一 般 社 団 法 人 電 子 情 報 通 信 学 会 THE INSTITUTE OF ELECTRONICS, INFORMATION AND COMMUNICATION ENGINEERS 信 学 技 報 IEICE Technical Report 即 興 劇 (インプロ)によるコミュニケーショントレーニングが 集 団 討 論 場 面 に 与 える 影 響 月 田 有 香 高 嶋 和 毅 伊 藤 雄 一 横 山 ひとみ 大 坊 郁 夫 北 村 喜 文 市 野 順 子 Numenia LLC 0-00 東 京 都 港 区 南 青 山 -- 東 北 大 学 電 気 通 信 研 究 所 9808 仙 台 市 青 葉 区 片 平 -- 東 京 農 工 大 学 大 学 院 工 学 研 究 院 8-888 東 京 都 小 金 井 市 中 町 -- 香 川 大 学 工 学 部 電 子 情 報 工 学 科 -09 香 川 県 高 松 市 林 町 -0 大 阪 大 学 大 学 院 情 報 科 学 研 究 科 -0 大 阪 府 吹 田 市 山 田 丘 - 東 京 未 来 大 学 0-00 東 京 都 足 立 区 千 住 曙 町 - E-mail: yuka@numenia.co.jp, {takashima, kitamura}@riec.tohoku.ac.jp あらまし コミュニケーションスキルトレーニングとして 脚 光 を 浴 びつつあるインプロが 集 団 討 論 の 場 面 に 与 える 効 果 を 検 証 する.インプロ 前 後 に,あるテーマにそった 集 団 討 論 の 場 を 設 け,それらを 主 観 評 価 や 行 動 データ によって 比 較 することでインプロの 効 果 を 議 論 した.その 結 果,インプロによって, 議 論 における 表 現 力, 解 読 力, 自 己 主 張 性,そして 集 団 満 足 度 が 向 上 し,かつ 葛 藤 が 減 少 することが 明 らかになった. 行 動 データからは,インプ ロ 実 施 後 は, 議 論 場 面 における 発 話 音 量 が 大 きくなり,かつジェスチャも 大 きくなるといった 行 動 の 変 化 も 見 られ た. 以 上 より,インプロが 集 団 討 論 場 面 に 多 くのポジティブな 影 響 を 及 ぼすことを 確 認 した. キーワード 非 言 語 情 報,コミュニケーション, 会 話 場 Effect of Improvisation Workshop on Group Discussion Yuka TSUKITA Kazuki TAKASHIMA Hitomi YOKOYAMA Junko ICHINO Yuichi ITOH Ikuo DAIBO Yoshifumi KITAMURA Numenia LLC, -- Minamiaoyam, Minato-ku, Shinjyuku, Tokyo 0-00 Research Institute of Electrical Communication, Tohoku University, -- Katahira, Aoba-ku, Sendai 980-8 Institute of Engineering, Tokyo University of Agriculture and Technology, --, Nakacho, Koganei, 8-888 Faculty of Engineering, Kagawa University, -0 Hayashicho, Takamatsu, Kagawa -09 Graduate School of Information Science and Technology, Osaka University, - Yamadaoka, Suita, -0 Tokyo Future University, - Senjuakebono-machi, Adachi-ku, Tokyo, 0-00 E-mail: yuka@numenia.co.jp, {takashima, kitamura}@riec.tohoku.ac.jp Abstract This work validated effects of improvisation workshop on group discussion by analyzing subjective ratings from participants and