厚 生 労 働 科 学 研 究 費 補 助 金 ( 医 療 安 全 医 療 技 術 評 価 総 合 研 究 事 業 ) 平 成 17 年 度 ~19 年 度 総 合 研 究 報 告 書 新 医 師 臨 床 研 修 制 度 の 評 価 に 関 する 調 査 研 究 主 任 研 究 者 : 福 井 次 矢 聖 路 加 国 際 病 院 院 長 研 究 要 旨 平 成 16 年 4 月 から 導 入 された 新 医 師 臨 床 研 修 制 度 のもたらした 影 響 を3 年 間 にわたって 評 価 し 以 下 のような 結 果 が 得 られた 1. 基 本 的 臨 床 能 力 (99 項 目 )の 修 得 状 況 と 症 例 経 験 数 (82 症 状 病 態 疾 患 ) 医 療 記 録 記 載 件 数 (4 種 類 )について 新 制 度 1 期 生 である 平 成 18 年 3 月 時 点 での 2 年 次 研 修 医 と 旧 制 度 下 の 平 成 15 年 3 月 時 点 での 2 年 次 研 修 医 を 比 較 した 1 自 己 評 価 による 基 本 的 臨 床 能 力 は 新 制 度 下 の 研 修 医 で 多 くの 項 目 で 著 しく 向 上 した 2そして 旧 制 度 下 で 認 められていたような 大 学 病 院 の 研 修 医 と 研 修 病 院 の 研 修 医 との 基 本 的 臨 床 能 力 の 差 はほとんど 認 められなくなった 3 症 例 経 験 数 (82 症 状 病 態 疾 患 )および 医 療 記 録 記 載 件 数 (4 種 類 )は 新 制 度 下 の 研 修 医 で 著 しく 増 えた 2. 基 本 的 臨 床 能 力 の 修 得 状 況 と 症 例 経 験 数 医 療 記 録 記 載 件 数 の 3 年 間 の 推 移 を 解 析 し た ほとんどすべての 項 目 について 有 意 の 増 減 は 認 められなかった 3. 平 成 19 年 3 月 の 調 査 では 臨 床 研 修 中 に 行 われる 学 術 活 動 の 実 態 について 調 べた 60.2% の 研 修 医 ( 大 学 病 院 の 研 修 医 53.4% 臨 床 研 修 病 院 の 研 修 医 66.6%)が 何 らかの 学 術 活 動 を 行 っていて 最 も 多 かったのが 症 例 報 告 (46.1%) 以 下 学 会 発 表 (18.8%) 論 文 報 告 (7.5%) 研 究 仮 説 を 検 証 するタイプの 臨 床 研 究 (3.8%)であった 大 学 病 院 の 研 修 医 に 比 べて 研 修 病 院 の 研 修 医 のほうが 学 術 活 動 に 熱 心 であった 4. 平 成 20 年 3 月 の 調 査 では Personal Digital Assistance(PDA)の 利 用 状 況 について 調 べた 欧 米 の 研 修 医 や 指 導 医 の 80%~90%が PDA を 利 用 しているが わが 国 の 医 師 での 利 用 状 況 が 低 いように 思 われたため 調 査 項 目 に 加 えられ やはり 現 在 PDA を 用 いてい る 研 修 医 はわずか 30.7%にとどまった これまでに PDA を 使 ったことのある 研 修 医 は 86.4% いたことから なぜ 使 用 する 研 修 医 が 少 なくなってゆくのか PDA 利 用 が 医 療 の 質 に 与 え る 影 響 の 評 価 とともに さらなる 調 査 研 究 が 必 要 である 5. 研 修 体 制 研 修 プログラム 処 遇 に 対 する 満 足 度 の 3 年 間 の 推 移 を 解 析 した 研 修 体 制 研 修 プログラムに 対 して 満 足 している 研 修 医 の 割 合 は 年 々 増 加 してきている( 研 修 体 制 については 53.3% 55.4% 60.7% 研 修 プログラムについては 47.7% 55.7% 62.1%) 大 学 病 院 の 研 修 医 に 比 べて 研 修 病 院 の 研 修 医 の 満 足 度 が 高 いが その 差 はやや 縮 まって きた( 研 修 体 制 :26.4 ポイント 17.8 ポイント 研 修 プログラム:19.2 ポイント 18.8 ポ イント) 6. 