十 勝 産 機 能 性 素 材 を 用 いた 製 品 開 発 の 検 討 研 究 開 発 課 副 課 長 葛 西 大 介 研 究 員 佐 々 木 香 子 1. 目 的 と 概 要 当 財 団 では H21 年 度 から 産 学 官 連 携 事 業 として 文 部 科 学 省 地 域 イノベー ション 戦 略 支 援 プログラム( 都 市 エリア 型 ) 十 勝 エリア ( 通 称 :とかち ABC プ ロジェクト)に 取 組 んでいる とかち ABC プロジェクトでは 十 勝 らしい 食 品 素 材 に 着 目 し これらの 素 材 を 用 いた 商 品 開 発 を 十 勝 で 行 い 十 勝 から 関 連 商 品 を 発 信 することで 十 勝 あるいは 北 海 道 に 特 長 的 な 食 品 素 材 の 普 及 に 努 め 地 域 活 性 化 に 寄 与 することを 目 的 のひとつ としている ( 図 1) 本 報 告 では このプロジェクトの 主 要 な 研 究 テーマの 中 から ビートベタイン 地 域 イノベーションの 継 続 的 創 出 十 勝 型 アグリ バイオクラスターの 形 成 テーマ 1 機 能 性 研 究 グループ ビート 由 来 ( 製 糖 副 産 物 ) ベタイン 小 豆 由 来 ( 製 餡 副 産 物 ) 小 豆 ホ リフェノール とかちABCプロジェクト 豚 内 臓 由 来 (と 畜 副 生 物 ) 動 物 性 素 材 チコリ 根 由 来 ( 新 規 素 材 ) イヌリン とかち 元 気 食 構 想 の 推 進 テーマ 2 安 全 性 研 究 グループ 網 羅 的 有 害 細 菌 検 出 図 1)とかち ABC プロジェクトの 概 要 やチコリイヌリンを 取 り 上 げ 既 に 知 られている 品 質 特 性 やこれまでの 研 究 において 得 ら れた 用 途 開 発 のノウハウを 活 かした 製 品 開 発 の 事 例 について 紹 介 する 機 能 性 解 明 人 材 育 成 新 検 査 技 術 食 品 検 査 ラボ コンサル ティング カクテル PCRによる 検 出 技 術 質 量 分 析 計 による 同 定 法 (H21~H25) VBNC 菌 検 出 技 術 免 疫 学 的 同 定 法 2/15 2.ビートベタインとは ビートベタインはビート( 砂 糖 大 根 )から 砂 糖 を 製 造 する 際 の 副 産 物 として 作 られる 糖 蜜 を 原 料 として クロマト 分 離 技 術 により 回 収 された 天 然 アミノ 酸 の 一 種 である( 図 2) 国 内 では 化 粧 品 の 保 湿 成 分 として 利 用 されるほか 一 部 水 産 食 品 の 風 味 向 上 や 飼 料 に 使 用 される ビー トベタインの 健 康 機 能 性 は 帯 広 畜 産 大 学 の 研 究 によ り 肝 機 能 の 維 持 に 効 果 が 期 待 できること が 明 らかとなり( 図 3) 今 後 栄 養 ドリ ンクやサプリンメント 等 の 開 発 が 期 待 さ れている 一 方 健 康 機 能 性 以 外 での 食 品 へのビ ートベタインの 利 用 は 既 存 添 加 物 リス トに 収 載 されているとおり 調 味 料 とし ての 用 途 が 主 体 であるが その 添 加 効 果 は 味 をまろやかにして 食 品 の 風 味 に 広 が りを 与 える 他 塩 なれ 効 果 酸 なれ 効 果 が 知 られているとともに 対 象 とする 食 品 により 水 分 活 性 の 低 下 による 保 存 性 向 上 や 保 湿 性 向 上 によるしっとり 感 の 付 与 乾 燥 抑 制 によるジューシー 感 の 維 ビ ー ト 図 2)ビートベタイン 製 造 工 程 図 3)ベタインの 健 康 機 能 性 裁 断 抽 出 エビ イカ タコ カニ 貝 類 ほうれんそう キノコ にも 天 然 アミノ 酸 の 一 種 炭 酸 清 浄 イ オ 脱 ン 交 塩 換 樹 脂 ベタインの 製 造 工 程 (トリメチルグリシン) 濃 縮 結 晶 化 糖 蜜 クロマト 分 離 ベタイン 砂 糖