objective measurements of their non-verbal behaviors by sensors during the discussion tasks. We compared two group discussion tasks with 8-person which were held before and after the improvisation workshop. The subjective evaluation confirmed positive effects of the improvisation on the subsequent discussion in terms of participants encoding ability, decoding ability, assertiveness, satisfaction with group discussion, and intragroup conflict (task conflict). Also, an analysis of the non-verbal behaviors showed that volume of voices and hand gestures of participants increased after the workshop. Keyword Non-verbal information, interpersonal communication training. はじめに 他 者 とのコミュニケーションは, 豊 かな 社 会 生 活 を 営 む 上 で 不 可 欠 であり, 円 滑 なコミュニケーションの 実 現 に 向 けて, 多 種 多 様 なコミュニケーショントレー ニングが 取 り 入 れられている. その 中 で, 最 近 注 目 を 集 めつつあるものに,インプロヴィゼーション This article is a technical report without peer review, and its polished and/or extended version may be published elsewhere. Copyright 0 by IEICE
( improvisation; 以 降, インプロと 略 す)がある [][][][]. インプロとは 即 興 劇 であり, 打 ち 合 わせ や 台 本 が 存 在 しない. 既 成 概 念 にとらわれず, その 場 の 状 況 や 相 手 に 素 早 く 柔 軟 に 反 応 し, 様 々な 身 体 や 言 動 の 表 現 によって, 他 の 仲 間 と 活 発 なストーリーを 作 って 行 く.インプロは, 目 的 に 応 じて 様 々なプログラ ムから 構 成 され, 表 現 力, 自 己 主 張 性 や 理 解 力 といっ たコミュニケーション 能 力 を 高 めることや,さらには 集 団 におけるチーム 力 ( 例 えば 信 頼 関 係 等 )の 向 上 に も 寄 与 する.そのため, 演 劇 界 にとどまらず, コミュ ニケーションスキルが 求 められる 企 業 の 人 材 育 成 研 修 や 対 人 援 助 職, 教 育 場 面 で 積 極 的 に 実 践 されており, その 導 入 事 例 は 急 速 に 伸 びている. 一 方,インプロの 効 果 検 証 については, 観 察 による 参 加 者 の 変 化 の 質 的 な 検 討 []や 自 尊 感 情 の 研 究 [] 等 があるものの,そ の 効 果 性, すなわちインプロで 身 に つけることのできる 表 現 力 や, 参 加 者 の 行 動 が 実 際 に どのように 変 化 したかについては, 十 分 に 検 討 されて いない.これらを 明 らかにできれば, インプロの 理 論 的 展 開 に 加 え, インプロによる 効 果 的 なトレーニング 法 の 開 発 等 の 実 践 的 展 開 が 可 能 となる.さらにその 要 素 を 幅 広 いコンテンツ 制 作 に 利 用 することもできる. 我 々はこれまで,インプロの 基 本 的 なプログラムの 効 果 を, 各 種 センサを 用 いて 客 観 的 に 評 価 する 方 法 に ついて 検 討 しており,インプロ 内 での 参 加 者 の 表 現 力 の 向 上 を 両 手 を 使 ったジェスチャの 大 きさで 読 み 取 る ことができる 可 能 性 を 示 した[].