研 修 後 の 選 択 科 の 3 年 間 の 推 移 を 見 ると 増 加 傾 向 の 科 は 小 児 科 脳 神 経 外 科 病 理 外 科 であった 減 少 傾 向 の 科 は 内 科 整 形 外 科 耳 鼻 咽 喉 科 泌 尿 器 科 救 急 救 命 科 であった 7. 研 修 修 了 後 の 研 修 医 の 動 向 を 都 道 府 県 別 に 見 ると( 平 成 19 年 のデータ) 研 修 後 の 勤 務 地 として 研 修 修 了 後 に 研 修 先 と 同 じ 都 道 府 県 に 残 る 割 合 は 平 均 で 75.3%と 非 常 に 高 かった また 大 学 病 院 で 研 修 を 受 けた 研 修 医 (81.4%)の 方 が 臨 床 研 修 病 院 の 研 修 を 受 けた 研 修 医 (70.9%)よりも 統 計 学 的 に 同 じ 都 道 府 県 に 残 る 割 合 が 高 かった(p<0.01) 1
A. 目 的 平 成 16 年 度 から 開 始 された 新 医 師 臨 床 研 修 制 度 の 第 一 義 的 目 的 である 研 修 医 の 幅 広 い 基 本 的 臨 床 能 力 の 獲 得 達 成 状 況 お よび 新 制 度 に 対 する 研 修 医 の 満 足 度 臨 床 研 修 終 了 後 に 予 定 している 進 路 研 修 カリ キュラムの 改 善 に 供 する 可 能 性 のあるいく つかのテーマなどについて 平 成 17 年 度 ( 新 制 度 1 期 生 )から 19 年 度 ( 新 制 度 3 期 生 )までの 2 年 次 研 修 医 を 対 象 に 調 査 分 析 し 新 医 師 臨 床 研 修 制 度 の 有 効 性 効 率 性 を 評 価 する B. 方 法 主 任 研 究 者 らがすでに 平 成 元 年 平 成 15 年 に 行 ってきた 研 修 医 の 臨 床 知 識 技 術 の 習 得 状 況 に 係 る 調 査 研 究 ( 福 井 次 矢 矢 野 栄 二 他.2 年 次 研 修 医 の 臨 床 知 識 技 術 の 修 得 状 況. 日 本 公 衆 衛 生 学 雑 誌 1990;37:798-802 瀬 上 清 貴 福 井 次 矢 矢 野 栄 二 他. 新 しい 医 師 臨 床 研 修 制 度 にお ける 指 導 医 養 成 およびモデル 研 修 プログラ ムに 関 する 研 究. 平 成 14 年 度 厚 生 労 働 省 科 学 特 別 研 究 事 業 )で 用 いたアンケート 調 査 票 を 参 考 にして 本 研 究 班 分 担 研 究 者 が 討 議 を 重 ね 研 修 医 および 研 修 病 院 ( 臨 床 研 修 病 院 大 学 病 院 )を 対 象 とする 自 記 式 ア ンケート 調 査 票 を 作 成 した 平 成 17 年 度 から 平 成 19 年 度 までの 3 回 の 調 査 で 用 いたアンケート 調 査 票 の 基 本 的 項 目 は 同 一 のものとしたが 平 成 18 年 度 19 年 度 については 将 来 の 研 修 カリキュラ ム 改 善 に 供 すると 思 われる 項 目 を 付 け 加 え た アンケート 調 査 票 は 研 修 医 個 人 が 特 定 できないよう 無 記 名 での 記 入 とした 本 研 究 は 財 団 法 人 聖 路 加 国 際 病 院 研 究 審 査 委 員 会 の 承 認 を 得 て 行 われた( 承 認 番 号 :08-081) 作 成 したアンケート 調 査 票 を 平 成 18 年 2 月 平 成 19 年 2 月 平 成 20 年 2 月 に 全 国 の 臨 床 研 修 病 院 大 学 病 院 の 臨 床 研 修 管 理 委 員 長 に 郵 送 し 記 入 返 送 するよう 依 頼 した 基 本 的 臨 床 能 力 の 修 得 状 況 と 症 例 経 験 数 医 療 記 録 記 載 件 数 の 調 査 票 について は 各 施 設 で 5 人 に 1 人 の 割 合 で 研 修 医 に 記 載 を 依 頼 した 調 査 票 の 内 容 は 研 修 医 の 属 性 病 院 の 属 性 研 修 期 間 研 修 中 の 時 間 外 勤 務 受 け 持 