官 能 塩 分 濃 度 (%) 官 能 塩 分 濃 度 (%) 持 などの 食 感 向 上 畜 肉 の 臭 気 抑 制 などが 期 待 できる さらには 砂 糖 の 約 半 分 の 甘 さを 持 つことか ら 糖 類 との 置 き 換 えによる 糖 量 の 減 少 や BRIX の 増 加 アミノ 酸 とのメイラード 反 応 の 減 少 など にも 応 用 が 可 能 であると 考 えら れる( 図 4) これらの 効 果 は 食 品 の 性 質 に より 異 なるが 特 定 のカテゴリの みではなく 幅 広 い 活 用 の 可 能 性 を 持 つ 優 れた 食 品 素 材 のひとつ といえる 生 ハム ラーメンスープ イカリング ハム 塩 辛 しぐれ 煮 塩 なれ 効 果 ( 熟 成 感 付 与 ) 塩 分 の 高 い 食 品 への 応 用 食 感 向 上 しっとり 感 付 与 柔 らかさ 保 持 甘 さや 塩 気 を 抑 えた 食 品 開 発 味 噌 あえ 加 工 品 肉 加 工 乾 燥 品 等 の 日 持 ち 向 上 めんつゆ 等 の 塩 なれ 荒 巻 さけ 生 ハム 等 の 塩 カド 緩 和 塩 漬 物 の 味 なれ まろやかな 味 噌 あえ 加 工 品 等 肉 加 工 品 魚 介 加 工 品 (ジューシー 感 柔 らかさ 維 持 ) フライドチキン ビーフ ジャーキー ベタインの 品 質 特 性 ( 添 加 効 果 ) ビーフ ジャーキー 保 存 性 向 上 風 味 向 上 臭 気 を 抑 えて 食 べやすく 肉 加 工 品 魚 介 加 工 品 ( 畜 肉 臭 魚 臭 軽 減 ) お 惣 菜 図 4)ベタインの 食 品 への 利 用 可 能 性 ハスカップジャム ママレード 酢 飲 料 味 質 向 上 味 をまろやかにし 広 がりを 与 える 飲 みやすい 栄 養 ドリンク 柑 橘 飲 料 の 開 発 肉 加 工 品 の 風 味 向 上 ドレッシングの 酸 味 抑 制 等 砂 糖 置 換 による 褐 変 低 減 栄 養 ドリンク ドレッシング イカ 珍 味 水 産 珍 味 などの 褐 変 低 減 タラ 珍 味 糖 類 を 用 いるアミノ 酸 含 有 食 品 例 えば 水 産 珍 味 などの 褐 変 改 善 塩 辛 3.ビートベタインを 利 用 した 製 品 開 発 事 例 (1) 北 海 道 - 静 岡 連 携 商 品 抹 茶 オーレ H&S 抹 茶 オーレ H&S は 北 海 道 ミルクと 静 岡 抹 茶 の コラボ 製 品 として 開 発 された 商 品 であるが 抹 茶 の 風 味 を 維 持 しながらもミルク 感 を 出 す 必 要 があった ミ ルク 感 を 出 すために 抹 茶 を 減 量 あるいは 脱 脂 粉 乳 を 増 量 すると 抹 茶 及 びミルクの 存 在 感 を 両 立 すること が 難 しく どちらかが 際 立 つ 傾 向 があった この 課 題 を 解 決 するため ビートベタインの 風 味 向 上 効 果 を 利 用 した 結 果 両 方 の 原 料 を 十 分 量 配 合 しつつ 抹 茶 の 風 味 のみを 和 らげ 相 対 的 にミルク 感 を 強 くすること に 成 功 