しかし,インプロで は,ファシリテータが 参 加 者 に 多 種 多 様 な 身 体 的 表 現 を 促 す 場 面 を 多 く 含 んでいるため,インプロの 真 の 効 果 を 検 証 するためには,インプロ 後 の 参 加 者 の 行 動 の 変 化 を 見 る 必 要 がある. そこで 本 研 究 では,インプロの 前 後 にあるテーマに そった 集 団 討 論 の 場 を 設 け,それらにおける 主 観 評 価 や 非 言 語 的 な 行 動 を 計 測 し 比 較 することで,インプロ の 効 果 を 検 証 する. 討 論 の 場 面 は 通 常 の 会 話 とは 異 な り,より 表 現 力 や 自 己 主 張 性,さらにはグループの 団 結 も 求 められるものであり,インプロで 強 化 が 期 待 で きるスキルと 関 連 が 深 いために 設 定 した. 本 実 験 では, インプロ 前 後 の つの 討 論 場 およびインプロはそれぞ れ 男 女 混 合 の 8 名 グループが 参 加 し, 討 論,インプ ロ, 討 論 という 順 で 実 施 した.. 関 連 研 究.. インプロ インプロは, 即 興 劇 に 基 づくコミュニケーショント レーニングであり, 発 想 力, 表 現 力, 創 造 性,コミュ ニケーションの 活 性 化,そしてチームの 団 結 力 やメン バ 同 士 の 信 頼 関 係 の 向 上 を 図 ることができるとされて いる[].そのため, 多 くの 企 業 が 新 人 研 修 に 導 入 する など 近 年 急 速 に 社 会 に 浸 透 してきた.また, 若 年 層 の コミュニケーション 力 の 向 上 を 目 的 に, 多 くの 大 学 等 の 教 育 機 関 が,インプロを 用 いた 実 践 的 なワークショ ップや 授 業 を 導 入 し,その 効 果 の 議 論 も 進 んできてい る [][][]. インプロでは, 即 興 劇 を 応 用 した 多 様 なトレーニン グ プログラムがある. 例 えば, 参 加 者 が 円 形 になり, 見 えないボールを 投 げあうキャッチボールを 模 倣 した ワークなどがある.ここでは, 相 手 のニックネームを 呼 んで, 見 えないボールを 投 げ, 対 象 者 は 返 事 と 共 に 受 け 取 り,また 次 の 人 に 同 様 にボールを 投 げるという ことを 繰 り 返 す 単 純 かつ 簡 単 なワークではあるが,コ ミュニケーションにおける 受 発 信, 相 手 へのアイコン タクトや 配 慮 など, 人 間 がコミュニケーションを 取 る 上 で 基 本 となる 要 素 を, ワークを 通 して 体 感 できるこ とに 特 徴 がある. 他 の 代 表 的 なプログラムとして, Yes and がある.これは, 対 話 において,ある 台 詞 や 提 案 に 対 して 表 現 と 言 動 で 完 全 な 同 意 を 示 し,それに 新 た な 意 見 やアイデアを 付 け 加 えて 返 すものである. 単 に 段 取 りが 組 まれたやりとりを 繰 り 返 すのではなく,そ の 場 を 盛 り 上 げるべく, 即 興 で 様 々な 表 情 やジェスチ ャを 考 えたり,さらには 気 の 利 いた 返 しなどを 考 えた りする.この 過 程 が, 対 話 や 相 手 の 提 案 へ 理 解 や 受 容, 対 話 のキャッチボールを 楽 しくかつ 表 現 豊 かに 続 ける 意 識 を 強 化 することが 出 来 る. その 他,インプロは 人 間 関 係 力 育 成 にも 有 効 である という 報 告 もされている[].この 報 告 では, 構 成 的 グ ループエンカウンター(SGE)という 従 来 の 課 題 遂 行 を 通 した 他 者 との 関 係 性 の 向 上 を 図 る 方 法 と 比 べて, インプロはより 人 間 関 係 の 強 化 に 向 く 可 能 性 を 指 摘 し ている.SGE もインプロも 他 者 の 理 解 を 基 にしたトレ ーニングであるが,インプロのほうがより 身 体 的 な 表 現 が 多 いことが 特 徴 である.SGE とは 異 なり,インプ ロは 教 育 指 導 要 領 等 にも 記 載 されていない 新 しい 方 法 であるため, 教 育 現 場 への 展 開 に 向 けても,より 詳 細 な 検 証 が 望 まれている... 