ち 患 者 数 研 修 への 満 足 度 相 談 体 制 研 修 後 の 進 路 専 門 としたい 診 療 科 専 門 医 等 の 取 得 希 望 将 来 の 進 路 仕 事 と 生 活 のバランスなどに 関 する 約 20 の 質 問 と 基 本 的 な 臨 床 能 力 ( 知 識 技 術 態 度 )の 修 得 状 況 について 99 項 目 経 験 症 例 数 につい て 82 の 症 状 病 態 疾 患 医 療 記 録 につい て 4 種 類 について 尋 ねた 基 本 的 臨 床 能 力 の 修 得 状 況 については 確 実 にできる 自 信 がある だいたい できる たぶんできる あまり 自 信 がな い 一 人 では 不 安 である できない 経 験 症 例 数 については 0 例 1 2 例 3 4 例 5 例 以 上 医 療 記 録 については 0 通 1-5 例 6-10 例 11 例 以 上 のいずれも4 段 階 評 価 とした 統 計 学 的 分 析 は 基 本 的 臨 床 能 力 の 修 得 状 況 について 確 実 にできる 自 信 がある あるいは だいたいできる たぶんできる と 回 答 した 研 修 医 の 割 合 を できる とし て それぞれの 項 目 に 関 してχ2 乗 検 定 で 比 較 した 本 報 告 書 では 平 成 17 年 度 から 平 成 19 年 度 までの3 年 間 の 調 査 結 果 を 以 下 の 項 目 について 解 析 した 1. 基 本 的 臨 床 能 力 (99 項 目 )の 修 得 状 況 と 症 例 経 験 数 (82 症 状 病 態 疾 患 ) 医 療 記 録 記 載 件 数 (4 種 類 )について 新 制 度 1 期 生 である 平 成 18 年 3 月 時 点 2
での 2 年 次 研 修 医 と 旧 制 度 下 の 平 成 15 年 3 月 時 点 での 2 年 次 研 修 医 の 比 較 2. 基 本 的 臨 床 能 力 の 修 得 状 況 と 症 例 経 験 数 医 療 記 録 記 載 件 数 の 3 年 間 の 推 移 3. 平 成 18 年 度 (19 年 3 月 )の 調 査 によ る 臨 床 研 修 中 に 行 われる 学 術 活 動 の 実 態 4. 平 成 19 年 度 (20 年 3 月 )の 調 査 によ る Personal Digital Assistance (PDA)の 利 用 状 況 5. 研 修 体 制 研 修 プログラム 処 遇 に 対 する 研 修 医 の 満 足 度 の 3 年 間 の 推 移 6. 研 修 後 の 選 択 科 3 年 間 の 推 移 7. 平 成 19 年 度 ( 平 成 20 年 3 月 )の 調 査 による 都 道 府 県 別 の 研 修 医 の 移 動 状 況 C. 結 果 1. 基 本 的 臨 床 能 力 (99 項 目 )の 修 得 状 況 と 症 例 経 験 数 (82 症 状 病 態 疾 患 ) 医 療 記 録 記 載 件 数 (4 種 類 )について 新 制 度 1 期 生 である 平 成 18 年 3 月 時 点 での 2 年 次 研 修 医 と 旧 制 度 下 の 平 成 15 年 3 月 時 点 での 2 年 次 研 修 医 の 比 較 (1) 自 己 評 価 による 基 本 的 臨 床 能 力 は 新 制 度 下 の 研 修 医 で 多 くの 項 目 で 著 し く 向 上 した (2)そして 旧 制 度 下 で 認 められていたよ うな 大 学 病 院 の 研 修 医 と 研 修 病 院 の 研 修 医 との 基 本 的 臨 床 能 力 の 差 はほと んど 認 められなくなった (3) 症 例 経 験 数 (82 症 状 病 態 疾 患 ) および 医 療 記 録 記 載 件 数 (4 種 類 )は 新 制 度 下 の 研 修 医 で 著 しく 増 えた 基 本 的 臨 床 能 力 (99 項 目 )の 修 得 状 況 の 新 制 度 導 入 前 と 新 制 度 導 入 後 3 年 間 の 推 移 全 体 的 に 達 成 度 は 精 神 的 領 域 の 薬 物 治 療 に 関 する 項 目 ( 導 入 前 80.8% 導 入 後 ( 平 成 