した( 図 5) これに より 抹 茶 とミルクのバラン スが 改 善 され 他 社 製 品 と 比 較 しても 高 い 官 能 評 価 ( 表 1) 結 果 が 得 られた (2) 牛 肉 発 酵 珍 味 食 品 ( 名 称 未 定 ) 牛 肉 発 酵 珍 味 は 牛 ミンチ 肉 に 米 麹 を 作 用 させて 発 酵 させた 麹 発 酵 珍 味 であるが 発 酵 工 程 中 の 微 生 物 汚 染 の 危 害 を 低 減 するため 食 塩 により 水 分 活 性 を 低 下 させることが 重 要 である このため からすみやブル ーチーズなどのように 塩 気 が 強 い 食 品 となり 製 造 直 後 では 塩 カドが 立 ち よりまろやかな 食 味 ( 塩 味 )が 求 められていた この 課 題 を 解 決 するため ビートベ タインの 塩 なれ 効 果 ( 図 6)を 利 用 した 結 果 長 期 熟 成 の 風 味 や 質 感 が 付 与 され 保 存 性 と 食 べやすさを 両 図 7) 牛 肉 発 酵 珍 味 食 品 立 した 珍 味 様 食 品 の 開 発 に 成 功 した( 図 7) 図 5)ベタイン 添 加 による 風 味 向 上 効 果 ( 官 能 評 価 ) 表 1) 他 社 製 品 との 比 較 ( 官 能 評 価 n=10) 5.0 4.5 4.0 3.5 3.0 2.5 2.0 1.5 1.0 ベタイン3% 添 加 効 果 ( 官 能 n=11) ベタイン 無 添 加 比 較 レベル 甘 さ 苦 味 ミルク 感 抹 茶 感 総 合 評 価 総 合 評 価 本 商 品 A 社 B 社 C 社 D 社 E 社 平 均 点 3.3 2.5 2.3 2.8 2.7 1.8 7.5 7.0 6.5 6.0 5.5 5.0 4.5 4.0 めんつゆへの 添 加 効 果 約 2.0% 塩 分 感 覚 DOWN 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 ベタイン 添 加 加 量 (%) 量 (%) 図 6)ベタインの 塩 なれ 効 果
(3) 日 持 ち 向 上 剤 HMC-No.1( 試 作 品 ) 日 持 ち 向 上 剤 HMC-No.1 はビートベタインのより 一 層 の 普 及 拡 大 を 図 るため 使 い 勝 手 が 良 く 汎 用 性 の 広 い 複 合 製 剤 として 開 発 された 試 作 品 である 日 持 ち 向 上 剤 には 様 々な 成 分 を 利 用 したものが 市 販 さ れているが そのひとつとして 酢 酸 ナトリウム 製 剤 が 挙 げられる 酢 酸 ナトリウム 製 剤 は 酢 酸 製 剤 に 比 べて 酸 味 を 感 じにくく 対 象 食 品 を 選 ばない 汎 用 性 を 有 しており 広 く 利 用 されているが 洋 菓 子 のよう な 食 品 ではわずかな 酸 味 が 風 味 に 影 響 を 与 えて 利 用 範 囲 が 狭 められていた この 課 題 を 解 決 するため ビートベタインの 酸 なれ 効 果 を 利 用 した 結 果 味 覚 センサー(INSENT 社 )でも 酸 味 の 減 少 が 確 認 され た( 図 8) HMC-No.1 を 添 加 したシフォンケーキでの 試 食 会 でもビートベタインの 添 加 による 風 味 の 変 化 は 感 じられず むしろ しっとりして 柔 らかいという 感 想 が 得 られ 物 性 面 でも 品 質 の 向 上 が 期 待 できた 日 持 ち 向 上 剤 としての 効 果 はシフォン ケーキで 1 日 ロールケーキスポンジで 5 日 の 日 持 ち 延 長 が 可 能 ( 表 2)であった 日 持 ち 向 上 効 果 はビートベタインによ る 効 果 ではなく HMC-No.1 に 配 合 された グリシン 酢 酸 ナトリウムなど 他 の 成 分 に 起 因 するものだが 従 来 の 酢 酸 ナトリウム 製 剤 の 日 持 ち 向 上 効 果 を 損 なうことなく その 味 質 を 向 上 し 汎 用 性 を 高 めることが 可 能 であると 推 察 された 4.