非 言 語 行 動 による 対 話 や 場 の 解 析 人 と 人 の 対 話 における 場 や 状 態 推 定 は, 古 くからの 重 要 な 研 究 テーマである. 特 に, 対 人 社 会 心 理 学 の 分 野 では, 対 話 の 場 の 構 造 や 力 動 についてはこれまでも 多 くの 研 究 がなされており, 非 言 語 行 動 に 着 目 した 場 の 状 態 推 定 や 社 会 スキルの 影 響 について 検 討 してきた []. 我 々も,これまで, 複 数 人 対 話 における 場 の 活 性 度 の 推 定 を 目 的 として, 頭 部 の 位 置 センサ,マイク, 手 首 に 装 着 する 加 速 度 センサなど, 複 数 のセンサから 取 得 できる 話 者 の 非 言 語 情 報 から 場 の 活 性 度 を 求 める
表. 討 論 テーマ 討 論 (インプロ 前 ) 討 論 (インプロ 後 ) グループ 友 人 安 定 した 生 活 グループ 社 会 貢 献 名 誉 グループ 勉 強 お 金 図. 実 験 に 用 いたセンサ 推 定 式 を 提 案 している[][].その 他, 話 者 の 非 言 語 情 報 を 抽 出 して 会 話 場 をモデル 化 しようとする 研 究 例 は 多 くあり[8], 各 種 非 言 語 情 報 を 正 確 に 計 測 する ための 識 別 アルゴリズムの 開 発 等 も 活 発 になされて いる[9] しかしながら,インプロ 等 のコミュニケーション トレーニングやワークショップ(または 授 業 )の 効 果 検 証 や,それに 関 連 する 対 話 場 面 は, 従 来 よりア ンケートベースによる 評 価 が 多 く, 様 々なセンサを 利 用 して 非 言 語 情 報 等 の 客 観 的 行 動 データも 用 いて 総 合 的 に 評 価 しようとした 例 は 見 られない.. 実 験 計 画.. 概 要 実 験 では, 参 加 者 同 士 の 自 己 紹 介 後, 与 えられたテ ーマにそって 討 論 し,その 後, ファシリテータによる インプロを 実 施 する.その 後,ファシリテータは 抜 け, 別 のテーマについて 討 論 する.これら 点 において 主 観 評 価 およびセンサによって 客 観 的 に 行 動 を 計 測 し, 主 にインプロ 前 後 の 討 論 場 面 における 差 を 見 ることで, インプロの 効 果 を 検 証 する... 環 境 実 験 参 加 者 ( 話 者,インプロ 受 講 者 )の 非 言 語 情 報 は, 先 行 研 究 []と 同 様 に, 図 に 示 すように, 頭 部 に 次 元 位 置 センサを, 両 手 首 には 加 速 度 センサ, 胸 元 には 無 線 マイクを 装 着 し,インプロや 討 論 場 面 中 の 頭 部 位 置 や 方 向,ジェスチャ, 発 話 情 報 を 取 得 した.す べての 計 測 データはリアルタイムで 取 得 し,サーバに 集 められるようにプログラムされている. 実 験 環 境 は, 討 論 場 面 では, 参 加 者 が 身 体 の 場 所 を 自 由 に 変 えられることと, 座 って 落 ち 着 いた 会 話 がで きるように, 図 に 示 すキャスター 付 きの 椅 子 を 用 い た.インプロ 場 面 では, 椅 子 をすべて 撤 去 し, 約 m m の 頭 部 センサのトラッキングエリアを 利 用 して インプロの 講 習 を 行 った. 表.インプロの 構 成 タイトル 内 容 時 間 ( 分 ) 身 体 と 心 をほぐ 説 明,ストレッチ,ゆる 8 す 体 操,8 カウント アイスブレイ - ゲーム,ミーティン 0 ク 自 己 解 法 ググリーティング コミュニケーシ 名 前 キャッチボール, 私 0 ョン あなた, 私 あなた( 移 動 有 り) コミュニケーシ 連 想 ゲーム, 共 通 点 探 ョンと 発 想 し,( すべてペア) Yes and イェスゲーム,ノーゲー ム,イエスアンド(すべ てペア) 振 り 返 り 輪 になって 一 人 ずつ.. 実 験 参 加 者 大 学 生 8 人 グループを 組, 計 名 であった( 総 計, 男 性 9 名, 女 性 名, 平 均 年 齢.8 歳 ). 