19 年 度 ): 55.5%) 以 外 は 研 修 前 後 を 境 にして 上 昇 し 導 入 後 3 年 間 の 変 化 は 小 さか った よって 新 制 度 導 入 後 に 高 い 達 成 度 に 達 している 項 目 に 関 してはそれ を 維 持 していると 考 えられるが 導 入 後 でも 達 成 度 の 低 い 項 目 については いまのままでは 今 後 もあまり 満 足 する 達 成 度 の 上 昇 は 期 待 できないかもしれ ない 各 項 目 について 研 修 導 入 後 の 平 均 達 成 度 が 50%に 満 たない 項 目 は 12 項 目 /99 項 目 (12%)のみであり 低 い 順 ( 平 成 19 年 度 )では 眼 底 所 見 により 動 脈 硬 化 の 有 無 を 判 定 でき る (18.5%) 日 常 よく 行 う 処 置 検 査 等 の 保 険 点 数 を 知 っ て い る (27.7%) 双 手 診 により 女 性 附 属 期 の 腫 脹 を 触 知 できる (33.9%)であっ た 形 態 別 ( 大 学 臨 床 研 修 病 院 )で は 2 群 とも 研 修 導 入 前 後 の 傾 向 は 同 じであり 達 成 度 の 差 がほとんどの 項 目 で 減 少 傾 向 を 示 し 同 一 化 する 傾 向 であった 経 験 件 数 の 新 制 度 導 入 前 と 新 制 度 導 入 後 3 年 間 の 推 移 全 体 的 に 経 験 件 数 は 症 状 病 態 と 疾 患 については 研 修 前 後 を 境 にして 上 昇 し 導 入 後 3 年 間 の 変 化 は 小 さかった 医 療 記 録 につ いては 研 修 前 後 でほとんど 変 化 がな いか もしくは やや 低 下 傾 向 を 示 し た ( 例 ;CPC レポート: 導 入 前 10.1% 導 入 後 6.0%) 形 態 別 ( 大 学 臨 床 研 修 病 院 )では 2 群 とも 研 修 導 入 前 後 の 傾 向 は 同 じであるが 全 体 的 に 臨 床 研 修 病 院 の 方 が 大 学 病 院 よりも 経 験 件 数 が 多 い 傾 向 であり 屈 折 異 常 ( 平 成 19 年 度 : 大 学 病 院 :33.8% 臨 床 研 修 病 院 29.3%)のみ 大 学 病 院 で 経 験 数 が 多 かった 2. 基 本 的 臨 床 能 力 の 修 得 状 況 と 症 例 経 験 3
数 医 療 記 録 記 載 件 数 の 3 年 間 の 推 移 を 解 析 した ほとんどすべての 項 目 につい て 有 意 の 増 減 は 認 められなかった 3. 平 成 18 年 度 (19 年 3 月 )の 調 査 によ る 臨 床 研 修 中 に 行 われる 学 術 活 動 の 実 態 75%の 施 設 で 研 修 医 は 何 らかの 学 術 活 動 を 行 っていた 最 も 多 かった のが 学 会 参 加 (81.0%)で 以 下 症 例 報 告 (61.1%) 複 数 の 症 例 レビュー (14.1%) 研 究 仮 説 を 検 証 するタイプ の 臨 床 研 究 (5.1%)であった 大 学 病 院 の 研 修 医 に 比 べて 研 修 病 院 の 研 修 医 のほうが 学 術 活 動 に 熱 心 であった 4. 平 成 19 年 度 (20 年 3 月 )の 調 査 によ る Personal Digital Assistance (PDA)の 利 用 状 況 これまでに PDA を 使 ったことのある 研 修 医 は 86.4%で 現 在 も 用 いているのはわずか 30.7%に とどまった 5. 