チコリイヌリンとは チコリ 根 部 から 抽 出 されるチコリイヌリンは グ ルコースにフラクトオリゴ 糖 が 重 合 した 構 造 を 持 つ 多 糖 類 の 一 種 ( 図 9)で 水 溶 性 食 物 繊 維 として 様 々な 健 康 機 能 性 を 持 つ 食 品 素 材 として 知 られて いる 国 内 ではファットスプレッドやシリアル 食 品 などに 使 用 され 低 カロリー 化 食 品 や 食 物 繊 維 を 付 与 した 食 品 に 主 に 利 用 される 一 般 にイヌリンの 健 康 機 能 性 は 血 糖 値 の 上 昇 抑 制 血 清 コレステロール 値 の 低 下 ビ フィズス 菌 増 殖 による 腸 内 環 境 の 改 善 効 果 などがあり 十 勝 でもチ コリ 栽 培 によるイヌリン 製 造 が 期 待 されている 一 方 健 康 機 能 性 以 外 での 食 品 へのチコリイヌリンの 利 用 は 食 うま 味 0.2 増 加 +0%ベタイン 0-1 -0.5 0 0.5 1 +0.25%ベタイン -0.2-0.8 酸 味 減 少 -1 図 8)1%HMC-No.1 水 溶 液 に 対 す るベタインの 酸 なれ 効 果 ( 味 覚 センサー 出 力 ) 表 2)ロールケーキスポンジ チーズシフォン ケーキの 保 存 試 験 結 果 図 9)イヌリンの 構 造 図 10)イヌリンの 食 品 への 利 用 可 能 性 1 0.8 0.6 0.4-0.4-0.6 +0.5%ベタイン +1.0%ベタイン ロールケーキスポンジ(25 ) 初 発 3 日 後 5 日 後 無 添 加 区 <300 3.6 10 6 >10 7 1% 添 加 区 <300 <300 <300 チースシフォンケーキ(25 ) 初 発 1 日 後 2 日 後 3 日 後 無 添 加 区 <300 9.6 10 3 >10 7-1% 添 加 区 <300 <300 3.1 10 2 4.7 10 6 いか 塩 辛 (10 ) 初 発 13 日 後 17 日 後 20 日 後 無 添 加 区 <300 3.1 10 3 3.9 10 3 3.7 10 3 1.5% 添 加 区 <300 <300 <300 <300 物 性 改 良 離 水 防 止 麺 類 への 応 用 ヨーグルトへの 応 用 生 めんのコシ 伸 びの 向 上 増 粘 多 糖 類 を 使 用 しないヨーグルト 等 食 物 繊 維 付 与 食 物 繊 維 リッチ 食 物 繊 維 プラス 等 の 強 調 表 示 イヌリンの 品 質 特 性 食 感 向 上 各 種 ペースト 状 食 品 を 滑 らかに 野 菜 ペースト ファットスプレッド クリームチーズ 等 脂 肪 代 替 による カロリー 低 減 味 質 向 上 酸 味 を 抑 制 し 穏 やかな 酸 味 に ヨーグルト 製 品 の 開 発 ドレッシングの 酸 味 抑 制 等 脂 肪 使 用 量 を 抑 え ヘルシーに
