は 殺 到 していると 言 われている( 以 上 は 矢 崎 総 業 ザグレブ 事 務 所 の 担 当 者 のコメント) こうした 傾 向 は 重 大 な 含 意 を 持 つ というのは 現 在 どの 国 も 先 端 分 野 での 自 国 の 競 争 力 の 向 上 に 躍 起 となっているが その 人 的 な 担 い 手 は 理 工 系 の 大 学 卒 の 人 材 であるからで ある この 分 野 での 人 材 が 乏 しいとすると クロアチアの 将 来 の 発 展 および 外 国 資 本 の 誘 致 にとってマイナスの 要 因 となる 恐 れが 生 じる 可 能 性 が 存 在 するのである また 労 働 規 制 については すでに 言 及 しておいたように クロアチアにおいては 従 来 旧 ユーゴスラヴィア 時 代 の 社 会 主 義 システムの 影 響 もあり 労 働 市 場 および 労 働 規 制 はかな りな 程 度 硬 直 的 なものであった そこで 現 在 フレキシブルな 労 働 市 場 政 策 を 追 求 する 動 きが 始 まっている クロアチア 政 府 は 世 界 銀 行 の 勧 告 を 受 けて 2003 年 3 月 に 新 労 働 法 を 採 択 する 予 定 である それによって 各 種 の 労 働 市 場 関 係 の 法 規 制 の 柔 軟 化 が 達 成 される ことが 期 待 されている (4) その 他 の 問 題 点 投 資 環 境 を 評 価 する 際 のもう 一 つの 大 きな 要 素 は 各 種 の 法 制 度 を 監 督 する 政 府 官 僚 機 構 の 効 率 の 問 題 である この 政 府 の 効 率 性 の 観 点 から クロアチアは 大 きな 問 題 点 を 抱 え - 73 -

ている(より 正 確 にはこれは 南 東 欧 諸 国 に 共 通 する 問 題 点 であろう) 現 在 クロアチアにお いて 公 共 サービス 部 門 の 雇 用 者 数 は 全 雇 用 者 数 の9%(2001 年 )に 相 当 し またその 給 与 支 払 額 はクロアチアの GDP の 約 10%に 該 当 すると 言 われている( 世 界 銀 行 ザグレブ 駐 在 担 当 者 のコメント) このような 膨 大 な 官 僚 機 構 の 存 在 は 特 に 現 在 の 厳 しい 雇 用 環 境 を 考 慮 すると 官 僚 の 側 に 官 僚 機 構 簡 素 化 効 率 化 のインセンティブを 生 み 出 さないことに なる 世 界 銀 行 のスタッフからの 聞 き 取 りによれば 2002 年 の 調 査 で ある 省 の 役 人 のう ちの 約 20%は 自 分 の 会 社 を 所 有 していたとのことである その 最 大 の 理 由 は これらの 人 々が 自 己 のキャリアを 考 慮 すると 役 人 の 給 与 が 民 間 の 同 レベルの 人 の 給 与 と 比 べて 低 すぎるという 点 であるといわれる いずれにしてもこのような 非 効 率 的 な 官 僚 機 構 の 存 在 は 投 資 環 境 としては 大 きな 障 害 となるといえよう もちろんクロアチア 政 府 もこの 問 題 を 無 視 しているわけではない 実 際 FIAS(Foreign Investment Advisory Service)を 中 心 とする 国 際 社 会 の 圧 力 もあり クロアチア 政 府 はこの 問 題 に 取 り 組 む 目 的 で 2002 年 1 月 に 行 動 プログラムを 作 成 した しかし 2003 年 初 頭 現 在 このプログラムの 実 施 はさまざま 抵 抗 にあい 未 だに 実 施 されて いないといわれている 7. 社 会 経 済 インフラ 概 して 社 会 経 済 インフラは 良 好 のようである 地 方 都 市 の 建 物 等 に 今 なお 銃 痕 等 が 残 る ものの 道 路 等 の 修 理 は 完 了 している 模 様 である 元 来 旧 ユーゴ 諸 国 の 中 では 先 進 地 域 で あったクロアチアであるので 高 速 道 路 網 もはりめぐらされている ただし 鉄 道 は 内 戦 に より 十 分 な 活 動 ができず その 結 果 赤 字 であり 予 算 より 多 大 の 補 助 を 受 けている 従 っ て 民 営 化 に 先 だってまずは 人 員 カット 合 理 化 等 が 行 われる 予 定 となっている 8. 結 語 クロアチアは 旧 ユーゴスラヴィアの 時 代 から 中 東 欧 諸 国 の 中 では 高 い 経 済 発 展 を 誇 って いた しかし 1990 年 代 の 自 国 の 独 立 に 絡 む 戦 争 内 戦 を 戦 った 結 果 国 際 社 会 の 支 援 を 得 られず 相 対 的 に 体 制 転 換 および 市 場 経 済 への 移 行 が 遅 れてしまった しかし 2000 年 の 総 選 挙 でより 温 和 でリベラルな 政 府 が 誕 生 して 以 降 急 速 にビジネス 環 境 投 資 環 境 の 整 備 が 進 み EU 加 盟 への 重 大 なステップである 安 定 化 連 合 協 定 (SAA) の 調 印 も 済 み あと 少 しで EU 加 盟 国 全 部 の 批 准 も 完 了 する 段 階 に 来 ている その 結 果 - 74 -

この 国 のビジネス 環 境 は 南 東 欧 諸 国 の 水 準 というよりも 2004 年 にも EU 加 盟 を 認 められ る 中 東 欧 諸 国 の 水 準 に 近 づきつつある このようなポジティブな 展 開 にもかかわらず クロアチアはいくつかの 点 で 今 後 一 層 の 努 力 を 傾 注 する 必 要 がある それは 基 本 的 に2つあって 一 つは 旧 ユーゴスラヴィア 時 代 から 引 き 継 いでいる 負 の 遺 産 の 問 題 であり もう 一 つは 1990 年 代 の 独 立 戦 争 の 遺 産 の 問 題 である 前 者 の 旧 ユーゴスラヴィアからの 遺 産 の 中 で 特 に 重 大 なのは 所 有 権 をめぐる 問 題 であ る 旧 ユーゴスラヴィアでは 企 業 活 動 において 社 会 的 所 有 なる 概 念 が 支 配 的 であったが これは 実 際 上 は 所 有 権 の 所 在 を 曖 昧 にしていただけでなく 非 常 に 複 雑 なものにしていた それが 現 在 でも 解 決 されておらず 特 にこの 国 の 戦 略 セクターである 観 光 セクターにおい て 発 展 の 大 きな 足 かせとなっている 後 者 の 独 立 戦 争 の 後 遺 症 としては 人 権 問 題 や 民 主 主 義 の 未 成 熟 さに 関 してこの 国 の 持 つネガティブな 国 際 的 なイメージである こうしたことは 外 国 投 資 に 関 しては 一 般 に 悪 い 影 響 を 及 ぼす 傾 向 がある しかし 総 じていえば この 国 は 中 東 欧 グループ 入 りに 向 かってほぼ 確 実 にテイクオフし たと 思 われる - 75 -