研 修 体 制 研 修 プログラム 処 遇 に 対 する 研 修 医 の 満 足 度 の 3 年 間 の 推 移 を 解 析 した 研 修 体 制 研 修 プログラムに 対 して 満 足 している 研 修 医 の 割 合 は 全 体 的 に3 年 間 を 通 じて 上 昇 傾 を 示 した ( 研 修 体 制 については 53.3% 55.4% 60.7% 研 修 プ ロ グ ラ ム に つ い て は 47.7% 55.7% 62.1%) 臨 床 研 修 病 院 の 方 が 大 学 病 院 より 研 修 医 研 修 病 院 の 満 足 度 が 高 い 傾 向 である が その 差 は 徐 々に 縮 まりつつあった ( 研 修 体 制 :26.4 ポイント 17.8 ポイン ト 研 修 プログラム:19.2 ポイント 18.8 ポイント) 研 修 体 制 研 修 プログラムに 対 して 満 足 している 研 修 医 の 割 合 は 年 々 増 加 して きている( 研 修 体 制 については 53.3% 55.4% 60.7% 研 修 プログラムについ ては 47.7% 55.7% 62.1%) 大 学 病 院 の 研 修 医 に 比 べて 研 修 病 院 の 研 修 医 の 満 足 度 が 高 いが その 差 はやや 縮 まって きた( 研 修 体 制 :26.4 ポイント 17.8 ポ イント 研 修 プログラム:19.2 ポイント 18.8 ポイント) 各 要 因 (11 項 目 )に ついての 満 足 度 は 臨 床 研 修 病 院 で 明 ら かに 大 学 病 院 より 満 足 度 の 高 い 項 目 は 7 項 目 で 職 場 の 雰 囲 気 が 良 い ( 大 学 病 院 :33.6% 臨 床 研 修 病 院 :57.0%: 平 成 19 年 度 ) 研 修 に 必 要 な 症 例 手 技 の 経 験 が 十 分 ( 大 学 病 院 :27.8% 臨 床 研 修 病 院 :53.0%: 平 成 19 年 度 ) コ メディカルとの 連 携 がうまくいってい る ( 大 学 病 院 :14.5% 臨 床 研 修 病 院 : 42.6%: 平 成 19 年 度 )などであった 大 学 病 院 で 満 足 度 の 高 い 項 目 は1 項 目 で 教 育 資 源 ( 図 書 など)が 十 分 であ る であったが 導 入 後 3 年 目 でさらに 差 が 大 きくなっていた( 大 学 病 院 :37.9% 臨 床 研 修 病 院 :12.9%: 平 成 19 年 度 ) 3 年 間 で 差 が 縮 まりつつあった 項 目 は 3 項 目 で 指 導 医 の 指 導 が 熱 心 ( 大 学 病 院 :39.2% 臨 床 研 修 病 院 :44.6%: 平 成 19 年 度 ) 受 け 入 れ 体 性 が 十 分 整 っ ている( 大 学 病 院 :16.4% 臨 床 研 修 病 院 :18.1%: 平 成 19 年 度 ) 相 談 体 制 が 十 分 整 っている( 大 学 病 院 :19.4% 臨 床 研 修 病 院 :21.5%: 平 成 19 年 度 )で あった 都 道 府 県 別 に 見 ると 研 修 体 制 に 満 足 している 割 合 が 高 い 都 道 府 県 は 和 歌 山 (100% N=6) 宮 崎 (92.9% N=14) 徳 島 (91.7% N=24) 愛 媛 (89.3% N=28) 滋 賀 (88.5% N=23)の 順 であ った 研 修 体 制 に 対 する 満 足 度 が 低 い 割 合 の 都 道 府 県 は 鳥 取 (42.9% N=7) 山 形 (47.6% N=21) 鹿 児 島 (52.6% N=38) 高 知 (53.3% N=15) 福 井 (56.3% N=16)であった 4
研 修 プログラムに 満 足 している 割 合 が 高 い 都 道 府 県 は 和 歌 山 (100% N=5) 宮 崎 (95.0% N=20) 滋 賀 (93.8% N=32) 島 根 (92.9% N=28) 山 口 (89.5% N=19)であった 研 修 プログ ラムに 満 足 している 割 合 が 低 い 都 道 府 県 は 高 知 (46.7% N=15) 鹿 児 島 (54.1% N=37) 鳥 取 (57.1% N=7) 埼 玉 (58.2% N=91) 岐 阜 (60.0% N=30)であった 処 遇 に 対 する 満 足 度 が 高 い 都 道 府 県 は 青 森 (88.9% N=27) 滋 賀 (87.5% N=28) 和 歌 山 (87.5% N=8) 三 重 (87.2% N=34) 宮 城 (86.7% N=30)で 満 足 度 の 割 合 が 低 い 都 道 府 県 は 石 川 (28.6% N=21) 鳥 取 (33.3% N=9) 長 崎 (39.3% N=28) 鹿 児 島 (43.2% N=37) 東 京 (44.6% N=538) であった 6. 