物 繊 維 の 付 与 以 外 にも 滑 らかでクリーミーな 食 感 の 付 与 味 質 向 上 ( 酸 味 の 抑 制 ) 生 麺 の コシ 伸 びの 向 上 ドレッシングやヨーグルトの 離 水 防 止 など 幅 広 い 用 途 が 期 待 できる また エネルギーも 2kcal とタンパク 質 や 糖 質 に 比 べて 低 く 低 カロリー 食 品 を 製 造 するの に 利 用 できる さらには 水 溶 性 粉 末 のため 液 体 固 体 問 わず 添 加 が 可 能 で 味 質 も 砂 糖 の 1/10 程 度 と 穏 や かな 甘 味 のため 食 品 の 風 味 に 影 響 を 与 えない 優 れた 食 品 素 材 といえる 5.チコリイヌリンを 利 用 した 製 品 開 発 事 例 (1)クリームチーズ( 図 11) チコリイヌリンは 30~50%という 高 濃 度 で 水 に 加 温 溶 解 した 後 冷 却 するとクリームを 形 成 し 固 形 油 脂 や 生 クリームの 代 替 物 として 使 用 が 可 能 である このようなイヌリンクリームをクリ ームチーズに 添 加 すると エネルギーを 低 減 できるとともに 滑 らかさを 付 与 することができる 従 来 のクリームチーズは 展 延 し にくいため パンなどには 塗 りにくいという 欠 点 があった この 課 題 を 解 決 するため イヌリンクリームを 作 成 し クリームチー 図 12)イヌリンによる 食 感 向 上 ズへ 添 加 した 結 果 柔 らかさ 食 感 を 向 上 ( 図 12)させ るとともに 低 カロリー 化 ( 表 3)に 成 功 した また 官 能 評 価 においてもクリームチーズのコクは 維 持 さ れていることを 確 認 した さらにはクリームチーズという 動 物 性 食 品 に 食 物 繊 維 を 付 与 することができ より 健 康 志 向 の 高 い 加 工 食 品 として 位 置 づけること ができた (2) 豆 ドレッシング 従 来 の 豆 ドレッシングは 油 脂 と 水 が 分 かれたセパレ ートタイプであった 通 常 クリームタイプのドレッシ ングは 油 脂 と 水 を 乳 化 させるために 増 粘 多 糖 類 や 乳 化 剤 を 必 要 とすることから これらの 添 加 物 を 使 用 せずに 新 商 品 のクリームタイプの 豆 ドレッシングを 開 発 するの は 困 難 であった この 課 題 を 解 決 するため チコリイヌ リンで 作 成 したイヌリンクリームを 添 加 した 結 果 分 離 しないクリームタイプの 豆 ドレッシングの 開 発 に 成 功 し た( 図 13) イヌリンクリームを 添 加 することで 食 品 に 粘 性 を 付 与 するとともに イヌリンが 水 を 抱 き 込 むことで 離 水 を 抑 制 し ドレッシングが 分 離 しない 形 態 が 実 現 できたと 推 察 される さらに 食 物 繊 維 含 量 が 8% 以 上 であったため 食 物 繊 維 が 多 豊 富 等 の 強 調 表 示 も 可 能 となった 図 11)イヌリン 入 り クリームチーズ 表 3)イヌリンによる 低 カロリー 化 市 販 クリームチーズ 十 勝 野 クリームチーズ イヌリン 入 り 十 勝 野 クリームチーズ 0% エネルギー (kcal) 図 13)イヌリン 入 り 豆 ドレッシング 食 物 繊 維 (g/100g) 346.0 0 328.0 0 298.6 (-14%) 5% 10% 2.0 20% 有 り 若 干 有 り 無 し 無 し