組 と も,できるだけ 全 員 が 初 対 面 でかつ 年 齢 差 が 歳 以 上 離 れないようにし,かつ 男 女 混 合 のグループであった. インプロのプログラムは 人 ペアになる 場 面 や, 複 数 人 でモノをイメージして 身 体 で 表 現 したりするもの もあり, 通 常,0-0 人 規 模 での 実 践 が 効 果 的 である. 本 実 験 では,センサの 数 やトラッキングエリア 等 の 制 約 から,8 人 のグループを 対 象 とした... 手 続 き 実 験 参 加 者 は 入 室 後, 頭 部 センサ,マイク, 両 手 に 加 速 度 センサを 実 験 者 の 指 示 のもと 装 着 し, 椅 子 に 座 った.その 後, 同 意 書 にサインをし, 討 論 場 面 でのテ ーマを 決 めるための, 価 値 ランキングアンケートに 回 答 した.このアンケートは, 愛, 安 定 した 生 活, 勉 強, 社 会 貢 献, 友 人, 楽 しむこと, 自 己 表 現, 健 康, 衣 食 住 について, 興 味 の 強 度 を 段 階 で 回 答 するものであ った. この 後, 実 験 者 は,このアンケートを 回 収 し, 全 員 が 中 程 度 の 興 味 を 持 つテーマを つ 選 定 した. 実 際 に 選 定 したテーマを 表 に 示 す. 続 いて, 実 験 参 加 者 の 自 己 紹 介 の 間, 実 験 者 によっ て 各 種 センサの 動 作 確 認 がされた. 確 認 後, 実 験 参 加 者 は, 与 えられたテーマについて 分 間 討 論 し,その 後 アンケートに 回 答 した.それが 終 わると, 椅 子 を 撤 去 してスペースを 確 保 し, 多 数 の 企 業 や 教 育 機 関 でイ ンプロ 実 施 の 実 績 があるインプロファシリテータ( 第
一 著 者 )による 約 90 分 のインプロトレーニングを 受 けた.インプロ 終 了 後, 椅 子 を 戻 して,インプロに ついてのアンケートに 回 答 し, つ 目 のテーマにつ いて 分 間 討 論 した. 最 後 に,この 討 論 について のアンケートとインタビューをして 実 験 を 終 了 した. 実 験 は 謝 礼 等 の 事 務 手 続 きを 含 めて 約 00 分 で 終 了 した. インプロについては, 詳 細 は 省 くが, 表 に 示 す ように, 自 己 紹 介, 名 前 キャッチボール,イエスゲ ーム,ノーゲーム といったものであり, 相 手 との 対 話 において, 大 きな 身 体 的 動 作 や 瞬 時 の 対 応 を 求 め るようなものであり,インプロファシリテータの 統 制 のもと, 実 験 参 加 者 は 他 の 人 とのインタラクシ ョンを 進 めていく. 図. 討 論 場 面. 実 験 結 果 本 節 では, 簡 単 に 実 験 の 観 察 結 果 を 述 べ,アンケ ートによる 主 観 評 価 と 行 動 データの 解 析 結 果 を 示 す. 行 動 データについては, 本 稿 では, 設 定 したタスク である 討 論 場 面 に 最 も 関 連 が 深 い 発 話 の 情 報 と, 先 行 研 究 で 議 論 []したジェスチャ( 腕 の 動 き)について 解 析 した 結 果 を 報 告 する... 観 察 討 論 場 面 では, 図 に 示 すように 8 人 が 輪 になり, 適 度 な 距 離 を 保 った 状 態 で 討 論 をしていた. グルー プの 観 察 の 結 果,8 人 の 中 にサブグループが 出 来 るよ うなことはなかった. グループとも, 先 導 するメン バが 人 から 人 程 いたため, 全 員 の 発 話 のバランス は 全 員 で 均 等 ではなかったが, 分 間 の 間 に 会 話 に 参 加 しなかった 例 や 極 端 な 沈 黙 な どは 見 られなかった. インプロ 場 面 では, 今 回 の 計 測 対 象 ではないが, 図 に 示 すように, 身 体 的 な 表 現 を 伴 った 他 のメンバと のインタラクションを 多 く 実 施 していた... 主 観 評 価 インプロの 実 践 により, 月 田 []の 結 果 と 同 様 に 参 加 者 の 表 出 性 やコミュニケーション 能 力 が 向 上 すると 考 えられる. それにより, 円 滑 なコミュニケーションが 営 まれることで, 高 尾 []が 指 摘 するように,コミュニ ケーションが 活 性 化 し, チームの 団 結 力 やメンバ 同 士 の 信 頼 関 係 の 向 上 が 期 待 できる. 