研 修 後 の 選 択 科 3 年 間 の 推 移 増 加 傾 向 を 示 した 科 は 小 児 科 脳 神 経 外 科 病 理 外 科 であった 減 少 傾 向 の 科 は 内 科 整 形 外 科 耳 鼻 咽 喉 科 泌 尿 器 科 救 急 救 命 科 であった 7. 平 成 19 年 度 ( 平 成 20 年 3 月 )の 調 査 による 都 道 府 県 別 の 研 修 医 の 移 動 状 況 研 修 修 了 後 の 研 修 医 の 動 向 を 都 道 府 県 別 に 見 ると( 平 成 19 年 のデータ) 研 修 後 の 勤 務 地 として 研 修 修 了 後 に 研 修 先 と 同 じ 都 道 府 県 に 残 る 割 合 は 平 均 で 75.3%と 非 常 に 高 かった また 大 学 病 院 で 研 修 を 受 け た 研 修 医 (81.4%)の 方 が 臨 床 研 修 病 院 の 研 修 を 受 けた 研 修 医 (70.9%)よりも 統 計 学 的 に 同 じ 都 道 府 県 に 残 る 割 合 が 高 かった(p<0.01) 都 道 府 県 別 で 見 ると 研 修 先 と 研 修 後 の 勤 務 地 が 同 じ 都 道 府 県 である 割 合 が 高 い 都 道 府 県 は 徳 島 (92.6%) 石 川 (90.5%) 新 潟 (80.7%)であった 研 修 先 と 研 修 後 の 勤 務 地 が 同 じ 都 道 府 県 である 割 合 が 低 い 都 道 府 県 ( 研 修 修 了 後 研 修 先 と 同 じ 都 道 府 県 に 留 まら ない)は 埼 玉 (45.9%) 富 山 (52.3%) 京 都 (56.8%)であった 各 都 道 府 県 で 働 く 研 修 医 のうち 県 外 から 来 る 研 修 医 の 割 合 は 全 国 平 均 で 約 1/4(24.7%)であった もっとも 県 外 から 来 る 研 修 医 が 多 い 都 道 府 県 は 石 川 (45.7%) 京 都 (45.2%) 宮 城 (42.2%)であった もっとも 県 外 からの 研 修 医 が 少 ない 都 道 府 県 は 山 形 (0.0%) 山 梨 (7.1%) 富 山 (8.0%) であった D. 考 察 本 研 究 により 医 師 の 卒 後 臨 床 研 修 が 平 成 16 年 度 以 降 の 新 制 度 下 で 行 われる ようになって 旧 制 度 下 に 比 べて 2 年 次 終 了 時 の 研 修 医 の 基 本 的 臨 床 能 力 が 著 しく 向 上 したことが 明 らかとなった 基 本 的 臨 床 能 力 の 評 価 は 自 己 評 価 に 拠 った が 新 制 度 下 での 研 修 医 一 人 当 たりの 経 験 症 例 数 が 有 意 に 増 加 し 医 療 記 録 の 記 載 数 も 有 意 に 増 加 したことから 基 本 的 臨 床 能 力 の 向 上 は 妥 当 な 結 果 と 考 えられ る 新 制 度 下 での 基 本 的 臨 床 能 力 の 向 上 は 1 到 達 目 標 が 設 定 され 修 了 時 に 評 価 され るようになったこと 2マッチング 制 度 の 導 入 により 研 修 プログラムが 公 開 さ れたため 研 修 医 だけでなく 病 院 にも 研 修 の 質 を 高 めるべく 競 争 原 理 が 働 いたこ と などに 起 因 するところが 大 きいと 考 えられる 研 修 医 の 臨 床 能 力 について 旧 制 度 下 で 認 められた 大 学 病 院 と 研 修 病 院 での 相 違 ( 研 修 病 院 の 研 修 医 のほうが 大 学 病 院 の 5