(3) 畜 肉 原 料 100% 牛 肉 のソーセージ 牛 肉 ソーセージは 従 来 風 味 や 結 着 性 を 向 上 する ため 豚 脂 肪 を 混 合 して 製 造 するが 畜 肉 原 料 とし て 100% 牛 肉 としつつも 風 味 や 結 着 性 に 影 響 を 与 え ずに 製 造 する 技 術 が 求 められていたが 豚 脂 肪 の 代 わりに 牛 脂 肪 を 使 用 すると 融 点 が 低 いため スモー ク 中 に 油 脂 が 分 離 し 流 出 しやすく 良 質 なソーセー ジが 作 りにくいという 課 題 があった この 課 題 を 解 決 するため チコリイヌリンで 作 成 したイヌリンク リームを 豚 脂 肪 や 牛 脂 肪 の 代 わりに 添 加 した 結 果 従 来 と 変 わらない 風 味 結 着 性 を 有 した 牛 肉 原 料 100%ソーセージが 製 造 できた 尚 且 つ 動 物 性 脂 肪 を 食 物 繊 維 に 置 き 換 えたため カロリーを 従 来 の 3/4 に 低 減 することに 成 功 ( 図 14)し 動 物 性 食 品 に 食 物 繊 維 を 付 与 することができたことで クリームチーズ 同 様 より 健 康 志 向 の 高 い 加 工 食 品 として 位 置 づけることができた (4) 桜 の 花 を 浮 かせたヨーグルト ヨーグルトへのイヌリンの 利 用 は 食 物 繊 維 付 与 を 目 的 として 乳 業 メーカーが 商 品 を 既 に 販 売 している 今 回 開 発 したヨーグルトは 表 面 に 桜 の 花 を 浮 かす 製 品 であり 発 酵 開 始 前 にヨーグルトミックスの 液 面 に 桜 の 花 を 浮 かす 必 要 があったが 従 来 の 製 造 方 法 では 桜 の 花 が 沈 降 してしまい 困 難 であった この 課 題 を 解 決 するため ヨーグルトミックス 調 整 時 にチコリイヌリ ンを 添 加 し 比 重 を 高 めた 結 果 桜 の 花 を 浮 かすことに 成 功 した( 図 15) 比 重 の 調 整 は 砂 糖 や 食 塩 あるいは 他 の 水 溶 性 食 物 繊 維 でも 可 能 であるが 桜 の 花 が 浮 く 比 重 を 実 現 した 場 合 イヌリン 以 外 では 風 味 に 影 響 ( 甘 す ぎる 塩 っぱすぎる あるいは 独 特 の 味 や 匂 い)が 出 て しまい 実 用 的 ではなかった イヌリンは 甘 さが 砂 糖 の 1/10 程 度 でそれ 以 外 の 味 質 も 持 たないため 比 重 調 整 に は 最 適 な 食 品 素 材 といえた 本 技 術 は 現 在 特 許 ( 特 願 2011-253280)を 出 願 中 である (5)ホエイイヌリンクリーム チコリイヌリンのより 一 層 の 普 及 拡 大 を 図 るため 使 い 勝 手 が 良 く 汎 用 性 の 広 い 中 間 食 材 としてホエイイヌリンクリームを 試 作 した これまでの 製 品 開 発 事 例 にもあるとおり イヌリンの 添 加 は 高 濃 度 で 水 に 加 温 溶 解 後 に 冷 却 して 形 成 されたイヌリンクリームを 使 用 した 方 が 使 いやすさ 品 質 改 良 に 効 果 を 発 揮 しやす いことが 多 く 製 造 工 程 上 手 間 がかかることが 課 題 であった この 課 題 を 解 決 するには 予 め 調 製 されたイヌリン クリームを 製 造 し 中 間 食 材 として 販 売 することで 工 程 の 短 縮 作 業 性 の 改 善 などが 可 能 となる このようなイヌリンクリームを 開 発 するにあたり 十 勝 らしさやより 好 ましい 風 味 の 付 与 イヌリンクリ ームの 食 品 添 加 効 果 を 向 上 するため 溶 解 水 の 代 わり にチーズホエイを 利 