最 終 的 には, 対 人 関 係 性 の 向 上 []が 期 待 できる. そこで, 本 研 究 では, 多 様 なインプロの 効 果 を 以 下 に 示 す 指 標 で 評 価 した. 以 下 は,すべて Group( 組 ) と Process ( 討 論, インプロ, 討 論 )の 要 因 分 散 分 析 と TukeyHSD による 多 重 比 較 の 結 果 のまとめである 図. インプロ 講 習 場 面... ラポール ラポール 測 定 項 目 [0]を 改 訂 したもの 項 目 8 件 法 を 用 いた. 項 目 は, 協 力 的 に 会 話 が 進 んだ, 会 話 は しにくいものだった, 相 互 に 興 味 を 持 って 会 話 がで きた, 等 である. 解 析 の 結 果, 図 に 示 すように, 討 論 と 討 論 お よび, 討 論 とインプロ 間 に 有 意 な 差 が 見 られた(p <.00).... ENDCOREs コミュニケーションスキルを 測 定 する 尺 度, 自 己 統 制 表 現 力 解 読 力 自 己 主 張 他 者 受 容 関 係 調 整 の 因 子 のうち, 本 研 究 では 表 現 力 解 読 力 自 己 主 張 を 使 用 した. 各 因 子 は 項 目 件 法 で ある[]. 解 析 の 結 果, 図 に 示 すように, 表 現 力 について, 討 論 では, 討 論 より ポイント 程 有 意 に 高 い 評 定 値 が 得 られた (p <.00).また, 討 論 に 比 べてインプ ロ 中 の 評 価 は 著 しく 高 くなっていた(p <.00). 解 読 力 については, 図 に 示 すように, 討 論 は 討 論 より 有 意 に 高 い 評 定 値 であった(p <.00). 自 己 主 張 性 についても 同 様 に, 討 論 と 討 論 の 間 に 有 意 差 が 認 められた(p <.0)( 図 ).... 集 団 の 満 足 度 話 し 合 いに 対 する 満 足 度 ( 集 団 への 満 足 度 )を 項 目, 件 法 で 取 得 した[].ここは,インプロ 後 には 取 得 していなかったアンケート 項 目 であるため, 討 論 と の みの 比 較 である. ANOVA の 結 果, 図 8 に 示 すように, 両 者 に 有 意 差
ラポート 8 ENDCOREs 表 現 力 ENDCOREs 解 読 力 討 論 インプロ 討 論 討 論 インプロ 討 論 討 論 インプロ 討 論 図 ラポール 図 表 現 力 図 解 読 力 ENDCOREs 自 己 主 張 性 集 団 の 満 足 度 集 団 葛 藤 ( 課 題 ) 討 論 インプロ 討 論 討 論 討 論 討 論 討 論 図 自 己 主 張 性 図 8 集 団 の 満 足 度 図 9 集 団 の 葛 藤 が 認 められた(p <.00).Group 間 にも 主 効 果 があり, 組 中 組 において, 満 足 度 は 変 化 無 しであった.... 葛 藤 尺 度 関 係 葛 藤 とは, 対 人 関 係 における 価 値 観 やパーソナ リティの 不 一 致 であり, 課 題 葛 藤 は 意 見 やアイデアの 相 違 である.これらを 項 目 ずつ 計 8 項 目 件 法 [] で 取 得 した. 課 題 葛 藤 については, 図 9 に 示 すように, 討 論 と 討 論 の 間 に 有 意 差 が 認 められ, 葛 藤 は 有 意 に 減 少 し ていた. 関 係 葛 藤 について 差 は 見 られなかった... 非 言 語 行 動... 発 話 発 話 音 量, 発 話 時 間 ( 量 )ともに, 組 のデータか らは,グループ 間 や 個 人 の 差 が 大 きくでており, 両 討 論 場 面 に 主 効 果 は 見 られなかった.しかしながら,イ ンプロ 前 後 を 比 較 すると, 発 話 における 音 量 は,イン プロ 後 の 方 が, 前 のものに 比 べて, 平 均 で 0% 程 度 大 きくなる 傾 向 は 確 認 できた.これは, 心 理 指 標 の 結 果 を 支 持 する 結 果 である. 