研 修 医 よりも 優 っていた)が 新 制 度 下 で 消 失 したことは 大 学 病 院 での 研 修 プロ グラムや 待 遇 面 での 改 善 が 著 しかったこ とを 示 している 研 修 プログラムや 研 修 体 制 面 における 研 修 医 の 満 足 度 も 新 制 度 になって 3 年 間 にわたって 毎 年 改 善 し 大 学 病 院 と 研 修 病 院 での 差 も 小 さくなってきていること は 医 師 の 臨 床 研 修 を 改 善 する 努 力 が 全 国 の 多 くの 病 院 で 継 続 されていることを 示 している 研 修 医 の 研 究 活 動 が 大 学 病 院 よりも 研 修 病 院 で 活 発 だとのデータは 意 外 な 結 果 であった しかしながら 研 究 のタイプ については いまだ 症 例 報 告 に 止 まって いる 病 院 が 多 く 研 究 仮 説 を 検 証 するタ イプの 研 究 を 普 及 する 余 地 は 大 きい 研 修 医 の 2 年 間 の 研 修 後 の 動 向 について は 研 修 を 行 った 施 設 のある 都 道 府 県 に 留 まる 可 能 性 が 高 い(75.3%)ことから 医 療 政 策 上 医 師 の 地 域 分 布 を 考 える 場 合 に 研 修 医 の 地 域 分 布 を 考 慮 する 必 要 性 の 高 いことを 示 している E. 結 論 本 研 究 により 2 年 次 研 修 医 の 基 本 的 臨 床 能 力 が 新 臨 床 研 修 制 度 により 著 しく 向 上 したことが 示 された しかも 旧 制 度 下 に 比 べて 新 制 度 下 では 大 学 病 院 と 研 修 病 院 の 研 修 医 の 基 本 的 臨 床 能 力 に 差 がなくなった これらの 結 果 は 臨 床 研 修 制 度 変 革 の 最 大 の 目 的 である 幅 広 い 基 本 的 臨 床 能 力 を 研 修 医 に 付 与 するという 最 大 の 目 的 については 新 制 度 の 導 入 が 正 しい 医 療 政 策 であったことを 強 く 示 唆 するものである F. 研 究 発 表 1. 論 文 発 表 7 件 1) 福 井 次 矢 高 橋 理 徳 田 安 春 大 出 幸 子 野 村 恭 子 矢 野 栄 二 青 木 誠 木 村 琢 磨 川 南 勝 彦 遠 藤 弘 良 水 嶋 峻 朔 篠 崎 英 夫. 臨 床 研 修 の 現 状 : 大 学 病 院 研 修 病 院 アンケート 調 査 結 果. 日 本 内 科 学 会 雑 誌 2007;96:2681-2694 2) Nomura K, Yano E, Aoki M, Kawaminami K, Endo H, Fukui T. Improvement of residents clinical competency after the introduction on new postgraduate medical education program in Japan. Med Teach 2008;30(6):e161-169 3) Nomura K, Yano E, Mizushima S, Endo H, Aoki M, Shinozaki H, Fukui T. The shift of residents from university to non-university hospitals in Japan: a survey study. J Gen Intern Med 2008;23(7):1105-1109 4) Ohde S, Takahashi O, Jacobs J, Tokuda Y, Omata F, Hinohara S, Fukui T. Japanese Medical Residents Self-Assessed Confidence in Clinical Research Skills Improves with Experience of Scholarly Activities. General Medicine 2008;9:81-82 5) Jacobs JL, Takahashi O, Ohde S, Tokuda Y, Omata F, Fukui T. PDA usage is very low in Japanese healthcare: a cohort survey of Japanese resident physicians. (submitted) 6) Takahashi O, Ohde S, Jacobs J, Tokuda Y, Omata F, Fukui T. Residents experience of scholarly activities is related to satisfaction with residency training: a national survey study in Japan. (submitted) 6