用 することで 付 加 価 値 の 向 上 を 図 った この 結 果 官 能 評 価 において 水 よりもチーズ 牛 肉 ソーセージの 豚 脂 肪 との 置 き 換 え (100% 代 替 の 場 合 ) 250.0 200.0 150.0 100.0 50.0 0.0 エネルギー(kcal/100g)の 比 較 イヌリンなし -57.7kcal (-27.3%) イヌリン 入 り (カロリー 従 来 比 1/4カット) 図 14)イヌリンによる 牛 肉 ソーセージの 低 カロリー 化 図 15)イヌリンによる 桜 花 の 浮 き 具 合 改 善 図 16)ホエイイヌリンクリームの 官 能 評 価 (n=20)
ホエイを 使 用 したイヌリンクリームが 圧 倒 的 に 高 い 評 価 を 得 た( 図 16) また 物 性 においてもホエイイヌリンクリームは 水 を 用 いた 場 合 と 比 べて 保 形 性 が 向 上 ( 図 17)し マーガリンと 同 等 の 固 さで 展 延 性 の 良 い 中 間 食 材 とすることができた さらには イヌリンクリームの 乳 化 様 作 用 も 向 上 し 10% 植 物 油 を 混 合 した 場 合 でも 水 を 用 いた 場 合 と 比 べて 均 一 に 植 物 油 を 分 散 させることが 可 能 ( 図 18)であった 水 ホエイ 油 配 合 量 上 部 表 面 2g 当 たりの 油 分 含 量 水 ホエイ 10% 30.0% 10.6% 図 17)ホエイイヌリンクリームの 保 形 性 向 上 図 18)ホエイイヌリンクリームの 保 油 性 向 上 6.まとめ 本 報 告 ではとかち ABC プロジェクトで 取 り 組 んでいる 機 能 性 食 品 素 材 のうち ビートベ タインとチコリイヌリンに 焦 点 をあて とかち ABC プロジェクトで 得 られた 知 見 や 既 に 知 られている 効 果 効 能 を 活 用 した 製 品 開 発 について 事 例 を 紹 介 した これらの 中 には 既 に 商 品 化 されたもの これから 商 品 化 が 予 定 されているものを 含 めて 紹 介 させていただいた 特 にビートベタインの 複 合 製 剤 やチコリイヌリンの 中 間 食 材 については 商 品 化 が 実 現 す れば その 作 業 性 の 良 さや 汎 用 性 から 幅 広 い 分 野 での 利 用 が 可 能 となり 対 象 とする 食 品 分 野 を 選 ばずに 活 用 が 期 待 でき これらの 機 能 性 食 品 素 材 の 普 及 の 一 助 となるものと 考 え ている また 十 勝 で 生 産 される 農 畜 水 産 物 にはまだまだ 未 利 用 低 利 用 な 食 材 あるいは 加 工 副 産 物 が 多 く 存 在 し とかち ABC プロジェクト での 取 組 みに 関 わらず 今 後 検 討 の 余 地 がある 魅 力 的 な 資 源 であるといえる 当 財 団 が 主 催 する 地 域 資 源 高 付 加 価 値 化 研 究 会 で 取 り 上 げた 食 材 を 例 にあげても 小 豆 ポリフェノール ラフィノー ス ビートファイバー マッシュルームなど ま だまだ 多 くの 食 品 素 材 が 潜 在 的 需 要 を 待 ってい る( 図 19) これらの 食 品 素 材 においても 健 康 機 能 性 のほか 食 品 への 添 加 による 品 質 改 良 効 果 等 を 探 索 し 新 たな 加 工 食 品 への 活 用 による 商 品 開 発 を 推 進 したい 図 19)まだまだある 機 能 性 素 材 の 例 以 上