討 論 の テーマは, 実 験 者 側 が アンケートを 経 て 指 定 したものであったが,インプロ を 実 施 したことにより, 中 程 度 の 興 味 のテーマについ ての 討 論 であっても 発 言 の 積 極 性 が 増 したと 考 えられ る.... ジェスチャ ジェスチャは X, Y, Z 軸 の 加 速 度 の 大 きさを 指 標 と し, 腕 の 揺 れなどを 除 くため, 閾 値 以 上 の 大 きさを 持 つ 動 きのみを 取 り 出 した. 主 観 評 価 と 同 様 の ANOVA を 実 施 した 結 果, 図 0 に 示 すように, 討 論 より 討 論 でのジェスチャの 大 きさ 有 意 に 増 加 したことがわか った(p <.0).これも, 主 観 評 価 を 強 化 する 結 果 であり, インプロ 後 は,より 身 体 的 に 豊 かな 表 現 をもって 議 論 に 臨 んでいたことが 分 かる.ただし,グループにも 主 効 果 があり,グループ は,グループ と より 全 体 的 に 身 体 表 現 は 小 さかった.. 議 論 アンケートの 結 果 と 非 言 語 情 報 の 解 析 結 果 から,イ ンプロによって, 表 現 力, 解 読 力, 自 己 主 張 性 (やや 弱 め),そして 集 団 満 足 度 が 向 上 し,かつ 葛 藤 が 減 少 す ることが 明 らかになった. 行 動 データからは, 依 然 と して 解 析 が 必 要 であるものの,インプロ 後 は, 発 話 音 量 が 大 きくなり,かつジェスチャを 多 用 する 傾 向 が 確 認 できた. 観 察 結 果 から,インプロでの 比 較 的 大 きな 身 体 動 作 や 発 声 の 効 果 が 保 たれたと 考 えられる. 表 現 力 の 向 上 も 見 られ,インプロが 非 常 に 有 望 であ ることが 分 かったが,これについては, 継 続 の 効 果 を 検 証 することも 重 要 である.また,インプロによって 集 団 満 足 度 の 向 上 が 顕 著 であったことが 興 味 深 く,イ ンプロによって 即 時 的 によいチーム 作 りができる 可 能 性 を 明 確 に 示 している.これについても 継 続 的 な 評 価 は 当 然 必 要 であるが,90 分 程 度 のワークショップで 大 きくメンバへの 信 頼 度 や 満 足 度 が 変 わることは 大 きな
加 速 度 の 大 きさ m/s 0. 0. 0. 0. 0 討 論 討 論 図 0.ジェスチャの 大 きさ 意 味 を 持 つ. 今 後 はさらにデータの 解 析 を 進 めてゆ きたい. 例 え ば, 発 話 に 関 しては,より 集 団 特 有 の 詳 細 な 特 徴 に 踏 み 込 むために,Gini 係 数 といった 発 話 の 偏 りや 分 散, さらにはクロストークやターンテイキング 等 について 調 べる 必 要 がある. ジェスチャの 大 きさについては つの 討 論 場 面 で 明 確 な 差 がでたと 述 べたが,ジェスチ ャの 回 数 についても 約 0% 程 度 の 増 加 が 観 察 された. これらをより 詳 細 に 観 測 し, 主 観 評 価 ENDCOREs 表 現 力 等 との 関 連 を 調 査 していくことも 必 要 である. 頭 部 データについては, 今 回 は 対 象 外 としたが, 相 手 への 理 解 やアイコンタクト 等 について 言 及 するためには, 相 槌 などの 頭 部 データの 詳 細 な 解 析 も 必 要 である. 現 状, 頭 部 センサの 精 度 は 相 槌 や 視 線 の 向 きを 認 識 でき るレベルであるが, 身 体 の 揺 れとの 判 別 が 難 しく, 録 画 したビデオとの 突 き 合 わせなどをしたうえで, 議 論 する 予 定 である.さらに, 本 実 験 では, 議 論,イン プロ, 議 論 と 順 番 を 固 定 したため, 順 序 効 果 がやや 表 れている 可 能 性 もある. 即 席 によいチーム 作 りをす る 場 面 を 考 えると,この 実 験 順 序 は 有 意 義 であるが, 純 粋 にインプロの 効 果 を 見 るためには, 討 論, 休 憩, 討 論 (インプロなし)の 統 制 群 のデータを 集 めて 本 実 験 結 果 と 比 較 する 必 要 がある.. まとめ 本 研 究 では,インプロが 集 団 議 論 の 場 面 に 与 える 影 響 について 実 験 的 に 調 査 した.