7) Nomura K, Yano E, Mizushima S, Fukui T. Factors associated with residents clinical competency I Japanese postgraduate medical education. (submitted) 2. 学 会 発 表 6 件 1) 福 井 次 矢 青 木 誠 木 村 琢 磨 野 村 恭 子 川 南 勝 彦 遠 藤 弘 良 水 嶋 春 朔 高 橋 理 徳 田 安 春 大 出 幸 子 矢 野 栄 二.2 年 次 研 修 医 の 臨 床 能 力 にもたらした 新 研 修 制 度 の 影 響. 第 39 回 日 本 医 学 教 育 学 会 総 会 盛 岡 2007 年 7 月 27 日 [ 抄 録 : 医 学 教 育 2007;38(Suppl.):29] 2) 矢 野 栄 二 野 村 恭 子 青 木 誠 木 村 琢 磨 川 南 勝 彦 遠 藤 弘 良 水 嶋 春 朔 高 橋 理 徳 田 安 春 大 出 幸 子 福 井 次 矢. 新 医 師 研 修 制 度 下 研 修 医 の 特 性 と 満 足 度 : 大 学 病 院 と 一 般 研 修 病 院 との 比 較. 第 39 回 日 本 医 学 教 育 学 会 総 会 盛 岡 2007 年 7 月 27 日 [ 抄 録 : 医 学 教 育 2007;38(Suppl.):27] 3) 水 嶋 春 朔 遠 藤 弘 良 石 川 雅 彦 曽 根 智 史 川 南 勝 彦 青 木 誠 矢 野 栄 二 福 井 次 矢. 新 医 師 臨 床 研 修 制 度 第 1 期 生 を 対 象 とした 臨 床 研 修 の 満 足 度 目 標 達 成 度 に 関 する 調 査 結 果. 第 39 回 日 本 医 学 教 育 学 会 総 会 盛 岡 2007 年 7 月 27 日 [ 抄 録 : 医 学 教 育 2007;38(Suppl.):27] 4) 大 出 幸 子 高 橋 理 徳 田 安 春 福 井 次 矢. 医 師 臨 床 研 修 プログラムにおける 臨 床 研 究 活 動 の 実 態. 第 39 回 日 本 医 学 教 育 学 会 総 会 盛 岡 2007 年 7 月 27 日 [ 抄 録 : 医 学 教 育 2007;38(Suppl.):94] 4) 木 村 琢 磨, 高 橋 理, 徳 田 安 春, 大 出 幸 子, 野 村 恭 子, 矢 野 栄 二, 青 木 誠, 川 南 勝 彦, 遠 藤 弘 良, 水 嶋 春 朔, 篠 崎 英 夫, 福 井 次 矢. 総 合 内 科 を 志 望 している 研 修 医 の 特 徴. 第 40 回 日 本 医 学 教 育 学 会 東 京 2008 年 7 月 25 日 [ 抄 録 : 医 学 教 育 2008;39(Suppl.):] 5) 高 橋 理 大 出 幸 子 徳 田 安 春 野 村 恭 子, 矢 野 栄 二, 木 村 琢 磨 青 木 誠, 水 嶋 春 朔, 遠 藤 弘 良, 福 井 次 矢. 臨 床 能 力 獲 得 の 地 域 格 差. 第 40 回 日 本 医 学 教 育 学 会 東 京 2008 年 7 月 25 日 [ 抄 録 : 医 学 教 育 2008;39(Suppl.):] 6) 野 村 恭 子 矢 野 栄 二 青 木 誠 木 村 琢 磨 川 南 勝 彦 遠 藤 弘 良 水 嶋 春 朔 篠 崎 英 夫 高 橋 理 徳 田 安 春 大 出 幸 子 福 井 次 矢. 満 足 度 と 臨 床 技 能 の 関 連. 第 40 回 日 本 医 学 教 育 学 会 東 京 2008 年 7 月 25 日 [ 抄 録 : 医 学 教 育 2008;39(Suppl.):] H. 知 的 所 有 権 の 出 願 取 得 状 況 ( 予 定 を 含 む) 1. 特 許 取 得 0 件 2. 実 用 新 案 登 録 0 件 3.その 他 0 件 7