インプロ 前 後 に 集 団 議 論 の 場 を 設 け,その 両 場 面 を 主 観 評 価 および 非 言 語 情 報 の 計 測 をもって 比 較 することで,インプロの 効 果 を 検 証 した. つの 討 論 場 面 およびインプロはすべて 男 女 混 合 の 8 名 グループであった.その 結 果,インプロ 前 の 討 論 に 比 べて,インプロ 後 は, 表 現 性, 自 己 主 張 性, 集 団 の 満 足 度 などが 大 きく 向 上 することがわかっ た.また 非 言 語 情 報 の 計 測 からは, 発 話 の 音 量 が 大 き くなる 傾 向 や,ジェスチャが 大 きくなり,より 身 体 的 に 表 情 豊 かな 表 現 をしている 傾 向 が 確 認 できた. 今 後 は, より 細 かな 非 言 語 の 解 析 と 主 観 評 価 データとの 関 連 性 の 調 査 や 統 制 群 との 比 較 を 予 定 している. 謝 辞 本 研 究 の 一 部 は, 東 北 大 学 電 気 通 信 研 究 所 における 共 同 プロジェクト 研 究 による. 文 献 [] 高 尾 隆 : 大 学 生 のコミュニケーションとイン プロ 授 業 の 可 能 性, 教 育,-0, 00 年 月 号 [] 石 原 みちる: インプロ ワークショップが 大 学 生 の 自 尊 感 情 に 及 ぼす 影 響, 山 陽 論 叢, vol. 8, pp. -, 0. [] 月 田 有 香, 坂 本 登, 横 山 ひとみ, 高 嶋 和 毅, 北 村 喜 文 : コミュニケーション トレーニン グにおける 表 出 性 に 関 する 検 討, 情 報 処 理 学 会 全 国 大 会 論 文 集, pp. :0-:, 0. [] 正 保 春 彦 : グループワークの 心 理 的 効 果 につ いての 一 考 察 : 構 成 的 グループ エンカウンター とインプロヴィゼーションの 比 較 から, 茨 城 大 学 教 育 実 践 研 究 (), 9-9, 00. [] 大 坊 郁 夫 :しぐさのコミュニケーションー 人 は 親 しみをどう 伝 えあうかー, サイエンス 社 998 [] 高 嶋 和 毅, 藤 田 和 之, 横 山 ひとみ, 伊 藤 雄 一, 北 村 喜 文,: 人 会 話 における 非 言 語 情 報 と 場 の 活 性 度 に 関 する 検 討, 信 学 技 報, HCS0-, pp. 9-, 0. [] 前 田 貴 司, 梶 村 康 祐, 高 嶋 和 毅, 山 口 徳 郎, 北 村 喜 文, 岸 野 文 郎, 前 田 奈 穂, 大 坊 郁 夫, 林 : 人 会 話 における 非 言 語 情 報 と 場 の 活 性 度 に 関 する 検 討, 信 学 技 報, HCS009-8, pp. -8, 00. [8] J. Ichino: Discriminating Divergent/convergent phases of meeting using non-verbal speech patterns, ECSCW, pp.-, 0. [9] S. Okada, M. Bono, K. Takanashi, Y. Sumi, and K. Nitta: Context-based conversational hand gesture classification in narrative interaction, ICMI, 0-0, 0. [0] 木 村 昌 紀, 余 語 真 夫, 大 坊 郁 夫 : 感 情 エピソ ードの 会 話 場 面 における 表 出 性 ハロー 効 果 の 検 討, 感 情 心 理 学 研 究,, -, 00 [] 藤 本 学, 大 坊 郁 夫 : コ ミュニケーション ス キルに 関 する 諸 因 子 の 階 層 構 造 への 統 合 の 試 み, パーソナリティ 研 究,, -, 00. [] 飛 田 操 : 小 集 団 問 題 解 決 場 面 における 貢 献 度 と 満 足 度, 福 島 大 学 教 育 実 践 研 究 紀 要,, -, 99. [] 村 山 綾, 大 坊 郁 夫 : 課 題 解 決 集 団 内 における 種 類 の 葛 藤 -メンバーの 影 響 力 の 差 と 時 間 制 限 が 集 団 内 葛 藤 知 覚 に 及 ぼす 影 響, 信 学 技 報, 0(08), -, 00.